筆者の過去作品とリンクしていますが……。
※星白万歳※
これだけ理解していただければ楽しんでいただけると思います。
あと、村紗のことは好きですよ。本当に。
毎度毎度なぜだかあのバカップルに振り回されている気がする……。
今さら覚っても遅い気はするが。
やりきれない想いで、周囲の『青空』を見渡して警戒していると、目の前が急に暗くなった。
「うわあっ!?」
「ナズーリン、大丈夫ですか!?」
限界まで背を逸らして回避には成功したものの、あまりの風圧に私の悲鳴の末尾があらぬ方向へ曲がった。
暴力の塊は太陽の光を鈍く反射させながら、黒い風となって私たちに容赦なく襲いかかってくる。
その名も、アンカー。
「船長は許可……しないっ!」
「許可も何もあったもんじゃないだろう!?」
「なぜよりにもよってうっかり虎なんかに聖を任せなきゃならないんですか!? ホワイ!?」
キミは舅か。
あんまりなことを言い出したのは、キュロットスカートにセーラーブレザーを来た村紗水蜜。
まあ、敬愛する聖白蓮とご主人が付き合うとなれば、彼女がこうなってしまうのは予測してはいた。
それは数分前のこと。
紆余曲折あってようやく結ばれたことを、ご主人たちは命蓮寺の皆に報告した。
なんだかんだで色々なことがあったためか、二人がこうなるのは当然だったと、みんな素直に祝福していた。
目の前の舟幽霊以外は。
その結果が、この二対一での弾幕ごっこ。
しかし船長は完全に殺す気でアンカーを放っている。
彼女の心情もわかるので百歩譲ってそれはいいとしても、だ。
「なんで私にまで攻撃をしかけてくるんだ船ちょおう!?」
再びご主人のレーザーのごとくへにょる語尾。
もうちょっとで私のまんまるな耳がなくなるところだった。
「星を止めてくれなかったあなたも同罪なの、よ!」
「んな理不尽な……」
「船では船長が司法! 湊符『ファントムシップハーバー』!」
確かにここは、聖輦船をベースとして命蓮寺の上空ではある。
だが、だからといっておとなしく撃沈させられるわけにもいかない。
私だって我が身はかわいいのだ。
「わかりました……それが、村紗の正義なのですね」
さらに数を増した錨を回避していると、水飛沫のような弾幕をスレスレで避けられる位置に浮かぶご主人が見えた。
その手には、いつもの宝塔が鎮座していた。
ご主人が本気かつ、それを使えば勝てる!
ようやくこの苦行を終わらせることができる、と期待していたのだが。
「あなたのその強固な信念、真に感服しました。 ですから……えいっ」
突然ご主人が宝塔を地上に向かって放り投げた。
偶然なのかどうかわからないが、ちょうどアンカーの射線上に沿って、それは落下していく。
「ごしゅじーん!?」
毘沙門天様より授かったありがたーいものになんてことを!
アンカーと並行に飛んで、宝塔をおいかける。
時折かすっているのか、カリカリ、なんて鳴っているのを聞いて涙目になるが、そんなことも気にしていられない。
「届いてくれ……!」
アンカーの方がわずかに早い。
間に合うかどうか怪しくなってきたところで、私は賭けに出た。
「ふん、それで対等になったつもり?」
「あなたを見習って、私も自分自身で正義を貫き通すことにしたんですよ」
「だからって投げ捨てることはないじゃないか……」
私よりも高いところで睨みあう二人を見ながら、ぼやくのがやっとだった。
それぐらいに疲れていた。
ちなみに宝塔はといえば。
「せ、セーフ……」
交差させたダウジングロッドの上に、絶妙なバランスで立っていた。
私を追い抜かしていったアンカーは、どうやら地上付近でぬえに撃破されたようだ。
大量のUFOを見て、ああまた博麗の巫女に何か言われるんだろうな、などとボンヤリと考えていると地上から高速で接近してくる二人が見えた。
もう一度、上空の二人を見た。
「ならば、これでトドメを刺してあげましょう!」
「望むところです! 光符……」
「幽れ「やめなさい」イっ!」
「『正義の……』?」
急上昇してきた一輪が思い切り船長をビンタし、吹き飛ばされた彼女を雲山が紳士的にナイスキャッチ。
相手の惨状にご主人も驚いたのか、法力の光は一気に霧散していった。
「……本当は雲山いらないんじゃ……」
「何か言った、ナズーリン?」
「いや、なんでもないよ、うん」
怒っても笑顔な白蓮も怖いが、普通のしかめっ面もやはり恐ろしいものだ。
「……いきなり殴打とはご挨拶ね」
「地上でああ、星ちゃん大丈夫かしらなんて右往左往している姐さんを見せられる身にもなってほしいのだけれど」
ああ、それは辛いね。
ご主人がピンチになる度に肩を思い切り揺さぶられたりしたんだろう。
白蓮のあの力でそんなことを人間にしていたら、どうなっていたことか。
「しょおおおおお!」
「どうしてそこで私に怒るんですか!?」
「だまらっしゃい!」
白蓮が悪いことをしたのなら、それは全てご主人のせい。
少なくとも船長の中ではこれからずっとそうなってしまうのだろう。
「ふう……」
やれやれ。
今回は一段落したとはいえ、まだまだこういった波乱が起こるのだろうか。
そう案じながらも、とりあえず一休みできることに安堵の息をついた。
「とりあえず、ご主人も後でお説教だよ」
「そんな!?」
「あ、足が……足が……」
本日の南無三メニュー『ひざに石を載せたまま正座一時間』。
現世での処刑方法の疑似体験らしいが、博麗の巫女はどこで覚えたのやら。
結局あの後、大量に出現したUFOを目ざとく見つけた博麗の巫女、そして一輪と私とでご主人と船長に延々と説教を続けた。
もちろん、南無三メニューをこなさせながらだ。
「うう、ひどいですよナズーリン……」
女性らしいラインの太腿をさすりながら、涙目になるご主人。
「……」
南無三メニューのダメージが抜けきらないのか、放心状態の船長。
二人とも居間にうずくまりながら悶えている。
「反省しなさいよね、全く……」
「よしよし、星ちゃんの痛いのとんでけー」
博麗の巫女は縁側で緑茶をすすり、白蓮はご主人に膝枕を貸しながら頭を撫でていた。
あまり甘やかすとダメ主になりそうだが、今ご主人から安らぎを奪うのも酷だろうか。
ここにいない一輪とぬえは、少し遅めになった昼食の準備をしている。
「ヒビ、入ってないな……?」
そして巫女の隣に座った私はといえば、ご主人が地上に放り投げた宝塔のチェックをしていた。
幸いにも無傷なようで、安心した。
可能かどうかはわからないが、破損していたらまた莫大な修理費が飛んでいく。
(ご主人も後先考えないわけではないんだろうけど……)
頭に血が昇ると判断力を失ってしまうらしいのは、なんとかしてほしいものだ。
そうして綺麗な布で宝塔を拭いていると、巫女がこちらを見ているらしいことに気付いた。
「なんだい、これに興味があるのかい?」
「それって結局どういうものなの?」
そういえば、結局白蓮の解放に必要なものということ以外は知らせていなかったか。
「アンタや星が使ったら大分強くなったし、白蓮の解放にも必要だったっていうけれど、どれが本当の使い方なのよ」
神道を信仰する巫女にしてみれば、最もな疑問かもしれない。
宝塔は宝棒と併せて、毘沙門天様の本質をあらわす持ち物だ。
だから改めて本来の用途、などと問われると困ってしまう。
「聖白蓮を封印したのも、私たちが強くなったのもこの宝塔の力なんだよ」
割と説明するのも面倒なので、端折って解説することにしよう。
「毘沙門天様の御力の一部がこれには宿っているからね。 だから色々な使い方ができるわけさ」
不謹慎な言い方をしてしまえば単純な力の増幅器として見ることもできるし、ご主人が毘沙門天様の代理であることの証にもなるわけだ。
だから、使い方という枠に当てはめることはできないわけだ。
私が宝塔についてよくわかっていないだけなのかもしれないが。
「そうですね、ナズーリンの言う通りでもありますが……ちょっと失礼しますよ」
いつの間にか復活を遂げていたらしいご主人が、宝塔を私たちによく見えるように持ちあげた。
そして何かを弄っているのか、金属同士がこすれあうような音がしたと思ったら、ここにいる誰のものでもない声が響いた。
『こんにちは。 お昼のニュースです』
「……」
なんだこれ。
居間にいた全員がそんな思いでいるのを見て、ご主人は少し考えてから宝塔の中にある何かを操作しはじめた。
「ここをこうしますと……」
何かが切り替わるような音がしたと思えば、宝塔が弱い光を放ちだした。
懐中電灯だろうか。
さらにご主人が宝塔の底を弄る。
ガオー!
「うわ!?」
「きゃっ」
「あら、まあ……」
な、なんだ今の虎の鳴き声は。
12時だぞー起きないと食っちまうぞー。
そんな間延びした厳つい声の発信源は、やはり宝塔。
「私がこれを授かった時期に、神々の間で流行していた万能雑貨なんだそうですよ」
「万能にも程があるだろう……」
「びっくりさせないでよ!」
紅白が凄むが、白蓮にしがみつきながらなので、全然迫力がない。
さっきのかわいらしい叫び声はキミのものだったのか。
「そういえば、毘沙門天様とお話することもできるんだそうですよ」
「なんだって!?」
結界を越えられるように細工を施してまで毘沙門天様への報告を行っていた私の苦労はなんだったんだ。
妖怪の賢者に気取られないか心配で、毎回ただでさえ小さい肝がさらに縮む思いをしていたのに。
「ふ、ふふふ」
ショックを受けた私の耳に、くぐもった笑い声が聞こえてきた。
「クックックック……」
「……船長?」
「寅丸星、敗れたり!」
「いきなりなんなんですか、村紗」
「あなたの命運もここまでですよ!」
目の前に白蓮がいるというのに、邪悪なオーラを溢れさせる船長。
その目はご主人……ではなく、その手の中にある宝塔に向けられていた。
「聖! 毘沙門天様にご報告しましょう!」
「それはいい考えね。 毘沙門天様も喜んでくださるかしら」
「ええ、激……いいえ、祝福してくださるでしょう!」
(ああ、なるほど)
なんとなく、船長の考えが読めたような気がする。
毘沙門天様に邪魔してもらおうという作戦なのだろう。
とはいえ、うまくいくとも思えない。
(毘沙門天様はご主人に弱いからね……)
私を部下としてつけたのも監視という名目だが、実際には保護者といったほうが正しいくらいだ。
普段は師として厳しく接しているようで、本当はご主人に甘いのだ。
他の弟子曰く、ああいうのをツンデレというらしい。
「さあさあ星、早く宝塔で!」
「村紗、何か企んでませんか?」
「そんなことはありませんよ! ねえ聖?」
「そうね。 私は村紗を信じてる。 だから星ちゃん、ね?」
「聖がそういうなら……」
さすがのご主人も怪しいものを感じ取ったようだが、白蓮の願いということもあって宝塔をまたいじりだす。
しかし、言い方は悪いが便利そうだ。
今度操作方法を教えてもらおうか。
昼食を食べた後、命蓮寺全員が居間に集まっていた。
ちなみに巫女はちゃっかりおかわりまでして帰っていった。
「では、始めますよ」
ご主人の合図に、全員が居住まいを正す。
声だけとはいえ、信仰する神の前では礼儀に気をつけなければならない。
ご主人が宝塔のてっぺんを押すと、宝塔に光が灯った。
そして。
『む、星か。 久しいな』
懐かしいお声だ。
最初に抱いたのは、そんな感想だった。
「毘沙門天様もお変わりなく……」
「お久しぶりです毘沙門天様。 白蓮です」
珍しく畏まった調子の白蓮が、ご主人に続く。
『お、白蓮。 そんなに畏まらなくてもいいぞ』
「毘沙門天様、あなたがそのようなことを申されては、我々が困ってしまいます」
『ナズーリンもいるのか。 元気そうだが、お前も相変わらず固いな』
固いは余計です。
そう言いたいのを無理やり押し込めた。
一輪たちの手前、向こうにいたころのように漫才を繰り広げるわけにもいかない。
その一輪たちは、あまりのフランクさに唖然としているが。
「毘沙門天様。 お話があります」
恐らく無意識に、ご主人が一歩手前に出た。
白蓮もご主人に位置を近づける。
「寅丸様。 ここは私が……」
「いえいえ聖。 私が言わなくては」
「でも告白したのは私の方が先です」
なぜかいえいえ合戦が始まった。
『あー、わかったわかった。 お前ら付き合いだしたのな』
「あら?」
「流石は毘沙門天様。 全て御承知なのですね」
「あんな痴話喧嘩をされたら、誰でもわかると思う」
ぬえの正論に照れるカップル。
なんかイラッと来るのはわかるから、拳を握りしめないでくれキャプテン。
「私は、寅丸様……いえ、星ちゃんを心から愛しています」
つい最近まで告白すらできなかった白蓮が、きっぱりと断言する。
そう、そうやって堂々としていればいいんだよ。
いざとなったら私がなんとかお許し下さるように食い下がってみせるさ。
『むう、俺としても弟子の幸せは願ったりなんだが……』
雲行きが怪しくなってきた。
『そう簡単に娘はやらんぞ白蓮!』
「弟子じゃないんですか」
あ。
つい我慢できずにつっこんでしまった……。
もういい、一輪とぬえの視線が痛いけどね!
「ナズーリン……」
「苦労してたのね」
ああ、そんな目で見ないでくれないか。
私も最初は弟子入りを後悔したんだから。
「そんな!」
ああ、白蓮もそんなまともな反応返さないでくれ。
この神様はすぐに調子に乗るんだ。
『ふはははは! 娘がほしくば俺の屍を越えて行け!』
ほら、もうこんなんだ。
ちらり、とご主人を見ると心配そうに宝塔を見ていた。
いつまでもあなたは純真なままでいてほしい。
「毘沙門天様……星ちゃんのそばにいるためならば、私は精いっぱい抵抗します!」
『来い、白蓮! 愉しいサボタージュ……ゲフンゲフン、愉しい戦いになりそうだ!』
またサボってるのか。
心の中で兄弟子たちの苦労を想いながらも、白蓮の援護にまわる。
これでも応援はしているのだ。
『コンプリートクラリフィケイション!』
毘沙門天様自らの神通力が、宝塔から幾つものレーザーとして発射される。
その軌跡は散弾となって散らばり始める。
「雲山っ!」
「……」
命蓮寺を守るため、全てのレーザーを雲山が受け止め、かき消していく。
雲山は本当に有能だ。
「そこ、あ、あそこにも!」
ぬえが飛ばしたUFOに、散弾もかき消されていく。
ごめんよ二人とも、と、心の中で神に代わって謝罪する。
昔から枠にはまらないことで有名なんだこのお方は。
「くっ……!」
白蓮への攻撃もほとんどを私とご主人とで防いでいるが、おかげで反撃の隙が見当たらない。
『どうしたどうした! 守られるだけのヤツには星は任せられんぞ!』
「……好き勝手おっしゃいますね毘沙門天様」
『だってお父さん寂しいもの!』
「バカですか、あなたは……」
思わずつぶやいた一言で、あることを思い出した。
そうだ、この方は……。
「ナズーリン?」
「ああっ! ご主人の服が破けて!」
『なんだとっ!?』
割と助平な我が師は、一瞬レーザーの照射を緩めてしまう。
「白蓮今だ!」
「ありがとうナズちゃん!」
『だましたなナズ公!?』
毘沙門天様が気付かれた時にはもう遅かった。
宝塔は白蓮のすぐ目の前だ。
そして。
「南無三っ♪」
『ぐああああああああああああああ!』
ノリのいい絶叫に騙されてはいけない。
白蓮はいわゆるデコピンで宝塔を倒しただけだ。
しかし毘沙門天様には結構なダメージだったらしい。
全てのレーザーと弾幕がかき消える。
「アンタがむっつり助平なのは毘沙門天様に似たのね」
「うるさいよ一輪」
私だってイヤなくらいに自覚してるよ……。
『ぐ、グフッ……』
「毘沙門天様!」
「ああ、私はなんてことを……」
だから騙されないでほしいが、恐らくご本人は一切ダメージはないはずだ。
しかし純真なご主人は宝塔を大事そうに抱え上げる。
『見事だ、白蓮……。 星はおまえのもの……』
「毘沙門天様!」
『!』
「船長?」
フットボールの要領でご主人から宝塔を奪ったのは、村紗船長だった。
まだあきらめてなかったのか。
「毘沙門天様、私の体をお使いください!」
『しかし……』
「あなたさまと私の心は一つです!」
『! そうか……では行くぞ!』
もう何もおっしゃらないでほしい。
そんな私の思いなど知らずに、村紗の体が光を放ち……。
居間の天井が吹き飛んだ。
『「わが名はジェネラル・ムラサ……」』
埃が晴れ、ようやく見えた青空に浮かんだ船長は無駄に神々しかった。
しかしなぜ格下げされているのか。
『「愛を貫き通したくば、かかってこい!」』
レーザーと錨が飛来してくる。
「きゃっ!?」
「聖!」
地面に突き刺さった錨につまづいた白蓮を、ご主人が抱きとめる。
「ちょっと毘沙門天様! 聖には攻撃しないで下さいよ!」
『知るか! というか今のは攻撃じゃないだろう!』
ジェネラル・ムラサの弱点はチームワークの弱さのようだ。
それに対して、深く結びついたように見えるご主人と白蓮が寄り添いあう。
「ジェネラル・ムラサ! 我が愛すべき白蓮にまで手を出すとは……毘沙門天様の力添えがあるとはいえ、許しがたい!」
珍しくご主人が本気で怒っている。
隠された尻尾と耳が現れ、殺気を隠そうともしない。
「星ちゃん、私はいいの……」
「聖……」
「きっと村紗も、迷っているだけなのよ。 だから私たちが誠意をこめて戦えば、きっとわかってくれる」
「何かそれはおかしくないか……「聖!」「星ちゃん!」もういいです」
抱き合う二人から、膨大な法力を感じて距離を取ることにする。
一輪とぬえ、雲山もいっしょだ。
遠くからまた巫女がやってくるのが見える。
ああ、なんかもう。
「面倒くさい……」
何もかも。
でもまあ、あの二人が幸せのためなら私はどんな困難にだって打ち勝ってみせよう。
「ナズーリンは、本当にお師匠にそっくりなのね」
「ぬえ、言ってあげちゃだめよ。 きっと気にしてるんだから」
「……」
ああ、ありがとう。
慰めてくれるのは雲山だけだよ。
「「愛の……南無三(ムチ)!」」
巨大な拳型レーザーが、上空のジェネラル・ムラサへと向かっていく。
『「ふん、こんなもの!」』
防御か回避か、とにかく行動を起こそうとするムラサだったが。
『あー、毘沙門天様!』
『ゲッ!』
兄弟子の声が聞こえてきた。
やはり、サボっていたのか。
『お仕事してください! あ、待って下さいよー!』
『悪いがムラサとかいうの、後は任せたぞ!』
毘沙門天様の力の気配が完全に途絶えた。
どうやら逃走するために通信を切ったらしい。
ジェネラル・ムラサから光が消えていく。
「ちょ、毘沙門天様ー!? ってぎゃあああああああああああ!」
南無三レーザー(仮)、直撃。
村紗は星となった。
「……」
煙の中から落ちてきた宝塔を急いでキャッチし、周囲を見渡す。
「なにやってんのよアンタたち!」
「知らないってばー!」
やってきた巫女が、ぬえを問い詰めている。
命蓮寺は半壊。
「雲山、がんばってね」
「……!?」
ひどい状況だった。
巫女を説得するのも、寺を修理するのも、村紗を治療するのも簡単にはいかないだろう。
しかし。
「星ちゃん……」
「白蓮……」
まあ、あの二人の為ならがんばれるはずだ。
そう心に決めて、とりあえずまずは落下してきた船長にとどめを刺すところから始めることにした。