「それでは、上映を開始する」
「ついに・・・完成したわね。」
暗闇にたたずむ銀髪の少女、傍目にはただの子供にしか見えないが
その背中からは、一対の羽が生えている
名はレミリア・スカーレット、紅い悪魔と恐れられる吸血鬼だ
「ええ、総工費8200億、建造期間1年、対魔法防壁、二連装主砲・・・
その他もろもろを含めて、まさしく空の要塞と呼ぶにふさわしいものよ」
紅い悪魔に答えるように、もう一人の少女が姿を現した
パチュリー・ノーレッジ、知識と日陰の少女の二つ名を持ち、齢100歳を超える魔女である
パチンッ・・・パチンッ・・・
暗闇を裂くように明かりが点けられてゆく、2人の前に姿を現したのは
あまりにも巨大で、圧倒的で、壮大な物だった。
「リフト、スイッチオン!」
「さぁ、我々の時代の幕開けよ」
その名は 『空中戦艦 グングニル』
~逆襲のレミリア~
「ふぅ、今日もいい天気ね」
ここは博麗神社、今日も楽園の素敵な巫女、博麗 霊夢は暇そうにしていた
「失礼ね、暇そうじゃなくて暇なのよ」
「なぁ霊夢、誰に向かって言ってるんだ?」
「っわ、魔理沙、どこから出てきたのよ」
「人をどこかのスキマ妖怪みたいに言うなよ、かなり前からここにいたぜ?」
「かなり前って、いつからよ?」
「1分前」
「・・・」
「で、お茶はまだか?」
「・・・今入れるわ」
霊夢とみょんなやりとりをしているのは霧雨 魔理沙
幻想郷の大泥棒にして「弾幕はパワー」を地でいく強盗だ
副職として魔法使いとか考古学者とか色々やって「ちっがーう!!」
「急に叫んで、どうかした?」
「え、いや、なんでもないぜ・・・」
「ほら、お茶入ったわよ」
「ああ、サンキュー」
縁側で茶をすすり、ほーっとする二人
「平和ね・・・」
「ああ、平和だな・・・」
そう、本当に平和なのだ、いつもなら妖怪の一人や二人、神社を引っ掻き回しに来るのだが
「花も元通りに戻ったし、やっぱり平和が一番よね」
「私は騒がしいほうが好きだがな」
二人は一息つくと、ずずーっとお茶を口に含んだ
「テンコォォォーーーーーーー!!」
バブゥゥゥゥッ!!
青い空に響き渡る鳴き声とお茶を噴き出す音の二重奏
空に飛び散ったお茶は、小さな虹を優雅に、そして華麗に映し出していた
「ゲホッ・・・コホッ・・・、ちょ、ちょっと何なのよ!」
「コホッ・・・こんな真昼間からテンコーは無しだぜ・・・」
咳き込む二人の前に縦回転+ひねりを加えながら鳴き声の主が華麗に着地した
「テテ!テンコッ!テンコー!テンテンコー!テンテテテ「「落ち着け」」
バシャッ! と、落ち着けの声と共に手に持っていたお茶をぶっ掛ける二人
「熱いテンコォォーー・・・・・・」
ゴロゴロゴロゴロ・・・ゴスッ!
金色に光る綺麗な尻尾を9本もはやした妖狐こと、八雲藍
幻想郷の常識人にして真面目が売りの彼女が奇声を上げながら木に激突し
動かなくなる様は、まさに日中の悪夢であった。
「すまない、ちょっと取り乱してしまった」
気を取り直し、いつものように尻尾をなびかせる、こうして見ると威厳たっぷりだ
「取り乱すにもほどがあるぜ・・・」
「で、結局どうしたの?また大事件?」
「そうなんだ!紫様が、紫様がっテンコッ!テンコー!テンッ「「うるさい」」
ゴスッ! と、同時に湯飲みを投げつける二人、阿吽の呼吸とやらか
「痛いテンコォォーー・・・・・・」
ゴロゴロゴロゴロ・・・ゴトン!ゴト!ゴト!ゴトゴト・・・・・・
その実力は幻想郷でトップクラスと言われるスキマ妖怪の式こと、八雲藍
プリンセス天狐にしてイリュージョンが売りの彼女が奇声を上げながら
石段を転げ落ちていく様は、まさに幻想郷の悪夢であった。
「で、紫がもう1週間も帰ってきてないと」
「テンコォ~・・・」
「あいつの事だから、どーせどこかで冬眠でもしてるんじゃないか?」
「今は夏よ、魔理沙」
「なら夏眠だな」
魔理沙の本気かボケかわからないセリフをスルーしながら会話を続ける二人
「それで、3日ほど前に紅魔館に招待されてから行方が分からないんだ」
「紅魔館?」
「ああ、パーティを開くからと招待されたらしく、朝には帰ってくるとは言ってたのだが・・・」
「私には招待は来てなかったぜ、紅魔館には行ってみたのか?」
「勿論だ、しかしとうの昔に帰ったとメイドと門番に追い返されたよ」
「幽々子の所は行ってみた?」
「行ってはみたんだが・・・幽々子殿も所在がわからないらしい」
「「なんだってーー!?」」
「うう・・・紫様・・・・・・テンコォォォォォォー!!」
二人は絶叫する藍をしこたまお払い棒と箒で叩いた
途中、橙とか言う化け猫が邪魔をしたが、ついでにしこたま叩いておいた
「埋まるまで叩く必要は無かったんじゃないか?」
「藍さま・・・シクシク」
地面に首まで埋まっている式が二匹、中々ホラーな光景である
「紅魔館と白玉楼にいなかったのなら、残りは永遠亭だけだな」
「うむ、神社にいないとすればもうそこしかないだろう」
「だけど・・・紅魔館が気にかかるわね」
「どうしてだ?霊夢」
「・・・・・・勘よ」
「勘・・・か、霊夢の勘はよく当たるからな」
魔理沙が帽子を深く被りなおす、大事件の臭いが強くなってきたらしい
「ふむ、ひとまず我らは永遠亭に向かうとするよ」
そう言い残すと、二匹の式は永遠亭のある竹林に向かって去っていった
「で、どうするんだ霊夢?」
「決まってるじゃない、紅魔館に向かうわよ」
~少女飛行中~
「おかしいな・・・」
「おかしいわね・・・」
紅魔館を囲う巨大な湖、その上を軽やかに飛ぶ紅白と黒白
「毛玉が一匹もいないぜ」
「それどころか妖精も見かけないわ」
「・・・こいつは急いだほうがよさそうだな」
不安にかられ、速度を上げる二人、そして彼女達の目に飛び込んできたのは
今までに見たことのない、見るはずがないほどの巨大な鉄の塊であった
紅魔館を中心に艦橋が、その左右にレミリアの羽を思い浮かばせる巨大な翼
艦橋から湖にまで突き出た巨大な船体、後はレミリアっぽい顔がついている艦首とか
「・・・・・・・・・趣味悪ぃな」
「何なのよあれは・・・」
「どうする?引き返すか?」
「何言ってるのよ、とにかくレミリアを引っ捕まえて詳しい話を聞きだすわよ」
「わかった・・・・・・いくぜ!」
決戦の火蓋は、今、切って落とされた
◇◇◇
咲夜『れ、霊夢達がやってきました!まっすぐこちらに飛んできます!』
リトル『大変!大変!どうしよぉ!』
美鈴『こんなところで邪魔されたくないですよ!』
パチェ『レミィ、どうする?』
レミィ『甲板付近のものは戦闘準備!他のものは離陸に備えよ!』
◇◇◇
「いよっし、到着――うおっと!」
魔理沙を視界に捕らえるや否や、弾幕を展開してくるメイド達
「こいつぁ、派手なお出迎えだぜ!」
帽子を押さえながら華麗にかわしていく魔理沙
右に、左に、時には捻り、笑いながら軽やかにかわしていく
「全開で飛ばすぜ!!マスタースパーーーク!!」
ゴゥゥゥゥゥゥン・・・・・・巨大な閃光が甲板を包み、メイド達が閃光の中に消えてゆく
「よっしゃ、クリティカルだ!」
「いきなり派手にいったわね」
魔理沙に遅れて、霊夢がストンと着地した
「先手必勝だぜ」
そう聞くと、霊夢はすっと前を指差した
「でも、この船?傷一つついていないわよ」
「げげっ!?」
マスタースパークの直撃を受けたにもかかわらず
ほとんど壊れた様子の無い甲板
「一体なんでできてるんだ・・・?」
「知らないわよ、とにかく紅魔館に向か・・・」
ズドドドドドドドド!!
「うひゃ!」
「おおっ!」
二人にとてつもない数の弾幕が降り注ぐ
「くぅ、こいつは避けきれないぜ」
「魔理沙!こっちよ!」
霊夢はすでに扉らしきものの中に逃げ込んでいた
「うへ、逃げ足がはやいな」
「いいから急ぎなさい!」
◇◇◇
咲夜『霊夢らがロケットバルブに進入!』
パチェ『スカーレッツを投入!急いでー!』
◇◇◇
通路を疾走する二人、天井が低すぎて飛ぶと逆に危険のようだ
「しかし何なんだここは、上も下も全部鉄だらけだぜ」
「こんなものを作っていたなんて、何考えて・・・危ない魔理沙!」
「ん?うおっ!」
霊夢の一言で前を振り向いた魔理沙の頬を丸いものが掠める
「ふぅ、何だ今のは?」
キョトンとする二人の前に現れたのは
「ここから先は通しはしない!」
「我ら精鋭!スカーレッツ!」
「おとなしく捕まりなさい!」
ヨーヨー、剣、ハンマーを持ったメイド達
「・・・・・・・・・・・・マジックミサイル」
「「「ギャー」」」
狭い通路では避けようも無く吹き飛ぶスカーレッツ、間抜けだ
「うう・・・何するのよぉ・・・」
「中で・・・弾幕なんか使ったら・・・船が壊れちゃうじゃない・・・」
「何のために私たちが・・・こんな武器使ってると・・・」
真っ黒焦げになりながら息絶え絶えに喋るスカーレッツ
「ふぅん、いい事を聞いたぜ」
その言葉を聞いて青ざめていく彼女達
「つまり、あなた達は弾幕を使えない、私たちは使い放題」
霊夢の目が妖しく光る
「じゃ、知ってることを全て教えてくれるわね?」
ジリジリと近寄る霊夢、スカーレッツ達に逃げ場は・・・無い
「って、霊夢、他の敵もやってきたぜ」
「そっちは任せるわ魔理沙、私はちょっと色々聞きだすから」
そう言うと霊夢は懐からいろんなものを取り出し始めた
「色々ねぇ、なんだその物騒な道具は」
「色々よ・・・色々・・・」
後に魔理沙は語った、霊夢に逆らってはいけないと・・・
「で、結局この巨大なものは何だったんだ?」
通路をふさぐ敵を薙ぎ倒しながら突き進む二人
「巨大な船で合ってるそうよ、何のために作ったかはわからないけど」
「結局何も分からずじまいか」
「そうね、もう少し弄ってやるべきだったかしら」
「・・・・・・・・・こ、ここから下に降りれるみたいだぜ」
何とかして話を逸らす魔理沙、だがその額には冷や汗が見て取れた
はしごを降り、通路を進むとそこは行き止まりだった
「あっれー?どうするんだ霊夢?」
「ちょっと待って、この行き止まり、何か変よ?」
「変?」
霊夢の言うとおり、通路の行き止まりだけ床の形が変わっていた
「この床、色も形も違うわ」
そう言って、ドンと足踏みをした途端
「うわわわわわっ!」
「うひゃあ」
いきなり床が高速で下がり始めたのだ
「驚いた、こういう仕掛けなのね」
「おお、天井も一緒に落ちてるぜ」
つまり、非常に簡易なエレベーターである
「着いたみたいね」
エレベーターがから降り、通路を進んだ先は外だった
「ほえー、なんだこりゃ」
魔理沙が見上げた先には巨大な筒状の物体
「うーん、何なのかしら?」
もはや二人の頭はオーバーヒート寸前だ
「「「「「「「「そこまでよ」」」」」」」」
途端、二人に襲い掛かるスカーレッツ達!
「げっ、まだいやがった!」
「我らスカーレッツに敗北は無い!」
「夢想封印 散」
「「「「ギャー」」」」
◇◇◇
美鈴『ノズルの後ろで霊夢らが戦っています!』
レミィ『離陸を強行する!霊夢らを吹き飛ばせ!』
咲夜『OK!メインエンジン点火!』
パチェ『いまよ!テイクオフ!』
◇◇◇
「ちっ、メイド達もしつこいぜ」
「スカーレッツだ!」
外での戦いのためか、弾幕も放ってくるスカーレッツ
「どっちでもいいだろ、ん?」
弾幕をかわしながら、ふと魔理沙が違和感を感じた
「なんだ?風?」
ィィィィィィ・・・・・・
「何、この音・・・」
霊夢も気づいたようだ、そしてその音の源は巨大な筒状の物体から・・・
キュイイイイイイイイン!!
「うわぁぁぁっ!」
「きゃあぁぁぁ!」
逃げる術も無くエンジンの噴射に二人は吹き飛ばされていった――。
◇◇◇
咲夜『霊夢らは湖まで飛ばされたようです。』
美鈴『ぷぅ。ヤバかったですね~。』
パチェ『この空中戦艦『グングニル』で幻想郷は制圧されるのよ!』
レミィ『まずは小手調べね。目標、永遠亭!』
リトル『(パチェ様、張り切ってるなぁ・・・)』
◇◇◇
「うへぇ・・・もう全身ビショビショだぜ」
湖から何とか這い上がってきた魔理沙、どうやら森のそばまで飛ばされたらしい
「って、私の箒が、相棒がいないーっ!」
「大丈夫よ!私がいるわ魔理沙!ああ、濡れたあなたは最高に素敵よーっ!」
いつからそこにいたのやら、ツンデレ?人形遣い、アリス・マーガトロイド
「うおわ!アリス、なんでここにいるんだ!」
「そんなことはどうでもいいわ、さぁ行きましょう!二人の愛の巣へ!」
「落ち着けアリス!マジックナパーム!」
「あああ、そんなに激しくしないでぇぇー!」
放物線を描きながら吹き飛んでいくアリス、その顔は実に嬉しそうであった
「落ち着いたかアリス?」
「ええ、落ち着いたわ・・・ハァハァ」
言動的には落ち着きながらも魔理沙に怪しい視線を送る
「うぅ、で、なんでアリスがこんな所にいたんだ?」
「・・・・・・あれよ」
アリスはすっと湖の方向を指す
「うげげっ!?」
その指の先にはさっきの船が、そして一つ違うところがあるとすれば
「飛んでるな・・・」
「飛んでるわね・・・」
もはや何がなんだかわからないといった状況である
アリスが何故ここにいたのかというと、たまたま船を見ていたら
飛んでいく魔理沙が見えたので、追いかけて来たとのこと
「ああ、霊夢も一緒に飛ばされてこなかったか?」
ふと思い出したように尋ねる魔理沙
「あー、向こうのほうに飛んでいったわ」
指差した先は・・・森のど真ん中
「霊夢!今行くぞー!!」
聞くや否やどこぞのスプリンターばりに駆け出していく魔理沙
「ああ、待ってよ魔理沙ー!」
「う~ん・・・」
「あ、目が覚めました?」
「あれ、ここは?」
霊夢が目を覚ますとそこは小さな花畑
「大丈夫ですか?いきなり飛んできたものですから・・・」
「あなたは・・・確かいつもチルノと一緒にいた・・・名前なんだっけ?」
「大妖精でいいです・・・シクシク」
よよよと泣き崩れる
「あー!何泣かしてるのさっ!」
突然現れたのは、馬鹿こと氷精チルノ、むしろ馬鹿だ
「許さないよ!アイシクルフォ「マスタースパーーーーク!!!」
~恋娘閃光中~
「で、つまり紅魔館のメイド達に追い払われたと」
どこからか取り出したお茶を飲みながら黒焦げのチルノや大妖精に話を聞く霊夢
「うん、あたい達が遊んでたらいきなり追い払われたの」
「それで湖にいなかったのか・・・」
「あなたたちに攻撃を仕掛けてきたのなら、よっぽどの事を企んでいるのね」
あごに手を当て、冷静に現状を分析するアリス
「私はいつも攻撃されるぜ?」
「「それはあなただけよ」」
冷静なツッコミが入る
「ひどいぜ・・・」
「とりあえず、こんなところでモタモタしてる暇はないわ、急ぐわよ!」
茶を飲んでくつろいでた奴が言えたセリフではない
「あ・・・急ぎたいのは山々なんだが・・・」
そう言うと少しうつむく魔理沙
「どうしたの?」
「私の相棒が・・・箒が無いんだ」
ついに地面にのの字を書き始めた
「あー・・・アリス、その背中に隠してるもの出しなさい」
「ギクッ!・・・・・・なんで分かったの?」
驚きながらもアリスは背中からある物を取り出した、勿論それは魔理沙の箒
「おお!私の相棒よ・・・」
箒を取り返し、ほお擦りする魔理沙
「まぁ、そんだけ背筋が張ってれば分かるわよ」
「よし!急ごうぜ霊夢!」
と言いながら魔理沙はささっと飛び去っていった
「あ、ちょっとまちなさーい!」
「私を置いて行かないでー!」
そして置いて行かれた妖精二人
「「・・・・・・・・・」」
~少女追尾中~
「意外と速いわね・・・」
「あんなにでかいのに、反則だぜ」
「あれも人形なのかしら」
「「それは無いわ(ぜ)」」
これでも霊夢やアリスは全速力で飛んでいるのだが、船は想像以上に速く、中々追いつけない
「霊夢、私に捕まれ!全力で飛ばすぜ!」
イライラの限界か、魔理沙が箒に魔力を溜め始める
「っと、焦り過ぎよ、もう少し様子を見て・・・」
と言いつつも一瞬で捕まる霊夢、早業だ
「なんとかなる!いっくぜー!!」
「私を忘れないでー!」
すっかり忘れ去られてしまったアリスが何とか穂先を掴んだ瞬間、彼女達は風となった
◇◇◇
咲夜『霊夢らが飛んできます!』
美鈴『主砲準備、オッケーです。1発いってみますか??』
パチェ『よし、ドカーンといくのよ!ドッカーンと!!』
◇◇◇
「いよっっし!追いついたぜ!」
「って、追い抜いてどうするの!方向も全然違うわ!」
「たぁすけてぇぇぇ~・・・」
アリスの握力は限界に近い
「黙って見てろって!」
言うと同時に一気に横旋回を始める
「よし、このまま一気に着陸するぜ!」
「魔理沙!前!前!」
「へ?」
魔理沙が前を向いた時にはすでに砲弾が目の前まで迫っていた
「うわっ・・・」
「二重結界!」
◇◇◇
咲夜『霊夢撃退!里の方に落ちたようです。』
パチェ『よしっ。今度こそ追いついてこれないわ。』
リトル『そーかなー?』
◇◇◇
「せめて玄関から入ってきてくれないものか・・・」
天井にある大穴を眺めながら、
上白沢 慧音は軽くつぶやいた
「あいたたたた・・・酷い目にあったぜ」
お尻をさすりながらひょこひょこと立ち上がる魔理沙
「何を言ってるのよ、結界が間に合わなかったら私たち今頃ミンチよ」
霊夢のほうも無事ではあるようだ、むしろピンピンしている
「シャンハーイ」「ホラーイ」
人形に瓦礫の山から引き出されるアリス、よく箒から手を離さなかったものだ
「とりあえず、四人とも無事なようだな」
無事を確認すると、慧音はお茶を入れ始めた
「四人?」
ふと魔理沙が首をかしげる
「フェニーーーックス!!」
いきなりの叫び声と共にはじけ飛ぶ瓦礫の山、その中から姿を現したのは
火の鳥で有名な、不死鳥、鳳凰、フェニックスこと、藤原 妹紅、通称もこたん、彼氏募集中
「あー、酷い目にあったわ」
「そこまで完璧に治っておいてよく言うわね」
「痛いものは痛いんだって」
腰をさすりながら座る妹紅、死んでも怒らないあたり、意外といい人だとか、むしろいい人だ
「それで慧音、少し聞きたいことがあるんだけど」
お茶を一口飲み、霊夢が切り出した
「空飛ぶ船のことか?」
その返答に驚く3人、妹紅は何の話か分からないようだ
「昨日は満月だったし、少し前から気になっていて調べていたんだよ」
なるほど、といった顔で再度お茶をすする、霊夢の所と違い、出涸らしではないようだ
「みょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!」
バブゥゥゥゥゥ!!
以下、博麗神社で起きたようなやり取りが繰り返されるがその辺は略する
~半人暴走中~
所変わって永遠亭、主を探しにきた藍はどうなっていたかというと
「テンコォ~・・・」
「そんなに落ち込まないで、お茶をどうぞ」
やっぱり落ち込んでいた、それを慰める狂気の月の兎こと、ウドンゲイン・イナバ
「鈴仙だってばぁ~・・・」
ここに某中華小娘がいれば弄られトリオが揃ったところだ、実に惜しい
ビィーン!ビィーン!みよよ~ん!メッケメケー!
永遠亭にいきなりの緊急警報が鳴り響く
「あら、妹紅でもやってきたのかしら?」
豪勢な間に座して動かぬは、永遠と須臾の罪人、エターナルマウンテン・てるよ
「蓬莱山 輝夜よ!」
「姫、どうしました?」
いきなり叫んだ姫に驚くことも無く、落ち着いた様子の赤黒の女性
彼女の名は八意 永琳、マッドサイエンティストな天才薬師である
「マッド・・・?ふ、ふふふふふふふふふ・・・・・・」
こめかみに力の入る永琳、どす黒いオーラが漂っている
「こ、怖いわえーりん、助けてえーりん!」
しかし緊急警報が鳴っているのにまったく動じないあたり、月の民は鈍いのだろうか
「姫!師匠!のんびりしている場合じゃないですよ!」
いきなり障子を豪快に開けて二人に詰め寄る鈴仙
「落ち着きなさいウドンゲ、まずは状況を説明しなさい」
「あ、はい!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
説明しようとして、黙ってしまうウドンゲ
「と、とりあえず外を見てください・・・。」
「外?竹林しかないじゃない」
輝夜が首をかしげる
「竹林の上まで上がれば分かりますから!」
そう言いながら、鈴仙は二人を無理矢理引っ張っていく
「「・・・・・・・・・・・・」」
竹林の上で目が点になっている月人二人
でかい少女の顔がついた巨大な船がまっすぐ向かってきているのだ
「えーと、ラップしてジップしてフリージングして・・・助けてもこたーーーん!!」
「・・・右手を上に上げた時にえー!下に下げた時にりん!えーりん!えーりん!」
鈍い月人を一瞬で狂わせるあたり、空中戦艦グングニルは満月光線をも上回ったというのか
「師匠!落ち着いてくださいよー!」
「ハッ!落ち着いたわ」
「早っ」
伊達に師匠と呼ばれてはいない
「第一級警戒態勢を取りなさい!いつでも対処できるようにしておくのよ!」
「わかりました!」
踵を返し、伝令を伝えていく鈴仙、前例の無い事態に、ウサギ達に緊張が走る
~因幡混乱中~
場面は戻って慧音の家
「それでは作戦を説明する」
眼鏡をかけて黒板の前に立つ慧音、我ながら凛々しい
「誰にでも分かるように簡潔に説明するとだ、あれは戦艦、つまり戦闘用の船だ
船体には複数の主砲と副砲・・・対空設備だな、それと飛行能力を付与しているウィング
そしてその戦艦の全稼動魔力を支えるエンジンは・・・毛玉と幽々子が動力源らしい」
「幽々子様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「静かに聴け!」
投げたチョークが妖夢の額に直撃する、その一撃は意識を奪いかけるほどの威力だった
「少なくともこのまま放っておいていい代物ではない、早急に破壊する必要がある」
慧音の眼が厳しく光る、霊夢達が思っていた以上の大事件だったようだ
「まず、艦首から艦橋にかけての前面装甲の正面からの破壊は不可能と考えていい
魔理沙のマスタースパークで傷一つつかなかったのがその証明になるだろう」
「ならどうやって壊すんだ?」
ややふて腐れ気味に魔理沙が尋ねる
「そう慌てるな、確かに前面装甲は強固だが、左右の装甲、それとウィングなど
前面装甲以外はさほど硬くは無い、それに内部からなら前面とて壊すのは容易だ」
「それなら、直接弾幕を打ち込んで壊すことは出来ないの?」
意見を唱えたのはアリス、確かにレーザーなら遠くから狙うことも不可能ではない
「いや、戦艦の周辺に対魔力防壁が張ってある、少なくともその内側に入らないと
有効な攻撃を加えることは不可能だ」
「つまり、乗り込んで叩き壊すしかないってことでしょ?」
霊夢が言い放つ、すでに乗り込む気は満々のようだ
「ああ、だがそれが一番の問題だ、数多くの砲台、特にニ連主砲による対空能力は半端ではない
普通に突入すれば弾幕の餌食になるのがオチだ、しかしそれさえどうにかすれば
直接船の外壁を伝っていくことも可能になる、そうすれば破壊するのも容易い」
「対空か・・・全速力の私にピンポイントで当ててきたしな・・・」
バツの悪そうな顔をする魔理沙、単発攻撃で撃墜されたのは彼女の誇りに傷をつけたようだ
「ああ、よってその厄介な主砲をひきつける囮が必要になる」
「ですが、魔理沙さんですら避けれないのに、ひきつけれる方なんて・・・」
妖夢が首を捻る
「いるだろう、非常に目だって、尚且つ何発食らっても平然としていられるのが」
そういいながら慧音は隣でお茶をすすっている人物を指差す
「ん?・・・・・・・・・えええ!?」
そう、妹紅こと、もこたんだ、目立つし不死身だし囮として便利なことこの上ない
「任せたわ、妹紅」
「頑張れよ、妹紅」
「あなたなら大丈夫、妹紅」
「期待してます、妹紅さん!」
「そんなぁ・・・」
もはや決定事項であり、彼女に拒否権は無かった
「霊夢、これを持っていけ」
出発直前にひょいと慧音から渡されたのは黒い箱のようなもの
「通信機とか言うものらしい、私のもってるこれと一対になっていて
遠く離れていても会話が出来るとか、便利な代物だ」
「ふーん、便利ね」
「外から見ないとわからないことがあるかもしれないからな」
「じゃ、借りていくわよ」
「気をつけてな」
そして大空に、5人の幻想の戦士が舞い上がった――。
~少女飛翔中~
「見えてきたぜ」
戦艦と並行するように少しずつ近づいてゆく
「じゃあ妹紅、作戦通りにお願いね」
「ああ・・・」
いくら不死身でも、弾幕の嵐に突入するのはさすがに気が滅入るものだ
「あーもぅ!ヤケクソだこんちくしょーーー!」
豪快に巨大な鳳凰を形成し戦艦に突っ込む、迎え撃つは高速の弾幕
やや赤みがかった空に何発もの着弾音が鳴り響く、しかし妹紅の勢いは止まらない
「今よ!突入!」
霊夢の一声で一斉に全速力で飛ばす四人
「妹紅・・・お前のことは一生忘れないぜ!」
まだ死んでなーい、と聞こえたかどうかはわからない
だがさらにその勢いを増す弾幕にさすがの妹紅も限界が近づいてきた
「くそっ、再生が間に合わない・・・」
勢いが衰えていく鳳凰、次第に高度は下がりつつある
だが妹紅は甲板に着地する四人の姿をしかと見届け・・・墜ちた。
◇◇◇
咲夜『妹紅を撃墜しました!』
美鈴『でも!でも!霊夢達が甲板にいますぅ!!』
レミィ『落ち着きなさい。冷静に対処すればいいのよ。』
パチェ『ものどもであえぃ!霊夢を蹴散らせっ!』
リトル『(パチェ様・・・人格変わってます)』
◇◇◇
『皆!無事に到達できたか!?』
通信機から慧音の声が響く
「ええ、四人全員乗り込めたわ」
手渡された通信機をまるで使い慣れたように取り出す霊夢
『よし、急いで対空設備を――ズドドドド!!
会話を交わす暇も無く、容赦なく彼女達に降り注ぐ弾幕
「「「ここから先は通しはしないっ!」」」
そして取り囲むはスカーレッツ、その目には復讐の炎が宿っていた
◇◇◇
レミィ『そこまでよ、霊夢!』
パチェ『スカーレッツの力を思い知りなさいっ!』
リトル『ファイトッ!』
◇◇◇
「博麗アミュレット」
「マジックミサイル!」
「六道怪奇」
「スペクトルミステリー!」
四つの閃光が走り、散り散りに吹き飛ばされてゆくスカーレッツ
しかしその数は減ることは無く、むしろ増しているようだった
「これじゃきりが無いですよ!」
「あー、私の人形がっ!」
「外じゃ不利だ!中に逃げ込むぜ!」
前後左右を囲まれて撃たれ続ければさすがに彼女達といえども被弾は必至だ
「何をやってるのよ、早くこっちに来なさい!」
そしてすでに扉の中に逃げ込んでいる霊夢、まさしく神速の逃げ足
カンカンカンカンと通路を駆ける音が通路に鳴り響く
「やっぱり中では弾を撃ってくることは出来ないみたいね」
彼女達の通り過ぎたあとには真っ黒焦げのメイド達とぼろぼろの通路が残るのみだった
『・・・夢・・・霊夢・・・返事をしろ!』
ようやく気づいた霊夢が通信機を取り出す、どこにしまっていたのかは秘密だ
『今はどこにいるんだ?』
「扉に逃げ込んで今走ってる所よ、あーもう邪魔よ!」
通路をふさぐメイド達をアミュレットを使うどころか普通に蹴り倒していく
『今は内部ということだな・・・・・・』
返答を受け取ると少し考え込み
『霊夢、どうにかして甲板に出るんだ』
「なんだって、またあのスカーレッツとやらに追い回されちまうぜ!」
通信機に向かって叫び、ついでにメイドを箒で殴り飛ばしてゆく魔理沙
『主砲を破壊しなければ手の打ち様がない、頑張ってくれ!』
「とにかくやるしかないってことね」
◇◇◇
美鈴『霊夢達が甲板に出ようとしていますね。』
パチェ『では、そばにある主砲の前にご案内しなさい。』
◇◇◇
「あ、あそこの扉から外に出れそうね」
しかし扉が見えたと同時に後ろから放たれる弾幕
「皆さんこっちに!」
妖夢が横道を見つけ、そこに飛び込んですんでの所で難を逃れる
「中では弾幕を使ってこないんじゃなかったの!?」
予想外のことに慌てふためくアリス
「向こうさんも必死ってことだろ?」
それをなだめ、そーっと通路を確認する
「うおっと!」
顔を出すや否や即座に放たれる弾幕
「うへぇ、こりゃこっちは通れないぜ」
「仕方ないわ、このまま進むわよ」
◇◇◇
咲夜『霊夢は現在二連主砲に向かいつつあります』
パチェ『これでまっくろこげよー。あはははははははっ!』
リトル『あははははははっ!」
パチェ『あははははあははははっ!あはははあははっ!・・・ふぅ。』
◇◇◇
ズドドドドド!
「こっちも通れない・・・わね」
パシュン!パシュン!
「げっ、またかよ」
ガガガガガガガ!
「こっちも駄目ね・・・」
通路の行く先行く先で待ち伏せされ、思うように進めない霊夢達
「もしかして、誘導されているのでは・・・?」
ふと妖夢が気づく
「・・・一杯食わされたってことかよ、どうする霊夢?」
「罠だろうと何だろうと、前に進むしかないでしょ」
平然とした顔で答える、その様子を見て魔理沙は前を向きなおした
「扉が見えたわ!」
後ろを牽制しながら扉まで全速力で走る
バタンッ!
勢いよく外に飛び出し、周りを確かめる四人
「・・・何もないわね」
「んー?スカーレッツとやらはどこにいったんだ?」
見回しても何も無い、とその時、後ろの二人はあるものに気づいた
「あ・・・」
「ちょっ・・・魔理沙・・・」
二人の様子に気づき、振り返ると、そこにはこちらを向いた主砲があった
「うわ・・・」
「これはやばいわね・・・」
ウィィィン、ガシャン・・・
「ちょ、狙われてるわよ、どうするの!」
「やるしかないだろ!マジックミサイル!」
放たれたミサイルが主砲に直撃する・・・が、傷一つつかずに砲口をこちらに向けてくる
「げげ!?」
「くっ、こうなれば・・・!」
妖夢が砲台の真ん前に立ち、楼観剣を構える
「・・・妖怪が鍛えたこの楼観剣に、斬れぬものなど、あんまり無い!」
まばゆい光と共に発射される砲弾、瞬き一つせずに楼観剣を振り下ろす妖夢
「未来永劫斬っ!!」
剣閃が走り、砲弾を断つ――それは刀が銃を超えた奇跡の一瞬
真っ二つに斬られた砲弾は妖夢の左右を通り、空へと消えていった
「よしっ、砲台もこれで・・・」
喜びも束の間、妖夢の見上げた先には、刀傷の欠片もない主砲の姿があった
「そんな・・・馬鹿な・・・」
ショックで立ちつくす妖夢、しかしその時、主砲の土台部分を覆っていた物が
ガコンという音と共に上下に分かれ、中に隠れていた突起物に光が集まり始めた
「これは・・・レーザー!?」
気づくや否や結界を貼る霊夢、しかし魔理沙が砲台の前に立つ
「霊夢、結界をといてくれ、あれは私が何とかする」
言うと同時にミニ八卦炉を取り出し、魔力を込め始める
「何を考えてるの魔理沙!?」
止めようとするアリスを意に介さず、ミニ八卦炉にさらに魔力を込めていく
「やられっぱなしは・・・性に合わないんでな」
「・・・・・・負けたら承知しないわよ」
「わかってるって」
結界を解き、じっと魔理沙を見据える
砲台と魔理沙に光が集い、そしてそれは臨界点に達した
「ファイナル・・・スパーク!!」
甲板に閃光が走り、轟音が響く、膨大な魔力と魔力が光を発しながら衝突する
「いっ・・・・・・けえええええ!!!」
だが、叫び声と共に均衡は崩れ、ファイナルスパークがレーザーを飲み込んでゆく
砲台を吹き飛ばし、装甲をも引き剥がし、目の前にあるものを全て貫いていった
「・・・・・・・・・・・・やったぜ!私の勝利だ!」
一瞬の静寂の後、魔理沙は満足そうな顔で右手を突き上げる、と同時に周り中で爆発が起こる
「わわっ、何だ何だ!?」
勝利の余韻に浸かる間も無く飛び上がる四人
どうやら甲板全体で誘爆を引き起こしているらしい
『霊夢!無事か霊夢!』
途端、慧音から通信が入る、通信機を手に取り、無事よ、とだけ霊夢が伝える
『今の光は何だ?砲台は破壊できたのか?』
「おう、私の魔砲で跡形もなく消し飛ばしてやったぜ」
魔理沙が満面の笑みで答える
『そうか、さっきの光は魔理沙の魔砲か・・・』
ほっと胸をなでおろし、そしてすぐに気持ちを引き締める
「で、これからどうすればいいの?このまま艦橋に突入?」
誘爆からは逃れたものの、すぐにスカーレッツ達が追いかけてくるだろう、彼女達の猶予は少ない
『いや、このまま戦艦を落としてしまえば竹林に大きな被害が出る』
「竹林・・・ああ、輝夜たちのいるところね?」
戦艦の進んでいる方向を見ると、確かにだんだんと竹林が近づいてきていた
『そうだ、だから今いる所から一番近いウィングに向かって、それを破壊してほしい』
さっと周囲を見渡す、どうやら左ウィングが一番近いようだ
『どっちか片方を破壊すれば戦艦の進行方向が変わるだろう、急いでくれ、時間が残り少ない』
「ああもぅ、人使いが荒いわね」
「仕方がないです、急ぎましょう!」
爆発に巻き込まれなかった副砲の弾幕をかわしながら、左ウィングへと突き進んでゆく
◇◇◇
美鈴『主砲がバラバラです!使い物にならないです!』
パチェ『なんですってー!?そ、そんな馬鹿な・・・!!』
咲夜『霊夢は現在、左ウィングにむかっています。』
◇◇◇
「派手にいくぜ、スターダストレヴァリエ!」
「現世斬!」
大量の星が翼に風穴を開け、楼観剣が装甲を切り裂く
「ちょっと魔理沙!危ないじゃない!」
「ああー?気合で避けろ!」
メイド達も迎撃に出るが、圧倒的な火力の差にろくに抵抗も出来ないまま撃墜されていく
「あーもう、最高のストレス解消よ!パスウェイジョンニードル!」
よほど鬱憤が貯まっていたのか、満面の笑みで壊しまくる紅白、まるでどこかの妹様だ
◇◇◇
咲夜『左ウィング大破!被害面積、約74%!』
パチェ『げげっ!!』
美鈴『左右のバランスをくずしまくっています!』
レミィ『セイル収縮!右ウィングの浮力を下げなさい!!』
◇◇◇
左右のバランスが崩れ、方向を変え始める戦艦グングニル
『よくやった、あとはこのまま内部に突入してエンジンを破壊するんだ!』
「破壊しろったって、一体どこにあるんだ!?」
『艦橋の下の方だ、とにかく突入だ!』
「突入しろって言われてもねぇ・・・」
ぽりぽりと頭をかくアリス、下の方といわれても戦艦はあまりにも大きく
無理に突入しても迷って時間を無駄に潰すことは分かりきっていた
「けど待っている時間も――「幽々子様!」
霊夢の言葉をさえぎりながら楼観剣と白楼剣を構える妖夢
「庭師 魂魄妖夢!今助けにまいりますっ!!」
目にも映らぬ速度で剣を振り回し、側壁に大穴を開ける
「幽々子様ぁーーー!!」
どうやら幽々子が捕まっていることを今頃思い出したようだ
爆走する妖夢を霊夢達も必死で追いかける
◇◇◇
咲夜『霊夢が機材用通路を進んでいます。』
パチェ『何をする気かしら?』
リトル『道に迷ったの?』
パチェ『まって・・・いいことを思いついたわ。ふふ。』
◇◇◇
「妖怪が鍛えたこの楼観剣に、斬れぬものなど無ぁぁぁぁい!」
通路お構い無しに邪魔な障害物や壁を切り裂き、真っ直ぐに突き進む妖夢
「うーん、庭師の一念、壁をも通す・・・」
しかしエンジンルームに近づいてるかというと・・・むしろ遠ざかっていた
◇◇◇
パチェ『準備はいい?』
咲夜『本当にやるんですか?』
美鈴『ぷん。きっと後悔しますよ~。』
パチェ『うるさい!やつを倒すのは今しかないのよっ!』
パチェ『破壊兵器妹!フランドール・スカーレット発進っ!』
◇◇◇
ズドゥン!!
「何事!?」
轟音と共に姿を現したのは謎の鉄の塊
鎖でぐるぐる巻きにされており、魔法で封印を施されているようだ
「なんだこれ?」
「なんか書いてあるわよ?」
鉄の塊に書いてある紅い文字を読んでみる
「・・・フランドール・スカーレットのお部屋・・・」
四人の背筋に悪寒が走る、無意識に足が後ろに下がってゆく
「えーっと、別の道通らない?」
霊夢が引きつりながら皆に問いかける
「あ、ああ、そうだな、何もここを通らなくてもいいよな」
「そうね、安全な道を通りましょう、安全な・・・」
「そうですね、さ・・・早速道を作りましょう」
ゆっくりとその箱から離れ、背を向けると同時に・・・走るっ!
バシュゥゥゥン!・・・・・・ズドンッ!
同時に後ろから何かが切り裂かれ爆発する音が聞こえてくる
その音と同時に全速力で走り出す、最大限の恐怖が後ろから迫ってくる
「振り向くなよ、絶対に振り向くなよ!」
「妖夢、早く斬って!早く道を!」
後ろはもはやソドムかゴモラか
「うわああああああ!!」
一歩でもいい、遠くに逃げたい、その一心で師をも超える刀捌きで壁を斬り、道を作る
ズドォンッ!!ドガァンッ!!
容赦なく近づいてくる破壊音、微かに聞こえてくる笑い声が恐怖を煽る
◇◇◇
パチェ『あははははっ!壊せ壊せー!』
咲夜『あぁ、私達の戦艦が壊れていく・・・』
パチェ『細かいことは気にしないの!ガンガンいっちゃえー!』
リトル『(あぁ、私のパチェ様が壊れていく・・・)』
◇◇◇
「わわっ!」
何十枚もの壁を斬り、通り過ぎた時、アリスの足が無情にも縺れた
「ア・・・・・・」
名前を呼び、立ち止まって振り返る、ただそれだけの事
だが名前は出ず、立ち止まることも振り返ることも出来ない、いや、出来なかった
振り向いてしまえば視えてしまうから
視てしまえば恐怖に捕らわれてしまうから
恐怖に捕らわれてしまえば・・・・・・
「皆・・・待ってよ・・・」
捻った右足を押さえながら立ち上がる、そシテ背中をナニカに引っ張られル
「あ・・・・・・ああ・・・・・・」
振り向いてはいけない、振リムいてハイケなイ・・・フリ・・・ムイテ・・・ワ・・・
「・・・ネェ・・・アソボ?」
後ろから断末魔にも似た悲鳴が響き渡る
「アリス・・・アリスぅ・・・」
魔理沙は消え入りそうな声でその名を呼びながら走る
「大丈夫・・・彼女のことだもの、きっと生きてるわ・・・きっと」
ふと思い出が蘇る、弾幕勝負の時のアリス、一緒に食事をした時のアリス
嬉しそうに人形を見せるアリス、笑い、怒り、泣いていたアリス
彼女達の頬を涙が流れていく、しかしそれすらも許さないように、破壊音が再び迫ってくる
「霊夢さん、魔理沙さん、外です!」
妖夢が切り裂いた壁の向こうには空が広がっていた
「くっ・・・・・・」
強風に耐えながら外を見ると左側に艦橋が見えた、どうやら右ウィングまで来ていたようだ
「どうする!後ろはもう戻れないぞ!」
会話の最中にも刻一刻と近づいてくる破壊音
「わかってる・・・飛ぶわよ!」
そう切り出し、霊夢が大空に舞う、続いて魔理沙と妖夢も飛び出した
瞬間、右ウィング全体から爆発がおきる、耐久力の限界に達したようだ
その爆発の隙間を縫いながら艦橋になんとか到達した三人
「エンジンは下だったわね、二人とも、このまま壁に沿って下に向かうわよ」
「ちっ、敵がきっちり待ち構えてやがるぜ」
「なら全員、切り伏せるのみ!」
◇◇◇
美鈴『妹様の暴走で右ウィングが壊れましたっ!』
パチェ『ふ、ふ~んだ。左右が壊れて、丁度いいわっ』
レミィ『・・・・・・・・・』
咲夜『霊夢は外壁をつたって戦艦底部に向かうようです。』
◇◇◇
「霧雨魔理沙様の本領発揮だぜ!」
星が舞い、箒が駆け抜けてゆく
「上から下へ潜り抜けていくのは初めてね・・・なかなかいいかも」
くるりくるりと舞うように紅白が弾幕のカーテンを縫ってゆく
「またつまらぬものを斬ってしまったぁ!」
妖夢、それは違うと思うぞ
シュゥン!
「!?」
霊夢のすぐそばを巨大な砲弾が掠めていく
「くっ、まだ生きている砲台が・・・」
ならばもう一度切り捨てるのみと妖夢が刀を構える
だが、それを待ち構えていたかのようにメイド達が弾幕を一斉に放つ
「うわっ・・・とっと」
身を翻し何とか弾幕を回避する
「砲台はこっちを狙ってるし、回りは敵だらけ・・・絶体絶命ね」
「諦めるのはまだだぜ霊夢!あれに入るんだ!」
魔理沙が飛び出して向かった先には・・・
◇◇◇
美鈴『ややっ!?霊夢達がレーダーから消えました!』
パチェ『見失った!?探せ探せー!』
レミィ『雲の中に紛れたようね・・・。そのうち出てくるわ。』
◇◇◇
「雲の中までは追っかけてこないようね」
後ろを振り返りながら白い雲を突っ切っていく
「これで雲の下までノンストップだぜ」
「もうすぐ雲を抜けますよ!」
そのまま雲を突き抜けると、眼下には橙色に染まる湖が見えてきていた
「お、霊夢、戦艦の底が丸見えだぜ」
「どうします?扉でも探しますか?」
「そうね、無かったら斬ればいいし、行くわよ」
◇◇◇
咲夜『霊夢は戦艦底部を進行中。』
パチェ『手薄なところね・・・しかし風が強い。』
リトル『寒い』
咲夜『高い』
美鈴『怖いです。』
パチェ『・・・・・・・・あなたたち。』
◇◇◇
「寒くて高くて怖いぜ」
ぽつりと魔理沙が呟く
「寒いとはよく聞くけど・・・『誰か返事をしてくれーーー!!』
いきなり通信機から慧音の声が響く、調子の悪い通信機だ
「わわっ、驚かせないでよ!」
『ああ、やっと通じたか、今どこにいるんだ?』
「船の底よ、扉は・・・今見つけたわ」
ふと霊夢が見つめる先に、丁度中に入れそうな扉があった
『底か、ならその扉から中に入って大きな音がするほうに――。』
途端に通信が途絶える
「音?慧音?慧音ー!・・・駄目ね、通じない」
「音がなんだって?」
「大きな音がするほうにって・・・とりあえず向かいましょう」
扉を開け、内部に入ると騒音が鳴り響いていた
「なるほど・・・うるさすぎて耳栓がほしいぜ」
「右斜め先の方から音が出ていますね」
「よし、じゃんじゃん斬っちゃって」
「はい!」
◇◇◇
咲夜『霊夢達がリアクターに向かっています!』
美鈴『動力がなくなったら今度こそアウトですよ!!』
パチェ『大丈夫よ。リアクターはどんなスペルも受け付けないわ!』
リトル『直接エンジンを壊さなければ無敵だね。』
パチェ『しぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!余計なこといわないでー!』
◇◇◇
キィン!
剣閃が壁を切り裂き、そして崩れる、その先には巨大な部屋があった
「ここが・・・エンジンルームか?」
部屋を見渡す、すると大量の毛玉が箱のようなものに閉じ込められていた
「これで動かしているのかしら?」
箱の中では毛玉が回転して魔力のようなものを作り出しているようだった
「妖夢?」
ふと魔理沙が直立不動で動かなくなっている妖夢に気づいた
「幽々子でも見つか・・・・・・・・・・・・」
その視線の先にあるものを見て絶句する二人、まさに我が目を疑う光景であった
「うう・・・伝説の銘菓、伝説の銘菓~・・・」
視線の先にあったのは箱の中で走り続けている幽々子の姿
簡単に説明すれば、馬の先にぶら下げられている人参とハムスター用の滑車を思い浮かべてほしい
「アホね」
「アホだな」
しかしアホの一念戦艦をも飛ばす、ぺたぺた走ってるようにしか見えない幽々子だが
実を言うとその滑車は逆回転してるように見えるぐらい高速で回転していた
「たぁすけてぇ~・・・」
その様子に呆れる二人に聞きなれた声が飛び込んでくる
「・・・・・・・・・・・・・・・」
二人はその声の先を見るや否や、言葉も出なくなってしまった
「霊夢ぅ~、魔理沙ぁ~、ここから出してぇ~」
声の元は八雲紫、説明すると冒頭で行方不明になっていた妖怪である
どうやら水晶の中に閉じ込められていて、その魔力でエンジンをどうにかしてるらしい、原理は不明
この大量のエンジンをどうにかするほどの魔力は驚嘆に値するものなのだが・・・
「お菓子~」「助けてぇ~」
方や冥界の主、方や幻想郷最強とも名高い大妖、その二人がこんな状態である
霊夢と魔理沙は心底思った、帰りたい・・・と、その時だった
キィィン!
エンジンルームに一筋の剣閃が走った
「ふ・・・ふふふ・・・あはははは、あーっはっはっはっは!」
いきなり妖夢が笑い声を上げ、目に見えるもの全てを切り裂き始めたのだ
ずっと仕え続け、姿をくらましてからは夜も寝ずに探し続けていた主が
銘菓に釣られて滑車の中で走り続けていたのである、それを見て何かが切れてしまったのか
「皆・・・皆斬れてしまえぇぇぇ!!」
一心不乱に前後左右に剣閃を飛ばしまくる、その速度と切れ味からして破壊兵器妹よりも性質が悪い
「こいつはやばいぜ霊夢!」
魔理沙がふと霊夢の方を見るとすでにそこに霊夢の姿は無かった
「なにぼーっとしてるのよ、早くこっちに来なさい!」
すでにエンジンルームの片隅にあったエレベーターに逃げ込んでいたのだ
「あれ?前もこんなことあったような・・・おおっと」
妖夢の剣閃をかわし、デジャ・ヴを感じながらもエレベーターに何とか駆け込む
「二人とも、見捨てないでぇー!」
紫が何か叫んでいたが聞こえないフリをした
◇◇◇
咲夜『エンジンを破壊されました!』
美鈴『動力である毛玉達(+幽霊)が逃げていきます~!』
パチェ『ええぃ、何をやっているのよー!』
◇◇◇
・・・エレベーターが上昇を続ける
「これはどこに向かってるんだ?」
「ん」
壁を指差した先には「紅魔館直通」と書いてあった
「ハハハ・・・」
ウゥゥン・・・・・・エレベーターが停止し、その先に見えたのは紅魔館の門だった
「やっと着いたわね」
霊夢が紅魔館を見上げ、右手に針を持ち直す
その時すさまじい揺れが彼女たちを襲った
「こいつは・・・いよいよやばくなってきたぜ」
おそらく妖夢がエンジンを完全に破壊したのだろう、船中で爆発が起きてるようだ
「落ちるまでにレミリアをとっ捕まえればいい話よ」
「そうだな」
二人の少女が覚悟を決め、紅魔館の門をくぐった
「これは・・・紅魔館なのか?」
すでに館の内部も外の戦艦と同じように鉄で覆われていた
二人は館の中に残っていたメイド達を倒しながらその中を進んでいく
咲夜『各部の機能が低下しています!第3、第5エンジン停止!』
「!・・・今のは咲夜の声?」
館の中に司令部の声が響き渡る
美鈴『もうぼろぼろです!すぐに落ちちゃいます!』
「急ごう霊夢!時間が無い!」
「わかってるわ、でも・・・」
どこから沸いて来るのか、館のメイド達が彼女たちの前に立ちふさがり続ける
レミィ『(不覚・・・だがやむをえまい)」』
レミィ『クルー全員に告ぐ!至急本艦より脱出せよ!!』
主の命令は絶対、しかしそれでもなお行く手を阻むメイド達
「ち、慕われてやがるぜ」
「そうね」
弾幕を弾幕で相殺しながら少しずつ前に進み行く
パチェ『あひぇー!この艦はもうだめよ!!私は逃げるわー!』
リトル『(あ、あひぇー?)』
「・・・あひぇー?」
「あひぇー・・・ねぇ」
パチェ『じゃ、私は逃げるわ!悪く思わないでー!』
レミィ『さあ、次はあなた達が逃げる番。』
咲夜『いえ、最後までお付き合いさせていただきます!』
美鈴『霊夢をぎゃふんといわせて、それからみんなで逃げましょう!』
レミィ『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
レミィ『・・・死に損ないどもめ。勝手にするがいいわ。』
レミィ『(・・・すまない)』
「ちぇ、あんなやりとり私もやってみたいぜ」
「そうね、羨ましいわ」
廊下の先の大きな扉が近づいてくる、館の奥に近づいてきたようだ
「どうする?まだ引き返せるぜ?」
「ここで引き返したら彼女達に悪いでしょ」
「だな」
軽く言葉を交わし・・・扉を蹴破った
「まて、霊夢!!」
「こっからさきには通しません!」
部屋の中に立ちふさがるは、完全で瀟洒なメイド 十六夜 咲夜
そして紅魔館の門番 華人小娘 紅 美鈴
対峙し、一時の静寂が流れ・・・動き出す
「手加減は無しよ、夢想封印 集」
「一気にいくぜ!ノンディレクショナルレーザー!」
「ミスディレクション!」
「虹符、彩虹の風鈴!」
札が、光が、刃が、虹が、それぞれに舞い、幻想的な空間を作り出す
しかしその戦いを阻むかのように揺れ、爆発を起こす館
「これ以上通させはしません!セラギネラ9!」
「いよいよ時間が無くなってきたわね・・・二重大結界!」
捲き起こる爆発の中で戦い続ける二人と二人
「・・・こうなったら、いくしかないぜ!」
魔理沙が自分の体に膨大な魔力を溜め始める
「あれは・・・何をする気!幻符、殺人ドール!」
それに感づいた咲夜のナイフが魔理沙に迫りゆく
「ブレイジングスター!!」
叫び声と共に魔理沙が光に包まれ彗星となって突進する
ナイフを全てはじき、さらに速度を上げて咲夜に迫る
「回避が・・・間に合わないっ!」
「咲夜さんっ!」
その瞬間、美鈴が二人の間に立ちはだかる
「いっけぇぇぇー!!」
戦闘でボロボロになった部屋に、倒れている一人の従者と門番
「うっ・・・」
「あい・・・たたたたた」
何とか痛みに耐えながら二人とも立ち上がる
しかしすでに霊夢と魔理沙の姿は無かった
「美鈴・・・さすがにあれは無茶ってものよ」
「あ、はは・・・やっぱりそうですかねぇ」
互いに顔をあわせ、無事を確認するように会話を交わす
「お嬢様、あとはお願いします・・・」
「駄目な私達はお先に失礼しますっ」
最後の部屋へ続く通路を駆ける霊夢、魔理沙の姿は無く、探す時間も無かった
だけど魔理沙があのぐらいでくたばるはずが無い、そう信じて先へ進む
そして最後の扉の前に立つ、深呼吸をして・・・扉を開ける
「これが最後よ!霊夢!!いざ勝負!!」
声と共に霊夢の目の前に剣が突き刺さる
「剣で勝負ってことね・・・この勝負受けたわ!」
剣を抜き、構える、レミリアが飛び、霊夢の前に降りる
「はああっ!」
掛け声と共にレミリアが一気に踏み込んでくる
「甘いわっ」
瞬間、剣を飛び越え、レミリアの背後を取る霊夢
着地と同時に剣を振り下ろす、がその先にはすでにレミリアの姿は無い
「速い・・・」
一瞬で距離を取り、剣を向けるレミリア、互いに力を見極め、膠着状態となる
それでもなお二人を急かす様に揺らぎ、爆発する館
「時間が無い・・・楽しみたかったけど、これで終わりよ」
右手に力を込めるレミリア
「・・・そうね、これが最後よ」
態勢を低くし、剣を構える霊夢
刹那、二人の間に爆発が起こる
その爆発を吹き飛ばすかのようにレミリアが突っ切る
「もらった!」
運命を読む能力、その力で爆発を読んでいたのか、虚を突き、右腕を振り上げる
「それを待っていたのよ!」
振り上げた瞬間、その一瞬にあわせて霊夢は一歩を踏み出す
振り下ろされた右腕が左肩と衝突し、鈍い音が体に響く
それでも踏み込みの勢いを止めることなく、剣をレミリアの胸に――突き立てた
「はぁ・・・はぁ・・・うぐっ!」
左肩を抑えてうずくまる、腕といえども怪力の吸血鬼の一撃は相当な破壊力だった
「くっ・・・」
何とか立ち上がり、顔を上げた、しかしその先に倒れているはずのレミリアの姿が無い
慌てて周囲を見渡すがどこにもいなかった
「はぁ・・・終わったのね」
ほっと上を見上げる、そしてそれを見て私の体が強張る
そこには胸に私の剣を刺したまま、迫り来る紅い悪魔の姿があった
「「霊夢!!」」
声が重なる、一つはレミリアの声、ならばもう一つは?
ふと、そんな疑問が頭を駆け巡る
「掴まれ!」
ああ、考えるまでも無かったな、と答えが出る、そして伸ばされた手をしっかりと掴んだ
その瞬間、私がさっきまで立っていた場所に剣が突き刺さった
「逃がさない!」
「逃げきってみせるさ!」
霊夢をしっかり捕まえて全力で飛ばす
すでに崩壊しかけている通路を弾幕の隙間を縫うように
しかし視界の横に紅いものが飛び込んでくる
「スカーレットシュート!」
「くっ!」
通路の床ぎりぎりまで下降して回避する、全速で飛ばす私に追いつくどころか
そのまま撃ってくるなんてこいつは化け物か?・・・化け物だったな
「もらった!」
いつの間にか私の真上にまで追いつき剣を振り下ろしてくる
「甘いぜ!」
一気に体を右に捻る、剣が私の帽子を切り裂いていく
しかし私の目の前に障害物が迫ってきていた、何とかかわしたものの速度を落とす
チャンスとばかりに一気に距離を詰めてくるレミリア
「くっ・・・」
だがその時、レミリアの顔が苦痛にゆがんだ、そうか、まだ外は日が出ている
そしてその光はすでに届く位置に来ていた・・・両手に力を込め、その光に向かって真っ直ぐに飛ぶ
ふと後ろを振り返ると、遠く離れていくレミリアの姿があった――。
夕日を浴びながら、戦艦が落ちてゆく
ゆっくりと湖に着水した戦艦は、静かに静かに沈んでいった
<登場人物>
紅白の戦士 博麗 霊夢
黒白の戦士 霧雨 魔理沙
みょんな剣士 魂魄 妖夢
七色の戦士 アリス・マーガトロイド
鳳凰の戦士 藤原 妹紅
スカー「「「「「「「「そこまでよ」」」」」」」」
魔理沙「げっ、まだいやがった!」
フラン「私もいるよー」
スカー「我らスカーレッツに敗北は・・・って妹様、まだ出番ではありません!」
フラン「え、でも原作『『『テイクオフ!』』』
ALL「ギャーーー」
スカーレット卿 レミリア・スカーレット
艦長 パチュリー・ノーレッジ
オペレーター1 十六夜 咲夜
オペレーター2 紅 美鈴
艦長の僕 リトル
破壊兵器妹 フランドール・スカーレット
霊夢「砲台はこっちを狙ってるし、回りは敵だらけ・・・絶体絶命ね」
魔理沙「諦めるのはまだだぜ霊夢!あれに入・・・」
妖夢「雲ひとつない夕空ですね」
霊夢&魔理沙「・・・・・・・・・」
ハクタク司令官 上白沢 慧音
エンジン 西行寺 幽々子&毛玉ーズ
リアクター 八雲 紫
リアクターの式 八雲 藍
八雲 藍の式 橙
湖の妖精達 チルノ&大妖精
永遠亭の主 蓬莱山 輝夜
主の従者 八意 永琳
主の従者の弟子 鈴仙 優曇華院 イナバ
アリス「あら、こんな所に部屋があるわ?」
魔理沙「おお、魔道書が一杯だぜ!」
パチェ『見つけられたか・・・』
美鈴『なんですか?ここは。』
<スタッフ>
監督・製作 八意 永琳
製作・録音 因幡 てゐ
編集 上白沢 慧音
撮影 八雲 紫&リグル・ナイトバグ
幽々子「あー、なんかいい臭い~」
妖夢「幽々子様、そっちには何も・・・って隠し部屋!?」
美鈴『あああぁぁ!私のへそくりのメロンパンとイチゴジャムがあぁぁぁ!』
パチェ『あなたそんな物を溜め込んでいたのっ!お馬鹿ー!』
リトル『(・・・おいしそう)』
音楽 プリズムリバー三姉妹
メインテーマ ミスティア・ローレライ
小説ナレーター 上白沢 慧音&博麗 霊夢&霧雨 魔理沙
製作会社 香霖堂
<エキストラ>
紅魔館門番隊 紅魔館メイド隊
毛玉ーズ 永遠亭の因幡達
<THE END>
いやぁ、映画ってホントいいものですね。
スーファミのピンクの丸いやつでしたか…。
『格闘王への道』はトマト0個でどこまでいけるか何度も挑戦したものです。
紅魔館の面々のやりとりがとても秀逸でした。
紅魔館の面々の台詞を読んだ瞬間元ネタがわかってしまったが、さすがに芸が細かいw あとパチュのヘタレっぷりには爆笑www
スタッフロール。夕日を背に空を駆る巫女と魔女のシルエットって、なんかよさげですね
パチュリーが壊れ気味で駄目指揮官ぷりはちょっと役的に可哀想だと思いましたがまぁ他の作品等で良い役なのでこれぐらいはいいですよね。
美鈴が結構良い役でしたね。最近美鈴の扱いが微妙に良くなっている気がします。全ての東方作品を通して。
もこたん可愛いよもこたん。
フランとか、幽々子と紫とか、「あひぇー」とか(笑)。
NG集の魔道書とかへそくりとか(笑)。
てか、「エンジン 西行寺 幽々子&毛玉ーズ」・・・「エンジン」て(笑)。
こういうの、かなり好きな部類です。
・・・あれ?アリスって・・・やっぱ死んだ?(汗)
・・(財布検索中)・・・
・・・すいません、予約h(バキッ
ピンクの悪魔シリーズで一番感動した作品だったのでうれしかったなぁ・・w
ってか、紫や幽々子の扱いがw
すごい面白かったです♪
あの名ゲームを東方にですか・・・なかなかキャラもあっててよかったです。
個人的には幽々子様最高!
逆回転してるように見えるってどれだけ早いんでしょうか。
きっと彼女の上に乗ったら星が打てるようになるんですよw
いやぁ、映画ってホントいいものですね。
それではみなさん、さよなら、さよなら、さよなら。
個人的に、「寒い」「高い」「怖いダス!」の台詞がお気に入り。
言いたい事は既に言われちゃってますが、とにかく面白かったです。
つーか、お値段高いなぁ(笑)
メタナイトの逆襲は屈指の燃えストーリーだったと思います。
さーて、久しぶりにスーファミ引っ張り出してみるかーw
会話文聞きながらプレイしてると、よく壁にはさまれたものです。
決闘バトルが一番好きでした。あのはらはらする感じが特に。
動力源がゆゆさまとは…。その扱いにちょっとカナシス(笑)
違和感のなさがステキです。ていうか紫と幽々子とアリス…。あ、もこは問題ないd(正直者の死
後で久々にワンプレイやってきます♪
もう少し練りこんで欲しかった
最高です。
何度もやり直した記憶があります
面白い具合にキャラがはまってますね
次回のピンクボール作品をものすっご期待しています!
ラストのメタ○イトは強かった。
…そういやあの鳥指揮官、名前ありましたっけ?
次は洞窟大作戦か格闘王への道あたりに挑戦していただきたいものです
てことは、もこたん雛とか守ってたのか?
DXは最高ですよね!(*´∀`)
燃えたなぁ・・・・・。
自分は剣があればチャンピオンになれますね。(剣が好きなので。
早食いとか星割ったりするのも好きでしたねぇ。
しかし東方ここまで再現するなんて貴方は凄いですねぇ。
あの衝撃波とか竜巻とか乱れ突きとか、いや欲張りすぎました、すいません。
あとは原作とキャラのパロが見事にあってて面白かったです。次作に期待age
またやりたくなってきましたよー。
配役がバッチリ合っていて良かったです。
大彗星ノヴァを是非カリスマ溢るるボスキャラとかでw(別にどのキャラでも構いませんが
原作ぶち壊したってください!!!
次回作も期待age
ものすごく久々にDXやりたくなったので、今からプレイしてきます~
あと私でよろしければ、もこたんの彼氏になってもいいですy(ヴォルケイノ
アレは名作ですよねぇ。
『・・・死に損ないどもめ。勝手にするがいい』
ってとこのシーン大好きなんで、それが咲夜と美鈴で良い感じに合っていたのが良い!
勿論あひぇー! と言いながら逃げるパチュリーも好きです
GJです!
感激だー!
パチェ壊れすぎ
・・・やりたくてももうSFCがない。
懐かしついでに調子扱いて調べてみました。元ネタ知らない方へ
ttp://knml.gooside.com/siryou/sdx-meta.htm
リトル『大変!大変!どうしよぉ!』のところで悶絶しました。
学校のパソコンで見ているにもかかわらず、腹抱えて大爆笑でした。
ほかの作品のも作ってほしいと思うのは欲張りでしょうか?
次回作を作ってくれることを期待します。
VS咲夜&明鈴が個人的には一番きました。
脱出シーンもカッコよかったです。
やっぱりメタナイトの逆襲でしたか。懐かしいな~。
アリスの最後で爆笑しましたw
ナイトメアの逆襲でしたっけ?もとでは?
妹紅でダイナブレイドの代わりにするとはw
あと、あの隠し部屋二つの中身が東方風に変わっているのにもうけましたw
原作は全クリしましたからねw
銀河に願いをの方も読ませていただきました。
すごく面白かったですw
これとのクロスオーバーをするとはものすごい盲点っ!
レビュー通り、あなたは最高だっ!
もう一度読んで更に受けましたw
メタナイトと銀河は無駄に何度もやったな~。
このあと、小悪魔は霊夢に挑戦するもたこ殴りにされるんでしたっけ?
さんざんやっても飽きないんだよなあ。
ワドルディ好きだったな~
真面目な話がなんとなくコミカルに見えるあたり、幻想郷と案外あっているのかもしれません。
色々と素敵。
蛇足ですが個人的に小悪魔がツボでした。
なかなかセンスを感じましたね・・・。
もちろんメインもおもしろかったですよ♪
レミィ『(・・・すまない)』
なんというカリスマ。流石ヘタレミリア。間違えたメタレミリア。
すっごく面白かったですよ。
パチェとリトルにやられっぱなしでした。
ストーリーも面白かったです。
やっぱ卿かっこいいなww
ところで今でも映画の予約は請けたまって(ry
ナツカシイナー
あのメタナ〇のツやり取りは秀逸でしたよね。実は私は友人宅で見ただけで、SFのピンクボールは未プレイなんですが、『死に損ないどもめ』のシーンはしっかりと覚えてます。
あの名場面を紅魔館メンバーで再現なさるとは。GJ!
というか、幽々子様はもはやグングニルのエンジンを運命付けられているのですね。
ピンクの悪魔と東方って、意外に合うんですよね。
個人的には、好きなシリーズの神ゲームを選んでくれて最高です!作者さんとは、気があいそうです。
へそくりの部屋のセリフが好きですw