「“DEATH NOTE”……“このノートに名前を書かれた人間は死ぬ”……ねえ」
「どうせこんなの、どっかの子供の悪戯だろ? そんな都合の良い物があるわけない」
「でもこれ、悪戯にしては手が込みすぎていると思わない? 大体、この幻想郷に英語を知ってる子供なんているかしら」
「それはまあ……確かに」
―――とある日の、昼下がり。
いつものように妹紅と殺し合いをしていた輝夜は、竹林に一冊の黒いノートが落ちているのを見つけた。
輝夜がそれを手に取り、中を見てみると、その裏表紙にはやたらと細かいルール――このノートで人を殺すための――が、なぜか英語で記載されていた。
今は妹紅も一時休戦して、輝夜と一緒にその記載を眺めている。
「……要するに、殺したい奴の名前をこのノートに書けば、そいつが四十秒後に心臓麻痺で死ぬ……ってことらしいわ」
「ふーん……まあ、本当だったら凄いけどな」
「まあねぇ」
ぱらぱらとページをめくりながら、妹紅の言葉に相槌を打つ輝夜。
一方妹紅は、早くもノートに対する関心が薄らいできたようで、別の話題を口にした。
「……ところでお前、英語読めたんだな」
「ああ、暇な時に永琳から習ったのよ」
「へー、あいつ、英語なんか出来たのか」
「英語と独語は医者には必須だからね」
そんな雑談を交わしながら、軽い筆致でさらさらとノートの一ページ目に何かを書き出す輝夜。
「ん? 何書いて……」
それに気付いた妹紅が輝夜の手元を覗き込むと、
藤原 妹紅
と、整った楷書体で書かれた自分の名前が目に入った。
「へぇ、なかなか達筆だな」
「でしょ? これも永琳直伝よ」
「私も今度、慧音に習おうかな……って何書いてんだこらぁあああ!!!」
阿吽の呼吸でノリツッコミをかましながら、輝夜の胸倉を掴む妹紅。
「いや、だって実際に試してみないと分かんないじゃない。このノートがただの悪戯なのか、あるいはそうじゃないのか」
「だからって、何で私の名前を書くんだよ!」
「だってあなたなら、仮にここに書いてあることが本当だったとしても問題ないし」
「アホか! だったら自分の名前を書けよ!」
「嫌よ。不死人でも死ぬのは痛いもの」
「て・め・え……!」
平然と言う輝夜を前に、妹紅のこめかみに青筋が走る。
そして頬をひくひくと引き攣らせながら、輝夜の胸倉を一層強く締め上げようとしたとき―――。
「うっ!?」
突如、妹紅の顔色が変わった。
「う……ぐ……」
妹紅は苦しそうに呻きながら、輝夜の胸倉から手を離すと、自身の胸部―――心臓のあたりを押さえ、そのまま地面にうずくまってしまった。
「………………」
そして間もなく、ぴくりとも動かなくなった。
「…………」
半ば呆然としながら、その一部始終を見ていた輝夜は。
「……す、すごい!!」
そう叫び、喜色に満ちた笑顔を浮かべると、ノートを天高く掲げ上げた。
「ま、まさか……本物だったなんて……」
信じられないと言わんばかりに、ノートをまじまじと見つめる輝夜。
それから程無くして、彼女の背後でむっくりと人影が起き上がった。
「―――輝夜てめぇ! 何てことしやがる!」
もこたん復活。
信頼と実績のリザレクションである。
「ああ、どうもご苦労様。あんたのお陰で、このノートが本物だってことがよく分かったわ」
対する輝夜も慣れたもので、顔色一つ変えることなく、平然と対応する。
「て・め・え……」
しかし当然、それではいそうですかと引き下がる妹紅ではない。
このままでは死に損もいいところだ。
「……そうだ」
そのときふと、妹紅は何かを思いついたように、にやりとほくそ笑んだ。
そして。
「あっ!」
「え?」
突然、妹紅はびしっと空を指差した。
つられて思わず、その方向を見やる輝夜。
「隙あり!」
その瞬間、妹紅はすかさず、輝夜の手からノートとペンを奪い取った。
「あ!?」
「ふはははは! 死ねぇ! 輝夜!」
輝夜が気付いたときには、既に妹紅はノートにペンを走らせようとしていた。
「し、しまっ……!」
今からではもう間に合わない。
輝夜は覚悟を決め、目を瞑った。
……のだが。
「…………?」
もうとうに一分は経っただろうに、自分の身体には何の変化も起こらない。
不思議に思った輝夜が目を開けると、極めてばつの悪そうな表情をした妹紅と目が合った。
「ど……どうしたのよ。やるなら、さっさとやりなさいよ」
「い、いや、それが、その……」
「……?」
どうにも歯切れが悪い妹紅に、首を傾げる輝夜。
今更自分を殺すことに、何を躊躇する必要があるというのだろう?
輝夜が胡乱な眼差しを向けていると、やがて妹紅は気恥ずかしそうに口を開いた。
「な、なあ……輝夜」
「……何よ」
苛立たしげに言葉を返す輝夜に対し、妹紅は消え入りそうな声で尋ねた。
「……“ほうらいさん”の“ほう”って、どんな字だっけ?」
了
もっとも、それ以前に唐突なデスノート幻想入りに在りがちにも程がある落ちじゃ流石に評価は……
あとこの短さで話の筋をしっかり押さえられるあなたが妬ましい…。
そしてあけましてリザレクおめ!今年もよろしくおねがいします
あなたのリザを待ってました。
よってこの話に矛盾点は存在しない。
あれ?もこたんのスペルに蓬莱人形ってあったよな…?
いいか、ほうらいさんってのはなぁ!……ほーらいさん、ってのは、なぁ;