Coolier - 新生・東方創想話

不死と死のさかいめ

2010/01/01 02:55:25
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「“DEATH NOTE”……“このノートに名前を書かれた人間は死ぬ”……ねえ」
「どうせこんなの、どっかの子供の悪戯だろ? そんな都合の良い物があるわけない」
「でもこれ、悪戯にしては手が込みすぎていると思わない? 大体、この幻想郷に英語を知ってる子供なんているかしら」
「それはまあ……確かに」


 ―――とある日の、昼下がり。


 いつものように妹紅と殺し合いをしていた輝夜は、竹林に一冊の黒いノートが落ちているのを見つけた。
 輝夜がそれを手に取り、中を見てみると、その裏表紙にはやたらと細かいルール――このノートで人を殺すための――が、なぜか英語で記載されていた。
 今は妹紅も一時休戦して、輝夜と一緒にその記載を眺めている。

「……要するに、殺したい奴の名前をこのノートに書けば、そいつが四十秒後に心臓麻痺で死ぬ……ってことらしいわ」
「ふーん……まあ、本当だったら凄いけどな」
「まあねぇ」

 ぱらぱらとページをめくりながら、妹紅の言葉に相槌を打つ輝夜。
 一方妹紅は、早くもノートに対する関心が薄らいできたようで、別の話題を口にした。
 
「……ところでお前、英語読めたんだな」
「ああ、暇な時に永琳から習ったのよ」
「へー、あいつ、英語なんか出来たのか」
「英語と独語は医者には必須だからね」

 そんな雑談を交わしながら、軽い筆致でさらさらとノートの一ページ目に何かを書き出す輝夜。
 
「ん? 何書いて……」

 それに気付いた妹紅が輝夜の手元を覗き込むと、


    藤原 妹紅


 と、整った楷書体で書かれた自分の名前が目に入った。

「へぇ、なかなか達筆だな」
「でしょ? これも永琳直伝よ」
「私も今度、慧音に習おうかな……って何書いてんだこらぁあああ!!!」

 阿吽の呼吸でノリツッコミをかましながら、輝夜の胸倉を掴む妹紅。

「いや、だって実際に試してみないと分かんないじゃない。このノートがただの悪戯なのか、あるいはそうじゃないのか」
「だからって、何で私の名前を書くんだよ!」
「だってあなたなら、仮にここに書いてあることが本当だったとしても問題ないし」
「アホか! だったら自分の名前を書けよ!」
「嫌よ。不死人でも死ぬのは痛いもの」
「て・め・え……!」

 平然と言う輝夜を前に、妹紅のこめかみに青筋が走る。
 そして頬をひくひくと引き攣らせながら、輝夜の胸倉を一層強く締め上げようとしたとき―――。

「うっ!?」

 突如、妹紅の顔色が変わった。

「う……ぐ……」

 妹紅は苦しそうに呻きながら、輝夜の胸倉から手を離すと、自身の胸部―――心臓のあたりを押さえ、そのまま地面にうずくまってしまった。

「………………」

 そして間もなく、ぴくりとも動かなくなった。

「…………」

 半ば呆然としながら、その一部始終を見ていた輝夜は。

「……す、すごい!!」

 そう叫び、喜色に満ちた笑顔を浮かべると、ノートを天高く掲げ上げた。

「ま、まさか……本物だったなんて……」

 信じられないと言わんばかりに、ノートをまじまじと見つめる輝夜。 
 それから程無くして、彼女の背後でむっくりと人影が起き上がった。

「―――輝夜てめぇ! 何てことしやがる!」
 
 もこたん復活。
 信頼と実績のリザレクションである。

「ああ、どうもご苦労様。あんたのお陰で、このノートが本物だってことがよく分かったわ」

 対する輝夜も慣れたもので、顔色一つ変えることなく、平然と対応する。

「て・め・え……」

 しかし当然、それではいそうですかと引き下がる妹紅ではない。
 このままでは死に損もいいところだ。

「……そうだ」

 そのときふと、妹紅は何かを思いついたように、にやりとほくそ笑んだ。

 そして。

「あっ!」
「え?」

 突然、妹紅はびしっと空を指差した。 
 つられて思わず、その方向を見やる輝夜。

「隙あり!」

 その瞬間、妹紅はすかさず、輝夜の手からノートとペンを奪い取った。

「あ!?」
「ふはははは! 死ねぇ! 輝夜!」

 輝夜が気付いたときには、既に妹紅はノートにペンを走らせようとしていた。
 
「し、しまっ……!」

 今からではもう間に合わない。
 輝夜は覚悟を決め、目を瞑った。
































 ……のだが。


「…………?」

 もうとうに一分は経っただろうに、自分の身体には何の変化も起こらない。
 不思議に思った輝夜が目を開けると、極めてばつの悪そうな表情をした妹紅と目が合った。

「ど……どうしたのよ。やるなら、さっさとやりなさいよ」
「い、いや、それが、その……」
「……?」

 どうにも歯切れが悪い妹紅に、首を傾げる輝夜。
 今更自分を殺すことに、何を躊躇する必要があるというのだろう?

 輝夜が胡乱な眼差しを向けていると、やがて妹紅は気恥ずかしそうに口を開いた。

「な、なあ……輝夜」
「……何よ」

 苛立たしげに言葉を返す輝夜に対し、妹紅は消え入りそうな声で尋ねた。




































「……“ほうらいさん”の“ほう”って、どんな字だっけ?」





いざ書こうとしたら書けない漢字って結構ありますよね。



ちなみに、これ書き終えてからこの作品を根本から否定するルールがあったことに気付きました。


「人間界単位で124歳以上の人間をデスノートで殺す事はできない」


……。


幻想郷ではデスノートは殆ど無力ということですね、分かります。
さらに言えば、そもそも対象が「人間」っていう時点で殆ど無意味ですけどね。
まあその辺のルールは幻想入りした時に緩和されたということでどうかご容赦を……。


それから私も、本作をもちまして正式に復活したいと思います。リザレクションです。
まあ少し前に四作もたて続けに投稿しといてこう言うのもなんですが……。
ともあれ、今後とも宜しくお願いします。

それでは、最後まで読んで下さり、本当にありがとうございました。
以下はおまけになります。よかったらどうぞ。




◇  ◆  ◇  ◆  


「何故だ……何故死なない!」
「妖精だから死んでもすぐに再生しますと何度も言ったはずです」
「罠だ、これは罠だ! 大ちゃんがあたいを陥れるために仕組んだ罠だ! ノートに名前を書いても死なないというのはおかしいじゃないか! それが罠だという証拠」
「氷精チルノ……もう無駄な足掻きは止めて下さい。あなたがキラです」
「ぐっ……! ま、まだ……! レティ! レティはどうした!?」
「レティ・ホワイトロックはまだ来てません」
「まだ来てない!? もう一月だぞ! 何をやってるあの黒幕め!」
「……ねえ、チルノちゃん」
「え?」
「私、もうそろそろ飽きてきたんだけど……この“デスノートごっこ”」
「えー、そんなつれないこと言わないでよ~。折角ここからが面白いとこなのに」
「だってぶっちゃけ再生するの疲れてきたし……」
「もう! 何惰弱なこと言ってるの、大ちゃん! さあもう一回最初から」
「えぇ……もう勘弁してよ~。……ってもう名前書いてるし……はあ」


おしまい



P.S.
>>23様
フォローありがとうございます。
確かに肉体年齢が124歳以上、と考えればそういう解釈も十分成り立ちますね。
後半の指摘に関しては……単純にもこたんは漢字に弱かった、ということで……。

今回は一番基本的なルールだけで話を作りましたが、いつかすごい細かいルールを複雑に絡めたようなデスノネタも書いてみたいですね。
ただ問題はそこまでしてノートを使う動機が東方キャラにあるかという点ですが……。
まりまりさ
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コメント



0.2210簡易評価
3.10名前が無い程度の能力削除
外来人や妖怪が日本人とは限りませんし、スペルカード等を考えても普通に英語を解す子供は多いのでは?

もっとも、それ以前に唐突なデスノート幻想入りに在りがちにも程がある落ちじゃ流石に評価は……
15.100削除
あとがき含めてこれは面白かった。新年早々いいものを読ませていただいたぜ!
あとこの短さで話の筋をしっかり押さえられるあなたが妬ましい…。

そしてあけましてリザレクおめ!今年もよろしくおねがいします
16.100名前が無い程度の能力削除
この短かさでこの面白さ。素晴らしい。
あなたのリザを待ってました。
23.90名前が無い程度の能力削除
輝夜と妹紅は『百二十四年以上生きている』が成長は十○歳で停止しているのでそのルールに縛られない。
よってこの話に矛盾点は存在しない。

あれ?もこたんのスペルに蓬莱人形ってあったよな…?
29.80名前が無い程度の能力削除
大ちゃんの場合、何て名前を書くと死ぬんだろうか……
32.100名前が無い程度の能力削除
久しぶりに笑いました
34.100名前が無い程度の能力削除
バナナ☆粉バナナ☆さるのが字を書けるなんて!
35.90名前が無い程度の能力削除
小町ちゃんも持ってるのか?
38.70ずわいがに削除
輝夜の苗字わからんとかどんだけー!?
いいか、ほうらいさんってのはなぁ!……ほーらいさん、ってのは、なぁ;