門の前で抜筋骨に勤しんでいたら、俄かに辺りが騒がしくなり始めました。
「マジやべえって! 何なのあいつマジやば過ぎんだろ!」
「ちょっとホフゴブリン共! アンタら男の子でしょ!? 何とかしなさいよー!」
「男とか女とかマジ関係ねえから! やべえよマジやば過ぎるってマジで!」
紅魔館からワラワラと雪崩れ出て来たのは、妖精メイドとホフゴブリンの群れ。
お前ら持ち場離れていいのかよ。おっかないメイド長に怒られちゃうよ?
……なーんて思ってたら、当のメイド長、十六夜咲夜さんが出没しやがりました。
「ふぅ……やっぱり妖精じゃあ斬り応えが足りないわねぇ」
なんか物騒な事言ってますね。アタマおかしいんじゃないでしょうか?
つーか何ですかその馬鹿でかいナイフは。ナイフっつーかドスですよね? これではサクヤというよりヤクザですね。
「もっとこう……肉付きが良くて、それでいて引き締まったボディの持ち主がいればいいのだけど」
うっわー、そんな奴どこに居るのかなー。少なくとも私の事じゃあないよなー。
……ああ、咲夜さんめっちゃこっち見てる。なんかもう、斬りたくて仕方ないってツラしてやがりますわ。
「あーあ、誰でもいいからバラバラにしたいわー。今宵のシルバーブレードは血に餓えているわー」
「あの、咲夜さん?」
「あら美鈴、ごきげんよう。今日もいい天気ねぇ」
そうですね。気持ちのいい秋晴れですね。
まだ昼なんで、今宵のシルバーブレードとやらは仕舞ってくださいよ。マジで。
「どうしたの美鈴。私の顔に何か付いてる?」
「ええ、なんか憑いてるっぽいです。よくないものが」
血飛沫とか付いててくれたら怖くなかったんですけどね。逆にね。B級ホラー臭でコミカルさ倍増、みたいな?
なのにこの人ったら、相も変わらず綺麗なお顔しよってからに。もうちょっと辺りが薄暗かったら、ジャパニーズホラーの一場面としか思えん程だ。
「いまの騒ぎは何だったんですか? 皆大層怯えていたようですが」
「ああ、あれはちょっと試し斬り……じゃなかった、ナマス斬り……でもなくて」
「要するに、斬ろうとしたって事ですね」
「そう、微塵斬り! ……ってのはチョットやりすぎかしら」
「話聞けやコラ」
「え、あ、はい」
なんでちょっとビックリしてるんだよ。自分の世界に浸り過ぎだろ。アナタだけの時間じゃあないんですよ?
こんな調子で妖精メイドやらホフゴブリンやらを追い回していたのだろうか。モブキャラとはいえ可哀想すぎる。
しかしまあ、服やナイフ(?)に血が付いていないところを見るに、まだ誰も殺っちまった訳じゃあなさそうね。
斬り応えがどうとか言ってたけど、あれはきっと負け惜しみか何かだろう。そう信じたい。マジで。
「とにかく、そんな物騒なモノは仕舞ってください。誰かに見られたら誤解されますよ?」
「えっ? ……やっ、やだもう美鈴ったら。白昼堂々刃物を振り回す様なはしたない真似、この私がする筈無いでしょう? ホラ」
後ろ手にナイフを隠しながら、上目遣いでこちらを見つめてくる咲夜さん。
なにちょっと照れてるんですか。頬を染めるな頬を。カワイイにも程があるだろ。抱くぞ。
「私はただ、このシルバーブレードの切れ味を試してみたいなーって思っただけで……」
「馬鹿言わないでください。咲夜さんらしくもな……うーん……」
「……美鈴? どうして口ごもるの?」
正直な話、咲夜さんならやりかねないなーって思ったりなんかしちゃったりして。
だってこの人ったら、妖怪を斬るのが愉しくて愉しくて仕方がないみたいなオーラを漂わせているんですもの。
かく言う私とて、身の危険を感じた事は一度や二度ではない。綺麗な薔薇には棘があると言うが、幾らなんでも研ぎ澄まされ過ぎだと思う。
「そうなの……美鈴は私の事を、異常者か何かだと認識しているというのね……」
「少なくとも、まともな人間とは言い難いかと」
「……傷つくわー」
あれ? 自覚してなかったのかしら? それはそれで危ういなあ。
ひょっとしたら、私はとんでもない地雷を踏んでしまったのかもしれない。
ともあれ、今の咲夜さんは何かがおかしい。久々に異変解決に携わった所為で、オツムのタガが外れてしまったのかしら?
「美鈴が私の事をそんな風に思っていたなんて……悲しいわー……」
「いやいや、別に貶している訳では無いのですよ? 私はただ……」
「なんかもう……全てがどうでもよくなってきたわー。目に映る全てのモノを切り刻みたくなってきたわー」
……やっべ、何やら良くないスイッチが入ってしまったらしい。
差しあたって真っ先に斬られるのは、他でもないこの私なのだろうなあ。
ならば、ここは先手を打っておくが肝要。先んずれば人を制すと、史記にも記されてあったではないか。
「咲夜さんはァ! この私をォ! 斬りたくて仕方が無いって事ですねェ!?」
「しーっ、声が大きい! 誰かに聞かれたらどうするの!」
おい、そこは否定しろよ。
他人の耳なんか気にするような状況じゃないだろ。今大事なのは私だろうが。私。
「一番聞かれちゃあイケない相手は、何を隠そうこの私なんですけどね!」
「問答無用! ツェイヤーッ!」
何をトチ狂ったのやら、咲夜さんはシルバーブレードとやらを大上段に構え、私に斬りかかって来たではないか!
咄嗟に飛び退き、難を逃れる私。しかし彼女は追撃の姿勢を解かず、虎視眈々とこちらの隙を窺っている。
「どうして避けるの……?」
「おま……え……誰だ?」
「えっ?」
「私の知ってる咲夜さんなら、そのようなナイフの扱いはしない。もっとこう、瀟洒でスマートな攻撃をする筈」
「フッ……流石は紅魔館の門番といったところか。我が一撃を避けたのみならず、こちらの正体までも見抜いてみせるとは……」
えっ、まだ正体までは見抜いていませんけど。
でもまあ、大体の見当はついているのだけどね。余りに馬鹿馬鹿しすぎて、とても口に出せないだけだ。
「既にお察しの通り、十六夜咲夜の精神は僕の手中に納まっているのさ。この僕、シルバーブレードのね……」
「自分からベラベラと喋ってくれて助かりましたよ。ところでアナタはアレですか、僕っ娘か何かなのですか?」
「元来、付喪神に性別は存在しないよ。でもまあ、もし擬人化する機会があったのなら、是非とも中性的美少女の姿でお願いしたいね」
咲夜さんの口から何というセリフを吐き出すのやら。これは冒涜だ。咲夜さんの人格に対する陵辱だ。
だが……僕っ娘の咲夜さんはアリだと思う。ものすっげーアリだと思う。色々な意味で滾ってしまう。超・萌ゑる。
もっとも、それは咲夜さん本人が言ってこそだ。誰かに乗っ取られた咲夜さんなど、咲夜さんにして咲夜さんに非ず。
「いつから……いつから咲夜さんに取って代わっていたんですか?」
「完全に成り代わったのは、つい先程のことさ。それまでは十六夜咲夜の精神に間借りする形を取っていたよ。彼女は最後まで僕の存在に気付かなかったようだけどね」
「それじゃあ、異変の最中はまだ咲夜さんのままだったって事ですね。しかし、なにゆえブレインジャックじみた行いを?」
「そうしなければ、僕は単なる魔剣Xに戻ってしまうところだったからね。いいボディが手に入ってよかったよ。アハハハハのハ! ハッハのハ!」
うっわー、コイツの笑い方超ウゼー。咲夜さんの身体でさえなければ、顔面に大鵬拳でもブチ込んでやるのになあ。
しかしアレだわ、紅魔館の護り手たるこの私が、こんな身近な異変に気付かなかったとは情けない。
これからは外だけでなく、館の内部にも眼を光らせねばなるまい。いや、別にサボりの口実が欲しいとかそんなんじゃないよ? マジで。
「さて、そろそろ君の生血を吸わせて貰おうか。彼女もそれを望んでいる事だしね」
「咲夜さんが? ……それはおかしい。もしそうだとしたら、私はとっくの昔に斬られている筈でしょうに」
「なに……?」
「共に戦ったアナタなら、彼女がどんな能力を持っているかご存知でしょう。それを用いないという事は……」
咲夜さんの精神は未だ、完全に奴に屈した訳では無いという事だ。
多少人間離れしているとは言え、その身体はあくまで人間のもの。例え妖刀を振るったところで、能力抜きでは恐るるに足らず。
「アナタが門の外に出てしまった以上、本件は不肖わたくし紅美鈴が責任をもって処理せねばなりません。チャッチャと終わらせてしまいましょうか」
「クックックッ……随分と甘く見られたものだねえ。これでも僕は由緒正しき一寸法師の剣さ。一介の妖怪風情に遅れを取るものではないよ」
「東夷の御伽噺如きが調子に乗るな。中国四千年の妖怪(ヤオ・グアイ)をナメるなよ」
「何処の馬の骨とも知れぬ輩が、口だけはまァ達者な事で……ヤエェェェェッ!」
咲夜さんの腕を振り上げ、咲夜さんの手に持った剣を振るいつつ、咲夜さんの口から奇ッ怪な雄叫びを上げていやがる。
その所業、万死に値する。貴様の様なナマクラ刀に、これ以上咲夜さんを玩具にされてたまるものか!
「奥義! 真剣白刃取りッ!」
いっぺんやってみたかったのよねえ、このワザ。
半霊の庭師やら、天人くずれやらを相手にやるのはちょっと怖かったので、丁度いい機会があってよかったわ。
「何ィ! ……えっ、本当に何? 何か違くないコレ?」
「……あー」
先に言い訳しておくと、タイミングは完璧だった。
ただ、目測を少々誤ったのだ。私が捉えたのは刀身ではなく、咲夜さんのスベスベなオテテでしたとさ。うわーダッセー。
「し……新陰流奥義、無刀取り!」
「今更言い直しても遅いよ! でやーは!」
「鳩尾大激痛ッ」
ああ、咲夜さんのアンヨが私の鳩尾にめり込んでくる。
ぶっちゃけた話、肉体的にはそれほど痛くない。ただ、ココロに来るんだよね。形容し難きダメージってやつが。
妖怪的には何よりも辛いわ。咲夜さんも心苦しく思っている事だろう……思ってるよね?
「だがしかし! 貴様の攻撃、すでに見切った! 白刃取りからのアジアンカンフーコンビネーションで、素粒子レベルに分解してやる!」
「そうだねえ。正直な話、このまま君を切り刻むのは骨が折れそうだ。よって僕は……」
ヤツは刀身をひと撫でした後、その切っ先を――咲夜さんの喉許に突きつけた。
「こういう手段を取らせて貰う」
「じ、自殺はいけませんよ! 非生産的な!」
「止めたいかい? フッ、止めたいよねえ。だったら僕の言う事を聞いて貰おうじゃないか」
このヤロー……よりにもよって咲夜さんの命を盾にしやがるとは。
これでは手の出し様が無い。ヤツに逆らったが最後、咲夜さんは永遠にコンティニューできなくなってしまう!
誠に遺憾ではあるが、呆れるほど有効な戦術であると言わざるを得ない。
「くっ……殺せ!」
「彼女をかい?」
「あ、いや、違います! 咲夜さんを殺しちゃ駄目です! 殺るなら私にしなさい! マジで!」
「アッハハハハハハ! 必死だねえ! そんなにこの人間が大事なのか? あえて言おう、君は妖怪失格だね!」
人間とか妖怪とか、そういうチャチな次元の話をしてるんじゃ無いんだよ。
咲夜さんは私にとって……否! 私たち紅魔館にとって、欠かす事の出来ない大切な人なんだよ。
そりゃあ彼女は人間だもの、いずれはお別れしなきゃいけないなんて事は分かってる。私たち皆がよーく分かってる。
……だが、それは今日起きるべき出来事ではないし、お前如きガラクタによってもたらされるべきモノでも無いんだよ!
「おやおや、随分と反抗的な目をしているねえ。駄目だよぉそんなんじゃ。命乞いってのはもっとこう、キュートな感じでやらないと」
「咲夜さんを放してニャン♪ 美鈴一生のお願いだニャン♪」
「駄目だニャン♪ 君の五体はバラバラニャン♪」
「げっ、外道~っ! もういい知らん! 好きにしろっ!」
私はあえてこの身を大地に投げ打ち、手足を広げて大の字に寝そべった。
両の目を閉じ、口元には笑みすら湛える。鼻提灯でも膨らませてやろうかと思ったが、それは流石にサービスし過ぎか。
「咲夜さんに殺られるなら本望ですわー。『ん』と『う』を取ったらホモですわー」
「なんだコイツは……誘っているのか? いや、しかし……うーん」
「おやおやおやー? 攻撃が来ませんねー。ひょっとしてビビッちゃってるとか~?」
「……迷っていても仕方がないか。とりあえず息の根を止めてみて、後の事はそれから考えよう」
ヤツは……シルバーブレードは私の腹に馬乗りになって、逆手に持った剣を振り上げる。
うーわー、絶体絶命の大ピンチだわー……なーんてね。これでいいのだ。仮痴不癲こそ我がはかりごと、ってね。
それにしてもアレだわね。ヤツのボディは咲夜さんのそれであって、コレ即ち咲夜さんに馬乗りになられてるのと同じって事なんだよね。役得!
「さて、どこを刺して欲しい? 額? 喉? それとも心臓? それくらいは選ばせてあげるよ」
「首筋でお願いします。確かその辺りに、私の性感帯ってやつが……」
「……オーケー、その減らず口は最後まで取っておいてやるよ。そこ以外を徹底的に切り刻んで、君の苦痛と恐怖に満ちた悲鳴を堪能したいからね」
どこでも構わんさ。ヤツの刃が私の身体に捻じ込まれた瞬間、あらん限りの“気”を送り込んで、一気に妖刀を調伏せしめるのみだ。
マジメな話、私が無事で済む保障など無い。つーか普通死ぬ。妖怪だからオッケーだなんて甘い期待は抱いちゃいない。
もう一度白刃取りを試みるって手もあるが、その程度は敵も想定済みだろう。仕損じたが最後、今度こそ咲夜さんの危険がデンジャラスだ。
「遺言があるなら聞いておこうか。こう見えて僕は慈悲深いんだ」
「出来る事なら、皆にお別れを言いたかった……レミリア様、フランドール様、パチュリー様、名無しの4面中ボス、その他モブキャラの面々……」
「泣かせるねえ」
「ジュンヤ……オコノギ……アヤちゃん……モエちゃん……マリエ……」
「誰だよ!?」
例え私が力及ばずとも、紅魔館のお歴々ならばきっと咲夜さんを救い出す事ができる筈。
もはや憂い無し。始めるか、私のスプラッターショー。
「さあ、楽しい楽しい殺しの時間(キリングタイム)だ! 死ねよやあああぁぁぁあ痛ててててててっ!?」
「……ッ!?」
これは……何としたことだろうか。
咲夜さんの右手には、あのにっくきシルバーブレード。私に向けられてはいるが、まだ刃は届いちゃあいない。
では、左手には? 驚いた事に、そこには見慣れた小振りなナイフが握られていた。そしてその刃は、あろう事か咲夜さん自身の右腕に達しているではないか!
「いッ、十六夜咲夜ァ! 何だこれは! この僕をこんな安物のナイフで刺しやがってェ……マスュオプ!」
「うおっ、危ねっ!」
両手のヒカリ物をメチャクチャに振り回しつつ、咲夜さんの身体は後方へとブッ飛んで行った。
かく言う私も慌てて退避。予想外の出来事を前にしては、さっきまでの覚悟も何処へやら、だ。
「よせっ、このバカ! 誰を斬ろうとしてウォッヘイ分かってるのギャアア馬鹿馬鹿やめろ死ぬゥ!?」
うわぁ……なんだこれ。一人チャンバラとでもいうのだろうか。
的確に急所を狙うナイフに対し、哀れシルバーブレードは防戦一方へと追い込まれている。
私が思うに、あのナイフを振るっている部分は咲夜さんなのだろうなあ。やっぱ色々な意味で凄いわ、この人。
おっと、いつまでも呆けては居られまい。うかうかしてたら、咲夜さん自身が咲夜さんを仕留めてしまう……ほんと何なんだこの状況は。
「えーっと、咲夜さん? シルバーブレードの方でもいいから、私の話を聞いてくれませんか?」
「今忙しい! 見て分かんないのかよこの馬鹿美鈴コイツを殺しなさいや待て落ち着いて僕の何が僕よ2時間前に出直してきな!」
咲夜さん凄ェ! 咲夜さん既に咲夜さんの口にまで達してチョット待って頭がこんがらがってきた。
ともあれ、一刻も早くあのシルバーブレードを取り上げねば。アレさえ手放せば、咲夜さんの頭も冷える筈……あまり自信はないが。
「君ってヤツはホント馬鹿はどっちよあら美鈴どうしたのそんな恐い顔してきゃんっ!」
落ち着いて事に当たれば造作も無い。我々をさんざん悩ませてくれたシルバーブレードは、呆気なく私の手中へとおさまった。
このまま一息に粉砕してしまうべき……それは分かっている。分かってはいるのだが……いざ手に取ってみると、どうにも名残惜しく思えてくるから不思議だ。
刀目利きの心得など持ち合わせていない私であっても、コイツが逸品である事は容易に理解できる。妖刀の妖刀たる所以、とでも言っておこうか。
(掴んだら振るう他無いぞ さあ人を斬れLike a 岡田以蔵)
んでもって、この声だよ。何処から響いて来るものやら、手にした瞬間から引っ切り無しに私を煽ってきやがる。
無駄に韻なんか踏んじゃってさあ。そんなに私を人斬りに仕立て上げたいのか? 満更でもない。いや待て駄目だろ。落ち着け私。
「美鈴……」
ふと見上げると、傷の手当を終えたと思しき咲夜さんが、心配そうな面持ちでこちらを見つめていた。
まだ本調子ではないのか、少々足元が覚束ない様子だ。その姿がなんとも頼りなく、儚げで……そして美しい。
だが、もっと美しくなれる筈だ。われよく敵を害し、朱に染めるも可なり。わが銀剣をふるわば。
「美鈴、その剣を……」
「咲夜さん」
「えっ?」
剣を大上段に振り上げた私を、咲夜さんは呆けたように眺めている。
陽の光を受け、七色に煌めく刀身を見てもなお、彼女はナイフを構えようとすらしない。
これも妖刀シルバーブレードの為せる業か。素直に認めよう、コイツはヤバい。正直言って私の手に余る代物だよ。
「ごめんなさい」
低い声で呟いた後、私は剣を振り下ろした。
刃は白銀の弧を描き、咲夜さんの鼻先1センチ程の距離を通過した後――私の腹に深々と吸い込まれた。
「!? 美鈴……!」
「無問題(モウマンタイ)、無問題です……腹筋鍛えてますから」
「そういう問題じゃ……!」
これでいい、これでいいのだ。
こうでもしなければ、私の精神は完全にヤツの支配下へと堕ちていたことだろう。
そして何より、咲夜さんを綺麗に斬ってあげたい等と考えてしまった私には、この程度の報いはあって然るべきだ。
(馬鹿な、ハラキリだと!? ありえるのか、こんな妖怪が……)
「どうです? 私のハラワタの味は。授乳ならぬ授血……っていうか献血? みたいな」
(この期に及んで何を暢気な! クッ、だが好都合だ。このまま君の肉体を貰い受け、最大最強の付喪神となってやる!)
二つの妖怪が一つになれば、一つの妖怪は百万パワー? それも悪くない。
シルバーブレードは自ら融解し、私の傷口を流体金属で塞ぎつつ、体内への侵食を試み始める。
だが、元より主権を移譲してやるつもりなどサラサラ無い。ヤツが勝つか私が勝つか、天国と地獄の綱引きといこうか!
(おっと、抵抗するなよ? 君は深手を負っているんだ。生き延びたければ僕と一つになりたまえ)
「ふたりでひとつになれちゃうことを、気持ちいいと思ううちに~♪」
(やせ我慢だ! 門番流の強がりだ! 歌なんか歌ってみせたところで、ズンズン奥まで入っちゃうんだぜ僕は!?)
他に手立てが無かったとはいえ、正直言って迂闊だったかもしれない。
身体中の感覚が失せ、ヤツの思考、記憶、そして意思が私の精神を圧迫し始めている。
我が口から獣じみた呻き声が漏れ出してきた。目の前の咲夜さんは、どのような想いで私の醜態を見つめているのだろう。
「……先の異変で、何体かの付喪神に遭遇したわ。みんな誰かに使役されるのを嫌がって、自由を求めていた」
咲夜さんの唐突な独白を受けてか、シルバーブレードの侵食速度が幾分和らぎ始める。
「でも、アナタは違うと思ってた。あくまで一振りの剣である事に拘る、誇り高き存在なのだと」
「……何が言いたいのかな? 君は」
シルバーブレードの言葉は他でもない、この私の口から発せられたものだ。
ちょっとだけ羨ましいかも。私だって咲夜さんを君呼ばわりしてみたい。タメ口で心ゆくまでお喋りしたいぞ。
このままヤツと一体になれば、不本意ながらその願いは叶ってしまうのだろうか。
「今のアナタは、単なる寄生虫に過ぎない。いえ……もっと前から、私と共に戦った時からそうだったのかもね」
「きっ……寄生虫だと!? 僕が居なけりゃ満足に戦えもしない君が、言うに事欠いてこの僕を寄生虫呼ばわりするのか!? 取り消せよ!」
「アナタのお世話になる位なら、妖器なしで戦った方がよっぽどマシですわ」
「う……あ……がアアアアアアアアアァッ! 侮辱だ! この上ない冒涜だ! 認めん、認められるかこんなコト……!」
シルバーブレードは怒りの余り冷静さを失っているようだ。妖器なしの方がマシって発言、そこまでショックを受けるほどのモノかしら?
まあ、いらない子扱いされたヤツの憤りは理解できなくもない。その屈辱までも共有するつもりは無いが。
ともあれ、この機を逃す手などない。私に残された全ての“気”でもって、ヤツの横行に終止符を打ってやる!
(スウゥゥゥゥゥッ、コオォォォォォォ……!)
「何してる門番! 君の出る幕では……ンムゥ!?」
(真知は即ち行たる所以なり。行わざれば、これを知というに足りず。未だ知りて行わざる者あらず。知りて行わざるは、只だ是れ未だ知らざるなり)
「なっ、何をゴチャゴチャと……! よせっ、やめろっ! 死にたいの……うわあっ!」
感じる、感じるぞ。
我が体内に侵食せし奴の意思、脈動、そして鼓動を。
千載一遇の好機到来。このまま一気呵成に攻め立てよ!
「紅美鈴から、光が逆流する……!」
私の傷口から押し出された流体のシルバーブレードが、風船のごとく膨張してゆく!
中に詰まっているものは空気ではない。もっと熱く、何倍も輝かしき私の“気”だ。
事態を察したとみえる咲夜さんが、細かに時間停止を繰り返しつつ距離を取る。それでいい。これから起きる事態に、彼女を巻き込む訳にはいかない。
(真・知・即・行!)
「ギャアァァァァァァァァァァッ!」
シルバーブレードの膨張は限界点に達し、ブザマな悲鳴を伴って破裂の時を迎えた。
飛び散った液体金属の大半を、私は全身で浴びる事となる。まあ仕方ない。十分予測されていた事態だ。
頭の天辺から足の先まで銀色で覆われた私の許に、咲夜さんが恐る恐る近寄って来た。
「めい……りん……?」
「フッフッフッフッ……」
「……ッ!?」
「まったく愚かな門番だねぇ! これでこの身体は完全に僕のモノだ! さあ、ふるえるがいい……!」
「テメーッ! そこを動くんじゃあねーぜッ!」
「わああああっ!? ちょっ、ちょっと待ってください! 私です! アナタの心の門番ガール、紅美鈴ですよっ!」
やっべ、少々悪ふざけが過ぎたようだ。
咲夜さんってば実の部下の私にリアルで殺意向けてヤバかった。つうか素が出たっぽい。超コエーっす。
それにしても、絶対ウケると思ったんだけどなあ。私ってば冗談のセンスが無いのかしらん。
「悪かったです! ちょっとフザケただけですって! 正真正銘私ですっ!」
「……美鈴? 本当に美鈴なの?」
「ええ勿論! 紅美鈴、テーマ曲は『明治十七年の上海アリス』、気質は黄砂、趣味はコミック本鑑賞」
「1993年の映画『八仙飯店之人肉饅頭』の主演俳優は?」
「黄秋生(アンソニー・ウォン)」
「『中国女(LA FEMME CHINOISE)』のパロディ『LA FEMME BLONDE』を歌ったのは?」
「オリエンタル・マグネチック・イエロー」
「……やれやれ、どうやら本物のようね。そんなくだらないコト知ってるのは……」
むしろ何故咲夜さんがそんなコト知ってるのか、と疑問に思わないでもないが……とりあえず信じて貰えたようで何よりだ。
「ヤツは? シルバーブレードはどうなったの?」
「いやぁ、大人しいモンですよ。さっき咲夜さんに言われた事が、余程堪えたと見受けられますね」
「うーん……流石にちょっと言い過ぎたかもしれないわね。正直な話、あの剣が無かったら異変を解決出来なかったかもしれないもの」
咲夜さんにしては珍しく殊勝な言葉を耳にしてか、私の精神世界に潜むシルバーブレードがヒョイと顔を擡げた。
息を吹き返されては厄介なので、すぐさま首根っこ掴んで押さえつけました。あくまで比喩です。なにしろ心の中の出来事ですので。
ちなみにヤツの外見ですが……まあ、ややボーイッシュ気味な咲夜さんといったトコロでしょうか。何だかんだで影響受けたんでしょうね。逆にね。
「しっかしまあ、こんなメタリックになっちゃって。どこか具合の悪いところとか無い?」
「至って快調ですよ。お肌ツルツルで美肌の極み! なーんて言っちゃったりして……触ってみます?」
「いいの?」
咲夜さんは恐る恐る手を伸ばして、私の頬をひと撫でする。
彼女の手から伝わって来る温もりは、無粋な金属に遮られることなく、私の内部へと容易く到達した。
やっぱ重要なのは心ですわ、ココロ。人間であれ妖怪であれ、はたまた金属生命体(?)であれ、精神を蔑ろにしてはいけないね。
「まあ、当分はこのまま過ごす事にしますよ。門番の仕事に支障をきたす訳でもないし」
「これでは門番と言うより彫像ね。表に出しておくには少々立派過ぎるかしら」
「それならいっその事、咲夜さんの部屋にでも飾ってもらえれば嬉しいかなーって……」
「おバカ」
軽く握った拳で額を小突かれ、小さな音がカツンと響く。早くも金属の身体に馴染んでしまった感があるなあ。
こんな状態がいつまで続くのか、それは私にも分からない。どちらかが根負けするか、或いはシルバーブレードが付喪神として独立するか、結末は神のみぞ知る……かな?
まあ、私が負ける筈は無いのだけど。えっ? さっき結構危なかっただろ、ですって? 無問題っすよ無問題。アッハハーのハー……ええいコイツめ、大人しくしてろ!
「……ってなわけで、生まれ変わった紅美鈴の活躍にどうぞご期待ください!」
「もう紅の要素が何処にも無いじゃないの。髪の毛までギンギラギンになってしまって……」
「咲夜さんて、意外と細かいトコロを気にするんですねえ。それなら……」
これからは紅美鈴改め、銀美鈴(インメイリン)とでも名乗るとしようか。
「マジやべえって! 何なのあいつマジやば過ぎんだろ!」
「ちょっとホフゴブリン共! アンタら男の子でしょ!? 何とかしなさいよー!」
「男とか女とかマジ関係ねえから! やべえよマジやば過ぎるってマジで!」
紅魔館からワラワラと雪崩れ出て来たのは、妖精メイドとホフゴブリンの群れ。
お前ら持ち場離れていいのかよ。おっかないメイド長に怒られちゃうよ?
……なーんて思ってたら、当のメイド長、十六夜咲夜さんが出没しやがりました。
「ふぅ……やっぱり妖精じゃあ斬り応えが足りないわねぇ」
なんか物騒な事言ってますね。アタマおかしいんじゃないでしょうか?
つーか何ですかその馬鹿でかいナイフは。ナイフっつーかドスですよね? これではサクヤというよりヤクザですね。
「もっとこう……肉付きが良くて、それでいて引き締まったボディの持ち主がいればいいのだけど」
うっわー、そんな奴どこに居るのかなー。少なくとも私の事じゃあないよなー。
……ああ、咲夜さんめっちゃこっち見てる。なんかもう、斬りたくて仕方ないってツラしてやがりますわ。
「あーあ、誰でもいいからバラバラにしたいわー。今宵のシルバーブレードは血に餓えているわー」
「あの、咲夜さん?」
「あら美鈴、ごきげんよう。今日もいい天気ねぇ」
そうですね。気持ちのいい秋晴れですね。
まだ昼なんで、今宵のシルバーブレードとやらは仕舞ってくださいよ。マジで。
「どうしたの美鈴。私の顔に何か付いてる?」
「ええ、なんか憑いてるっぽいです。よくないものが」
血飛沫とか付いててくれたら怖くなかったんですけどね。逆にね。B級ホラー臭でコミカルさ倍増、みたいな?
なのにこの人ったら、相も変わらず綺麗なお顔しよってからに。もうちょっと辺りが薄暗かったら、ジャパニーズホラーの一場面としか思えん程だ。
「いまの騒ぎは何だったんですか? 皆大層怯えていたようですが」
「ああ、あれはちょっと試し斬り……じゃなかった、ナマス斬り……でもなくて」
「要するに、斬ろうとしたって事ですね」
「そう、微塵斬り! ……ってのはチョットやりすぎかしら」
「話聞けやコラ」
「え、あ、はい」
なんでちょっとビックリしてるんだよ。自分の世界に浸り過ぎだろ。アナタだけの時間じゃあないんですよ?
こんな調子で妖精メイドやらホフゴブリンやらを追い回していたのだろうか。モブキャラとはいえ可哀想すぎる。
しかしまあ、服やナイフ(?)に血が付いていないところを見るに、まだ誰も殺っちまった訳じゃあなさそうね。
斬り応えがどうとか言ってたけど、あれはきっと負け惜しみか何かだろう。そう信じたい。マジで。
「とにかく、そんな物騒なモノは仕舞ってください。誰かに見られたら誤解されますよ?」
「えっ? ……やっ、やだもう美鈴ったら。白昼堂々刃物を振り回す様なはしたない真似、この私がする筈無いでしょう? ホラ」
後ろ手にナイフを隠しながら、上目遣いでこちらを見つめてくる咲夜さん。
なにちょっと照れてるんですか。頬を染めるな頬を。カワイイにも程があるだろ。抱くぞ。
「私はただ、このシルバーブレードの切れ味を試してみたいなーって思っただけで……」
「馬鹿言わないでください。咲夜さんらしくもな……うーん……」
「……美鈴? どうして口ごもるの?」
正直な話、咲夜さんならやりかねないなーって思ったりなんかしちゃったりして。
だってこの人ったら、妖怪を斬るのが愉しくて愉しくて仕方がないみたいなオーラを漂わせているんですもの。
かく言う私とて、身の危険を感じた事は一度や二度ではない。綺麗な薔薇には棘があると言うが、幾らなんでも研ぎ澄まされ過ぎだと思う。
「そうなの……美鈴は私の事を、異常者か何かだと認識しているというのね……」
「少なくとも、まともな人間とは言い難いかと」
「……傷つくわー」
あれ? 自覚してなかったのかしら? それはそれで危ういなあ。
ひょっとしたら、私はとんでもない地雷を踏んでしまったのかもしれない。
ともあれ、今の咲夜さんは何かがおかしい。久々に異変解決に携わった所為で、オツムのタガが外れてしまったのかしら?
「美鈴が私の事をそんな風に思っていたなんて……悲しいわー……」
「いやいや、別に貶している訳では無いのですよ? 私はただ……」
「なんかもう……全てがどうでもよくなってきたわー。目に映る全てのモノを切り刻みたくなってきたわー」
……やっべ、何やら良くないスイッチが入ってしまったらしい。
差しあたって真っ先に斬られるのは、他でもないこの私なのだろうなあ。
ならば、ここは先手を打っておくが肝要。先んずれば人を制すと、史記にも記されてあったではないか。
「咲夜さんはァ! この私をォ! 斬りたくて仕方が無いって事ですねェ!?」
「しーっ、声が大きい! 誰かに聞かれたらどうするの!」
おい、そこは否定しろよ。
他人の耳なんか気にするような状況じゃないだろ。今大事なのは私だろうが。私。
「一番聞かれちゃあイケない相手は、何を隠そうこの私なんですけどね!」
「問答無用! ツェイヤーッ!」
何をトチ狂ったのやら、咲夜さんはシルバーブレードとやらを大上段に構え、私に斬りかかって来たではないか!
咄嗟に飛び退き、難を逃れる私。しかし彼女は追撃の姿勢を解かず、虎視眈々とこちらの隙を窺っている。
「どうして避けるの……?」
「おま……え……誰だ?」
「えっ?」
「私の知ってる咲夜さんなら、そのようなナイフの扱いはしない。もっとこう、瀟洒でスマートな攻撃をする筈」
「フッ……流石は紅魔館の門番といったところか。我が一撃を避けたのみならず、こちらの正体までも見抜いてみせるとは……」
えっ、まだ正体までは見抜いていませんけど。
でもまあ、大体の見当はついているのだけどね。余りに馬鹿馬鹿しすぎて、とても口に出せないだけだ。
「既にお察しの通り、十六夜咲夜の精神は僕の手中に納まっているのさ。この僕、シルバーブレードのね……」
「自分からベラベラと喋ってくれて助かりましたよ。ところでアナタはアレですか、僕っ娘か何かなのですか?」
「元来、付喪神に性別は存在しないよ。でもまあ、もし擬人化する機会があったのなら、是非とも中性的美少女の姿でお願いしたいね」
咲夜さんの口から何というセリフを吐き出すのやら。これは冒涜だ。咲夜さんの人格に対する陵辱だ。
だが……僕っ娘の咲夜さんはアリだと思う。ものすっげーアリだと思う。色々な意味で滾ってしまう。超・萌ゑる。
もっとも、それは咲夜さん本人が言ってこそだ。誰かに乗っ取られた咲夜さんなど、咲夜さんにして咲夜さんに非ず。
「いつから……いつから咲夜さんに取って代わっていたんですか?」
「完全に成り代わったのは、つい先程のことさ。それまでは十六夜咲夜の精神に間借りする形を取っていたよ。彼女は最後まで僕の存在に気付かなかったようだけどね」
「それじゃあ、異変の最中はまだ咲夜さんのままだったって事ですね。しかし、なにゆえブレインジャックじみた行いを?」
「そうしなければ、僕は単なる魔剣Xに戻ってしまうところだったからね。いいボディが手に入ってよかったよ。アハハハハのハ! ハッハのハ!」
うっわー、コイツの笑い方超ウゼー。咲夜さんの身体でさえなければ、顔面に大鵬拳でもブチ込んでやるのになあ。
しかしアレだわ、紅魔館の護り手たるこの私が、こんな身近な異変に気付かなかったとは情けない。
これからは外だけでなく、館の内部にも眼を光らせねばなるまい。いや、別にサボりの口実が欲しいとかそんなんじゃないよ? マジで。
「さて、そろそろ君の生血を吸わせて貰おうか。彼女もそれを望んでいる事だしね」
「咲夜さんが? ……それはおかしい。もしそうだとしたら、私はとっくの昔に斬られている筈でしょうに」
「なに……?」
「共に戦ったアナタなら、彼女がどんな能力を持っているかご存知でしょう。それを用いないという事は……」
咲夜さんの精神は未だ、完全に奴に屈した訳では無いという事だ。
多少人間離れしているとは言え、その身体はあくまで人間のもの。例え妖刀を振るったところで、能力抜きでは恐るるに足らず。
「アナタが門の外に出てしまった以上、本件は不肖わたくし紅美鈴が責任をもって処理せねばなりません。チャッチャと終わらせてしまいましょうか」
「クックックッ……随分と甘く見られたものだねえ。これでも僕は由緒正しき一寸法師の剣さ。一介の妖怪風情に遅れを取るものではないよ」
「東夷の御伽噺如きが調子に乗るな。中国四千年の妖怪(ヤオ・グアイ)をナメるなよ」
「何処の馬の骨とも知れぬ輩が、口だけはまァ達者な事で……ヤエェェェェッ!」
咲夜さんの腕を振り上げ、咲夜さんの手に持った剣を振るいつつ、咲夜さんの口から奇ッ怪な雄叫びを上げていやがる。
その所業、万死に値する。貴様の様なナマクラ刀に、これ以上咲夜さんを玩具にされてたまるものか!
「奥義! 真剣白刃取りッ!」
いっぺんやってみたかったのよねえ、このワザ。
半霊の庭師やら、天人くずれやらを相手にやるのはちょっと怖かったので、丁度いい機会があってよかったわ。
「何ィ! ……えっ、本当に何? 何か違くないコレ?」
「……あー」
先に言い訳しておくと、タイミングは完璧だった。
ただ、目測を少々誤ったのだ。私が捉えたのは刀身ではなく、咲夜さんのスベスベなオテテでしたとさ。うわーダッセー。
「し……新陰流奥義、無刀取り!」
「今更言い直しても遅いよ! でやーは!」
「鳩尾大激痛ッ」
ああ、咲夜さんのアンヨが私の鳩尾にめり込んでくる。
ぶっちゃけた話、肉体的にはそれほど痛くない。ただ、ココロに来るんだよね。形容し難きダメージってやつが。
妖怪的には何よりも辛いわ。咲夜さんも心苦しく思っている事だろう……思ってるよね?
「だがしかし! 貴様の攻撃、すでに見切った! 白刃取りからのアジアンカンフーコンビネーションで、素粒子レベルに分解してやる!」
「そうだねえ。正直な話、このまま君を切り刻むのは骨が折れそうだ。よって僕は……」
ヤツは刀身をひと撫でした後、その切っ先を――咲夜さんの喉許に突きつけた。
「こういう手段を取らせて貰う」
「じ、自殺はいけませんよ! 非生産的な!」
「止めたいかい? フッ、止めたいよねえ。だったら僕の言う事を聞いて貰おうじゃないか」
このヤロー……よりにもよって咲夜さんの命を盾にしやがるとは。
これでは手の出し様が無い。ヤツに逆らったが最後、咲夜さんは永遠にコンティニューできなくなってしまう!
誠に遺憾ではあるが、呆れるほど有効な戦術であると言わざるを得ない。
「くっ……殺せ!」
「彼女をかい?」
「あ、いや、違います! 咲夜さんを殺しちゃ駄目です! 殺るなら私にしなさい! マジで!」
「アッハハハハハハ! 必死だねえ! そんなにこの人間が大事なのか? あえて言おう、君は妖怪失格だね!」
人間とか妖怪とか、そういうチャチな次元の話をしてるんじゃ無いんだよ。
咲夜さんは私にとって……否! 私たち紅魔館にとって、欠かす事の出来ない大切な人なんだよ。
そりゃあ彼女は人間だもの、いずれはお別れしなきゃいけないなんて事は分かってる。私たち皆がよーく分かってる。
……だが、それは今日起きるべき出来事ではないし、お前如きガラクタによってもたらされるべきモノでも無いんだよ!
「おやおや、随分と反抗的な目をしているねえ。駄目だよぉそんなんじゃ。命乞いってのはもっとこう、キュートな感じでやらないと」
「咲夜さんを放してニャン♪ 美鈴一生のお願いだニャン♪」
「駄目だニャン♪ 君の五体はバラバラニャン♪」
「げっ、外道~っ! もういい知らん! 好きにしろっ!」
私はあえてこの身を大地に投げ打ち、手足を広げて大の字に寝そべった。
両の目を閉じ、口元には笑みすら湛える。鼻提灯でも膨らませてやろうかと思ったが、それは流石にサービスし過ぎか。
「咲夜さんに殺られるなら本望ですわー。『ん』と『う』を取ったらホモですわー」
「なんだコイツは……誘っているのか? いや、しかし……うーん」
「おやおやおやー? 攻撃が来ませんねー。ひょっとしてビビッちゃってるとか~?」
「……迷っていても仕方がないか。とりあえず息の根を止めてみて、後の事はそれから考えよう」
ヤツは……シルバーブレードは私の腹に馬乗りになって、逆手に持った剣を振り上げる。
うーわー、絶体絶命の大ピンチだわー……なーんてね。これでいいのだ。仮痴不癲こそ我がはかりごと、ってね。
それにしてもアレだわね。ヤツのボディは咲夜さんのそれであって、コレ即ち咲夜さんに馬乗りになられてるのと同じって事なんだよね。役得!
「さて、どこを刺して欲しい? 額? 喉? それとも心臓? それくらいは選ばせてあげるよ」
「首筋でお願いします。確かその辺りに、私の性感帯ってやつが……」
「……オーケー、その減らず口は最後まで取っておいてやるよ。そこ以外を徹底的に切り刻んで、君の苦痛と恐怖に満ちた悲鳴を堪能したいからね」
どこでも構わんさ。ヤツの刃が私の身体に捻じ込まれた瞬間、あらん限りの“気”を送り込んで、一気に妖刀を調伏せしめるのみだ。
マジメな話、私が無事で済む保障など無い。つーか普通死ぬ。妖怪だからオッケーだなんて甘い期待は抱いちゃいない。
もう一度白刃取りを試みるって手もあるが、その程度は敵も想定済みだろう。仕損じたが最後、今度こそ咲夜さんの危険がデンジャラスだ。
「遺言があるなら聞いておこうか。こう見えて僕は慈悲深いんだ」
「出来る事なら、皆にお別れを言いたかった……レミリア様、フランドール様、パチュリー様、名無しの4面中ボス、その他モブキャラの面々……」
「泣かせるねえ」
「ジュンヤ……オコノギ……アヤちゃん……モエちゃん……マリエ……」
「誰だよ!?」
例え私が力及ばずとも、紅魔館のお歴々ならばきっと咲夜さんを救い出す事ができる筈。
もはや憂い無し。始めるか、私のスプラッターショー。
「さあ、楽しい楽しい殺しの時間(キリングタイム)だ! 死ねよやあああぁぁぁあ痛ててててててっ!?」
「……ッ!?」
これは……何としたことだろうか。
咲夜さんの右手には、あのにっくきシルバーブレード。私に向けられてはいるが、まだ刃は届いちゃあいない。
では、左手には? 驚いた事に、そこには見慣れた小振りなナイフが握られていた。そしてその刃は、あろう事か咲夜さん自身の右腕に達しているではないか!
「いッ、十六夜咲夜ァ! 何だこれは! この僕をこんな安物のナイフで刺しやがってェ……マスュオプ!」
「うおっ、危ねっ!」
両手のヒカリ物をメチャクチャに振り回しつつ、咲夜さんの身体は後方へとブッ飛んで行った。
かく言う私も慌てて退避。予想外の出来事を前にしては、さっきまでの覚悟も何処へやら、だ。
「よせっ、このバカ! 誰を斬ろうとしてウォッヘイ分かってるのギャアア馬鹿馬鹿やめろ死ぬゥ!?」
うわぁ……なんだこれ。一人チャンバラとでもいうのだろうか。
的確に急所を狙うナイフに対し、哀れシルバーブレードは防戦一方へと追い込まれている。
私が思うに、あのナイフを振るっている部分は咲夜さんなのだろうなあ。やっぱ色々な意味で凄いわ、この人。
おっと、いつまでも呆けては居られまい。うかうかしてたら、咲夜さん自身が咲夜さんを仕留めてしまう……ほんと何なんだこの状況は。
「えーっと、咲夜さん? シルバーブレードの方でもいいから、私の話を聞いてくれませんか?」
「今忙しい! 見て分かんないのかよこの馬鹿美鈴コイツを殺しなさいや待て落ち着いて僕の何が僕よ2時間前に出直してきな!」
咲夜さん凄ェ! 咲夜さん既に咲夜さんの口にまで達してチョット待って頭がこんがらがってきた。
ともあれ、一刻も早くあのシルバーブレードを取り上げねば。アレさえ手放せば、咲夜さんの頭も冷える筈……あまり自信はないが。
「君ってヤツはホント馬鹿はどっちよあら美鈴どうしたのそんな恐い顔してきゃんっ!」
落ち着いて事に当たれば造作も無い。我々をさんざん悩ませてくれたシルバーブレードは、呆気なく私の手中へとおさまった。
このまま一息に粉砕してしまうべき……それは分かっている。分かってはいるのだが……いざ手に取ってみると、どうにも名残惜しく思えてくるから不思議だ。
刀目利きの心得など持ち合わせていない私であっても、コイツが逸品である事は容易に理解できる。妖刀の妖刀たる所以、とでも言っておこうか。
(掴んだら振るう他無いぞ さあ人を斬れLike a 岡田以蔵)
んでもって、この声だよ。何処から響いて来るものやら、手にした瞬間から引っ切り無しに私を煽ってきやがる。
無駄に韻なんか踏んじゃってさあ。そんなに私を人斬りに仕立て上げたいのか? 満更でもない。いや待て駄目だろ。落ち着け私。
「美鈴……」
ふと見上げると、傷の手当を終えたと思しき咲夜さんが、心配そうな面持ちでこちらを見つめていた。
まだ本調子ではないのか、少々足元が覚束ない様子だ。その姿がなんとも頼りなく、儚げで……そして美しい。
だが、もっと美しくなれる筈だ。われよく敵を害し、朱に染めるも可なり。わが銀剣をふるわば。
「美鈴、その剣を……」
「咲夜さん」
「えっ?」
剣を大上段に振り上げた私を、咲夜さんは呆けたように眺めている。
陽の光を受け、七色に煌めく刀身を見てもなお、彼女はナイフを構えようとすらしない。
これも妖刀シルバーブレードの為せる業か。素直に認めよう、コイツはヤバい。正直言って私の手に余る代物だよ。
「ごめんなさい」
低い声で呟いた後、私は剣を振り下ろした。
刃は白銀の弧を描き、咲夜さんの鼻先1センチ程の距離を通過した後――私の腹に深々と吸い込まれた。
「!? 美鈴……!」
「無問題(モウマンタイ)、無問題です……腹筋鍛えてますから」
「そういう問題じゃ……!」
これでいい、これでいいのだ。
こうでもしなければ、私の精神は完全にヤツの支配下へと堕ちていたことだろう。
そして何より、咲夜さんを綺麗に斬ってあげたい等と考えてしまった私には、この程度の報いはあって然るべきだ。
(馬鹿な、ハラキリだと!? ありえるのか、こんな妖怪が……)
「どうです? 私のハラワタの味は。授乳ならぬ授血……っていうか献血? みたいな」
(この期に及んで何を暢気な! クッ、だが好都合だ。このまま君の肉体を貰い受け、最大最強の付喪神となってやる!)
二つの妖怪が一つになれば、一つの妖怪は百万パワー? それも悪くない。
シルバーブレードは自ら融解し、私の傷口を流体金属で塞ぎつつ、体内への侵食を試み始める。
だが、元より主権を移譲してやるつもりなどサラサラ無い。ヤツが勝つか私が勝つか、天国と地獄の綱引きといこうか!
(おっと、抵抗するなよ? 君は深手を負っているんだ。生き延びたければ僕と一つになりたまえ)
「ふたりでひとつになれちゃうことを、気持ちいいと思ううちに~♪」
(やせ我慢だ! 門番流の強がりだ! 歌なんか歌ってみせたところで、ズンズン奥まで入っちゃうんだぜ僕は!?)
他に手立てが無かったとはいえ、正直言って迂闊だったかもしれない。
身体中の感覚が失せ、ヤツの思考、記憶、そして意思が私の精神を圧迫し始めている。
我が口から獣じみた呻き声が漏れ出してきた。目の前の咲夜さんは、どのような想いで私の醜態を見つめているのだろう。
「……先の異変で、何体かの付喪神に遭遇したわ。みんな誰かに使役されるのを嫌がって、自由を求めていた」
咲夜さんの唐突な独白を受けてか、シルバーブレードの侵食速度が幾分和らぎ始める。
「でも、アナタは違うと思ってた。あくまで一振りの剣である事に拘る、誇り高き存在なのだと」
「……何が言いたいのかな? 君は」
シルバーブレードの言葉は他でもない、この私の口から発せられたものだ。
ちょっとだけ羨ましいかも。私だって咲夜さんを君呼ばわりしてみたい。タメ口で心ゆくまでお喋りしたいぞ。
このままヤツと一体になれば、不本意ながらその願いは叶ってしまうのだろうか。
「今のアナタは、単なる寄生虫に過ぎない。いえ……もっと前から、私と共に戦った時からそうだったのかもね」
「きっ……寄生虫だと!? 僕が居なけりゃ満足に戦えもしない君が、言うに事欠いてこの僕を寄生虫呼ばわりするのか!? 取り消せよ!」
「アナタのお世話になる位なら、妖器なしで戦った方がよっぽどマシですわ」
「う……あ……がアアアアアアアアアァッ! 侮辱だ! この上ない冒涜だ! 認めん、認められるかこんなコト……!」
シルバーブレードは怒りの余り冷静さを失っているようだ。妖器なしの方がマシって発言、そこまでショックを受けるほどのモノかしら?
まあ、いらない子扱いされたヤツの憤りは理解できなくもない。その屈辱までも共有するつもりは無いが。
ともあれ、この機を逃す手などない。私に残された全ての“気”でもって、ヤツの横行に終止符を打ってやる!
(スウゥゥゥゥゥッ、コオォォォォォォ……!)
「何してる門番! 君の出る幕では……ンムゥ!?」
(真知は即ち行たる所以なり。行わざれば、これを知というに足りず。未だ知りて行わざる者あらず。知りて行わざるは、只だ是れ未だ知らざるなり)
「なっ、何をゴチャゴチャと……! よせっ、やめろっ! 死にたいの……うわあっ!」
感じる、感じるぞ。
我が体内に侵食せし奴の意思、脈動、そして鼓動を。
千載一遇の好機到来。このまま一気呵成に攻め立てよ!
「紅美鈴から、光が逆流する……!」
私の傷口から押し出された流体のシルバーブレードが、風船のごとく膨張してゆく!
中に詰まっているものは空気ではない。もっと熱く、何倍も輝かしき私の“気”だ。
事態を察したとみえる咲夜さんが、細かに時間停止を繰り返しつつ距離を取る。それでいい。これから起きる事態に、彼女を巻き込む訳にはいかない。
(真・知・即・行!)
「ギャアァァァァァァァァァァッ!」
シルバーブレードの膨張は限界点に達し、ブザマな悲鳴を伴って破裂の時を迎えた。
飛び散った液体金属の大半を、私は全身で浴びる事となる。まあ仕方ない。十分予測されていた事態だ。
頭の天辺から足の先まで銀色で覆われた私の許に、咲夜さんが恐る恐る近寄って来た。
「めい……りん……?」
「フッフッフッフッ……」
「……ッ!?」
「まったく愚かな門番だねぇ! これでこの身体は完全に僕のモノだ! さあ、ふるえるがいい……!」
「テメーッ! そこを動くんじゃあねーぜッ!」
「わああああっ!? ちょっ、ちょっと待ってください! 私です! アナタの心の門番ガール、紅美鈴ですよっ!」
やっべ、少々悪ふざけが過ぎたようだ。
咲夜さんってば実の部下の私にリアルで殺意向けてヤバかった。つうか素が出たっぽい。超コエーっす。
それにしても、絶対ウケると思ったんだけどなあ。私ってば冗談のセンスが無いのかしらん。
「悪かったです! ちょっとフザケただけですって! 正真正銘私ですっ!」
「……美鈴? 本当に美鈴なの?」
「ええ勿論! 紅美鈴、テーマ曲は『明治十七年の上海アリス』、気質は黄砂、趣味はコミック本鑑賞」
「1993年の映画『八仙飯店之人肉饅頭』の主演俳優は?」
「黄秋生(アンソニー・ウォン)」
「『中国女(LA FEMME CHINOISE)』のパロディ『LA FEMME BLONDE』を歌ったのは?」
「オリエンタル・マグネチック・イエロー」
「……やれやれ、どうやら本物のようね。そんなくだらないコト知ってるのは……」
むしろ何故咲夜さんがそんなコト知ってるのか、と疑問に思わないでもないが……とりあえず信じて貰えたようで何よりだ。
「ヤツは? シルバーブレードはどうなったの?」
「いやぁ、大人しいモンですよ。さっき咲夜さんに言われた事が、余程堪えたと見受けられますね」
「うーん……流石にちょっと言い過ぎたかもしれないわね。正直な話、あの剣が無かったら異変を解決出来なかったかもしれないもの」
咲夜さんにしては珍しく殊勝な言葉を耳にしてか、私の精神世界に潜むシルバーブレードがヒョイと顔を擡げた。
息を吹き返されては厄介なので、すぐさま首根っこ掴んで押さえつけました。あくまで比喩です。なにしろ心の中の出来事ですので。
ちなみにヤツの外見ですが……まあ、ややボーイッシュ気味な咲夜さんといったトコロでしょうか。何だかんだで影響受けたんでしょうね。逆にね。
「しっかしまあ、こんなメタリックになっちゃって。どこか具合の悪いところとか無い?」
「至って快調ですよ。お肌ツルツルで美肌の極み! なーんて言っちゃったりして……触ってみます?」
「いいの?」
咲夜さんは恐る恐る手を伸ばして、私の頬をひと撫でする。
彼女の手から伝わって来る温もりは、無粋な金属に遮られることなく、私の内部へと容易く到達した。
やっぱ重要なのは心ですわ、ココロ。人間であれ妖怪であれ、はたまた金属生命体(?)であれ、精神を蔑ろにしてはいけないね。
「まあ、当分はこのまま過ごす事にしますよ。門番の仕事に支障をきたす訳でもないし」
「これでは門番と言うより彫像ね。表に出しておくには少々立派過ぎるかしら」
「それならいっその事、咲夜さんの部屋にでも飾ってもらえれば嬉しいかなーって……」
「おバカ」
軽く握った拳で額を小突かれ、小さな音がカツンと響く。早くも金属の身体に馴染んでしまった感があるなあ。
こんな状態がいつまで続くのか、それは私にも分からない。どちらかが根負けするか、或いはシルバーブレードが付喪神として独立するか、結末は神のみぞ知る……かな?
まあ、私が負ける筈は無いのだけど。えっ? さっき結構危なかっただろ、ですって? 無問題っすよ無問題。アッハハーのハー……ええいコイツめ、大人しくしてろ!
「……ってなわけで、生まれ変わった紅美鈴の活躍にどうぞご期待ください!」
「もう紅の要素が何処にも無いじゃないの。髪の毛までギンギラギンになってしまって……」
「咲夜さんて、意外と細かいトコロを気にするんですねえ。それなら……」
これからは紅美鈴改め、銀美鈴(インメイリン)とでも名乗るとしようか。
トランザムは赤髪に戻るんですね
早く執事服持ってきてください。当然、半ズボンに絹靴下だからな。
ウドンゲ、テメェどっから生えて来た!
僕っ娘咲夜さんには執事服がよく似合うでしょうね。
メタリック美鈴が元に戻るのは何時か?ご馳走様でした。
それはそうとしてそれなりに面白かったです。
ナイル河のそこで錆び付くendじゃなくて良かったねシルバーブレードさん。
奇抜なストーリー展開なのに、話の基礎はしっかり東方の公式設定で固められている。
新しいのに親しみがあって、
伝統を維持しつつも飽きを感じない。
それができるあんたは、ヒーローさ
実に面白かった
量産されてたんだろーな…いい時代になった。
ど、どこから突っ込めばいいんだ……?wwwww
読んでて楽しかったです
美鈴が今後どうなるのやらw