あるところに一人のさとりがいた。
彼女は生まれつき人の心を読むことが出来、それが彼女がさとりと呼ばれる所以である。
人々はそんな彼女を忌み嫌い、迫害した。
人とは常々自分より遥かに強大な者を恐れ、無条件に差別する動物なのだ。
人々から虐げられた彼女は悲しみ、そして嘆いた。
――嗚呼、どうして私はさとりなのでしょう!
私が人の心を読むことが出来なければ誰も私を差別しないのに……。
何故私は心が読めるのでしょうか、神様。
やがてその彼女にも恋人が出来た。人族の心優しい青年だった。
彼はさとりである彼女にも愛を持って接し、やがて二人はめでたく結ばれる。
彼女は幸せに心を満たされ、しかしまた嘆く。
――嗚呼、どうして私の心を彼は読めないのでしょう!
彼がどれほど私を想っているかは分かっても、彼には私の想いは分かりやしない。
こんなに苦しみを感じるのなら、いっそ心を読めないようになってしまいたいわ!
そして彼女の第三の眼はやがて閉じる。
心が読めないようになり、彼女は喜んだ。
――これなら誰も私を怖がらない、と。
しかし人々は、次は彼女が何を考えているか分からないことに恐れおののいた。
そう、彼女の心は既に閉ざされてしまい、彼女の本心は誰にも解らなくなっていたのだ。
時は過ぎ、やがて彼女の唯一の理解者である青年も年老い、死んでしまう。
しかし、彼女は何故か生きていた。
年を取らず……そんな彼女を人々は迫害した。
彼女は大いに悲しみ、涙を零し、そして嘆いた。
――嗚呼、どうして私は生きているのでしょう!
人々は私を迫害し、私は老いず夫はこの世には既にいない!
そんな世界に、果たして私は生きる必要があるのでしょうか。
――いっそ彼のところへ私も。
そう思った彼女は自害を試みる。
短刀を振りかざし、腹に深々と突き刺す。
しかし、彼女は何時まで経っても死なず、血は流れなかった。
――なんで、なんで死ねないの!?
そう、彼女に死ぬことは許されなかったのだ。
長い間人々が彼女を恐れたせいで、彼女はその魂を妖怪のものに変えていたのだ。
やがて彼女は思う。
――死ねないのならばどうすればいいの!?
私には生きる意味がないじゃない!
私は、私は……なんで存在しているの?
そして彼女は――。
――幻想郷、某神社前の通りにて。
「ねぇ、魔理沙。 なにか血の匂いがしない? 」
「そうか? 私は何も感じないけどな。 もしかして怖いのか? 」
「そんな訳無いじゃない! これでも私は巫女よ、それぐらいで怖がりはしないわ」
「そのくせ金欠は怖いんだな。 笑えるぜ」
「なんですって? この――」
くだらない雑談をしながら通りを神社へ向けて進む彼女達。
明らかに異質な空気を放ちつつも、何やら楽しそうにしている。
――皆、みんな殺してやる。
近くで殺人が行われていたとも知らずに。
人々に迫害され、狂ってしまったさとりの少女。
……彼女は今もどこかで息を潜めているらしい。
彼女は生まれつき人の心を読むことが出来、それが彼女がさとりと呼ばれる所以である。
人々はそんな彼女を忌み嫌い、迫害した。
人とは常々自分より遥かに強大な者を恐れ、無条件に差別する動物なのだ。
人々から虐げられた彼女は悲しみ、そして嘆いた。
――嗚呼、どうして私はさとりなのでしょう!
私が人の心を読むことが出来なければ誰も私を差別しないのに……。
何故私は心が読めるのでしょうか、神様。
やがてその彼女にも恋人が出来た。人族の心優しい青年だった。
彼はさとりである彼女にも愛を持って接し、やがて二人はめでたく結ばれる。
彼女は幸せに心を満たされ、しかしまた嘆く。
――嗚呼、どうして私の心を彼は読めないのでしょう!
彼がどれほど私を想っているかは分かっても、彼には私の想いは分かりやしない。
こんなに苦しみを感じるのなら、いっそ心を読めないようになってしまいたいわ!
そして彼女の第三の眼はやがて閉じる。
心が読めないようになり、彼女は喜んだ。
――これなら誰も私を怖がらない、と。
しかし人々は、次は彼女が何を考えているか分からないことに恐れおののいた。
そう、彼女の心は既に閉ざされてしまい、彼女の本心は誰にも解らなくなっていたのだ。
時は過ぎ、やがて彼女の唯一の理解者である青年も年老い、死んでしまう。
しかし、彼女は何故か生きていた。
年を取らず……そんな彼女を人々は迫害した。
彼女は大いに悲しみ、涙を零し、そして嘆いた。
――嗚呼、どうして私は生きているのでしょう!
人々は私を迫害し、私は老いず夫はこの世には既にいない!
そんな世界に、果たして私は生きる必要があるのでしょうか。
――いっそ彼のところへ私も。
そう思った彼女は自害を試みる。
短刀を振りかざし、腹に深々と突き刺す。
しかし、彼女は何時まで経っても死なず、血は流れなかった。
――なんで、なんで死ねないの!?
そう、彼女に死ぬことは許されなかったのだ。
長い間人々が彼女を恐れたせいで、彼女はその魂を妖怪のものに変えていたのだ。
やがて彼女は思う。
――死ねないのならばどうすればいいの!?
私には生きる意味がないじゃない!
私は、私は……なんで存在しているの?
そして彼女は――。
――幻想郷、某神社前の通りにて。
「ねぇ、魔理沙。 なにか血の匂いがしない? 」
「そうか? 私は何も感じないけどな。 もしかして怖いのか? 」
「そんな訳無いじゃない! これでも私は巫女よ、それぐらいで怖がりはしないわ」
「そのくせ金欠は怖いんだな。 笑えるぜ」
「なんですって? この――」
くだらない雑談をしながら通りを神社へ向けて進む彼女達。
明らかに異質な空気を放ちつつも、何やら楽しそうにしている。
――皆、みんな殺してやる。
近くで殺人が行われていたとも知らずに。
人々に迫害され、狂ってしまったさとりの少女。
……彼女は今もどこかで息を潜めているらしい。
若干テンプレート気味かな、と。
いっそ怪談的な方向性に振り切ったりした方が土壌には合うのかな、なんて。
ただ、殺人を行うなら昔から行っているでしょうし、「なぜ今更?」と思ってしまいます。
もちろん、影で人を殺しながら普段はにこやかに生活している、というのも考えられなくもないですが。
ただもう少し、物語全体に説得力があると良かったかなと思いました。
別に実際に起こりうる必要はなく、起こりそう、ありそう、自然な行動、と思わせるような、
そんなSSだとなお良かったかなと思います。