Coolier - 新生・東方創想話

風邪ひき従者とカリスマ主人

2009/08/14 00:21:46
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咲夜が風邪をひいて寝込んでしまった。
まったくいい迷惑だ、メイドを統括する彼女がいない事で屋敷内の掃除や
食事の準備等の仕事が滞ってしまっている。
さらに、咲夜以上に紅茶を上手く淹れられる者がいないため
満足に紅茶を楽しむ事が出来ない。

おかげでパチェの所まで来て小悪魔の淹れた紅茶を飲む事になっている。
小悪魔の紅茶は悪くはないが、咲夜と比べるとランクは下がる。

「……不満そうね?」

読んでいる本から視線を外しパチェが言ってくる。

不満か、そりゃそうだ。
味も香りも確かに悪くはないが、普段飲んでいる紅茶はもっと美味しいんだ。

「当たり前じゃない!たかだか風邪ごときで寝込むなんて、人間って本当に使えないわね!」

ああイライラする。

クッキーを2、3枚ボリボリ

「仕方ないじゃない、彼女は人間だもの」

そんな事言われなくても解っている。
でも、

「寝込む何て大げさなのよ!」

風邪くらいで死ぬわけないんだから、全く人間の弱さには腹が立つ。
仮にもこのレミリア・スカーレットの屋敷のメイド長を勤めるのであれば風邪ごときで
休まれても困る(私が)。
主人の要望に応えられず何が瀟洒なものか。

レミリアは子供っぽく頬を膨らませている。

そんなレミリアを見てパチュリーは思う。
彼女がここまで不機嫌なのは紅茶の事もあるだろうが一番の理由は普段構ってくれている人が
いなくて寂しいのとやはり彼女の事が心配なのだろう。
まったく悪魔と言う連中は素直じゃない、心配なら素直に心配だと言えばいいのだ。
だから子供っぽくブスくれているレミリアに言う。

「……そうでもないわよ?」

「何がよ?」

「貴女は風邪を軽く考えているけど、人間は風邪のせいで死んでしまう事もあるのよ」

「へ?」

まったくの予想外の言葉だったのだろう。
その言葉にレミリアは間抜けな声を発する。

「まぁ、正確には風邪ではないけど、風邪によって抵抗力が弱っている間に他の病気になって
死んでしまう可能性も十分あるのよ?ほら、言うでしょ?風邪は万病の元って」

その言葉にレミリアの顔から表情が消えた。
その様子を見て魔女はクスクスと悟られない様に笑う。

「……私には関係ないわ」

言ってレミリアは席を立つ。

「あら、紅茶がまだ残ってるわよ、そんなに彼女が心配になったのかしら?」

ニヤニヤと笑うパチュリーにレミリアは言う。

「……口に合わなかっただけよ」

「そう、小悪魔がガッカリするわね」

「フン」

鼻で笑いレミリアは図書館を後にした。

「少しからかい過ぎたかしら?」

何てからかい甲斐のある親友だろうと七曜の魔女は愉快そうに薄く笑う。





――





紅魔館の一室で咲夜は床に臥せていた。
傍にはメイド妖精が一匹心配そうに看病していた。
彼女は朝から咲夜の看病をしているが一向に良くはなっていない。

そんな心配そうな妖精に咲夜は言う。

「ほら、もう私の事はいいから貴女は仕事に戻りなさい」

「ですが」

どう見ても強がりでしかない言葉に妖精メイドは心配そうにする。
そんな彼女に『本当に大丈夫だから』と言って彼女を元の仕事に戻した。
自分の体調管理の甘さでレミリアだけではなく、部下にも迷惑をかけてしまっている。
その事がどうしても我慢できなかった。

だから強がってはみたものの、正直に言えば辛い。
しかし、これ以上甘えるわけにもいかない。
自分一人のせいで仕事は滞ってしまっているはずだ。
それだけでも申し訳ないのに、これ以上迷惑はかけたくない。

とりあえず寝てしまおう。
睡眠をとれば幾分か楽になるだろうから

そう思い咲夜は目を瞑る。
程なくして彼女の意識は闇に落ちていった。





――





熱い。
異常な体温に身体が悲鳴を上げている。
高熱により汗を大量に掻いてしまっている為服が肌に張り付き気持ち悪い。
身体がだるくてどこも動かしたくない、目すら開きたくない。

寝てれば治るという考えは甘かった。

恐らく先程よりも熱が上がってしまっている。
近くに誰もいないのが怖い。
このまま誰にも気付かれずにいたら死んでしまうかもしれない。

風邪で弱っているせいかそんな弱音が出てきた。

一人でいるのが堪らなく怖い。

熱い。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

自然と息が荒くなっていく。

助けてほしい。
この理不尽な熱から開放してほしい。

その時額に何かが乗せられた。
水っぽくヒンヤリとしていて気持ちがいい。
誰かが濡れタオルを乗せてくれたようだ。

「うーん、こんなもんでいいのかしら?それとももっと水気はきった方がいいのかしら?
……メンドクサイわね」

そんな言葉と共にタオルが奪われてしまい、つい

「あ…」

と声を出してしまった。

「あら、起きたのかしら?」

その声に咲夜は目を開く。
聞き間違うはずのない声だった。

「お嬢、様?」

「そうよ、ちょっと待っていなさい」

言葉の後すぐに何かが乗せられた、何だかタオルよりも弾力があり
先程よりは暖かいが十分ヒンヤリとした何かが額に乗せられた。

「どう?」

「冷たくて、気持ちいいです」

「そう、良かったわ」

一体何が乗せられているのだろう?
何とか視線を動かし額にある物を確認しようとする。
するとおかしな物が目に映った。
自分の額にレミリアの腕が伸びている。
ではもしかすると今自分の額に乗っているのは……

「お嬢様?」

「……、一応吸血鬼も霊程ではないにせよ体温は低いからね」

「ですが、それでは」

「そうよ、まったく動けないの、いい迷惑だわ」

もっとも迷惑をかけたくない方に一番迷惑をかけてしまっている。
その事実は風邪で弱っている彼女には耐えられるモノではなかった。

「……申し訳ありません、私はメイド失格ですね、お嬢様にまで迷惑をかけてしまうなんて」

「そうね、私も何時までもこのままではいられないわ、だから早く風邪を治しなさい
それまではこうしていて上げるから」

治るまでこうしている。
その言葉に咲夜は慌てる。
そんな事をさせるわけにはいかない。

「で、ですが」

慌てる咲夜にレミリアは言う。

「いいから、たまには私にも日頃の感謝とかさせなさいよ」

「……」

その言葉に咲夜は目を丸くする。

「何よ文句あるの?たまにはいいじゃない」

レミリアは恥かしそうにソッポを向いてしまう。
そんな彼女に咲夜は

「……いえ、ありがとうございます」

と、静かに微笑んだ。

隣にもっとも信じる者の存在を感じ咲夜は安心して目を閉じた。
そして咲夜が眠るまでレミリアは彼女の額から手を退かす事はなかった。
16度目になりました。
突如カリスマのあるレミリアを書いてみたくなり書いてみました。
こんなんでどうでしょう?カリスマ、難しいです。

夏のクソ暑い中、どうして今頃風邪ネタなんだ?と自分自身疑問に思いながら書いていました。
なので、冬辺りの話だと思っていただければ違和感はないかと……(ぉ

最後まで読んでいただきありがとうございました。



煉獄様
ありがとうございます。
カリスマのあるレミリアをそういえば書いたことなかったなと思いまして挑戦してみました。
レミリアは口ではキツイ事言っても従者を大切にしていると思います。

カギ様
ギャップ良いですよね!
では、もっと2828してもらうべくこれから糖度のある文章にも手を出したいと思います。
ちなみに、カリスマの在るレミリアが好きですが、ヘタレているレミリアはもっと好きです(ぉ

18様
夏風邪は辛いですからね、しっかりと療養して下さい。
早くよくなる事を祈っております。

21様
こちらこそ読んでいただきありがとうございました。

28様
そう言っていただけるとは…
次回もがんばります。


コメントありがとうございました。
H2O
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コメント



0.1880簡易評価
3.90煉獄削除
風邪のせいで死ぬこともあるとパチュリーに聞かされたときのレミリアの反応や、
咲夜さんの額に自分の手を乗せて冷やしたりする姿がとても良かったです。
咲夜さんとの会話なども面白かったです。
15.100カギ削除
なんか2828しちゃった
ギャップっていいよね!(何
18.100名前が無い程度の能力削除
今風邪をひいてる私としてはレミリアに看病してもらいたいです(
21.90名前が無い程度の能力削除
おぜうさまが可愛いwww
良いお話、ありがとうございました。
28.80名前が無い程度の能力削除
もうちょっと長くこの話を読んでたかった。次回作に期待。