Coolier - 新生・東方創想話

三妖精の日々 ごーすと

2012/04/06 02:27:39
最終更新
サイズ
60.6KB
ページ数
1
閲覧数
995
評価数
3/9
POINT
560
Rate
11.70

分類タグ


<注意事項>

・書いたのが三月精3巻を読む前ですので、原作の状態とは違った設定部分があります。
・オリキャラが登場しますので、ご注意ください。

・以上を理解されたうえ、とりあえず何でも来い、というテンションで本編をどうぞ。







 人里の明かりはとうに消え、月明かりだけが暗い夜道を照らしている。深夜と呼ばれる時間帯だ。
 夜型の妖怪以外は、ほとんど寝静まっているだろう。
 そのような時刻にも関わらず、一人、夜の森を歩く妖精の姿があった。

 彼女、ルナチャイルドは度々夜に散歩に出かける。
 夜になると気分が高揚してくることがある。そんな時に家を抜け出して、外に出るのだ。夜の世界というものは、昼間とは違い、静かだ。僅かな光と、虫や風の微かな音。これだけだ。余計なものが無い。だからこそ、感覚が研ぎ澄まされ、普段は見えない物、気が付かないものを感じることができると思う。何か珍しいもの、例えば月から落ちてきたものを探すのにはもってこいの時間帯なのだ。
 普段、彼女はそんなに遠くまで行くことは無い。だが今日は何となく、以前暮らしていた家まで向かっていた。
 神社から魔法の森にある目的地まではなかなかの距離がある。多分、家に帰ってもあまり寝る時間は無いだろう。明日は寝不足になってしまうかもしれない。
 そう思いながらも、森の中を歩き続け、開いた場所に出る。そこにあったのは、引っ越す前と変わらない大木の姿だった。もしかしたら、あれから別の妖精が住み着いているのかもしれない。
 開けた場所、とはいったものの、月の光はあまり届かず、薄暗い。
 特にここに来ても用事があるわけではない。しばらく眺め、そろそろ帰ろうか、と思った時、視界の隅に月以外の光が映った。家の近くに見えたそれは、目を向けた時には既に消えていた。見間違いだったのだろうか、と再び帰路に着こうとすると、代わりに僅かな光を反射するものに気が付いた。
 その何かを確かめるべく、近付く。
 そこにあった物は、小さな、三日月の形をした髪飾りだった。誰かの落し物だろうか、それとも、月の欠片が落ちてきたのだろうか。後者だったらいいな、と思いつつ、ルナはこれを持ち帰ることにした。








「おはよー。」
「あら、ルナおはよう。」

 朝。ルナは昨日遅くなったせいか、いつもよりも起きてくる時間も遅かったようだ。どうやらスターは既に食事を済ませた様子で、読書をしている。サニーは恐らく、まだ寝ているのだろう。
 さすがにまだ眠気が残っているようで、とりあえず先に顔を洗うことにした。洗面用の水は冷たいが、かえってそれが刺激になる。
 身震いしつつも、しっかりと目が覚めたところで、ふと顔を上げたスターが変化に気が付いた。

「あら? 今日は珍しい物付けているのね。」
「ん? ああ、これね。いいでしょ。昨日散歩してたら見つけたのよ。形とか私にぴったりじゃない?」
「また拾ってきたの? よくもまあ飽きもせず拾ってくるわねぇ…。」

 ルナの髪には、昨夜拾った髪飾りが付いていた。窓から差し込む光を返すそれを、自慢げに見せる彼女に対して、半ば呆れ気味に返す。

「今回は結構遅くに返ってきたみたいだけど、一体何処まで行ってたのよ。」
「ん~、昨日はなんだか気分が乗っちゃってね~。前に暮らしてた家あったでしょ? あそこまでいっちゃった。」
「また夜中に随分遠くまで行ったわねぇ…。」
「そうそう、そういえばさ、その時変なものを見たんだけど──」
「お~は~よ~……」

 続けようとしたとき、寝ぼけたような顔でサニーが起きてきた。目も半開きで、大あくびをしながら歩いている。

「おはようサニー。とりあえず顔でも洗ってきたらどうかしら?」
「んぁ~…そうするー。」
「それで、その変な物って?」

 ふらふらと歩きながら洗面所に向かって行ったサニーを見送り、話を続けることにした。直後、洗面所から桶をひっくり返すような音と共に悲鳴が聞こえてきた。
 そうかと思えば、すかさずスターがバケツと雑巾を取り出し、掃除に向かっていく。何処かのメイドのような、流れるような動作。既に予測済みだった、ということなのだろうか。この妖精、意外と侮れない。
 入れ替わりに、すっかりびしょ濡れになったサニーが出てきた。下着姿の為、余計に寒そうである。代わりに眠気は吹き飛んだだろうが。

「ふぉおおおぉぉぉ……寒っ!」
「早く着替えてきなよ。家の中で凍死しちゃうかもよ?」
「そ、そうするわ……。」

 震えながら自分の部屋へと戻っていく。まずは体を拭いたほうがいいんじゃないか、と思ったが、言う前に居なくなってしまった。あとに残ったのは、ばら撒かれた水滴と足跡だ。それを見て、溜息をつきながら、近くの雑巾を取り、掃除を始めた。

 数分後。掃除も終わり、朝から大ダメージを受けたサニーも戻ってきた。
 三人揃ったところで、本日の予定を考える作戦会議。いつもの日常だ。

「あ~…朝から酷い目にあったわ……。」
「目が覚めてよかったじゃない。それよりサニー、今日はルナが何か面白い話があるみたいよ?」
「は? っちょ、別に面白い話とは言ってないわよ。」
「ほへ? 何かあったの?」
「ふふふ、それを今から聞くところ。さ、ルナ、遠慮なく~。」
「むぅ~……なんか期待しているみたいなところ悪いけど、たいした事じゃないからね?」

 そうして、昨夜の出来事を話し始める。とは言ったものの、以前暮らしていた家を見てきたこと、そこで見た光のこと、髪飾りのこと。これ以外、特別何かがあったわけではない為、すぐに終わってしまうのだが。
 初めは二人ともどこか呆れ顔であったが、光のことを話した時、サニーが興味を持ったようだった。

「ふぅん。その髪飾りが光を反射していただけじゃないの?」
「ん~…そうね、反射しているって言うよりも、ボーっと、こう、光の集まりみたいな感じのものが見えた感じかな?」
「ほうほう。確かに奇妙な感じね~。うん、よっし! 今日は特に予定が無いし、それの正体を調べに行くことにしよっか。」
「予定なんていつもないけどねー。」
「ま、ほとんどその日の直感と思いつきだからねー。」

 そんなわけで、本日の直感と思いつきは、元・家の様子見、その周辺の探索となり、魔法の森に向かうことになった。






 年中薄暗い森の中でも、いくつか光が差し込む開けた地がある。その中の一つに、三人が暮らしていた大木がある。
 枯れたり、倒れたりすることなく、以前とほとんど変わらない様子だ。だが、引っ越してからそれほど時間は経っていないものの、何処か懐かしく感じてしまう。

「なんだか久しぶりに見ると、今の家には劣るけど結構大きいわよね。」
「どうも今は誰も住んでいないみたいね。気配が無いわ。」
「結構いい物件だと思うんだけどなー。」

 今は誰も住まない、この見上げる程の大きな木は、妖精の力を借りずとも、さらに成長を続けていくだろう。いずれは、森で一番大きな木になるかもしれない。妖精と共に生き、成長を続けたこの木には、それほどの力を蓄えている。
 妖精としてはなかなか住み心地の良い物件だった為、近いうちにまた誰かが住み着くだろう。そうすればさらに成長を遂げるかもしれない。
 しばらく三人は眺めていたが、本来の目的を思い出す。

「そうそう、それで、ルナが何か見たっていうのはどのあたりなの?」
「ああ、え~っとね……大体あの辺かな?」

 今居る位置から数歩、離れた辺りを指差した。そこには一見すると何も無いように見える。
 サニーが近くに行き、何かを探るようにじっくりと観察をする、が、勿論それで何かが見つかるわけも無い。即座に諦めた。気を取り直して宣言する。

「それじゃあ、昨日ルナが見たものは何だったのか。その手掛かりを探してみよう! いざ、不思議発見!」
「「おー!」」

 合図と共に、サニーはスコップを。ルナはルーペを。そしてスターは何処から入手してきたのだろうか、ダウジングロッドを鞄から取り出し、一斉に周辺に散った。そうして、思い思いの方法で周辺の調査をしだした。





 手掛かりを求めて周辺を探すにしても、どこまでの範囲を調査するべきなのか、情報が少ない。手探りにも等しい状況で、ぶっつけ本番でやっても何か発見があるはずが無い。一向に進展が無く、そんな状況が1時間もすれば当然飽きてくる。

「あーもー!! ぜんっぜん何も見つからないっ!」
「そうよねぇ、よく考えてみるとルナが髪飾り拾ったのと、変な光を見た『気がする』ってだけの曖昧な情報だしね。単なる見間違いって考えるのが普通よね。」
「だから大したことじゃない、って言ったのに……。」
「むぅ。でも何にも無しっていうのもつまらないわよね…。何か変わったもの見つかってない~?」
「そんなこと言われてもなぁ……。」
「変わった事…ねぇ…。強いて言えばこの辺りだけ生物の気配が少ない感じがする、ってくらいかしら?」
「へぇ、そうなの? なんで?」
「さあ?」

 結局のところ、手掛かりは一切見つかっていないということだ。

 その後もとりあえず調査を続けるものの、手掛かりになりそうなことは何一つ見つからなかった。昼過ぎから始めたはずの作業は、気が付けば日が傾き始める頃合にまでなっていた。なんだかんだで、結構楽しんでいるようだ。
 しかし、さすがにこれ以上探しても、何も見つからないだろう、という結論が出され、調査を終了し、帰宅することになった。

「結局何も無かったねー。」
「何も無いっていうのもなんだか負けた気がして癪だわ…。」

 後片付け、とはいっても持ってきた道具以外に収穫物があるわけでもない。ただ鞄にしまうだけですぐさま完了した。

「それじゃ、帰るとしますかー。」

 そう、家に向かって歩き出そうとした、そのときだ。


 ──振り向いた先、目の前に見知らぬ少女の姿が現れたのは。

「「「うひゃああ!?」」」

 あまりにも唐突な出来事に、思わず悲鳴を上げてしまう。しかし、目の前の少女は驚いた様子も無い。
 ただ、こちらを見つめているだけだ。
 外見から察するに10歳くらいだろうか? 落ち着いた雰囲気を持った少女だ。もうすぐ夕方と呼べる時間だというのに、何故一人で、それも危険が多い森の中に居るのだろうか。

「っく……この私達に音も無く忍び寄るとは…こいつ…只者じゃないわね…!」
「私の能力を持ってしても感知できなかったわ……。」
「スターのセンサーすらも抜けてくるとは……やるわねこいつ…。」

 一方三人は何故か対抗心を燃やしていた。
 その場の勢いで身構えるものの、相手は先ほどから動こうとしない。それこそ置物かと思ってしまうほどに。だが、まばたきをしている所を見ると、どうやら人形や置物ではないだろう。
 しばらく睨みあった結果、痺れを切らした三人が先に動いた。

「あんた、何者?」
「………。」

 反応は、無い。だからもう一度。先ほどよりも大胆に仕掛けてみることにした。

「おーい、ちょっと、聞いてるのー…ぉぉ?」

 少女の身に触れようとした瞬間。サニーの手は体ではなく、空気を掴んだ。予想外の手ごたえに、前につんのめりそうになるが、何とかバランスを持ち直す。それと同時に一気に血の気が引いた。後ろからその光景を見ていた二人の顔からも同様に血の気が引く。真っ青な顔でサニーがふと、足元に目を向けると、少女の足は
 地面に付いていなかった。

「「「ヒイイィィィィイ! 出たああああぁぁぁぁぁ!!」」」

 少女の正体を理解した瞬間。涙目になりながら一目散にその場から逃げ出す。転びそうになりながらも三人とも同じ方向に、神社の近くにある家の方向に向かっていった。かなり、逃げ慣れている。
 そんな三人の姿を、少女はただ、ぽかんと見つめていた。






「……び…びっくり…した……。」
「…あ、あんな、…とこに、亡霊、が…出てくる、なんて…。」
「あの、周辺に…生き、物が、少なか、った、のは…そ、そういう…こと、だったの、ね……。」

 息を切らせながら、先ほどのことについての確認をする。
 魔法の森からかなりの距離を逃げて来たものだから、さすがに体力が切れたようだ。

「でも…、ここまで、来れば…大、丈夫よね…。」

 少しずつ、呼吸が整ってきたようで、ふぅ、と一息つきながら後ろを向いた時、サニーの表情が固まった。
 それを見た後ろの二人も大体の察しはついた。だが、恐る恐る、背後を確認する。
 最後尾のルナのすぐ後ろ。そこに先ほどの少女が、不思議そうにこちらを見つめていた。

「「「うわあああああああああああ!!」」」

 絶叫しながら再び逃げ出す三人。だが今度は状況が変わった。
 後ろを見ると、少女の姿は付いてきていたのだ。

「ちょ、ちょっとおおおおおお!! なんで何もしてないのに私達に憑いてくるのよおおおおおおお!」
「わ、私達を呪ってもいいことなんてないってばああああああああ!」
「──! そうだわルナ! もしかすると、その髪飾り! それ原因かも! それ、それ早く捨ててええ!!」
「へ!? わ、わかった!」

 昨日ルナが拾ったという髪飾り。持ち主がこの少女だったとしたら、それを取り戻そうと追ってきてもおかしくは無い。という考えに辿り着いたスターが叫ぶと共に、勢いよく、何処かへと投げる。
 髪飾りは三人の進行方向とは真逆。少女の頭上を越え、遥か後方へと投げられた。と、同時に髪飾りの軌道を追うように、少女の視線が後ろへと向いた。その隙を見逃すわけにはいかない。

「! 今のうちっ!」

 僅かな隙を使って木々の間に滑り込む。
 少女が再び三人の方向を向いた時、既に彼女達の姿は無かった。
 もう一度、ゆっくりと髪飾りが投げられた方向へと目を向けると、滑るように、来た道を引き返していった。


 三人は、それから家まで全速力で飛んだ。
 家に着くと、恐怖と緊張が切れて、疲れが一気に出たのだろうか、会話もそこそこに、それぞれの部屋へ戻り、倒れこむように眠りについた。






 朝、差し込んだ光が顔に当たり、嫌でも目が覚めてしまう。
 どうも寝方が悪かったせいなのか、体のあちこちが痛む。ふと胸元を見ると、服が所々汚れてしまっていた。昨日は森から一気に逃げ帰ってきたまま、汚れとかを気にする余裕も気力も無く、そのまま寝てしまったからだろう。多分、布団も汚れている。恐らくルナだけでなく、他の二人もそうだろう。
 ひとまず、着替えようとベッドから降りる。
 すると、机の上に見覚えのある物があった、昨日投げ捨てたはずの髪飾りが。そして、隣には少女までもが居た。

「い……やあああああああああああああああああああ!!」

 朝から家中に悲鳴が響き渡る。

「何ー? 朝からどうしたのよルナ……ひぃやああああああああああああああ!?」

 悲鳴を聞きつけたスターが眠そうな目で入ってきたが、少女を見た瞬間、目を見開き、即座に逃げて言った。

「え!? っちょ、何!? 何事!? 何があった二人ともおおぉぉわああぁぁぁああ!?」

 続けざまに二人の悲鳴を聞いて、ただ事ではないと判断したサニーが入ってくるものの、スター同様即座に退室。
 部屋には少女と、恐怖と混乱で気絶寸前のルナの二人のみが残されていた。

 助けはもはや期待できない。このままやられてしまうのだろうか、そう思って色々諦め始めたときだ。すると何故か急に冷静になって状況を確認する。そうして気付いたことは、目の前の少女はこちらを見つめるだけで、敵意が一切感じられないことだった。
 恐怖は抜けきらない。だが、よくよく観察してみると、さらに気付く事があった。まるで壊れかけたビデオ映像のように、時々少女の姿が掠れるのだ。
 思考はやたら冷静なものの、体はまだ震えている。しかし震える手と、震える声で問いかけてみた。

「ねぇ、それ…って、貴女の物なの…?」

 髪飾りを指すと、それに気付いた少女は髪飾りとルナを交互に見る。何度か繰り返し、言おうとしていることを把握したのか、笑みと共に頷きを返した。






 ルナが亡霊少女に対して警戒を解くには、それほど時間は掛からなかった。
 妖精は自然の化身である。だから気質、というか、相手の纏う空気にはそこそこ敏感である者も多い。彼女からは悪意や敵意といった感情を一切感じなかった。無論、それで安全というわけでもないし、恐怖心が完全に無くなるわけでもない。
 髪飾りを持っているのならばまだしも、何故彼女が捨てたはずの髪飾りと一緒に、ルナの元へ来たのかはわからなかった。
 もしかしたら、持ち去った上に、昨日捨てたせいで更に恨まれたか。と、思ったが、そっちには考えないことにした。
 ひとまずどうするか。二人と相談するることにして、少女を連れて部屋を出たところ、再び二人の絶叫が響き渡ることになった。





 恐怖で軽くパニック状態になっているサニーとスターを落ち着かせるのに、随分と時間が掛かってしまった。今はどうにか会議ができる状態になっている。勿論、二人も完全にパニックから回復したわけではなく、顔色はどちらかといえば青に近い。

「とりあえず、この子を何とかする方法を探せないかなー…。」
「むぅ~…でも亡霊でしょー……ちょっと怖いわよ。」
「そうね、でも呪われる前にさっさとお祓いしてもらったほうが…って、そういえばこれって、ルナは既に呪われていることになるのかしら?」
「へ……う……言われてみればそうかも……。」

 指摘されたことに、消えかけていた恐怖心がまたちょっと盛り返す。どちらにせよ、放置するのは得策ではないようだ。
 なんだかんだでサニーは状況に慣れてきたのか、真面目に考えているようだ。

「確か未練が無くなれば成仏するのよねー亡霊とかって。あー、霊夢さんとかなら問答無用でお祓いしちゃうんだろうけど…。あの巫女に頼んだらなぁ……」

 想像してみる。亡霊のついでに退治される想像しか浮かばなかった。正直、あんまり頼みに行きたくは無い。

「かといって、未練…ねぇ。」

 相変わらず少女はこちらを見つめているだけだ。先ほどわかったことなのだが、どうやらこちらの声がほとんど聞こえていないようだった。
 そのため、現在情報を得る方法も模索中だ。
 なんとか筆談も試してみたのだが、手がすり抜けてしまい、筆を持つことすらできなかった。
 さてどうしよう、と悩んでいる時にふと、少女が挙動をとった。
 彼女が示したのは机の上におかれている天狗の新聞だ。その意味を理解し思わず、おお、と感嘆の声を上げる。なるほど、確かに新聞ならば様々な文字が書かれている。それを指でなぞれば声が無くても、筆も使えなくても、筆談と同じことができるだろう。若干、文字を探すのは大変だが、現状思いつく限りで最も有効な方法であることは間違いない。
 早速利用して会話を試みる。まずは

『あ・な・た・の・な・ま・え・は』

 一文字ずつ、確認しながらの質問だ。そして、少女からの回答が帰ってくる。
 一文字目。その指先が向いている場所にある文字は……

「この辺…『な』かしら?」
「えー? あの指先からしてこっちの『爆』じゃない?」
「名前に『爆』って…どんな名前よ……。こっちの『林』じゃないの?」

 あーでもない、こーでもない。と議論を始め、早速会話につまづいてしまった。
 少し遠すぎた、そのことに気付いた少女は新聞に近付き、直接文字を指した。

「あ、どーも……。」



 しばらく続けて、ついに手にした、その情報とは……。

「なるほどなるほど、つまりこの情報をまとめると…本名不明。気が付いたらあそこに居た。ってことね。」

 迷宮入りした、ということだ。





「あー…どうしよっか?」
「いっそのことこのままにしちゃえば──」
「私は呪われるのは嫌だってば!」
「まあでも、なんかこの子なら大丈夫そうじゃない?」

 少女の方を見ると、申し訳なさそうではあるが、それよりも先ほど会話が通じたことが嬉しかったのだろうか。笑みを浮かべてそこに居る。その表情からは、未練などの負の感情を持っているとは思えない。

「とはいってもねぇ…これは私達じゃお手上げかな…。」
「巫女……よりも先に、そうね、魔理沙さんあたりに相談してみるっていうのはどうかしら?」
「ん~…確かに物知りっぽいけど……解決法知ってるかなぁ……。」
「でも巫女よりは安全性高いんじゃない? ほら、前のツチノコの騒動でも一応手助けしてくれたし。まぁ解決はしてなかったけど。」

 しばらく話し合うものの、良い考えが浮かばなかった。三人集まれば文殊の知恵、とは言うが、残念なことに彼女ら三人の知恵では、そこまで届かなかったようだ。

「んじゃ、とりあえず魔理沙さんのところに行ってみる、ってことで決定かな。」
「異議なーし。」
「今日もまた森ってことね。で、この子どうする?」
「ルナが拾ってきたんだから、ルナが面倒見てね。」
「右に同じ~。」
「ぇ~……。」

 ちらりと横目をやると、そこには誰かと一緒に居ることが嬉しいのか、始終笑顔の少女が映る。
 今まで誰も彼女を見つけることは無かったのだろうか? 一人寂しく、森に居たからなのか? もしかしたら、見つけてくれたことが嬉しくてルナに付いてきたのかもしれない。

(あれ……? やっぱりこれって私取り憑かれているのかしら…?)






 『霧雨魔法店』。乱雑に詰まれた様々な物体に埋もれながらも、なんとか文字が見える程度の看板が家の前に立っている。
 立地の関係から、こんなところまで来るような人間は無いに等しい。おまけにここの店主は基本的に居ない。そもそも店として機能しているのかすら怪しいこの建物だが、運の良いことに、今日は出掛けていないようだった。
 ノックをすると、ちょっと待ってくれ、といった返事の後、少し間をおいてから扉が開く。

「おぉ? なんだ、お前達か。」
「あはは……ちょっと頼みたいことがありまして…。」
「ほほう、この私に依頼か。ん? そういやお前達三人組じゃなかったか? なんだ、仲間増やして魔王でも退治しにいくのかい?」

 はっはっは、と笑いながら言い放つ。少女の姿は少し前からほとんどぶれておらず、安定しているため、妖精仲間とでも勘違いしたのだろうか。
 何かの実験の最中か、それとも終わった後だろうか。少し煤を被ったような状態で石段に座り、用件を聞こうか、と言うと言葉を待った。

「あはは、実は…その増えた子についてのことなんですけど。」
「うむ。」
「どうも、その、亡霊みたいでして、ルナが取り憑かれたみたいなんですよ。」

 聞くと同時、あからさまに一瞬引いた。よく見るといつの間にか一段分、後ろに下がっている。一連の動作が全く見えない、正に神速の領域だ。そして表情は変わっていないが、冷や汗が一滴、流れている。

「ほ、ほう。そ、そうなのかー……。」
「それで、どうすればいいのかわからなくてですね…。なんとかできませんか?」
「むぅ、そうだな…。」

 視線がこっちにうつすなよ、と言っている。だが、一度ルナと少女の方に目を向けてから、徐々に真面目な顔になっていく。さすがはプロ。そう思ってしまうほどだ。どうやら一応、協力してくれるような姿勢である。

「どう、ですかね?」
「なんとかなりますか?」
「む、まあ安心したまえ。前にも言っただろう? 私はあらゆる分野で専門家だとな。」

 どこか自信無さげにも見えるが、胸を張って答える姿は、若干の安心感を与えてくれる。そのうえで、再び二人を上から下へ、なめるように見つめた。

「うーん……見たところ、危害を加えそうな感じは無いからなぁ。ちなみに、お前らはこいつをどうしたいんだ? いっその事、放っておくのもありかもしれないぜ。」

 冗談半分での提案だったが、二名ほどそれでもいいかも、という表情をした。予想外の反応にちょっと戸惑う。

「いやいや、確かに害はなさそうですけど……放っておくのもなんか不安が……。」
「いいじゃない。いっそのことオプションってことで弾幕ごっこで活躍できるかも♪」
「それは確かに魅力的……でも、ねぇ……。」
「もしも成仏させてやりたい、っているのなら、未練を晴らしてやるのが定石だよなー。そいつに聞いてみたらどうだ? 何かヒントが得られるかも──」
「それがやってみたんですけど、未練の手掛かりどころか、名前すらもわからない状態なんですよ……。」
「あ~……。」

 折角思いついた提案も、即座に否定されて少し落ち込んだ。言葉を一瞬失ってしまった魔理沙に、慌てて唯一ヒントになりそうなことを伝える。

「え、えーと。ほかには、多分この髪飾りが鍵なんじゃないかなーって、これと一緒についてきたし……。」
「お、そうなのか? ちょっと見せてみろ。」

 三日月の髪飾りを出す。差し出した時、少女がどこか不安そうな顔を見せたところを見ると、何か少女に関係があることはわかる。だが、わかるのはそれだけ。これでは情報が少なすぎた。
 しばらく考えた後、魔理沙が顔を上げる。

「むぅ……。これだけじゃさっぱりわからんな…。お前らちょっと待っててくれ。情報を収集してくるから。」
「へ!? 待つって何処で待てば…」
「ん~と、そんじゃあここで待っててくれ。運が良ければすぐに終わって戻ってくるぜ。そうだな、もし夕方までに帰ってこなかったら明日来てくれればいいさ。んじゃ。」
「え、ちょ、っちょっと~!」

 言い終わるが早いか、さっさと飛んでいってしまった。さすがに妖精では彼女の速度に追いつくのは不可能だろう。
 魔法店の看板の前に、彼女達は取り残され、小さくなっていく魔法使いの姿を眺めているしかなかった。




 霊夢が掃除道具を片付けようとしたところ、縁側に人影を見つけた。
 その人物の隣には、既に急須と茶請けの煎餅。そして湯飲みまでもが二つ、並んでいた。

「よう、霊夢。邪魔しているぜ。」

 いつものことではあるが、とうとう勝手にお茶の準備をするほどになった事にあからさまに溜息をついた。もはや呆れを通り越して歓心する。

「あんたね……一体いつから居て何処から入ってきたのよ…。それと人の家の食べ物を勝手に漁らないでよね。」
「はっはっは。勝手知ったるなんとやら、だぜ。まあお前の分も用意してやったんだ。ありがたくいただいてくれ。」
「はぁ…そこだけは褒めるべきなのかしら? まあ、自分の分を用意する手間が省けたら良しとしましょう。」

 竹箒を近くに立て掛け、そのまま縁側へと座る。

「ところで霊夢。亡霊って奴は未練が残っているからこの世に留まっているんだよな?
「いきなりね。突然何? 今度は亡霊の研究でも始めたの?」
「まあ、大体そんなところだ。」
「そう、ま、せいぜい呪われないように気を付けなさい。それでだけど。基本的にはそうね。何か強い想いが残って、あの世に逝けず現世に留まってしまったのが亡霊。他にも自分が死んだことに気付いていなかったり、何か呪術的な要因で無理矢理縛られて亡霊になることもあるかな。滅多に無いことだけど。」
「ほうほう、ちなみに、どうすれば消えるんだ?」
「手っ取り早い方法とすれは、退治しちゃうことかなー。どうせ亡霊なんてその辺の妖怪と大差ないし。」

 予想していた回答だが、確かに手っ取り早い方法はそれだろう。だが、今回求めてきた答えではない。あの無害そうな少女を退治するというのはなんだか気分が良くない。
 だから他の方法を求める。

「あー…、でも未練を晴らしたりすれば消えるんだよな?」
「まあ、それが一番いいんだけどね~。結構めんどくさいのよ。割と原因がはっきりしていることもあるんだけど、漠然とした記憶だけってのも結構多いし。」
「そうなのか。ちなみにほとんど記憶が無いっていう場合はどうやったら成仏させられる?」
「やけにこだわるわね。そうね~……ほとんど記憶が無いってのは、大体は死んでからかなりの時間が経過している事が多いのよ。そういうのって、よほど強くない限り存在そのものが消えかかってるから、何か思念の残りやすい依代になるものに宿って辛うじて保ってることがあるわね。でも放っておくと周囲の思念とかに取り込まれて、悪霊とか、集合霊とかになる可能性が高いわ。」
「…ほう。って、ちょっとまて、幽々子はどうなってんだあれ?」

 ふと気になったのは冥界に住むお嬢様。冥界には幽霊やらなにやら大量にいるはずだ。それに彼女も亡霊になってから相当長い時間を過ごしているはず。霊夢の話が本当であれば、すでに悪霊となっていてもおかしくはない。

「さあ? あいつの場合特殊なんじゃないの? それこそさっき言ったような呪術とかさ。ていうか、あいつの場合はもうとっくに悪霊みたいなもんじゃない。面倒なこと起こすしさ。」
「確かにな。って、脱線してるぜ。」
「脱線したのはあんたでしょ。」

 涼しく返された。ひとまず本題に戻ろうとして、魔理沙が口を開こうとした直後だった。

「例えそういう状態でも、何かしらのきっかけで記憶が戻ってくることもあり得るわよ。周りに取り込まれず、自分の存在を保とうとする意思があればね。そうなれば徐々に記憶が戻るかもしれないわ。未練にすがるのではなく、ね。」

 聞こう、と思っていたことは先に答えられた。妙に勘の良い彼女のことだから、もしかしらた何かを察したのかもしれない。
 仮に、そうだったとしても、この件に巫女は自分から関わることはないだろうが。

 ふと気が付いたときにはだいぶ時間が経っていた。既に日が傾き始めている。それを見て、三妖精のことを思い出す。

「おお、もうこんな時間か。ありがとな。そんじゃ、私はちょいと用事があるからな、失礼するぜ。」
「そう。ま、呪われたらうちに来なさい。お賽銭は貰うけど。」
「はは、考えておくぜ。」

 そういって、魔理沙は少々慌てた様子で箒に跨り、森へと飛んでいった。




 ──その頃。

「ねぇ、そろそろ日が暮れるけど。」
「帰って…こないね。」
「どうする?」
「私はあんまり暗い中動きたくないかな……。しかも森の中だし。」
「夕方までに帰らなかったら帰っていい。って言ってたし、帰る?」
「そうねー、待ってても退屈だし、そうしよっか。」

 いつ帰ってくるかもわからない魔理沙を待っているのは、非常に退屈だ。家に入って待っていようとも考えたのだが、中は外以上に物が散乱しており、とてもくつろげるような状態ではなかった。おまけに何かの薬でも調合していたのか、変な臭いもする。
 だが外で待っていても、周辺の探索くらいしかやることはない。それすらも飽きたとなると……。

「明日また来ることにしますか。」
「ぅ~……まだ解決しないのね……。」

 帰るしかない。

 ちなみに、彼女達が帰ってから約十分後、入れ違いの形で魔理沙は帰宅したのだった。




 その夜。
 皆が寝静まった頃、ルナは一人寝床を抜け出して外へ。
 ふと、背後に気配を感じた。しかし恐怖は感じない、後ろに居るのは誰なのか、わかっているからだ。
 振り返ると、そこには予想通り、少女が居た。
 もしかしたら、霊は寝る必要が無いから夜中は退屈なのかもしれない。だから声を掛けてみた。

「あなたも一緒に散歩に行く?」

 問いかけると、返事の代わりに頷きを返した。ルナも一言だけ。そう、と返して歩き出す。

 人の気配も、獣の気配も無い夜道だ。そこを一人の妖精と、一人の亡霊が歩く。周囲からは風が草木を揺らす音、微かに聞こえる虫の音色。そして自らの鼓動、足音。あの日の夜と同じだ。静かな夜中は、自分一人になったような孤独感と共に、どこか穏やかで、開放的な感覚を味わえる。その感覚が好きだった。
 二人の少女には会話が生まれるわけでもなく、ただ静かに夜の道を進むだけだ。それでも、二人ともどこか楽しそうな表情を浮かべていた。

 目的も無く、ただただ歩くだけ。だったはずなのに、気が付いたらまた森に来ていた。
 もしかしたら引き寄せられているのかも、という考えも浮かんだが、苦笑と共に消した。
 どうかしたのか、と言いたげな顔を少女が向けたが、なんでもない、と返し、思いついたことを続けて言う。

「ねえ、何か思い出せた?」

 言葉に、少し悩むような仕草の後、首を横に振る。
 何気なく聞いてみただけのことで、期待していたわけではないが、やはり少し残念と思ってしまう。
 続く話題も無く、少しの沈黙の後、そろそろ帰ろう。と向きを変えた時のことだ。獣道から人影がひょっこりと現れた。

「おや、いつぞやの妖精じゃないか。また奇妙な時間に奇妙なところで会うもんだ。」

 独特の形に湾曲した大鎌を持って現れたのは、三途の川の船頭、小野塚小町だった。

「あ、お久しぶりです。こんな時間に会うなんて珍しいですね。死神さんも散歩ですか?」
「ん? まあ、ちょっとね。」

 突然現れた姿に驚いたが、見知った相手だったことに安堵しつつ、互いに挨拶を交わす。そして彼女の視線はルナが連れている亡霊の少女を捉えた。

「お前さん、まあ随分と長く彷徨っていたみたいじゃないか。妖精なんかに取り憑いているよりも、さっさと成仏したほうがいいと思うよ。 このままだと、悪霊になって、誰かに狩られちゃうかもしれないよ?」

 こんな風にね、と鎌を振り回してみせる。見た目とは裏腹に、鋭く風を裂く音に、ヒィ、と短い悲鳴を上げて二人は縮こまり、震え上がった。
 その姿を見て小町は脅かしすぎた、と罪悪感を感じてしまう。

「あ、悪霊になるって、本当ですか……?」

 謝ったほうがいいかな、と思っていた時。カタカタと震えつつも先ほどのことについての質問を投げかけられた。

「ん、ああ、そうだね。今もどちらかって言えば『なりかけ』って所だろうな。いつなってもおかしくは無いだろうさ。」

 言葉に再び怯えた。少女は不安そうに死神と妖精を交互に見つめている。小町は話しつつもちらちらと、その姿を観察していた。

「うーむ……今はあんたに憑いている影響だろうかね? 若干は濃くなってるかな。そもそも妖精に憑くなんて珍しいから、よくわからないんだけど、この様子ならすぐさま周りの悪霊の仲間入り。ってことは無いと思うね。でも、油断しちゃいけないよ。あんまり力の強い悪霊がいると、取り込まれてしまうからね。」
「う……で、でも、成仏ってどうすればいいのかわからなくて……。」
「基本だけど、未練があれば晴らしてやるのが一番さ。そうでなくても、その子が自分自身の死を受け入れて、何かしら心を満たすことをできれば自然と逝けるはずだ。もう一つは、最後の手段に近いけど、退治とか強制的に逝かせる方法だね。退治屋とか、あたいみたいな死神に無理矢理連れて行って貰うのさ。」

 あんまりオススメできる方法じゃないんだけどね。と、苦笑しながら言う小町に、もしかしたら、という考えが浮かぶ。

「この子を、連れに来たんですか…?」

 その言葉に、少しの間が空いた。小町は変わらぬ表情で、二人をしばらく見つめ、小さく笑ったと同時に答えを返した。

「いや、別に。眠れないから散歩してたら、なんだか妙な霊の気配がしたんでね。ちょっと様子を見に来たのさ。一応、魂を導くのがあたいの仕事だしね。ま、あんたがどうしてもって言うなら連れて行ってもいいよ?」

 それは魅力的な提案だ。今ここで連れて行って貰えば、悪霊になったり、呪われてしまう。なんてことは無くなる。全ては解決し、心配事は無くなるのだから。だが、

「いえ…今はやめておきます。」
「ほほう、どうしてだい?」

 理由を聞かれると、迷った。なんとなくそれはしたくないと思っただけだ。ただの気まぐれ。だが、答えを変える気にはならなかった。
 ルナが答えにしばらく迷っていると、ふ、という短い笑いが聞こえた後に、

「まあ、妖精が人助け、ってのもいいかもしれないね。たまには良いことしておいても損はないからね。だけど、覚えておきな。死神っても皆あたいみたいな奴じゃない。もしかしたら、問答無用で連れて行く奴も居るかも知れない、ってことをね。」

 忠告はした、といった風で、いい終えると共に彼女は去っていく。
 しばらく後姿を見つめ、傍らの少女と顔を合わせる。

「……帰りましょうか。」

 言葉に頷きが返ってきて、二人は立ち上がり、再び夜道を歩き出した。









 翌日。本日の三人会議が始まる。

「さって、今日は──」
「まずは魔理沙さんに会って来ないといけないんだっけね。」

 立ち上がって何かを宣言しようとしたところに割り込まれ、サニーが一時停止する。忘れかけていたのか、表情が固まっていたが、すぐに思い出したようで、あわてて取り繕う。

「そ、そうだったわね。じゃあ、まずは森かな。」
「そうなるわね。あ、そうだ。ねぇ一つ提案だけどさ、この子に名前付けてあげたらどうかな? いつまでも『あなた』とか『この子』じゃそろそろ呼びづらいと思わない?」

 予想外な提案に、全員が驚きの表情を見せる。だがそれもすぐに崩れ、穏やかな笑みに変わった。

「良いアイディアじゃない。そうね、もうルナのオプションみたいな感じで違和感無いし、仲間みたいなものよね。」
「このまま弾幕勝負もできるようになれば完璧よねっ。」
「オプションって何よオプションって……。私は呪われてまで強くなりたくはないんだけど……。」
「ふふ、いいじゃない。見た感じ優しそうな子だし、それに案外いいペアになるかもしれないわよ?」
「ぅ~……。」
(ふふ、なんだかんだでルナもまんざらではなさそうよね。)

 名前を付ける。その言葉を聞いた後から少女は嬉しそうにくるくると小躍りしてした。
 というわけで、本日の議題はどんな名前にするか、に決定したようだ。

「とはいっても、私達他人に名前なんて付けたこと無いし、どういうのがいいのかしら?」
「そうだわ。私達の名前から一文字ずつ取るとかどう?」

 最初に案を出したのはスターだった。自分の名前からとる、命名する上でなかなか悪くない提案だ。

「え~っと、『サニーミルク』『ルナチャイルド』『スターサファイア』……これからどう取る?」
「そうね~、頭から取ってみたり…」
「『サルス』……変じゃない? 後ろから取ってみるとか。」
「『クドア』……これも、なんかしっくり来ないわ。あえてここは真ん中とか。」
「真ん中……えっと、『ミャフ』? 猫みたいで可愛いんじゃない?」
「でも猫じゃなくて人間だからねぇ~。」
「これじゃ決まらないわね……じゃあ、ぱっと見て思いついた印象から名前を付けてみるとかは?」

 続いての提案者はサニーだ。直感で決める、あだ名向きの決め方な気はするが、それも有りかもしれなかった。

「それでは第一発見者のルナからどうぞー。」
「へ!? 普通提案者からじゃ……もうっ、わかったわよ……え、っと…亡霊だから……そのまま『霊子』とか?」
「なるほど、シンプルで良さそうな感じね。よし、次スターね。」
「そうね~、なんだか迷子の子みたいな感じもするし、『迷』からちょっと捻って『メイ』ってどう?」
「結構良いんじゃない? 人の名前っぽいし。
「発想の元はアレだけどね。」
「まあね、ちなみに、最後。サニーの意見は?」
「ん? んとね、三日月の髪飾りと一緒に来たから、『ミツキ』なんていい感じじゃない?」
「おぉ~、なんだか人間っぽい名前ね。」
「ところで、案を出すのは良いけど、どう決めるの?」
「そうね~、本人に気に入ったものを決めて貰ったら?」
「なるほど、一番確実ね。」
「異議は無いわね。じゃあちょっと待ってて。」

 そういって紙と筆を取り出し、今出たアイディアを書き綴る。書き終わった紙を良く見えるよう、テーブルに広げ、彼女に問いかける。

「この中でどれが一番いい?」

 問いかけと同時に、真っ先に指で示した文字は…

「『メイ』がいいのかしら?」

 こくこく、と何度も頷きを返してきた。どうやら相当気に入ったようだ。今、彼女の名前が決定した。ということは

「よっし、よろしくね、メイ。」
「これから私達の仲間ね。メイ。」
「なんだか本来の目的とずれてきた気はするけど、メイ。改めてよろしくね。」

 『メイ』と名付けられた少女は、一層嬉しそうに、感情を一切隠すことなく、とうとう跳びまわりだした。それでも尚、喜びを表しきれないと言わんばかりの表情だ。見ているほうもなんだか嬉しくなるほどに。
 そんな中、ふと、スターが呟いた。

「そういえば、仮にメイが仲間になったとすると、私達は光の三妖精から何になるのかしら?」
「メイは妖精じゃないから、四妖精じゃ変よね。」
「ふむ、じゃあ──」

 新議題となったこの会議は昼間まで続いた。

 会議に夢中になっている三人は、最後まで少女がいつの間にか、言葉を聞き取れることになっていることに気付くことはなかった。







 昼を過ぎてから、ようやく四人は森へと向かうことになった。ちなみん、先ほどの議題は結局結論が出ることは無く、終わってしまった。楽しかったのはいいのだが、なんだか時間を無駄にした気分にもなる。
 この行進の途中、ルナは昨夜の出来事を思い出し、二人に話しておくことにした。何せ情報源は死神。言うなれば霊魂の類の専門家であろう。そこからの情報ならば、信憑性は高い。

「ふむふむ、つまりは必ず未練を満たさなきゃいけないってわけじゃないのね?」
「でも他の方法で満たすって言っても、さっぱりわからないわよ?」
「風船みたく何か詰めてみたり?」
「すり抜けるのに何を詰めるのよ……。」
「噂だと冥界の幽霊が団子を食べているところを見た人がいるらしいわよ?」
「へぇ~、でもメイの場合は筆も持てないし、無理じゃない?」
「満腹になって幸せ~って成仏できるんだったら、亡霊も悪くなさそうだけどね~。」
「意外と食べ物はいけるのかも?」

 脱線気味に話を続けながらも、ひたすら歩く。
 そうしていると、見覚えのある看板があった。何故か昨日よりも家の周りに散乱している道具が増えている気がする。

 ひとまず、扉を叩いてしばらく待つ。
 だが、返事は返ってこない。誰も居ないかのように静まり返っている。念のため、もう一度叩こうとした時、中からバタバタと足音が聞こえてきた。と、思った時に勢い良く扉が開け放たれた。

「み゙ゅッ!?」
「悪いわる……、あっ、ほんとにすまん。……大丈夫か?」

 退避が間に合わなかったようで、鈍い音と共にサニーは扉に吹き飛ばされ、鼻を抑えてうずくまる。その姿を見て、申し訳なさそうな顔をした後、魔理沙は一度家の中に戻っていった。直後から何かをひっくり返すような音が連続して響いてくる。
 2~3分ほど続いただろうか、痛みが多少引いてきたのか、涙目ながらもようやくサニーが起き上がった時、再び扉が開いた。それも今度は慎重に、ゆっくりだ。隙間から見えた家の中はさっきよりも乱雑になっているように感じた。
 扉に彼女達が当たらないことを確認すると、なにやら小さな入れ物を差し出した。

「ほんとにすまなかった。今のは私の不注意だったからな……、ほら、霧雨印の塗り薬だ。傷や打ち身によく効くと評判だぜ。私の中で。」

 中に入っているのは乳白色のクリーム状の塗り薬だった。鼻を押さえながらもそれを受け取ったのはいいのだが、心配そうに眺める。

「おいおい……私はそんなに信用が無いのか……。ちょっと落ち込んだぞ…。安心しろって。変なものは入っていないし、匂いもほとんど無いぞ? 効果も、私自身が身を持って保障する。ま、妖精に使うのは初めてだけどさ。それにさっきも言ったが私が悪かったんだ、だから代金もいらん。」

 何とか説得しようと試みた。それでもまだ少し躊躇っていたのだが、痛みがなかなか引かないことに、耐えれなくなってきたのか、恐る恐る薬を手に取った。鼻から額にかけて真っ赤になっていたが、鼻血は出ていないようだ。
 似合いを嗅ぎ、そのままの手つきで慎重に塗っていく。すると肌に触れた途端、スーッと、風が撫でるような感覚と共に痛みが和らいでいくのを感じた。
 警戒の表情から、おぉ…!! とでも言うかのような顔に変わっていく。それを見て、魔理沙も妖精にも効いた事に安堵の表情を浮かべた。と、同時に今のことを手帳にメモすることを忘れない。
 落ち着いたところでようやく本題に入ることができる。

「それで、今日も何か用か、っと聞こうと思ったが、昨日のことだろう? 安心しろ、ばっちり情報を集めてきたぜ。」
「本当ですか!?」
「ふふん、私は完璧主義なんだ。受けた依頼は、可能な限りやり遂げるぜ? そんで、まずは注意事項だ。記憶の無いというそいつは、どうやら消えかけているみたいだな。放置すると、下手したら悪霊になるかもしれないから急いだほうがいいみたいだぜ。」
「それ、知ってます。」
「あっれぇ……。」

 自身満々で情報を伝えたのはいいのだが、予想外の反応をされて、一瞬体の力が抜けてしまった。だが、この程度でくじける訳にはいかない。と、再び自分を奮い立たせて集めた情報を話す。

「じゃ、じゃあ、こっちはどうだ? 何かのきっかけで記憶が戻るかもしれないってことだ。いろんなところ、何か関係ありそうなところ。とか見つかれば、徐々に手掛かりが見つかるかもしれないぜ?」
「メイに関係有りそうなところ…どこだろう?」
「メイ? ああ、もしかしてそいつの名前か? なんだ、思い出したのか。それならそうと先に──」
「あ、いえこれは私達が名付けたんですよ。迷子の子だから迷、を捻って『メイ』って。なかなかいい名前じゃない?」
「ああ、そうかい……。まあ、本人が気に入ってるようないいんじゃないか?(名前の由来はどうかと思うが…)」

 無邪気な笑顔を見せるメイの姿に思わず苦笑いをする。こうしてみると、やはり未練を残して彷徨っているとは思えなかった。

「まあ折角だ。乗りかかった船だし、私も協力してやるぜ。」
「え? いいんですか?」
「ああ、ちょいっと心当たりがあってな。そっちを当たってみるつもりだ。お前らはお前らで色々探してみるといいぜ。そんでまたうちに来い。きっといい知らせを持ってきてやるさ。」
「助かります。」

 そんなわけで留守にするぜ、と言いながら魔理沙は昨日と同じように飛び立って行った。再び取り残された四人。

「よっし、私達も活動開始ね。」
「目標はメイの記憶探しってところかしら。」
「なんだか宝探しみたいでちょっとワクワクするわね。」

 なんとも気楽な言葉だが、彼女達にとってはそれなりに真剣なつもりなのだろう。







 記憶の手掛かりを探す。とは言ったものの、普通の人間の行動範囲というと、ある程度限られてくるだろう。

「まずは……この森かしら?」
「人間って全然動かないのも居れば、そこらへん飛び回るのも居るから行動範囲がわかりづらいわね。」
「ここで見つけたんだから、何か関連があるのは間違いないと思うけど…。」
「まあ、後から戻ってくるのもめんどくさいからね。このまま森を探してみましょう。」

 最初に見つけた場所はここだ。現状、唯一の手掛かりである髪飾りはここで手に入れたのだから、他の手がかりも見つかる。という結論に達し、そのまま森の探索を行うことにした。
 とはいえ、森はかなり広い。その中から何らかの手掛かりを見つけることは容易ではないだろう。それも髪飾りのような物的な手掛かりならば尚更だ。
 意気揚々と草むらを探り始めたのはいいのだが…

「……何も無いわね……。」
「……草と木、時々キノコくらいしかないわね。」
「このままだと埒が飽かないわ……。」

 案の定、それが途方も無い作業であることに気付き、早くも諦めモードに入ってしまったのだった。

「むー、これは広すぎて探しきれないわね……。」
「あんまり時間掛けすぎるわけにも行かないし……。」
「ここは最後にして、まずは他のところを探しにいかない?」
「他のところ……ねぇ。」
「そうだわ。人のことは人が居るところで探せばいいのよ!」
「なるほど、つまりは人里に行ってみるってことね。」
「確かに、メイが人里出身なら、何か手掛かりがつかめるかも…。」
「そうと決まれば移動開始ね。」








 多くの人々が行き交う、まだ日が傾く前の時間帯。人里に着いた彼女達はまず、音と姿を消して潜入することにした。
 うかつに行動して、退治屋やら守護者やらを呼ばれてはかなわない。できる限り慎重に動かなければならないのだ。
 だが、最近外来の物も増えてきたせいか、好奇心をくすぐられるものがいくつもある。慎重に行かなければならないのはわかっていても、ついつい周囲を見回して、見つけたものを近くで確かめたくなってしまうのだ。そのせいで、何度か見つかりかけ、肝を冷やすことになるのだが。
 そんな観光気分で探索を続ける中、時折メイが足を止めることがあった。
 その度、何か気付いたことがあるのか聞いてみるものの、静かに首を振り、本人にも何故なのかわからないようだった。
 人里には何か記憶の手掛かりがある。それだけは判った。しかし、そこからなかなか進むことができない。結果として、日の入りまで続けても、何も見つからず、記憶が戻ることも無かったのだ。

「人里がダメとなると…・・・ほかに何処を探せばいいのかしら?」
「やっぱり魔理沙さんの情報に頼るしかないかな……。私達じゃ人間に聞き込みなんてできないわよ。
「だねー。妖精と亡霊に普通に話す人間なんてそんなに居ないだろうし。」

 収穫はゼロではないものの、進展はほぼゼロだ。
 いまや人通りも無くなり、姿を隠す必要性が薄れてきた時間。ひとまず帰ろうと思った矢先、突然呼び止められた。

「おい、そこの妖精、とそっちは亡霊か。何処から入ってきたのかは知らんが、ここに何の用だ? 答えようによっては容赦はしないぞ。」

 振り向いた先に現れたのは里の守護者と言われる、半獣人。上白沢慧音だ。その視線からは警戒と強烈な威圧感を感じ、思わず縮み上がる。一番見つかってはならない人物に見つかってしまった。そう思った時、隣にもう一人の人影が現れた。

「あ~? いきなりどうしたんだよ慧音──って、お前達もこっちに来てたのか。」
「なんだ魔理沙。こいつらとも知り合いなのか? つくづく物好きな奴だな……。」

 お前の交友関係はどこまであるんだ、と呆れ半分でいい放ちつつ、妖精達に向けられた敵意にも似た視線が和らいだ。そして、一通り彼女達を眺めると、今度は呆れと若干の疲れを含んだ顔になり、

「……なるほど、そういうことか。まったく、最初からはっきりと理由を言えばいいものを。そうしていればこんなに時間が掛かることはなかっただろうに。」
「……まあ、なんだ。人には言いにくいこともあるってことさ。」
「否定はしないし、確かにわからないでもないがな。」

 向こうは勝手に納得し、完全に警戒が解かれた。一方で、何故そうなったのか、理解できない、と言った顔で妖精達は見つめる。

「え、と…どういう、ことです?」
「む? ああ、すまないな、邪険に扱ってしまって。しかしまあ、妖精が人助けにも似たことをするとはな。なかなか珍しいこともあるじゃないか。」
「「「???」」」
「おっと、そうだった。まずはお前達に説明してやらねばならんか。ふふ、誰かを助けようとする。動機がなんであれ、その行動と精神は評価に値するものだよ。」

 そう言って、慧音は続ける。
 家を出た魔理沙は真っ先に慧音の元へ来た。心当たりと言ったのは彼女のことだったのだ。そして、神隠しや妖怪に襲われるなどで行方不明になった住人のことを聞いたのだ。何故それを知りたいのか、その理由が曖昧で、慧音はそれを怪しんだ。結果としてなかなか話が進まず、日が暮れるまでずっと問答を繰り返していたらしい。

「それで、お前達を見てようやく謎が解けたところだ。そういうことならば、協力しないわけにはいかないからな。さあ、ついてくるといい。稗田の屋敷にそういった資料もあったはずだ。まあ、妖精が立ち入るのは初めてかもしれないがな。」

 ははは、と笑う慧音に、そういうことだ。と、魔理沙も視線を送ってくる。
 しばし唖然としていたが、つまり協力者が増えた。それを理解し、互いに喜びあう。

「もしかして里の守護者を味方につけた妖精って、私達が初めてなんじゃない!?」
「これって凄いことよね!? 他の妖精達に自慢できるわもっ!」
「おいおい、ちょっと褒めてやったらこれか…。マイペースな奴らだな。もっと別に喜ぶべきところがあると思うのだが?」

 苦笑しながらも歩き出す。なにやらはしゃぎだした四人に声を掛けながら。







 ──結果としてはあまり芳しいものではなかった。
 出生記録などから人物さえ特定できれば、記憶を取り戻す上で大きな助けになるはずだった。そう思って始めた作業だが……。
 資料が膨大すぎるのだ。メイの亡くなった時期が不明なこともあり、ひとまずはここ十数年の記録から探すことにしたものの、それすらも読むのが嫌になるほどの量だった。
 これまでに様々な資料を読んできた魔理沙も資料の多さに驚愕していた。夜通し調査を行い、慧音も手伝ってくれたのにも関わらず、資料の山をいくつか片付けるだけで精一杯だった。それからサニー達はオーバーヒートを起こして力尽きてしまった為、覚えていない。
 メイの外見の特徴や、推定年齢からある程度近い人物を何人か見つけることができた。だが、この中からメイ本人の記録があるのかわからない。
 朝日が昇る頃、調査は一度中断することにした。慧音が余裕があればまた資料をまとめておく、と言って解散した。ひとまず、夜のうちにリスト化できた人物を中心に調べていくことになった。
 何もしたくない、と顔に出ているほど疲れた表情で屋敷を後にする一行。だが、それに魔理沙が追い討ちを掛けた。

「そうだ、この件の報酬を一応貰っておかないとな。」
「「「え゙!?」」」
「『えっ』って……お前らなぁ……。お前達は途中から寝てたが、私達はその後も必死で資料を探してたんだぞ? ひとまずは仕事の報酬を貰っておかないと流石に割に合わないぜ。一応依頼はある程度こなしているんだしな。」
「いや…、でも今私達何も持ってませんよ…?」
「ふふん。そこのところは抜かりないさ。こういう時は体で払ってもらう、っていうのが相場で決まっているんだぜ?」
「「「ひええぇぇぇぇぇ」」」」
「ふははははは、逃がさないぜ~?」

 手をわきわきと動かしながら三人の少女に迫っている姿は、変質者と間違われたとしても言い訳できないものだろう。逃げる気力も無い彼女達は渋々、魔理沙の言う報酬を払うこととなった。







「魔理沙さ~ん。これですか~?」
「いや、それは目的の物じゃぁ……、あ、いや待て。それはそれで珍しいやつだ。回収しておいてくれ。」

 あの後、流石に休憩をしてからじゃないと体が持たない、ということで、一旦帰宅。報酬は翌日から、ということになった。
 魔理沙の言う報酬。それは薬草採取の手伝いだった。なんでも、次の実験に使いたい物があるらしく、丁度人手が欲しかったそうな。
 元々自然と密接な関係にある妖精にとって、この手の作業はお手の物のようだ。最初こそ薬草についての知識が無く、作業が捗らなかったものの、二時間もしたあたりだろうか、たったそれだけの時間で魔理沙も驚くほどの手際で採取をしていった。

「ほぅ。お前らなかなか凄いじゃないか。なあ、いっそのこと私の助手をやってみないか?」
「ぇ~…それはちょっと……。」
「なんか魔法の実験台とかにされそうな気がするし……。」
「……何気に傷つくことを言うな…。まあ、確かにしそうだが…。」

 予想よりも早く採取が終わりそうで、魔理沙は近くの倒木に腰掛け、彼女達の作業を眺めてみる。一見するとただ手当たり次第に毟っているだけのようにも見えるのだが…

(それでいて品質のいい物を探し当てているんだよな…。やはり種族的な何かがあるのか? うーむ、冗談半分だったが妖精を助手にするっていうのも案外有りかもしれんな…。)

 そう思って観察を続けていると、ふと、視界の隅にメイが映った。
 最初見たときと比べ、この数日間で彼女の状態は随分と変わっていた。今にも消えそうだったその姿は、もはやぶれたり、透けることは無い。まるで冥界に住む亡霊少女のように、はっきりとした形を持つようになっていたのだ。
 どうやら薬草の知識がある程度あったのか、一番最初に薬草の種類を把握したのは彼女だ。徐々に記憶が戻ってきている証拠かもしれない。
 収穫こそできないとはいえ、三人が間違えて収穫したものを瞬時に見分け、指摘していった。今はそれも必要なくなり、手持ち無沙汰気味であるが。
 しかし、よく見てみるとそれにしては様子がおかしい。先ほどから微動だにせず、どこか遠くを見つめて居る。

「おい、メイ。どうかしたのか?」
「───……。」

 彼女の口から微かに、音のようなものが聞こえた。耳を近付け、集中して音を集め、聞き取った言葉は

『思い出した』

 意味を理解し、すぐさま三人を呼んだ。


 ──微かな、ではあるが、彼女は確かに言葉を発していた。それはそよ風が吹けばかき消されてしまいそうなほどの小さな声。その言葉を聞き逃すまいと耳を澄ます。

 彼女が思い出したのは、死の前の記憶。今に至るきっかけとなった出来事。

 彼女には仲の良い弟が居たそうだ。
 ある誕生日、弟からのプレゼントとして髪飾りを貰った。その贈り物に彼女は何よりも喜び、それから肌身離さず持ち歩いていたという。それほどまでに大事なものだから、死後も魂の拠り所となったのだろう。
 だがある日、ひょんなことで髪飾りを川に落として失くしてしまったそうだ。
 いくら探しても見つからず、やむを得ず家に帰ったが、そこで弟と喧嘩をしてしまった。それからというもの、お互いに碌に話さないようになってしまう。
 それでも何度も髪飾りを探しに行ったものの、見つかることは無かった。冷静になって考えてみれば、弟には八つ当たりに近いことをしてしまったことに気付きはしたのだが、謝るきっかけが作れず、時間だけが過ぎていく。
 十日ほど過ぎた時だろうか。元々病弱だった弟が発作を起こし、倒れてしまう。それを見て、こっそり薬草を採りに行こうと、一人森に向かった。
 運の悪いことに、毒性を持った植物などが繁殖している時期であったが、森の瘴気に当てられつつも、何とか薬草を採取することができた。いざ帰ろうとしたときだ。鳥にでも持っていかれていたのか、木の枝に引っかかった髪飾りを見つけた。
 弟に見つけたことを知らせたい。そんな思いで夢中で木に登る。ようやく手にした時。
 足元から、床が抜けるような感覚と共に、鈍く軋む音が聞こえた。気付いた時には既に手遅れだ。枝が湾曲し、根元から折れ、同時に落下が始まる。

 落下の衝撃で一瞬意識を失ったものの、痛みで覚醒した。
 足を挫いたのか、強烈な痛みを感じた。骨が折れているのかはわからないが、あちこちにも痛みが走る。その上、毒性の胞子が舞っているためか、意識が朦朧とする。それでも手にした髪飾りと薬草を握り締め、全身を引きずるように歩き出した。
 だが、無常にも森の瘴気は弱った体に追い討ちを掛けていた。とうとう少女は力尽き、意識を閉ざすことになった。

 その後、帰らぬ少女を心配し、里の人々が探し回った。しかし、森は広大で、簡単に探すことはできない。とうとう見つけることはできず、少女は神隠しに会った。そう公表された。
 少女はいつしか忘れ去られ、一人、森を彷徨い続けることになった。







 一部始終を語り終え、メイは口を閉ざした。
 先ほどの話から、未練や解決方法を推測することは容易い。それに足る情報を知ることができた。だが、最初に何を言うべきか。迷い、沈黙する。
 そんな沈黙を破ったのはサニーだった。

「…そう、メイはその弟に謝りたかったってことよね。それと、失くした髪飾りを見つけたって、教えてあげたいってことよね? うん、なら決まりだね。今すぐに行こうよ。」
「おいおいおい、それはいいけど、いつの話かわからないぞ? その弟だって生きているかどうか…。」
「死んでたら冥界にでも行けば見つかるかもしれないでしょ? それに、会ってからほんの少ししか経ってないけど、メイは私達の仲間だからね。」
「そう、ね。確かに取り憑かれるのは嫌だし、怖かったけど、なんだかんだでメイと一緒に居て楽しかったしね。」
「ええ、ここで降りるくらいだったら、最後までいってやりましょうってね。毒を食らわば皿までって奴?」
「なんか使い方を間違ってる気がするけど」

 そういって三人でメイの肩を抱く。それを見て一つ、吐息をしつつ

「ま、私としても乗りかかった船だしな。最後まで付き合ってやるのが筋ってもんだろ。」

 満場一致。そうとなればやるべきことは決まっている。だが、その前にやることが

「まあとりあえず、収穫物を置いてきてからだな。」

 折角の雰囲気は台無しとなった。






 記憶が戻ったことを慧音に知らせてからは早かった。
 メイが生前の名を思い出し、また、その出来事を伝えると、数十分程度で記録が見つかり彼女の家も、弟がまだ生きていることも。全て判明した。
 そして今、一行はメイの弟が暮らす家の前に立っている。既に日は落ち、夜となっていた。とはいっても、周囲のどの家も、まだ明かりがついているくらいだ。人が訪ねてきてもおかしくない時間帯だろう。

「な、なんで私なのよぅ……。」
「まあ、一応見つけた本人だし。」
「そゆこと。がんばれールナー。」
「ははは、私が行ってもいいんだが、手柄はお前に譲ってやるぜ。」
「ぅう…、仕方ないわね…。」

 誰が戸を叩くか。それだけでもう五分くらい立ち往生している。あんまり長居すると怪しまれるだろう。深呼吸を何度か繰り返し、意を決して戸を叩いた。すぐに中から返事が返ってくる。ゆっくりと近付く足音が聞こえ、戸が開かれた。

「はい、どちら様ですか……?」

 出てきたのはすらりと背の高い男性だ。メイの弟なのだろうか。奥には小さな子供を抱えた女性が見える。恐らく、彼の妻なのだろう。
 男性は、訪ねてきた人物に全く心当たりが無い為、困惑の色が見えた。さらに相手が人間じゃないことに気付き、更に困惑している。慌ててルナは髪飾りを差し出した。

「あの、これ…。それと」
「? この髪飾りは…一体どこで…?」
「ほら、メイ。」
「さ、行ってらっしゃいな。」

 サニーとスターに背を押され、ルナに促され、メイは前に出る。
 その瞬間、彼の目が見開かれた。

「…もしかして、姉さん…?」
「ひさし、ぶり…。」

 取り戻したばかりの声で、消え入りそうな声で、それでも必死で声を出す。

「父さんと…母さん、は…?」

 その言葉に、彼は口を結び、色々な感情を押し殺したような声で応えた。

「2年前に、亡くなったよ。」
「そう…だった、の…。あの、ね…私…。」
「……その前に言うことがあるだろう? なんで……もっと早く帰ってこなかったんだ?」
「……っ」

 その言葉には、怒りだけではない。様々な感情が込められていた。

「一体どれだけ心配掛けたと思っているんだ? 父さんだって、母さんだってさ、ずっとずっと心配して……探したんだぞ…? それなのにこんなに長い間何処に行っていたんだバカ姉!」
「ご、ごめ、ん…なさ──」
「姉さんは昔からそうだ。いつもいつもそそっかしくてさ。でもどっか抜けてて…あの日だって送った髪飾りを失くしてっ! そのうえ喧嘩したっきりで、急に居なくなって……今日まで俺がどんな気持ちで過ごしていたと思っているんだよ!」
「だ、けど、…ほら……見、つけた…よ。髪飾り…。」
「……言うことはそれだけじゃないだろう!?」
「し、んぱい……掛けて、ごめ、ん…なさい。──それ、と…遅く、なっ…てごめん、ね……。──ただいま。」
「──ああ…おかえり、姉さん。俺のほうこそ、ごめん。」

 長い間亀裂が入ったままだった姉弟の仲直りが、今果たされた。
 それから二人揃って振り返り、軽く会釈をする。

「どなたかは知りませんが、どうもありがとうございます。……この度はうちの姉がご迷惑をおかけしました。」
「サニー…ルナ…スター…そ、れと…魔理沙さん……ありがとう…。」
「いいってことさ。やれやれ、これでようやく解決かな。」

 そう言った時。メイの体が徐々に薄れて……いくことは無かった。

 ──何も起きない。
 メイも思わず自分の体を眺める。恐らく、彼女の未練はこれで果たされたはずだ。それなのに、一体何が足りないのか? まだ未練が残っているというのだろうか。仮にそうだとしたら、再び振り出しに戻ることとなる。思考を巡らせていると、魔理沙はふと、ある考えに辿り着いた。

「ひょっとして、既に悪霊に成りかけている…のか?」
「え!? でもそれって、周りに取り込まれるからって言ってませんでした?」
「いや……わからない。あくまでも推測だしな。でも私の直感があんまりいい予感がしないって言ってるぜ。──こうなったら仕方ないな。おい、お前達! 今から急いで霊夢のところに行くぞ!」

 その宣言に戸惑ってしまう。もしも既に悪霊となってしまっているのなら、メイを退治されかねない。できればそれはしたくなかった。だが時間がもう残されておらず、他の手段が無いことを直感で理解した。だから決断を下す。

「ルナ、スター! 行こう! ちょっと不安だけど、このまま放っておくよりはマシでしょ!」
「う、うん。わかった!」
「メイ、行こう!」

 ルナがメイの手をしっかりと握って、一行は夜の空へと飛び立つ。

「「「お邪魔しましたーー!!」」」

 一応、礼儀として挨拶を返しておいた。そして、去り際に

「姉をお願いします。」

 という彼の言葉も、確かに聞こえた。







「おーい! 霊夢! れーいーむー! 起きてるかー!?」

 ドンドンと、乱暴に玄関を叩く魔理沙。叩くたびに玄関が軋む音を上げている。霊夢が出てくるよりも先に、戸が壊れてしまうかもしれないほどに。
 日も落ち、見えづらいが、メイの周囲には黒いもやが集まり始めていた。恐らくあれが、周囲を漂う他の思念だろう。既に移動中に集まり始めたそれを、振り払いながら神社まで来た。目を付けられたのだろうか、徐々にその数は増しているようにも感じる。良くない傾向だ。
 魔理沙も焦っているのだろう。三妖精も、メイを中心に不安に押し潰されそうな顔をしていた。

「おーい! さっさと出てこーい! お前は完全に包囲されて──」
「──ああぁ! もうっ!! 夜だっていうのにうっさいわね!!」
「ぐおっ!」

 玄関が勢い良く開け放たれるのと、魔理沙の脳天に大幣の一撃が加わったのはほぼ同時だった。

「まったく! 聞こえているっての! 玄関が壊れたら一体どうしてくれるつもりなのかしら!? 大体いつもは縁側とかから勝手に入ってくるくせに。」

 霊夢のつく悪態を、先ほどの痛みで 地面を転げまわっている魔理沙は多分聞いていない。彼女は無視して視線をサニー達へと向けた。

「そんで、あんた達は何の用かしら? こんな時間に来たって事は、それなりの用事なのよね?」

 不機嫌気味だが、まっすぐに三人の目を見て語りかけてくる。それに対して、

「あの…、メイを助けてあげてくださいっ!」
「私達だけでは、どうしようもないんですっ!」
「お願いしますっ!」

 目を逸らすことなく、三人同時に土下座の姿勢をとり、頼み込んだ。霊夢としては土下座までされることは予想外だったようで、少し動揺したようだ。

「えっ、ちょ、ちょっと。…はぁ……。まずは──まあ見れば大体予想はつくんだけど、順に説明してみなさい。いきなり土下座なんてされても困るわよ。それに、メイって誰よ。」
「く……ぅぅ、今のはかなり効いたぜ……。」
「あんたはもうちょっと黙ってなさい。」
「ハイ、ゴメンナサイ」

 霊夢に睨まれ、あまりの剣幕に思わず片言になってしまっていた。どうやら先ほどの件でかなり怒っているようだ。
 三人は、これまでのいきさつを掻い摘んで説明をしていった。時間が無い、ということで頭がいっぱいで、焦っていたせいか、話す内容は順番がバラバラで、所々ごちゃごちゃになってしまっていた。しかし、霊夢は何も言わず、静かに全てを聞いていた。
 一通り説明を終えた後、霊夢が今度は喋りだす。

「大体はわかったわ。最初の未練を晴らしたのにその子…メイが成仏できない理由としては、多分、もう悪霊になりかけているんでしょうね。周囲の思念からの影響も一つの原因でしょう。でも、あなた達と過ごしていたせいで、現世への執着が知らず知らずに強くなってしまったんじゃないかしら? 聞く限り、最初の状態は消滅寸前っぽいけど、この短時間でここまで急速に変化していったのよね。もしかしたら妖精は霊体への影響が強いのかもしれないわ。」
「どうすればいいんですか……?」
「そうね、このまま放置したらあっという間に今集まってきてる怨霊共に取り込まれるでしょうね。そうなったら退治しかないわ。別に私はそれでもいいんだけどね。──でも、あんた達は嫌、なんでしょう?」

 全員が無言で首を縦に振る。それを見て、よろしい、と言った後に

「安心しなさい。何とかしてあげるわ。ま、私はどちらかって言えば退治のほうが専門だけどね。亡霊一体の浄霊くらい、なんとかしてやるわよ。」







「おいおい……最初っからやる気満々じゃないか。」
「なんとなく必要そうな気がしただけよ。」

 先ほどまでは全く気が付かなかったが、既に境内には浄霊の為と思われる準備がされていた。
 いくら勘が鋭いとはいえ、

(もはやこれって予知じゃないか……? 勘って凄いぜ。)

 そんなことを考えている間に、準備は終わった。
 いくつかの松明に囲まれた空間に、円陣が現れ、その中央にメイを連れて行く。

 何枚かの御札が周囲を漂いだす。彼女達一行を囲むように展開されていく。全てが広がり終えると、霊夢は何度か周囲を見回し、

「それじゃ、始めるわよ。とりあえず、力を抜いて楽にしなさい。大丈夫、すぐに終わるから。」

 すぅ、と一度大きく呼吸し、次に

「────。」

 音のような、言葉のような、呪文が紡がれる。霊夢の言うありがたい言葉、というやつだろうか。
 近くで状況を見守る四人には何を言っているのかさっぱりわからないが、なんとなく心が落ち着く。そんな音色に感じた。
 開始から数分経っても、何も起きない。そう思っていたが、徐々にメイの周囲に光の粒が舞い始めた。それは、一つ、光の粒が虚空に消える度、少しずつ、姿が薄くなっていくのがわかる。彼女は自分の姿が薄れ、消えていくのを穏やかな表情で見つめている。
 光の粒は徐々に数を増し、今やメイの全身を包むように舞い始めた時に、霊夢の言葉が止まる。同時、メイがこちらを見た。

「サニー、ルナ、スター。ありがとう……。ほんの何日かの、短い間だったけど、とても楽しかったよ…。」

 その言葉に続いて、三人は応答する。

「私達も楽しかったよ。メイ。少しくらい一緒に遊びたかったけどね。」
「折角仲間になったのにね。でも、この数日の間だけでも、友達になれてよかったわ。」
「やっと取り憑かれてるのにも慣れて来たんだけどね。でも、退治されるようなことがなくてよかったわ。」
「魔理沙さん……。どうも、ありがとうございました。あなたのお陰です…。」
「ははっ、私は依頼をこなしただけだぜ? プロとして当然のことだよ。──もっと褒めてくれても構わないんだぜ?」
「ふふふ…。それと、霊夢、さんでしたよね。あなたには、どんな感謝をしていいか……。」
「私の分の感謝なら、そいつらにしてやりなさい。私はただ背中を押してあげてるだけよ。あなたが悪霊になる前にこうやって逝けるのは、紛れも無く、あなた達の功績よ。」

 もはや姿は漂う光よりも薄くなり、目を凝らさなければ見えないほど薄れていた。きっと、これが最後だろう。だからメイは

「じゃあね、皆。さようなら。」

 最大の感謝を込めた別れの言葉を紡いだ。
 そして──

「「「…さようなら、メイ。」」」

 応答した彼女達から発せられる言葉も別れの言葉。
 しかしそれだけではない。

「またね。正式な仲間入りを楽しみにしてるわよ。」
「今度は一緒に遊びましょうね。」
「また、いつか会いましょう。メイ。」

 それは、いつかの再会を願う、約束の言葉だった。

「うん、また……ね……──」

 最後の言葉と同時に、彼女の姿は全て虚空へと消えたのだった。



◆◆







 ──それから。
 サニー達三人はいつもの生活へと戻った。
 ルナが拾った髪飾りは、あの後彼女の弟へと渡した。形見として。
 後に残ったのはほんの数日の間。とても短い時間の中の、思い出だけ。だが、彼女達には、それで十分なのかもしれない。
 そして今日も、作戦会議が始まっていた。









 三途の川の前で、一つの魂が船を待っていた。
 しばらくして霧の中から魂の前に、鎌を持った死神と、小さな木の船が辿り着く。

「お、久しぶりだねお前さん。どうやら、無事にこっちに来れたみたいじゃないか。はっはっは、なかなか来ないもんで悪霊になっちまうかと心配してたところさ。」

 カラカラと陽気に笑う船頭は、魂を見て、続けて言う。

「ああ、心配しなさんな。まだ悪霊になったわけじゃなかったからね。確かに、ちょっと……いや、かなり危ないところだったけど。うちの閻魔様にちーっとばかりきつめに説教食らうだろうが、まあアレで結構優しいところあるからね。地獄に落とされることは無いだろうさ。部下のあたいが保障してやるよ。さ、乗りな。」

 魂を乗せてゆっくりと漕ぎ出される船。その姿は川が纏った霧の中に消えていく。長い船旅になるのか、そうでもないのか。けれど二人の船旅は、何処か楽しげな雰囲気であった。






 ──数年後、少女の弟に二人目の子供が生まれた。その子は姉の昔の姿にそっくりで、彼は妖精の三人組のことを思い出し、彼女達が呼んでいた名を、その子に付けることにした。
 再会の日は、意外と近いのかもしれない。
どうも、生芋こんにゃくです。
三妖精達の人助け、といった感じで書いてみたのですが、後半はありがちな話になってしまいましたね。
毎度の事ながら全体的に駆け足過ぎるでしょうか……?
絵にしても、文章にしても、なかなか思うようにいかないですね。

気付いたら何やら容量が60kbくらいになったのですが、書いてみるとかなり時間掛かりますね。
100kb以上の作品はどれほど時間が掛かっているのでしょうか……。

それと、三月精完結しましたね。大団円というか、いつも通りというか、あの雰囲気が好きです。
今後彼女達の出番はあるんでしょうか? 個人的には是非とも登場して欲しいものです。



4/13 お読みいただき、ありがとうございます。

>名無し様
好奇心であったり、探究心であったり、単純で、純粋なところが妖精の魅力だと思います。

>奇声を発する程度の能力様
ありがとうございます。特に捻りの無い話ではありますが、そう言っていただけると嬉しいです。

>名無し様
ありがとうございます。その一言だけでも、投稿してみてよかったと思えます。
生芋こんにゃく
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.280簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
妖精の純粋な行動理念 沁みました
また会えるといいですね
4.80奇声を発する程度の能力削除
読み終わったあと、穏やかな気持ちになれました
7.100名前が無い程度の能力削除
良かった!