東方星記録(ガイアメモリー)2
これは東方二次創作という産物です、ガイアメモリー出てきちゃいます、苦手な方はブラウザの戻る、を押してください。
続き物になります。したがって前作があります。
翌朝、窓から差し込む朝日により蓮子は目を覚ませた。
「う~ん…」
「おはよう、やっと目が覚めた?」
「ん~おはよー、早いわね、メリー」
「早いって、今何時だと思ってるのよ、そろそろ仕度しないと流石に遅れるわよ?」
そう言われ時計に目を遣ると既に朝8:00をまわっていた。
「ふえ?もうそんな時間!?メリーってば、もっと早く起こしてくれれば良いのに!。」
蓮子はガバッと起き上がると急いで身支度を始めた。
「だって蓮子ったらいくら起こしても「あと5分」って言って起きないんだもの。」
「そうはいってもさぁ~。」
「そういえば蓮子、昨日の話し憶えてる?」
「それって夢の話だよね?もちろんよ。」
「それがね、今朝早くに起きたから言われたようにそのときの風景を描いてみたのよ。」
そういうとメリーは蓮子に少し大きめの紙を渡した。
「へぇ~、町並みは大都市みたいなのね。」
そこには鉛筆だけでだが夢で見た内容とは思えないほど細かいところまでえがかれた風景があった。
メリーは中、高と美術部をやっており特に風景画を専攻していたのでこういったセンスはずば抜けていた。
しかしそれを蓮子が興味津々に見つめているとメリーが
「…でもさぁ。蓮子。」
「うん?。」
「流石に羽の生えた空飛ぶ人なんてねぇ、昨日は盛り上がっちゃったけど。冷静になって考えてみるとありえないわ。所詮夢だったのよ。」
とメリーはやけに盛り上がってる蓮子に、やはり夢は夢、現実は現実だと言って聞かせた。
それに対し蓮子は。
「…いやさメリー、そうだろうけど、それを言ったら私たち秘封倶楽部の存在が危うくなるわ。
うん、居るの、空飛ぶ人は居るのよ。だって現に私は月と星だけで自分の現在地と時刻が分かったり貴女だって結界が見れるとか訳分からない特技もってるじゃない。
第一夢が当たるっておかしくない?夢ってのは睡眠時本来ならば何も感じていないとされる大脳が覚醒時と同様な活動状態を示す脳波になることであってさらにはレム睡眠時に、PGO波という鋸波状の脳波が、視床下部にある端網様体や後頭葉にかけて現れるわけで。このPGOが海馬などを刺激して記憶を引き出し、大脳皮質に夢を映し出すと考えられているんだからその人の記憶でしかないの、未来を見るなんて不可能だし他人に鑑賞した予知夢をみるなんて持っての外で……」
蓮子は途中からやや危ない目をしながらメリーに歩みよってきた。
「え?ええ!そ、そうね!居るわよね、私もそう思えてきたわ!さっきは私がどうかしてたのよ。この世には宇宙人だって神様だっているわ、きっとラプラスの悪魔もマクスウェルの机上の理論だって存在するはずよ!だから蓮子、落ち着きましょ?」
そういうと蓮子は笑顔になって「そうこなくっちゃ」と意気揚々と鼻歌を歌いながら支度を再開した。
メリーとしてはここまで期待してしまっている親友に結局は唯の夢だったと落ち込まないでほしかったので止めようとしたのだが、まるで効果が無かったようだ。
もともとメリーはそこまで自分の夢を信用していないのだ。
最初はおかしな夢を見たと思っていたら実際にそれが本当に起こってしまい、それを親友である蓮子に言ったのがきっかけだった。
同じような事を2回3回と続けているうちにどれが予知夢なのかを分かるようになりあるときどこでどんな事故が起きると蓮子に言ったところ見事に的中した。それ以来蓮子は完全に自分のこの夢の内容を信じきっているのだった。
しかしあの夢が本当にしろウソにしろ今はこの旅行を楽しむとしよう、そうメリーは考える事にした。
「ほら蓮子、早くしないと9時には出発したいって言ってたじゃない。」
「ちょっとまってよメリー。」
そんな事を言いながら私たちはホテルを後にした。
丁度太陽が真上に来た頃、予定通りに計画が進み上機嫌の二人はそろそろ昼食にしようと思い、タクシーに乗って移動していた。
「それにしてもさっきのはすごかったわね。驚いたわ。」
「ええ、ホントね、でも蓮子ったらはしゃぎ過ぎじゃない?また昨日みたいに途中でバテちゃうわよ。」
「なによ、折角の旅行よ?。楽しまなきゃ損に決まってるじゃない。」
「それでねメリー、今から行くところのお店は……」
そんな風に先ほど劇場でみたマジックショーの事などを話し、そして蓮子がこれから行く店のことを話そうとしているときだった、
メリーがいきなり蓮子の手を握り締めてきたのだ。その手は妙に震えておりメリーの表情は凍りついて、真っ青な顔をしていた。
「メ、メリー?、急にどうしたの?具合でも悪くなった?。」
と蓮子がメリーのことを心配してたずねたがそれにメリーは答えることなく一言「あのときと一緒。」と呟いた。
そしてメリーは蓮子の方を振り返ると震えた声でこういった。
「蓮子、今朝見せた絵の事憶えてる?」
「?えぇ…それがどうしたの?」
「ここ…この風景!、あのとき見たのと、同じ…。」
「え!?」
そういわれ窓の外を見る、一見人が多く分からなかったが確かに今朝見たのと同じビルや看板が建っていたのだった。
「蓮子、どうしよう、やっぱりあの夢本当だったんだ。」
そうメリーが蓮子に相談する。すると蓮子は。
「すごいわ!」
「れ、蓮子!?」
「メリーったらなに怖気づいてるのよ!私たちは秘封倶楽部よ?
それにしても流石ねメリー、私は信じてたわよ。一体何がおきるのかしら?」
「そうだけど、私が見た夢って不吉な事が多かったりで…。」
「大丈夫よ、そんなに心配しなくても、別に人生が終わるわけじゃないんだから…」
そう蓮子が言ったときだった。
突如上空より物凄い速度で飛来する光弾が見えた。
「え?なに?」
それに気づいたとき、それは既にタクシーの目の前に着弾していた、そして―
― 炸裂した。
その爆発によりコンクリートは抉れ二人が乗っているタクシーは吹き飛んだ。
そして反転した状態で地面に叩きつけられたのだ。
「…っ!!!いった~…。な、何だったの?、人生の終わりが見えそうだったわ…。」
と蓮子は衝撃の割りに特に痛むところが無く。なんとか状況の把握に努めようとする。
「そうだ!、メリーは!?、メリー!大丈夫!?」
そうして同乗していた親友の安否を確認する。
その呼びかけにメリーは
「え、ええ、体がそこらじゅう痛いけど、何とか生きてるわ。まさに九死に一生を得たわ。」
とギリギリといった感じだったがメリーからも大きな外傷は見当たらなく安堵の息を吐く、しかし今は安心している場合ではない。
一刻も早く安全な場所に避難しなくては。
「よかった、動ける?兎に角ここから出ましょ。それで助けを呼ばなくちゃ。」
何が起こったのか理解は出来ないがひとまず今やばい状況にあるのは分かる。
それにここから逃げた方がいいのも確かだろう。
そして運転手にも助けを借りようと運転席を見るがそこには既に運転手の姿はなかった。
「なによ、お客様をおいて一人だけ逃げたっていうの?アメリカはドライだって聞いてたけどあんまりじゃない?」
と蓮子は文句を言いながらも動きづらい車内でなんとかメリーをつれてやっとのおもいで外に出た。
「メリー、大丈夫?立てる?」
「えぇ、立てるわ…ありがとう。」
「よかった…、じゃあ今助けを……」
そう思い辺りを見回した蓮子は愕然とした。
なんと周りにはもう人っ子一人いなかったのだ。
いや、ありえない、運転手にしろ通行人にしろこんなに早く逃げれるだろうか?
周りに立ち並ぶビルやお店にさえも人影はなかった。
「な、なんで?…」
さらに追い討ちをかけるように周囲には突如として深い霧が発生し始めた。
その霧は昼間だというのに日の光さえ遮断し、あっというまに辺りを夜のように暗くした。
「なに?何がどうなっているのよ!」
何もかもがいきなり過ぎて蓮子は訳が分からず困惑していると、メリーが空を指差た。
「見て、蓮子…。」
蓮子はメリーの指した方に目を遣る…
なんとそこにはバサッバサッ、と翼を羽ばたかせ空を飛ぶ人と何の動作もするわけでもなく、そのとなりを浮遊する人がいた。
「うそ…、なにあれ……。」
蓮子は夢でも見ているのではないかと目を疑った。しかしそこには確かに空飛ぶ二人の姿があった。
「姉さん、白昼に堂々とやりすぎじゃ…、まだあんなに人が居たのに…。」
「大丈夫よ、アメリカじゃあよくあることらしいわ。それにちゃんと目標を確保できたじゃない。万事オッケーよ。」
と姉と呼ばれた方はカラカラと笑っている。
「貴方たちは私の夢に出てきた…。」
「ええ、そうよ。私は幻月、こっちが妹の夢月よ、よろしくね。マエリベリー・ハーン、宇佐見 蓮子。」
と幻月は可愛らしく微笑みながら自己紹介をする。
しかし蓮子とメリーはそれどころではなく幻月たちにいろいろなことををたずねた。
「他の人たちは!?何処に行っちゃったの?」
「他の人間たちはちゃんと元の世界にいるわ。」
「も、元のって?じゃあここは何処なのよ。」
「ここはちょっと変わったところでね、あなた達が普段暮らしている世界の反対にある世界、いわば裏の世界よ。」
「裏の…?全然意味わかんないんだけど。」
「表の世界と裏の世界ってのは一枚の紙の表と裏のように決して交わる事の無い世界で、まぁここのことはあんまり気にしなくてもいいわ。」
「?そうなの?じゃ、じゃあ次に、貴方たちは何者なの?人間じゃないわよね?」
「ええ、そうよ。私達は人ではないわ。」
「やっぱり…じゃあ何なの?」
「そうねぇ、あなた達は私たちがなんに見える?」
「え?何だろ、やっぱり天使…とか?」
「フフッ、天使か…残念、むしろその逆、私たちは悪魔よ。」
「!!、あ…悪魔ぁ!?」
「そうよ、どう?おどろい、」
「「すごいわ!!!」」
「え?」
幻月は思わぬ反応をする二人にやや戸惑った。
「悪魔なんて初めて見たわ!ほんとに実在したなんて!」
「ええ!ホント、凄いわ!羽触ってもいい?」
「え?あぁ、別にいいけど、大切な羽だからあまり…」
「すごーい!ふわふわよ!それにとっても綺麗ね!」
「そ、そうでしょ?自慢の羽なんだから。」
「姉さん、話がそれてるわよ……。」
「え?あぁ、そうだったわね。話を戻したいんだけど、いいかしら?」
「あ、ごめんなさい、つい夢中になっちゃって…。」
そういって幻月は自分の羽に顔を埋めてもふもふしている二人を引きはがす。
「それで貴方達は何の為に私達をここへ呼んだの?」
「それはあなた達に協力してほしいことがあるからよ。」
「協力?私たちに?」
「ええそうよ。」
「何をするの?」
「あなた達にはこれを持って「幻想郷」へ行ってほしいの。」
そういうと幻月はいくつかの長方形の物体と差込口が ゛二つ"ついたガジェットを取り出した。
「それはなに?それに幻想郷って?」
「これはダブルドライバーとガイアメモリーといってね、これはね、とても大切なものなの。だから絶対になくしちゃダメよ?」
「ええ…分かったわ。それで?」
「ええ、幻想郷ってのは…、」
幻月が説明しながらそのガジェットをメリーに渡そうとしたときだった。
「ちょっとまってよ!!」
と突然蓮子があいだに割って入ったのだった。
「なによ、どうしたの?」
「どうしたの?じゃ無いわよ。なんで私たちがそんなことしなくちゃならないのよ?それに、最初の爆発、あれ貴方たちの仕業でしょ?そんな危険な人たちのこと簡単に信用しちゃ…」
「あぁ、あれ?あれは、仕方なかったのよ。」
「仕方なかった?」
「ええ、そうよ。周りに人が居たでしょ?あの人たちを巻き込んじゃいけないと思って、でも私たちは悪魔だから少し攻撃的なのよ、だからあれしか手が無くて、現に貴方達は無事だったし、もう痛いところは無いでしょ?」
「それは…確かに、だけど貴方たちの目的は何?」
「目的?」
「そうよ、目的よ。」
「私たちはただ幻想郷へ行きたいだけ。それだけよ?そのためには貴方たちの力が必要なの。」
「それじゃ話の辻褄が合わないわ、貴方たちが私たちをその幻想郷って所へ連れてけるんなら貴方たちが行けばいい話じゃない。」
「バカね、それが出来ないから頼んでるんじゃない。私たちは夢幻の悪魔、私たちは夢幻の中でしか活動できないの。正確には短時間だったり誰かの身体を借りたりで弱体化した状態でなら行けるわ、でもどうせなら全快の方がいいじゃない。」
「そうよ蓮子、人助けだと思って、ね?確かに私たちは今旅行中だから勿体無い気もするけど、こっちは幻想郷よ?名前からして素敵だと思わない?いまこのチャンスを逃したらこんな機会もう一生ないわ。」
「蓮子、私たちは秘封倶楽部でしょ?」
「え?確かに、そうだけど…でも、」
「…でも、どうして私達なの?それだけ教えて頂戴。」
「そんなの簡単よ、常識しか頭に無い奴らには何したって無駄だからよ。それに比べ貴女達は違うわ、幻想を信じてる、そうでしょ?」
「……。」
「どう?『悪魔と相乗りする勇気』貴方達にはある?」
幻月がガジェットを差し出しながら言う。
それにメリーは
「いいじゃない、「悪魔と相乗り」。してみましょうよ、蓮子。」
「……」
蓮子は黙ったままだった。
幻月がニヤッと笑う。
「フフッ、交渉成立…かしら?。」
そういってメリーにダブルドライバーとガイアメモリーを渡す。
「それじゃあなた達にはもう一つ素晴らしいものを差し上げましょう。」
「素晴らしいもの?」
「ええ、あなたたちのその勇気に賞してよ。マエリベリー・ハーン、貴女には「星の記憶」を宇佐見蓮子、貴女には「パワーコア」をあげるわ。」
「星の記憶?」
「ええ、星の記憶とはその名の通りこの星の全ての情報よ。正しくは全ての知識がある星の本棚を使う権利があたえられるわ。マエリベリー・ハーン、貴女にはこの星の全ての記憶を授けるわ。」
「じゃあ、パワーコアってのは?」
「パワーコアは特殊な暗黒物質のことで凄まじい高エネルギーを持っているわ、その核を手にすることで貴女は超人的な身体能力、動体視力を得る事ができるわ。(とはいっても並みの妖怪クラスがいいところなんだけど…)」
「す、すごいわね、そんな事が出来るの?」
「勿論よ。」
そう言うと幻月と夢月の手に球体のようなものが現れる。
一つは神々しく光っており、もう一つは逆に禍々しく光を放っている。
「これはあなた達にとって必要になるものよ、さぁ。」
差し出されたそれを見て蓮子とメリーはお互いの顔を見合うと覚悟を決める意味でうなずき合い、それを手に取る。
するとその球体は二人の体に吸い込まれるように消えていった。
…ドクンッ
その瞬間、二人を激しい激痛が襲った。
「うっ、ぐっ!な、なに?あ、頭が、割れそう…、」
「あっ、が…体が、く、苦しい、た、助けて…。」
二人はあまりの激痛にそのばにうずくまり身悶えする。
「大丈夫よ、苦しいのは最初だけだもの、すぐ治るわ。」
幻月は二人をまるで助けようとはせず、嫌な笑みを浮かべ苦しむ二人を見据えておりむしろその様子を楽しんでいるかのようだった。
「さ、夢月。二人を幻想郷へ。」
「わかったわ。」
そういって夢月が二人に近づてきた。
いまさらになって自分たちのした選択が間違いだと気付いた二人だったがもう遅かった。
「やめて、こ、こないで…。」
二人は目の前の悪魔から逃げようと必死に後ずさるがこんな状態では逃げれるはずも無かった。
そして夢月が手をかざすと二人の周りの空間が捻じ曲がり始めた。
しかし、
「そこまでよ。」
凛とした声が響いた
次の瞬間―
ガキィン、と金属のような物がぶつかる音がした。
「!?」
そしてそこにはメリーと蓮子を守る様に大きな鎌を持った女性がたっていた。
「くっ、だれ?」
すぐに夢月が身構える。
「っ!」
夢月から血が滴る。
「……」
幻月は何も構えてこそ居ないが戦闘の準備は万端だった。
しかしその姿を見た夢月は驚いた顔をした。
「エリー?」
夢月は自分の前に立ちはだかる女性に対してそう言った。
「貴女、何を…そんなことより、どうやってここに?」
夢月が問い質すがエリーは無言のまま夢月と幻月に刃を向けていた。
「エリー…あなた、自分が何をしてるか分かってる?」
幻月の物言いは物腰柔らかかった、しかしそこには確かな殺気を感じられた。
「貴方達こそ、自分たちが何をなさっているのか理解しているのですか!」
「ええ、当然よ。だから早くそこを退いてくれない?。」
「…出来ません。」
「どうして?」
「幻月さん、夢月さん、あなた方の行っている事は幻想郷を危機に陥れます。それが…わからないのですか?。」
それを聞き幻月は口元を歪めた。
「ふふ、あら。そんな事知ってるに決まってるじゃない。『幻想郷は全てを受け入れる、それはそれは…恐ろしい事ですわ…』ってね。」
「!!。だったらどうして…!」
「どうして?可笑しなことを聞くのね。クスッどうしてですって?決まってるわ、幻想郷に行きたいからよ!」
そしてこんどは幻月がエリーに問う。
「貴女だって本当は幽香のことが恋しいんでしょ?会いたいんでしょ?どんな手を使ってでも…。そうよね…-アンクウ-」
それをきいた瞬間エリーはギリッと歯を鳴らし怒気を含んだ目で幻月を睨みつけた。
「確かに…そうですが…、しかしこれは幽香様を危機に晒す事にも繋がっている。第一!。こんなことを幽香様が望んでるわけがない。それを見過ごすわけには行きません。」
「幽香、幽香って、じゃあ!私達はどうすればいいの?教えてよ!どうして、どうして幽香は、帰ってきてくれないんだよ!!幽香は!私たちを裏切ったんだろ!?」
幻月の態度は先ほどまでとは打って変わっていた。
「そんなことはありません!幽香様が私たちを!、幻月さんたちを見捨てるはずがありません!。」
「じゃあどうして?どうして帰ってきてくれないのよ、いつになったら私達は幻想郷へ行けるのよ?本当はさ、無理矢理にでも夢幻世界で現実世界を覆いつくすことだってできる。これでも平穏に済ませようとはしてるんだ。努力はしたんだよ…。」
「…それは。っでも!。」
「埒が明かないわ。」
「!!」
「もうこれしか、方法は無いんだよ…。」
そういうと幻月はポケットからガイアメモリを取り出した。
(マズイ…!)
「二人とも!早く逃げて!!」
そういわれ蓮子とメリーは一先ず自分たちを守ってくれている方を信用して、痛む身体を引きずりながら走った。
「夢月!」
「ええ、姉さん。」
そういわれると目にも留まらぬスピードでエリーの横を駆け抜けて二人を追っていった。
(しまった!!)
そう気をとられていると目の前を銃弾がかすった。
彫刻の施された銀色のリボルバーを手にした幻月がこちらに笑みを向けている。
「あの二人は私たちの意志無しでここからは出られない、どう足掻いたってこうなる運命だったのよ。
あなたも無駄な事したわね。こんな事しなければ痛い目見ずに済んだものを…もっと賢い子かと思ってたわ。」
「やはりこうなりますか…。」
「ええ、夢月が戻ってくるまでの間、あなたの相手をしてあげるわ。」
そういって片方しかスロットのないドライバーを装着すると先ほどのガイアメモリを装填した。
エリーは腹を括って最凶の悪魔、幻月と対峙することを決めた。
「幽香様、私は我が七生を持ってあなたに仕えて参りました。今日というこの日まで、あなたの下で戦えた事を誇りに想っております!」
エリーは得物を構え幻月に切りかかった。
「残念ね。エリー」
『―スカル―』
「さあ、もう逃げられないわよ?もともと行くって決めたんだから。大人しくしてなさい。」
「ハァ、ハァ…!ここまで…か。」
メリーと蓮子はさきほどのような痛みは殆ど消えたがまだ上手く歩くことすら出来ないでいた。
「さぁ、いきましょう? 幻想郷へ――」
さっきの様に再び周りが歪みはじめ、
そして……二人の姿が…
消えた……。
「エリー、楽しかったわよ?」
幻月は足元に横たわるエリーに語りかけた。
そうして徐々に幻月の姿が消えていく、まるで元々そこに居たのが幻だったかのように……。
そして、全身が血塗れになった女性だけが残された。
消える直前…幻月はこう呟いた。
「ま、命だけは取らないでおいてあげるよ。」
東方星記録プロローグ
―了―
これは東方二次創作という産物です、ガイアメモリー出てきちゃいます、苦手な方はブラウザの戻る、を押してください。
続き物になります。したがって前作があります。
翌朝、窓から差し込む朝日により蓮子は目を覚ませた。
「う~ん…」
「おはよう、やっと目が覚めた?」
「ん~おはよー、早いわね、メリー」
「早いって、今何時だと思ってるのよ、そろそろ仕度しないと流石に遅れるわよ?」
そう言われ時計に目を遣ると既に朝8:00をまわっていた。
「ふえ?もうそんな時間!?メリーってば、もっと早く起こしてくれれば良いのに!。」
蓮子はガバッと起き上がると急いで身支度を始めた。
「だって蓮子ったらいくら起こしても「あと5分」って言って起きないんだもの。」
「そうはいってもさぁ~。」
「そういえば蓮子、昨日の話し憶えてる?」
「それって夢の話だよね?もちろんよ。」
「それがね、今朝早くに起きたから言われたようにそのときの風景を描いてみたのよ。」
そういうとメリーは蓮子に少し大きめの紙を渡した。
「へぇ~、町並みは大都市みたいなのね。」
そこには鉛筆だけでだが夢で見た内容とは思えないほど細かいところまでえがかれた風景があった。
メリーは中、高と美術部をやっており特に風景画を専攻していたのでこういったセンスはずば抜けていた。
しかしそれを蓮子が興味津々に見つめているとメリーが
「…でもさぁ。蓮子。」
「うん?。」
「流石に羽の生えた空飛ぶ人なんてねぇ、昨日は盛り上がっちゃったけど。冷静になって考えてみるとありえないわ。所詮夢だったのよ。」
とメリーはやけに盛り上がってる蓮子に、やはり夢は夢、現実は現実だと言って聞かせた。
それに対し蓮子は。
「…いやさメリー、そうだろうけど、それを言ったら私たち秘封倶楽部の存在が危うくなるわ。
うん、居るの、空飛ぶ人は居るのよ。だって現に私は月と星だけで自分の現在地と時刻が分かったり貴女だって結界が見れるとか訳分からない特技もってるじゃない。
第一夢が当たるっておかしくない?夢ってのは睡眠時本来ならば何も感じていないとされる大脳が覚醒時と同様な活動状態を示す脳波になることであってさらにはレム睡眠時に、PGO波という鋸波状の脳波が、視床下部にある端網様体や後頭葉にかけて現れるわけで。このPGOが海馬などを刺激して記憶を引き出し、大脳皮質に夢を映し出すと考えられているんだからその人の記憶でしかないの、未来を見るなんて不可能だし他人に鑑賞した予知夢をみるなんて持っての外で……」
蓮子は途中からやや危ない目をしながらメリーに歩みよってきた。
「え?ええ!そ、そうね!居るわよね、私もそう思えてきたわ!さっきは私がどうかしてたのよ。この世には宇宙人だって神様だっているわ、きっとラプラスの悪魔もマクスウェルの机上の理論だって存在するはずよ!だから蓮子、落ち着きましょ?」
そういうと蓮子は笑顔になって「そうこなくっちゃ」と意気揚々と鼻歌を歌いながら支度を再開した。
メリーとしてはここまで期待してしまっている親友に結局は唯の夢だったと落ち込まないでほしかったので止めようとしたのだが、まるで効果が無かったようだ。
もともとメリーはそこまで自分の夢を信用していないのだ。
最初はおかしな夢を見たと思っていたら実際にそれが本当に起こってしまい、それを親友である蓮子に言ったのがきっかけだった。
同じような事を2回3回と続けているうちにどれが予知夢なのかを分かるようになりあるときどこでどんな事故が起きると蓮子に言ったところ見事に的中した。それ以来蓮子は完全に自分のこの夢の内容を信じきっているのだった。
しかしあの夢が本当にしろウソにしろ今はこの旅行を楽しむとしよう、そうメリーは考える事にした。
「ほら蓮子、早くしないと9時には出発したいって言ってたじゃない。」
「ちょっとまってよメリー。」
そんな事を言いながら私たちはホテルを後にした。
丁度太陽が真上に来た頃、予定通りに計画が進み上機嫌の二人はそろそろ昼食にしようと思い、タクシーに乗って移動していた。
「それにしてもさっきのはすごかったわね。驚いたわ。」
「ええ、ホントね、でも蓮子ったらはしゃぎ過ぎじゃない?また昨日みたいに途中でバテちゃうわよ。」
「なによ、折角の旅行よ?。楽しまなきゃ損に決まってるじゃない。」
「それでねメリー、今から行くところのお店は……」
そんな風に先ほど劇場でみたマジックショーの事などを話し、そして蓮子がこれから行く店のことを話そうとしているときだった、
メリーがいきなり蓮子の手を握り締めてきたのだ。その手は妙に震えておりメリーの表情は凍りついて、真っ青な顔をしていた。
「メ、メリー?、急にどうしたの?具合でも悪くなった?。」
と蓮子がメリーのことを心配してたずねたがそれにメリーは答えることなく一言「あのときと一緒。」と呟いた。
そしてメリーは蓮子の方を振り返ると震えた声でこういった。
「蓮子、今朝見せた絵の事憶えてる?」
「?えぇ…それがどうしたの?」
「ここ…この風景!、あのとき見たのと、同じ…。」
「え!?」
そういわれ窓の外を見る、一見人が多く分からなかったが確かに今朝見たのと同じビルや看板が建っていたのだった。
「蓮子、どうしよう、やっぱりあの夢本当だったんだ。」
そうメリーが蓮子に相談する。すると蓮子は。
「すごいわ!」
「れ、蓮子!?」
「メリーったらなに怖気づいてるのよ!私たちは秘封倶楽部よ?
それにしても流石ねメリー、私は信じてたわよ。一体何がおきるのかしら?」
「そうだけど、私が見た夢って不吉な事が多かったりで…。」
「大丈夫よ、そんなに心配しなくても、別に人生が終わるわけじゃないんだから…」
そう蓮子が言ったときだった。
突如上空より物凄い速度で飛来する光弾が見えた。
「え?なに?」
それに気づいたとき、それは既にタクシーの目の前に着弾していた、そして―
― 炸裂した。
その爆発によりコンクリートは抉れ二人が乗っているタクシーは吹き飛んだ。
そして反転した状態で地面に叩きつけられたのだ。
「…っ!!!いった~…。な、何だったの?、人生の終わりが見えそうだったわ…。」
と蓮子は衝撃の割りに特に痛むところが無く。なんとか状況の把握に努めようとする。
「そうだ!、メリーは!?、メリー!大丈夫!?」
そうして同乗していた親友の安否を確認する。
その呼びかけにメリーは
「え、ええ、体がそこらじゅう痛いけど、何とか生きてるわ。まさに九死に一生を得たわ。」
とギリギリといった感じだったがメリーからも大きな外傷は見当たらなく安堵の息を吐く、しかし今は安心している場合ではない。
一刻も早く安全な場所に避難しなくては。
「よかった、動ける?兎に角ここから出ましょ。それで助けを呼ばなくちゃ。」
何が起こったのか理解は出来ないがひとまず今やばい状況にあるのは分かる。
それにここから逃げた方がいいのも確かだろう。
そして運転手にも助けを借りようと運転席を見るがそこには既に運転手の姿はなかった。
「なによ、お客様をおいて一人だけ逃げたっていうの?アメリカはドライだって聞いてたけどあんまりじゃない?」
と蓮子は文句を言いながらも動きづらい車内でなんとかメリーをつれてやっとのおもいで外に出た。
「メリー、大丈夫?立てる?」
「えぇ、立てるわ…ありがとう。」
「よかった…、じゃあ今助けを……」
そう思い辺りを見回した蓮子は愕然とした。
なんと周りにはもう人っ子一人いなかったのだ。
いや、ありえない、運転手にしろ通行人にしろこんなに早く逃げれるだろうか?
周りに立ち並ぶビルやお店にさえも人影はなかった。
「な、なんで?…」
さらに追い討ちをかけるように周囲には突如として深い霧が発生し始めた。
その霧は昼間だというのに日の光さえ遮断し、あっというまに辺りを夜のように暗くした。
「なに?何がどうなっているのよ!」
何もかもがいきなり過ぎて蓮子は訳が分からず困惑していると、メリーが空を指差た。
「見て、蓮子…。」
蓮子はメリーの指した方に目を遣る…
なんとそこにはバサッバサッ、と翼を羽ばたかせ空を飛ぶ人と何の動作もするわけでもなく、そのとなりを浮遊する人がいた。
「うそ…、なにあれ……。」
蓮子は夢でも見ているのではないかと目を疑った。しかしそこには確かに空飛ぶ二人の姿があった。
「姉さん、白昼に堂々とやりすぎじゃ…、まだあんなに人が居たのに…。」
「大丈夫よ、アメリカじゃあよくあることらしいわ。それにちゃんと目標を確保できたじゃない。万事オッケーよ。」
と姉と呼ばれた方はカラカラと笑っている。
「貴方たちは私の夢に出てきた…。」
「ええ、そうよ。私は幻月、こっちが妹の夢月よ、よろしくね。マエリベリー・ハーン、宇佐見 蓮子。」
と幻月は可愛らしく微笑みながら自己紹介をする。
しかし蓮子とメリーはそれどころではなく幻月たちにいろいろなことををたずねた。
「他の人たちは!?何処に行っちゃったの?」
「他の人間たちはちゃんと元の世界にいるわ。」
「も、元のって?じゃあここは何処なのよ。」
「ここはちょっと変わったところでね、あなた達が普段暮らしている世界の反対にある世界、いわば裏の世界よ。」
「裏の…?全然意味わかんないんだけど。」
「表の世界と裏の世界ってのは一枚の紙の表と裏のように決して交わる事の無い世界で、まぁここのことはあんまり気にしなくてもいいわ。」
「?そうなの?じゃ、じゃあ次に、貴方たちは何者なの?人間じゃないわよね?」
「ええ、そうよ。私達は人ではないわ。」
「やっぱり…じゃあ何なの?」
「そうねぇ、あなた達は私たちがなんに見える?」
「え?何だろ、やっぱり天使…とか?」
「フフッ、天使か…残念、むしろその逆、私たちは悪魔よ。」
「!!、あ…悪魔ぁ!?」
「そうよ、どう?おどろい、」
「「すごいわ!!!」」
「え?」
幻月は思わぬ反応をする二人にやや戸惑った。
「悪魔なんて初めて見たわ!ほんとに実在したなんて!」
「ええ!ホント、凄いわ!羽触ってもいい?」
「え?あぁ、別にいいけど、大切な羽だからあまり…」
「すごーい!ふわふわよ!それにとっても綺麗ね!」
「そ、そうでしょ?自慢の羽なんだから。」
「姉さん、話がそれてるわよ……。」
「え?あぁ、そうだったわね。話を戻したいんだけど、いいかしら?」
「あ、ごめんなさい、つい夢中になっちゃって…。」
そういって幻月は自分の羽に顔を埋めてもふもふしている二人を引きはがす。
「それで貴方達は何の為に私達をここへ呼んだの?」
「それはあなた達に協力してほしいことがあるからよ。」
「協力?私たちに?」
「ええそうよ。」
「何をするの?」
「あなた達にはこれを持って「幻想郷」へ行ってほしいの。」
そういうと幻月はいくつかの長方形の物体と差込口が ゛二つ"ついたガジェットを取り出した。
「それはなに?それに幻想郷って?」
「これはダブルドライバーとガイアメモリーといってね、これはね、とても大切なものなの。だから絶対になくしちゃダメよ?」
「ええ…分かったわ。それで?」
「ええ、幻想郷ってのは…、」
幻月が説明しながらそのガジェットをメリーに渡そうとしたときだった。
「ちょっとまってよ!!」
と突然蓮子があいだに割って入ったのだった。
「なによ、どうしたの?」
「どうしたの?じゃ無いわよ。なんで私たちがそんなことしなくちゃならないのよ?それに、最初の爆発、あれ貴方たちの仕業でしょ?そんな危険な人たちのこと簡単に信用しちゃ…」
「あぁ、あれ?あれは、仕方なかったのよ。」
「仕方なかった?」
「ええ、そうよ。周りに人が居たでしょ?あの人たちを巻き込んじゃいけないと思って、でも私たちは悪魔だから少し攻撃的なのよ、だからあれしか手が無くて、現に貴方達は無事だったし、もう痛いところは無いでしょ?」
「それは…確かに、だけど貴方たちの目的は何?」
「目的?」
「そうよ、目的よ。」
「私たちはただ幻想郷へ行きたいだけ。それだけよ?そのためには貴方たちの力が必要なの。」
「それじゃ話の辻褄が合わないわ、貴方たちが私たちをその幻想郷って所へ連れてけるんなら貴方たちが行けばいい話じゃない。」
「バカね、それが出来ないから頼んでるんじゃない。私たちは夢幻の悪魔、私たちは夢幻の中でしか活動できないの。正確には短時間だったり誰かの身体を借りたりで弱体化した状態でなら行けるわ、でもどうせなら全快の方がいいじゃない。」
「そうよ蓮子、人助けだと思って、ね?確かに私たちは今旅行中だから勿体無い気もするけど、こっちは幻想郷よ?名前からして素敵だと思わない?いまこのチャンスを逃したらこんな機会もう一生ないわ。」
「蓮子、私たちは秘封倶楽部でしょ?」
「え?確かに、そうだけど…でも、」
「…でも、どうして私達なの?それだけ教えて頂戴。」
「そんなの簡単よ、常識しか頭に無い奴らには何したって無駄だからよ。それに比べ貴女達は違うわ、幻想を信じてる、そうでしょ?」
「……。」
「どう?『悪魔と相乗りする勇気』貴方達にはある?」
幻月がガジェットを差し出しながら言う。
それにメリーは
「いいじゃない、「悪魔と相乗り」。してみましょうよ、蓮子。」
「……」
蓮子は黙ったままだった。
幻月がニヤッと笑う。
「フフッ、交渉成立…かしら?。」
そういってメリーにダブルドライバーとガイアメモリーを渡す。
「それじゃあなた達にはもう一つ素晴らしいものを差し上げましょう。」
「素晴らしいもの?」
「ええ、あなたたちのその勇気に賞してよ。マエリベリー・ハーン、貴女には「星の記憶」を宇佐見蓮子、貴女には「パワーコア」をあげるわ。」
「星の記憶?」
「ええ、星の記憶とはその名の通りこの星の全ての情報よ。正しくは全ての知識がある星の本棚を使う権利があたえられるわ。マエリベリー・ハーン、貴女にはこの星の全ての記憶を授けるわ。」
「じゃあ、パワーコアってのは?」
「パワーコアは特殊な暗黒物質のことで凄まじい高エネルギーを持っているわ、その核を手にすることで貴女は超人的な身体能力、動体視力を得る事ができるわ。(とはいっても並みの妖怪クラスがいいところなんだけど…)」
「す、すごいわね、そんな事が出来るの?」
「勿論よ。」
そう言うと幻月と夢月の手に球体のようなものが現れる。
一つは神々しく光っており、もう一つは逆に禍々しく光を放っている。
「これはあなた達にとって必要になるものよ、さぁ。」
差し出されたそれを見て蓮子とメリーはお互いの顔を見合うと覚悟を決める意味でうなずき合い、それを手に取る。
するとその球体は二人の体に吸い込まれるように消えていった。
…ドクンッ
その瞬間、二人を激しい激痛が襲った。
「うっ、ぐっ!な、なに?あ、頭が、割れそう…、」
「あっ、が…体が、く、苦しい、た、助けて…。」
二人はあまりの激痛にそのばにうずくまり身悶えする。
「大丈夫よ、苦しいのは最初だけだもの、すぐ治るわ。」
幻月は二人をまるで助けようとはせず、嫌な笑みを浮かべ苦しむ二人を見据えておりむしろその様子を楽しんでいるかのようだった。
「さ、夢月。二人を幻想郷へ。」
「わかったわ。」
そういって夢月が二人に近づてきた。
いまさらになって自分たちのした選択が間違いだと気付いた二人だったがもう遅かった。
「やめて、こ、こないで…。」
二人は目の前の悪魔から逃げようと必死に後ずさるがこんな状態では逃げれるはずも無かった。
そして夢月が手をかざすと二人の周りの空間が捻じ曲がり始めた。
しかし、
「そこまでよ。」
凛とした声が響いた
次の瞬間―
ガキィン、と金属のような物がぶつかる音がした。
「!?」
そしてそこにはメリーと蓮子を守る様に大きな鎌を持った女性がたっていた。
「くっ、だれ?」
すぐに夢月が身構える。
「っ!」
夢月から血が滴る。
「……」
幻月は何も構えてこそ居ないが戦闘の準備は万端だった。
しかしその姿を見た夢月は驚いた顔をした。
「エリー?」
夢月は自分の前に立ちはだかる女性に対してそう言った。
「貴女、何を…そんなことより、どうやってここに?」
夢月が問い質すがエリーは無言のまま夢月と幻月に刃を向けていた。
「エリー…あなた、自分が何をしてるか分かってる?」
幻月の物言いは物腰柔らかかった、しかしそこには確かな殺気を感じられた。
「貴方達こそ、自分たちが何をなさっているのか理解しているのですか!」
「ええ、当然よ。だから早くそこを退いてくれない?。」
「…出来ません。」
「どうして?」
「幻月さん、夢月さん、あなた方の行っている事は幻想郷を危機に陥れます。それが…わからないのですか?。」
それを聞き幻月は口元を歪めた。
「ふふ、あら。そんな事知ってるに決まってるじゃない。『幻想郷は全てを受け入れる、それはそれは…恐ろしい事ですわ…』ってね。」
「!!。だったらどうして…!」
「どうして?可笑しなことを聞くのね。クスッどうしてですって?決まってるわ、幻想郷に行きたいからよ!」
そしてこんどは幻月がエリーに問う。
「貴女だって本当は幽香のことが恋しいんでしょ?会いたいんでしょ?どんな手を使ってでも…。そうよね…-アンクウ-」
それをきいた瞬間エリーはギリッと歯を鳴らし怒気を含んだ目で幻月を睨みつけた。
「確かに…そうですが…、しかしこれは幽香様を危機に晒す事にも繋がっている。第一!。こんなことを幽香様が望んでるわけがない。それを見過ごすわけには行きません。」
「幽香、幽香って、じゃあ!私達はどうすればいいの?教えてよ!どうして、どうして幽香は、帰ってきてくれないんだよ!!幽香は!私たちを裏切ったんだろ!?」
幻月の態度は先ほどまでとは打って変わっていた。
「そんなことはありません!幽香様が私たちを!、幻月さんたちを見捨てるはずがありません!。」
「じゃあどうして?どうして帰ってきてくれないのよ、いつになったら私達は幻想郷へ行けるのよ?本当はさ、無理矢理にでも夢幻世界で現実世界を覆いつくすことだってできる。これでも平穏に済ませようとはしてるんだ。努力はしたんだよ…。」
「…それは。っでも!。」
「埒が明かないわ。」
「!!」
「もうこれしか、方法は無いんだよ…。」
そういうと幻月はポケットからガイアメモリを取り出した。
(マズイ…!)
「二人とも!早く逃げて!!」
そういわれ蓮子とメリーは一先ず自分たちを守ってくれている方を信用して、痛む身体を引きずりながら走った。
「夢月!」
「ええ、姉さん。」
そういわれると目にも留まらぬスピードでエリーの横を駆け抜けて二人を追っていった。
(しまった!!)
そう気をとられていると目の前を銃弾がかすった。
彫刻の施された銀色のリボルバーを手にした幻月がこちらに笑みを向けている。
「あの二人は私たちの意志無しでここからは出られない、どう足掻いたってこうなる運命だったのよ。
あなたも無駄な事したわね。こんな事しなければ痛い目見ずに済んだものを…もっと賢い子かと思ってたわ。」
「やはりこうなりますか…。」
「ええ、夢月が戻ってくるまでの間、あなたの相手をしてあげるわ。」
そういって片方しかスロットのないドライバーを装着すると先ほどのガイアメモリを装填した。
エリーは腹を括って最凶の悪魔、幻月と対峙することを決めた。
「幽香様、私は我が七生を持ってあなたに仕えて参りました。今日というこの日まで、あなたの下で戦えた事を誇りに想っております!」
エリーは得物を構え幻月に切りかかった。
「残念ね。エリー」
『―スカル―』
「さあ、もう逃げられないわよ?もともと行くって決めたんだから。大人しくしてなさい。」
「ハァ、ハァ…!ここまで…か。」
メリーと蓮子はさきほどのような痛みは殆ど消えたがまだ上手く歩くことすら出来ないでいた。
「さぁ、いきましょう? 幻想郷へ――」
さっきの様に再び周りが歪みはじめ、
そして……二人の姿が…
消えた……。
「エリー、楽しかったわよ?」
幻月は足元に横たわるエリーに語りかけた。
そうして徐々に幻月の姿が消えていく、まるで元々そこに居たのが幻だったかのように……。
そして、全身が血塗れになった女性だけが残された。
消える直前…幻月はこう呟いた。
「ま、命だけは取らないでおいてあげるよ。」
東方星記録プロローグ
―了―
続きは期待しています。