十秒で分かる前回のあらすじ
前回の競技の結果を見て、で抵抗を覚悟した四季映姫と妖夢。果たして、彼女達はこの大会を潰すことが出来るのか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『さぁ、四季映姫選手、妖夢選手と入っていきました。一体どんな戦いを繰り広げるのか、楽しみであるところです。それでは、競技の説明を、こ――』
「お待ちなさい」
司会者の進行を遮る声。主は、選手である四季映姫である。
「その、競技説明とやらの前に、私達には言うことがあります」
『言うこと……ですか?』
「はい」
四季映姫と妖夢は互いの目を見て、力強く頷いた。
『私達は、何があろうと、一切競技に参加しません!』
四季映姫と妖夢が高らかに、会場全体に響くような声で宣言した。観客はざわざわと動揺し、司会者も急にそんなことを言われたので、焦る。
『さ、参加しないとは……?』
「そのまんまの意味です。私達はそちらが競技の内容を発表しても、ルールを説明しても、一切競技には参加せず、ただ、ここに立って、傍観します」
「ちょ、ちょっと、待ちなさいよ!」
霊夢が騒ぎを聞きつけて、舞台へと上がった。
「あんた達! そんなことして、ただで済むと思ってるんじゃないでしょうね!?」
「いえ、もちろんそんなことはありませんよ。攻撃したければ、どうぞ攻撃して下さい。こちらとしては、ここに立ってるより、その御札を喰らって倒れているほうがマシですから。さぁ、どうぞ?」
「ぐっ……!」
霊夢が苦虫を噛み潰したような顔をした。確かに、今の霊夢ならここで二人を倒すのは容易だろう。しかし、二人は選手であり、倒してしまっては意味がないのだ。それこそ、競技をやらせるために競技を出来なくしてしまうという、本末転倒な結果になってしまう。
四季映姫と妖夢は冷や汗を流しつつ、霊夢の様子を見て、とりあえず攻撃は無くなった、と安心する。これによって、四季映姫と妖夢を止める手段が無くなった。
観客がざわめく。どうやら、二人の競技放棄を止めることが出来ないことを悟ったようだ。中にはブーイングをする者もいた。
四季映姫と妖夢はそれを無視して、神奈子に向き合う。
「さぁ、どうします? 競技を行う者がいなくなった以上、この大会を続行させることは不可能です。大人しく、この下らない大会を終わらせなさい!」
四季映姫が力強く言い放った。神奈子は腕を組み、考え込んでいるのか、目を閉じている。
(これで、あの二人も救われるでしょう。この大会を、終わらせることが出来る。私達は、変態から勝利したのです!)
四季映姫と妖夢は自分の勝利を確信した。自然と笑みが浮かんでくる。心も軽くなり、これでようやく――
「ちょっと、待ちなって」
開放感に浸ってたところで、小町から横槍が入った。四季映姫は少し不機嫌な顔になりながらも、小町に説明する。
「小町。分かってるでしょう? もう大会は終わりです。私達は何もしないんですから。分かったら、さっさと帰って、仕事をしなさい」
「もう大会は終わり、ねぇ……」
くっくっく、と小町が忍び笑いを漏らす。小町の様子は四季映姫を怪訝に感じさせた。
「何がおかしいのですか?」
「いやぁ。四季様がそう思ってるとこ悪いんですがね、大会はまだ続きますよ」
「何ですって……? 大会はもう終わりです! だって――」
「選手が競技に参加しないから、と言いたいのかしら?」
「幽々子様!」
小町の隣に、ふんわりと幽々子が参上する。表情はにこやかだ。やはり、この顔も明らかに大会を主催している者の顔ではない。四季映姫は自ずと不安に駆られるが、それを隠しながらも、話を続ける。
「えぇ、その通りです。私達は競技には参加しません。それで、どうやって大会を続けるつもりですか?」
「ふふふ……そうねぇ。確かにさっきみたいな形の競技だと、放棄されるのは痛いわぁ。だって、コスプレは意志がないと出来ないものですもの」
そうは言いつつ、やはり顔はにんまりと笑顔だ。全然困っている様子はない。四季映姫は焦る。
いけない、何かが起こる前に早く大会を終了させねば!
「もう大会は続行できない! 私達はさっさと帰らせてもらう!」
四季映姫はそう言いながら、全力で舞台袖にある出口に走った。妖夢も四季映姫の様子に気付き、四季映姫の後に続く。
今までに出したことがないくらい全力で走るのだが、一向に出口に近づく気配はない。
(おかしい。こんなにも走っているのに、出口に辿り着かないなんて。――! しまった! あの娘の能力は!)
四季映姫が止まって後ろに振り返る。走る前と変わらない距離に小町と幽々子がいるのを見て、四季映姫は確信してしまった。
「小町! あなた……!」
「まぁまぁ。そう焦らないで下さいよ。まだ、競技方法も発表してないんですからねぇ」
まんまとやられた、と四季映姫は唇を噛んだ。小町の能力は『距離を操る程度の能力』。ここから出口までの距離を稼がれてしまった。小町は走って汗だらけになった四季映姫にタオルを投げ渡して、飄々とした口調で話す。
「さぁて、四季様も庭師も結構色っぽくなったところで、競技の発表と行こうかねぇ」
「……私達は、参加しないわよ」
「分かってますって。特別、四季様達には何かさせることはありません。ただ……こちらのものに反応してもらえれば結構ですから」
「反応……?」
「さーて、皆の衆! 待たせたな! 競技の発表だ!」
「第二回戦、競技は、これよ!」
幽々子が頭上で制止している二つ合わせたオンバシラを引っ張り、幕を張る。
そこには――
「『ロリっ娘写真比べ&反応対決』ーー!」
うぉおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!
「写真比べ……!?」
「反応……!?」
四季映姫と妖夢がそれぞれ顔を合わせる。だが、互いにどういう内容の競技か知らないようだった。ここでタイミング良く、小町の説明が入る。
「えー、早速説明に入るぞ。これは、選手の萌えるような恥ずかしい写真を、この河童に作ってもらったプロジェクターなるものを使って、どんどん大画面に映し出し、それをどれだけ萌えたかをオーディエンスがポイント化して、得点を争うという競技だ。ただし、写真を映し出すだけじゃあない。その写真を見た選手の反応もポイント化してくれ。ここに御座すは、幻想郷でも頭の固さと真面目さで双璧を成す、四季映姫・ヤマザナドゥ選手に魂魄 妖夢選手だ。きっとギャップ効果によって、より可愛い反応が返るんだろうなぁ、とあたしは思うよ」
オーディエンスはこくこくと頷き、競技が早く始まらないかソワソワしている。
「よし、準備のためしばし待ってくれ」
そう言った後、河童達がプロジェクターを設置している間に小町は半ば呆然としている四季映姫に話しかけた。
「四季様。ということで、分かってもらえましたか?」
「……卑怯者」
キッと四季映姫が小町を睨み付ける。
「おっと、そんな怖い顔しないで下さいよ。まだ四季様達には希望があるじゃないですか」
「……希望ぉ?」
「そう。実はあたしは四季様の味方なんですよ。宴の時には酒も入っちまって、ついつい乗っちゃったけど、実際は四季様達が不憫でならないんですよ。だから、四季様にアドバイスをあげようと思いまして」
「……アドバイスぅ?」
「――まぁ、信用出来ないのは分かりますよ。とりあえず、話だけでも聞いてください」
「……まぁ、聞くだけなら」
「ありがとうございます。それでですね、競技というものは得点によって勝敗が決まるじゃないですか。得点というものを入れている者は誰かと言うと、あの観客達ですよね? それじゃあ、あの観客達が得点を入れなくさせる、もしくは、入れる気を失くさせれば、得点はゼロ。試合どころじゃなくなりますよね?」
「まぁ……そうね。でも、そんなことが可能なのかしら?」
「ところができるんですよ。それは四季様達の行動によりますが」
「ほんとに!? 教えなさい、小町!」
四季映姫が目を輝かせて迫る。さっきの信用できないという話は、もう飛んでしまったらしい。小町はにやけながら、四季映姫にその方法を教える。
「ポーカーフェイスですよ、四季様」
「ポーカーフェイス……というと、相手に何を考えているのか悟られないようにするための表情ですか?」
「そうです。ポーカーフェイスは、無表情とも取れますが、もし四季様達が競技中に、その『何を考えているか分からない表情』をされると、どうなると思いますか?」
「うーん……観客が動揺するのかしら?」
「そうですね、観客は動揺します。さて、今回の競技は写真もありますが、やっぱり一番のポイントは、選手の反応、つまり表情にあるわけですよ。」
「うんうん」
「それなのに、選手である四季様が無表情だったらどうですか?」
「――! 観客は一番のポイントを失うわ!」
「そう。ポーカーフェイスの四季様達にやがて観客は白け、ポイントは入らなくなり、競技は無駄に終わる。うまくいけば、そのまま大会が終わることが出来るかもしれません」
四季映姫は煌く瞳を小町へと向ける。
「小町! あなた天才! 私達の救世主よ! 今まで疑ってごめんね! じゃあ、妖夢さんに伝えてくるから!」
「はい、行ってください」
「それじゃ!」
輝かんばかりの笑顔で四季映姫は妖夢とへと向かった。一方、その場に残った小町は口の端を吊り上げる。
「今の笑顔が競技中に出れば万々歳なんですけどねぇ……」
ふっふっふ、と黒い笑みを浮かべて、小町はその場から立ち去った。
『さて、プロジェクターの準備が出来た様子です。早速、競技に入っていきましょう』
四季映姫と妖夢は互いに顔を近づけ、ヒソヒソと二人だけが聞こえる声で話していた。
(妖夢さん。分かってますね?)
(はい。無表情を貫けばいいんですよね?)
(そう。何があっても、ひたすらポーカーフェイスよ)
(はい。大会を終わらせるために、頑張りましょう!)
『それでは、競技を始めます。四季映姫選手、妖夢選手、準備はよろしいですか?』
「えぇ」
「はい」
『それでは、第二回戦、開始です!』
わぁああああああああああああああ!!
「まずはあたしのターンだね。それでは、手始めにこの写真といきますか」
小町は写真の束(具体的には写真ではないのだが、ここでは面倒くさいので写真と表記する)から一枚を抜き取り、プロジェクターにぺちっ、と置く。なんだかプロジェクターに置く感じがどこぞの世界一のカードゲームのような感じだが、気のせいであろう。
プロジェクターが宙に浮いた白い幕(先程発表した時の幕。リサイクル、というか裏面使用)に写真を投影する。
「っぶ!」
四季映姫が思わず吹いてしまった。場内も感嘆の声を漏らす。
そこに映し出されていたのは、セーラー服を着た四季映姫であった。表情ははれやかで、バックには桜。手には黒い筒を持っている。卒業証書を入れるあの筒だ。
『いや~、お宝写真ですね~。四季映姫選手にこんな過去があったんですね~』
(ち、違う!)
四季映姫は思わず叫びそうになったが、下手に取り乱すとポイントになってしまう可能性があるため、ギリギリで堪えた。いや、それよりも問題がある。
(あんな写真、知らないわ!)
四季映姫は心の中で叫ぶ。そう、四季映姫は生まれた時から学校というものには行っていない。それは神格であるが故、学校なんてものに行かなくても済むからである。いや、そもそも幻想郷に学校なんてものは存在しない。あるのはハクタクの寺子屋ぐらいなものだ。つまり、あの写真は真っ赤な嘘ということになる。ちなみに観客は外の世界に制服やセーラー服があることだけは知っている。
(一体、どういう……)
と、心の中で思った時には、すでに目星が付いていた。四季映姫は小町を睨み付ける。
自分を見ていることに気付いた小町は、口の端を上げながら、口パクで言った。
さいきんのしゃしんをへんしゅうするぎじゅつはすごいですね、と。
四季映姫はまるで体中に熱湯が駆け巡ったかのような熱さが込み上げて来るのを感じた。つまり、四季映姫は怒り、憤り、今にも頭から蒸気が吹き出そうな勢いで体が沸々と煮えたぎっているのである。それを小町はにやにやと楽しそうに笑う。それが、さらなる温度上昇を引き起こした。
しかし、四季映姫はいつも通りに怒ることは出来なかった。下手に怒れば、観客はきっと大喜びすると分かっていたからである。しょっちゅう、小町から『四季様は怒る姿はかわいいですねー』と言われていたのを思い出す。つまり、そういうことなのだろう。小町は四季映姫に無表情でいることを促し、それを分かっていながら、こういう偽装写真を流して、四季映姫の行動を二極化しているのだ。怒れば観客が喜び、黙れば、事実上黙認となる。
四季映姫は黙ることを選んだ。どんな写真が来てもポーカーフェイスを貫くことを決めていたし、下手に怒っても、こちらには何のメリットがないからだ。
四季映姫はグッと唇を噛み締めて、耐える。次に幽々子のターンが回る。
「それじゃ、私はこれ」
ぺちっ、と幽々子が写真をプロジェクターに置く。写真が幕に投影された。
「へ?」
妖夢は思わずみょんな声を上げてしまい、慌てて妖夢は両手で口を塞ぐ。
「へぇ、攻めるねぇ~」
小町はヒュウッ、と口笛を鳴らし、観客達はおぉ~、と唸っていた。
『おぉ、これは妖夢選手の寝巻き姿ですねぇ。萌えます』
妖夢の顔が真っ赤になる。妖夢は慌てて、ポーカーフェイスを維持しようと努めるが、やはり頬は紅潮したままだった。
その写真はまだ妖夢が幼いころに撮ったものであろう。それが判断出来るのは寝惚けた妖夢がくまのぬいぐるみを抱えていたからである。写真の妖夢は寝惚け眼で目を擦り、髪も結構ボサボサしている。その寝巻きはまた可愛らしくピンクが基調で、青い水玉の模様が満遍なく散りばめられて、その丈は妖夢の指の第一関節を隠すほど長い。足もダボダボで、歩いたらずるずると裾を引きずるのは容易に想像出来る。ついでに、第一ボタン、第二ボタンが外れていて、妖夢の肌理の細かい肌が露出している。
どうやら、妖夢の反応を見る限り、写真を偽装しているわけではないようだ。ただ、四季映姫はそこを心配しているわけではない。
(まずい……妖夢さんが反応してしまっている)
観客の表情を見れば明らかだ。誰も彼も顔がにやけていて、明らかにポイントにしている。妖夢は相変わらず頬が紅潮しており、もじもじと気まずそうにしている。一生懸命に自分を抑えようとしている努力は感じられるのだが、それがまた『恥ずかしさを一生懸命に堪える姿』としか認識出来ず、一層、四季映姫にとって悪い意味、観客にとっては良い意味で妖夢の魅力を引き出していた。
(まずいまずいまずい。これでは、競技を妨げるどころか、無表情でいようとしていること自体、競技の進行を手助けしている! まさか、これも計算に入れて!?)
そのまさかであるのは、小町と幽々子のにやけた表情を見てすぐに分かった。
しかし、ここでさらなる問題があることに四季映姫は気付く。
(しまった! このままでは、妖夢さんが決勝に進出してしまう!)
四季映姫は戦慄する。
決勝に進出することとはどういうことか。それは、もう一回、同じような苦痛を味わうということだ。ただでさえ、一回戦でこれだ。もう一回戦をするということは、地獄巡りをもう一度巡り直すようなものである。それだけは、妖夢にやらせるわけにはいかないと、四季映姫は強く思った。そこで彼女はある行動を取る。
「さて、あたしも攻めるとするかねっと」
小町が一枚取り出し、幕に映し出す。それは、四季映姫のビキニ写真だ。もちろん合成である。その平べったい胴体に、面積の小さい水色の布地が申し訳なさげに付いている、かなり際どい写真だ。逆に言えば、その肢体が存分に露出している写真である。小町は四季映姫がまた黙り込むと思っていたのだが――
「きゃ~~~~~~!」
……一瞬誰がその女の子らしい可愛い声で悲鳴を上げたか、分からなかった。しかし、シチュエーション、そして、悲鳴がした方向から誰が上げたかは一目瞭然だった。
「恥ずかしいです~。そんな、そんな写真を張り出しちゃうなんて……!」
四季映姫が顔を両手で覆いながら、そんなことを言う。
小町は自分が今何を見ているのか、再度分からなくなった。なんせあの四季映姫なのだ。真面目さと、頭の固さでは幻想郷で群を抜いている。その四季映姫が、あんなに声の調子を高くして、恥ずかしそうに顔を赤らめながら、「恥ずかしいです~」とか言うのだ。
小町はポカンとしていたが、すぐに獰猛な笑顔に戻る。今、小町の心の声が聞けるならば、『面白いことになってきた!』である。
一方、妖夢は一瞬訳が分からなかったが、すぐにその意図に気付く。
すなわち、自分のために自らポイントを集めようとしているのだと。
妖夢は焦った。
(止めて下さい! 元はと言えば、私が自分の感情を隠せなかったのが原因なのです! 私の修行不足のせいなのです! それなのに……閻魔様は、そんな私を庇おうとしているのですか!? いけません! そんなことは許されないことです!)
妖夢は目にそうメッセージを込めるが、四季映姫は全然気付かない。口で話そうとしても、「きっとあの閻魔様のことだ。私の話を聞かないだろう」、と推測する。なので、彼女はある行動を取る。
「それじゃあ、私もこれ!」
幽々子が置いて、プロジェクターがそれを映す。
その写真は、先程同じ、ビキニであった。ただ、バックは白玉楼で、妖夢はかなり赤らんだ顔で、俯いているところから見ると、どうやらこの写真も本物のようだ。そう。幽々子はこういう写真を幾つも持っている。大抵はパワハラによる無理な命令なのだが、しかし、事実としてこういう写真を持っているのだ。
幽々子は妖夢も性格から、次に妖夢が取る行動を予測していた。
「幽々子様」
「なぁに? 妖夢」
「あの……そ、そんな写真を出すなんて、恥ずかしいですよぅ」
妖夢は幽々子の予想通り、写真と同じように顔を赤らめて、顔を俯かせた。予想通りの反応に、幽々子は口元を押さえて微笑する。
一方、観客の方は大喜びである。なんせ、写真ではない、生の表情が見られるのだ。ついでに、四季映姫とはまた違った興奮を覚えている。四季映姫が自ら積極的にアピールするのが『動』なら、妖夢のはただ自然に顔を赤らめるだけの『静』である。
観客側から見れば、どれも捨てがたいものであり、思った以上に接戦になる予感が辺りに漂っていた。
妖夢と四季映姫もその空気を察知していて、お互いにお互いのためを思って、必死に過剰反応をする。
「次は四季様のメイド」
「せ、精一杯ご奉仕します!」
「妖夢のブルマ」
「……(顔が赤くなる)」
「四季様のナース」
「い、痛いところはございませんか?」
「妖夢の入浴」
「あ、あんまり見ないで下さい……」
「四季様のウエディングドレス」
「お、お嫁にして下さい!」
「妖夢の濡れた姿」
「ひゃうっ!? そ、そんなのえっちぃですよぅ……」
「四季様の……」
「……!」
「妖夢の……」
「……!?」
~一時間後~
「いやー、もう写真がなくなっちゃいましたよー」
「秘蔵の写真も出したんだけど、決着はなかなか着かないねー」
観客もあちらこちらで熱く議論を交し合っている。『動』の四季映姫か『静』の妖夢か。議論が終着する様子は到底ない。それほど、二人の魅力が出ていたのだろう。
「どうします?」
「とりあえず、他の審査員の人にも話しを聞かないと」
「そうっすね。それじゃあ、責任者~」
小町は神奈子を呼び、判断を仰ぐように話す。
「そうだねぇ……さすがにこのまま終わらせるわけにはいかないし……」
神奈子が腕を組んでジッと考え込む。しばらくそうしていると、神奈子に声が掛かった。それはここの設営、準備等で活躍した河童である。
「神奈子様~。前の競技の備品は片付けてしまっていいですか~?」
「あぁ……もう必要な――いや、ちょっと待て」
「はい?」
神奈子はにやりと口の端を吊り上げ、クックックと忍び笑いを漏らした。
一方、舞台の袖で妖夢は四季映姫の胸の中に泣いていた。
「四季映姫様……ご、ごめんなさい……私……」
「いいえ、何も言わなくていいのです。あなたの気持ちは十分にありがたいと思ってますから」
「いえ……でも……!」
「いいのです。もう覚悟を決めましょう。どちらが決勝に上がってもいいように」
「四季映姫様……」
『えー、四季映姫選手、妖夢選手。神奈子審査員長が呼んでいます。至急舞台に上がってください』
「? 何でしょうか……」
四季映姫が怪しむが、ここで怪しんでも仕方ないので、泣きはらした妖夢を連れて舞台の上へと上がって行った。
「えー、今回の競技は中々苛烈で、白黒付きにくい勝負であった。それだけ、選手が全力を尽くし、存分に戦ったということだな。これは非常に喜ばしいことだ」
四季映姫と妖夢は思いっきり苦い顔をした。だが、神奈子はそれを無視しながら、話を進める。
「しかし、いくら健闘したとは言え、勝負がつかなければ意味が無い。そこで、サドンデスを行う!」
「さ、サドンデス?」
「一体……何をするのですか?」
妖夢が恐る恐る尋ねる。すると、待ってましたと言わんばかりに神奈子が高らかに宣言した。
「これだ!」
と、神奈子は前回の競技で使われた、衣装――コスプレを取り出した。
「まさか……!」
「そう、『再びロリっ娘サドンデスコスプレ対決』だ!」
四季映姫と妖夢は床が崩れ落ちる錯覚を起こした。絶望という奈落に、そのまま落ちていくような心地である。
ルールは前回と同じ、審査員がコスプレを選び、選手がそれを着る。より萌えた方にポイントが入り、そのポイントが高かったほうが勝ち、というルールだ。もちろん、着替えは舞台上である。
四季映姫と妖夢は前回の競技者――萃香と諏訪子の気持ちが痛い程よく分かった。実際にライトアップされた場所で着替えながら、深く深くその気持ちを刻むのだった。
競技が開始される。
四季映姫は、写真の中にあったウエディングドレスを着ていた。
レースがふんだんに使われた、純白で丈の長いドレス。頭のヘッドドレスには色取り取りの花が散りばめられ、手にも純白の花束を持っている。首にはダイヤが贅沢に埋め込まれた煌びやかなネックレス。口紅で赤く塗られた唇はグラスでキラキラ光に反射し、顔にも化粧が施され、ただでさえ白い肌がより白くなっている。もちろん背が低いのでロリも際立ち、大人らしい女性というよりは、着ることによって少し背伸びした少女という印象が強い。もし一言言うとしたら誰もが「俺の嫁になれ!」と口を揃えて言うだろう。それだけ、少女らしい可憐さと艶かしさが溢れているのだ。
一方、妖夢も写真の中にあった、入浴時の姿が再現されている。
とは言っても、もちろんどこぞの天狐みたいに素っ裸ではない。ちゃんと体を覆い隠すものはある。ただ、バスタオル一枚だけだ。バスタオル一枚という薄着な分、体のラインは強調され、妖夢のその華奢なくびれや胸の薄さが一目で分かるようになっている。しかも、今回はお湯をあらかじめ被っているようで、髪の毛や体が濡れて、瑞々しさもアピールされている。妖夢の白い肌。バスタオルを抑える妖夢の赤らんだ顔。ナチュラルな紅白が今ここに現存している。
『二人ともブラボーでグレイトな服装ですねー。妖夢選手なんて最早服ですらないようですが、これはこれでグッドなので、司会者権限で許します。それでは、それぞれ投票を行ってください』
許すな! と本来ならツッコムところだが、もうその元気すら無くなっているようだ。特に妖夢なんて、主人の命令とはいえ、あまりにも酷い格好をさせられているものだから、ぐったりと四季映姫の腕に抱かれていても無理は無かった。
観客が次々とポイント――つまり金を賽銭箱に入れている間、四季映姫は妖夢に話しかけた。
「妖夢さん。大丈夫ですか?」
「……四季映姫様。私はもう、ダメかも知れません」
まるで、今際の言葉を残すかのように、妖夢は弱々しく答えた。
「気をしっかり持って下さい! あなたにはまだ主人を守り抜く使命があるでしょう!」
「主人……そう言えば、幽々子様がこれを着るのを命令なさったのでしたっけ……」
「うっ」
最早救いようが無かった。
「が、頑張って下さい! 残酷な言葉ですけど、今の私にはそれしか言えません……」
「ははは……もう、いいですよ。どうやら、ここでリタイアのようです……。四季映姫様……申し訳、ございません」
「いいんですよ、妖夢さん。後は、私に任せて下さい」
ただ……あぁ、観客のみなさん。どうか、どうか妖夢さんに票入れさせないで下さい。私がいくらでも体を張って、決勝戦に出ますから。どうか、どうか……!
『さて、投票が終了したようです。霊夢さんは相変わらず計算が速いですねー。では早速結果を発表します』
お願い! どうか!
『四季映姫選手、千七百十五ポイント。妖夢選手、二千百二十三ポイント。決勝進出は妖夢選手です!』
ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
「あぁ……」
四季映姫は床に手を付き、頭を下げた。床には、ポツっ、ポツっ、と丸い染みが断続的に出来ていき、四季映姫はそのまま蹲った。妖夢も力無くうなだれ、そのまま瞼を閉じる。そこに響くは追い討ちの声。
『それでは、もうすぐ日が明けてしまうので、すぐに決勝戦を始めたいと思います。萃香選手、妖夢選手、準備をして下さい』
あぁ、この男は知っているのだろうか。萃香と諏訪子は未だ夢の中で、妖夢だって精神的にもう限界なのだ。なのに、それでも今決勝をやろうと言うのか。時間が無い
四季映姫は自分の拳を強く強く握り締め、ある覚悟を決めた。
(やはり……この大会を潰します!)
ゆらりと四季映姫が立ち上がる。その手には魔力を込め、どんどん、どんどん溜まっていく。霊夢が察知するが、最早関係が無かった。後はこの弾を、憎き観客達に投げつければ!
四季映姫がオーバースローでその弾を投げつける瞬間、手が何かに引き止められた。弾は、魔力が空気中に拡散して、霧散していく。四季映姫が後ろに振り返ると、そこには、『紅き悪魔』であるレミリアが手を掴んでいた。
「何をするのですか! あなたはこの大会を続けさせたいのですか!?」
四季映姫が目に涙を溜め込み、顔を赤くしてレミリアに訴えた。
対してレミリアは、目を細めて悠然と四季映姫に呟く。
「だからって、閻魔が観客を殺そうとしてどうすんのよ。この馬鹿」
四季映姫はハッとした。そして、そのまま膝から崩れ落ちるようにして、へたり込む。
そうだ。自分は一体何をやろうとしてたのだろう。妖夢さん達をここまで追い込んだとはいえ、彼らはただ“見ている”だけの観客なのだ。罪は無い。それなのに、私は……。
四季映姫はとうとう我慢できなくなって、体を抱いて泣き始めてしまった。嗚咽声を漏らし、涙が床に染みを作る。
レミリアはそれを見て、嘆息した。
そして、司会者に向き合う。
「そこの腐れ司会者!」
『腐れ!?』
「そうよ、芯からねっとり腐ってんじゃないの。まぁ、それはどうでもいいわ。もうすぐ日が明けるってあなた言ったわよね?」
『え、えぇ。そうですね。だから、こうしてすぐに決勝戦を――』
「何言ってるのよ? 今決勝戦を行っても、どうせ時間は無くなるわ」
『え? そ、そうなんですか?』
霖之助は神奈子に向けて尋ねる。
「うーん……そうだねぇ、今三人で決勝をやったとしても、途中で日が昇ってアウトね。時間切れで退散。巫女との契約だし、逆らえない。それに、そこの吸血鬼も困るだろう?」
「えぇ、そうね」
レミリアは微笑を浮かべて、悠々と舞台の上で腕を組む。咲夜がじゃあ、と口を開いた。
「このまま、決勝戦は行わないのですか? 私、お嬢様の競技を記録に収めるために、天狗に頭を下げてカメラを借りたんですけど」
「咲夜。とりあえず、あなたは後で締めるわ。まぁ、何も決勝戦をやらないってわけじゃないのよ」
レミリアの言葉に観客がざわめく。決勝をやる時間がないのに、決勝をやるとはどういうことなのだろうか? と。
レミリアは口の端を吊り上げて、ゆったりとした口調で提案する。
「簡単よ。決勝進出者のポイントはすでに出ているのだから、後はポイントが出ていない私が競技を行って、ポイントを出して、比べて、勝者を決めればいいのよ」
レミリアの提案に四季映姫は真っ赤に泣きはらした顔で――しかし目は驚きで丸くして――レミリアを見た。
レミリアの提案は確かに今の問題を全て解決できるものだった。
競技時間はレミリア一人分で済むし、これ以上競技をやる必要がないのだから、決勝者である萃香と妖夢はこれ以上に追い込まれることはない。
ただ……そうすると、当然のことだが、競技はレミリア一人だけで行うことになる。
味方が誰一人いない状況で、好奇の目に晒されながら競技と称する、精神的に苦痛なことをやらされるのだ。どれだけの苦しいことが待っているのか、四季映姫は妖夢と共に競技に出て、容易に想像することが出来た。
二人で出てこれだけ苦しいのに、レミリアは一人で出ようと言うのだ。
「レミリアさん……」
四季映姫がそう名前を呟くと、レミリアは四季映姫の考えていることが分かったのか、頬を紅潮させ、目線を逸らしながら、こう言った。
「べ、別にあんた達のためではないからねっ。ただ、時間がないからこう提案しただけだから。か、勘違いしないでよっ!」
四季映姫はポカンとした。ツンデレである。外の世界で流行っているというツンデレである。四季映姫はあまりのおかしさに笑ってお腹を抱えて笑ってしまった。
「な、何よっ!」
レミリアが紅潮させた頬を膨らまして文句を言う。それもまた、まるで子どものようで、可愛らしいものだった。
「い、いや……ごめんなさい。あまりにあなたに似合っているものでつい笑って……」
「似合っているとか余計なお世話よ! ふんっ、泣くのは止まったみたいね」
四季映姫はハッとした。そう言えば、何時の間にか笑っている。再び、四季映姫はレミリアの顔を見る。
「今度は何よ?」
「レミリアさん。ありがとうございます」
と言って、四季映姫はそっと、レミリアを抱きしめる。
「な、ちょっ!?」
レミリアはジタバタとしばらく四季映姫の腕の中で暴れるが、やがて諦めがついたのか、不機嫌な顔のまま、なすがままになっていた。
四季映姫は腕の中で小さな炎を感じていた。腕の中は熱くて、火傷しそうだったけど、どこか気持ちが良くて、そのまま抱きしめてしまう。
あぁ、なんてこの娘は優しい子なのだろう。そんなことを思いながら、四季映姫はレミリアの頭を撫でて――
『あのー、お楽しみのところ悪いのですが、もうそろそろ進行していいですかー?』
声を聞いた瞬間、互いにバッと離れた。
忘れてた! 舞台上であることを失念していた!
見れば、レミリアも顔が真っ赤で、悪態を吐いていた。けれど、どこかレミリアは四季映姫の懐を名残惜しそうにしている感じがあった。四季映姫は敢えてそこは聞かないことにした。
そうしている内に、霖之助が司会の勤めを果たしていく。
『さて、中々にやける光景も堪能したところで、早速、最後の競技に入りたいと思います。レミリアさん、準備はよろしいですか?』
「ふんっ、準備なんて何をするのよ。心のほうはとぉっくにOKよ」
『そうですか。それでは最後の競技発表を咲夜さん、お願いします』
「はい。最後の競技――それは、これです!」
オンバシラが垂直に落ちて、幕がピンっと張った。
「『ロリっ娘アクティブ対決』ーー!」
うぉおおお! とお約束の歓声が入る。
「はい、最後の競技説明をします。これは選手が何かしらのアクションを起こし、オーディエンスがその行動が萌えた分だけポイント化するという競技です。小道具を使ってもOK。要するに萌えさせたもの勝ちの競技です!」
『はい、競技の概要は分かりましたね。それではレミリア選手、何か一言はありますか?』
レミリアはしばらく目を瞑って、思案に耽る。時間で言えば、たいして掛かってはないのだが、レミリアはこれまでのあらすじじや、選手の競技、その思い等を思い返す。
咲夜の陰謀。大会宣言。霊夢の迎撃。諏訪子と萃香のコスプレ。その後の二人。四季映姫と妖夢の抵抗。小町と幽々子の策略。妖夢の限界。四季映姫の思い。四季映姫の暴走。四季映姫の抱擁。そして、今。
レミリアは目を徐々に開いていき、最後の覚悟を決めた。
「咲夜」
「はい、お嬢様」
「私は、どんな勝負でも負けるのは嫌なの」
「はい、お嬢様」
「だから、絶対に勝てる行動を言いなさい。命令よ」
「はい、お嬢様」
咲夜はにっこりと笑い、レミリアもフッ……と微笑する。十六夜 咲夜は、従者として、主の望みを叶える言葉を言った。
「スカートをまくって、下着をフルオープンして下さい!」
「出来るかぁあああああああああああああああああああ!」
続く
咲夜さん瀟洒過ぎだろjk
ドロワがいいでs(不夜城レッド
欲望に忠実すぎる悪魔の狗に百点を。
でわ、私も欲望に忠実に逝くとしましょうか。
ぱんてぃで!!!!
黒のガーターとレースのショーツで
…ショーツを希望しますですよ。
1様。最高の褒め言葉です。ありがとうございます。
4様。まぁ、咲夜さんですから。不夜城レッドから生き残ってください。
13様。あなたの意思は受け取りました。
14様。ありがとうございます。咲夜さんは喜んで、れみりゃは激怒するでしょうがねぇ。
16様。その発想は無かったです。
19様。まぁ、巨乳5ですし(何の関係が)
22様。強き主張をありがとうございます。
もちろんドロワで・・・
いや・・・実ははいて無いというのもすてがたい・・・