霊夢は目覚めた。
そりゃいろいろな面で目覚めた。
賽銭箱は相変わらず空っぽだが、ともかく目覚めたのだ。
何の話か?
幻想郷はある時とんでもないものを呼び込んでしまったのだ。そして、どんどん全てはそれに侵食されていく。
幻想郷は全てを受け入れるとはよく言ったもので、どんどんどんどん広がっていく。
例えば、幻想郷の管理人、八雲紫までそれにやられてしまって、
「幻想郷に海を幻想入りさせて海の家を開く」とか言ってるらしいが、真偽の程はわからない。
狂気という、あまりにもどうしようもない病気。それが、幻想郷にやってきたのだった。
なんという。
なんという意味不明さ。
管理者が余りにも頼りないので、永琳は自分が頑張らねばいけないと思ったのだろう。
どうすればこの病気を解決できるのか? それはやはり医者という専門家が出てくるしかない
やるべきことは、あまりにもハードルが高い。
「と言うわけで八雲紫。私は貴方の病気を治すために来たのよ」
「ほう、どうやら貴様にも少しは見所があるようだな」
紫の人を食ったような、まあそんな態度はいつものことだがいつもにもまして煩わしいその態度に、
永琳はにっこりと殺意全開で問診を続けるのであった。
「あのね、そういう態度を取って良いのかしらね? 流石に患者が相手とはいえこの場で締め上げてもよろしくてよ?」
「ストップ、流石にそこまでされたらこの私も力を抑えられるかわからない」
「勝手にほざいてろデウス・エクス・マキナさん」
「人を勝手に機械仕掛けのオレンジ扱いしないで頂戴」
「『境界をいじって解決しました』(笑)」
「現実は往々にしてそういう物よ。外の世界のTVでは特に」
「ちょっと待って!? あんた幻想郷の管理をTVの編集みたいに考えてるわけ?」
「まあ、そういうものじゃないかしら。所詮このセカイは作り物のセカイ……」
「一瞬まともなことを言ったかと思ったらここに戻ってくるわけね」
「無限ループって怖くない? 何度も同じことを繰り返すのよ?」
「はいはい表は蕎麦屋。さしずめ裏はうどん屋ってとこね。鉛筆で線を引き続けると繋がる世界」
「ちょっと待ちなさい、うどんとそばを一緒にするなんてこのゆかりたんが絶対に許さないわよ」
「ていうか、なんでこんな病気が外からやってきたのよ……」
「人が狂気を望まなくなったからじゃないかしらね。多分、外の世界は全ての人間が管理されてるわ」
「人間が管理されてる?」
「その通り、思考や心理まで全部完璧に支配されてる。見事な統一された世界ねー」
「そんな滅茶苦茶なことがある筈が」
「滅茶苦茶? 素敵な楽園じゃない。争うことも、奪い合うこともない見事な楽園、って奴」
何でもないことのように言う紫。
永琳は狼狽した。
「あのね。そんな理想論みたいなことはどうでも良いのよ。私はこの病気を治したいだけ」
「どうしようもないわ。狂気なんてどうしようもない」
「あんたが境界をいじってどうにかしなさいよ」
「そんな人を便利屋みたいに言わないでよ。私にだってやりたくないこともある」
「なんで狂気を取り除くのがやりたくないことなのよ」
「私が狂気に犯されてるからに決まってるじゃない」
「全く。確かにそりゃ狂気の沙汰ね」
永琳はなんとなく負けたような、放り出されたような気分になった。
これ以上紫と話しててもどうしようもなさそうなので、発生源と思われる霊夢のところへと向かった。
「霊夢。この病気について知ってることを教えて頂戴」
「どうしようもないわね。正直、私が正常な思考をしていられる時間もどんどん短くなってる」
「それで、解決法はともかくせめて原因だけでもわからないかしら」
「そうね、いつも通り寝てたら発祥したとしか言いようがないびろーん」
「そんないきなり腋を見せびらかさないで頂戴」
「狂気がやったことです。私は記憶にございません」
「今目の前で起きたこと記憶にございませんとは、よっぽどいい記憶力をお持ちで」
「都合の悪いことは覚えない主義なの」
「いいから早くその腋をしまいなさい……まさか!!!」
突然永琳の脳に、一筋の閃きが起こった。
この病気の打開策を練り上げるための、一筋の光。
「霊夢、今すぐに長袖のセーターを着るのよ!」
「な、なんでよ!?」
「何故って、昔からよく言うじゃない。
やまい」
「『病腋からって?』もしかしてこの幻想郷全部を覆いつくす病気を駄洒落で済ますつもり?」
「うぐぅ……」
「嗚呼、もうこの幻想郷は終りね。この幻想郷唯一の薬が作れそうなお医者さんも、狂気に犯されてしまった」
「終わり、なのかしらね。それならば、終わるまで精一杯楽しみましょう」
「この狂気の沙汰を」
所変わってここは地霊殿。地下にあるここも、例外なく狂気に犯されていた。
もはや、正気を100%保っているのは古明地こいしだけであった。
いや、むしろ彼女の場合は狂気が正気だったから無事だったのかもしれない。
ともかくこいしは、目の前で壊れていく地霊殿を直視できなかった。だから、自分なりにけじめをつけようと思った。
彼女は、さとりと燐や空などのペット達を地霊殿のリビングへと集めた。そして、彼女の精一杯の力をこめて彼女の能力を起動した。
こいしがやったこと、それは地霊殿の全員を無意識の中。つまり、夢の中へと呼び込んだのである。
彼女は、ここで地霊殿の皆と共に眠り続けて朽ち果てることを選んだのだった。
無意識の中で彼女が見せる夢、それは何処か遠くの異国の地の夢であった。
「ここはどこなの?」
さとりが、こいしに問いかけた。
こいしは、優しく笑って答えた。
「百科事典の写真で見ただけで詳しくは知らないけど、多分タイっていう国よ」
「あらま、なんでまたそんな所に」
「これが私の最後の夢だったんだよ、お姉ちゃん……
そう、これこそがタイ時の夢、ってね」
そりゃいろいろな面で目覚めた。
賽銭箱は相変わらず空っぽだが、ともかく目覚めたのだ。
何の話か?
幻想郷はある時とんでもないものを呼び込んでしまったのだ。そして、どんどん全てはそれに侵食されていく。
幻想郷は全てを受け入れるとはよく言ったもので、どんどんどんどん広がっていく。
例えば、幻想郷の管理人、八雲紫までそれにやられてしまって、
「幻想郷に海を幻想入りさせて海の家を開く」とか言ってるらしいが、真偽の程はわからない。
狂気という、あまりにもどうしようもない病気。それが、幻想郷にやってきたのだった。
なんという。
なんという意味不明さ。
管理者が余りにも頼りないので、永琳は自分が頑張らねばいけないと思ったのだろう。
どうすればこの病気を解決できるのか? それはやはり医者という専門家が出てくるしかない
やるべきことは、あまりにもハードルが高い。
「と言うわけで八雲紫。私は貴方の病気を治すために来たのよ」
「ほう、どうやら貴様にも少しは見所があるようだな」
紫の人を食ったような、まあそんな態度はいつものことだがいつもにもまして煩わしいその態度に、
永琳はにっこりと殺意全開で問診を続けるのであった。
「あのね、そういう態度を取って良いのかしらね? 流石に患者が相手とはいえこの場で締め上げてもよろしくてよ?」
「ストップ、流石にそこまでされたらこの私も力を抑えられるかわからない」
「勝手にほざいてろデウス・エクス・マキナさん」
「人を勝手に機械仕掛けのオレンジ扱いしないで頂戴」
「『境界をいじって解決しました』(笑)」
「現実は往々にしてそういう物よ。外の世界のTVでは特に」
「ちょっと待って!? あんた幻想郷の管理をTVの編集みたいに考えてるわけ?」
「まあ、そういうものじゃないかしら。所詮このセカイは作り物のセカイ……」
「一瞬まともなことを言ったかと思ったらここに戻ってくるわけね」
「無限ループって怖くない? 何度も同じことを繰り返すのよ?」
「はいはい表は蕎麦屋。さしずめ裏はうどん屋ってとこね。鉛筆で線を引き続けると繋がる世界」
「ちょっと待ちなさい、うどんとそばを一緒にするなんてこのゆかりたんが絶対に許さないわよ」
「ていうか、なんでこんな病気が外からやってきたのよ……」
「人が狂気を望まなくなったからじゃないかしらね。多分、外の世界は全ての人間が管理されてるわ」
「人間が管理されてる?」
「その通り、思考や心理まで全部完璧に支配されてる。見事な統一された世界ねー」
「そんな滅茶苦茶なことがある筈が」
「滅茶苦茶? 素敵な楽園じゃない。争うことも、奪い合うこともない見事な楽園、って奴」
何でもないことのように言う紫。
永琳は狼狽した。
「あのね。そんな理想論みたいなことはどうでも良いのよ。私はこの病気を治したいだけ」
「どうしようもないわ。狂気なんてどうしようもない」
「あんたが境界をいじってどうにかしなさいよ」
「そんな人を便利屋みたいに言わないでよ。私にだってやりたくないこともある」
「なんで狂気を取り除くのがやりたくないことなのよ」
「私が狂気に犯されてるからに決まってるじゃない」
「全く。確かにそりゃ狂気の沙汰ね」
永琳はなんとなく負けたような、放り出されたような気分になった。
これ以上紫と話しててもどうしようもなさそうなので、発生源と思われる霊夢のところへと向かった。
「霊夢。この病気について知ってることを教えて頂戴」
「どうしようもないわね。正直、私が正常な思考をしていられる時間もどんどん短くなってる」
「それで、解決法はともかくせめて原因だけでもわからないかしら」
「そうね、いつも通り寝てたら発祥したとしか言いようがないびろーん」
「そんないきなり腋を見せびらかさないで頂戴」
「狂気がやったことです。私は記憶にございません」
「今目の前で起きたこと記憶にございませんとは、よっぽどいい記憶力をお持ちで」
「都合の悪いことは覚えない主義なの」
「いいから早くその腋をしまいなさい……まさか!!!」
突然永琳の脳に、一筋の閃きが起こった。
この病気の打開策を練り上げるための、一筋の光。
「霊夢、今すぐに長袖のセーターを着るのよ!」
「な、なんでよ!?」
「何故って、昔からよく言うじゃない。
やまい」
「『病腋からって?』もしかしてこの幻想郷全部を覆いつくす病気を駄洒落で済ますつもり?」
「うぐぅ……」
「嗚呼、もうこの幻想郷は終りね。この幻想郷唯一の薬が作れそうなお医者さんも、狂気に犯されてしまった」
「終わり、なのかしらね。それならば、終わるまで精一杯楽しみましょう」
「この狂気の沙汰を」
所変わってここは地霊殿。地下にあるここも、例外なく狂気に犯されていた。
もはや、正気を100%保っているのは古明地こいしだけであった。
いや、むしろ彼女の場合は狂気が正気だったから無事だったのかもしれない。
ともかくこいしは、目の前で壊れていく地霊殿を直視できなかった。だから、自分なりにけじめをつけようと思った。
彼女は、さとりと燐や空などのペット達を地霊殿のリビングへと集めた。そして、彼女の精一杯の力をこめて彼女の能力を起動した。
こいしがやったこと、それは地霊殿の全員を無意識の中。つまり、夢の中へと呼び込んだのである。
彼女は、ここで地霊殿の皆と共に眠り続けて朽ち果てることを選んだのだった。
無意識の中で彼女が見せる夢、それは何処か遠くの異国の地の夢であった。
「ここはどこなの?」
さとりが、こいしに問いかけた。
こいしは、優しく笑って答えた。
「百科事典の写真で見ただけで詳しくは知らないけど、多分タイっていう国よ」
「あらま、なんでまたそんな所に」
「これが私の最後の夢だったんだよ、お姉ちゃん……
そう、これこそがタイ時の夢、ってね」
これは良いきちがい
次回も期待
と思うのでこの点数に。
切れ味があんまり良くなかったのでこの点で
あと、氏の作品全体に言えるのですが、長さが短すぎる気がします。
しかもそれをあの場に居た複数人が思いついてるというカオス