言葉には裏というものがある。言葉のみならず、行動や物事にも同様のことが云えるだろう。例えば世のため人のためないしは山のお上のため、社会に貢献すべく朴訥さと謙遜を称えあくせくと働き人間や上司お山の神サマサマに媚び諂う我々河童にしても、本当のところは裏の面を持っている。
まず第一に、この幻想郷において種として存在する妖怪は希有なもので、例を挙げるならば鬼、天狗、河童が代表的な種と云えよう。種である以上繁殖は不可欠であり、繁殖能力の高い生き物は総じて、弱い。そして先に挙げた三種のなかでいちばんに繁殖力の乏しい種は鬼である。理由は単純で、鬼は天狗よりも、そして河童よりも強靭であるからだ。天狗はそれなりに群れをなしているが河童ほどではない。要するに、我々河童という種族は鬼、天狗、河童の三種が形成する社会においていちばん弱く、そしていちばんに繁殖力の高いということだ。我々河童は河童という種族に生まれた以上、鬼にへつらう天狗にへつらい、ましてや人間サマにさえへつらわなくてはならない。生産力という意味においては人間と同義の河童だが、捉えようによってはピラミッドの最底辺と考えるものもいる。だから当然、河童のなかには種族コンプレックスを抱く者が多数存在する。とすれば、反乱を企てる不届き者の発生は通りだ。
かく云う私も概ね不届き者畑の河童なのだ。ここでようやく裏の面について話せることとなる。そう、私は表向きあくせくとはたらく人間助けの天才谷河童だが、実は偉大な計画のもとそういった姿を演じているだけなのだ。そんな私の偉大なる計画、裏の面についてだが、それはまあ秘匿とする。
問題なのは現在だ。その問題は私の恋人が煎れたニルギリなる温かな飲料にある。まずニルギリとはなんぞやというのが本心で、匂いや色味をみると紅茶の類にも思えるが、どうしてもニルギリという名前からは殺傷力を感じてしまう。
四本足、穏やかな色味と木目のテーブル。団欒の象徴の腰掛け。そして雛好みのおしゃれすぎないクロス。そして、その上に置かれた剣呑たるニルギリ。私は雛のどうぞにえっとを発音したまま右方を眺めつつ、河童生を文章にしたならおそらく右(いや、上だ!)のようなことを考えていた。そんな私を怪訝に思ったのか、雛は急かすように口を開いた。
「どうしたの? 疲れてるって言ってたからせっかく煎れてあげたのよ。ほら、冷めないうちにどうぞ」
言葉には裏というものがある。言葉のみならず、行動や物事にも同様のことが云えるだろう。例えば世のため人のためないしは山のお上のため、社会に貢献すべく朴訥さと謙遜を称えあくせくと働き人間や上司お山の神サマサマに媚び諂う我々河童にしても、本当のところは裏の面を持っている。
例えばの話。
私のだいすきなやさしくてかわいくていじましい恋人にもそんな裏の面があったとしたら……。
幻想郷内すべての紙幣でのキャンプファイアを目論むあまり機械いじりに没頭し、だいすきな恋びとをないがしろにする普段の私……。
そんな私にニルギリなる飲料を飲ませようと急かすこいびと……。
〝冷めないうちにどうぞ〟……?
〝冷めないうちにどうぞ〟……。
ああ。
これはきっと、杯中の蛇影では済まないはずだ。
「ひ、ひな。わたしに毒なんて飲ませて、ど、どうするつもりだ。いくらなんでも、殺しまですること、な、ないじゃないかよう!」
その後しばらく終わった。
まず第一に、この幻想郷において種として存在する妖怪は希有なもので、例を挙げるならば鬼、天狗、河童が代表的な種と云えよう。種である以上繁殖は不可欠であり、繁殖能力の高い生き物は総じて、弱い。そして先に挙げた三種のなかでいちばんに繁殖力の乏しい種は鬼である。理由は単純で、鬼は天狗よりも、そして河童よりも強靭であるからだ。天狗はそれなりに群れをなしているが河童ほどではない。要するに、我々河童という種族は鬼、天狗、河童の三種が形成する社会においていちばん弱く、そしていちばんに繁殖力の高いということだ。我々河童は河童という種族に生まれた以上、鬼にへつらう天狗にへつらい、ましてや人間サマにさえへつらわなくてはならない。生産力という意味においては人間と同義の河童だが、捉えようによってはピラミッドの最底辺と考えるものもいる。だから当然、河童のなかには種族コンプレックスを抱く者が多数存在する。とすれば、反乱を企てる不届き者の発生は通りだ。
かく云う私も概ね不届き者畑の河童なのだ。ここでようやく裏の面について話せることとなる。そう、私は表向きあくせくとはたらく人間助けの天才谷河童だが、実は偉大な計画のもとそういった姿を演じているだけなのだ。そんな私の偉大なる計画、裏の面についてだが、それはまあ秘匿とする。
問題なのは現在だ。その問題は私の恋人が煎れたニルギリなる温かな飲料にある。まずニルギリとはなんぞやというのが本心で、匂いや色味をみると紅茶の類にも思えるが、どうしてもニルギリという名前からは殺傷力を感じてしまう。
四本足、穏やかな色味と木目のテーブル。団欒の象徴の腰掛け。そして雛好みのおしゃれすぎないクロス。そして、その上に置かれた剣呑たるニルギリ。私は雛のどうぞにえっとを発音したまま右方を眺めつつ、河童生を文章にしたならおそらく右(いや、上だ!)のようなことを考えていた。そんな私を怪訝に思ったのか、雛は急かすように口を開いた。
「どうしたの? 疲れてるって言ってたからせっかく煎れてあげたのよ。ほら、冷めないうちにどうぞ」
言葉には裏というものがある。言葉のみならず、行動や物事にも同様のことが云えるだろう。例えば世のため人のためないしは山のお上のため、社会に貢献すべく朴訥さと謙遜を称えあくせくと働き人間や上司お山の神サマサマに媚び諂う我々河童にしても、本当のところは裏の面を持っている。
例えばの話。
私のだいすきなやさしくてかわいくていじましい恋人にもそんな裏の面があったとしたら……。
幻想郷内すべての紙幣でのキャンプファイアを目論むあまり機械いじりに没頭し、だいすきな恋びとをないがしろにする普段の私……。
そんな私にニルギリなる飲料を飲ませようと急かすこいびと……。
〝冷めないうちにどうぞ〟……?
〝冷めないうちにどうぞ〟……。
ああ。
これはきっと、杯中の蛇影では済まないはずだ。
「ひ、ひな。わたしに毒なんて飲ませて、ど、どうするつもりだ。いくらなんでも、殺しまですること、な、ないじゃないかよう!」
その後しばらく終わった。
ニトリはどうしちまったんだ
面白かったです。
突飛な発想に爆笑した
メンタル揺さぶられすぎて秘匿にしているはずの大計画後の方でサラッと漏れてない…?一番最後に大オチみたいに置いてあったその後しばらく終わったがパワーワードすぎて頭から離れない