『ねえ✕✕✕。今日はどうする?』
『さあ、✕✕✕。行きましょうか』
いつも隣で聞こえたその声は、今はもう、聞こえない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ざぁざぁざぁ、カンカンカン……
雨の降る踏切の前、傘も差さず、雨に濡れて私はそこにいる。
手には一輪の花。目の前の踏切には小さな碑が置かれている。
「どうして……」
この問いに答えるものはいない。
かつてここで、列車の脱線事故が起きた。
一つ前の踏切を通過する列車に、無人の暴走自動車が突っ込んだ。
その影響で列車は脱線。先にある踏切や、電柱等を薙ぎ払いながら、しばらく進んで止まった。
この事件では、列車にそれなりの乗客が乗っており、重傷者が出たものの、奇跡的に一人の犠牲者のみで済んだ。
犠牲者は列車に乗っておらず、事故のあった一つ先の踏切で列車の通過を待っていた少女。
目撃者によれば、踏切待ちする少女を確認し、列車が接近する音が聞こえた後、ドンッ、と列車の方から音が聞こえたのでそちらを向くと、列車が横になって滑ってきたらしい。
そして、そちらを向いた少女が何が起こったかわからずに、列車に飛ばされる瞬間をみてしまったという。
新聞やテレビでは、このことで奇跡やら、運が無かったやら騒ぐに騒いで、すぐに忘れてしまった。
もうこの事件の犠牲者を思う人など、他にはいない。私以外、誰もいない。
もしも、犠牲者が関係のない、知らない人間だったら、私はこの場所にはいない。私も忘れていただろう。
「どうして貴女は私を置いて一人で行ってしまったの?」
でも、それはできない。
この事件を忘れる事はできない。
たった一人の犠牲者は、私の何よりも大切な、秘封倶楽部のパートナーだった。
いつも二人で冒険をして、カフェでお茶を飲み、笑いあった彼女は、この場所で、いなくなってしまった。
私を置いて、とても遠い場所へ行ってしまった。
どんなに手を伸ばしても、届かない場所へ。
「ねえ……、どうして……?」
誰も答えない。雨と踏切の音だけが辺りに響く。
「私を独りにしないでよ……」
カンカンカン、ざぁざぁざぁ……
空を見上げる。灰色の雲が空を覆い、雨が降りつけてくる。
カンカンカン、ざぁざぁざぁ
「はっ、ははは……は」
これからどうしようか。そんな事を考えていたら、笑いがこみあげてきた。
そうよ、貴女のいない世界なんて、意味がない。
二人でいられない世界なんて。
「そうよ……」
だから
コンナセカイナンテ ―――
カンカンカ……、ざぁざざ……
始めに、音が消えた。
雨の音、踏切の音、列車の音……
次に、色が消えた。
踏切の赤、黄色。花の色……
さらに、感覚が消えた。
地面に足が付いているのかわからない。
雨が体に当たってるのにわからない。
そして、列車が目の前を通過した時、景色にひびが入り、全てが砕け散った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
闇に包まれてどれだけ時間が経ったかわからない。
何時からいたのか、どうしてここにいるのかわからない。
それでも私は此処にいる。
ふと、何かがあるような気がした。
歩いているのか、飛んでいるのかわからないままそちらへ向かう。
「うっ……」
そして、その先に突然光が現れた。
その光に映るのは、懐かしい姿。
「あ……」
温かい光に包まれ、そこにいるのは大切な人の姿。
彼女は頬笑み、此方を見ている。
そして、彼女はこちらに手を伸ばしている。
私は手を伸ばし、彼女の方に向かう。
これで、また一緒にいられるね。
もう、絶対に離さないから……
その手を掴むと、セカイが光に包まれ、弾けた。
少女達は消えて、こわれたセカイも消えた。
そして、そこには何も残らなかった。
====================================
『私達は、二人で一つの秘封倶楽部よ。バラバラになってしまったらいけないわ。だからずっと一緒にいましょうね✕✕✕』
『さあ、✕✕✕。行きましょうか』
いつも隣で聞こえたその声は、今はもう、聞こえない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ざぁざぁざぁ、カンカンカン……
雨の降る踏切の前、傘も差さず、雨に濡れて私はそこにいる。
手には一輪の花。目の前の踏切には小さな碑が置かれている。
「どうして……」
この問いに答えるものはいない。
かつてここで、列車の脱線事故が起きた。
一つ前の踏切を通過する列車に、無人の暴走自動車が突っ込んだ。
その影響で列車は脱線。先にある踏切や、電柱等を薙ぎ払いながら、しばらく進んで止まった。
この事件では、列車にそれなりの乗客が乗っており、重傷者が出たものの、奇跡的に一人の犠牲者のみで済んだ。
犠牲者は列車に乗っておらず、事故のあった一つ先の踏切で列車の通過を待っていた少女。
目撃者によれば、踏切待ちする少女を確認し、列車が接近する音が聞こえた後、ドンッ、と列車の方から音が聞こえたのでそちらを向くと、列車が横になって滑ってきたらしい。
そして、そちらを向いた少女が何が起こったかわからずに、列車に飛ばされる瞬間をみてしまったという。
新聞やテレビでは、このことで奇跡やら、運が無かったやら騒ぐに騒いで、すぐに忘れてしまった。
もうこの事件の犠牲者を思う人など、他にはいない。私以外、誰もいない。
もしも、犠牲者が関係のない、知らない人間だったら、私はこの場所にはいない。私も忘れていただろう。
「どうして貴女は私を置いて一人で行ってしまったの?」
でも、それはできない。
この事件を忘れる事はできない。
たった一人の犠牲者は、私の何よりも大切な、秘封倶楽部のパートナーだった。
いつも二人で冒険をして、カフェでお茶を飲み、笑いあった彼女は、この場所で、いなくなってしまった。
私を置いて、とても遠い場所へ行ってしまった。
どんなに手を伸ばしても、届かない場所へ。
「ねえ……、どうして……?」
誰も答えない。雨と踏切の音だけが辺りに響く。
「私を独りにしないでよ……」
カンカンカン、ざぁざぁざぁ……
空を見上げる。灰色の雲が空を覆い、雨が降りつけてくる。
カンカンカン、ざぁざぁざぁ
「はっ、ははは……は」
これからどうしようか。そんな事を考えていたら、笑いがこみあげてきた。
そうよ、貴女のいない世界なんて、意味がない。
二人でいられない世界なんて。
「そうよ……」
だから
コンナセカイナンテ ―――
カンカンカ……、ざぁざざ……
始めに、音が消えた。
雨の音、踏切の音、列車の音……
次に、色が消えた。
踏切の赤、黄色。花の色……
さらに、感覚が消えた。
地面に足が付いているのかわからない。
雨が体に当たってるのにわからない。
そして、列車が目の前を通過した時、景色にひびが入り、全てが砕け散った。
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闇に包まれてどれだけ時間が経ったかわからない。
何時からいたのか、どうしてここにいるのかわからない。
それでも私は此処にいる。
ふと、何かがあるような気がした。
歩いているのか、飛んでいるのかわからないままそちらへ向かう。
「うっ……」
そして、その先に突然光が現れた。
その光に映るのは、懐かしい姿。
「あ……」
温かい光に包まれ、そこにいるのは大切な人の姿。
彼女は頬笑み、此方を見ている。
そして、彼女はこちらに手を伸ばしている。
私は手を伸ばし、彼女の方に向かう。
これで、また一緒にいられるね。
もう、絶対に離さないから……
その手を掴むと、セカイが光に包まれ、弾けた。
少女達は消えて、こわれたセカイも消えた。
そして、そこには何も残らなかった。
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『私達は、二人で一つの秘封倶楽部よ。バラバラになってしまったらいけないわ。だからずっと一緒にいましょうね✕✕✕』
しかしそれ以上に感想が思い浮かばない
それほど強い絆だったのか。
でも自動車って無人で暴走するものなんでしょうか。
まぁ、嫌いじゃない