Coolier - 新生・東方創想話

霊夢さんが、みんなに、ぎゅーってしたりされたりするおはなし。

2010/07/15 07:43:45
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 魔理沙のやつは、正面から、ぎゅーってしてくる。

 魔理沙のやつは、ちっこい。

 なんだか小動物みたいだ。

 そういってみたら、うるさいって、怒るけど。

 わたしもちっこいから、二人して小動物みたいだ。

 魔理沙は、正面から、ちからいっぱい、抱き締めてくる。

 魔理沙は、あったかい。

 暑いよっていっても、ぜんぜん放そうとしない。

 そんなだから、わたしも途中で諦める。

 わたしが諦めても諦めなくても、魔理沙はずっと、ぎゅーってしてくる。

 そんなわたしたち二人を、一度に、ぎゅーってするやつがいる。

 そいつはわたしの後ろから、魔理沙ごと抱き込むように、ぎゅーってする。

 魅魔は、霊なのに、どうしてか、あんまり冷たくない。

 むしろ、魔理沙ほどじゃあないけど、あったかい。

 だからわたしはあっつくてあっつくて、ぎゃーって暴れることがあった。

 わたしが暴れると、魅魔は、けらけら笑って、簡単に手を離す。

 そうしたら、背中だけは涼しくなって、わたしは少し落ち着く。

 魔理沙は、でも、離れないまんまだ。

 だけど、こいつのことはもうしょうがないってわかってるから。

 わたしの胸の中には、湯たんぽみたいな魔理沙がいつでもいて。

 ぎゅーってされてて、ぎゅーってしたりする。

 それで、たまに少し、背中が寒いなと思ったとき、いつのまにか魅魔がいる。

 そんなんで、また、あつくなる。

 その点、アリスは、ほどよいあったかさだ。

 アリスが、ぎゅーってしてくることはない。

 私も、自分からぎゅーってすることはないから、なんとなくわかる。

 アリスは、普段は、背中合わせだ。

 背中から、少しだけ、じんわり、熱が伝わってくる。

 たまに、こつんと、背中だけじゃなくて頭の後ろを合わせてくる。

 寒いときにはちょっと心細いけど、普段はこれで十分だ。

 まったく、魔理沙は、普段からあっつすぎるのだ。

 そんなことをいうと、アリスの背中は、少し震える。

 たぶん笑ってるんだってわかって、わたしは唇をとがらせる。

 冷たいなら冷たいで文句いうのにって、アリスは笑う。

 だって、冷たいよりも、温いほうが気持ちいいじゃないか。

 私は、そう思っていた。

 そんなの人によるじゃないって、レミリアはよく食い下がったけれど。

 抱いてみたら意外と冷たいのも気持ちいいかもしれない、とか。

 咲夜は冷たいのが好きだから、霊夢だって慣れれば大丈夫だ、とか。

 言い訳しながら、ひんやりなレミリアが、腰のあたりに抱きついてくる。

 冷たい身体で、短い腕で、ぎゅーって抱きついてくる。

 そのたびそのたび、丁寧に引っぺがしてやった。

 だって、冷たいのって、それはそれで、意外と心地よかったから。

 もし慣れちゃって、中毒みたいになっちゃったら、ちょっと怖いかもって。

 冷たいのに慣れて、あったかいのが落ち着かないようになっちゃったらって。

 わたしは、咲夜とは違ったから。

 慣れちゃってて、中毒になっててもきっぱりやめられそうな咲夜。

 慣れちゃってて、中毒にもなってたけど、けっきょくきっぱりやめた咲夜。

 あいつは、わたしや魔理沙のことを、年下の女の子みたいに扱っていた。

 わたしたちより背が高いのに、わざわざ目線を合わせて、じーっと見つめて。

 あいつの目に、吸い込まれそうと思ったときには。

 そのときにはもう、胸元に抱き寄せられて、ぎゅーってされてる。

 それで、子供をあやすみたいに、頭を撫でられたりする。

 その体勢は、最初からなんとなく納得いかなかったけれど。

 レミリアにも同じことをしてるって聞くと、もっと納得いかなくなった。

 魔理沙にも同じことをしてるって聞くと、もっともっと納得いかなくなった。

 それに、そんなんで落ち着いた気持ちになるわたしがいるから。

 もっともっともっと、納得いかなくなった。

 あんまり、認めたくないことだったけど。

 わたしは誰かに、ぎゅーってされると、それで落ち着いた気持ちになっていた。

 恥ずかしくて、悔しくて、そういうことは誰にも言わなかったけれど。

 ただひとり、紫だけは、なんだか、それに気づいてるみたいだった。

 紫に、ぎゅーってされると、わたしはなんだか、小さい子供みたいになる。

 わたしが小さいのか、紫が大きいのかは、わからない。

 紫は、特に決まったやりかたはなくて。

 前からだろうと、後ろからだろうと。

 ふうわりと、包み込むみたいに、ぎゅーってする。

 わたしは、猫みたいに丸まって、紫に、ぎゅーってされる。

 紫は、あったかいのか冷たいのか、よくわからなかった。

 ただ、すごくすごく落ち着いて、しあわせな気持ちになる。

 もし紫が、ずっとわたしを、ぎゅーってしてるなら。

 ずっと、そうされてるのも、悪くないかもって少しだけ思う。

 そのくらいわたしは、紫に包まれるみたいにして、安心してしまう。

 ほんとうに。

 ほんとうに、不思議なくらい。

 紫の中でまどろんで。

 あったかいかも冷たいかも。

 どっちなのか、よくわからない。

 あったかくて、冷たいのかも。

 そんな、変な場所で。

 ずっと、そうしていたくなる。

 いつまでも、いつまでも。

 しあわせな夢を、みていたくなる。

 でも、夢は、そのうちさめる。

 わたしが自分で、起きることもある。

 紫がわたしを、やさしく起こすこともある。

 どっちにしろ、さめることだけは、ちゃんと決まっている。

 紫は、そんな具合で、いろいろと、あんまり変わらない。

 いつでも決まって、決まらないやりかたで、ぎゅーってしてくる。

 アリスとか、レミリアとか、そのあたりもあんまり変わらない。

 いちばん変わったのは、たぶん魔理沙。

 正面から、ぎゅーってしてたのが。

 いつのまにか、後ろからになってる。

 後ろから、まっすぐ、ぎゅーってしてくる。

 それで、私の髪の毛に、顔を埋めるみたいにする。

 顔が見えなくてなんとなく落ち着かないし、前の方が好きだけど。

 そのあとも魔理沙は少し変わって、そのうち、後ろから肩を抱くだけになった。

 変わったといえば、早苗もそう。

 昔は、まず、わたしの胸におでこをこつんと預けて。

 わたしの身体に軽く両手を回して、ぎゅーってしてたけど。

 いつのまにか、後ろから、わたしの背中におでこをこつんとやるだけになって。

 べつに、二人とも、なんにも、気にしなくていいのに。

 そんなとき、なんとなく、咲夜のことがわかったような気になる。

 わたしや魔理沙を、年下みたいに扱って。

 冷たいもの中毒にも、ならないでいった咲夜。

 たとえば魔理沙が後ろにいるとき、ぐるりと身体を回してやって。

 むりやり向かい合って、ぎゅーって、抱き締めてやったりする。

 魔理沙は、もう、わたしと違って、小動物みたいにちっこくないけれど。

 魔理沙の身体は、昔より、少し冷たいものになってるけれど。

 それでもやっぱり、魔理沙が正面から、力いっぱい、ぎゅーってしてきたら。

 あったかいし、安心する。

 不思議と、たったそれだけで。

 しあわせな夢が、みられそうな気がする。

 しあわせな目覚めが、むかえられそうな気がする。

 魔理沙に、ぎゅーってされて。

 紫にも、ぎゅーってされて。

 二人に、ぎゅーってされて、安らいで。

 まどろみの中に、わたしはいた。

 そこでは、あったかかったり、暑かったり、冷たかったり。

 いろんなやつらに、ぎゅーってされていて。

 いろんなやつらを、ぎゅーってしていて。

 ぜんぶひっくるめて、やっぱり、あったかい夢の中にいた。

 いつまでもみていたいような、素敵な楽園の夢の中にいた。

 わたしは、わたしが想うすべてのものを、ぎゅーってしてきた。

 わたしは、わたしが想うすべてのものに、ぎゅーってしてもらってきた。

 夢がさめる前、わたしは最後に、もう一度だけ。

 わたしを、ぎゅーってしてくれてきたすべてのものに、ぎゅーってした。

 それでもう、ぜったいに忘れないように。

 わたしに夢をみせてくれたすべてを、忘れないように。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ぎゅーっ。


 あったか。


 えへへ。
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コメント



0.3510簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
素敵。素敵です。ちょっと泣きそう。
霊夢はきっと、幸せに眠れたのでしょうね。
4.無評価名前が無い程度の能力削除
はぐはぐ。
ぎゅーって。
6.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしきかなはぐはぐ。
あいされいむー!
13.100名前が無い程度の能力削除
咲夜さんはもう、いないんですね。
あっさりしていましたが
やさしい文調があったかくしてくれました。
14.100名前が無い程度の能力削除
あったかすぎて涙でてきた。
よかったです。
17.100名前が無い程度の能力削除
うぎぎ、甘くて優しいのに切ない
年はとりたくないわねえ
18.60名前が無い程度の能力削除
話はすっごくいいんだ。
幸せになれると言うか和むというか。優しい気持ちになれる。
残念なことに読みづらくて仕方ない。
25.100香霖堂本店削除
くっ!ただでさえ血糖値が高いのに・・・・また上がってしまったようだ!!
26.90名前が無い程度の能力削除
なんという愛されいむ
28.70名前が無い程度の能力削除
ぎゅー。
33.90名前が無い程度の能力削除
あったかい文章。
あったかい雰囲気。
けど、どこか切ないお話でした。
36.100名前が無い程度の能力削除
良い事だ。
37.無評価名前が無い程度の能力削除
えへへ
38.100mthy削除
最初はニヤニヤしてたのに、いつのまにか微笑んでる自分に気がついた。
あったかくて、幸せな気持ちになれました。
39.100奇声を発する程度の能力削除
切なかったけど、心温まる良いお話でした。
40.60天井桟敷削除
ぎゅー、っと小さい子に手を握られたみたいなあったかさ。

読み終わりが夢からさめたみたいで、一抹の寂しさ。
43.100v削除
何もかんもが詰めこまれてるお話でした……
胸がいっぱいになって、言葉にしたくないほどに……。
48.90名前が無い程度の能力削除
すごくいい。
51.100名前が無い程度の能力削除
自分もこんな風に眠りたいものです。
60.80名前が無い程度の能力削除
寿命ものと解釈してしまった。
64.100名前が無い程度の能力削除
なぜか、すごく、後味が、悪い
65.100凡夫削除
あったかさのなかにあるほんのすこしのつめたさ
りょうさくです。
66.100名前が無い程度の能力削除
あったかい話だなぁと思ってたら、切ない読了感に驚きました。
あいされいむって素敵な言葉ですね。

あと、魅魔様がいて私は幸せです。
71.90桜田ぴよこ削除
抱きしめフェチの私にはたまらんとです!
80.100名前が無い程度の能力削除
ああ、これはたまらん
85.100幻想削除
涙が・・・
87.100名前が無い程度の能力削除
霊夢可愛いよ霊夢
88.100名前が無い程度の能力削除
あったかくなった
霊夢可愛いよ、ああああああ
89.100名前が無い程度の能力削除
えへへ
90.100名前が無い程度の能力削除
これは切ない……
98.100名前が無い程度の能力削除
ぎゅっ
99.100名前が無い程度の能力削除
むぎゅっ
102.100名前が無い程度の能力削除
あれ、目から液体が。
ぎゅっ。
110.100名前が無い程度の能力削除