これは風神録で神奈子を倒した後のお話
妖怪の山
守矢神社にて
戦いは終わった。
秋の夕方、風も強くなり始めたころである。
落ち葉が風に乗って飛んでいき、その場には静かに二人が佇んでいた。
赤と白の服を着た巫女は目の前の神にあることを尋ねることにした。
自らも神に仕えるものとして。
「あなたはどうして幻想郷に来たの?」
神奈子が黙って下を向いていると、霊夢は問いただした。
「あなたはここに来るべきだったの?」
霊夢は神に仕えている。だから神についてもよく知っている。
それ故に彼女は神奈子を軽蔑するような顔で、尋ねた。
「神は信仰によって存在する。人々はそれによって神から恩恵を受けているし、尊敬もしているわ。
でもね、」
霊夢は険しい表情で神奈子を見つめる。
「神はあくまで人間によって生かされているのよ。だから、神は信仰を失えば消えてしまう。
消えるべきなのよ。
なのにあなたは幻想郷に引っ越してきた。
あなたは民を失った王と同じよ。
そんな神なら、幻想郷に必要ない。」
神奈子がおもむろに顔をあげる。
霊夢はその眼を見てもう一度尋ねた。
「あなたは、なぜここに来たの?」
神奈子の顔は悲しそうだった。それでいて、その眼には後悔など無かった。
彼女は霊夢をしばらく睨んでいたが、やがてため息をついて話し出した。
「確かに私は消えるべきっだのだろうね。そんなこと、巫女に言われるまでもなくよく知っているさ。
けどね、」
神奈子は力強く言った。
「私には早苗がいたんだ。」
霊夢には納得した様子がなかった。それを見た神奈子は頬杖をつきながら話し続けた。
「早苗は今の外の世界じゃ珍しい、霊感の強い子だった。風祝の家の子だから当然なのかもね。
彼女は私たちと会話できたし、私たちを強く信仰していた。いや、もうその時すでに、私たちを信じているのは
早苗だけだった。
彼女は学校ではいつも避けられ、いじめられていて、周囲になじめなかった。奇跡を起こせるなどと言っても
今の世界じゃだれも信じてくれないし、実際に奇跡が目の前で起きても信じない、信じようともしない。
神社に泣きながら帰ってくる早苗を見たとき、助けられない自分が本当に情けなかったよ。
できることと言ったら話しかけてあげることだけ。
私は神だというのに、少女一人救えなかった。
だから、私はもうすぐ消える神として、最期に早苗の願いを一つだけかなえようと思った。
中学を卒業して帰ってきた早苗に、私は願いを聞いた。私はもう消えてしまうからと。
そしたら早苗はこう言ったんだ。」
神奈子は遠くを見つめていた。彼女の眼にはその時の早苗が、泣きそうになりながら必死に願う早苗の姿が映っていた。
「神奈子様に消えてほしくないです!」
「その時私は決心した。絶対この子を一人でおいていかないと。
それから知り合いの不死の神に尋ね、幻想郷の存在を知った。
そして残るすべての不滅の信仰を、一人のいつかは死んでしまう儚い少女を守るために使った。
こうして幻想郷に引っ越してきた。
うちのもう一人の神も一緒にね。」
霊夢は早苗のことを思い出していた。
明るく元気な顔をしていた。それは神奈子の瞳に映る彼女と正反対だった。
霊夢は納得したのか、それとも最初から何も考えていなかったのか、ため息を吐き、最後に一つ尋ねることにした。
「じゃあさ、早苗が死んだらどうするの?」
神奈子は神社を見ながら言った。
「そうなんだよねぇ。実際彼女の寿命中ぐらいだったらその信仰だけで生き残れたんだけどね。」
神奈子は優しく微笑んでいた。
「こっちに来るや否や早苗がさ、信仰を集めましょう!、っていうもんだからさ。
自分がいなくなっても私たちが生き残れるようにって。
そうしたらどうしてかなぁ、急に消えるのが嫌になっちゃったんだよね。
早苗がいろんなところに行って、信仰集めて、弾幕ごっこしてさ。
いつまでも見ていたいなって。
そんな早苗が一人で集めてくれた、こんなにも暖かい信仰を捨てるのは嫌だと思って。
だからさ。もし早苗が死んでも彼女が忘れ去られることのないように。彼女の子孫を見守るために。
まだまだ消えるわけにはいかないなって思ったんだよ。」
霊夢は「ふ~ん」と頷くと、空を見た。
もうすぐ日の沈む時間だ。
彼女が自分の神社に帰ろうとすると、
神奈子が呼び止めた。
「というわけで、あなたの神社でも私を祀t」
「却下」
霊夢は断言した。
「うちには結界守護の役目があるし。めんどくさいし。」
「えぇ~。いいじゃない別に。」
「駄目なものはダメ! じゃあ私帰るからまたね。それと…」
「早苗には幻想郷の巫女としての素質が十分ある。妖怪退治でもしたらって伝えといて。」
「わかった。じゃあn…」
神奈子が見るとそこにすでに霊夢はいなかった。
もうすぐ夜になる夕焼けの明るい空に、ちいさな赤白の点が見えていた。
完
妖怪の山
守矢神社にて
戦いは終わった。
秋の夕方、風も強くなり始めたころである。
落ち葉が風に乗って飛んでいき、その場には静かに二人が佇んでいた。
赤と白の服を着た巫女は目の前の神にあることを尋ねることにした。
自らも神に仕えるものとして。
「あなたはどうして幻想郷に来たの?」
神奈子が黙って下を向いていると、霊夢は問いただした。
「あなたはここに来るべきだったの?」
霊夢は神に仕えている。だから神についてもよく知っている。
それ故に彼女は神奈子を軽蔑するような顔で、尋ねた。
「神は信仰によって存在する。人々はそれによって神から恩恵を受けているし、尊敬もしているわ。
でもね、」
霊夢は険しい表情で神奈子を見つめる。
「神はあくまで人間によって生かされているのよ。だから、神は信仰を失えば消えてしまう。
消えるべきなのよ。
なのにあなたは幻想郷に引っ越してきた。
あなたは民を失った王と同じよ。
そんな神なら、幻想郷に必要ない。」
神奈子がおもむろに顔をあげる。
霊夢はその眼を見てもう一度尋ねた。
「あなたは、なぜここに来たの?」
神奈子の顔は悲しそうだった。それでいて、その眼には後悔など無かった。
彼女は霊夢をしばらく睨んでいたが、やがてため息をついて話し出した。
「確かに私は消えるべきっだのだろうね。そんなこと、巫女に言われるまでもなくよく知っているさ。
けどね、」
神奈子は力強く言った。
「私には早苗がいたんだ。」
霊夢には納得した様子がなかった。それを見た神奈子は頬杖をつきながら話し続けた。
「早苗は今の外の世界じゃ珍しい、霊感の強い子だった。風祝の家の子だから当然なのかもね。
彼女は私たちと会話できたし、私たちを強く信仰していた。いや、もうその時すでに、私たちを信じているのは
早苗だけだった。
彼女は学校ではいつも避けられ、いじめられていて、周囲になじめなかった。奇跡を起こせるなどと言っても
今の世界じゃだれも信じてくれないし、実際に奇跡が目の前で起きても信じない、信じようともしない。
神社に泣きながら帰ってくる早苗を見たとき、助けられない自分が本当に情けなかったよ。
できることと言ったら話しかけてあげることだけ。
私は神だというのに、少女一人救えなかった。
だから、私はもうすぐ消える神として、最期に早苗の願いを一つだけかなえようと思った。
中学を卒業して帰ってきた早苗に、私は願いを聞いた。私はもう消えてしまうからと。
そしたら早苗はこう言ったんだ。」
神奈子は遠くを見つめていた。彼女の眼にはその時の早苗が、泣きそうになりながら必死に願う早苗の姿が映っていた。
「神奈子様に消えてほしくないです!」
「その時私は決心した。絶対この子を一人でおいていかないと。
それから知り合いの不死の神に尋ね、幻想郷の存在を知った。
そして残るすべての不滅の信仰を、一人のいつかは死んでしまう儚い少女を守るために使った。
こうして幻想郷に引っ越してきた。
うちのもう一人の神も一緒にね。」
霊夢は早苗のことを思い出していた。
明るく元気な顔をしていた。それは神奈子の瞳に映る彼女と正反対だった。
霊夢は納得したのか、それとも最初から何も考えていなかったのか、ため息を吐き、最後に一つ尋ねることにした。
「じゃあさ、早苗が死んだらどうするの?」
神奈子は神社を見ながら言った。
「そうなんだよねぇ。実際彼女の寿命中ぐらいだったらその信仰だけで生き残れたんだけどね。」
神奈子は優しく微笑んでいた。
「こっちに来るや否や早苗がさ、信仰を集めましょう!、っていうもんだからさ。
自分がいなくなっても私たちが生き残れるようにって。
そうしたらどうしてかなぁ、急に消えるのが嫌になっちゃったんだよね。
早苗がいろんなところに行って、信仰集めて、弾幕ごっこしてさ。
いつまでも見ていたいなって。
そんな早苗が一人で集めてくれた、こんなにも暖かい信仰を捨てるのは嫌だと思って。
だからさ。もし早苗が死んでも彼女が忘れ去られることのないように。彼女の子孫を見守るために。
まだまだ消えるわけにはいかないなって思ったんだよ。」
霊夢は「ふ~ん」と頷くと、空を見た。
もうすぐ日の沈む時間だ。
彼女が自分の神社に帰ろうとすると、
神奈子が呼び止めた。
「というわけで、あなたの神社でも私を祀t」
「却下」
霊夢は断言した。
「うちには結界守護の役目があるし。めんどくさいし。」
「えぇ~。いいじゃない別に。」
「駄目なものはダメ! じゃあ私帰るからまたね。それと…」
「早苗には幻想郷の巫女としての素質が十分ある。妖怪退治でもしたらって伝えといて。」
「わかった。じゃあn…」
神奈子が見るとそこにすでに霊夢はいなかった。
もうすぐ夜になる夕焼けの明るい空に、ちいさな赤白の点が見えていた。
完
シリアスな話は好きですけど、一度原作の設定を見直したほうがよいかと。
守矢神社は山の中腹ぐらいにありますし、わざわざ山頂で話す意味はないかと。
それに諏訪子の存在を知ったのも、後の魔理沙との会話からですし、細かいことですが、その辺を考慮していただければ幸いです。
と、まあ酷評ばかりですが、作者さん自身を批判しているわけではありませんので、これからも頑張ってください。
>>4
脳内イメージで守矢神社、完全に山頂になってました。
修正しました。
ありがとうございます。
よく考えたら煙でてるもんなぁ、妖怪の山。
諏訪子の件は名前ぼかしたんですが、その記述自体なかったほうがよかったかもしれませんね。
>>5
ストーリーとか描写的に少しビミョーでしたか?
設定につきましては次回はもうちょっと調べて確認してから上げようと思います。
強いて言うなら「私を祀t」など小説の技法に合っていないものはこの類(シリアス系)のSSには向かないのではないかというくらいですね。
次の作品も期待しています。