「っざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
二月十四日、朝。
突如として八雲紫(12)の怒号が響いた。
「な、何事でs
慌てて駆け付けた藍(31)の顔面に新聞が投げ付けられる。
かなり勢いがついており、割と痛かった。
何故私に投げ付けるのか、八つ当たりか。
あの聡明な紫様が我を忘れるほどとは、一体何があったのだろうか。
顔に張り付いた新聞を手にとる。紫様の怒りの原因はおおよそこれなのだろう。
「バレンタイン……ですか?」
バレンタインといえば女性が男性にチョコレートを渡す習わしである。
かくいう私もこの日のためにいくつか材料を用意していた。
が、それが一体どうしたというんだろうか。
「裏よ!裏!」
……裏?
新聞を反す。
すると……
「第七回東方人気投票?」
まさかの展開である。
ともあれ、まず自分の順位を確認してみる。
……う……ま、まぁ気にはするまい。
続いて紫様の順位は……。
…………ああ、成る程
「なんでこの私がTOP10から落ちてんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
本日二回目の怒号。
「うははははははははははっ!!遊びに来てやったわよ八雲紫!!」
突如響く高らか(?)な笑い声。
ああ、厄介な奴が来たなぁ……七位だったか。
「おっはよーゆーかりーん♪TOP10から落ちた気分はどうかしらぁ?」
「かぁざぁみぃ……ゆぅかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(7)!!!!!!」
三度目にして最大の怒号。
声が枯れるぞ。
「そう!その顔!その顔が見たかったの!その顔だけでこのご飯三杯はいけるわぁ♪」
言いながらおにぎりを食べる幽香。シュール。
だめだ、ハイになりすぎて頭がおかしくなってるようだ。
「殺す殺す殺す殺すコロスコロスッ!!殺してやるっ!!」
紫様ももはや正気を失っているらしい。
さて、私は橙(44)にチョコレートでも作ろうか。
「やってみなさいよ、じゅぅぅぅぅぅぅぅぅに位のゆ・か・り・さん♪」
「 ぶ っ こ ろ す ! ! 」
せめて家を潰さないように暴れてくれると有り難い。
こうして、後に"人気投票異変"と呼ばれる大事件が、今、始まるのだった。
「あれ?咲夜(4)は?」
朝、レミリア(5)にとってはそろそろ寝ようかという時間に、従者の姿が見当たらなかった。
咲夜のおやすみなさいを聞かないとレミリアは眠れないのだ。
妖精メイド達(94)はしばらく話し合った後。
「新聞読んで、妖怪の山に飛んでいきましたけど。」
迂闊だった。
バレンタインデーだからこその特別企画、"早苗特製開運チョコレート"の販売で臨時収入を考えたのだが、まさか……まさか……。
(作ったチョコレートの数が幻想郷の人口を上回ってしまうなんて…………!!)
なるべく全員に回るように一人一個としたのも裏目に出た。
しかしっ……!後一個で完売……っ!
そう、こんな時こそ奇跡だ。
誰か……誰か……誰かっ……!
コツ コツ
(キタ――――――!!)
やはり祈りは通じるのだ!
奇跡万歳!
私の最後のチョコレート、これは記念に手渡しであげよう。
そうだ、サインでも書こうか。
ポケットに手を突っ込む。すると、入れた覚えの無いマジックペンが出て来る。
(名付けて、"前に使ったときに無意識にポケットに入れたマジックペンが偶然今見つかる奇跡"!!)
さっそく書く。
コミカルでファンシーなフォントで、後ろに五茫星マーク。
うん、超ラブリー。
「くださいな。」
「はいどうぞ、二百円で……す……?」
え、この人……?
「紅魔館のメイドさんじゃないですか。」
咲夜は黙ってチョコレートを手にとり、
「……チッ」
何故舌打ち!?
まさかサインが汚かった!?
「バレンタインとは……流石人気者は余裕ね?人気投票二位の東風谷早苗さん?」
…………ケッ
「わざわざそれを言いに来たんですかぁ?たいした暇人っぷりですねぇ?人気投票" 四 位 "の十六夜咲夜さん?」
「……死ねっ」
ヒュッ
早苗の髪が舞った。
「え、ちょっ……!?」
「絶対許早苗!!」
「だ、だまらっしゃい!今は巫女さんの時代なんですよ!メイドなんて古いんですよ!あなたはもう時代遅れなんですよ初代優勝者の十六夜咲夜さん!!」
「てんめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
早苗(2)VS殺人鬼(4)の始まりであった。
「見なよ神奈子(34)。朝っぱらから弾幕だよ。」
「早苗もすっかり幻想郷に馴染んだな。いいことだ。ところで諏訪子(17)。」
「何?」
「いや、お前とはいい加減けりをつけようと思ってね。信仰はお前じゃなく私に集まっているのだということを再認識させてやるよ。」
「上等じゃないの、人気投票三十四位様?」
十七位VS三十四位の始まりであった。
「――――――――ッ!?」
さとり(8)は何かを感じた。
絶望、憎悪、嫉妬、苦悩、そして、怒り
心を読めるさとりだからこそ素早く感じる事が出来た。
自分の脳裏が叫ぶ"逃げろ"。
さとりはすぐに駆け出した。
「お燐(46)!お空(14)!」
叫べど声は帰ってこない。
(まさか……もう……!?)
外に飛び出す。
すぐにそれは目に入った。
否、視線を吸い寄せられた。
「八雲……紫(12)!!」
その手にはボロ雑巾のようになった何者か(7)を持ち、その姿は"鬼神"を連想させた。
心は読めない、いや、読むことを自らが拒むのだ。
さとりは今にも逃げ出したかった。
しかし、散っていったペット達の為にも逃げられなかった。
それはさとりの意地だった。
「人気者は……死ね!!」
「ペット達の仇、討たせてもらうわ!覚悟しなさい八雲紫!!」
さとりの勇気が地底を救うと信じて!!
ちなみにお燐とお空は動物的本能でさとりより早く逃げていた。
小傘(21)は今日も人間を驚かす方法を研究中である。
もっとも、まるで進展はしないが。
「はぁ……私って妖怪失格なのかなぁ……妖怪崩れなのかなぁ……。」
そんなことを呟きながら地面にのの字を書き続ける。
そんな時だった
――――ぞくっ
寒気がした。
ただならぬ殺気を帯びた何かが私の後ろにいる。
小傘に分かるのはそれだけだった。
だが。
(私、今驚いた?)
ドクドクと高鳴る胸。
全身を覆う寒気。
息の荒い自分。
(そうだ……)
これなのだ。
人を驚かすのに必要なもの……それは恐怖。
恐怖は人の冷静さを奪う。今の私のように混乱した人間ならば、驚かすなど容易。
(これで……今度こそ……!)
気付けば自分は歯をがちがちと鳴らしていた。
ああ、なんと震えているのだ自分は。
これほどの恐怖を与えられる者とは一体誰なのか。
是非とも教えを請いたいが、首が上手く動かない。
凄い。凄いぞ。どれほどの恐怖を私に与えてくれるのだろう。
「あ……あな……たは……だ、誰です……か……?」
声を搾り出す。
と、同時に私はあることに気がついた。
……怖いと言うより……寒くね?
「同じ2ボスがあたいより上に立つなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その怒声と同時、小傘は気を失った。
「異変だ。博麗。」
里。
そこにある慧音(30)の家に霊夢(1)は呼ばれた。
そして開口一番こうである。
「……なんか起きてるの?」
霊夢にはなんのことかさっぱりと分からない。
今日の天気は雲が少しある程度の晴天。
日差しは強いのに相変わらず寒いし、やっぱり賽銭箱は今日も空っぽである。
異変ってなんの事だろう?
「うちの賽銭箱が空なのは異変じゃないわよ?」
「当たり前だ!まったく……なにか感じないのか?いつもと違う何かを。」
「と言われてもねぇ。強いていうならいつもより血の気が盛んな奴らが沸いてることくらいかしら?」
「それだ、それ。既に風見幽香(7)、古明地さとり(8)が被害にあっている。」
「慧音、また新しい被害者だ。」
そう言って妹紅が部屋に飛び込んで来た。
どうやら着々と被害者は増えているようだ。
「多々良小傘(21)……冷凍保存されて霧の湖に沈められていた。」
「むごいな……。」
「犯人はチルノ(23)って所かしら?」
「むぅ……その確率が高いか。しかし妖精まで凶暴化しているとはな……。一体何が原因なんだ……?」
「……そんなの一つしかないでしょ?」
霊夢は新聞を手にとる。バレンタイン特集の裏。
「あまり信じたくはないがその線が濃いか……。くっ……なんてことだ、このままでは被害は増える一方だ。」
バタァン!
突然、扉が勢いよく開く。
そして転がり込んでくる影。
「た……助けて……。」
「東風谷早苗!?誰にやられた!?」
「………いざ……よ…………く………や………。」
「十六夜咲夜!?」
「き……り……………め…………………(ガクッ」
さなえは ちからつきた
「早苗ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
きり……め?
ああ、成る程。
「絶対に!」
「許早苗!」
そう言って部屋に飛び込んでくるメイド(4)と白黒(3)
「くっ、貴様もか霧雨魔理沙!」
馬鹿がまた一人増えた。
「早苗を引き渡せ!」
「ぶっ殺す!」
目が血走っている。
すでに話しを聞くような相手ではないだろう。
「誰が渡すものか!人気投票ごときで貴様ら……許さん!」
慧音の頭に角が延びる。戦闘モードである。
「ハリケェェンミキサァァァァァァ!!」
「エタァァナルミィィクゥゥゥゥゥ!!」
「マスタァァァスパァァァァァァク!!」
三位………………霧雨魔理沙……………………
火花飛び散る弾幕(というよりただの喧嘩)の後ろから、深淵より深く響きそうな悍ましい声が、突如響き渡る。
霊夢は思った。
ヤバイ
四位………………十六夜咲夜……………………。
その二言目で霊夢は逃げた。
しかし妹紅は不死の自信があるのか身構える。
「慧音!なんか来たぞ!気をつけろ!」
慧音と魔理沙と咲夜は気付いていない。
背後の巨大な影に。
ぱかぁん!
気持ちのいいような音と同時、傘の一閃に魔理沙と咲夜は星になった。
慧音はふと我に帰る。
「……八雲……紫……?」
慧音は固まった。
無理もなかった。今目の前にいる彼女はまさしく鬼神。
クトゥルフより恐ろしい存在。
その瞳を合わせば最後、なにもかもが凍りつくのだ。
「九位………………藤原妹紅………………。」
ギロりと、紫の目が妹紅を捉えた。
そして妹紅も凍り付いた。
星がまた増えた。
紅魔館。
咲夜が不在の為、レミリアは退屈で仕方がなかった。
「はぁ~……神社に行っても霊夢いなかったし、本当に退屈ねぇ~……。」
レミリアは欠伸を一つ。
それにしても、おかしい。
何がって、色々。
霧の湖から妙な罵声が聞こえたり、妖怪の山の山頂から煙りがあがっていたり。
……人里からなにかが天に昇っていったり。
思えば咲夜もそうだ。なんで私に黙って出ていくのだろう。
例え急ぎの用事でも私に黙って出ていくとは何事か。
いくら急ぎの用でも時間を操れる彼女なら私に一言かけるくらい何も問題無いだろう。
急ぎでないなら……私に言えない事?。
咲夜め、この私に隠し事とはねぇ……。
咲夜は新聞を見たら出ていったというが、新聞?
はて、新聞にいったい何が書いてあったのか。
私は妖精メイドの持ってきた新聞を取り――――。
――――――ぞくっ
「!?」
背中が凍てつく感覚。寒気。
何かが近づいている。何か、とんでもない何かが。
何かは分からない。しかし、形容するならばそれは邪神。
新聞を取ろうとした手が止まる。否、固まる。
五百年も生きているが、これほどの恐怖を感じるのは久しかった。
ぱかぁん!
部屋の扉が吹っ飛ぶ。
砂煙からこちらを覗く影、それは。
「八雲……紫……!?」
「五位ぃぃぃぃぃぃぃぃ………………れぇみりあぁぁすかぁぁぁぁぁぁれっとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!?」
レミリアの中に、"死"がちらついた。
その時。
きゅっ
「あべしっ!?」
紫がドカーンした。
現れた新たな影は倒れた紫を踏み台にして。
「おねーさまー♪」
ぎゅっと私に抱き着いた。
「ふ、ふ、ふらん!?」
「お姉様、お姉様!パチェとアリスと一緒にチョコ作ったの!」
と、フラン(10)が綺麗に包装されたチョコを差し出した。
ああ、そうか。
――――今日はバレンタインなんだ。
ああそうだ、きっとそうなんだ。
咲夜がいきなり家から出て行ったのも。
霊夢が神社にいないのも。
霧の湖から妙な罵声が聞こえたのも。
妖怪の山の山頂から煙りがあがっていたのも。
人里からなにかが天に昇っていったのも。
バレンタインなら仕方ない。
後半おかしくても幻想郷なら仕方ない。
そうかそうだったのか、何を疑っていたというのか私は。
まったく、こんな日に限って居ないなんて、霊夢も結構ウブなのね♪
「ありがとうフラン、大切に頂くわ。」
私はチョコを受け取り、フランの髪をそっと撫でた。
「お姉様のチョコも欲しいなー♪」
「そうね、どうせならホワイトデーに三倍にして返してあげるわ。」
私は愛する妹の笑顔を見ながら、咲夜と霊夢のチョコを待つことにした。
うん文字通り、在り難いww
既にッ!!
過ぎたというのにッ!!
あなたはッ!!
まだッ!!
あんな製菓会社のッ!!
陰謀にッ!!
騙されているというのかッ!!
だがこのssに免じて許す
神奈子(34)でなぜか爆笑して
さとり(8)でなぜか胸がときめいた。
フランちゃんのチョコほしいです。
個人的には、名前の後の(順位)は最後まで徹底して付けた方がおもしろかったんじゃないかなと思ったり。
最初年齢かと思ったじゃないか……。
チルノ23歳でときめいたのは秘密だ。
幻想郷の人気者のハズなのに、何故に人気が無いのか理解できん!!
スイマセン、愚痴ってしまいましたw
>小傘(22)
>多々良小傘(21)
?
ふむふむ結果はこんな感じになってたのか。
てか咲夜と魔理沙、5位以内でも不満か!?
実質神奈子様が一位だ