来る時はいつも決まって大量にまとめ買いなので一番のお得意さんだった。その人のおかげでうちが続いてるようなもんさと親父は言っていた。緑色の帽子が良く似合う、黒髪のおねいさんだった。柔らかそうな腕をしているのにどこにそんな力があるのか、いつもバカでかい風呂敷を背負って、ニコニコお礼を言って帰っていった。
竹林の傍で、人里からはちょっと距離があった。ここに家を建てたのは親父で、俺は二代目だった。一介のチンケな八百屋でしかないが、唯一仕入れじゃない、ウチで作ったじゃがいもはそこそこ評判が良く、おねいさんが買っていくのも大抵そればかりだった。おねいさんは親父が俺くらいの歳のころからずっとおねいさんだったらしく、恐らく人間ではなかった。
近頃雨続きで風もひどくて、家を出るのも一苦労だった。一度妖怪の小競り合いで飛んできた流れ弾が、屋根の一部を貫いたことがあった。誰も怪我をしなくて幸いだったものの、それを直させた大工がボンクラだったのかよく雨漏りした。どうせ客も来ないと思って仕入れすらサボっていたら親父にどつきまわされた。
雨が止んだら止んだで、晴れた雲間からは流れ星が散見された。数年に一度見かけるくらいなら縁起が良いと喜べるけれども、一日に何度もでは不気味でしかない。「破霊の妖怪」というのが居て、そいつがやってるんだ、そして最後にはすごく大きな彗星を呼んで、そいつの尻尾で空気を全部持ってって生き物全部殺す気なんだと噂されていて、家内はそれを真に受けて騒いでいたので、宥めはしつつも俺は内心おっかない気持ちだった。
おねいさんは毎度、ひとつかふたつくらい世間話をした。それはまるで子供に戻って昔話を聞かされているような、包まれるような気分になるような、そんなひとときだった。俺が破霊の妖怪のことで愚痴をこぼしたら、不安なら今度「ぼんべ」を人数分持ってきてあげると言って俺をあやした。
結局、次におねいさんが来るまでに一際大きい流れ星、というか彗星が見えたのだが、呼吸ができなくって死ぬなんて奴はどこにもいなくて拍子抜けした。博麗の巫女殿がすんでのところで妖怪を退治したんだと噂されていて、家内はそれを真に受けて騒いでいたので、小銭を持たせて神社に行かせた。
何日か経っておねいさんが来て、「ぼんべ」をくれた。灰色の入れ物と仮面が管で繋がっている。入れ物に空気が入っていて、仮面を付ければ水中だろうがどこだろうが呼吸ができるよと説明された。俺はなんだか、おっとりと気の抜けた人だなと思った。もういらなかったのだが、一応お礼を言って、いつも買っていくじゃがいもの他に野菜をいくつかおまけした。名前を聴いたら「めいりん」と名乗った。雨続きでもなんでも、おねいさんが来るときにはなんでか雨は止んでて、帰る頃には雲に亀裂が走って虹が差してるようなことが多かった。
***
本当、見渡す限り何処でも花が咲き乱れていた。皆しっちゃかめっちゃかになるくらい騒いだけれど、爺が言うには昔一度だけ同じことがあって、爺の爺の爺も同じことを言ってたらしいとのことだったので、実は騒ぐほどのことじゃないのかもしれない。花が毒を振りまくとかでもないのなら、毎年何かしら起こるようなおっかない何かでもないということで。
ただ、花だらけになってからというもの、妖怪も妖精も、空を飛べるような連中は皆やたらと元気になって弾を飛ばしあっているのでそれには困窮した。屋根をぶち抜かれたのが三回目になった処で俺は本当に腹が立って、妖怪だからとか関係あるかよと鉈持って連中の頭をカチ割りにいこうとしたが、先に親父にボコボコにされて、俺に負けるような奴が身の程知らずなことをするなと叱責された。俺はむせび泣きながら大工に屋根の穴を塞いでくれと頼みにいった。ボンクラ仕事だったのか雨漏りがひどかった。
俺はこの糞へんぴな八百屋の三代目としてほそぼそやってるが、一丁前にひそかな楽しみはあった。この店にはたびたび、じゃがいもを大量に買っていく黒髪のやさしいおねいさんが来た。はっきり言って、俺はおねいさんに惚れていた。あののんびりした声がいい。細腕に似合わず妙に力持ちな処もいい。
服の端々がいつも汚れていたが、それでも身なりが良く、比べたら俺の着てるものがボロに見えた。それだけでなんだか惨めな"差"を感じて気後れはしたが、結局我慢できなくてある日口説いた。おねいさんは困ったような顔をして、やんわりと断ってきた。やっちまった、もう来てくれないと思ったが、それからも変わらずじゃがいもを買いに来てくれた。
おねいさんと世間話をしていて、妖怪がうちの屋根をしょっちゅうぶち抜いていくので皆八つ裂きにしてやりたいと愚痴ったら、じゃあこの店に名前を付けてあげますよと言った。その時は何言ってんだ、ほんとにぼんやりしてるなと思ったのだが、次におねいさんが来た時に持ってきてくれた看板を下げるようになってから、全然妖怪が寄ってこなくなってたまげた。
もうこれ以上穴が開かないなら、安いってだけの理由で使ってたゴミ大工とはおさらばできるってお袋が騒いだので、ちゃんとしたとこに頼んでちゃんとしてもらった。廊下に器がいっぱいで、足元に気をつけなきゃならないような状態ではなくなったし、これなら女にも夫婦生活を心配されずに済むから早くお見合いをしろと言われるようになって、それはそれで鬱陶しかった。
おねいさんを口説いたことは墓の下まで持っていくつもりだったが、ある日爺が、あのおねいさん、俺が店しょってた時からおねいさんでな、そん時は口説いたんだけど笑われたって話してきて、その場に居た親父は気まずい顔をしたので、俺はなんなんだよ、ふざけんなという気持ちになった。おねいさんはそれから俺が死ぬまでいつでも、あのうんざりするほど見たどの花よりきれいだった。
***
小さい頃、うちにはこの看板のおかげで変なのが寄ってこないんだって、曾爺がしょっちゅう得意げに言っていたのだが、今日は狼女が来た。夏なのにほっかむりして、足元まで長い暑そうな服を着て、獣臭かったのですぐに分かった。内心おっかない気持ちではあったが、干し魚をいくつか買っていっただけで別に何も悪さはしなかったので安心した。
人じゃない客を相手にしたのは多分初めてだった。昔はじゃがいもを大量に買っていくおねいさんが居たらしいのだが、俺は見たことがない。貴重な太客が居なくなって、直ぐに店の経営がヤバくなったので、道楽みたいな八百屋のままではだめだと、野菜以外にも色々売ることになったんだと聞いた。物を売るだけじゃなくて、技術も人手も売ってる。ほとんど何でも屋だった。
狼女のおねいさんはそれから度々魚とか人参とかを買いに来た。顔立ちは整っていてきれいだった。打ち解けて素性も隠さなくなってきた頃、おねいさんはうちの「何でも相談ください」って張り紙がずっと気になってたと言った。聞けば湖に住んでる人魚の友達が寂しそうなので、同じ目線で接することができる方法がないかと悩んでいた。
俺は正直、それは流石に何でも屋すぎんかと思ったが、うちで魚を捕りに行くのに使ってるボンベが余ってるのを思い出して、これなら相手が人魚だろうがなんだろうが水の中で一緒に遊べるんじゃないかと見せてみた。おねいさんは最初は喜んだが、直ぐに暗い顔に戻って、こんな高そうなもの買えそうにないと言った。俺はやっちまっても良いと思った。三つもあるけど、どうせ一つしか使わないんだ。でもタダじゃおねいさんもバツが悪いんだろうと思って、これからずっと人参と魚をうちで買い続けるならこのボンベはあげるよと提案した。おねいさんは二つ返事で了承してボンベを持って帰った。
それからおねいさんは約束通り、定期的に魚と人参を買いに来た。狼女が人参をどうするんだと聞いたら、家の周りには兎がいっぱいいるので、趣味で餌付けしていると答えた。おねいさんが宣伝してくれたのか、明らかに人じゃない客が増えた。退屈しきりの糞みたいな人生にうんざりしていて、すぐにこんな店はやめて出て行ってやろうと思っていたら、これだ。今はもう、むしろこれ以上に刺激的な人生はないと思う。
すっかり作る量が減ってしまっていたのだが、じゃがいもの売れ行きも良くなってきた。自画自賛みたいで気は引けるけれども、はっきり言ってうちで作るじゃがいもはうまい。食ってもらえさえすれば気に入られる自信はあった。
数年経って、おねいさんはこのボンベの空気はいつ尽きるんだと聞いてきた。考えたこともなかった。なんでこのボンベはいつまでも使えるんだ。というか、なんでこんなもんがうちにあるんだ。爺に聞いても知らなかった。曾爺なら何か知ってたかな。ホラ話ばっかりするボケナス野郎と思ってたけど、最近の俺の生活に比べればまだ現実味のある話だったなと今は思う。
***
作物が全部だめになった。赤い霧がたちこめて、日が差さず、ずっとじめじめしていた。家に閉じこもっていても、何もかもが赤みがかっている。こうもまっかっかだと、気分が落ち着かなくて何処か攻撃的になる。と言っても、喧嘩する相手なんかいない。ちょっと前に魔界人がどうとかの騒ぎがあって、その頃に病気とか、人里へ行くまでの道で興奮した妖怪に襲われたとか、餅を喉につまらせたとか、色々あって今、この店は俺一人でやってる。あんまりにも身内がバンバン死ぬから気味悪がって嫁も逃げちゃったし。
うちにはどういうわけか人に友好的な妖怪の客がいっぱい来ているけれど、最近はカッカして危ないからって自制して、そいつらも来なくなったので、本当に引きこもって乾いた食べ物を少しずつ齧るだけの生活を送っている。もう少し俺の判断が早ければ避難へも行けたのだが、もうこの段階では人里へ行くまでの道で喰われて死ぬだろうと思われた。
今までそれなりに面白おかしく人生を送ってきたと思うが、ここ数年は本当に糞だ。もう、ここで死ぬんだったら死んじまやいいんだ。寂しい。でも、寸前で収穫した野菜とか、他の食い物は地下室の氷室で鮮度が保たれている。少なくとも一か月くらいは餓死の予定はない。自死するような気概はないし誰かが殺しにくればいい。しかしそんな憂慮にしたって、うちには受け付けの横に魔除けの看板が下げてあって、これのおかげでもうずっと敵対的な妖怪なんて来たことがないらしかった。
そうやって腐って過ごしていたが、結局一週間くらいで霧は晴れた。人里へ行ったら、もういつもと変わらない様子だった。狼女とか氷精とか、見知ったやつも少しずつうちに顔を見せるようになって安心した。それから半年くらい、ずっと平和に暮らした。
それから特筆したこと。その日はしばらくじめじめした天気が続いて苛立っていたと思う。その霧雨が止んで、曇天くらいになったあたりで客があった。緑色の帽子が良く似合う、赤い髪をしたおねいさんだった。俺がいらっしゃいと声をかけると、柔和な笑みを見せた。その顔を見て、多分人間じゃないんだろうと思った。
おねいさんは店の中を見回して、受け付けの横に魔除けの看板を見つけると、あっと声を上げて本当に嬉しそうな顔をした。それは今まで見たこともないような喜色に満ちたものだったので、何をそんなにもはしゃいでいるのかと奇妙に思ったが、何故だか不気味な気持ちはしなかった。
おねいさんはニコニコしながらじゃがいもをありったけ注文した。荷車もないし、明らかに女手一つで持ち運べる量じゃ無かったので窘めたが、問題ないと言って聞かなかった。そして、大きな風呂敷にじゃがいもを包んでこともなげに背負ったのを見て頭が追いつかず、むしろ風呂敷の丈夫さの方に呆れた。
こんなに沢山のじゃがいも、何に使うんだと聞くとおねいさんは、大所帯なので、三回ほど"ふらいどぽてと"にしたらなくなると答えた。きょとんとしていると、"ふらいどぽてと"の作り方を教えてもらった。おねいさんはまた来ますと言って軽い足取りで去っていった。雲に亀裂が走って虹が差していた。
"ふらんどぽてと"は美味しかった。おねいさんが持って帰ったじゃがいもでこれを作って、皆でうまいうまいと食っているのを想像した。もうしばらくしたら、またあのおねいさんがうちのじゃがいもを買いに来るんだと思ったら、これから俺の人生は右肩上がりだと興奮したが、そうして振り回した腕がぶつかって、魔除けの看板が音を立ててぶっ倒れたので、それは流石に縁起悪すぎんかと狼狽した。
竹林の傍で、人里からはちょっと距離があった。ここに家を建てたのは親父で、俺は二代目だった。一介のチンケな八百屋でしかないが、唯一仕入れじゃない、ウチで作ったじゃがいもはそこそこ評判が良く、おねいさんが買っていくのも大抵そればかりだった。おねいさんは親父が俺くらいの歳のころからずっとおねいさんだったらしく、恐らく人間ではなかった。
近頃雨続きで風もひどくて、家を出るのも一苦労だった。一度妖怪の小競り合いで飛んできた流れ弾が、屋根の一部を貫いたことがあった。誰も怪我をしなくて幸いだったものの、それを直させた大工がボンクラだったのかよく雨漏りした。どうせ客も来ないと思って仕入れすらサボっていたら親父にどつきまわされた。
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おねいさんは毎度、ひとつかふたつくらい世間話をした。それはまるで子供に戻って昔話を聞かされているような、包まれるような気分になるような、そんなひとときだった。俺が破霊の妖怪のことで愚痴をこぼしたら、不安なら今度「ぼんべ」を人数分持ってきてあげると言って俺をあやした。
結局、次におねいさんが来るまでに一際大きい流れ星、というか彗星が見えたのだが、呼吸ができなくって死ぬなんて奴はどこにもいなくて拍子抜けした。博麗の巫女殿がすんでのところで妖怪を退治したんだと噂されていて、家内はそれを真に受けて騒いでいたので、小銭を持たせて神社に行かせた。
何日か経っておねいさんが来て、「ぼんべ」をくれた。灰色の入れ物と仮面が管で繋がっている。入れ物に空気が入っていて、仮面を付ければ水中だろうがどこだろうが呼吸ができるよと説明された。俺はなんだか、おっとりと気の抜けた人だなと思った。もういらなかったのだが、一応お礼を言って、いつも買っていくじゃがいもの他に野菜をいくつかおまけした。名前を聴いたら「めいりん」と名乗った。雨続きでもなんでも、おねいさんが来るときにはなんでか雨は止んでて、帰る頃には雲に亀裂が走って虹が差してるようなことが多かった。
***
本当、見渡す限り何処でも花が咲き乱れていた。皆しっちゃかめっちゃかになるくらい騒いだけれど、爺が言うには昔一度だけ同じことがあって、爺の爺の爺も同じことを言ってたらしいとのことだったので、実は騒ぐほどのことじゃないのかもしれない。花が毒を振りまくとかでもないのなら、毎年何かしら起こるようなおっかない何かでもないということで。
ただ、花だらけになってからというもの、妖怪も妖精も、空を飛べるような連中は皆やたらと元気になって弾を飛ばしあっているのでそれには困窮した。屋根をぶち抜かれたのが三回目になった処で俺は本当に腹が立って、妖怪だからとか関係あるかよと鉈持って連中の頭をカチ割りにいこうとしたが、先に親父にボコボコにされて、俺に負けるような奴が身の程知らずなことをするなと叱責された。俺はむせび泣きながら大工に屋根の穴を塞いでくれと頼みにいった。ボンクラ仕事だったのか雨漏りがひどかった。
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数年経って、おねいさんはこのボンベの空気はいつ尽きるんだと聞いてきた。考えたこともなかった。なんでこのボンベはいつまでも使えるんだ。というか、なんでこんなもんがうちにあるんだ。爺に聞いても知らなかった。曾爺なら何か知ってたかな。ホラ話ばっかりするボケナス野郎と思ってたけど、最近の俺の生活に比べればまだ現実味のある話だったなと今は思う。
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うちにはどういうわけか人に友好的な妖怪の客がいっぱい来ているけれど、最近はカッカして危ないからって自制して、そいつらも来なくなったので、本当に引きこもって乾いた食べ物を少しずつ齧るだけの生活を送っている。もう少し俺の判断が早ければ避難へも行けたのだが、もうこの段階では人里へ行くまでの道で喰われて死ぬだろうと思われた。
今までそれなりに面白おかしく人生を送ってきたと思うが、ここ数年は本当に糞だ。もう、ここで死ぬんだったら死んじまやいいんだ。寂しい。でも、寸前で収穫した野菜とか、他の食い物は地下室の氷室で鮮度が保たれている。少なくとも一か月くらいは餓死の予定はない。自死するような気概はないし誰かが殺しにくればいい。しかしそんな憂慮にしたって、うちには受け付けの横に魔除けの看板が下げてあって、これのおかげでもうずっと敵対的な妖怪なんて来たことがないらしかった。
そうやって腐って過ごしていたが、結局一週間くらいで霧は晴れた。人里へ行ったら、もういつもと変わらない様子だった。狼女とか氷精とか、見知ったやつも少しずつうちに顔を見せるようになって安心した。それから半年くらい、ずっと平和に暮らした。
それから特筆したこと。その日はしばらくじめじめした天気が続いて苛立っていたと思う。その霧雨が止んで、曇天くらいになったあたりで客があった。緑色の帽子が良く似合う、赤い髪をしたおねいさんだった。俺がいらっしゃいと声をかけると、柔和な笑みを見せた。その顔を見て、多分人間じゃないんだろうと思った。
おねいさんは店の中を見回して、受け付けの横に魔除けの看板を見つけると、あっと声を上げて本当に嬉しそうな顔をした。それは今まで見たこともないような喜色に満ちたものだったので、何をそんなにもはしゃいでいるのかと奇妙に思ったが、何故だか不気味な気持ちはしなかった。
おねいさんはニコニコしながらじゃがいもをありったけ注文した。荷車もないし、明らかに女手一つで持ち運べる量じゃ無かったので窘めたが、問題ないと言って聞かなかった。そして、大きな風呂敷にじゃがいもを包んでこともなげに背負ったのを見て頭が追いつかず、むしろ風呂敷の丈夫さの方に呆れた。
こんなに沢山のじゃがいも、何に使うんだと聞くとおねいさんは、大所帯なので、三回ほど"ふらいどぽてと"にしたらなくなると答えた。きょとんとしていると、"ふらいどぽてと"の作り方を教えてもらった。おねいさんはまた来ますと言って軽い足取りで去っていった。雲に亀裂が走って虹が差していた。
"ふらんどぽてと"は美味しかった。おねいさんが持って帰ったじゃがいもでこれを作って、皆でうまいうまいと食っているのを想像した。もうしばらくしたら、またあのおねいさんがうちのじゃがいもを買いに来るんだと思ったら、これから俺の人生は右肩上がりだと興奮したが、そうして振り回した腕がぶつかって、魔除けの看板が音を立ててぶっ倒れたので、それは流石に縁起悪すぎんかと狼狽した。
なぞの美人なおねいさんが来るたびにテンションのあがっちゃう親子数代に一族の血統を感じました
贈った看板が世代を超えて大事にされていたと知って喜ぶ美鈴がかわいらしかったです
ちょっとよく読み取れない部分がありましたがそれはそれで面白かったです。
有難う御座いました。
そして店主四者それぞれが似た物同士だけど差異もあって、美鈴はラスト以外全く変わる様子が見えなくて、時代が過ぎた事が明治43年や昭和20年の出来事を通して明かされても妖怪は妖怪だし遺伝は遺伝だなぁってなるのも文体が上手い。
小脇に挟まれる看板の不変さや影狼のような少し強めの妖怪がやってきている所といったストーリーも含めてとても面白くかつ小気味良く読ませて戴きました。ありがとうございました、ご馳走様でした。
不思議で暖かくて、素敵な話でした。とても良かったです。
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