八雲紫が式神、八雲藍は極度の寒がりである。
真冬になると、手先足先を揉んでばかりいる。
炊事、洗濯、洗顔や手洗いなど水に触れる行為は、覚悟を決めて沈痛な面持ちで臨んでいる。
モコモコの綿入りドテラは必須アイテム。ストーブからできるだけ離れたくない。
無論、夜は靴下を2枚履いて就寝する。
寒さ厳しけれど、さりとてなかなか文明の利器に頼れぬ幻想郷。
皆寒いのだから我慢しろと言うのは簡単だが、縮み上がるように背中を丸めて仕事に行く藍の姿を、橙は見ていられなかった。
そして今ここに、主人の冷えを解消しようと、一匹の黒猫又が立ち上がった。
――◇――
「紫様。紫様は寒くて仕方がない時、どうしますか?」
「んー……冬が終わるまでコタツから出ない」
「そ、それはダメですよぅ」
そう眠い目をこすりつつ答える紫に、橙は汗を一筋垂らす。
藍を暖めたいと意気込んだはいいが、橙は具体的にどうすればいいか分からなかった。
そこでコタツでうつらうつらしていた紫に聞いてみたのだが、結果はご覧の体たらくである。
ある意味正解だが、橙がイメージする解決策には程遠い。
橙はそこの所をなんとか説明する。
「ふーん……要するに、忙しい日常生活でもできるちょっとした改善で、藍が少しでも暖かに過ごしやすくしてあげたい、ってこと?」
「そう! それです!」
さすがに腐っても鯛、半眠りでも賢者。橙の想いを的確に要約する。
そうまとめてみて、紫もハタと考える。
「……そういえばこの季節、私はいつもぬくい場所で寝てばかり。
寒さに悩む、なんて感情もすっかり忘れていたわ。
藍が冷え症なのを聞いてなお放っておくのは、文字通り冷たい態度よねぇ……」
コタツの天板に顎を乗せてしんみりと呟く紫。橙もこれに追随する。
「ですから紫様、何かよい考えはないでしょうか?」
「うーん……ん!」
紫はしばらく薄目で考えて、唐突にひらめいた。
上体をがばっと起こし、完全に開いた目はイタズラっ子のように無邪気に輝く。
今の口元を擬音で表すなら、にししし、が最適であろう。
「橙。私にいい考えがあります。でもそれを実行するには、橙の協力が必要なの」
「勿論! なんでもお手伝いします」
「よろしい。まずはたくさんの紙と筆が必要ね。それから台所に行って――」
紫がテキパキと指示を出し、橙は頷いてくるくると働く。
今日は結界の点検日。
藍は夕方まで戻ってこない上、たっぷり冷気にさらされて帰宅する。
それまでに全ての準備を完了させることに意味がある。
紫はこれから起こる事を目の当たりにした藍の顔を想像して、ついついほくそ笑む。
こうして、親切という名のプチ悪巧みは、夕刻までに全ての工程を終えたのだった。
――◇――
「ただいま戻りました」
藍はそう言って、手を合掌する様に擦り合わせながら玄関をくぐった。
マフラーに手袋、外套を着こんでも、手足の末端が氷水に浸かる様にビリビリとした冷えが襲う。
藍は両手を器状にして「はーっ」と白い息を吹きかけると、靴を脱いでほぼ外の気温と変わらない上がり口から室内に脱出した。
防寒着を脱ぎ、藍は台所へ向かう。
今日は昼間に橙が遊びに来ていたみたいだが、家が静かだからマヨヒガに帰ったのだろう。なら、夕食は二人分でいいか。
そんな見積もりを立てて台所に入ったとき、藍は違和感を覚えた。
いつもなら、北向きで暖気が全く届かぬ寒々とした部屋のはずなのだが、今日はなぜかほんのり暖かい。
その理由は、火が入れてあるかまどにあった。
そこには、とろ火でコトコトと沸いている手鍋。
藍が訝しみながら蓋を開けると、中から胸がすく様な独特の香りと湯気が立ち上った。
「これは……生姜?」
どうやら生姜を鍋で煮込んだものらしい。
ここにきて、藍はそばの調理台に置かれたメモに気が付いた。
藍はそれを取り上げて読んでみる。
『しょうが湯をお作りしました。このハチミツをたっぷり入れて召し上がってください』
この字は橙のものだ。藍は読みながら、このメモの重石であった蜂蜜の瓶を眺める。
「そっか。橙がこれを」
きっと橙は、今朝「うぅぅ、さむさむっ」と言いながら出かける自分のことを気にかけていたのだろう。
橙がつたない手つきで生姜をおろす姿を想起して、藍は顔を綻ばせた。
藍は棚から自分の湯飲みを取り出すと、鍋から生姜湯をお玉ですくい入れる。
蜂蜜もメモのお達し通り多めに入れて、ずずずと頂く。
「おお。甘くて意外と美味しいな」
藍はほっと息をついて、そう感想を呟く。生姜湯は舌触りや辛味が苦手で敬遠していたのだが、これなら飲みやすい。
すると、体がぽかぽかと内側から温まってくるのを感じた。
生姜の発熱作用が効いてきたらしい。藍は身を以て、先人の知恵に驚く。
この冬は、橙の作り方でいつも飲んでいよう。そう藍は思った。
「橙、ありがとう。今度、飴湯をご馳走してあげような」
藍はホクホクした表情で橙に礼を言うと、鼻歌交じりで機嫌よく夕飯の支度を始めた。
所用で裏手の勝手口に来た藍は、戸の前の床に置いてあった物体をしゃがんでまじまじと観察していた。
そこにあったのは、草履の形をした布板の上に、同素材の布でカマクラの様な覆いをつけたもの。
藍は使ったことがないが、知ってはいる。スリッパという室内履きだ。
しかし、このスリッパはモコモコと起毛した山吹色の布地でできており、まるで新種の動物が二匹お座りしているみたいだ。
観察眼が鋭い藍は、スリッパの裏にまたメモを発見した。
藍はそれに目を通す。
『足がいつでもあたたかい様に工夫しました。使ってみてください』
これも橙の字だ。藍はメモを畳むと、大事そうに割烹着のポケットへ仕舞う。
そして、スリッパへ足を入れてみる。
ふさふさした毛並の感触に戸惑いがあったが、すぐに慣れた。
心なしかウキウキした面持ちで二、三歩あるいてみる。
「ははぁ。これはいい」
今まで靴下のみで冷たい床板と接していただけに、この心地よさは堪らない。
また実際に使用することで、橙の工夫も分かった。
つま先に何かが当たるので、藍はそれを取り出してみた。
それは端切れを縫い合わせた小袋で、中には小さな唐辛子が入っている。
唐辛子の辛味成分には血行を促進させる効果があり、この様な使い方でも充分効力を発揮する。
血行がよくなれば、足元にも熱が集まる。
理論は単純だが、藍は縫い目が笑いまくっている小袋が、とても愛おしいものに感じられた。
スリッパ自体は既製品だろうが、小袋を一生懸命縫い合わせたに違いない。
藍は、このスリッパをずっと愛用しようと心に決めた。
夕飯が出来上がった。今日は鍋物だ。
藍はしっかりとスリッパを履いて、台所から食事をする部屋の机に生の材料を入れた鍋を運ぶ。
あとは卓上のミニ七輪でグツグツ煮れば食べられる寸法だ。
机に予備の具材と取り皿を並べていると、机上にメモが一枚乗せられていた。
『今日のお風呂は特別なお風呂です。ぜひ入ってみてください
私の夕飯は後でも構わないから、先にお風呂入っていていいわよ』
橙の字の隣には、紫の流麗な文章が添えてある。
なるほど。どうやら橙に紫が協力しているらしい。
(この回りくどいけど、人をドキドキさせながら上手く誘導する感じ……紫様らしい手口だ)
藍は紫に踊らされていることに気づいたが、その状況と相反して、藍はいそいそと湯浴みの準備を整えるために部屋を出た。
「ふわぁ~、いい香り」
服を脱いで浴室に入った藍の第一声は、浴室中に広まる爽やかな南国風の甘酸っぱい芳香に対する感嘆であった。
風呂の蓋を開けると、中に閉じ込められた柑橘系の香りが湯気と共に立ち上り、藍の鼻を楽しませる。
「柚子湯なんて久しぶりね」
藍は感慨深げに呟きながら、湯船に浮かぶ完熟した黄色い柚子を指で突いて、伝統的な風習に思いを馳せた。
江戸時代頃より、日本では冬至に柚子を浮かべた湯船に入浴する習慣がある。
実は冬至の日でなくとも、大寒の季節に柚子湯に入るメリットがある。
柚子湯にも唐辛子と同じで血行促進効果があり、冷え性や神経痛、腰痛などを和らげる効果があるとされている。
『柚子湯に入れば風邪を引かない』なんて言われるくらいだ。
藍はかけ湯をして、ゆっくりと湯船につかる。
「うぅ~、あぁあぁ~」
一日で溜まった疲れと冷気を溶かす魔法のため息を吐いて、藍は肩まで湯に浸る。
藍にとって冬の楽しみの一つが、毎日のお風呂である。
直接的に体が温まるだけでなく、長風呂をしてコリをほぐしたり、ぬるめの温度で心を癒したりと十二分に風呂を堪能する。
今夜のお風呂は、まさに実用性と季節風土の美を兼ね備えた素晴らしい一品である。
藍は時間も忘れて、甘い香りが体に移るまで存分に柚子湯を楽しんだ。
「……はー、ちょっとのぼせ気味かも」
寝間着に着替えた藍は、桜色に火照った頬や胸元を外気で冷ましながら食事部屋に戻ってきた。
普段は恨めしい冷気も、今日は逆に心地いい。
そんな贅沢な感覚を味わいつつ、藍は襖を開ける。
「はぁい。ご機嫌かしら、藍」
食材と食器が並んだちゃぶ台の向こう、いつもの指定席に紫が優艶な笑みを浮かべながら頬杖を突いていた。
藍はまだ暑さが残る口元をゆるめて、自分も席に着く。
「ええ。こんなにぽかぽかした夜は初めてです。紫様と橙には、改めて感謝しないといけませんね」
「んふふ、いいのよ」
藍が素直に謝辞を述べると、紫は意味深な含み笑いでそれを受け止めた。
すると藍は、すでに七輪で火にかけられた鍋の様子を確認しながら、残念そうに呟く。
「本当なら橙にも直接お礼を言いたかったのに、何で帰っちゃったのかなぁ?」
「……何でも大事な用事があるからって、私にメモとセッティングを任せてそのまま、ね」
「そうですか」
藍はなおも寂しそうな顔をしていたが、後日改めてお礼をしようと思った。
今は紫との食事を楽しむことに意識を向ける。
しばらくして、鍋がグツグツと煮えてきた。藍は蓋を開ける。
すると優しくてほんのり甘い香りが湯気に乗って、部屋の中に充満し、紫の鼻をくすぐる。
「うーん、いい匂い。今夜は豆乳鍋ね」
「ええ。いつも油揚げを買う豆腐屋さんから、おまけで豆乳をいただきましたから」
そう言って藍は、紫の取り皿に白く煮えた豚肉と白菜、水菜や豆腐をよそう。
冬の料理の定番といえば、やはり鍋物であろう。
特に今夜の鍋は豆乳と出汁をベースに豚肉と野菜、豆腐、油揚げ、きのこ等を入れた、乳白色が目と胃に優しい鍋である。
「豆乳にはビタミンを始め栄養がたっぷりです。
高血圧や更年期障害、ボケ防止にはぴったりですし、骨や歯も丈夫にしてくれるんですよ」
「……それどーゆー意味?」
「ああ! えと……そ、それに豆乳には大量に大豆イソフラボンが入っています。
女性ホルモンに似た構造で強い抗酸化力を発揮する、いわば若返り促進の栄養なんです。
体はぽっかぽか、お肌はツルッツルです」
「あらぁ、じゃあ今日はたくさんいただくわね」
失言に焦った藍のフォロー豆知識にコロッと機嫌が良くなった紫は、藍から取り皿を受け取ると、まずは半透明に透き通った白菜に箸をのばす。
ふーふーと息を吹きかけ、湯気と熱気を飛ばす。そして一口。
「はふ、はふ。うん、豆乳の自然な甘みと白菜のほのかな甘みが舌の上で抱き合っているわ」
「素敵な表現、ありがとうございます」
「どれ、豚肉~、むぐむぐ……くぅ、うま味満点。水菜もしゃっきしゃき。
お豆腐……ふー、あちあち……あぁ、あったまるわぁ。豆乳との親和性がピカ一ね」
紫は心底から湧き上がる感想を述べながら、はふほふと息を弾ませて鍋をつつく。
そんな紫の様子を、藍はこの上なく幸福そうな笑みを浮かべて眺めていた。
「……なぁに、何か顔に付いている?」
「いえ。紫様は私の作るご飯を美味しい美味しいとお食べになるので、とても作り甲斐があります。
そして紫様の食べるお姿を見るのが、私は毎日楽しみなんですよ」
「……ふふ。私も、あなたのご飯が一番。でも、食べてる姿が楽しみなのはこちらも同じ。
ささ、あなたもいただきましょう。鍋が煮え過ぎちゃうわ」
「はい。いただきます」
紫も照れたように頬を緩めて、藍と食事を再開する。
今日の紫は宣言通り、よく食べた。普段より多くの具材を追い投入し、ご飯もおかわりしてぺろりと平らげる。
そんなにお腹が空いていたのかと藍は少し訝しんだが、それでも藍は紫との食事を真剣に、かつわずかな一時を味わうようにゆっくり進行する。
紫が冬眠するまであと何週もない。
毎年の事だが、その季節が近づくたびに、藍の心には冷たい隙間風が吹く。
外気温だけでなく、内面からも寒さが沁みるこの季節がイヤだった。
しかし、だからこそ藍は紫が冬眠に入る直前の期間、特に一緒にいることを心掛けた。
仕事以外は八雲邸で過ごし、夕飯は必ず紫と摂る。
紫と過ごしている期間は、心が温かかい。そして、藍はその温かさをため込んで、懐炉の様に心中で揉み解して冬を乗り切る。
毎年恒例の己を我慢させる術。しかし、今年は違った。
橙と紫が厳寒でも暖かに過ごす工夫を教えてくれた。これで心の温かさをあまり消費しないで済む。
その分、春まで胸のぬくもりを、飴玉を転がす様にゆったりと堪能できる。
寂しいと言えば寂しいが、今年はもっと過ごしやすいだろう。
藍は具の油揚げに染みた豆乳をちゅうちゅう吸いながら、紫成分を今日も目一杯補給した。
さて、食事も終わり二人は手を合わせた。
鍋と食器を七輪の余熱で温めたぬるま湯で洗い、片づける。
すると今日の仕事はもうない。後は寝るだけだ。
藍も近日にない程ぽかぽかの状態でここまで過ごしたため、心地よいまどろみが頭をふわふわと浮き上がらせた。
「それでは紫様、今日はもう休ませていただきます」
「おっとと、その前に重大なことが」
紫が人差し指を立てながら紡いだ言葉に、藍は首を傾げる。
「はい、最後のメモ。これがメインイベントよ」
紫から手渡されたのは、日中によく見た件のメモだ。
中身はきっと寝るときの寒さ対策が書いてあるのだろう。藍はわくわくしながらメモを開けた。
『湯たんぽが入っています。あったまってください』
橙の筆跡だ。この寒さの夜、湯たんぽは非常にありがたい。
だが、その一文を見た藍の反応は何故か鈍い。
「……あのう。湯たんぽだけ、ですか」
「そうだけど」
紫はふふふといつもの優艶で何を考えているか悟らせない微笑で肯定する。
藍はその意識があるのかないのか、拍子抜けしたように呟く。
「湯たんぽはここのところ毎日使っているから、さしたる感慨はないなぁ……」
実は、藍はストーブを出す前の日くらいから湯たんぽを使っていた。
というより、毎冬の必需品であり愛用品である。
勿論気持ちはありがたいのだが、正直昼間の様な驚きと感動に乏しかった。
しかし、紫は気にせず続ける。
「まぁまぁ、まずは寝室に行ってごらんなさい。きっと驚くわよ」
「?」
藍は紫が楽しそうに促すので、絶対何か企んでいると感づいた。
しかしここまで来ると、最後まで乗せられてみようという気になっている。
藍はどんなサプライズが待っているのかを想像しながら、尻尾をはためかせて寝室に向かった。
――◇――
「うぅ、寒かっ……た」
さすがに板張りで縁側に面している廊下は、外と同じぐらいの寒さだった。
先ほどまで忘れていたが、今の季節は寒さが厳しい冬なのだ。
こういう時藍はいつも、湯たんぽでぬくもりを供給した布団に素早く潜り込み、頭も出さない完全防備で翌朝まで頑張る。
しかし、今日の布団は一味違った。
夕飯前に敷いておき、その時湯たんぽを入れておいたため、布団にぽっこりとふくらみができていた。
そのふくらみが、大きくなっている。
具体的には、人間の子供が中でうずくまっている様な大きさだ。そのふくらみの中央が、呼吸している様に小さく上下していた。
藍は、その聡明な頭脳で布団の中身を推察する。
そしてその推論をいままでの状況から鑑みてほぼ確定的と判断し、同時に口元をにへら、とだらしなく弛緩させる。
(なぁんだ。今までの不自然な状況説明はブラフ。全てこの展開に持って行くためだったんだ)
藍は高揚していく胸の鼓動を感じながら、そう結論した。
(今日はいい日だ。本当にいい日だ。今朝は寒かったけど、午後はずっと暖かかったし夜はこうして……ふふふぐへへ)
後半はやや語弊のある笑い方だったが、純粋に藍は嬉しかった。
そしてひっそりと静まり返る寝室に入ると布団に近づき、おもむろに掛布団へ手をかける。
そして、落ち着くために一呼吸し、藍はこう叫んだ。
「待たせたねちぇぇぇぇぇん! 一緒に寝よう!」
「……はぁい、ご機嫌ね。でも残念賞」
藍が勢いよく剥いだ布団にスキマを開いて腰を突っ込み、体格の違いを誤魔化す様にしとけなく横たわっていたのは、さっきまで鍋をもりもり食べていた寝間着姿の紫だった。
時は一瞬止まり、硬い表情の藍は一言。
「チェン……ジ」
「それ以上失礼なこといったら、私泣いちゃうからね」
紫はくすん、と可愛くわざとらしい泣きまねをするが、藍のテンションは駄々下がりだった。
「……紫様、これはどういった趣向なのですか」
「藍の雄叫び通り、本当は橙がここに寝ていて、藍を驚かせる予定でした。
でも待機時間が長かったのでしょうね。ほらこの通り」
紫がイタズラを失敗した子供の様に小さくため息をついて、紫の背後、つまり藍から見て布団の奥側に寝返りを打って視線で指し示す。
そこには、魚柄のふんわりとしたパジャマを着た橙がすぅすぅと小さな寝息を立てていた。
三角形の耳は呼吸に合わせてゆらりと上下し、何かを食べる夢でも見ているのか、時折口をもごもごと動かしている。
これには藍も毒気が抜けて、あらあらと母親の様な苦笑を漏らす。
「ということは、橙は日中からずっとこの家に?」
「ええ。午後は猫の特性を活かしてあっちこっちに隠れて、藍がお風呂の間にこの状態へスタンバイしていたの。
メモを残して姿を見せなければ、藍は橙が帰ったと思う。
そこを突いてサプライズさせようと思っていたんだけど、あなた勘がするどいから、企画者側としては面白みに欠けるわぁ」
これには藍もバツが悪くなる。むしろ紫が寝ていたことの方が逆にドッキリとなってしまった。
「でも私も見込みを誤ったわ。晩御飯を食べて布団に横になっていたら、そりゃあ眠くなるわよねぇ」
「晩御飯?」
「空腹で待機させるのもかわいそうだから、口の中とここをスキマでつないで、私が食べるふりをした豆乳鍋を橙にあーんって」
「お、おぅ……」
藍は今日の紫の大食いについて納得したが、何とも言えない気分になってつい愛想笑いを繰り出す。
いくら仕込みをバラしたくないからとはいえ、随分器用なことを自然にやってのけたものだ。
それはともかくとして、紫は本来の目的に話を戻した。
「まぁイメージとはちょっと違うけど、一緒に寝てあげなさい。温いわよ~、橙を抱っこして寝るのは」
「ははは、言われるまでも無く」
紫が布団の外に這い出し、代わりに藍が橙を起こさないようそっと布団に入る。
そしてゆっくり、ゆっくりと橙の横向きになった体の下に腕を差し入れ、橙を背中から抱きかかえる形になってややくの字に体を密着させる。
紫は、二人が寒くない様に掛け布団を掛けてやった。
はたして布団の中は、橙の体温で人肌に温もりがキープされていた。
橙は元々猫の妖獣であるため、常日頃から体温が高い。それゆえ、湯たんぽの代わりになってあり余る程の熱量を与えてくれる。
さらに熟睡している橙の体は、いつにも増して体温が高く感じられる。
藍は熱の塊の様な橙を抱きすくめ、同時に橙にも自分の体温を分け与えんと身じろぎ一つせずこの状況を堪能する。
そう、まさに極楽浄土の心地を藍は噛みしめていた。
普通の湯たんぽでは得られない適度な温もり。
密やかな呼吸の音とその微妙な振動。ふわふわと愛嬌のあるくせっ毛と藍が贈った飾りをつけた耳。
小さくていつも守りたくなるけど、成長が楽しみな肢体。
愛しい、愛しい。全てが可愛くて、温かさが気持ちよくて、自分の為に色々してくれたことが嬉しくて。
ほとんど無意識に、藍は自分の鼻先を橙の後頭部にすりすりとこすり付ける。
敏感な鼻で相手と触れ合う。これは、動物ならではの愛情表現だ。
「……んぅ」
ふと、橙が微かに息を乱して唸る。
起こしてしまったか、と藍は緊張する。
だが橙はうっすらと目を開けるも、視線を緩慢に漂わせる。どうやらほとんど覚醒してないらしい。
橙は寝ぼけ眼で見まわすと、藍の腕に気が付いた。
それでもそもそと体を回転させ、藍とくっ付きあった状態で正面に向き合う。
トロンとした瞳に藍の顔が映し出されると、橙はふにゃりと笑った。
「えへへ……らんしゃま……」
そう耳が蕩けそうな甘えた声で、橙は藍に抱きつき、胸元に唇を寄せる。
そのまま力尽きたのか、橙はまた目を閉じて吐息を藍の寝間着に染み込ませる。
もう、藍は限界だった。
いつもきりりと締まった凛々しい顔はだらしなく相好が崩れ、自分の意思でも元に戻せない。
あったかいし、柔らかいし、もうこのまま死んでもいいと本気で想起した。
すると藍は、背中に橙と感触が違うが柔らかな温もりを感じた。
「うふふ。私も混ぜて」
「紫様! い、いけません……橙が傍に」
「こんなにぐっすり寝ているんだから、大丈夫」
「い、いえ。橙は敏感で、その」
「御託はいいの。私が寝たいから寝るのよ。いい?」
「……ご随意に」
わたわたと慌てた藍だったが、紫の願いとならば断われるはずもない。
遠慮がちに横へずれて紫用の空間を作ったが、紫はそんな気遣いも無視して藍の背中へぎゅっと自らの上半身を押し付ける。
「ゆ、紫様」
「おぉ~、あったかい。思ったよりいいわぁ」
「……恐縮です」
紫はまるで子に肩もみをして貰った親の様にのんびりとした感想を述べる。
一方の藍は、緊張とはまた違う感情に鼓動の高鳴りを感じ取っていた。
自分が最も敬愛し、憧れを抱き、そしてもっと親密な関係になりたいと願っていた相手が、振り返れば手も顔も届く場所にいる。
しかし、いざその態勢になってみるとどうしていいかわからず、ただ目の前の橙の温もりに集中していた。
傾国の美女とまで謳われた九尾の狐が、紫の前では一人の少女に戻ってしまう。
そんな式のいじらしい反応に心をくすぐられたのか、紫は素直に思っていることを口に出す。
「藍……寂しい思いをさせちゃうわね」
「紫様……」
「口ではこう言っているけど、橙に言われるまで貴女が冬にどれだけ辛い思いをしているか、想像もしなかった。
どうやってお詫びすればいいのかしら」
「そんな……もったいないお言葉です」
紫は全身でぎゅっと藍を抱き寄せて、申し訳なさそうに呟く。
だが藍は、その思いやりの言葉だけで胸がいっぱいになる。
「でもね、藍。私はこれだけは誓える。
決して、決して藍を一人にしない。たとえ最期の時が来ても、私が藍より一分一秒でも長く傍にいてあげる。
もちろん、冬眠中に黙って藍の声も手も届かない場所にいったりしない。
八雲の名に懸けて、これを誓おう」
「……はい。ありがとうございます」
「それに藍には、真摯に藍のことを案じてくれる頼もしい式がついている。
藍の家族は私一人だけじゃない。それを忘れちゃ駄目よ。ね?」
「……はい」
背後から優しく包み込む声と、耳の間を慈しむようにくしゃりと撫でてくれる手。
藍は目じりに光る物を溜めながら、息が詰まりそうな程の幸福を感じていた。
こんなに幸せでいいのだろうか。藍は感情の振れ幅が大き過ぎて、逆に否定的なことを考えてしまう。
だが、布団に満ちる3人分の温もりが、その嬉しい感情を肯定してくれた。
ひとしきり感動すれば、次にやって来るのは安らかな心の平穏である。
藍は子供の様に瞼がしょぼしょぼと半開きのまま微振動する。
眠いけど、起きていたい。眠ることで、この状況を手放したくない。
そんな矛盾をありありと表現していた。
紫はそんな藍の耳元で、魔法の言葉をささやく。
「もう寝なさい。藍が寝るまで……ううん、寝た後もこうしていてあげるから」
紫の母性がにじみ出る声音に、藍はことりと意識を手放す。
藍の胸元にはすやすやといとけない寝顔で眠る橙。背後には微笑んで明りを落とし、自らも眠りに就く紫。
そして当の藍は、限りなく満足そうな表情で間に挟まれて、ふさふさの尻尾で両側の2人を癒していた。
藍にとって、今まで生きてきた中で一番温かかった一日は、こうして更けていく。
そしてその夜、幻想郷に雪がしんしんと降った。明日も冷え込みそうだ。
でも藍は大丈夫。なにより温かい、八雲家の絆で繋がっているから。
【終】
真冬になると、手先足先を揉んでばかりいる。
炊事、洗濯、洗顔や手洗いなど水に触れる行為は、覚悟を決めて沈痛な面持ちで臨んでいる。
モコモコの綿入りドテラは必須アイテム。ストーブからできるだけ離れたくない。
無論、夜は靴下を2枚履いて就寝する。
寒さ厳しけれど、さりとてなかなか文明の利器に頼れぬ幻想郷。
皆寒いのだから我慢しろと言うのは簡単だが、縮み上がるように背中を丸めて仕事に行く藍の姿を、橙は見ていられなかった。
そして今ここに、主人の冷えを解消しようと、一匹の黒猫又が立ち上がった。
――◇――
「紫様。紫様は寒くて仕方がない時、どうしますか?」
「んー……冬が終わるまでコタツから出ない」
「そ、それはダメですよぅ」
そう眠い目をこすりつつ答える紫に、橙は汗を一筋垂らす。
藍を暖めたいと意気込んだはいいが、橙は具体的にどうすればいいか分からなかった。
そこでコタツでうつらうつらしていた紫に聞いてみたのだが、結果はご覧の体たらくである。
ある意味正解だが、橙がイメージする解決策には程遠い。
橙はそこの所をなんとか説明する。
「ふーん……要するに、忙しい日常生活でもできるちょっとした改善で、藍が少しでも暖かに過ごしやすくしてあげたい、ってこと?」
「そう! それです!」
さすがに腐っても鯛、半眠りでも賢者。橙の想いを的確に要約する。
そうまとめてみて、紫もハタと考える。
「……そういえばこの季節、私はいつもぬくい場所で寝てばかり。
寒さに悩む、なんて感情もすっかり忘れていたわ。
藍が冷え症なのを聞いてなお放っておくのは、文字通り冷たい態度よねぇ……」
コタツの天板に顎を乗せてしんみりと呟く紫。橙もこれに追随する。
「ですから紫様、何かよい考えはないでしょうか?」
「うーん……ん!」
紫はしばらく薄目で考えて、唐突にひらめいた。
上体をがばっと起こし、完全に開いた目はイタズラっ子のように無邪気に輝く。
今の口元を擬音で表すなら、にししし、が最適であろう。
「橙。私にいい考えがあります。でもそれを実行するには、橙の協力が必要なの」
「勿論! なんでもお手伝いします」
「よろしい。まずはたくさんの紙と筆が必要ね。それから台所に行って――」
紫がテキパキと指示を出し、橙は頷いてくるくると働く。
今日は結界の点検日。
藍は夕方まで戻ってこない上、たっぷり冷気にさらされて帰宅する。
それまでに全ての準備を完了させることに意味がある。
紫はこれから起こる事を目の当たりにした藍の顔を想像して、ついついほくそ笑む。
こうして、親切という名のプチ悪巧みは、夕刻までに全ての工程を終えたのだった。
――◇――
「ただいま戻りました」
藍はそう言って、手を合掌する様に擦り合わせながら玄関をくぐった。
マフラーに手袋、外套を着こんでも、手足の末端が氷水に浸かる様にビリビリとした冷えが襲う。
藍は両手を器状にして「はーっ」と白い息を吹きかけると、靴を脱いでほぼ外の気温と変わらない上がり口から室内に脱出した。
防寒着を脱ぎ、藍は台所へ向かう。
今日は昼間に橙が遊びに来ていたみたいだが、家が静かだからマヨヒガに帰ったのだろう。なら、夕食は二人分でいいか。
そんな見積もりを立てて台所に入ったとき、藍は違和感を覚えた。
いつもなら、北向きで暖気が全く届かぬ寒々とした部屋のはずなのだが、今日はなぜかほんのり暖かい。
その理由は、火が入れてあるかまどにあった。
そこには、とろ火でコトコトと沸いている手鍋。
藍が訝しみながら蓋を開けると、中から胸がすく様な独特の香りと湯気が立ち上った。
「これは……生姜?」
どうやら生姜を鍋で煮込んだものらしい。
ここにきて、藍はそばの調理台に置かれたメモに気が付いた。
藍はそれを取り上げて読んでみる。
『しょうが湯をお作りしました。このハチミツをたっぷり入れて召し上がってください』
この字は橙のものだ。藍は読みながら、このメモの重石であった蜂蜜の瓶を眺める。
「そっか。橙がこれを」
きっと橙は、今朝「うぅぅ、さむさむっ」と言いながら出かける自分のことを気にかけていたのだろう。
橙がつたない手つきで生姜をおろす姿を想起して、藍は顔を綻ばせた。
藍は棚から自分の湯飲みを取り出すと、鍋から生姜湯をお玉ですくい入れる。
蜂蜜もメモのお達し通り多めに入れて、ずずずと頂く。
「おお。甘くて意外と美味しいな」
藍はほっと息をついて、そう感想を呟く。生姜湯は舌触りや辛味が苦手で敬遠していたのだが、これなら飲みやすい。
すると、体がぽかぽかと内側から温まってくるのを感じた。
生姜の発熱作用が効いてきたらしい。藍は身を以て、先人の知恵に驚く。
この冬は、橙の作り方でいつも飲んでいよう。そう藍は思った。
「橙、ありがとう。今度、飴湯をご馳走してあげような」
藍はホクホクした表情で橙に礼を言うと、鼻歌交じりで機嫌よく夕飯の支度を始めた。
所用で裏手の勝手口に来た藍は、戸の前の床に置いてあった物体をしゃがんでまじまじと観察していた。
そこにあったのは、草履の形をした布板の上に、同素材の布でカマクラの様な覆いをつけたもの。
藍は使ったことがないが、知ってはいる。スリッパという室内履きだ。
しかし、このスリッパはモコモコと起毛した山吹色の布地でできており、まるで新種の動物が二匹お座りしているみたいだ。
観察眼が鋭い藍は、スリッパの裏にまたメモを発見した。
藍はそれに目を通す。
『足がいつでもあたたかい様に工夫しました。使ってみてください』
これも橙の字だ。藍はメモを畳むと、大事そうに割烹着のポケットへ仕舞う。
そして、スリッパへ足を入れてみる。
ふさふさした毛並の感触に戸惑いがあったが、すぐに慣れた。
心なしかウキウキした面持ちで二、三歩あるいてみる。
「ははぁ。これはいい」
今まで靴下のみで冷たい床板と接していただけに、この心地よさは堪らない。
また実際に使用することで、橙の工夫も分かった。
つま先に何かが当たるので、藍はそれを取り出してみた。
それは端切れを縫い合わせた小袋で、中には小さな唐辛子が入っている。
唐辛子の辛味成分には血行を促進させる効果があり、この様な使い方でも充分効力を発揮する。
血行がよくなれば、足元にも熱が集まる。
理論は単純だが、藍は縫い目が笑いまくっている小袋が、とても愛おしいものに感じられた。
スリッパ自体は既製品だろうが、小袋を一生懸命縫い合わせたに違いない。
藍は、このスリッパをずっと愛用しようと心に決めた。
夕飯が出来上がった。今日は鍋物だ。
藍はしっかりとスリッパを履いて、台所から食事をする部屋の机に生の材料を入れた鍋を運ぶ。
あとは卓上のミニ七輪でグツグツ煮れば食べられる寸法だ。
机に予備の具材と取り皿を並べていると、机上にメモが一枚乗せられていた。
『今日のお風呂は特別なお風呂です。ぜひ入ってみてください
私の夕飯は後でも構わないから、先にお風呂入っていていいわよ』
橙の字の隣には、紫の流麗な文章が添えてある。
なるほど。どうやら橙に紫が協力しているらしい。
(この回りくどいけど、人をドキドキさせながら上手く誘導する感じ……紫様らしい手口だ)
藍は紫に踊らされていることに気づいたが、その状況と相反して、藍はいそいそと湯浴みの準備を整えるために部屋を出た。
「ふわぁ~、いい香り」
服を脱いで浴室に入った藍の第一声は、浴室中に広まる爽やかな南国風の甘酸っぱい芳香に対する感嘆であった。
風呂の蓋を開けると、中に閉じ込められた柑橘系の香りが湯気と共に立ち上り、藍の鼻を楽しませる。
「柚子湯なんて久しぶりね」
藍は感慨深げに呟きながら、湯船に浮かぶ完熟した黄色い柚子を指で突いて、伝統的な風習に思いを馳せた。
江戸時代頃より、日本では冬至に柚子を浮かべた湯船に入浴する習慣がある。
実は冬至の日でなくとも、大寒の季節に柚子湯に入るメリットがある。
柚子湯にも唐辛子と同じで血行促進効果があり、冷え性や神経痛、腰痛などを和らげる効果があるとされている。
『柚子湯に入れば風邪を引かない』なんて言われるくらいだ。
藍はかけ湯をして、ゆっくりと湯船につかる。
「うぅ~、あぁあぁ~」
一日で溜まった疲れと冷気を溶かす魔法のため息を吐いて、藍は肩まで湯に浸る。
藍にとって冬の楽しみの一つが、毎日のお風呂である。
直接的に体が温まるだけでなく、長風呂をしてコリをほぐしたり、ぬるめの温度で心を癒したりと十二分に風呂を堪能する。
今夜のお風呂は、まさに実用性と季節風土の美を兼ね備えた素晴らしい一品である。
藍は時間も忘れて、甘い香りが体に移るまで存分に柚子湯を楽しんだ。
「……はー、ちょっとのぼせ気味かも」
寝間着に着替えた藍は、桜色に火照った頬や胸元を外気で冷ましながら食事部屋に戻ってきた。
普段は恨めしい冷気も、今日は逆に心地いい。
そんな贅沢な感覚を味わいつつ、藍は襖を開ける。
「はぁい。ご機嫌かしら、藍」
食材と食器が並んだちゃぶ台の向こう、いつもの指定席に紫が優艶な笑みを浮かべながら頬杖を突いていた。
藍はまだ暑さが残る口元をゆるめて、自分も席に着く。
「ええ。こんなにぽかぽかした夜は初めてです。紫様と橙には、改めて感謝しないといけませんね」
「んふふ、いいのよ」
藍が素直に謝辞を述べると、紫は意味深な含み笑いでそれを受け止めた。
すると藍は、すでに七輪で火にかけられた鍋の様子を確認しながら、残念そうに呟く。
「本当なら橙にも直接お礼を言いたかったのに、何で帰っちゃったのかなぁ?」
「……何でも大事な用事があるからって、私にメモとセッティングを任せてそのまま、ね」
「そうですか」
藍はなおも寂しそうな顔をしていたが、後日改めてお礼をしようと思った。
今は紫との食事を楽しむことに意識を向ける。
しばらくして、鍋がグツグツと煮えてきた。藍は蓋を開ける。
すると優しくてほんのり甘い香りが湯気に乗って、部屋の中に充満し、紫の鼻をくすぐる。
「うーん、いい匂い。今夜は豆乳鍋ね」
「ええ。いつも油揚げを買う豆腐屋さんから、おまけで豆乳をいただきましたから」
そう言って藍は、紫の取り皿に白く煮えた豚肉と白菜、水菜や豆腐をよそう。
冬の料理の定番といえば、やはり鍋物であろう。
特に今夜の鍋は豆乳と出汁をベースに豚肉と野菜、豆腐、油揚げ、きのこ等を入れた、乳白色が目と胃に優しい鍋である。
「豆乳にはビタミンを始め栄養がたっぷりです。
高血圧や更年期障害、ボケ防止にはぴったりですし、骨や歯も丈夫にしてくれるんですよ」
「……それどーゆー意味?」
「ああ! えと……そ、それに豆乳には大量に大豆イソフラボンが入っています。
女性ホルモンに似た構造で強い抗酸化力を発揮する、いわば若返り促進の栄養なんです。
体はぽっかぽか、お肌はツルッツルです」
「あらぁ、じゃあ今日はたくさんいただくわね」
失言に焦った藍のフォロー豆知識にコロッと機嫌が良くなった紫は、藍から取り皿を受け取ると、まずは半透明に透き通った白菜に箸をのばす。
ふーふーと息を吹きかけ、湯気と熱気を飛ばす。そして一口。
「はふ、はふ。うん、豆乳の自然な甘みと白菜のほのかな甘みが舌の上で抱き合っているわ」
「素敵な表現、ありがとうございます」
「どれ、豚肉~、むぐむぐ……くぅ、うま味満点。水菜もしゃっきしゃき。
お豆腐……ふー、あちあち……あぁ、あったまるわぁ。豆乳との親和性がピカ一ね」
紫は心底から湧き上がる感想を述べながら、はふほふと息を弾ませて鍋をつつく。
そんな紫の様子を、藍はこの上なく幸福そうな笑みを浮かべて眺めていた。
「……なぁに、何か顔に付いている?」
「いえ。紫様は私の作るご飯を美味しい美味しいとお食べになるので、とても作り甲斐があります。
そして紫様の食べるお姿を見るのが、私は毎日楽しみなんですよ」
「……ふふ。私も、あなたのご飯が一番。でも、食べてる姿が楽しみなのはこちらも同じ。
ささ、あなたもいただきましょう。鍋が煮え過ぎちゃうわ」
「はい。いただきます」
紫も照れたように頬を緩めて、藍と食事を再開する。
今日の紫は宣言通り、よく食べた。普段より多くの具材を追い投入し、ご飯もおかわりしてぺろりと平らげる。
そんなにお腹が空いていたのかと藍は少し訝しんだが、それでも藍は紫との食事を真剣に、かつわずかな一時を味わうようにゆっくり進行する。
紫が冬眠するまであと何週もない。
毎年の事だが、その季節が近づくたびに、藍の心には冷たい隙間風が吹く。
外気温だけでなく、内面からも寒さが沁みるこの季節がイヤだった。
しかし、だからこそ藍は紫が冬眠に入る直前の期間、特に一緒にいることを心掛けた。
仕事以外は八雲邸で過ごし、夕飯は必ず紫と摂る。
紫と過ごしている期間は、心が温かかい。そして、藍はその温かさをため込んで、懐炉の様に心中で揉み解して冬を乗り切る。
毎年恒例の己を我慢させる術。しかし、今年は違った。
橙と紫が厳寒でも暖かに過ごす工夫を教えてくれた。これで心の温かさをあまり消費しないで済む。
その分、春まで胸のぬくもりを、飴玉を転がす様にゆったりと堪能できる。
寂しいと言えば寂しいが、今年はもっと過ごしやすいだろう。
藍は具の油揚げに染みた豆乳をちゅうちゅう吸いながら、紫成分を今日も目一杯補給した。
さて、食事も終わり二人は手を合わせた。
鍋と食器を七輪の余熱で温めたぬるま湯で洗い、片づける。
すると今日の仕事はもうない。後は寝るだけだ。
藍も近日にない程ぽかぽかの状態でここまで過ごしたため、心地よいまどろみが頭をふわふわと浮き上がらせた。
「それでは紫様、今日はもう休ませていただきます」
「おっとと、その前に重大なことが」
紫が人差し指を立てながら紡いだ言葉に、藍は首を傾げる。
「はい、最後のメモ。これがメインイベントよ」
紫から手渡されたのは、日中によく見た件のメモだ。
中身はきっと寝るときの寒さ対策が書いてあるのだろう。藍はわくわくしながらメモを開けた。
『湯たんぽが入っています。あったまってください』
橙の筆跡だ。この寒さの夜、湯たんぽは非常にありがたい。
だが、その一文を見た藍の反応は何故か鈍い。
「……あのう。湯たんぽだけ、ですか」
「そうだけど」
紫はふふふといつもの優艶で何を考えているか悟らせない微笑で肯定する。
藍はその意識があるのかないのか、拍子抜けしたように呟く。
「湯たんぽはここのところ毎日使っているから、さしたる感慨はないなぁ……」
実は、藍はストーブを出す前の日くらいから湯たんぽを使っていた。
というより、毎冬の必需品であり愛用品である。
勿論気持ちはありがたいのだが、正直昼間の様な驚きと感動に乏しかった。
しかし、紫は気にせず続ける。
「まぁまぁ、まずは寝室に行ってごらんなさい。きっと驚くわよ」
「?」
藍は紫が楽しそうに促すので、絶対何か企んでいると感づいた。
しかしここまで来ると、最後まで乗せられてみようという気になっている。
藍はどんなサプライズが待っているのかを想像しながら、尻尾をはためかせて寝室に向かった。
――◇――
「うぅ、寒かっ……た」
さすがに板張りで縁側に面している廊下は、外と同じぐらいの寒さだった。
先ほどまで忘れていたが、今の季節は寒さが厳しい冬なのだ。
こういう時藍はいつも、湯たんぽでぬくもりを供給した布団に素早く潜り込み、頭も出さない完全防備で翌朝まで頑張る。
しかし、今日の布団は一味違った。
夕飯前に敷いておき、その時湯たんぽを入れておいたため、布団にぽっこりとふくらみができていた。
そのふくらみが、大きくなっている。
具体的には、人間の子供が中でうずくまっている様な大きさだ。そのふくらみの中央が、呼吸している様に小さく上下していた。
藍は、その聡明な頭脳で布団の中身を推察する。
そしてその推論をいままでの状況から鑑みてほぼ確定的と判断し、同時に口元をにへら、とだらしなく弛緩させる。
(なぁんだ。今までの不自然な状況説明はブラフ。全てこの展開に持って行くためだったんだ)
藍は高揚していく胸の鼓動を感じながら、そう結論した。
(今日はいい日だ。本当にいい日だ。今朝は寒かったけど、午後はずっと暖かかったし夜はこうして……ふふふぐへへ)
後半はやや語弊のある笑い方だったが、純粋に藍は嬉しかった。
そしてひっそりと静まり返る寝室に入ると布団に近づき、おもむろに掛布団へ手をかける。
そして、落ち着くために一呼吸し、藍はこう叫んだ。
「待たせたねちぇぇぇぇぇん! 一緒に寝よう!」
「……はぁい、ご機嫌ね。でも残念賞」
藍が勢いよく剥いだ布団にスキマを開いて腰を突っ込み、体格の違いを誤魔化す様にしとけなく横たわっていたのは、さっきまで鍋をもりもり食べていた寝間着姿の紫だった。
時は一瞬止まり、硬い表情の藍は一言。
「チェン……ジ」
「それ以上失礼なこといったら、私泣いちゃうからね」
紫はくすん、と可愛くわざとらしい泣きまねをするが、藍のテンションは駄々下がりだった。
「……紫様、これはどういった趣向なのですか」
「藍の雄叫び通り、本当は橙がここに寝ていて、藍を驚かせる予定でした。
でも待機時間が長かったのでしょうね。ほらこの通り」
紫がイタズラを失敗した子供の様に小さくため息をついて、紫の背後、つまり藍から見て布団の奥側に寝返りを打って視線で指し示す。
そこには、魚柄のふんわりとしたパジャマを着た橙がすぅすぅと小さな寝息を立てていた。
三角形の耳は呼吸に合わせてゆらりと上下し、何かを食べる夢でも見ているのか、時折口をもごもごと動かしている。
これには藍も毒気が抜けて、あらあらと母親の様な苦笑を漏らす。
「ということは、橙は日中からずっとこの家に?」
「ええ。午後は猫の特性を活かしてあっちこっちに隠れて、藍がお風呂の間にこの状態へスタンバイしていたの。
メモを残して姿を見せなければ、藍は橙が帰ったと思う。
そこを突いてサプライズさせようと思っていたんだけど、あなた勘がするどいから、企画者側としては面白みに欠けるわぁ」
これには藍もバツが悪くなる。むしろ紫が寝ていたことの方が逆にドッキリとなってしまった。
「でも私も見込みを誤ったわ。晩御飯を食べて布団に横になっていたら、そりゃあ眠くなるわよねぇ」
「晩御飯?」
「空腹で待機させるのもかわいそうだから、口の中とここをスキマでつないで、私が食べるふりをした豆乳鍋を橙にあーんって」
「お、おぅ……」
藍は今日の紫の大食いについて納得したが、何とも言えない気分になってつい愛想笑いを繰り出す。
いくら仕込みをバラしたくないからとはいえ、随分器用なことを自然にやってのけたものだ。
それはともかくとして、紫は本来の目的に話を戻した。
「まぁイメージとはちょっと違うけど、一緒に寝てあげなさい。温いわよ~、橙を抱っこして寝るのは」
「ははは、言われるまでも無く」
紫が布団の外に這い出し、代わりに藍が橙を起こさないようそっと布団に入る。
そしてゆっくり、ゆっくりと橙の横向きになった体の下に腕を差し入れ、橙を背中から抱きかかえる形になってややくの字に体を密着させる。
紫は、二人が寒くない様に掛け布団を掛けてやった。
はたして布団の中は、橙の体温で人肌に温もりがキープされていた。
橙は元々猫の妖獣であるため、常日頃から体温が高い。それゆえ、湯たんぽの代わりになってあり余る程の熱量を与えてくれる。
さらに熟睡している橙の体は、いつにも増して体温が高く感じられる。
藍は熱の塊の様な橙を抱きすくめ、同時に橙にも自分の体温を分け与えんと身じろぎ一つせずこの状況を堪能する。
そう、まさに極楽浄土の心地を藍は噛みしめていた。
普通の湯たんぽでは得られない適度な温もり。
密やかな呼吸の音とその微妙な振動。ふわふわと愛嬌のあるくせっ毛と藍が贈った飾りをつけた耳。
小さくていつも守りたくなるけど、成長が楽しみな肢体。
愛しい、愛しい。全てが可愛くて、温かさが気持ちよくて、自分の為に色々してくれたことが嬉しくて。
ほとんど無意識に、藍は自分の鼻先を橙の後頭部にすりすりとこすり付ける。
敏感な鼻で相手と触れ合う。これは、動物ならではの愛情表現だ。
「……んぅ」
ふと、橙が微かに息を乱して唸る。
起こしてしまったか、と藍は緊張する。
だが橙はうっすらと目を開けるも、視線を緩慢に漂わせる。どうやらほとんど覚醒してないらしい。
橙は寝ぼけ眼で見まわすと、藍の腕に気が付いた。
それでもそもそと体を回転させ、藍とくっ付きあった状態で正面に向き合う。
トロンとした瞳に藍の顔が映し出されると、橙はふにゃりと笑った。
「えへへ……らんしゃま……」
そう耳が蕩けそうな甘えた声で、橙は藍に抱きつき、胸元に唇を寄せる。
そのまま力尽きたのか、橙はまた目を閉じて吐息を藍の寝間着に染み込ませる。
もう、藍は限界だった。
いつもきりりと締まった凛々しい顔はだらしなく相好が崩れ、自分の意思でも元に戻せない。
あったかいし、柔らかいし、もうこのまま死んでもいいと本気で想起した。
すると藍は、背中に橙と感触が違うが柔らかな温もりを感じた。
「うふふ。私も混ぜて」
「紫様! い、いけません……橙が傍に」
「こんなにぐっすり寝ているんだから、大丈夫」
「い、いえ。橙は敏感で、その」
「御託はいいの。私が寝たいから寝るのよ。いい?」
「……ご随意に」
わたわたと慌てた藍だったが、紫の願いとならば断われるはずもない。
遠慮がちに横へずれて紫用の空間を作ったが、紫はそんな気遣いも無視して藍の背中へぎゅっと自らの上半身を押し付ける。
「ゆ、紫様」
「おぉ~、あったかい。思ったよりいいわぁ」
「……恐縮です」
紫はまるで子に肩もみをして貰った親の様にのんびりとした感想を述べる。
一方の藍は、緊張とはまた違う感情に鼓動の高鳴りを感じ取っていた。
自分が最も敬愛し、憧れを抱き、そしてもっと親密な関係になりたいと願っていた相手が、振り返れば手も顔も届く場所にいる。
しかし、いざその態勢になってみるとどうしていいかわからず、ただ目の前の橙の温もりに集中していた。
傾国の美女とまで謳われた九尾の狐が、紫の前では一人の少女に戻ってしまう。
そんな式のいじらしい反応に心をくすぐられたのか、紫は素直に思っていることを口に出す。
「藍……寂しい思いをさせちゃうわね」
「紫様……」
「口ではこう言っているけど、橙に言われるまで貴女が冬にどれだけ辛い思いをしているか、想像もしなかった。
どうやってお詫びすればいいのかしら」
「そんな……もったいないお言葉です」
紫は全身でぎゅっと藍を抱き寄せて、申し訳なさそうに呟く。
だが藍は、その思いやりの言葉だけで胸がいっぱいになる。
「でもね、藍。私はこれだけは誓える。
決して、決して藍を一人にしない。たとえ最期の時が来ても、私が藍より一分一秒でも長く傍にいてあげる。
もちろん、冬眠中に黙って藍の声も手も届かない場所にいったりしない。
八雲の名に懸けて、これを誓おう」
「……はい。ありがとうございます」
「それに藍には、真摯に藍のことを案じてくれる頼もしい式がついている。
藍の家族は私一人だけじゃない。それを忘れちゃ駄目よ。ね?」
「……はい」
背後から優しく包み込む声と、耳の間を慈しむようにくしゃりと撫でてくれる手。
藍は目じりに光る物を溜めながら、息が詰まりそうな程の幸福を感じていた。
こんなに幸せでいいのだろうか。藍は感情の振れ幅が大き過ぎて、逆に否定的なことを考えてしまう。
だが、布団に満ちる3人分の温もりが、その嬉しい感情を肯定してくれた。
ひとしきり感動すれば、次にやって来るのは安らかな心の平穏である。
藍は子供の様に瞼がしょぼしょぼと半開きのまま微振動する。
眠いけど、起きていたい。眠ることで、この状況を手放したくない。
そんな矛盾をありありと表現していた。
紫はそんな藍の耳元で、魔法の言葉をささやく。
「もう寝なさい。藍が寝るまで……ううん、寝た後もこうしていてあげるから」
紫の母性がにじみ出る声音に、藍はことりと意識を手放す。
藍の胸元にはすやすやといとけない寝顔で眠る橙。背後には微笑んで明りを落とし、自らも眠りに就く紫。
そして当の藍は、限りなく満足そうな表情で間に挟まれて、ふさふさの尻尾で両側の2人を癒していた。
藍にとって、今まで生きてきた中で一番温かかった一日は、こうして更けていく。
そしてその夜、幻想郷に雪がしんしんと降った。明日も冷え込みそうだ。
でも藍は大丈夫。なにより温かい、八雲家の絆で繋がっているから。
【終】
一家のあたたかみ、ちぇんのひたむきさが伝わってきて 真冬ながらとても暖かい気持ちになりました。
ありがとうございます
作中にあった豆知識も面白く、文章も丁寧で読みやすかったです。
…博麗神社の文化進み過ぎワラタ
皆、霊夢のとこにお泊まりすればいいんじゃないかな……ww
それはそれとして。
八雲家がこうなのに、霊夢の所の技術力は一体何事!?
とりあえず寒さが厳しそうな魔理沙を放り込んでおきましょう
神社ェ……
それと霧雨さん家の暖房に床暖房を忘れてますよ-。
温泉脈を地下に召還して暖房にしてた筈。
ほのぼのした八雲家ssが私の動力になります
この寒い時に心があったまりました
藍さまスリッパ使ってなかったのか...そしてちぇん抱き枕に優しいゆかりん...その二人を大好きな藍さま
ご馳走様でした。次回作も期待させて頂きます
引越し先が寒くて一生懸命寒さ対策グッズを用意したのを思い出します。
橙の健気さに惚れました
ところで、タイトルの「湯湯婆」を某湯屋の経営者と勘違いしたまま読み進めていたのは私だけじゃないはず……
橙の湯たんぽが欲しいんですが、どこで売ってますか?
こちらこそどういたしまして。八雲一家はこうであるのがいいなぁ、と思って書きました。
橙の一生懸命さも、心が暖かくなります。
6番様
作中の内容はどれも効果的です。是非お試しあれ。
博麗神社の暖房は、神降ろしで動力の供給が容易い霊夢さんだから可能かな~、と。
7番様
ありがとうございます。寒い日が続きますから、是非温まっちゃってください。
神社にお泊り……名案だ!
8番様
もっふもふでっせ!
博麗神社はおそらく、ゆかりんの技術仕送り+電気の神降ろしによる動力安定供給でこんなことになっているかなと(汗)
だから魔理沙はよく神社に入りびたっているのかもしれません。
10番様
ありがとうございます。ほっかほかです。
11番様
ありがとうございます。ぽっかぽかですよ。
奇声を発する程度の能力様
ええ、八雲一家はええどすなぁ。
21番様
私も八雲家ほのぼのが大好きです。
それからご指摘ありがとうございます。あとがきに追加しました。
23番様
ありがとうございます。
26番様
そうですかやってますかきいぃ~! うらやましい!
一度でいいから体験してみたいですねぇ……
27番様
ハッピーエンドが好きなんです。それからゆかりんは身内には白いと思います(力説)
28番様
こちらこそ熱烈なご感想、誠にありがとうございます。
寒い夜にどれだけ物語で温まれるかをコンセプトにしていたため、そこのところを評価していただき嬉しいです。
次回も是非、ご感想をいただけると幸せです。
url様
寒さは本当にツライですよね。ですので、このように工夫をして乗り切ってください。
33番様
なにせ紫様という後ろ盾がいらっしゃいますから、技術的にはこちら側と大差ないかと(汗)
35番様
暖かい人や物には、心がグラッとしちゃいますねぇ。
タイトルの件は……すみません、狙っていました。結構な人間が同じ勘違いをしたのかな(苦笑)
36番様
寒さ厳しい昨今、存分に癒されちゃってください。
37番様
ありがとうございます。お風呂のぬくもりはいいものですね。
40番様
今日も八雲家は温かい想いで繋がっているのさ。
橙の湯たんぽ……私も欲しいいぃぃ!
寒いけど風邪ひくなよ!(カトちゃん風) がま口でした。
ご感想、ありがとうございます。寒さが続く折、温まっていただけたら幸いです。
ちぇぇぇぇぇん!
ありがとうございます! らんしゃまぁぁぁ!
冬は本当に布団と結婚したいって感じです!しかし紫様そんな風に橙に食べさせて本当においしいのかな~??
ご感想ありがとうございます。
私のように寒冷地に住んでいるとお風呂は生きる知恵となり、布団との結婚は毎年冬になると真剣に考える議題です。
だからこそ、わずかなぬくもりがさらに増幅されて幸せに直結されます。
スキマ食べは……遠隔二人羽織みたいなものだから、あまり美味しくないかもしれませんね(笑)
読んでいてポカポカした気分になりました。
幸せになれるSSは良いですね!
ご感想ありがとうございます。
このSSを読んでいただき、寒い季節が少しでも温かくなればこれ幸いです。
そこには触れちゃいけません(震)
非電源の幻想郷でできる寒さ対策を集めてみました。そうすると、自然とおばあちゃんチックな内容ばっかりに……
知恵袋は偉大です。
70番様
ご感想ありがとうございます。
紫様が何かしでかすことを予想されていた方が結構多いのですが、紫様は本来優しい妖怪だと思うのですよ(キッパリ)
特に藍様相手にはほっこりだといいな、と思って書きました。