・この作品は『かみさまっ!! ~博麗の巫女編~』の続編です。始めにそちらをご覧になってから読まれる事を推奨します。
前回の復習のあらすじ……博麗無双!
* * *
―――……節々が悲鳴を上げていた。
自分の今の状況が理解できない。
ベッドの上。包帯だらけ。所々にチューブが刺さっている。身近なテーブルには綺麗な花々と果物。
「此処は……病室?」
永遠亭か。とりあえず、身体を起こそう。
「痛っ」
無理だった。
「起きたのね」
「……永琳」
部屋に白衣を羽織った医師が入ってきた。
「六日経ったわ」
「あらら……」
なんと、そんなに寝ていたのか。
「さて。何から聞きたい?」
「任せる」
頭が回らない。任せるしか無かろう。
永琳は待っててと告げ、一度部屋から出て行く。少ししてから、数枚の紙を持ってベッドに腰掛けた。
「まず、貴女の身体状況から」
「ん」
「肋五本骨折。頭蓋にヒビ。全般筋肉断裂。諸内臓破裂。その他諸々……」
大分、無茶したものだ。
「それから夢想天生と神降ろしの二重掛けにより、霊力回路30%カット。霊力枯渇……莫迦ね」
「あはは……」
苦笑。
「ま、今に始まったモノでは無いモノね。貴女の莫迦は」
「五月蠅い……で」
気を失った後の事が知りたい。
「貴女が倒れた後、諏訪子はまだ動いたわ」
「っ!?」
「落ち着きなさい。管が外れるわ。
……動いたと言っても、彼女も既に満身創痍。何ができる状態でも無かった」
「でしょうね」
ボロボロになるまで、やらせて貰ったのだ。勝てなくとも、せめてそのぐらいになって貰わなくては困る。
しかし、『動けた』ということは何をしようとしたのだ。
「執念だったわね」
「執念?」
「あの後、諏訪子は……」
永琳はあの時の状況を語り出した。
* * *
―――……諏訪子は立ち上がった。
目の前には博麗が倒れ、早苗が泣き縋っている。
『っ! 諏訪子様!!』
「ああ。早、苗」
霊体、いや神体の早苗が諏訪子に気付く。
『何を!』
「……アイツの、とこに行かなくちゃ、ならん」
『もう止めて!! 無意味です!!』
「意味なら有るさ。元々私の我侭で始めた事。気が済むまで……やらせて貰う」
諏訪子は歩を進める。
倒れる。
しかし、止まらない。両手を使って這う。
『諏訪子様ッ!!』
「早苗……ごめんね。もうすぐ、終わるから」
『なんで……』
「井の中の、蛙はわね……海を知らないんだ。知ろうとも、しなかった」
地を這う。
「でもね……ある莫迦が、いたの。そいつはね、海を、外を求めるぐらい純粋で、綺麗で、眩しかった……」
『諏訪子、様』
「アイツ、何やってるかな。私の事、怒るかなぁ……」
『う、ああぁ……』
止まらない。
「早苗、いる?」
『諏訪子様、目が!?』
「私ドウナルカ分かんないか、ら……伝え、とく。
真理は、近くにあるわ。天人を……あの名居の娘を、つけなさい。天界に、答えが、いた……」
『何、を』
「ああ、畜生。前が見えねえ……でも、アイツの居場所は、嫌でもわからぁ」
神奈子の下へ……
「その必要は無いですわ」
顔を上げる。
声の先には八雲と月の姫、藤原、因幡、森近……そして三柱がいた。
「ボロボロね。土着神」
紫が見下したように告げる。仕方ない。コレが敗者の末路だ。
「八雲……くっ」
「お縄に、つきなさい」
「諏訪子……」
神奈子が諏訪子を見る。何か、こう……『憐れんだ』眼で。
(貴様が……貴様がァ!!)
最後の力。両手の力だけで跳ぶ。右手を握る。血が出るほど握る。神奈子目掛け―――
「莫迦女郎オオォ!!」
―――瞬間、止まる。輝夜が時間を伸ばし、諏訪子の暴行を止めた。
「じゃ――――マ――――する――――な――――ッ!」
「往生際が悪いわ」
宙に『停』まった諏訪子の身体に『蔦』が纏わる建見名方。加え、大国主が諏訪子に覇気(プレッシャー)を乗せ、動きを封じた。
輝夜が能力を緩め、ドサリと地面へ落ちる諏訪子。
「タケルっ。大国主っ……」
「……悪いな」
タケルが目を閉じ、諏訪子から顔を背ける。神奈子も見るに堪えないと、目を閉じていた。
「紫様、如何なさいます」
「……大国主様と輝夜姫の力があれば動きは取れない。永遠亭に留置させてもらえれば幸いなのだけど」
「構わないわ」
輝夜が頷く。
「……」
「おい。霖。『ああいうの』をまともに見るな」
「妹紅、さん」
「霖之助。何も言うなさ」
霖之助は妹紅とてゐに止められ、諏訪子に声をかけるのをやめた。元はと言えば、彼が一番のイレギュラーだったのだろう。
諏訪子は陸に打ち上げられたオタマジャクシの如く無力化され、尚、神奈子を睨んでいた。神奈子は耐えきれず、タケルの後ろに隠れた。
「畜生……」
諏訪子は泣いていた。
「ちくしょう……ぢぐじょう……」
泣いていた。
「なぐらぜろ」
「諏訪子……あ」
「出るな! 神奈子!」
飛び出そうとする神奈子を掴むタケル。
「殴らぜろォ……!!」
「見るな! 神奈子!」
『あ、ああ……』
早苗はこれ以上、目の前の光景に目を向けれず気絶する霊夢に寄り添い、涙を流した。
諏訪子は既に神とか、人とか、妖とかそんなモノは関係無く、『執念』の塊りとなっていた。
しかし―――
「クドイ」
「けひっ……」
―――無残にも、大国主が踏み付ける。
「汚名なら、被り慣れてる。怨んでくれて構わんよ」
「うぅ……じぐ、じょぉ……」
啜り泣くだけとなった。一同は遣る瀬無い気持ちでいっぱいだったが、状を掛けるわけにはいかないと、腹は括っていた。
「藍、諏訪子を担いで……丁重に」
「はい」
藍は腕だけ獣化させ、諏訪子を持ち上げ―――
「待て!」
―――異議を唱える者。
「……チ、ルノ」
「おう」
氷精がいた。
「如何して、此処に?」
「レミリアがこれ渡してきてくれって、手紙よ……それより」
紫の問いにあっさり答え、諏訪子の顔を見た。
「……気は済んだの」
「……」
無言で啜り無く、諏訪子。
「そ」
何かを察し、回れ右。テクテクとある者の下へ歩み寄った。
「神奈子」
俯いて、涙目の八坂刀売乙女の前に立つ。
「歯、食い縛れ」
「……え」
―――ゴスッ!!
「ッ?!」
一同は目を丸くした。妖精が、神を、打ん殴った。
チルノは何も無かったかのように『硬え』とぼやいて手を摩り、再び諏訪子の方を見た。
「……OK?」
「……あり、がど」
二カッと笑う。そして諏訪子は安心して意識を手放した。皆、呆気に取られて動けず、チルノが知らない内に消えている事に気付かなかった。
殴られた神奈子は、頬の痛みが何によるものか理解できず棒立ち。
『……きっと、諏訪子様の分です』
「早苗……」
早苗の手が神奈子の頬に触れる。冷たい。だけど……『熱い』痛みだった。
その後、一同は永遠亭に赴き、事後処理を行うことにしたのである。
* * *
「そう……」
「八雲は被害確認及び結界の修復を。永遠亭(ウチ)は負傷者の手当てを。因みに、貴女以外は皆二日以内に回復したわ」
慧音は里への事情説明の為、天魔と文は『山』の現状確認と『情報操作』の為、身体を酷使し急いで動いた。
「被害の程は?」
「守矢神社大破。そして妖怪の山と一部路上住民の家が損害……死傷者も幾許か出たみたいね」
「……」
天魔と神奈子は被害者の家族の下に訪れ、事情説明及び『謝罪』を行った。
「天魔、被害者のご家族に泣きながら……叩かれたらしいわね」
「……そう」
戦争では無いにしろ、『災害』での謝罪訪問はそんなもの。被害者家族は、やるせない思いを組織のお偉いさんにぶつけるしかないのだ。
「神奈子、というより守矢の信仰もガタ落ちよ」
「っ……そうだ! 早苗は?!」
「そこ」
ベッドの下を指差す。寝たきりの霊夢には見えないが、布団を敷き、早苗が寝ていた。
「付きっきりだったわ」
「早苗……」
「悪いけど、今この子を里や『山』には出せない。わかるわね?」
言いたくないが、今早苗は自身が何もしていなくても、怨みの対象になりかねない。ほとぼりが冷めるまで永遠亭で保護する模様。
「姫と大国主、建見名方は『山』に……知り合いの神々へ挨拶に行ったわ」
「知り合い?」
「秋穣子や石長姫。旧知の仲らしいから。ウチの姫は付き添いがてらだけど」
「へぇ」
石長姫か。『いる』らしいとは聞いた事はあるが、見た事は無い。
「さて……そろそろいいかしら」
永琳がカルテをテーブルに置き、下で眠る早苗を起こした。早苗はハッと立ち上がり、目を覚ました霊夢に泣いて縋り付いた。
「わあああぁん! 莫迦霊夢さん! 無茶してぇ!」
「ご、ごめんて」
「うううぅ。許しませんよぉ! 絶対!」
まったく喧しい。怪我に響く。永琳と顔を見合わせ、苦笑した。
「こらこら早苗。まだ治って無いのだから……とりあえず大事な話をするから、外で待ってて」
「ううぅ。はい」
早苗は赤い目を擦りながら部屋の外に出て行った。永琳はそれを確認し、溜息。そして―――
「いいわよ」
―――部屋の隅に居座っていた妖に告げた。
霊夢には見えない『闇』が霧消する。中から二匹の妖怪が現れた。
宵闇と紅魔当主。
「……ルーミア。外に出てろ」
「はいはい。ごゆっくり」
部屋には霊夢と永琳、そしてレミリアだけとなった。
* * *
―――……一方、永遠亭主賓室。八雲や三柱、輝夜が集まり今後の方針を決めていた。
「はぁ……それで、大国主様は如何にお考えで?」
紫が頭を悩ませ、大国主に尋ねた。
「私は『大人しく』月に行くよ。曲神を連れてね」
「……親父殿」
「なに、言ったろう。気に病むな」
何が大人しくだ。
神奈子とタケル、てゐ以外のメンバーは理解した。彼はとんだ野心家だ。隙在らば、月夜見王の首すら掻っ切る心算の持ち主。
「ただ……月に、『奴』がいなければ事がうまく運ぶのだが」
「『奴』?」
「ライバルだよ、私の」
初耳だ。タケルと神奈子も目を丸くしている。
「例えば……私は私(大国主)であり私(大黒天)なんだ」
「ああ、あの方か。まさか月に居ないだろ」
タケルだけが納得する。他はポカーン……のはずが、一妖、苦い顔をしていた。
「藍?」
「……そういえば貴方は、大黒天でしたね」
「ふっ……やっと思い出してくれたか」
今度はタケルも『?』顔。
「私も……『彼』には会いたくない」
「藍、知ってるの?」
「私が、一番、苦手な方ですよ……多分、美鈴も」
「ほう。幻想郷には『紅龍』もいるのか……私の『超』宝貝を返すよう、言ってくれないか?」
二柱と藍以外は置いてけぼりの展開。
「ふふ。お互い、嫌な男を敵に回しているモノだな……藍君(妲己)」
「止めてくれ……大国主様(趙公明)」
唖然。確かに、大国主は大黒天であり……趙公明だ。
「『超』宝貝(スーパーパオペエ)って……え?!」
「『紅龍』に奪われっ放しだよ。まあ、その話はまた後だ」
兎角、話の続き。
「た、建見名方様は如何なさいます?」
「んー……」
頭を掻く。大国主の事もある。簡単には決まらない様だ。輝夜が助言を入れる。
「そうじゃな。『純血派』の動きが怖い今、用済みとなった諏訪子を狙う輩もおるかも知れぬ。大国主も狙われるじゃろうに。
豊と依に近いそちが確実に引き渡す。最善じゃろう」
「そうかなぁ」
「私もそう思う」
神奈子が頷く。
「でも、もしかしたら……御義父様は大社に再封神だろうし。諏訪子は……」
「月に幽閉される、かもね」
てゐが神妙に告げる。神奈子としては、それだけは避けたい。自分の為にも、早苗の為にも。
そんな不安げな顔色を見、紫は再び溜息をついた。
「……藍。『NPO』の『彼』に、親書を書いて貰って」
「……知りませんよ」
「頼むわ。ネゴシエイターさん」
藍が舌打ちし、スキマへと消えて行く。紫は苦笑し、一同へ提案した。
「此処は、『月の頭脳』さんに指示を仰ぐのが一番ではなくって?」
確かに。
「多分、今日は無理でしょうから……明日、もう一度話し合いを設けましょう。
しかし、月の連中も早く引き渡せと言わんばかりに騒いでそうですわ」
「同感だな」
当の本人(大国主)が苦笑する。一同は一度、解散することにした。
* * *
―――……霊夢と永琳、そしてレミリアだけとなった病室。
レミリア・スカーレットは黙って霊夢を睨んでいた……まるで、今回の『被害者家族』の様に。
「……何が言いたいか、わかるな?」
「ええ」
瞬間―――レミリアの手が、霊夢の首を掴み持ち上げる。無論、抵抗などできる体では無い。
チューブが数本抜け、腰を起こす体勢となった。医者である永琳は……それを止めない。
「何故、『あの子』を使った」
「死ぬ、かも、知れなかった……から」
「後で、こうして殺されてもか?」
力を込める。霊夢が音の出ない悲痛の声を上げた。
「あの、時、は……どんな、手を使って、も、諏、訪子を……殴らな、きゃいけな、かった、から」
「阿呆が」
更に力を入れ、首の骨を―――
「ストップ」
「八意、止めるな」
「それ以上は死ぬから」
―――折る寸前、永琳がレミリアの手首を掴んだ。舌打ちし、霊夢の首から手を離す。霊夢は力無く項垂れ、布団に吐血した。
「ハァハァ……咲、夜は?」
「『何も無かった』かのように生活してるよ。私の顔色を覗ってなッ!」
「ゴメン……」
「ゴメンで済んだら閻魔はいらない」
紅い瞳が霊夢を射抜く。その圧力(プレッシャー)だけで気絶しそうだったが、霊夢は耐えた。
気絶できたらどんなに楽か……しかし、例え気絶しても叩き起こされるのは分かっている。
「紫がなぁ、『記憶は消さない』って言ってんだ。兎にも角にも貴様が落とし前を付けるしかないんだよッ……なぁ」
「……」
永琳は黙っていた。何か思う所はあっても『今』自分は、他人だ、と。
「咲夜に『全て』を話せってか! ざけんなッ!
私は今更、コイツにあの子(娘)を渡すつもりはサラサラ無いぞッ!!」
永琳を指差し、ベッドを拳で叩いた。
「……好きな様に、していいわ」
「できたらとっくにしてる! 血、肉、骨、全てを焼き尽くして、その灰すら坩堝で溶かす!
更に貴様の魂を未来永劫、輪廻の輪から外して、永遠の苦痛を味遭わせてやってるッ!!」
枕を爪で貫く。
「ハァハァ……閻魔が来る。貴様の裁きは、それからだ」
「……永琳は、何か?」
傍観していた月の賢者に問う。
「……レミリアの、気の済むようにしていいわ。閻魔の裁きに全て従う」
「そ」
「おい、巫女(シャーマン)。コイツは咲夜とは『無関係』だッ。
赤の『他人』。いいとこ、『咲夜(私の娘)』の主治医ってだけだ。何か言う権利なんぞ無いッ」
永琳は目を閉じ、苦笑していた。
「そうね。私は所詮、ただの薬師よ」
「……」
回れ右し、部屋から出て行く。レミリアと二人きり。
「私も、閻魔の判決に異議を唱えるつもりは無い。貴様が処刑されようが、無罪放免になろうが、だ……しかし一つ、呪いを掛けてやる」
レミリアは霊夢の首筋に近づく。
「ッ!!? ……同族に、する気?」
息を呑む。
「誰がそんな真似するか。してたまるか。貴様を誇り高い吸血鬼の族にしてなるものかよッ。
今からするのは、もっと簡単で……残酷な『呪い』だよ」
そして、耳元で吸血鬼は呟いた。
「ッ?!」
「―――……、だ。ふん。精々、悩め。苦しめ。じゃあな」
レミリアは扉を開け『ルーミアッ!』と叫び、消えて行った。
* * *
―――……翌日。博麗神社。
結論から言うと、大国主及び洩矢諏訪子を月に渡すこととなった。八意永琳の助言であり、八雲紫の『手回し』によるところが大きい。
因みに、射命丸文が文々。新聞の号外で何も知らない幻想郷住民達に対してプロパガンダ操作。
永遠亭や八雲、天魔のバックボーンもあり『何も無かった』かの様に、日常に戻った。
「世話になったな」
正装した建見名方が一同に礼を述べる。横には『蔦』に巻かれた諏訪子と、さも何も無いかのように立っている大国主。
「タケル。頼んだよ」
「ああ、任せておけ」
神奈子が最後にハグをする。
「……で? どうやって『結界』越えればいいんだ? 越えちまえば『何時もの』ルートで月に行くけど」
「私が開きますわ」
紫が鳥居の方へ向かい、スキマを開いた。
「……紅白の巫女は?」
「今、彼女は『巫女』じゃありませんの」
「へ?」
『あの』後、閻魔が永遠亭を訪れ霊夢に裁きを下した。
二ヶ月間、博麗の巫女としての業務を停止。及び紅魔・永遠亭当主の指示に従うものとする。
尚、後見者の八雲は紅魔・永遠亭に謝罪し、罰金を支払う事。
因みに霊夢は全治一ヶ月半。
この判決にレミリアと輝夜、永琳は何も言わなかった。代わりに部下の死神が『甘ちゃん』と毒づいていたのだが、誰も聞かなかった事にした。
あと、八雲の罰金は守矢と大国主が肩代わりするという噂も。
「建見名方様。この手紙を月(アチラ)の方々に」
「ん。任された」
八雲と『真・八雲』の印が押された封書を預かる。
「諏訪子様……」
「あはは。心配しないで、早苗」
「でも……」
「ダイジョブ。ま、何かあったら前に言ったとおり……ね」
あの時の氷精の様に二カッと笑う諏訪子。
早苗は、もし月の神々に帰ってこれない様な事をされたらと、諏訪子の身を案じた。
「神奈子」
「……」
「へっ! 私の勝ちだ!」
「……そうだな」
呆れた様に苦笑する神奈子。試合に勝って、勝負に負けた。そんな感じだろう。
「さて……って、親父殿?」
呆れる神奈子に呆れていたタケルは、父親が数名の妖と話しているのを見つけた。
「森近君、と言ったか」
「はい」
霖之助は頭を下げた。
「そう、畏まらないでくれ。私は大したモノでは無いのだよ」
「そんな事は」
「ふっ。まあ、いいさ」
サングラスを外す。
「君が選ばれた者であるというのなら、何れ、神の資格が有るやもしれない。もしその気があるのなら、共に来ないか?」
一同は驚く。やはり、『剣』の存在に気付いていたのか……
「別に脅しでは無い。月の連中に『剣』の所在をばらす気は無いよ。
純粋なスカウトさ。その気があるなら、私を頼りなさい。てゐ君が分社を建てているらしいから」
「……僕は半人半妖です。それ以上でも、以下でも無いですよ」
「成程」
「それに……魅了(チャーム)を掛けてまで、僕を欲しがりますか?」
「ほう。気付いたか。これは申し訳無い」
男でも惹かれるはずの『魅了』。霖之助には効かなかった。
「その眼鏡、魔眼殺しか」
「ええ。『ある人』から頂きまして」
「ふふ。更に気に入ったよ」
残念そうに苦笑し、サングラスを掛け直す大国主。
霖之助は内心ホッとした。力づくで連れて行かれるのではないかとハラハラしていたからだ。
続けて、大国主は永遠亭を代表して来ていたてゐに歩み寄った。
「大国主様……」
「てゐ君。なに、問題無いさ」
「信じております……これを」
八意の印が入った書簡を手渡す。
「ありがとう」
「いえ……何時かまた、必ず」
「ああ。達者でな」
「はい。何時までも……何時までも御従え申してます!」
涙を流す。こういった姿のてゐは、幻想郷に住む者多しと言えど、今まで誰も見たこと無いだろう。
最後にと、大国主は即行で手紙を書きあげた。
「これを八意殿に」
「確かに」
「では何時か、ね」
軽く手を上げる大国主。てゐは深々と頭を下げた。
「さて、じゃあ行きますか」
タケルが諏訪子をスキマへ放り投げた。
続いて大国主が入っていく。最後に―――
「アンタ」
「……とりあえず、御柱祭でまた会おう」
「うん……」
非常に、乙女チックな神奈子様。紫は神奈子の横で、ニヤニヤ微笑んでいた。
「あ、そうだ」
ハッと思い出したかのように、紫がスキマを開いた。ドサリと何かが落ちてくる。
「建見名方様。これ」
「……」
大きい袋。何やら中で暴れているようだ。『出せー!』とかいう声も聞こえる。
「『保険』ですわ。もしも、諏訪子を返さないとかいう連中がいたら、この袋を開けて下さい」
「何、入ってんの?」
「聞かない方が心臓に良いかもしれませんわ。ま、開ける必要が無ければ諏訪子とそのまま送り返して下さいな」
「……わかった」
願わくば、開けんことを。タケルは袋を担ぎ上げ、スキマへ消えて行った。
「……」
「早苗。ダイジョブよ」
「紫さん……」
「最悪『保険』が効けば、嫌でもちゃーんと帰ってくるから」
「はい?」
うふふと笑う、スキマ妖怪。完全ではないが……少し、安心して待てるような気がした。
封神関連がどんどんと。
戦は終わりましたが
エピローグ頑張ってください
待ってますよー
咲夜さんや早苗、霊夢の仲の良さは「少女らしく!」から来てたんですね。多分。
そして咲夜さんは永琳と関係あるんだなぁと思ってたけどやっぱりですか。
二次では霊夢ラブなことが大半のレミリアですが、ここでは咲夜を大切に思う主(と書いて母と読む)ですなー。
袋の中身絶対チルノだろwwww
ほんとに、莫迦な子です。ありがとう。
時に、運命の歯車って言うのは
どれほど歪んでも動き続けるんですよね。残酷なことに。
願はくは、歯車の落ち着く時に、すべての者の笑顔が揃っていることを。
エピローグが楽しみです。
・9番様> チルノ人気半端ないw エピローグは今日か明日中に!
・10番様> カリスマとバカは紙一重ですよ。
・11番様> 基本私の話は全てリンクさせていますから。えーりんとさっきゅんについては何れ。
袋の中身は……ふふふ。誰なんでしょう。
・13番様> 誰よりも己に忠実な莫迦な子―――チルノです。
誰かが笑うからこそ誰かが泣く。だけど、皆笑える事があるとするなら……それは究極の魔法かもしれませんね。
・14番様> 誤字!? すいません、やっちまった……
・15番様> 漢(おとこ)? いいえ、漢女(おとめ)です!
・17番様> これで……どうしたんだ! 応答してくれ! スネエェェクッ!!
・18番様> 申し訳無い……万人受けする作風目指して頑張ります!
単語やセリフを工夫した方が良いのでは?
クロスオーバータグを付ける必要は感じませんが
少し気になったので……頑張ってください。