・この作品は『かみさまっ!! ~八岐大蛇編~』の続編です。
始めにそちらをご覧になってから読まれる事を推奨します。
前回の復習のあらすじ……王道展開。だいだらぼっち。草薙乃剣。
* * *
諏訪子、大蛇もまた例外ではなく眼前の巨雲人を見て凍ってしまっていた。
「な……貴様が、でいだら、だと……」
『ふっ。仮にも神の端暮だが……他の神、人間達はそう呼ぶ』
尤も、雲を使役し誤魔化しているだけだがとは言うわけも無い。
この神もまた、入道使いであった。
諏訪子は唇を噛んだ。血が出るまで噛んだ。
予定とは違う。このままでは、ゲームにならない。
『皆! 手を休めるな!
私が奴の胴体を押さえる。そのうちに頭を落せ!』
大国主の一言と同時に、赤黒い巨人と化した雲山が大蛇の尻尾に大拳を入れる。
悲鳴を上げる蛇。空かさず一本の頭がだいだらぼっちを襲った。
『攻撃に当たるのはポリシーではないが……仕方あるまいッ』
山をも砕く噛みつき。
「雲山!」
思わず一輪が声を荒げる。
しかし……何、問題無い。彼もまた、入道雲なのだから。
毒牙は何も捉えられず、ただすり抜けた。
「萃香(アンタ)の能力並に反則さね」
てゐが呟く。まさにその通りだ。
槍と為りては密と生り、盾と為りては疎と生る。
諏訪子は更に焦る。
最早、一方的な殺戮は不可能。であれば……自分が出るしか、他無い。
しかし、まだ早い。今はミシャグジ達に任せるしかないのだ。
「くそっ……何をやってるミシャグジ共! たかが妖怪一匹も殺せんのか!」
怒号。
同時に赤口白蛇達の数、そして勢いが増した。使役できるミシャグジを全て駆り出す曲神。
「だから、テメェらの相手は!」
「私達って言ってんでしょ!」
神奈子とタケルが前に出る。
嘗てミシャグジ達を叩き潰した二柱の御柱と『蔦』が、豪雨の如く舞い踊った。
白蛇達は『蔦』により前に進めず、一体、また一体と御柱で潰されていった。
「己ら! 又しても邪魔するか!」
「嘗めるなよ、土着神」
「こちとら軍神とその妻。易々とやられはしないさ」
睨み合う曲神と国津神。
諏訪子はそろそろ限界だった。何故……
「こうなった……ッ!! オイ! 八岐の!
貴様、それでも倭国屈指の大……妖……え?」
八岐大蛇の首が、減っている。
其処に構えていたのは半獣人と鬼だけ。
「は?」
否、『いる』。ただ『見えない』だけだ。
確かにそこいらを『舞って』いるのだ。
「天、魔……射命丸……蝿共め!」
蝿。
されど侮るなかれ。
さる蝿は己の幾倍もある象でさえ殺す事が出来るのだから。
「あら、アンタ遅くなったんじゃない?」
「うっせぇ。前線組と一緒にすんな」
「あ、あの御二方。そろそろ次の首を……」
ギャーギャー!
ドップラー効果により所々声が聞こえる。鬼が喧しいと叱り付けた。
ただ慧音は苦笑していた。
まったく、この妖(ヒト)達は相変らず、だなと。
やっとこ、鬼の怒号に気付き目前へと舞い降りる二羽の天狗。
「ああ、ごめんなさい。この莫迦がしつこいから」
「どの口言うか、阿呆鴉」
「なんつった? 助平鷲!」
「いい加減にしろ! お前ら!」
心底呆れる。
まあしかし、やる事はやってくれる天狗なのだ、彼女らは。
「ったく……わかってる。慧音(アナタ)には鱗一枚すら触れさせない」
「慧音! 八つ首トカゲの頭なんぞ、一つ残らず切り落とせ!」
「……御意!」
打って変って真面目になる二羽。
瞬間、一本の首目掛け、慧音が飛んだ。ただ切る。それだけ。
しかし、大蛇もそう易々とやられはしない。
三本の蛇頭が慧音へ牙を向けた。
「やらせるものかよ!」
「ていやぁ!」
天魔が溜めを作り、文が符を掲げた。
―――魔獣『鎌鼬ベーリング』―――
慧音へ襲いかかる右の頭を蹴り飛ばす文。
同時に左の頭へ、スペルも何も無い蹴りを天満が繰り出した。
ただの蹴り。しかし、神速の如きソレは蛇を射殺す鷲の爪であった。
「でりゃあああああッ!」
「うりゃあああああッ!」
「キシャアアアアアア!」
勢いの余り、岐(首の付け根)が裂けた。
大蛇はこれ以上無いくらいの悲鳴を上げ、一本の無防備な首だけがガラ空きとなった。
「任せろ!」
萃香が『密』を使い、蛇首を絞める。
其処に自分の祖父だからという躊躇は微塵も無い。
ああ、そう……嘗て鬼では無かった頃。思えば、コイツの所為で家族はバラバラになった。
哭きたく無いから、鬼になった。しかし、鬼というだけで泣く事となった。
全て、全てが、コイツから始まったのだ。
「鬱憤晴らしと言ってくれても構わないよ……でもねぇ爺さん!」
アンタが『蛇』に成んなければ……
私は『鬼』なんかに……為らずに済んだのかもしれない……ッ!!
動きが止まる。
その一瞬を彼女は見逃さない。
(ただ、迷い無く、振り抜く)
剣の師の教え。
―――ザシュ……
「呆気無い、か……難しいな」
静かに、ズレ落ちる。ソレを見届け、呟いてみた。
こんな時、師なら莫迦女郎と怒るだろうか……
「護る為とはいえ、辛いな」
未だに、妖の類いを切る事に慣れない。
「なーに辛気臭い顔してんの。可愛い顔が台無しよ?」
「文、さん」
文がポンと背中を叩き。
「よくやったな」
天満がポンと頭を撫でる。
また此処にも、子供扱いされる者がいたようだ。ただ、此方は満更でも無いようだが。
照れ臭そうに頬を掻く慧音。
さて、残る頭は後六つ。
「いきましょう」
「「「応!」」」
* * * * * * * *
依姫はディスプレイの実況映像を見て、目を丸くした。
神々は分かる。片や自分達の義弟妹、片や国津神の頭領だ。
しかし、真逆、妖共があれ程とは。
「認めましょう、依姫」
姉が諭す。
コレが、幻想郷。
『前』とは違う。『不為者(ナラズモノ)』の様に此処が莫迦げた力を持っているわけではない。
が、群となっては眼前の光景の方が上。
加えアマテラス、サルタヒコ、ニニギといった神由縁の力を駆使している。
脅威。
「御姉様、奴らは……ん?」
どうして神々の恩恵を、と聞こうとした瞬間、画面にある妖怪が現れた。
「来たわね。スキマ」
このプレッシャー忘れはしない……八雲紫だ。
「加え……別の気が、二つ?」
画面には映っていないが、巨大な気と何処か懐かしい気。
豊姫は視点を切り替えた。
「人間(?)の男と……天狐だと?!」
「……」
更にズーム。
刹那―――
プツンッ……
―――画面が消えた。
「な!?」
「……何事」
豊姫の『力』が消された。
いや、違う。
消されたのでは無い。これは、乗っ取り(電波ジャック)だ。
次第に何かが見えてくる……謎のマスクマン(?)が立っていた。
「「……」」
『あーあー、マイクテス、マイクテス。
ちょっとウドンゲ。このピンマイク入ってるの? 全然分かんない。
……え? もう映してるですって! 嘘!? や、ちょ、え!?
一回消しなさい!!』
プツンッ……
「御姉様、今の」
「依姫。何も見てないわ。何も映って無いし、何も聞こえなかった」
「はい……」
テイク2。
『こほんっ。
覗き見をしていた諸君、ごきげんよう。私の事はMs.エイリアンと呼んでくれ』
……
『……あれ? ウドンゲ、本当に映ってるの?』
「あ、あの師……Ms.エイリアン」
『あら、映ってるじゃない……んんっ!
申し訳無い。少々部下が新参でな。まだ使えないのだ』
画面越しに反論の呟きが聞こえるが、無視。
というか、覆面して声低くしても正体バレバレです。
『早速本題だ。悪いが今から起る事は、見せる訳にはいかない』
一転、真面目な雰囲気になる。
はてと豊姫が問うた。
「何故です。アナタは幻想郷(そっち)側の人妖柱なのですか?」
『私はあくまで中立。故に、此処からは君たちに見せる事が出来ないと判断した』
「……可笑しな話だ」
皮肉にも笑えない。
今度は依姫が問うた。
「ではMs.エイドリアン。最後に映っていたあの天狐、そして男性。何者のですか?」
『教えられないから消したのだろう阿呆が。あと、誰がエイドリアンよ、糞餓鬼』
「んな!?」
その毒舌っぷり、まさに『彼女』だった。
「教えられない、ということは彼らが幻想郷の切り札(ジョーカー)という事ですか?」
『そういう訳ではない……ただ』
「ただ?」
謎の覆面は、苦笑し告げた。
『彼は幻想郷の英雄(ヒーロー)、かな』
「英雄、ですか」
あんな優男がねぇと依姫がぼやいた。
先程映っていた天狐は強大な妖力を感じたが、男の方は特に長けたモノは見当たらなかった。
だが豊姫は見つけていた……『剣』を。
* * * * * * * *
大蛇の首は一本、また一本と落とされ残りは三つとなっていた。
「いいぞ、慧音! 後三つだ!」
「はぁはぁ……」
しかし、疲労は溜る。
コレが満月の夜であれば何の問題も無いのだが、今の自分は人間に近い。
(だが、後少しだ!)
荒い息を整える。
今、奴を倒せるのは自分しかいない。
萃香は因果関係上決定打を撃つ事が出来ない。
他の人妖柱達も今一つ絶対的な『力』を持っていない。
故に、『剣』のレプリカを持つ自分がやらねばならないのだ。
慧音は柄を握る手に力を込めた。
一方、諏訪子は焦りながらも何処か勝機が見えていた。
(あの獣人、そろそろだな)
先程から、首を落としているのは慧音一人。
いくらサポートがあるからとはいえ、これほどの大蛇、そう易々切れる者では無い。
ニヤリと口端を引き上げた。
「ミシャグジ共! もう、そいつらには構うな!」
三柱と雲山(ダイダラボッチ)をターゲットにしていたミシャグジ達の動きがピタリと止まる。
そして。
「あの半獣だけを、ヤれ」
瞬間、白蛇達は弾ぜる。
数体のソレらは御柱の嵐を抜け、慧音目掛けて特攻した。
ミシャグジ達を潰していた神奈子達にも疲れが回っている。
奴らは潰しては沸き、また潰してもまた沸くの繰り返しだ。ボスである諏訪子を倒すか、スタミナ切れしてくれない限り終わりが無い。
百を超えるミシャグジ達全てを押さえる事は不可能だった。
「くっ! ハクタク! 行ったぞ!」
「チィ!」
次の首を狙おうとしていた妖達は動きを止めた。
天満が前に出て、蹴り倒すが……数秒足らずで復活した。
そして、巻きつく。
「くそっ! 離れやが―――」
―――一閃。
「「「え?」」」
鉄の輪が、ピンポイントで天満の羽を貫いた。
「天満!」
金色の羽に風穴を空けられ、重力に従い地上に落される天満。
文が助けに飛ぶ。しかし―――
「お前もだ、射命丸!」
「くっ!」
数体のミシャグジが文へ襲いかかる。
諏訪子は同じ要領で個々を離れ離れにさせ、厄介な鬼だけは三本の大蛇の首に任せた。
「これ、では。くっ……近寄れない」
慧音は唇を噛んだ。
せめてもう少し人手があればなんとかなるが、無理だ。
霊夢とてゐ、一輪は何やら忙しいみたいで手は借りられない。
そんな慧音の戸惑いを諏訪子は見逃さなかった。
「死ね」
帽子を放る。
たかが帽子、されど帽子。神が放る高速のソレ(ZUN帽)は音を立てて回転し、慧音の腕に打ち当たった。
「あぅ!」
「よし! 『剣』を落したな!」
拙い。今すぐ再具現させねば―――
「やらせんよ!」
―――一閃。
慧音の横腹に鉄の輪がめり込む。
「「慧音ッ!」」
萃香と文の声も虚しく、糸が切れたように落下していく慧音。
ダメ押しとばかりにミシャグジが無防備な少女へ襲いかかる。
「はっ! 勝った!」
諏訪子の叫びと同時に気絶した慧音へ牙を向ける赤口白蛇。
「そうはいきませんわ。土着神」
瞬間、ミシャグジが『隠された』。
そして地面激突直前の慧音がふわりと浮かぶ。
「ゆ、紫さん!」
「文、慧音をお願い」
スキマ妖怪は天狗に少女を任せ、土着神と対峙した。
「な、貴様……今までいないと思えば……」
「真打ちは最後に登場するもの。あと、コレ、お返しします」
諏訪子の頭上にスキマが開かれる。雄叫びを上げ、先程のミシャグジが落ちてきた。
激突……と思いきや、頭を鷲掴み。邪魔だと云わんばかりに、握り潰した。
「まあ、いい……今更貴様が出てきたところで、お前では八岐大蛇(コイツ)を倒せん」
「あら? 誰が、私が退治する、なんて言いました?」
「は?」
八雲紫はニッコリ笑い、上を指差した。
其処にいたのは……巨大な天狐。
「な?! あれは、九尾だと!!」
「御名答。さて小さな倭の大蛇(八つ首)と大陸きっての化け物(九尾)、どちらが上かしら?
……やりなさい! 『 』!!」
紫が藍の真名を告げる。
九尾ノ狐は音の出ない大声を上げ、頭の一つの噛みついた。
「キシャアアアアア!!」
悲鳴を上げる大蛇。隣の一本が救出のため、狐の背後から奇襲をかけた。
しかし『藍』は、尾を振う。
まるで一本一本が剣。奇襲に失敗した蛇頭は見事に爆ぜ飛ばされた。
これで残り二頭。
「こ、の。こうなったら……八岐大蛇! ミシャグジ共を『喰え』!」
「な?!」
白蛇を飲み込む大蛇。
「なんて真似を……」
「紫! コイツ、様子がおかしい!」
急に悶え出し、うねりを挙げる大蛇。
動きが止まる。そして―――
「身体の色が……変わる?!」
「ああ、そうさ」
諏訪子がニヤニヤしながら答えた。
「どういう事」
「なに、やっぱり使役するなら、使いなれたモノじゃないと……なぁ。お前ら!」
―――次の瞬間、大蛇の背中が割れ……赤口白蛇の一本首の大蛇が出てきた。
「こ、これは……」
「シャメ! 奴の目を見るな!」
文は固まった。
当に蛇に睨まれている獲物の心境。
萃香は舌打ち、文と慧音を担いだ。ついでに口で天満を拾って。
「ゆはひ。あたひはほひうあを(紫。私はこいつらを)」
「ええ、宜しく」
三名を後方(人里)まで避難させる為、萃香は離脱した。
「畜生、さっきより巨大化してやがる」
『流石に私も今以上は巨大化できないな……』
尻尾を押さえていた大国主が雲山の手綱を離す。こうなっては意味が無いと判断したのだ。
三柱に顔を見合わせた。
「どうする?」
「むぅ。あそこまで巨大なミシャグジ見たこと無いからねぇ……諏訪子を叩き落とした方が早いんだけど……」
それは、『あの娘』の仕事だから、と飲み込んだ。
「タケル、神奈子。奴が進撃を始めたら終わりだ……兎角足止めを」
「必要ありませんわ」
紫がスキマから身体を乗り出しながらそう言った。
どういった意味だという顔を向ける三柱。
不敵に微笑むスキマ妖。一言、アレをと蛇の頭を指差した。
「ん……あれは」
神奈子が凝視する。確か―――
「森近、か。しかし、何故あんなところに?」
「御存じない? 彼は、幻想郷(此処)の……英雄なの」
「英、雄?」
「そう……まるで、大国主様、貴方の義父上の様にね」
「む?」
意味深な発言。
「今は、デカブツ(ミシャグジ)の侵攻の阻止をお願いします! 私と『藍』が彼のサポートをしますから!」
「しかしだな……」
大国主が口籠る。
「元はと言えば私の失態から出たサビ。幻想郷の異変は幻想郷の者(身内)で片づけますわ」
「うむ……」
「それに……『貴方』はあまり暴れない方が得策では無くって?」
「……ほう……ならば、頼もうか」
大国主は構えを解く。
しかし、何を如何する気だろうか。神奈子は紫に問うた。
「何か策が?」
「ええ……頼むわよ」
天狐の上に跨り、紫は霖之助の方に向かう。
三柱は少々悩んだが、彼女の言葉を信じることにした。
* * *
飛べない彼はスキマから飛び降り、蛇の頭に降り立った。
「紫さん、ありがとう」
青年、霖之助は幻想郷を見渡していた。
天満が、慧音が、文が……戦って、落されて……
「……コイツは僕に気付いて無いのか」
半人半妖一体程度、どうってことないのだろうか。
まあ、確かに非力なのは当たっているのだが。
諏訪子の方も、気付いていない。
「あっち(九尾)でいっぱいいっぱいか」
絶好のチャンス。しかし―――
「……これ(剣)、どうやって使うんだ」
天下を取る程度の力を持つ、いやそれ以上の力もある剣―――天叢雲剣(草薙乃剣)。
恐らく天が僕を認めたことの瑞兆であるに違いない……とは言ったものの、まったく使い方が分からない。
刺すか?
いや、失敗したらこの白蛇に気付かれる。
掲げる?
やってみるが……傍から見て痛いだけだ。
「霖之助さん!」
「紫さん。これ……どうやって使うの?」
「……」
突如スキマから現れた紫が声をかけた。
が、沈黙。どうやって、て。
「とりあえず霊力でも込めてみたら」
「僕の非力な霊力で?」
「力任せに切ってみたら?」
「慧音や妖忌さんみたいに獲物の扱いは得意じゃないよ」
「……」
紫は頭を抱える。
なんで『剣』はこんな男を持ち主に選んだのだ。
できるものなら自分が扱ってやってもいいのだが、今、この身は神や人間(マエリベリー)とは逆の位置にある妖怪のモノ。
神器など使えはしない。
いっそ三柱に任せてみてもいいが……多分、事後に没収されるだろう。
(使い方、知ってそうで、害の無い人妖柱……)
一番は永琳だが、忙しい為無理。
天人の御偉い様なら知ってそうだが、寄こせと言われそう。
美鈴や藍は宝貝は知ってそうだが、この国の神器となると門外だろう。
ルーミア……ダメ、ゼッタイ。
(となると、腹の中か)
紫は大きな溜息をつき、少々大きめなスキマを展開。諸手を打ち込んだ。
「霖之助さん! 私の事引っ張って!」
「え、あ、うん」
せーの!
「「ぶふぁ!!」」
「うわっ!」
少女二人。ほぼ全裸同然。
「あ゛ぁ……シャバの空気はいいなぁ」
「てめ! 輝夜! まだ終わって無いわよ!」
「折角出れたんだからもういいじゃん。腹ん中で何回死んだと思ってるのよ」
ギャーギャー喧しい。
これではバレテしまう。
「おや、姫さんに藤原。やっと出てきたか」
「ほらばれた」
諏訪子がニヤニヤ笑った。
「ちょっと諏訪子。いい加減になさい。これ以上は冗談抜きで……ハッ倒すわよ」
「おお、こわいこわい。流石月の姫さんってね。
たださぁ、輝夜姫。アンタ自分が今何処にいるか把握してんの?」
「え?」
辺りを見渡す。
幻想郷が一望できる。なんか温度が低い。
地面が雪の様に真っ白……真っ白?
「何処此処?」
「ば輝夜! そんなこと言ってる場合じゃないわ。スキマ! 現状報告して」
「バカぐっ……! まあ、いいわ。あとなんで、店主もいるのかしら? 今来た三行!」
紫は再び頭を悩ませた。やっぱり腹の中で溶解されてた方が良かったかもしれない、と。
兎角、仕事はこなしてもらわねば。
「大蛇巨大化。
私らピンチ。
……アンタら、遅れてやってきたヒロイン」
「「ヨッシャァァァァァ!!」」
「なんて、単純……」
霖之助はずり落ちた眼鏡を持ち上げた。こんなので納得するとは……
紫も苦笑しているが、まぁいいだろう。
「おいおい、そろそろいいか? コチとら律儀に待っててやったんだが」
諏訪子が空中で胡坐を掻き、見下してくる。
輝夜がパンツ丸見えどうこう騒いでいるが、知ったこっちゃないと言わんばかりにぼやいた。
「ったくよぉ。スキマ、再確認してやるが、これはゲームだ。
だからあんまりルールから外れたことはしたくないんだよ。だから、待つ時は待つ。進む時は進むでメリハリつけてんの。
アイツら(三柱)もソレを考慮してか全力を出してない」
「それはそれはありがたいですわね」
紫は頭をフル稼働させた。
諏訪子及び三柱に霖之助の剣をばらしてはいけない。
霖之助が剣の使い方を知らない為、攻勢には移れない。
何とかして輝夜に剣の使い方を教えて貰わねばならない。
此処まで二秒。結果……
「……諏訪子。貴女、メリット無いわよ」
カマかけに移った。
こうなったら自分が諏訪子の相手を、そして霖之助自身が輝夜に打開策を聞くしかないと判断したのだ。
霖之助を一視し、自分は宙へ上がった。
「このゲームに勝利したとしても、言葉通り、何も残らない。
負けたら負けたで、申し訳無いけど……幻想郷管理者権限で、月へ突き出すわ」
「あっそ」
「な?!」
どうでもいいといった風。
紫には目の前の曲神が何を考えているか、何も分からなかった。
諏訪子は姿勢を崩さず、片目を閉じて、紫に問うた。
「紫さんよ。この幻想郷で、一番『幻想的』な存在、誰だと思う?」
「……」
「答えよ」
この問いに意味があるのか。
いや……無いだろう。しかし、答えなければいけない気がした。
「自称……最強さん」
「うん。私と同じだ」
「だから、何?」
「その最強さんが背中を押してくれたよ」
両目を閉じる。
「気の済むまで、喧嘩しろって、ね」
「……成程。貴女も、ルーミアと同じで……彼女の崇拝者なのね」
「はは。神が妖精を崇拝するなんて可笑しな話だが……
ああ、そうだ。私はアイツが羨ましい。
あそこまで自由で、あそこまで無邪気……ちょっと前の私じゃ、考えられなかった」
「莫迦よ。だからって子供になる気?」
「どうとでも言え。私は早苗の為なら、神のプライドなんか捨てるよ」
紫は理解した。
ああ、彼女は……人の身から神になった彼女は、やはり人間臭いのだと。
元々、神奈子の策には乗り気でなかった諏訪子だ。
納得は行く。
「エゴね……」
「何、『幻想』郷なんてモノを構築してるお前に言われたくないさ」
「そうね……私達は似てるのかも」
傘を握る手に力が籠った。
諏訪子は姿勢を崩し、頬杖を突く。そして、紫を睨み、微笑んだ。
「来いよ。妖怪(人間上がり)」
「行くわ。神様(人間上がり)」
弾幕が広がった。
一向に構わん!!!
このまま押し切れ!
森近大活躍かと思いきや
まだ先みたいですね
中二?
みんなそこで生きてるんだ
もう~楽しみじゃないですか!
別にいいじゃない。もっとやれ。
天ちゃんと文ちゃんイチャイチャすんなww
霖之助キターって思ったら駄目じゃんww
そして輝夜ww今北産業じゃねえよww帰れよwwそして誰も説明してくれないww
とはいえ続きに期待です。
輝夜のカリスマモードとの差が激しすぎて笑いが止まりませんw
・5番様> やったりましょう。
・7番様> 霖之助さんは次回……ただ、大それた事はしないかな。
・9番様> 嬉しい限りですわ。
・10番様> イチャイチャちゃうねん。長年の慣れやねん。カリスマにはギャップが大事なんですよ。
・15番様> 姫様だもの。てるよだもん。
・18番様> 難しいモノです。努力します。
ただ、八岐大蛇は無論政治的な扱いがメインですが、『強い』ということ、『諏訪子が使役できる』ということをわからせる為、必要でした。
・19番様> 申し訳無い。ホント、カオスですよね……