一
清廉という言葉は、上白沢慧音のためにあると思う。
少なくとも私は、そう思っている。
まだまだ夏の盛り。まだ太陽が顔をだしていないというのに早くも寝苦しさに目を覚ました妹紅は、汗で張り付く布団と着物を不快に感じながらも、隣で眠る慧音の顔を見た。
彼女の薄青の入った長い髪は涼しげでとても綺麗だと、妹紅は思う。まだ慧音は眠っているから、彼女の柔らかく優しい瞳にはお目にかかれないが、その代わりに白いまぶたと、それを華やかにふちどる髪とおんなじ色のながいながい睫毛が妹紅の目を愉しませる。
しかし、よくよく見ると、涼しげな外見の慧音であろうとも夏の暑さには勝てないらしく、いつもは前髪に隠れているおでこにうっすらと玉の汗をかいているのが見えて、それが何故だか妹紅を興奮させた。
妹紅を眠りの淵から追いやった不快さなど、彼女はとうに忘れて、慧音の寝顔を宝物のように見つめていた。
二
「ほら、妹紅どの、起きてください。外はいい天気ですよ。いつまでも寝ていないで」
一度起きてしまうと、慧音の行動は早い。さっきまで可愛い顔で眠っていたのとは別人のように、きびきびと動いて、着替えをし、床を片し、二人分の朝食をつくってしまう。目を覚ました後、しばらくしないと身体を起こす気にもならない私とは正反対だ、と妹紅は思う。
「……そうはいっても慧音、私は慧音よりずーっと早く起きていたのよ。そんな風に、ひとをぐうたらみたいに言わないでもらえる?」
そう妹紅が億劫そうに言うと、間髪いれずに慧音が呆れたように妹紅の瞳を覗き込みながら、
「目を覚まして、そのまま寝転がっていたんなら、眠っているのと変わらないでしょう。そんな子どもみたいなことを言わないで、起きてきてください。汁物が冷めてしまいます」
と言った。
しかしその柔らかな瞳は優しげで、薄い布団越しに妹紅に触れるその手はあたたかくて、普段の妹紅であれば、口では「慧音はくちうるさいなぁ」とか言いながらも、いそいそと布団から這い出していたであろう。
ただ、今朝は事情が違っていた。
「慧音、今日、夜遅いんでしょう」
「ん? あ、ええ。そうですね。今夜は里で宴会がありますから」
「サボれないんでしょう?」
「さぼるだなんて。宴会とはいっても、里の人々とコミュニケーションをとるのはとても大切なことなんですよ。寄り合いの集まりも良くなりますし、情報も入りやすくなりますから、何か困ったことが起きた際にも迅速に対応できます。そもそも今年は気候が穏やかで、大きな水害も大日照りもなく、豊作はほぼ間違いないでしょうし、物の怪の被害の類もなくてまことに結構、日々の平和を肴に話に花を咲かせるというのも……」
「ちょ、待って慧音! 宴会の必要性はわかったから!」
教師という職業のゆえか、それとも理屈っぽくて案外頑固という彼女の生来生まれもった性質のゆえか。慧音の説明は丁寧だがとにかく長い。妹紅は慌ててそれを遮ると、少しむくれて、それから急に頬を染めると、下を向いてしまった。
「(私は、今慧音に何を言うところだったんだろう)」
宴会のある夜、慧音の帰りは遅い。娯楽の少ない里にとって、宴会は最も身近な遊興のひとつだし、何より、慧音は人気者だからだ。
同じく里の有力者である稗田の者とは違って、慧音は家に力があるというわけではない。彼女の力で里の人間たちの信頼を勝ち取った結果だ。半獣という枷を背負い、人間にも妖怪にもなりきれず、しかし人間が好きな彼女は、彼女なりのやり方で里との関係を築いた。
里の平和のために自らを賭して働く、美しい女性。誰もが慧音を好きになるはずだ、と妹紅は思った。自分だけではなくて。
宴会に行かないでほしい。自分とふたりっきりで静かに酒を飲んでほしい。こんなことを、慧音に言おうとしてしまうだなんて。
「……妹紅どのも、一緒に宴会に参加しませんか?」
「え」
そんな妹紅の顔を覗き込みながら、慧音は言う。黙っている妹紅をみて、慧音はどうやら彼女が寂しがっているらしいということは察したが、なぜ頬を赤く染めたかまではわかっていなかったようだった。
「里の皆もよろこびます。迷いの竹林を案内してくれる貴女は、とっても人気者なんです」
人気者。慧音にそう言われてしまうのは、なんだかいやだった。
「妹紅どのは照れてしまうかもしれないけど、貴女に一言お礼を言いたいという人間はたくさんいるんですよ。それに、前に一度だけ宴会に参加してくれたじゃないですか。ね? 一緒に来てほしいんです」
ね? と慧音が小首をかしげると、彼女の長い髪が揺れる。ふんわりと花の香りが漂って、妹紅にとってそれは、何物にも耐えがたい誘惑のようで。
妹紅の喉は、慧音に気取られないように小さく、しかし確かに、ごくりと鳴った。
三
『きっと今夜は遅くなってしまうでしょうから、どうぞ先に休んでいてください』
慧音はそう言うと、まだ何か言いたそうにしていたが、言葉を飲み込んで、授業に出かけて行った。妹紅はそれを見送り、今は一人迷いの竹林にいる。うっそうと繁った竹林に日の光は差し込みづらく、人々から方向感覚を奪うであろう。何をするでもなく、そのあたりに寝ころんで、ぼんやりと時間をやり過ごす。それがぴったりだった。今夜慧音は遅くまで帰ってこない。帰ってきても、夕餉も酒も必要ない。慧音がいなくなって、何もすることが無くなってしまった私にはぴったりだ、と妹紅は思った。いつかの自分のように。
慧音は妹紅を里につれだそうとかなりしつこく食い下がったが、とうとう妹紅は首を縦に降らなかった。そのときの慧音の様子を思い出して、妹紅は無意識に歯噛みする。悲しそうに伏せられた瞳。慧音にそんな顔をさせるつもりなんてないのに。なんでわかってくれないのだろう。なぜ、慧音はそうまでして私と里の接点を持たせようとするのだろう。
「(そんなこと、わかりきっている。大方、自分が死んだ後のことを考えているんでしょう)」
妹紅は思わず舌打ちをした。気分が悪かった。自分と里との橋渡しになろうとする慧音が、慧音の死後も、自分が孤立しないようにと心を砕く慧音が、それに尽力するあまり、今現在の妹紅の気持ちをないがしろにする(と妹紅は思っている)慧音が、気に入らない。
「(大体、一度里の飲み会に参加したのだって、慧音が半ば引きずって行ったようなものだったのに)」
その宴会がどうだったかなんて、妹紅は全く覚えていない。あの夜も宴会になんて参加するつもりはなかった。でも、自分のような得体のしれない女と、慧音が懇意にしているのを見て、里の人間たちが慧音を不審な目で見ないか、心配だったから。そうなると、人間が大好きな慧音が、悲しむから。自分は少なくとも里に危害を加えたりしない。私はただの幻想郷によくいる妖であって、心やさしい寺子屋の教師が、いつものように世話を焼いているのだとアピールするために行っただけなのだ。
そして今となっては、それを後悔している。
里の宴会なんて、ずっと断っていればよかった。
慧音に見てほしくてなんとなく始めた竹林の道案内など、適当にやめてしまえばよかった。
あの優しい半獣の人に好かれたくて、受け入れてもらいたくてやってきたことが、自分の首を絞めている。
妹紅どのは人間です、と彼女は言った。とても繊細で傷つきやすい、だけれど本当はとても温かい人間です、とある明るい満月の夜、彼女は私にそう言ってくれた。
私はいつものように血まみれで小汚かったし、慧音はとてもきれいだった。彼女の美しい顔や髪に似合わない、禍々しい角とハクタクの尾が月の光に照らされている。
「他の誰がなんと言おうとも、私にとっては。貴女は、人間です」
嬉しかった。慧音のそのときの言葉が本当に嬉しくて、そのとき私は、人生で初めて、誰かを本当に好きになったのだと思う。
そこまで思い出すと、妹紅は寝がえりをうった。苛々する。こんな気分のときこそ、輝夜と殺し合いがしたいのに。最近あいつは付き合いが悪い。永琳に衣装を新調してもらうのだとか言っていたから、せいぜい喧嘩で衣を汚したくないのだろう。もちろん汚れるのはあいつの血反吐のせいだけれどね。
全てを捨てて、輝夜とその取り巻き以外には執着しないように生きてきたのに。だれかに心をとらわれてしまうのは辛いことだということを、妹紅はやっと知った。慧音の顔を思い出すだけで、胸が締め付けられてしまう。
誰かを好きになるのは、誰かを憎むよりもずっと辛くて、苦しい。
自分をこんな気持ちにさせる慧音が憎かった。自分を受け入れておいて、自分の心を捕らえておいて、自分の思うとおりに動いてくれない慧音が憎かった。
いつのまにか強く握りしめていた掌に血がにじんでいて、その血があまりにも鮮やかな赤色であることに、妹紅は無性に苛ついた。
四
慧音が帰ってきたのは、夜もとっぷりふけたころだった。
「ただいま、かえりました~! 妹紅どの、わたしのかえりをまっててくださったんですね!」
彼女は上機嫌で帰ってきた。機嫌が良いのは酒のせいもあれど、妹紅が灯りをつけて家で待っていてくれたことが大きいようである。
その様子にため息をつきながら、妹紅は慧音の靴を丁寧に脱がせた。そして足取りのおぼつかぬ慧音を支えて円座に座らせ、こんなこともあろうかと用意していた冷えた檸檬水を彼女にあてがいながら、妹紅は『ここにいるつもりなんてなかったのに』と心の中で呟いた。本当は慧音などもう知らぬと、自分の東屋でさっさと眠るつもりだったのに。もし自分のいない間に、酔っ払った慧音が里の誰ぞを家に引っ張り込みはしないか、と思いいたってしまったのが運の尽きだった。里の連中ならまだましというもの、それが物の怪の類の奴らであったとしたらと思うと、妹紅は怒りと恐怖でぞっとした。
「もこうどの?」
慧音の声で、妹紅ははっと我に返った。酔った慧音の声はいつもよりも甘くて舌足らずだ。白い頬は赤く火照り、普段はききりとした柳眉も今はへにょんとしてしまっている。
「・・・わたしが、帰るのがおそかったから。それでそんなこわい顔になっているのですか?」
潤んだ瞳で慧音は言う。妹紅お手製の檸檬水が効いたのか、それでも妹紅が怒っているのだと思ったせいなのか。慧音の酔いは少しずつひいてきているようだった。苛ついているのは事実だったが、慧音を悲しませるのは本意ではないので、妹紅は仕方なくかぶりを振る。
「別に怒ってなんかいないわよ。それより慧音、里の宴会は楽しかった?」
ごまかすように訊いてみる。「楽しかった」だなんて答えは聞きたくないのに。
「……宴はつつがなく。里の者たちは、妹紅どのがこないのを残念そうにしていましたよ」
まだ頬は紅を差したように赤らんでいるままであるが、だいぶいつもの調子に戻ったように慧音はそう言うと、またひとくち檸檬水を飲んだ。
「ふうん。物好きな連中ね」
「物好きなんかじゃありませんよ。私も本当に残念だったのですから」
まだ宴会に出なかった恨みごとを言われるのだろうかと身構えながら檸檬水を自分の杯にも注いで、口をつける。こんなものでは酔えもしないが、そのままの檸檬の味が舌をさわやかにしてくれる。慧音の機嫌を損ねたくなくて、妹紅はつい舌触りのよい言葉を吐いてみる。
「悪かったってば……。次の機会があったら、出られるように、考えてみるから」
「そうしてください。でないと、今度こそ私が里の者たちに怒られてしまいます」
「は? 怒られる? 慧音が?」
突拍子もない慧音の言葉に、妹紅の頭には憤慨する間もなく疑問詞がわいた。
「そう、私が。怒られるんです」
「なんで?」
「私が貴女を、独り占めしているから」
慧音はこともなげに言う。明るさを抑えた電灯の下で、ちゃぶ台に肘をつく慧音の横顔。長い睫毛の描き出すカーブ。妹紅の目に映る彼女は、いつものとおりに美しい。
「妹紅どのは皆の人気者なのに。私が独り占めしているから、宴会に来ないのだと言われてしまいます」
慧音はどうやらまだ酔っているのだと、妹紅は思った。そうでなければ、こんなことを慧音が言うはずがない。
「だけどほんとうのことだから、私はいつも彼らにうまく言い訳できないのです。」
「……ほん、とう?」
「はい。私が妹紅どのを独り占めしたいと思っているから」
慧音が酔っているのでなければ、きっと自分は夢を見ているのだと妹紅は思った。
「……どうか、気色の悪い女だと、思わないでください。迷いの竹林で、偶然ぼろぼろの貴女を見つけて、家に連れて帰ったときは、ただただ、貴女が心配で、ほっておけなかっただけなんです」
「だけど少しずつ貴女を知って、私は勝手に貴女に親近感を覚えて行きました。人と妖怪の狭間で復讐だけを拠り所にして生きてきた貴女は、強くて、孤独で、悲しくて……どうしようもなく惹かれました。……いつかの夜、妹紅どのに、貴女は人間です、と言ったことを覚えていますか。あの言葉に嘘偽りはありませんが、私は、貴女に『慧音も人間だよ』と言ってほしくて、そう言ったのかもしれません」
夢の中の慧音が、妹紅を見た。涙で潤んだ瞳をたずさえて、彼女の赤くてまるい唇がひらく。
「妹紅どのが里の皆に受け入れられるのは、とてもうれしかったけど。ほんとうは少し、いやでした。里の人たちの話題に出てくる貴女はいつも親切で朗らかで明るくて。私の知っている妹紅どのじゃなくて、まるで別の誰かのように思えて、まるで貴女が遠くに行ってしまったように思えて、それがとてもこわくて――」
夢かどうかを確かめたくて、妹紅は慧音の手首をとる。少し力を込めただけで、慧音の半身は妹紅にあずけられてしまった。慧音の白い手も、柔らかな身体も、仄かなアルコールと檸檬の匂いも、暖かな身体の重みも、全て、現実の、今そこにいる慧音のものだった。
五
私もずっと怖かった。
慧音は優しくて、おせっかいだから。
永い永い時間と憎しみと生にがんじがらめになって凝り固まった私をほぐしたのも、迷子になった里の子どもを助けるのも同じようなことだと思われていたらどうしようかと、怖くて、不安で、慧音には絶対に秘密だけれど、本当は何度も何度も、貴女を想って喉を掻き切った。目玉を抉った。腕を切り落とした。貴女に想いを告げてしまわないように。熱のこもった瞳で、貴女を見つめすぎないように。清廉な貴女に触れて、汚してしまわないように。殺してしまわないように。何度も何度も何度も死んで、でも生き返ってみたらやっぱり、慧音のことが好きだった。
月も見ていないような夜の帳のなかで、ふたりは長い時間睦みあった。
妹紅の唇は慧音の身体じゅうをあますところなく愛したし、その手は慧音の柔らかな部分や湿った粘膜を性急にまさぐった。でもその動きは乱暴なものではなくて、ああ、私はこんな風にだれかを愛することができるのだと妹紅は嬉しく思った。
慧音は妹紅の髪を優しくなでて、美しい銀糸を指であそばせている。彼女もまた幾度も幾度も妹紅に口づけを落とし、おずおずとではあるけれども、妹紅の内側を懸命に愛した。
それはいつまでもいつまでも終わらなかった。永遠のように続く緩い快と、どちらのものともいえぬ声。妹紅を悦ばせようと、慣れない行為に没頭する慧音をみて、妹紅の心は打ち震える。
あの堅物で案外頑固が慧音が、同じ女である私を愛してくれることが嬉しかった。
人にも、物の怪にも、ましてや月の民になどとてもなれぬ私の身体を、清廉な彼女が懸命に愛してくれることが嬉しかった。
慧音も完全な人間ではないのに。ましてや獣にもなりきれぬのに。確固たる意思と努力と明晰さで、人間の里に居場所を作ってしまった慧音が、何物にもなれぬ私とおんなじところに来てくれたようで、それが、何より妹紅を幸せにした。
六
長すぎる夜がやっと明けて、鎧戸の隙間から洩れる日の光で妹紅は目を覚ました。そしていつものように隣に眠る慧音の寝顔を見る。もう、私たちはいつもどおりではなくなってしまったのに。閉じたまぶたに隠された瞳も、美しく涼しげな髪も、柔らかな白い肌も、もう全部、変わってしまった。
その証拠に、慧音は今朝は深く寝入っている。普段なら妹紅が目を覚ましてから小半刻ほどすれば目を覚ます彼女が、今日は自分から目を覚ます様子がない。
慣れない行為に疲れたのだろう、と妹紅は思った。慧音の身体には愛された痕がいくつもあったが、それは妹紅も同じことであるのが、それを物語っている。
このまま慧音を起こさなかったら、どうなってしまうのだろうと妹紅は考える。
今日も慧音は寺子屋で授業だ。きっといつものように子どもたちは慧音先生を待っているし、慧音も笑顔で彼らを出迎えねばならない。そのためには、そろそろ慧音を起こしてあげなければ。先生が授業に遅刻するだなんて、きっと子どもたちに笑われてしまう。
稗田阿求と歴史書の批評会を行う予定があるとも言っていたし、近々香霖堂に寄って、古書を漁る予定だとも言っていた。里の寄り合いだった結構な頻度で行われている。
それらによって構成されるのは、しっかりもので責任感が強く、人々に信頼される、だけど怒ると少しだけ怖い、里の知識人としての慧音。私の心を照らしてくれた慧音だ。彼女の優しさが、こわいほどのまっすぐさが、私はとても羨ましくて、眩しくて。
あんまりにも眩しいものだから、その光は私の目を潰した。
慧音が私を人間だと言ってくれたことがとても嬉しかった。人でも物の怪でもない慧音が、その可憐な容姿に似合わぬ醜い満月の姿で、そう言ってくれたから。
私は恋に落ちた。何年も何年も生きて、死んで、死んで、やっぱり生きてきてしまった私は私と同じいびつな彼女に恋をして、清廉な慧音の光にあてられてめしいになって、それでも私は、彼女を求めた。
慧音を起こしたくないと思う。ただの半獣の女として、ふたりきりで愛し合って、私と同じくらい孤独になってほしいと思う。貴女に私のような辛い思いはさせないから、慧音が老いて枯れて死ぬまでずっと、私がそばにいると誓うから。だから。
「ん……」
慧音が寝がえりをうった。汗を吸いすぎた布団が不快なのか、眉根に小さくしわをよせている。生きている慧音。私とおんなじなはずなのに、ここだけが違う、と妹紅は思った。
慧音の胸に触れて、鼓動を感じてみる。一定のリズムを打つそれは、私の身体にもあるはずなのに、なんだか違うもののような気がした。慧音の鼓動は暖かくて、そのまま触れてしまっていたら、妹紅の心をやわらかくしてしまう。
それがいいことなのかそうではないのか、妹紅にはわからなくて、考えて考えて、でもやっぱりわからなかったものだから、彼女は思わず「慧音、朝だよ。起きて」と眠る慧音に声をかけた。
嫉妬妹紅可愛いよ妹紅
ちゃんと注意書きもありますし、セーフで良いのではないかと思います
ご馳走様でした