キャラが多少壊れております。
この度、幻想郷を揺るがした事件について貴重な取材記録が発見された。
記録の中身はインタビュー、実際の見聞などごちゃ混ぜの走り書きの様なものであったが、偶然入手した私が時間軸を整え内容を整理した。
最早この大事件を知らぬ者など居ないと思われるが、ご存知の通り一月ほど前に「リモコン隠し妖怪」なる者が幻想郷入りした。
当時、この妖怪が幻想郷入りした経緯について取材を受けた稗田は不可解にも「この妖怪は昔から居たし、これからも出没する」とだけ答えて茶を濁し現在に至る。
以下、整理されたメモの内容
発端は誰も覚えていなかったが、諸々の証言からして恐らくこの事件ではないかと思われる。
マヨヒガにて橙がテレビのチャンネルを回そうとした際の事であった。
「藍様、テレビのリモコンが見当たりません」
「おかしいな、さっきまで持っていたんだけど。紫様はご存じありませんか?」
真っ先に夕食を平らげた紫は、大きく出た腹をさすりながら首を横に振った。
「変だね」
結局リモコンは翌日、敷物の下で発見された。
この時藍は、橙の目に自分と同様の深い猜疑心が浮かんでいるのを見逃さなかった。
それから数日(2,3日だと思われるが何しろ間抜けな猫と狐の言であるからして定かではない)
して霊夢がマヨヒガを訪ねて来た。
すると、彼女は怒りも露わに突然藍に掴みかかった。
「あんたのところの主人のせいで」
何事かと慌てた藍が必死に霊夢をなだめすかして事情を聞くと、「紫がハサミや箸を隠すので生活がままならない」
とのことであった。
藍は頭を抱えた。
その日は「自分も苦しんでいるのだ、近々なんとかするから」と説得して帰すことに成功したものの、藍の胸には少なからず怒りの炎が燃え上がった。
そして、この一件を契機に被害が表面化したことによって、幻想郷内にある動きが起きた。
「私もリボンを隠された」、「ペンが消えた」、「本がどこかにいってしまった」
と妖怪連中がここぞとばかりに被害を訴え出したのだ。
これらに共通して言えることとしてあまり大きな物は被害に遭っておらず、消えた失せ物はその内どこかから出てきた。
よくよく考えてみれば何とも不可思議な話であるが、そこは集団心理の恐ろしさ。
「隙間妖怪のせいに違いない、陰湿なあいつのやりそうな事だ」と紫は断罪された。
悪評も高まって来たある時、藍は紫に尋ねた。
「紫様、ご相談が」
「あらあら、何かしら」
「ここ最近、幻想郷内の悪評をどう思われておりますか」
「そんなの今に始まったことじゃないでしょうに」
やれやれ、と紫は横になって眠りに入ろうとした。
「紫様、あなたの悪行が目立つと言っているのです。とぼけないでください」
「悪行?」
紫はじろりと藍を睨んだ。
「その、大妖怪ともあろうお方がリモコンやら鍵やら隠して恥ずかしいと思わないのですか」
「何ですって」
藍は一層、激しくまくしたてた。
「この間だって、橙の下着をいやらしい物とすり替えておくし、私の尻尾を一本減らしたり増やしたりさせて遊ぶし」
「確かにそれをやったのは私だけど、リモコンなんか隠さないわ」
二人の剣幕に驚いた橙が泣き出し、藍の怒りが遂に爆発した。
「皆がどれほど迷惑しているか、知っているのですか。私は苦情の処理係ではないのです」
「知らないっていったら知りません」
「ああ、そうですか、あくまでもシラを切るんですね。尊敬していたのに見損ないました。
私はこの騒ぎが収まるまで出て行きます。当分どこぞの幽霊にでも世話をしてもらったらいいでしょう」
こうして藍は橙を連れて博霊神社に家出し、哀れ紫は一人マヨヒガに取り残された。
家族喧嘩が子供の取り合いにまで発展した場合、割を食うのは大抵父親である。
今思えば、普段から従者の信用を獲得しておかなかったことが彼女の悲惨な末路を決定的にしたと思われる。
それから間を置かず、博霊神社において大集会が行われた。
霊夢を発起人とするこの集会は、紫を除いて幻想郷の全実力者が参加する非常に大規模なものになった。
被害の甚大さを物語る一端である。
議題はもちろん「紫の処置」についてであった。
当初は様子を見て駄目なら焼き討ちという事で進められていたが、会議の途中で異変が起きた。
「わ、私の八卦炉が無い」
魔理沙が声を上げると同時に全員が立ち上がった。
「あ、あの野郎」
「見られてる」
霊夢が頷いた。
「宣戦布告だわ」
「やはり」
「やりましょう、徹底的に」
最早この状況において異論を唱える者など存在しなかった。
間もなく幻想郷過激派(霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢、レミリアその他)による紫捕獲部隊が結成されたが、
いよいよ出発という時になって今度は靴ベラが消え失せた。
一同は愕然とした。
「か、からかってやがる」
「あっちは本格的にやる気よ」
そして、数時間後ぼろ布のようになった紫が博霊神社に運ばれてきた。
終始申し訳なさのため隅っこに座っていた藍と橙が真っ先に哀れな主人に駆け寄って涙した。
「どうして、どうして素直に白状してくれなかったんですか」
「私はやってないの。本当よ」
紫もぼろぼろ涙をこぼした。
「じゃあ、誰が」
「分からないわ。誰か他に真犯人がいるのよ」
「まだ言うか」
霊夢が紫の胸ぐらを掴んだ。
「もう殴らないでっ」
紫を交えての話し合いが平行線を辿ったため、
その場はお開きとなり紫は白玉楼にて幽々子と妖夢の24時間監視下に置かれることになった。
藍は紫が「三食付き」と聞かされた時の嬉しそうな顔を見逃さなかった。
問題はそれからである。
驚く事に、紫を監視下に置いてからも紛失事件は後を絶たなかった。
むしろ増えた。
頭を抱えたのは焼き討ち組である。
大義名分を掲げて紫をぼこぼこにしてしまった以上、これでは示しが付かない。
またしても焼き討ち組や実力者間での話し合いが博霊神社にて開かれた。
「どうしてくれるんだ、霊夢」
事後、上着のポケットの中から八卦炉を発見した魔理沙が問い詰めた。
「これじゃあ、他の奴らに示しが付かないぜ。まさか勘違いでしたってオチじゃないだろうな」
「勘違いなわけないでしょ。実際こうして被害が出ているんだから。
妖夢、大体あんたちゃんと監視してるの? 紫はあれからまた太ったって言うじゃない。いっそのこと飯抜きにしなさい」
博霊神社の靴ベラは棚と壁の隙間に落ちているのが発見された。
「私はちゃんとやってますよ。誰でもいいからさっさとあの妖怪を引き取ってください。監視も疲れるんです、朝から晩までやだやだやだやだ」
妖夢がヒステリーを起こしたが、構わず霊夢は話しを続けた。
「今更、紫に何て言い訳すればいいの。私は思いっきり跳び蹴りを入れたのよ」
実際には跳び蹴りだけでなく、平手打ちなども含まれていた。
「絶対真犯人は別にいるわ、そうじゃなきゃ困るのよ」
「リモコン隠し妖怪」
藍がぼそりと呟くと、一同が一斉に彼女の方を向いた。
「何ですって」
「リモコン隠し妖怪」
藍は先ほどよりも大きな声ではっきりと言った。
残念ながらこれ以上のことはメモの汚損が激しいため読み取れず、確認できた範囲で「リモコン隠し妖怪」の名称が用いられていたのは二度だけである。
普段報道されているものとは全く違った観点からの記録であったが、これは恐らく消されるはずであった類の資料と思われる。
今現在も霊夢と紫を筆頭にリモコン隠し妖怪の捜索が行われているが、果たして退治される日は来るのだろうか。
この度、幻想郷を揺るがした事件について貴重な取材記録が発見された。
記録の中身はインタビュー、実際の見聞などごちゃ混ぜの走り書きの様なものであったが、偶然入手した私が時間軸を整え内容を整理した。
最早この大事件を知らぬ者など居ないと思われるが、ご存知の通り一月ほど前に「リモコン隠し妖怪」なる者が幻想郷入りした。
当時、この妖怪が幻想郷入りした経緯について取材を受けた稗田は不可解にも「この妖怪は昔から居たし、これからも出没する」とだけ答えて茶を濁し現在に至る。
以下、整理されたメモの内容
発端は誰も覚えていなかったが、諸々の証言からして恐らくこの事件ではないかと思われる。
マヨヒガにて橙がテレビのチャンネルを回そうとした際の事であった。
「藍様、テレビのリモコンが見当たりません」
「おかしいな、さっきまで持っていたんだけど。紫様はご存じありませんか?」
真っ先に夕食を平らげた紫は、大きく出た腹をさすりながら首を横に振った。
「変だね」
結局リモコンは翌日、敷物の下で発見された。
この時藍は、橙の目に自分と同様の深い猜疑心が浮かんでいるのを見逃さなかった。
それから数日(2,3日だと思われるが何しろ間抜けな猫と狐の言であるからして定かではない)
して霊夢がマヨヒガを訪ねて来た。
すると、彼女は怒りも露わに突然藍に掴みかかった。
「あんたのところの主人のせいで」
何事かと慌てた藍が必死に霊夢をなだめすかして事情を聞くと、「紫がハサミや箸を隠すので生活がままならない」
とのことであった。
藍は頭を抱えた。
その日は「自分も苦しんでいるのだ、近々なんとかするから」と説得して帰すことに成功したものの、藍の胸には少なからず怒りの炎が燃え上がった。
そして、この一件を契機に被害が表面化したことによって、幻想郷内にある動きが起きた。
「私もリボンを隠された」、「ペンが消えた」、「本がどこかにいってしまった」
と妖怪連中がここぞとばかりに被害を訴え出したのだ。
これらに共通して言えることとしてあまり大きな物は被害に遭っておらず、消えた失せ物はその内どこかから出てきた。
よくよく考えてみれば何とも不可思議な話であるが、そこは集団心理の恐ろしさ。
「隙間妖怪のせいに違いない、陰湿なあいつのやりそうな事だ」と紫は断罪された。
悪評も高まって来たある時、藍は紫に尋ねた。
「紫様、ご相談が」
「あらあら、何かしら」
「ここ最近、幻想郷内の悪評をどう思われておりますか」
「そんなの今に始まったことじゃないでしょうに」
やれやれ、と紫は横になって眠りに入ろうとした。
「紫様、あなたの悪行が目立つと言っているのです。とぼけないでください」
「悪行?」
紫はじろりと藍を睨んだ。
「その、大妖怪ともあろうお方がリモコンやら鍵やら隠して恥ずかしいと思わないのですか」
「何ですって」
藍は一層、激しくまくしたてた。
「この間だって、橙の下着をいやらしい物とすり替えておくし、私の尻尾を一本減らしたり増やしたりさせて遊ぶし」
「確かにそれをやったのは私だけど、リモコンなんか隠さないわ」
二人の剣幕に驚いた橙が泣き出し、藍の怒りが遂に爆発した。
「皆がどれほど迷惑しているか、知っているのですか。私は苦情の処理係ではないのです」
「知らないっていったら知りません」
「ああ、そうですか、あくまでもシラを切るんですね。尊敬していたのに見損ないました。
私はこの騒ぎが収まるまで出て行きます。当分どこぞの幽霊にでも世話をしてもらったらいいでしょう」
こうして藍は橙を連れて博霊神社に家出し、哀れ紫は一人マヨヒガに取り残された。
家族喧嘩が子供の取り合いにまで発展した場合、割を食うのは大抵父親である。
今思えば、普段から従者の信用を獲得しておかなかったことが彼女の悲惨な末路を決定的にしたと思われる。
それから間を置かず、博霊神社において大集会が行われた。
霊夢を発起人とするこの集会は、紫を除いて幻想郷の全実力者が参加する非常に大規模なものになった。
被害の甚大さを物語る一端である。
議題はもちろん「紫の処置」についてであった。
当初は様子を見て駄目なら焼き討ちという事で進められていたが、会議の途中で異変が起きた。
「わ、私の八卦炉が無い」
魔理沙が声を上げると同時に全員が立ち上がった。
「あ、あの野郎」
「見られてる」
霊夢が頷いた。
「宣戦布告だわ」
「やはり」
「やりましょう、徹底的に」
最早この状況において異論を唱える者など存在しなかった。
間もなく幻想郷過激派(霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢、レミリアその他)による紫捕獲部隊が結成されたが、
いよいよ出発という時になって今度は靴ベラが消え失せた。
一同は愕然とした。
「か、からかってやがる」
「あっちは本格的にやる気よ」
そして、数時間後ぼろ布のようになった紫が博霊神社に運ばれてきた。
終始申し訳なさのため隅っこに座っていた藍と橙が真っ先に哀れな主人に駆け寄って涙した。
「どうして、どうして素直に白状してくれなかったんですか」
「私はやってないの。本当よ」
紫もぼろぼろ涙をこぼした。
「じゃあ、誰が」
「分からないわ。誰か他に真犯人がいるのよ」
「まだ言うか」
霊夢が紫の胸ぐらを掴んだ。
「もう殴らないでっ」
紫を交えての話し合いが平行線を辿ったため、
その場はお開きとなり紫は白玉楼にて幽々子と妖夢の24時間監視下に置かれることになった。
藍は紫が「三食付き」と聞かされた時の嬉しそうな顔を見逃さなかった。
問題はそれからである。
驚く事に、紫を監視下に置いてからも紛失事件は後を絶たなかった。
むしろ増えた。
頭を抱えたのは焼き討ち組である。
大義名分を掲げて紫をぼこぼこにしてしまった以上、これでは示しが付かない。
またしても焼き討ち組や実力者間での話し合いが博霊神社にて開かれた。
「どうしてくれるんだ、霊夢」
事後、上着のポケットの中から八卦炉を発見した魔理沙が問い詰めた。
「これじゃあ、他の奴らに示しが付かないぜ。まさか勘違いでしたってオチじゃないだろうな」
「勘違いなわけないでしょ。実際こうして被害が出ているんだから。
妖夢、大体あんたちゃんと監視してるの? 紫はあれからまた太ったって言うじゃない。いっそのこと飯抜きにしなさい」
博霊神社の靴ベラは棚と壁の隙間に落ちているのが発見された。
「私はちゃんとやってますよ。誰でもいいからさっさとあの妖怪を引き取ってください。監視も疲れるんです、朝から晩までやだやだやだやだ」
妖夢がヒステリーを起こしたが、構わず霊夢は話しを続けた。
「今更、紫に何て言い訳すればいいの。私は思いっきり跳び蹴りを入れたのよ」
実際には跳び蹴りだけでなく、平手打ちなども含まれていた。
「絶対真犯人は別にいるわ、そうじゃなきゃ困るのよ」
「リモコン隠し妖怪」
藍がぼそりと呟くと、一同が一斉に彼女の方を向いた。
「何ですって」
「リモコン隠し妖怪」
藍は先ほどよりも大きな声ではっきりと言った。
残念ながらこれ以上のことはメモの汚損が激しいため読み取れず、確認できた範囲で「リモコン隠し妖怪」の名称が用いられていたのは二度だけである。
普段報道されているものとは全く違った観点からの記録であったが、これは恐らく消されるはずであった類の資料と思われる。
今現在も霊夢と紫を筆頭にリモコン隠し妖怪の捜索が行われているが、果たして退治される日は来るのだろうか。
確かにこういうことは多発するからゆかりんのせいにしてしまってもおかしくないなw
なくなった食べ物が数ヶ月後に思わぬところから出てきたりしたら
リモコン隠し妖怪、許すまじw
しかし、物を隠す→胡散臭い?→紫の仕業、といった思考は二次特有のもので原作にはどこにも描写がない表現なので、二次か原作のどちらを念頭において読むかによって捉え方がガラリと変わります
ストーリーもさして盛り上がりもなく下がりもなく、安易といえば安易な内容なので総評としてはこれくらいですか
幻想郷には色々な能力持ちがいるから、風評被害というか報道被害の類も
馬鹿にならなかったりするんだろうなぁ。
最後、新しい犯人の概念を作って有耶無耶にする辺りが有りそうで怖い。
遠距離から気づかれずに物を隠す「能力」を持ってる人(妖)と言われて思いつくのは
咲夜さんか紫ぐらいしかいない。
幻想郷過激派で咲夜さんとレミリアが居るってことは被害に遭ったと考えられる。
あとは消去法で紫になるだけ。二次設定云々は関係無いだろ。
最後の一行には同感だが
あれはゆかりんの仕業かと思っていたのに・・・
あれはゆかりんの仕業じゃなかったんだね…
リモコン隠し妖怪恐ろしい。
散々疑われ叩かれつつも騒ぎに乗じて
ちゃっかり物を隠してそうなゆかりんも恐ろしい。
全体的にヤマが無いと言うか、平坦な文章だったような。
後、最初と最後がせっかくの臨場感を減衰させていると感じました。狙っているなら失礼。
今年で3個目です。
皆の集団催眠のような動きが読んでいて面白かったです。
集団心理って怖いよね。
なんでかわからないけど笑ってしまうww
もしくは、分からないものについて、適当に名前をつけてそれで分かったつもりになること。
ネットってそういった頭に余裕の無いコミュニケーションの温床ですよね。
彼奴には何回苦渋を味わわされたことか。