Coolier - 新生・東方創想話

すれ違い

2016/03/15 21:54:47
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「あ、早苗さんこんばんは。随分とお久しぶりですね」

満月が明るく輝く夜、そういって僕はばったりと出くわした彼女に会釈した。早苗さんは数年前に外から幻想郷にやってきたが、今ではすっかり人里に馴染んでいる。彼女がやってきた当時、最初に守矢教への勧誘を受けた僕はそれ以来事あるごとに彼女と顔を合わせている。最初は勧誘の熱心さに軽くウンザリしたが、今ではただ世間話をするだけの関係になっていた。
いつからか僕は、そんな関係を心地良く思っている。

「そうなんですよ〜、ここ数週間大仕事に出てましたから……✕✕さんと最後に会ったのはいつでしたっけ…?」

「ちょうど1ヶ月ぐらいじゃないですか?前も満月だった気がします」

「そんなに時間経ってないんですね、結構長く感じましたが」

「僕もですよ」

なんだか気恥ずかしくなった。早苗さんに会うのが待ち遠しかった、なんてとても言えない。

「……」

早苗さんが俯いて黙り込む。何か言わなきゃいけない、そんな気がした。

「つ、月が綺麗ですね?」

「えっ…と、どういった、意味ですか…?」

「ど、どうって、言葉通りの意味ですが…?」

「そう…ですよね、すみません」

結局僕が口にしたのは他愛もないことだった。でも早苗さんの反応がよく分からない。月が綺麗に意味も何もないと思うんだけれど……
心なしか早苗さんがションボリして見える。何か不味いことを言ったのだろうか。

「月!そう、私月に行ったんですよ!」

明るい声を彼女があげる。でも空元気に感じる。

「月…?」

「そう!月です!今回の異変はどうやら月が絡んでたみたいで、神奈子様達に解決するよう命じられたんです!」

「なんだか想像出来ないです……あそこに行くなんて」

早苗さんと頭上の月を見上げる。なんだろう、ふと思ってしまった。彼女は現人神で、風祝で、霊夢さんみたいに異変を解決しにいくんだ。

「行ってみたら割と普通ですよ…それでは夜も遅いですし、ここらへんで」

「…あ、はい。それでは……また」

僕は彼女の性格も、好きな食べ物も知っている。それでも外にいたときの彼女や異変を解決するときの彼女を知らない。きっとそのことから目を背けてたんだ。以前人里で霊夢さんを見かけた時に、別次元の存在だと、住む世界が違うと感じた。きっと早苗さんも気さくなだけで彼女と同じなのだろう。
僕には手の届かない存在。そう思うとなんだか悲しくなった。

閲覧ありがとうございます
uncure
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コメント



0.250簡易評価
4.70絶望を司る程度の能力削除
短いながらしっかり纏まっていたと思います。良かったです。
5.60名前が無い程度の能力削除
今後に期待しますぞ
6.80名前が無い程度の能力削除
これ、成就しない系の奴や…
んでお互いに家庭を持った後に再開した時「実はあの頃〜」みたいな話で盛り上がって、実は両思いだった事に気付くが時既に遅く、子供が家で待ってるからって別れた後に、過ぎ去った青春に想いを馳せるパターンや
そうであろう?
8.70名前が無い程度の能力削除
あーーーーっ!! もどかしいーーーー!!
9.80奇声を発する程度の能力削除
短いながらも良かったです
10.10名前が無い程度の能力削除
微妙
14.70名前が無い程度の能力削除
月が綺麗ですね…文学的表現に反応する早苗さん可愛い
青年は頑張れ超頑張れ