天界の天人。
地上のモノからすれば、それこそ日々が祭日のような暮らし。
加え、自由に学を積むことも出来る。
得難い甘美な生活。
その実そう思っていられるのも束の間。
否、甘いが故に瞬く間に飽きを感じてしまうのかも知れない。
そんなことを考えながら、天子は地上へと向かう。二度崩壊した博麗神社を目指し。
緋想の剣は、持たなかった。
「こんにちは」
「あら、わざわざ天界からご苦労様。また痛い目にでも会いたいの?」
さらりと微笑みながら霊夢は天子を迎えた。割と本気だろう。そして誰が相手になるのか気になる。
「結構ですわ。否定の意味で」
「そう。じゃお土産持ってきて出直しなさい」
「いやらしいのね」
「お茶出してあげるから、今度からそうしてくれるとありがたいわ」
「それはどうも。心掛けます」
天子は縁側に座り、霊夢を待った。
「で?何しに来たの?」
茶を淹れた湯飲みを差し出し、天子と並ぶように霊夢も座った。
「ちょっとした退屈凌ぎに」
「・・・魔理沙でも来れば、相手して貰うんだけどねぇ」
「ぞっとしないわね」
「よく言うわ・・・。って、今日はあの剣持って来てないんだ」
「そう言えば、地上には貴方以外にも中々の力を持つモノが多くいるのね」
「ええ、面倒な連中だわ」
霊夢は苦笑いをしながら言う。
「死神もお迎え役はよく相手にしたものだけど、船頭役は初めてだったわ」
「船頭・・・ああ、小町かしら。本当にサボマイスタね・・・」
「問題児なんですか」
「貴女と同じでね。閻魔もちゃんと教育しなさいっての」
天子は一考して、尋ねた。
「彼女は何処にいるの?」
「あいつの所へ挨拶に行くの?」
「ええ」
「強いて言うなら三途の川かしらね。何処か別のところにも足を運んでそうだけど」
「そうですか。お茶、ありがとう」
「気が早いわね。ま、行ってらっしゃい」
「また機会があれば、天界のお土産を差し上げましょう」
三途の川。
霊夢の言った通り、小町はそこにいた。岩を背もたれにして川原で眠っている。
なるほど問題児だと天子は思った。
天子が歩み寄り、ある程度の間になると彼女は天子に気付く。
「おや、腐れ天人様じゃないか」
「その節はどうも。サボマイスタさん」
「誰の受け売りだいそりゃ・・・」苦笑する小町。
「さて、誰かしらね」
「此処に来たなんて、いよいよ渡る気にでもなったかい?」
爽やかな笑顔で小町は言う。死ぬか?という意味だ。
「ええ、それも面白いと思って」
「ほう」
小町は立ち上がり、身体を天子へと向ける。
「ただ・・・」
天子は不敵な笑みを浮かべる。
「自分より弱い存在に、逝かされるのは癪だわ」
互いの距離は小町の10歩と言ったところか。
「言うじゃないか。あの時負けた上、今は剣もないときてるのに」
だが小町は一瞬でその間を詰めるだろう。
「あれが私の本気だと思って?」
小町は鼻で笑う。まだ一切の間を詰めない。
「上等上等。お迎えさんがあの程度で伸されるようじゃ、あたいも悲しいってもんだ」
どちらかと言えば、自分より霊夢の方が小町に似ている。そんな事を思い、天子は掌を小町へと向けた。
「ルールは要らないわね?」
自分で言い、天子は身を硬くした。これで死ぬかも知れない。
「勿論。最期に言っておいてやろう。地獄は甘くない」
小町は鎌を構えた。その刹那、天子は眼が、脚が震え
「楽しみだわ」
自分が敗北する光景を思い浮かべてしまった。
「それじゃ」
小町がその場から消える。
― 鎌の間合いより遠くへ
鎌が振り下ろされる。
― 撃て、脇腹へ刺せ!
石を叩く音と、ゲッと小さな嗚咽がクリアに聴こえる。
― まだ止まれない、止まるな!
脇腹に要石が刺さった小町。一瞬天子と目が合う。
緊張感が高まる。
が、気付いた。
― 石を叩く?
小町から気が抜けるのが、天子には分かった。
「あんたもか?」
やや苦しげに、小町は笑う。
彼女が何を言っているのか一瞬考え、要石を当てた部位を言っているのだと理解した。
鎌の先端は、天を指している。
「・・・何それ」
「ちょっとお仕置きと思ったけど、中々素早いもんだね」
「私をからかっていたと?」
「お前さんもだろう?脇腹に一度入れて、次に決めるつもりだったのなら別だけどさ」
天子は舌打ちする。
「・・・飛んだ茶番だわ」
「そう言わない。あたいが勝手に殺すとマズいんだ」
「もし私が僅かに怯んだ貴女に止めを刺したら?その前に逃げ果せたとでも?」
「どうだかねぇ・・・」小町は川原へ座った。
「ま、死に急ぐもんじゃない。悪さしない限りその時まで生きるが得さ」
「そうね。少なくとも、貴女を殺してからこの川を渡りたいわね」
「おっかないもんだ。あたいはお前さんを殺せやしないってのに」
「それは貴女の為?私の為?」
「どっちかねぇ」
「・・・興が醒めた。帰る」
「あたいもそろそろ仕事に戻るか」
天子は小町へ背を向ける。
「今度は差し入れでも持ってきておくれよ」
天子は微笑む。
「そうしますわ」
地上のモノからすれば、それこそ日々が祭日のような暮らし。
加え、自由に学を積むことも出来る。
得難い甘美な生活。
その実そう思っていられるのも束の間。
否、甘いが故に瞬く間に飽きを感じてしまうのかも知れない。
そんなことを考えながら、天子は地上へと向かう。二度崩壊した博麗神社を目指し。
緋想の剣は、持たなかった。
「こんにちは」
「あら、わざわざ天界からご苦労様。また痛い目にでも会いたいの?」
さらりと微笑みながら霊夢は天子を迎えた。割と本気だろう。そして誰が相手になるのか気になる。
「結構ですわ。否定の意味で」
「そう。じゃお土産持ってきて出直しなさい」
「いやらしいのね」
「お茶出してあげるから、今度からそうしてくれるとありがたいわ」
「それはどうも。心掛けます」
天子は縁側に座り、霊夢を待った。
「で?何しに来たの?」
茶を淹れた湯飲みを差し出し、天子と並ぶように霊夢も座った。
「ちょっとした退屈凌ぎに」
「・・・魔理沙でも来れば、相手して貰うんだけどねぇ」
「ぞっとしないわね」
「よく言うわ・・・。って、今日はあの剣持って来てないんだ」
「そう言えば、地上には貴方以外にも中々の力を持つモノが多くいるのね」
「ええ、面倒な連中だわ」
霊夢は苦笑いをしながら言う。
「死神もお迎え役はよく相手にしたものだけど、船頭役は初めてだったわ」
「船頭・・・ああ、小町かしら。本当にサボマイスタね・・・」
「問題児なんですか」
「貴女と同じでね。閻魔もちゃんと教育しなさいっての」
天子は一考して、尋ねた。
「彼女は何処にいるの?」
「あいつの所へ挨拶に行くの?」
「ええ」
「強いて言うなら三途の川かしらね。何処か別のところにも足を運んでそうだけど」
「そうですか。お茶、ありがとう」
「気が早いわね。ま、行ってらっしゃい」
「また機会があれば、天界のお土産を差し上げましょう」
三途の川。
霊夢の言った通り、小町はそこにいた。岩を背もたれにして川原で眠っている。
なるほど問題児だと天子は思った。
天子が歩み寄り、ある程度の間になると彼女は天子に気付く。
「おや、腐れ天人様じゃないか」
「その節はどうも。サボマイスタさん」
「誰の受け売りだいそりゃ・・・」苦笑する小町。
「さて、誰かしらね」
「此処に来たなんて、いよいよ渡る気にでもなったかい?」
爽やかな笑顔で小町は言う。死ぬか?という意味だ。
「ええ、それも面白いと思って」
「ほう」
小町は立ち上がり、身体を天子へと向ける。
「ただ・・・」
天子は不敵な笑みを浮かべる。
「自分より弱い存在に、逝かされるのは癪だわ」
互いの距離は小町の10歩と言ったところか。
「言うじゃないか。あの時負けた上、今は剣もないときてるのに」
だが小町は一瞬でその間を詰めるだろう。
「あれが私の本気だと思って?」
小町は鼻で笑う。まだ一切の間を詰めない。
「上等上等。お迎えさんがあの程度で伸されるようじゃ、あたいも悲しいってもんだ」
どちらかと言えば、自分より霊夢の方が小町に似ている。そんな事を思い、天子は掌を小町へと向けた。
「ルールは要らないわね?」
自分で言い、天子は身を硬くした。これで死ぬかも知れない。
「勿論。最期に言っておいてやろう。地獄は甘くない」
小町は鎌を構えた。その刹那、天子は眼が、脚が震え
「楽しみだわ」
自分が敗北する光景を思い浮かべてしまった。
「それじゃ」
小町がその場から消える。
― 鎌の間合いより遠くへ
鎌が振り下ろされる。
― 撃て、脇腹へ刺せ!
石を叩く音と、ゲッと小さな嗚咽がクリアに聴こえる。
― まだ止まれない、止まるな!
脇腹に要石が刺さった小町。一瞬天子と目が合う。
緊張感が高まる。
が、気付いた。
― 石を叩く?
小町から気が抜けるのが、天子には分かった。
「あんたもか?」
やや苦しげに、小町は笑う。
彼女が何を言っているのか一瞬考え、要石を当てた部位を言っているのだと理解した。
鎌の先端は、天を指している。
「・・・何それ」
「ちょっとお仕置きと思ったけど、中々素早いもんだね」
「私をからかっていたと?」
「お前さんもだろう?脇腹に一度入れて、次に決めるつもりだったのなら別だけどさ」
天子は舌打ちする。
「・・・飛んだ茶番だわ」
「そう言わない。あたいが勝手に殺すとマズいんだ」
「もし私が僅かに怯んだ貴女に止めを刺したら?その前に逃げ果せたとでも?」
「どうだかねぇ・・・」小町は川原へ座った。
「ま、死に急ぐもんじゃない。悪さしない限りその時まで生きるが得さ」
「そうね。少なくとも、貴女を殺してからこの川を渡りたいわね」
「おっかないもんだ。あたいはお前さんを殺せやしないってのに」
「それは貴女の為?私の為?」
「どっちかねぇ」
「・・・興が醒めた。帰る」
「あたいもそろそろ仕事に戻るか」
天子は小町へ背を向ける。
「今度は差し入れでも持ってきておくれよ」
天子は微笑む。
「そうしますわ」
それと、三点リーダーは使ったほうがいい気がします。・・・だとなんだかそこが太字になってるみたいで、そこに目が行ったりするので。私だけかもしれませんが。
そして、続編期待! と言ってみる。
>>2
ありがとうございます。
ずっと前に友達に、オリジナルのSSで「後日談みたいなのは蛇足」って言われて読者の方に投げてみました。
…でもこれはそもそも本編が短いですね。。。
>>6
ありがとうございます。
上のSSで付け加え、「描写がくどい」って言われてこれも読者の方に投げてみました。
…でもこれは本当に少ないですね。
書いてる時は頭の中で状況がイメージで出来上がっちゃうから、その調整が大切ですね。。。
それと、・・・だと確かに太いですねw