ここは白玉楼。冥界の管理者とその従者が暮らす場所。
館の主曰く、二百由旬にも及ぶという広さの庭の中に、一人ぽつんと、少女が立っていた。
淡い水色に桜の花を散りばめた模様の服。
頭には服と同じ色の帽子。そこには奇妙な霊魂のような形の模様がある天冠が付いている。
「川は流れるもの、止まらず、溜まらず・・・ふふふ、これからどうなることやら、楽しみね。」
桃色の髪の毛を持つ少女。
彼女こそがこの白玉楼の主、西行寺 幽々子その人であった。
第一章 『予兆』
「ちょっと!待ちなさい魔理沙!」
魔理沙の速さに追いつけないアリスが声を荒げる。
「速さが足りないぜアリス。世の中スピードとパワーさえあれば結構やっていけるもんだぜ?」
「あんたみたいな脳味噌使わない魔法使いと一緒にしないで頂戴!」
基本的に弾幕は厚さと速さを信条とする魔理沙と、複雑さを重視するアリスでは根本のところで相性が悪い。
「それより、おかしいと思わないの?」
「何がだ?」
アリスは辺りを見渡しながら言う。
「いつもなら妖精の一匹や二匹つっかかってくるのに今日はまるで居ない。」
「・・・そういえば、あの氷精も居ないな。」
ここは紅魔館の前に広がる湖。いつもならここは頭の弱い氷精やら力の弱い妖精で喧しいはずなのだが、今日はなぜか一匹も見かけない。
「まぁ邪魔する奴なんて居ないほうがいいぜ。居たら居たで暇つぶしにはなるかもしれんが。」
「・・・」
「なんだアリス、どうしたんだ?」
何故か険しい顔をしているアリスに尋ねる。
「・・・いいえ、何でも無いわ。行きましょう。」
「そうか、ならいいんだが。」
二人は再度、紅魔館に向けて飛び立つ。
その時、木の陰で蠢いた陰に、二人は気づかなかった。
「門番は・・・あれ?いないな」
魔理沙が不思議そうに首を傾げる。
いつもなら門の前には門番の妖怪(何の妖怪なのかは未だにわからないが)が立っているはずなのだが、居ない。
「サボってるのか?あとで咲夜に酷い目に合わされるぜ。」
「おかしいわね・・・居眠りならまだしも門の側に居ないなんて。」
さっきからどうもおかしい。『居るはずのものが居るべき場所に居ない』。そんな考えが、アリスの頭を過った。
「まぁ見張りが居ないなら好都合だ。さっさと忍び込むぜ。」
館内にて、もう通い慣れた道を歩く魔理沙とアリス。
もっとも、そのほとんどが忍び込んだ時だが。
「おかしいな・・・」
さすがに魔理沙も異常だと思ったらしい。
館内から何も音が聞こえない。静かすぎる。
「嫌な予感がするわ・・・私帰っていい?」
「却下だぜ、毒を食らわば皿までって言うだろ。」
「どちらかというと乗りかかった船、の方が正しい気がするけど・・・」
図書館の前の扉に辿り着いたが、未だに館内に誰の気配も感じられない。
「なんだなんだ、一家で地下の温泉にでも旅行中か?まったく優雅なことで。」
「地下には咲夜はともかく他の奴らは入れないわよ・・・」
目の前の大きな扉を開ける。が、中は真っ暗で、何も見えない。
「・・・何も見えないぜ・・・パチュリーも居ないのか?」
「彼女がここから出るとは考えにくいけど・・・」
確かに。パチュリーは魔女として非常に高い能力を持っているが、喘息持ちで体は弱い。
そんな彼女がこんな天気のいい日に出かけることなどあまり考えられなかった。
「おーい!パチュリー!いないのかー!?」
魔理沙が叫ぶ。
「ちょっと!何大声出してんのよ!」
「だってこんなに暗くちゃ探しようがないしなぁ。」
「だからって、今私たちは無断で忍び込んでるのよ!?もう少し状況を――」
「――状況を弁えるべき、ですわね。」
突如、背後から声がした。
二人は同時に振り向く。メイド服を身につけ、怪しく嗤う銀髪の少女がそこに居た。
「さ・・・」
「咲夜・・・」
その名は、十六夜 咲夜。この洋館、紅魔館のメイド長を務める幻想郷で数少ない人間の一人だった。
「生憎ですがパチュリー様は居られません。」
「なんでだ?」
いつもの咲夜と明らかに雰囲気が違う。いつもなら見かけるなり
(侵入者には痛い目に合ってもらうわ!)
と襲ってくるものだが、今日はどうもおかしい。
「準備中、ですので。」
準備?何の準備だ?魔理沙には理解できなかった。
「・・・館内に誰も居なかったのも、それが理由?」
アリスが重苦しい空気の中口を開いた。
「ええ、もうすぐ準備は終わりますけど。」
「何の準備なのよ。」
アリスが尋ねると、咲夜は一瞬不思議そうな表情を見せたが、すぐに真顔に戻った。
「・・・そう、貴女達は知らないのね。」
「?」
何を?何を知っているのか?魔理沙にはやはり理解できなかった。
「ならいいわ、知らないのなら知らないまま―――
―――ここで眠りなさい。」
突如飛んでくる無数のナイフ。咲夜が得意とする投げナイフの乱射だ。
「うわっ!」
「――っ!」
いきなりの攻撃に二人はかろうじて避けるが、体制を崩して床に尻もちをついた。
「な、なんなんだ、どうしたんだ咲夜!」
魔理沙が声を荒げる。いきなり攻撃された怒りと―――咲夜の尋常ではない雰囲気に対する恐怖も含まれた声で。
「これから始まることに、貴方達は必要ない。」
「どういうことなのよ!説明しなさい!」
アリスも声を荒げる。魔理沙と同じような声で。
「・・・いいわ、教えてあげる。」
「これから始まるのは―――お祭りよ。」
「そう―――とても楽しい愉しいお祭り。」
第一章 終
館の主曰く、二百由旬にも及ぶという広さの庭の中に、一人ぽつんと、少女が立っていた。
淡い水色に桜の花を散りばめた模様の服。
頭には服と同じ色の帽子。そこには奇妙な霊魂のような形の模様がある天冠が付いている。
「川は流れるもの、止まらず、溜まらず・・・ふふふ、これからどうなることやら、楽しみね。」
桃色の髪の毛を持つ少女。
彼女こそがこの白玉楼の主、西行寺 幽々子その人であった。
第一章 『予兆』
「ちょっと!待ちなさい魔理沙!」
魔理沙の速さに追いつけないアリスが声を荒げる。
「速さが足りないぜアリス。世の中スピードとパワーさえあれば結構やっていけるもんだぜ?」
「あんたみたいな脳味噌使わない魔法使いと一緒にしないで頂戴!」
基本的に弾幕は厚さと速さを信条とする魔理沙と、複雑さを重視するアリスでは根本のところで相性が悪い。
「それより、おかしいと思わないの?」
「何がだ?」
アリスは辺りを見渡しながら言う。
「いつもなら妖精の一匹や二匹つっかかってくるのに今日はまるで居ない。」
「・・・そういえば、あの氷精も居ないな。」
ここは紅魔館の前に広がる湖。いつもならここは頭の弱い氷精やら力の弱い妖精で喧しいはずなのだが、今日はなぜか一匹も見かけない。
「まぁ邪魔する奴なんて居ないほうがいいぜ。居たら居たで暇つぶしにはなるかもしれんが。」
「・・・」
「なんだアリス、どうしたんだ?」
何故か険しい顔をしているアリスに尋ねる。
「・・・いいえ、何でも無いわ。行きましょう。」
「そうか、ならいいんだが。」
二人は再度、紅魔館に向けて飛び立つ。
その時、木の陰で蠢いた陰に、二人は気づかなかった。
「門番は・・・あれ?いないな」
魔理沙が不思議そうに首を傾げる。
いつもなら門の前には門番の妖怪(何の妖怪なのかは未だにわからないが)が立っているはずなのだが、居ない。
「サボってるのか?あとで咲夜に酷い目に合わされるぜ。」
「おかしいわね・・・居眠りならまだしも門の側に居ないなんて。」
さっきからどうもおかしい。『居るはずのものが居るべき場所に居ない』。そんな考えが、アリスの頭を過った。
「まぁ見張りが居ないなら好都合だ。さっさと忍び込むぜ。」
館内にて、もう通い慣れた道を歩く魔理沙とアリス。
もっとも、そのほとんどが忍び込んだ時だが。
「おかしいな・・・」
さすがに魔理沙も異常だと思ったらしい。
館内から何も音が聞こえない。静かすぎる。
「嫌な予感がするわ・・・私帰っていい?」
「却下だぜ、毒を食らわば皿までって言うだろ。」
「どちらかというと乗りかかった船、の方が正しい気がするけど・・・」
図書館の前の扉に辿り着いたが、未だに館内に誰の気配も感じられない。
「なんだなんだ、一家で地下の温泉にでも旅行中か?まったく優雅なことで。」
「地下には咲夜はともかく他の奴らは入れないわよ・・・」
目の前の大きな扉を開ける。が、中は真っ暗で、何も見えない。
「・・・何も見えないぜ・・・パチュリーも居ないのか?」
「彼女がここから出るとは考えにくいけど・・・」
確かに。パチュリーは魔女として非常に高い能力を持っているが、喘息持ちで体は弱い。
そんな彼女がこんな天気のいい日に出かけることなどあまり考えられなかった。
「おーい!パチュリー!いないのかー!?」
魔理沙が叫ぶ。
「ちょっと!何大声出してんのよ!」
「だってこんなに暗くちゃ探しようがないしなぁ。」
「だからって、今私たちは無断で忍び込んでるのよ!?もう少し状況を――」
「――状況を弁えるべき、ですわね。」
突如、背後から声がした。
二人は同時に振り向く。メイド服を身につけ、怪しく嗤う銀髪の少女がそこに居た。
「さ・・・」
「咲夜・・・」
その名は、十六夜 咲夜。この洋館、紅魔館のメイド長を務める幻想郷で数少ない人間の一人だった。
「生憎ですがパチュリー様は居られません。」
「なんでだ?」
いつもの咲夜と明らかに雰囲気が違う。いつもなら見かけるなり
(侵入者には痛い目に合ってもらうわ!)
と襲ってくるものだが、今日はどうもおかしい。
「準備中、ですので。」
準備?何の準備だ?魔理沙には理解できなかった。
「・・・館内に誰も居なかったのも、それが理由?」
アリスが重苦しい空気の中口を開いた。
「ええ、もうすぐ準備は終わりますけど。」
「何の準備なのよ。」
アリスが尋ねると、咲夜は一瞬不思議そうな表情を見せたが、すぐに真顔に戻った。
「・・・そう、貴女達は知らないのね。」
「?」
何を?何を知っているのか?魔理沙にはやはり理解できなかった。
「ならいいわ、知らないのなら知らないまま―――
―――ここで眠りなさい。」
突如飛んでくる無数のナイフ。咲夜が得意とする投げナイフの乱射だ。
「うわっ!」
「――っ!」
いきなりの攻撃に二人はかろうじて避けるが、体制を崩して床に尻もちをついた。
「な、なんなんだ、どうしたんだ咲夜!」
魔理沙が声を荒げる。いきなり攻撃された怒りと―――咲夜の尋常ではない雰囲気に対する恐怖も含まれた声で。
「これから始まることに、貴方達は必要ない。」
「どういうことなのよ!説明しなさい!」
アリスも声を荒げる。魔理沙と同じような声で。
「・・・いいわ、教えてあげる。」
「これから始まるのは―――お祭りよ。」
「そう―――とても楽しい愉しいお祭り。」
第一章 終
気になるぞー!
オリ設定注意はもっと前面にだした方がいいですよ。
どんなことになっていくのか、続きを楽しみにしています。