Coolier - 新生・東方創想話

冬の始まり

2004/01/08 03:56:37
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頬に冷たいものが触れて目を覚ます。
周囲を包むのはしんしんと降る雪と夜の蒼さ。
闇に照らされ蒼く光る雪はさながら鳥の様。
ぼんやりとそれを見ているうちに、凍りついた記憶が溶けていく。

 ★★★

今夜は雪が降った。今年初めての雪だ。
ぼんやりとそれを眺めた後、少女は足元の湖に目を向ける。
玩具代わりだった蛙もこの季節では姿が見えない。
再び空へ顔をむけ、少女はほう、とため息をついた。

少女はずっと待っている。

 ★★★

まだ半分寝ている頭を振り、意識をはっきりとさせる。
眠っている間に声を聞いた気がする。
それは眠りの外から響いていた幽かな想いのかけら。
そのつぶやきが誰のものだったのか、彼女はよく知っている。

 ★★★

季節外れの蛙を一匹見つけた。
この季節にまだ居るなんて、だいぶ間抜けな蛙だ。
手に冷気を集中させると、蛙は簡単に凍りついた。
そのまま湖に放る。
ぼちゃん、と音がした後、溶けた氷から蛙が泳ぎ出た。
再び掴む。凍る。
そして放る。溶ける。
ぼんやりとしたまま繰り返す。

少女はずっと待っている。

 ★★★

ふと、彼女は顔を上げた。
透き通った想いが痛いくらいに響いてくる。
瞳を閉じて浮かび上がる景色は、懐かしい知らない場所。
それを感じて微笑むと、彼女は空へと身を躍らせた。

 ★★★

ひょっとしたら仲間とはぐれてしまったのかもしれない。
ぼちゃん、と音がして、蛙が泳ぎだす。

お前も会いたい人と会えないの?

掴む代わりに声をかける。
蛙はしばらく少女を見つめる。
そしてゲェコと一言啼いて泳ぎ去った。

冷たい風が少女を打ち、少女は身を震わせた。
少女の身を震わせたのは風の冷たさとは別のもの。

身を震わせながら、少女はずっと待っている。

 ★★★

冷たい空を構わずに飛ぶ。
一際強く風が吹いた。
その向こうには蛙と戯れる少女の姿。

 ★★★

風にうたれて少女は振り向く。
その瞳に映るのは冬の化身。
時間が止まったように少女は動かない。

冬の化身がにこりと笑う。
呪縛が解けたように少女は駆け出した。

少女はずっと待っていた。
身を切るような冷たい風ももう少女を震わせることはない。

 ★★★

湖のほとりで二人の少女が出会った。
周囲を包むのはしんしんと降る雪と夜の蒼さ。
闇に照らされ蒼く光る雪はさながら鳥の様。
短い冬がここから始まる。
4年程前のことになりますが、
東京から軽自動車で鳥取まで向かったところ、
兵庫の北側のあたりで夜にガス欠間近になりました。
車の外はスゴイ吹雪。
雪がコワイと思ったのはあのときが初めてです。



ごきげんよう、TYLORです。
まずはこの文章をお読みいただきましてありがとうございます。

本文章は例によって、とある歌を聴きながら思いついたモノを文にしたものです。
SS書きを目指した習作ということでひとつ。
大きいネタがあるわけではないので話として物足りなくなってしまっているのが反省点ですね。
TYLOR
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コメント



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1.50すけなり削除
寒い者が暖かい物語を紡ぐ…。ええかんじやねぇ…
2.30勇希望削除
そしてあたりは更に寒さを増す、迷惑な方々でs(彼の者達により凍結
3.40マグ削除
当たり前である事の大切さが感じられました