「咲夜。お茶を入れてちょうだい」
「かしこまりました。お嬢様」
満月の晩。吸血鬼であるわたしにとっては、一日の始まり。
わたしはいつものように咲夜に紅茶を頼んだ。
紅茶の種類なんかは頼む必要はない。咲夜は教えてもいないのに、わたしの好み、わたしの趣向を完全に理解して、その日の気分にあった一杯を提供してくれる。
咲夜の淹れてくれた紅茶が、わたしの口に合わなかったことはない。
「お待たせいたしました。お嬢様」
「ありがとう。咲夜。うん……美味しいわ」
今日もそうだった。完璧で、瀟洒。咲夜らしい一杯を提供してくれた。
咲夜は時間を操る。
わたしにとって、咲夜はただ時間の進行を操るだけではない。咲夜がわたしに提供してくれる「時間」は、咲夜によって操られた優雅な時間であった。
だから今日のティータイムも、彼女によって優雅な時間となるはずだった。
完全で瀟洒なメイドによって、優雅な時間となるはずだった。
「お嬢様。ひとつお願いがございます」
「言ってみなさい」
「一日だけ、お休みを頂きたいのです。明日、一日だけ」
「明日? ずいぶん急ね。何をするのか言ってみなさい」
「……いえ。……用が、ございまして……」
「ふうん、珍しく瀟洒じゃない答えね」
まあ、いいのだけれど。
咲夜のこの答え方……嘘であることは火を見るより明らかだった。
今この一瞬まで常に瀟洒だった咲夜が、ここまでへたくそな嘘を吐くなんて。そんなことを思いながら、わたしは咲夜の「運命」を読んだ。
わたし、レミリア・スカーレットは「運命を読み取ること」ができる。万が一、咲夜の身に危険が迫っているとしたら、その運命を我が手で操作し、消し飛ばしてしまえばいい。
わたしにはそれが出来る。
わたし……レミリア・スカーレットには、人と人外の定めである――死別すらも、乗り越える力があるのだ。
しかし、咲夜の運命は。
十六夜の月の元で、自らの手で命を絶つ。というものだった。
ありえない。
馬鹿な。
ありえない。
咲夜が? 自分の手で命を終える? 信じられない。どういうことなんだ。
でも……読めて良かった。わたしが「レミリア・スカーレット」で良かった。
理由は分からないけど、咲夜の最期を知った今、わたしがその運命を無かったことにしてしまえば、咲夜は自殺する必要なんてなくなる。
絶対に回避しなければならない。こんな死に方を、わたしは咲夜に許してはいない。
咲夜が死のうとする日は、十六夜の月が出る夜らしい。十六夜の月は満月の翌日だ。
つまり今日、満月の夜に死ぬことはまずない。
明日一日まだ猶予がある。運命を知った今、わたしの介入を運命は許してくれる。運命はわたしの手により操作される。咲夜の死は消し去ることはできるはずだ。
「……」
「……お嬢様?」
「あ、ああ、ええ。そ、そうね。貴方も疲れているのだろうし。一日くらい、羽を伸ばしてもいいかも知れないわ。明日一日、自由にしていていいわよ。」
「ありがとうございます」
「ええ、でも咲夜。初めての休暇の前に、ちょっと出かけるわよ。付いてきなさい」
「かしこまりました」
そういうと咲夜は一瞬で居なくなった。外出の準備だろう。
わたしも、殆ど紅茶を残してしまったティーカップを机に置いて、テラスを後にした。
紅魔館から遠く離れた、迷いの竹林の奥深く。
ひっそりと世界から切り離されたような佇まいを見つけたわたしは、足早に入口へ周り、玄関をノックした。
永遠亭に住まう月の頭脳、八意永琳。
彼女なら、咲夜の抱える「死の原因」が分かるかもしれない。
咲夜は最終的に自らの手で死を選ぶ。そういう筋書きの運命ではあるが、咲夜がただ辛いからだとか、そういう世間一般的な理由で死を選ぶような、そんな人間であるとは微塵も思えない。
何か免れ得ぬ理由があるはずなのだ。人間の理由など分からない。分からないから聞きにきた。
(……結局、何も分かっていないのをごまかしているだけか、わたしは)
こんがらがる頭を片手で押さえつつ、わたしは咲夜と共に永遠亭のウサギ従者……咲夜に比べれば、いや、比べるのもおこがましいくらい役立たずに見える従者どもに連れられ、永琳の元へ向かった。
「こんばんは。月の天才さん」
「こんばんは。可愛い吸血鬼さん。こんな非常識な時間に相手してあげることをまずは感謝してほしいわね。それで、何の用?」
「ええ、ちょっとこの子の具合を見てほしくて」
「えっ? 用事って……。私のですか? お嬢様」
「そうよ。理由は無いわ。強いて言えば気まぐれ。文句ある? 咲夜」
「……いえ、なんでもありませんわ」
「良く分からないけど、そっちのメイドの子の健康診断?」
そういって、八意永琳は咲夜の顔を見た。口は悪いが、医者の顔をしていた。
そして、何かを悟ったようだった。死相というものがあるかどうかは分からないが、分かる人には分かるのかもしれない。
「はあ……まあいいけど。じゃ、ご主人さまのアナタは外で待っていて。すぐ終わるわ」
「わかったわ。じゃ、咲夜。しっかり診てもらいなさい」
「……お嬢様。分かりました」
しばらくして、咲夜が部屋から現れた。
顔に「バレてしまった」と書いてあるかのような、落ち込んだ顔だった。
わたしは咲夜に待っているよう命令し、八意永琳の部屋を訪ねた。そして、わたしの能力で見た「運命」を話した。
彼女はわたしの話を聞いたのち、彼女の診断結果を告げた。
「彼女。相当無理をしていたようね。時を止めて、身体を酷使して。肉体が耐えきれなくなっているわ。長くないわね」
「……あなたの薬で何とかならないの? どんな薬でも作れるんでしょう?」
「あれは病気じゃないわ。いうなれば因果応報よ。時を止めて、短い時間を濃く、濃く生きようとした。そのツケが回ってきたのね。貴女みたいに悠久の時間があればよかったんだけれども」
「……わたしの能力で、運命を回避すれば」
「どう回避するって言うの? 死ぬその瞬間だけ貴女の能力で回避できたとしましょう。それでどうなるの? あの子は滅びかけの肉体のままずっと生きるの? 貴女、運命は回避できても、過去の状態に戻すなんて芸当、出来るのかしら?」
「……じゃあ、どうすればいいって言うのよ!」
この医者の、あまりにも冷淡で、あまりにも絶望的な話を聞いて、わたしは思わず、激昂した。
しかし、永琳は顔色一つ変えずに、むしろ蔑むような眼でわたしを見て、こう言い放った。
「どうしようもないのよ」
「……咲夜は、能力の使い過ぎで死ぬんじゃないわ。自らの手で、死ぬのよ。それはなぜ? なぜわざわざ自殺する必要があるの? 休暇を請うのはなぜ? おかしいじゃない」
「そんなの、貴女の前で死にたくないとか、綺麗に終わらせたいとか、そういう願望じゃないの? 人間の考えることよ。わたしたち人外の存在には分からないことね」
「……あなた、確か、不老不死の薬を、作れたわよね」
「……貴女、そこまでのクズになるつもりなの? 誰もあなたを肯定しないわよ? 自分のわがままで死に行けるしもべを生きながらえさせるなんて、月でも外の世界でも、幻想郷でも、誰も許さないわよ」
「…………」
「わかってないようだから言ってあげるけど、不死は呪いよ。永遠に許されることのない呪い」
話が終わって。
永遠亭の外。わたしは咲夜と二人で並んで、竹林を歩いていた。
道中、わたしたちの間には長い沈黙があった。当然だ。この状況でヘラヘラと笑い話をするほど、咲夜は空気の読めないメイドではない。
それを破ったのはわたしだった。
いや、それを破らずにはいられなかったのは、わたしだった。
「……いつから気付いていたの? 自分が長くないって」
「……最初から分かっておりました。私が完全で、瀟洒なメイドでいられるのは、そう長い時間ではないと」
「どうして相談してくれなかったの?」
「どうしようもないからです」
またそれだ。
わたしはこの「どうしようもない」というのが嫌いだ。
わたしは我儘なんだ。運命だって、気に入らなければ消し飛ばす。なのに。なのに。
一番「どうにかしたい」ことに……誰もが「どうしようもない」という。
そんな言葉は嫌いだった。特に、今まで完全で、どうしようもないことなんてなかった咲夜が、そんなことを言うのは許せなかった。
「咲夜。聞きなさい」
「はい」
「この世に『どうしようもない』ことなんて無いのよ。貴女は何も心配する必要はない。貴女はこれからも、永遠にわたしの完璧で瀟洒なメイドであり続けるのよ」
「お嬢様……」
「いい? このレミリア・スカーレットに、このレミリア・スカーレットの運命を操作する能力に、不可能は無いのよ」
咲夜はまっすぐこちらを見て、そして、笑って、こう言った。
「……分かりました。この命、尽きるまで、お嬢様の言葉を信じさせていただきますわ。私だって、死にたくて死ぬわけではありません」
この言葉を聞いて、やはり咲夜は自ら死を望んで死ぬわけではないんだと分かった。
何が何でも、咲夜を守ってみせる。それがわたしの、わたしによって生み出された運命だ。
一晩。
考えて、考えて、考えたその結果。わたしは幻想郷の倫理を敵に回すことにした。
思えば簡単なことだ。咲夜の命と幻想郷の常識。どちらが大切かなんて、比べるまでもない。
月の技術の結晶「蓬莱の薬」……これがあれば、咲夜がどんなに自分の時を止めようが、永遠の時を生きることができる。
咲夜の命も……これさえあれば救えるはずだ。
かよわい、何を考えているのか理解しがたい価値観を持った人間の命も、これさえあれば。
救えるはずだ。
「十六夜の月」とは、月が出る時間になってもなかなか出ず、ためらうようにその顔を見せることからその名がきていると、いつだか行った古道具屋の店主が言っていた、ような気がする。
その言葉が真実なのか、適当な蘊蓄の延長線上にあるのかは……どうでもいいし、今後気にかけることも無いだろう。しかしその蘊蓄の通り、日は暮れ始めているが、まだ月は出ていない。そのことが重要だ。
咲夜は「十六夜の月の元」死ぬ。この運命は「確実に死を回避できる操作」をしない限り、逃れられない。
月が出るまでは、まだ時間がある。
永遠亭までは何の問題も無く辿り着けた。むしろ問題はここからだ。
月の技術の粋をその辺にぞんざいに置いてあるとは思えない。この屋敷をまるまる、月が出るまでに探さねばならないのだから、そう簡単には行かないだろう。
わたしは玄関を乱暴に開けて、手当たり次第の襖を蹴飛ばし、部屋を荒らして回った。
「な、何事よこれは!?」
耳障りな声でウサギが言った。因幡の白兎……名前は確か、てゐと言ったか。
「あ、あんた! 昨日の! お、お師匠様! 敵襲です! 誰かいないの!?」
「残念だけど……」
「ひぃっ!?」
「あんたのお師匠様や、姫様。月の従者ウサギはわたしの『運命を操る能力』によって、既に。この屋敷にはいない……。今頃、人里に買い物か何かにでも言っているんじゃない?」
「そんな……目的は何よ!」
「蓬莱の薬」
てゐが息を飲んだ。わたしが何を考えているのか、悟ったのか。悟っていないのか……まあ、どちらでもいいけど。
「ウサギの血に舌鼓を打つ暇など無いの。スペルカードルールも今は例外よ。邪魔するというのなら……消し炭にするわ。三秒もかけずにね」
そう一喝すると、てゐは悔しそうに、しかし、もはや異存はないといった具合で、引っ込んだ。
賢いウサギだ。幸運の象徴とも言うが、お前のその行動は「幸運」だったわね、と、心中で思った。
「これは……どういうことかしら?」
居間らしい部屋や、姫の寝室らしい部屋。虱潰しに探すつもりだったのだけれど。
蓬莱の薬は意外に早く、そして意外な場所から見つかった。
昨日わたしたちが通された診察室……咲夜が座っていた椅子の上に、蓬莱の薬はあった。
月語らしき言葉で箱に何やら書かれているが、読めない。そんなものはどうでもいい。その記述の下には確かに読める文字で「不老不死の霊薬 蓬莱の薬」と書かれていた。
罠だろうか? しかし彼女らからすれば、わたしが今日ここに来ることなんて分かるはずも無い。
それに……これを罠だとして、次に見つけたものが本物である可能性はどこにある。
日は暮れかけている。そろそろ、十六夜の月が昇ってしまう。
時間がない。
これを本物だと信じるしかない……
いや、待てよ。
これが「本物」である確証さえあればいいのだ。
そう思ったわたしは、その蓬莱の薬の蓋を開け、半分ほどあおった。
どうせ彼女は永遠に生きる。わたしが先に死ぬことは、それこそわたしが許さない。
同日。紅魔館。既に十六夜の月は昇っていた。
寝ている門番に構っている暇も、図書館を狙っている白黒魔法使いを相手にしている暇も無い。
わたしは一目散に咲夜の部屋へ向かった。
咲夜の部屋のドアを開けるとき、最悪の事態を想像したが……咲夜はまだ、生きていた。
今にも死ぬという運命を背負っているとは思えないほど、瀟洒ないでたちで、まだ、生きていた。
「咲夜! 咲夜! これは蓬莱の薬よ! これを飲めば、貴女は永遠に瀟洒なメイドでいられるわ!」
「お嬢様……ありがとうございます。この咲夜のために、手に入れてきて下さったのですね」
「いいのよ……。さあ、飲んで。これが本物であることは既にわたしが確かめたわ」
「お嬢様が……飲まれたんですか?」
「ええ、飲んだ瞬間。実感として分かったわ。これは本物。わたしは永遠の時間を手に入れた。まあ、もともと永遠のようなものだったけど……。さあ咲夜? 飲んで」
咲夜は、一瞬躊躇って、でも、微笑みながら、蓬莱の薬を。
飲んだ。
そして一言。
「ありがとうございますわ。私のお嬢様」
と言った。
そして咲夜は「少し疲れました」と言うと、静かに眠った。
その寝顔を見て、起きたら元気になっているであろう咲夜を想像して、思わず笑みをこぼした。
わたしは運命に勝ったんだ……。運命の操作に成功したんだ。
わたし……レミリア・スカーレットには、人と人外の定めである――死別すらも、乗り越える力があるのだ。
そう自らを誇ったのだった。
……だが。
一日が経った。咲夜は目を覚まさない。
二日が経った。咲夜は目を覚まさない。
一週間が経った。咲夜が、咲夜が、腐り始めた。
咲夜の時が、止まっていた。
屋敷中に響き渡るような大きな音を立てて、わたしは永遠亭の玄関を開けた。
右手には蓬莱の薬。左手には、咲夜の……死体。
あわあわとあわてるウサギどもを無視し、昨晩蓬莱の薬が置いてあった、あの診察室へ直行した。
来るのが分かっていたかのように、そこには八意永琳がいた。
「永琳ッ!! どういうことよッ!」
「どういうこともこういうこともないわ。どうしようもなかったのよ」
「咲夜は蓬莱の薬を飲んだわ! 死ぬはずがないのよ! 貴女……偽物を渡したのね!!」
「あぁら……? 貴女は不老不死になったんじゃないの?」
「黙れ!! どうして……どうして……咲夜は……」
「もう一度言わせるつもりかしら……」
八意永琳はため息をついて、わたしを見た。
ぞっとするほど冷たくて、冷酷な目だった。
「どうしようもなかったのよ」
「だいたい、死にかけの人間が蓬莱の薬なんて劇薬を飲んで、それに身体が耐えられるわけないでしょう? 妹紅も姫様も私も、健康な状態で飲んだからこそ不死になれたのよ。死にかけに対して蓬莱の薬なんて、トドメでしかないわ」
「そんな……あなた……全部知ってて……」
「当然じゃない。だから止めたのよ。」
「じゃ、じゃあ、なんであんなところに置いておくのよ……」
「なんで貴女の目のつかない場所に置くまで、そこまで気を使わなきゃならないのよ。あなたは永遠亭を襲撃した時点で幻想郷の倫理を敵に回した。因果応報を身にしみて味わってもらおうと思っただけよ」
「………」
「最後くらいはお別れの言葉を言わせてあげようと思ったのに、貴女は自分のことしか考えずに咲夜を殺した」
「やめて……」
「いや……言い方が違うわね。そうそう、貴女の運命予知では彼女は自らの手で死を選んだのよね? 正しいじゃないの、その予知。咲夜は飲んだら死ぬであろうことを、おそらく知っていた」
「もうやめてッ!」
「それにもかかわらず飲んだのよ。どうしてだと思う? ねえ……我が儘なお嬢様?」
「もう……やめて……」
「簡単なのよ。答えは。そう…信じていたから。貴女を信じていたからよ」
咲夜は最後に「ありがとうございますわ。私のお嬢様」と言った。最後までわたしのことを信じて、わたしに忠実であり続けた。
咲夜の思い描く最期を、咲夜は選ぶことだって出来たのに。
咲夜は自らの手で、蓬莱の薬を……死を選んだ。拒否することだって……できたのに。
そして……その選択肢を突きつけたのは、まぎれも無い、わたしだ。
「まぁ……元々助からなかった命よ。貴女が引導を渡そうと、勝手に飲もうと、知ったことではないわ」
「貴女……それでも医者なの? どうしてそんなに冷酷で居られるの? 人事だから? 貴女に……赤い血は流れていないの?」
「四度目は言わないわよ」
冷酷な月の医者はそう言って、邪魔だから出て行けとわたしを追いだした。
わたしは…メイドのいなくなった紅魔館に帰って、メイド長はどこだと問う門番と、紅茶を届けてくれるメイドがいないと問う友人を無視して、自室へと入った。
わたしは「運命」に負けた。
いや、運命を自ら操作して……咲夜を、殺してしまった。
わたしが、咲夜を、殺してしまった。
咲夜の後を追おう。
わたしはやってはいけないことをして、結果、すべてを失った。
せめてあの世で、咲夜と共に居よう。
たかがメイド一人に、命を捧げるとは。わたしも堕ちたものね。
従者を追って死ぬ。これも運命かしら? とくすくす笑いながら、己の首を掻き切った。
しかし……。
忘れていた。
わたしは既に、咲夜に近づくことすら許されなかったのだ。
自らの首を掻っ切って、その切断面がみるみる再生するうちに、ようやく気付いた。
蓬莱の薬による「リザレクション」を経験して……ようやく気付いた。
わたしの「運命」は……呪われたのだと。
永遠に許されることのない、不死の呪いに。
わたしは終わった。
終わりがないという終わりを迎えて、わたしの「運命」は終わった。
「かしこまりました。お嬢様」
満月の晩。吸血鬼であるわたしにとっては、一日の始まり。
わたしはいつものように咲夜に紅茶を頼んだ。
紅茶の種類なんかは頼む必要はない。咲夜は教えてもいないのに、わたしの好み、わたしの趣向を完全に理解して、その日の気分にあった一杯を提供してくれる。
咲夜の淹れてくれた紅茶が、わたしの口に合わなかったことはない。
「お待たせいたしました。お嬢様」
「ありがとう。咲夜。うん……美味しいわ」
今日もそうだった。完璧で、瀟洒。咲夜らしい一杯を提供してくれた。
咲夜は時間を操る。
わたしにとって、咲夜はただ時間の進行を操るだけではない。咲夜がわたしに提供してくれる「時間」は、咲夜によって操られた優雅な時間であった。
だから今日のティータイムも、彼女によって優雅な時間となるはずだった。
完全で瀟洒なメイドによって、優雅な時間となるはずだった。
「お嬢様。ひとつお願いがございます」
「言ってみなさい」
「一日だけ、お休みを頂きたいのです。明日、一日だけ」
「明日? ずいぶん急ね。何をするのか言ってみなさい」
「……いえ。……用が、ございまして……」
「ふうん、珍しく瀟洒じゃない答えね」
まあ、いいのだけれど。
咲夜のこの答え方……嘘であることは火を見るより明らかだった。
今この一瞬まで常に瀟洒だった咲夜が、ここまでへたくそな嘘を吐くなんて。そんなことを思いながら、わたしは咲夜の「運命」を読んだ。
わたし、レミリア・スカーレットは「運命を読み取ること」ができる。万が一、咲夜の身に危険が迫っているとしたら、その運命を我が手で操作し、消し飛ばしてしまえばいい。
わたしにはそれが出来る。
わたし……レミリア・スカーレットには、人と人外の定めである――死別すらも、乗り越える力があるのだ。
しかし、咲夜の運命は。
十六夜の月の元で、自らの手で命を絶つ。というものだった。
ありえない。
馬鹿な。
ありえない。
咲夜が? 自分の手で命を終える? 信じられない。どういうことなんだ。
でも……読めて良かった。わたしが「レミリア・スカーレット」で良かった。
理由は分からないけど、咲夜の最期を知った今、わたしがその運命を無かったことにしてしまえば、咲夜は自殺する必要なんてなくなる。
絶対に回避しなければならない。こんな死に方を、わたしは咲夜に許してはいない。
咲夜が死のうとする日は、十六夜の月が出る夜らしい。十六夜の月は満月の翌日だ。
つまり今日、満月の夜に死ぬことはまずない。
明日一日まだ猶予がある。運命を知った今、わたしの介入を運命は許してくれる。運命はわたしの手により操作される。咲夜の死は消し去ることはできるはずだ。
「……」
「……お嬢様?」
「あ、ああ、ええ。そ、そうね。貴方も疲れているのだろうし。一日くらい、羽を伸ばしてもいいかも知れないわ。明日一日、自由にしていていいわよ。」
「ありがとうございます」
「ええ、でも咲夜。初めての休暇の前に、ちょっと出かけるわよ。付いてきなさい」
「かしこまりました」
そういうと咲夜は一瞬で居なくなった。外出の準備だろう。
わたしも、殆ど紅茶を残してしまったティーカップを机に置いて、テラスを後にした。
紅魔館から遠く離れた、迷いの竹林の奥深く。
ひっそりと世界から切り離されたような佇まいを見つけたわたしは、足早に入口へ周り、玄関をノックした。
永遠亭に住まう月の頭脳、八意永琳。
彼女なら、咲夜の抱える「死の原因」が分かるかもしれない。
咲夜は最終的に自らの手で死を選ぶ。そういう筋書きの運命ではあるが、咲夜がただ辛いからだとか、そういう世間一般的な理由で死を選ぶような、そんな人間であるとは微塵も思えない。
何か免れ得ぬ理由があるはずなのだ。人間の理由など分からない。分からないから聞きにきた。
(……結局、何も分かっていないのをごまかしているだけか、わたしは)
こんがらがる頭を片手で押さえつつ、わたしは咲夜と共に永遠亭のウサギ従者……咲夜に比べれば、いや、比べるのもおこがましいくらい役立たずに見える従者どもに連れられ、永琳の元へ向かった。
「こんばんは。月の天才さん」
「こんばんは。可愛い吸血鬼さん。こんな非常識な時間に相手してあげることをまずは感謝してほしいわね。それで、何の用?」
「ええ、ちょっとこの子の具合を見てほしくて」
「えっ? 用事って……。私のですか? お嬢様」
「そうよ。理由は無いわ。強いて言えば気まぐれ。文句ある? 咲夜」
「……いえ、なんでもありませんわ」
「良く分からないけど、そっちのメイドの子の健康診断?」
そういって、八意永琳は咲夜の顔を見た。口は悪いが、医者の顔をしていた。
そして、何かを悟ったようだった。死相というものがあるかどうかは分からないが、分かる人には分かるのかもしれない。
「はあ……まあいいけど。じゃ、ご主人さまのアナタは外で待っていて。すぐ終わるわ」
「わかったわ。じゃ、咲夜。しっかり診てもらいなさい」
「……お嬢様。分かりました」
しばらくして、咲夜が部屋から現れた。
顔に「バレてしまった」と書いてあるかのような、落ち込んだ顔だった。
わたしは咲夜に待っているよう命令し、八意永琳の部屋を訪ねた。そして、わたしの能力で見た「運命」を話した。
彼女はわたしの話を聞いたのち、彼女の診断結果を告げた。
「彼女。相当無理をしていたようね。時を止めて、身体を酷使して。肉体が耐えきれなくなっているわ。長くないわね」
「……あなたの薬で何とかならないの? どんな薬でも作れるんでしょう?」
「あれは病気じゃないわ。いうなれば因果応報よ。時を止めて、短い時間を濃く、濃く生きようとした。そのツケが回ってきたのね。貴女みたいに悠久の時間があればよかったんだけれども」
「……わたしの能力で、運命を回避すれば」
「どう回避するって言うの? 死ぬその瞬間だけ貴女の能力で回避できたとしましょう。それでどうなるの? あの子は滅びかけの肉体のままずっと生きるの? 貴女、運命は回避できても、過去の状態に戻すなんて芸当、出来るのかしら?」
「……じゃあ、どうすればいいって言うのよ!」
この医者の、あまりにも冷淡で、あまりにも絶望的な話を聞いて、わたしは思わず、激昂した。
しかし、永琳は顔色一つ変えずに、むしろ蔑むような眼でわたしを見て、こう言い放った。
「どうしようもないのよ」
「……咲夜は、能力の使い過ぎで死ぬんじゃないわ。自らの手で、死ぬのよ。それはなぜ? なぜわざわざ自殺する必要があるの? 休暇を請うのはなぜ? おかしいじゃない」
「そんなの、貴女の前で死にたくないとか、綺麗に終わらせたいとか、そういう願望じゃないの? 人間の考えることよ。わたしたち人外の存在には分からないことね」
「……あなた、確か、不老不死の薬を、作れたわよね」
「……貴女、そこまでのクズになるつもりなの? 誰もあなたを肯定しないわよ? 自分のわがままで死に行けるしもべを生きながらえさせるなんて、月でも外の世界でも、幻想郷でも、誰も許さないわよ」
「…………」
「わかってないようだから言ってあげるけど、不死は呪いよ。永遠に許されることのない呪い」
話が終わって。
永遠亭の外。わたしは咲夜と二人で並んで、竹林を歩いていた。
道中、わたしたちの間には長い沈黙があった。当然だ。この状況でヘラヘラと笑い話をするほど、咲夜は空気の読めないメイドではない。
それを破ったのはわたしだった。
いや、それを破らずにはいられなかったのは、わたしだった。
「……いつから気付いていたの? 自分が長くないって」
「……最初から分かっておりました。私が完全で、瀟洒なメイドでいられるのは、そう長い時間ではないと」
「どうして相談してくれなかったの?」
「どうしようもないからです」
またそれだ。
わたしはこの「どうしようもない」というのが嫌いだ。
わたしは我儘なんだ。運命だって、気に入らなければ消し飛ばす。なのに。なのに。
一番「どうにかしたい」ことに……誰もが「どうしようもない」という。
そんな言葉は嫌いだった。特に、今まで完全で、どうしようもないことなんてなかった咲夜が、そんなことを言うのは許せなかった。
「咲夜。聞きなさい」
「はい」
「この世に『どうしようもない』ことなんて無いのよ。貴女は何も心配する必要はない。貴女はこれからも、永遠にわたしの完璧で瀟洒なメイドであり続けるのよ」
「お嬢様……」
「いい? このレミリア・スカーレットに、このレミリア・スカーレットの運命を操作する能力に、不可能は無いのよ」
咲夜はまっすぐこちらを見て、そして、笑って、こう言った。
「……分かりました。この命、尽きるまで、お嬢様の言葉を信じさせていただきますわ。私だって、死にたくて死ぬわけではありません」
この言葉を聞いて、やはり咲夜は自ら死を望んで死ぬわけではないんだと分かった。
何が何でも、咲夜を守ってみせる。それがわたしの、わたしによって生み出された運命だ。
一晩。
考えて、考えて、考えたその結果。わたしは幻想郷の倫理を敵に回すことにした。
思えば簡単なことだ。咲夜の命と幻想郷の常識。どちらが大切かなんて、比べるまでもない。
月の技術の結晶「蓬莱の薬」……これがあれば、咲夜がどんなに自分の時を止めようが、永遠の時を生きることができる。
咲夜の命も……これさえあれば救えるはずだ。
かよわい、何を考えているのか理解しがたい価値観を持った人間の命も、これさえあれば。
救えるはずだ。
「十六夜の月」とは、月が出る時間になってもなかなか出ず、ためらうようにその顔を見せることからその名がきていると、いつだか行った古道具屋の店主が言っていた、ような気がする。
その言葉が真実なのか、適当な蘊蓄の延長線上にあるのかは……どうでもいいし、今後気にかけることも無いだろう。しかしその蘊蓄の通り、日は暮れ始めているが、まだ月は出ていない。そのことが重要だ。
咲夜は「十六夜の月の元」死ぬ。この運命は「確実に死を回避できる操作」をしない限り、逃れられない。
月が出るまでは、まだ時間がある。
永遠亭までは何の問題も無く辿り着けた。むしろ問題はここからだ。
月の技術の粋をその辺にぞんざいに置いてあるとは思えない。この屋敷をまるまる、月が出るまでに探さねばならないのだから、そう簡単には行かないだろう。
わたしは玄関を乱暴に開けて、手当たり次第の襖を蹴飛ばし、部屋を荒らして回った。
「な、何事よこれは!?」
耳障りな声でウサギが言った。因幡の白兎……名前は確か、てゐと言ったか。
「あ、あんた! 昨日の! お、お師匠様! 敵襲です! 誰かいないの!?」
「残念だけど……」
「ひぃっ!?」
「あんたのお師匠様や、姫様。月の従者ウサギはわたしの『運命を操る能力』によって、既に。この屋敷にはいない……。今頃、人里に買い物か何かにでも言っているんじゃない?」
「そんな……目的は何よ!」
「蓬莱の薬」
てゐが息を飲んだ。わたしが何を考えているのか、悟ったのか。悟っていないのか……まあ、どちらでもいいけど。
「ウサギの血に舌鼓を打つ暇など無いの。スペルカードルールも今は例外よ。邪魔するというのなら……消し炭にするわ。三秒もかけずにね」
そう一喝すると、てゐは悔しそうに、しかし、もはや異存はないといった具合で、引っ込んだ。
賢いウサギだ。幸運の象徴とも言うが、お前のその行動は「幸運」だったわね、と、心中で思った。
「これは……どういうことかしら?」
居間らしい部屋や、姫の寝室らしい部屋。虱潰しに探すつもりだったのだけれど。
蓬莱の薬は意外に早く、そして意外な場所から見つかった。
昨日わたしたちが通された診察室……咲夜が座っていた椅子の上に、蓬莱の薬はあった。
月語らしき言葉で箱に何やら書かれているが、読めない。そんなものはどうでもいい。その記述の下には確かに読める文字で「不老不死の霊薬 蓬莱の薬」と書かれていた。
罠だろうか? しかし彼女らからすれば、わたしが今日ここに来ることなんて分かるはずも無い。
それに……これを罠だとして、次に見つけたものが本物である可能性はどこにある。
日は暮れかけている。そろそろ、十六夜の月が昇ってしまう。
時間がない。
これを本物だと信じるしかない……
いや、待てよ。
これが「本物」である確証さえあればいいのだ。
そう思ったわたしは、その蓬莱の薬の蓋を開け、半分ほどあおった。
どうせ彼女は永遠に生きる。わたしが先に死ぬことは、それこそわたしが許さない。
同日。紅魔館。既に十六夜の月は昇っていた。
寝ている門番に構っている暇も、図書館を狙っている白黒魔法使いを相手にしている暇も無い。
わたしは一目散に咲夜の部屋へ向かった。
咲夜の部屋のドアを開けるとき、最悪の事態を想像したが……咲夜はまだ、生きていた。
今にも死ぬという運命を背負っているとは思えないほど、瀟洒ないでたちで、まだ、生きていた。
「咲夜! 咲夜! これは蓬莱の薬よ! これを飲めば、貴女は永遠に瀟洒なメイドでいられるわ!」
「お嬢様……ありがとうございます。この咲夜のために、手に入れてきて下さったのですね」
「いいのよ……。さあ、飲んで。これが本物であることは既にわたしが確かめたわ」
「お嬢様が……飲まれたんですか?」
「ええ、飲んだ瞬間。実感として分かったわ。これは本物。わたしは永遠の時間を手に入れた。まあ、もともと永遠のようなものだったけど……。さあ咲夜? 飲んで」
咲夜は、一瞬躊躇って、でも、微笑みながら、蓬莱の薬を。
飲んだ。
そして一言。
「ありがとうございますわ。私のお嬢様」
と言った。
そして咲夜は「少し疲れました」と言うと、静かに眠った。
その寝顔を見て、起きたら元気になっているであろう咲夜を想像して、思わず笑みをこぼした。
わたしは運命に勝ったんだ……。運命の操作に成功したんだ。
わたし……レミリア・スカーレットには、人と人外の定めである――死別すらも、乗り越える力があるのだ。
そう自らを誇ったのだった。
……だが。
一日が経った。咲夜は目を覚まさない。
二日が経った。咲夜は目を覚まさない。
一週間が経った。咲夜が、咲夜が、腐り始めた。
咲夜の時が、止まっていた。
屋敷中に響き渡るような大きな音を立てて、わたしは永遠亭の玄関を開けた。
右手には蓬莱の薬。左手には、咲夜の……死体。
あわあわとあわてるウサギどもを無視し、昨晩蓬莱の薬が置いてあった、あの診察室へ直行した。
来るのが分かっていたかのように、そこには八意永琳がいた。
「永琳ッ!! どういうことよッ!」
「どういうこともこういうこともないわ。どうしようもなかったのよ」
「咲夜は蓬莱の薬を飲んだわ! 死ぬはずがないのよ! 貴女……偽物を渡したのね!!」
「あぁら……? 貴女は不老不死になったんじゃないの?」
「黙れ!! どうして……どうして……咲夜は……」
「もう一度言わせるつもりかしら……」
八意永琳はため息をついて、わたしを見た。
ぞっとするほど冷たくて、冷酷な目だった。
「どうしようもなかったのよ」
「だいたい、死にかけの人間が蓬莱の薬なんて劇薬を飲んで、それに身体が耐えられるわけないでしょう? 妹紅も姫様も私も、健康な状態で飲んだからこそ不死になれたのよ。死にかけに対して蓬莱の薬なんて、トドメでしかないわ」
「そんな……あなた……全部知ってて……」
「当然じゃない。だから止めたのよ。」
「じゃ、じゃあ、なんであんなところに置いておくのよ……」
「なんで貴女の目のつかない場所に置くまで、そこまで気を使わなきゃならないのよ。あなたは永遠亭を襲撃した時点で幻想郷の倫理を敵に回した。因果応報を身にしみて味わってもらおうと思っただけよ」
「………」
「最後くらいはお別れの言葉を言わせてあげようと思ったのに、貴女は自分のことしか考えずに咲夜を殺した」
「やめて……」
「いや……言い方が違うわね。そうそう、貴女の運命予知では彼女は自らの手で死を選んだのよね? 正しいじゃないの、その予知。咲夜は飲んだら死ぬであろうことを、おそらく知っていた」
「もうやめてッ!」
「それにもかかわらず飲んだのよ。どうしてだと思う? ねえ……我が儘なお嬢様?」
「もう……やめて……」
「簡単なのよ。答えは。そう…信じていたから。貴女を信じていたからよ」
咲夜は最後に「ありがとうございますわ。私のお嬢様」と言った。最後までわたしのことを信じて、わたしに忠実であり続けた。
咲夜の思い描く最期を、咲夜は選ぶことだって出来たのに。
咲夜は自らの手で、蓬莱の薬を……死を選んだ。拒否することだって……できたのに。
そして……その選択肢を突きつけたのは、まぎれも無い、わたしだ。
「まぁ……元々助からなかった命よ。貴女が引導を渡そうと、勝手に飲もうと、知ったことではないわ」
「貴女……それでも医者なの? どうしてそんなに冷酷で居られるの? 人事だから? 貴女に……赤い血は流れていないの?」
「四度目は言わないわよ」
冷酷な月の医者はそう言って、邪魔だから出て行けとわたしを追いだした。
わたしは…メイドのいなくなった紅魔館に帰って、メイド長はどこだと問う門番と、紅茶を届けてくれるメイドがいないと問う友人を無視して、自室へと入った。
わたしは「運命」に負けた。
いや、運命を自ら操作して……咲夜を、殺してしまった。
わたしが、咲夜を、殺してしまった。
咲夜の後を追おう。
わたしはやってはいけないことをして、結果、すべてを失った。
せめてあの世で、咲夜と共に居よう。
たかがメイド一人に、命を捧げるとは。わたしも堕ちたものね。
従者を追って死ぬ。これも運命かしら? とくすくす笑いながら、己の首を掻き切った。
しかし……。
忘れていた。
わたしは既に、咲夜に近づくことすら許されなかったのだ。
自らの首を掻っ切って、その切断面がみるみる再生するうちに、ようやく気付いた。
蓬莱の薬による「リザレクション」を経験して……ようやく気付いた。
わたしの「運命」は……呪われたのだと。
永遠に許されることのない、不死の呪いに。
わたしは終わった。
終わりがないという終わりを迎えて、わたしの「運命」は終わった。
やはり展開も早すぎるし心情描写も薄すぎる。これだとレミリアの葛藤も上手く伝わってきません。
明るい描写の多い原作に対して、どうしようもないバッドエンドを突き付けるためにはそれなりの説得力がやっぱり必要だな、と思います。あの能天気なキャラクター達がどうやっても救われない不幸な状況を作るということ。この部分がちょっとおざなりになっていると感じます。
何はともあれ、作者さまの次回作に期待しております
救いが無い鬱展開もありだと思います。
でも、それにはもう少しレミリアの行動に対する説得力が必要じゃないでしょうか?
レミリアの心理を丁寧に描写して読者にその行動を納得させなければ、ただシナリオにあわせて
ねじ伏せた感しか残りません。捻れば良いというものでもないのです。
後、この話は30~40kbくらいのボリュームが理想的かなと思いました。長すぎるとオチが・・・ですから
次回作、期待して待ってますよ