「ギャフン」
「なんだよいきなり」
果たして今僕はどんな表情をしているんだろうか。
それは目の前にいる魔理沙にしか分からない。
しかし、すぐに分かることになるだろう。
「いや、ついね」
眉間を抑えつつ、改めて僕は彼女へ告げた。
「これはただの布だよ」
そう告げると魔理沙はいかにも不満そうな顔をした。
「なあ香霖。香霖の能力は信用してるが、手にも取らないで分かるわけないだろ?」
「そうだね」
確かにそれでは納得はするまい。僕は魔理沙からその布を受取り、名前を読み取った。
名前。ひらり布。用途は……。
「……ただの布だよ」
「そんな訳ないだろ? だってこれは……」
「反則アイテムだって言いたいんだろう? ただの布だよ」
繰り返すと、流石に察したのか僕の顔をじいっと睨みつけてきた。
「香霖、何か知ってるな?」
「……僕は何も売っていないんだがね」
しかし僕は知っている。
何故この「ひらり布」がただの布であるかということを。
『ギャフンなんて現実で言う奴の顔が見てみたい』
「失礼するわ」
カウベルの音と共にやってきたのは見覚えの無い少女だった。
「私の名は少名針妙丸」
尋ねる前に名前を名乗ってくる。
「これはどうも。僕は森近霖之助だ」
ひとまず、僕も会釈しながら自分の名前を伝えた。
「今日はどういったご用件で?」
この香霖堂にやってくるということは、道具を求めているということだろう。
「ええ、弾幕を避けるか無効化する道具が欲しいの」
「弾幕をねえ」
避けるにせよ、無効化にせよ、やろうと思えば出来ないことはない。
僕は彼女が本当は何を求めているのか、尋ねてみることにした。
「弾幕ごっこっていうのはあくまで遊びなんだ。そんな反則アイテムを持ち込むべきじゃ無いんじゃないかな?」
それを聞いた彼女は大きくため息をついた。
「……事情があるのよ。先の異変を知っているでしょう?」
「先の異変……ええと……道具が勝手に動き出す……だったかな?」
「そう。なら本当の首謀者も知っているわね。鬼人正邪」
「ああ、アマノジャクだね。話は大雑把に聞いたよ」
幻想郷そのものをひっくり返そうとした異変。そして少名針妙丸はその異変に関わっていたのだ。
後から聞いた話だと、天邪鬼にそそのかされたとかなんとか。
「なんでも、異変後の宴会まですっぽかしたらしいね、正邪は」
異変とその後の宴会は、幻想郷では一纏めみたいなものだ。
逆に言えば、異変を起こした者はその後の宴会には参加しなければならないという、暗黙の了解である。
「そう。正邪がそのルールを破ったせいで、私は狙われているの。私は天邪鬼に利用された身。しかし、はいそうですかと素直に聞いてくれるわけも無くってね」
「ふうむ」
なるほど、彼女の言っていることは、もっともらしく聞こえる。
実際にそういうことがあったということは、魔理沙からも聞いていた。
「一つ聞いていいかな?」
「何だ?」
「確か少名針妙丸というのは小人族と聞いたんだが」
目の前の彼女は普通の少女くらいの身長であり、小人であるとはとても思えなかった。
「小人のままじゃあ、店に来ても気付かれなかったでしょう。あなたこそ、打ち出の小槌を知らないの?」
「知っているに決まっているともさ」
道具屋である僕に対して、その言葉は挑発とも聞こえた。
「つまり君は、打ち出の小槌の力で大きくなっていると言いたいわけだ」
「他に理由があるとでも?」
「僕の知り合いには紅白のおめでたい巫女がいてね」
ぴく、と眉が僅かに動いた。その表情は強張っているようにも見える。
「彼女の家には今客人が来ているらしいんだ。身長一寸にも満たない大きさのね」
「つまり、それは私でしょう?」
「ああ、確かに僕は彼女の外見は知らないんだ。しかし、彼女が今そこにいる理由は聞いていてね。なんでも、打ち出の小槌の魔力が尽きてしまって元の大きさに戻ることすら出来やしないと」
「……」
実のところ、僕は最初から知っていたのだ。
「更に聞いた話なんだが、近々天邪鬼を捉える手配書が撒かれるらしい。僕のところにも一枚あってね」
懐から取り出したその似顔絵を、彼女に見せつけてやる。
「鬼人正邪。どこかで見た顔だとは思わないかい?」
その顔は、今僕の目の前にいる少女の顔であった。
「……テメエ、最初から知ってて三味線弾いていやがったな」
口調が荒々しいものへと変わる。
「まあ待ちなさい」
今にも殴りかかって来そうなので、僕は彼女を静止するように手を広げた。
「何だよ?」
「何故、君がわざわざ針妙丸のふりをしたのかも、ある程度分かっているんだ。だから君の真意を確かめたかった」
「ふん。言ってみな」
「天邪鬼に道具を売ってくれる店なんて、存在しない。そういう事さ」
元々からして天邪鬼は嫌われ者だ。そして彼らはそれこそが是としている。
そんな彼らにいいものを売ったらどうなるか? 天邪鬼だからと悪いものを売ったらどうなるか?
関わってしまった時点で厄介な事になるのは容易に想像できる。
「チッ。その通りだよ。人里は警戒されてて入ることすらままならないからな。こんな辺鄙な場所にある店なら大丈夫だと思ったんだが」
「……」
どうやら彼女は知らないらしい。僕の店の常連に、紅白のおめでたい巫女と白黒の魔法使いが居ることを。
残念なことに今、その二人はこの店には居ないわけだが。
居て欲しくない時はいつだってやってくるのに、こういう時に限って顔を出してくれない。
「だったら話は早い。やいポンコツメガネ。この私の身を守るための道具を寄越せ。今すぐだ」
「……ふうむ」
つまり、この僕、森近霖之助一人で彼女の相手をしなくてはいけないということである。
もっとも、何の考えもなしに彼女を挑発したわけではない。
彼女のような天邪鬼相手には、あくまでも上から目線で強気に攻めねばならないのだ。
「いいから寄越せ。すぐ寄越せ。ほら」
そして彼女の今までの言動が全てを示していた。僕がこんな態度を取っているのに彼女が手を出してくることがない。
つまり、彼女は本当に道具を欲しているのだ。
そうでなければ、わざわざ他人のふりなどはしないだろう。
「わかった。じゃあ、この布をあげよう」
そこで僕は適当にその辺に転がっていた布っきれを差し出してみせた。
「はぁ? ふざけてんのか?」
「そういう言葉は君自身の態度を改めてから言うべきだね。それに、必要ってことは要らないって事だろう? 天邪鬼、鬼人正邪」
わざとらしく名前を呼ぶと、彼女は意地悪く笑った。
「はん。天邪鬼だからって全部反対の事を言ってると思うなよ」
「だろうね」
いくら種族が天邪鬼だからといって、全てが反対なわけがない。そうなったらもう、それは種族ではなくただの呪いだ。
「だいたい、用がなきゃこんな場所に来るかい。道具が欲しいのは事実だよ。テメエの持ってるその手配書がその証拠だろ」
手配書はまだ大きく広まってはいないらしい。しかし、この先彼女が狙われる立場になるというのは分かる。
「私はこの先どうなるか想像できないほどバカじゃあない」
なら異変なんか起こさなきゃいいのに、とは言えなかった。
「お前、道具作れるんだろ」
正邪は苦虫を噛み潰したような顔のまま、僕に問いかけてきた。
「どこから聞いたんだか知らないが、その通りだ」
「なら、道具を作って欲しい。金はある」
「金、ねえ」
その金の出処は果たしてどこからなのだろうか。あまり受け取ってはよろしくない金の気がする。
「用途はさっき言った、私の身を守るための道具だ」
「うーん」
自業自得、と言えばそれまでなのだが。頼られている以上は何とかしてやりたいという気持ちもあった。
僕は早々に彼女の正体を暴いたが、それは彼女の本心を知りたかったからである。
そして本心から道具を欲しているというのならば。
「君に協力したら僕まで面倒なことになるんじゃないかい?」
状況次第では協力しても構わないとも思っているのだが、敢えてそれを顔を出すことはしない。
彼女が何を求めているのか。天邪鬼の彼女からそれを探るのは普通の客よりも困難だ。
もう少し探りを入れてみることにした。
「並の天邪鬼だったらそうだろうな」
すると彼女は、並ではない天邪鬼ということなのか。
そもそも彼女以外に天邪鬼を見たことが無いので分からなかった。
「いいか。私に利用された少名針妙丸は今、博麗神社で保護されてるんだろ」
「ああ。さっき僕が言ったとおりね」
「つまりそういうことだ。悪いのは私で、利用された奴は悪くないんだよ。全部私が悪いのさ」
口元を歪めて笑う。
まるでそれが誇りであるかのように。
「なるほどね」
彼女は生粋の天邪鬼ということだ。人から嫌がられることこそ喜び。
だからこそ、悪いのは自分であると主張する。
「僕が協力したとしても、そうなるわけか」
「それに、お前が道具を渡さないなら、適当に持っていくだけだからな」
堂々と泥棒宣言されてしまった。
そして問題なのは、僕にはそれを止める手段が無いということだ。
「そうならないために、お前に道具を選ばせてやると言っているんだ」
「盗っ人猛々しいとはこの事だなあ」
「私は余裕綽々なお前のほうが不思議だよ」
この状況において、僕は命の心配は別にしていない。
既に幻想郷を敵に回している彼女ではあるが、それはあくまで『弾幕ごっこ遊び』の範囲の話だからだ。
そしてこの手配書にしたって、彼女を狙うのはあくまで弾幕である。
反則級の弾幕だとしても、それはあくまで弾幕。ごっこ遊びなのだ。
本気で彼女を捉えようというのならば、こんなまどろっこしい手段は取っているわけがないのだ。
それこそ八雲紫がスキマ送りにしてしまえば、終わってしまう問題である。
ならば鬼人正邪は何故野放しなのか?
僕には一つの考えがあった。
まず「幻想郷に仇をなす反逆者」という分かりやすい的。
それを捕らえるために、皆は普段はルールで制限されている弾幕を無制限に使うことが出来る。
妖怪であれば誰しも少しは持っているだろう、ルールを遵守するというストレス。それを発散させるいい機会になる。
要するに彼女はいい出汁にされているのだ。
そう考えると、少し気の毒でもある。
「まあ、これでも長生きしているからね」
僕は弾幕ごっこなんてものが存在しない頃の幻想郷を生き延びている。
その頃の経験から、目の前の彼女にそこまでの危険性が無いことは分かっていた。
彼女は妖怪ではあるが、あくまでも「弾幕ごっこ」が成立した後の妖怪なのだろう。
だが、しかし。いや、だからこそか。
「僕はある意味で、君を尊敬しているんだ。だから、君に対しては危険を感じていない」
「はぁ?」
正邪はものすごく嫌そうな顔をした。尊敬という言葉は彼女にとっては屈辱であったか。
「だってそうだろう。決められたルールに反逆する。妖怪としては正しい姿じゃあないか」
昔の幻想郷はもっともっともっと、殺伐としていた。まあ、平和な時代になったもんだ。
「……ふん、少しは話が分かるみたいんな」
満更でもなさそうな顔をしている。つまりそういうことだ。
彼女は邪悪というよりも、跳ねっ返りの子供に近い。
ならば、それに対して大人気なく対応する必要も無いだろう。
寛大な気持ちで接してやらなければ。
「しかし、ルールを破るってことは当然リスクがあるわけだ。君は今、ルールを破った代償を受けている」
「そんな正論聞きたかぁないね」
それはそうだ。
彼女には最も通じない話であろう。
「私は幻想郷の奴らにギャフンと言わせてやりたいんだよ」
「ギャフンなんて現実で言う奴の顔が見てみたいもんだね」
そう返すと正邪はとても面白くなさそうな顔をした。
「まあまあ。話は最後まで聞いてくれよ。僕は完璧な道具を君に提供することは出来なくは無いんだ」
「ほう?」
「例えば弾幕を完全に跳ね返す道具なんてものもある」
実際に使っている妖怪もいるのだが、彼女がその機能を有効活用しているという話はてんで聞かない。
日傘としての機能は大いに使ってくれているようなので、文句は無いのだが。
「他にもあるよ。自作じゃあないから詳しくは知らないんだが、天狗の持っているカメラはただのカメラじゃあない。アレは撮影した弾幕を消す事ができる特製品だ」
「ほほう?」
「後はそうだな。八雲紫が持っている傘は、スキマを作り出して場所を移動することが出来ると聞くよ」
「良さそうじゃないか。そういうのを作ってを寄越せ」
「そう簡単にはいかないよ。良い道具を作るには、時間がかかってしまう。すぐに君の要望には応えられないな」
無理をすれば出来なくはないのだが、それをしたくない理由があった。
「チッ。すぐに使える何かないのか?」
「まあ、もう少し話を聞いてくれよ。仮にそういう道具が手に入ったとしようじゃないか。君はそれを使うのかい?」
「そりゃあ当然だ」
「いいのかな、そんな正攻法で」
「む」
ここはあえて彼女のプライドをくすぐることにした。
「それじゃあ、全然天邪鬼らしくないじゃないか」
「……テメェ」
彼女は、口元を歪めて喜びと怒りの混じった複雑な笑い方をした。
僕の言葉にどう答えるかで、彼女の天邪鬼としての本質が問われるのだ。
「さてと……」
彼女が本当に求めているものは何なのか、だいたい分かってきた。
正邪が何故「弾幕を避ける、無効化する道具」を欲しているのか。
それは、文字通り弾幕をどうにかしてやり過ごしたいから、では無い。
「弾幕を避けたり無効化すること」で相手を驚かせたい、ということなのだ。
しかも、それは相手が「こう避けるだろう」という意識をしていない方法でだ。
意表をつくこと。それは相手の常識をひっくり返すということである。
それがつまり、幻想郷の奴らをギャフンと言わせたいということなのだ。
「道具が欲しいんだったね」
何故彼女が道具に拘るのか? その理由も分かっている。
鬼人正邪は、道具が人や妖怪に使われる状況からの反逆を謳い、異変を起こした。
しかし、実際は彼女は全てを利用していた。
それを実際に見せつけるため、反則的な回避や無効化を、「道具を使って」することで、自身の言っていたことが正反対であったことを証明する。
道具は利用されるだけのものだと見せつけるのだ。
それこそが、天邪鬼としての彼女の証明である。
だからこそ、反則的なアイテムが無くてはならない。
それも、分かりやすくイカサマだと見えるようなアイテムをだ。
「一つ聞きたいんだが」
「何だよ」
「君はもう、いくつか反則的なアイテムを持っているんじゃあないか?」
「……何故そう思う?」
「打ち出の小槌も反則アイテムだろう。そして先の異変を経て、道具の色々な可能性に気づいたはずなんだ」
パッとしない印象を持つ道具であっても、きちんと使えばあっという効果が出るということに。
「そこで話はさっきのに戻るんだが。君にはこの布をあげよう。このパッとしない見た目が逆に効果的になるだろうからね」
「あ? ただの布なんだろ、それ」
「そうだよ。しかし、使い方次第さ。簡単な話なんだよ。君の能力を使えばいい」
正邪は意味が分からなかったようで、首を傾げていた。
「あー? あー」
やがて理解したかのように頷いてみせる。
彼女の能力は、全てをひっくり返す。ならば。
「弾幕に当たったという結果を布を介して反転させれば、どうなると思う?」
「私自身に当たることは無いってことか。なるほどな」
「傍から見ていれば、それは布自体が特殊な道具に見えるだろうね」
あるいは弾幕をすり抜けたように見えるかもしれない。
「そいつぁ面白い。私がイカサマアイテムを使って弾幕を避けているように見えるな」
「ところがどっこい、実際はその道具は何の変哲も無い、ただの布。実に天邪鬼らしいと思うんだ。どうだい?」
「面白い。そいつぁ夢の広がる話だ」
こういうのは発想の問題なのだ。
アイディア料を貰ってもいいくらいである。
「そのアイディアはありがたく貰っておこう。しかし、それだけじゃあ余りにも心許ない」
「そうかい。もう少し頭を働かせるといい」
「あん?」
「反則アイテムに頼らないで戦うのも実に天邪鬼らしくていい。だが、それは君を詳しくを知っていることが前提の話さ。求められているのは、もっと分かりやすい悪役像だと僕は思うね」
「悪役像だぁ?」
「世の中の天邪鬼のイメージは、弱っちいくせに口だけは達者な雑魚ってとこだろう」
「言うじゃないか、お前」
ひくひくとこめかみ辺りが動いている。
「だから、さ。反則アイテムを使って驚かせてやればいい。私はただの雑魚じゃあないぞってさ」
「……どっちの味方なんだよ、お前は」
「どっちもさ」
商人というのはいつだってそういうものなのだ。
「なるほど、幻想郷の真の悪者はお前みたいな奴なんだな」
「僕は平和と秩序を重んじる善人だよ」
自分で善人なんていう奴は、ろくでもない奴に決まっている。
つまり、天邪鬼の前でこんな事を言う僕は、良い奴ということだ。
「へいへい。私は生粋の天邪鬼だけどな」
ならば、その逆はどうなのだろうか?
「……ま、その布はサービスだ。無償であげるよ。その布っきれ一枚で君が追っ手をくぐり抜けられるよう、心から祈ることにしよう」
「へん。お前の言う事なんか聞くかい。手段を選んでいる場合じゃあないんだ。あらゆる手を使って生き延びてやるさ」
そう言って僕の手から布っきれをかっぱらう。
「道具っていうのは名前をつけた瞬間、用途が決まるんだよ。せっかくだから名前をつけてやるといい」
「うるさいな。どうせただの布なんだろ? ハッタリでひらり布とでも呼んでやらあ」
正邪は「ひらり布」と名付けた布っきれをマントのように纏い、ひらりと飛び跳ねた。
「見ているがいい。この鬼人正邪の新たな反逆を!」
それが僕が見た正邪の最後の姿だった。
「……その布がこの布だっていうのか」
魔理沙は話を聞いた後、渋い顔をしていた。
「そうだよ。彼女が名付けた、ひらり布だ。だからこれはただの布なのさ」
それは、提供した僕自身がよく分かっていることだ。
「つまり、私はまんまと正邪の思惑に引っかかったってことか?」
「そうだよ」
「あー……」
どこか遠い場所を見るような目をしている魔理沙。
「アレだな。最初に香霖が言ったことがようやく分かった」
「だろう」
よりにもよって、身内の親しい人間が、ものの見事に引っかかってしまった僕の心境。
そして、事の真相を事細かく身内に説明された魔理沙。
その心境を表すには、こう言うしかないのである。
「「ギャフン」」
「なんだよいきなり」
果たして今僕はどんな表情をしているんだろうか。
それは目の前にいる魔理沙にしか分からない。
しかし、すぐに分かることになるだろう。
「いや、ついね」
眉間を抑えつつ、改めて僕は彼女へ告げた。
「これはただの布だよ」
そう告げると魔理沙はいかにも不満そうな顔をした。
「なあ香霖。香霖の能力は信用してるが、手にも取らないで分かるわけないだろ?」
「そうだね」
確かにそれでは納得はするまい。僕は魔理沙からその布を受取り、名前を読み取った。
名前。ひらり布。用途は……。
「……ただの布だよ」
「そんな訳ないだろ? だってこれは……」
「反則アイテムだって言いたいんだろう? ただの布だよ」
繰り返すと、流石に察したのか僕の顔をじいっと睨みつけてきた。
「香霖、何か知ってるな?」
「……僕は何も売っていないんだがね」
しかし僕は知っている。
何故この「ひらり布」がただの布であるかということを。
『ギャフンなんて現実で言う奴の顔が見てみたい』
「失礼するわ」
カウベルの音と共にやってきたのは見覚えの無い少女だった。
「私の名は少名針妙丸」
尋ねる前に名前を名乗ってくる。
「これはどうも。僕は森近霖之助だ」
ひとまず、僕も会釈しながら自分の名前を伝えた。
「今日はどういったご用件で?」
この香霖堂にやってくるということは、道具を求めているということだろう。
「ええ、弾幕を避けるか無効化する道具が欲しいの」
「弾幕をねえ」
避けるにせよ、無効化にせよ、やろうと思えば出来ないことはない。
僕は彼女が本当は何を求めているのか、尋ねてみることにした。
「弾幕ごっこっていうのはあくまで遊びなんだ。そんな反則アイテムを持ち込むべきじゃ無いんじゃないかな?」
それを聞いた彼女は大きくため息をついた。
「……事情があるのよ。先の異変を知っているでしょう?」
「先の異変……ええと……道具が勝手に動き出す……だったかな?」
「そう。なら本当の首謀者も知っているわね。鬼人正邪」
「ああ、アマノジャクだね。話は大雑把に聞いたよ」
幻想郷そのものをひっくり返そうとした異変。そして少名針妙丸はその異変に関わっていたのだ。
後から聞いた話だと、天邪鬼にそそのかされたとかなんとか。
「なんでも、異変後の宴会まですっぽかしたらしいね、正邪は」
異変とその後の宴会は、幻想郷では一纏めみたいなものだ。
逆に言えば、異変を起こした者はその後の宴会には参加しなければならないという、暗黙の了解である。
「そう。正邪がそのルールを破ったせいで、私は狙われているの。私は天邪鬼に利用された身。しかし、はいそうですかと素直に聞いてくれるわけも無くってね」
「ふうむ」
なるほど、彼女の言っていることは、もっともらしく聞こえる。
実際にそういうことがあったということは、魔理沙からも聞いていた。
「一つ聞いていいかな?」
「何だ?」
「確か少名針妙丸というのは小人族と聞いたんだが」
目の前の彼女は普通の少女くらいの身長であり、小人であるとはとても思えなかった。
「小人のままじゃあ、店に来ても気付かれなかったでしょう。あなたこそ、打ち出の小槌を知らないの?」
「知っているに決まっているともさ」
道具屋である僕に対して、その言葉は挑発とも聞こえた。
「つまり君は、打ち出の小槌の力で大きくなっていると言いたいわけだ」
「他に理由があるとでも?」
「僕の知り合いには紅白のおめでたい巫女がいてね」
ぴく、と眉が僅かに動いた。その表情は強張っているようにも見える。
「彼女の家には今客人が来ているらしいんだ。身長一寸にも満たない大きさのね」
「つまり、それは私でしょう?」
「ああ、確かに僕は彼女の外見は知らないんだ。しかし、彼女が今そこにいる理由は聞いていてね。なんでも、打ち出の小槌の魔力が尽きてしまって元の大きさに戻ることすら出来やしないと」
「……」
実のところ、僕は最初から知っていたのだ。
「更に聞いた話なんだが、近々天邪鬼を捉える手配書が撒かれるらしい。僕のところにも一枚あってね」
懐から取り出したその似顔絵を、彼女に見せつけてやる。
「鬼人正邪。どこかで見た顔だとは思わないかい?」
その顔は、今僕の目の前にいる少女の顔であった。
「……テメエ、最初から知ってて三味線弾いていやがったな」
口調が荒々しいものへと変わる。
「まあ待ちなさい」
今にも殴りかかって来そうなので、僕は彼女を静止するように手を広げた。
「何だよ?」
「何故、君がわざわざ針妙丸のふりをしたのかも、ある程度分かっているんだ。だから君の真意を確かめたかった」
「ふん。言ってみな」
「天邪鬼に道具を売ってくれる店なんて、存在しない。そういう事さ」
元々からして天邪鬼は嫌われ者だ。そして彼らはそれこそが是としている。
そんな彼らにいいものを売ったらどうなるか? 天邪鬼だからと悪いものを売ったらどうなるか?
関わってしまった時点で厄介な事になるのは容易に想像できる。
「チッ。その通りだよ。人里は警戒されてて入ることすらままならないからな。こんな辺鄙な場所にある店なら大丈夫だと思ったんだが」
「……」
どうやら彼女は知らないらしい。僕の店の常連に、紅白のおめでたい巫女と白黒の魔法使いが居ることを。
残念なことに今、その二人はこの店には居ないわけだが。
居て欲しくない時はいつだってやってくるのに、こういう時に限って顔を出してくれない。
「だったら話は早い。やいポンコツメガネ。この私の身を守るための道具を寄越せ。今すぐだ」
「……ふうむ」
つまり、この僕、森近霖之助一人で彼女の相手をしなくてはいけないということである。
もっとも、何の考えもなしに彼女を挑発したわけではない。
彼女のような天邪鬼相手には、あくまでも上から目線で強気に攻めねばならないのだ。
「いいから寄越せ。すぐ寄越せ。ほら」
そして彼女の今までの言動が全てを示していた。僕がこんな態度を取っているのに彼女が手を出してくることがない。
つまり、彼女は本当に道具を欲しているのだ。
そうでなければ、わざわざ他人のふりなどはしないだろう。
「わかった。じゃあ、この布をあげよう」
そこで僕は適当にその辺に転がっていた布っきれを差し出してみせた。
「はぁ? ふざけてんのか?」
「そういう言葉は君自身の態度を改めてから言うべきだね。それに、必要ってことは要らないって事だろう? 天邪鬼、鬼人正邪」
わざとらしく名前を呼ぶと、彼女は意地悪く笑った。
「はん。天邪鬼だからって全部反対の事を言ってると思うなよ」
「だろうね」
いくら種族が天邪鬼だからといって、全てが反対なわけがない。そうなったらもう、それは種族ではなくただの呪いだ。
「だいたい、用がなきゃこんな場所に来るかい。道具が欲しいのは事実だよ。テメエの持ってるその手配書がその証拠だろ」
手配書はまだ大きく広まってはいないらしい。しかし、この先彼女が狙われる立場になるというのは分かる。
「私はこの先どうなるか想像できないほどバカじゃあない」
なら異変なんか起こさなきゃいいのに、とは言えなかった。
「お前、道具作れるんだろ」
正邪は苦虫を噛み潰したような顔のまま、僕に問いかけてきた。
「どこから聞いたんだか知らないが、その通りだ」
「なら、道具を作って欲しい。金はある」
「金、ねえ」
その金の出処は果たしてどこからなのだろうか。あまり受け取ってはよろしくない金の気がする。
「用途はさっき言った、私の身を守るための道具だ」
「うーん」
自業自得、と言えばそれまでなのだが。頼られている以上は何とかしてやりたいという気持ちもあった。
僕は早々に彼女の正体を暴いたが、それは彼女の本心を知りたかったからである。
そして本心から道具を欲しているというのならば。
「君に協力したら僕まで面倒なことになるんじゃないかい?」
状況次第では協力しても構わないとも思っているのだが、敢えてそれを顔を出すことはしない。
彼女が何を求めているのか。天邪鬼の彼女からそれを探るのは普通の客よりも困難だ。
もう少し探りを入れてみることにした。
「並の天邪鬼だったらそうだろうな」
すると彼女は、並ではない天邪鬼ということなのか。
そもそも彼女以外に天邪鬼を見たことが無いので分からなかった。
「いいか。私に利用された少名針妙丸は今、博麗神社で保護されてるんだろ」
「ああ。さっき僕が言ったとおりね」
「つまりそういうことだ。悪いのは私で、利用された奴は悪くないんだよ。全部私が悪いのさ」
口元を歪めて笑う。
まるでそれが誇りであるかのように。
「なるほどね」
彼女は生粋の天邪鬼ということだ。人から嫌がられることこそ喜び。
だからこそ、悪いのは自分であると主張する。
「僕が協力したとしても、そうなるわけか」
「それに、お前が道具を渡さないなら、適当に持っていくだけだからな」
堂々と泥棒宣言されてしまった。
そして問題なのは、僕にはそれを止める手段が無いということだ。
「そうならないために、お前に道具を選ばせてやると言っているんだ」
「盗っ人猛々しいとはこの事だなあ」
「私は余裕綽々なお前のほうが不思議だよ」
この状況において、僕は命の心配は別にしていない。
既に幻想郷を敵に回している彼女ではあるが、それはあくまで『弾幕ごっこ遊び』の範囲の話だからだ。
そしてこの手配書にしたって、彼女を狙うのはあくまで弾幕である。
反則級の弾幕だとしても、それはあくまで弾幕。ごっこ遊びなのだ。
本気で彼女を捉えようというのならば、こんなまどろっこしい手段は取っているわけがないのだ。
それこそ八雲紫がスキマ送りにしてしまえば、終わってしまう問題である。
ならば鬼人正邪は何故野放しなのか?
僕には一つの考えがあった。
まず「幻想郷に仇をなす反逆者」という分かりやすい的。
それを捕らえるために、皆は普段はルールで制限されている弾幕を無制限に使うことが出来る。
妖怪であれば誰しも少しは持っているだろう、ルールを遵守するというストレス。それを発散させるいい機会になる。
要するに彼女はいい出汁にされているのだ。
そう考えると、少し気の毒でもある。
「まあ、これでも長生きしているからね」
僕は弾幕ごっこなんてものが存在しない頃の幻想郷を生き延びている。
その頃の経験から、目の前の彼女にそこまでの危険性が無いことは分かっていた。
彼女は妖怪ではあるが、あくまでも「弾幕ごっこ」が成立した後の妖怪なのだろう。
だが、しかし。いや、だからこそか。
「僕はある意味で、君を尊敬しているんだ。だから、君に対しては危険を感じていない」
「はぁ?」
正邪はものすごく嫌そうな顔をした。尊敬という言葉は彼女にとっては屈辱であったか。
「だってそうだろう。決められたルールに反逆する。妖怪としては正しい姿じゃあないか」
昔の幻想郷はもっともっともっと、殺伐としていた。まあ、平和な時代になったもんだ。
「……ふん、少しは話が分かるみたいんな」
満更でもなさそうな顔をしている。つまりそういうことだ。
彼女は邪悪というよりも、跳ねっ返りの子供に近い。
ならば、それに対して大人気なく対応する必要も無いだろう。
寛大な気持ちで接してやらなければ。
「しかし、ルールを破るってことは当然リスクがあるわけだ。君は今、ルールを破った代償を受けている」
「そんな正論聞きたかぁないね」
それはそうだ。
彼女には最も通じない話であろう。
「私は幻想郷の奴らにギャフンと言わせてやりたいんだよ」
「ギャフンなんて現実で言う奴の顔が見てみたいもんだね」
そう返すと正邪はとても面白くなさそうな顔をした。
「まあまあ。話は最後まで聞いてくれよ。僕は完璧な道具を君に提供することは出来なくは無いんだ」
「ほう?」
「例えば弾幕を完全に跳ね返す道具なんてものもある」
実際に使っている妖怪もいるのだが、彼女がその機能を有効活用しているという話はてんで聞かない。
日傘としての機能は大いに使ってくれているようなので、文句は無いのだが。
「他にもあるよ。自作じゃあないから詳しくは知らないんだが、天狗の持っているカメラはただのカメラじゃあない。アレは撮影した弾幕を消す事ができる特製品だ」
「ほほう?」
「後はそうだな。八雲紫が持っている傘は、スキマを作り出して場所を移動することが出来ると聞くよ」
「良さそうじゃないか。そういうのを作ってを寄越せ」
「そう簡単にはいかないよ。良い道具を作るには、時間がかかってしまう。すぐに君の要望には応えられないな」
無理をすれば出来なくはないのだが、それをしたくない理由があった。
「チッ。すぐに使える何かないのか?」
「まあ、もう少し話を聞いてくれよ。仮にそういう道具が手に入ったとしようじゃないか。君はそれを使うのかい?」
「そりゃあ当然だ」
「いいのかな、そんな正攻法で」
「む」
ここはあえて彼女のプライドをくすぐることにした。
「それじゃあ、全然天邪鬼らしくないじゃないか」
「……テメェ」
彼女は、口元を歪めて喜びと怒りの混じった複雑な笑い方をした。
僕の言葉にどう答えるかで、彼女の天邪鬼としての本質が問われるのだ。
「さてと……」
彼女が本当に求めているものは何なのか、だいたい分かってきた。
正邪が何故「弾幕を避ける、無効化する道具」を欲しているのか。
それは、文字通り弾幕をどうにかしてやり過ごしたいから、では無い。
「弾幕を避けたり無効化すること」で相手を驚かせたい、ということなのだ。
しかも、それは相手が「こう避けるだろう」という意識をしていない方法でだ。
意表をつくこと。それは相手の常識をひっくり返すということである。
それがつまり、幻想郷の奴らをギャフンと言わせたいということなのだ。
「道具が欲しいんだったね」
何故彼女が道具に拘るのか? その理由も分かっている。
鬼人正邪は、道具が人や妖怪に使われる状況からの反逆を謳い、異変を起こした。
しかし、実際は彼女は全てを利用していた。
それを実際に見せつけるため、反則的な回避や無効化を、「道具を使って」することで、自身の言っていたことが正反対であったことを証明する。
道具は利用されるだけのものだと見せつけるのだ。
それこそが、天邪鬼としての彼女の証明である。
だからこそ、反則的なアイテムが無くてはならない。
それも、分かりやすくイカサマだと見えるようなアイテムをだ。
「一つ聞きたいんだが」
「何だよ」
「君はもう、いくつか反則的なアイテムを持っているんじゃあないか?」
「……何故そう思う?」
「打ち出の小槌も反則アイテムだろう。そして先の異変を経て、道具の色々な可能性に気づいたはずなんだ」
パッとしない印象を持つ道具であっても、きちんと使えばあっという効果が出るということに。
「そこで話はさっきのに戻るんだが。君にはこの布をあげよう。このパッとしない見た目が逆に効果的になるだろうからね」
「あ? ただの布なんだろ、それ」
「そうだよ。しかし、使い方次第さ。簡単な話なんだよ。君の能力を使えばいい」
正邪は意味が分からなかったようで、首を傾げていた。
「あー? あー」
やがて理解したかのように頷いてみせる。
彼女の能力は、全てをひっくり返す。ならば。
「弾幕に当たったという結果を布を介して反転させれば、どうなると思う?」
「私自身に当たることは無いってことか。なるほどな」
「傍から見ていれば、それは布自体が特殊な道具に見えるだろうね」
あるいは弾幕をすり抜けたように見えるかもしれない。
「そいつぁ面白い。私がイカサマアイテムを使って弾幕を避けているように見えるな」
「ところがどっこい、実際はその道具は何の変哲も無い、ただの布。実に天邪鬼らしいと思うんだ。どうだい?」
「面白い。そいつぁ夢の広がる話だ」
こういうのは発想の問題なのだ。
アイディア料を貰ってもいいくらいである。
「そのアイディアはありがたく貰っておこう。しかし、それだけじゃあ余りにも心許ない」
「そうかい。もう少し頭を働かせるといい」
「あん?」
「反則アイテムに頼らないで戦うのも実に天邪鬼らしくていい。だが、それは君を詳しくを知っていることが前提の話さ。求められているのは、もっと分かりやすい悪役像だと僕は思うね」
「悪役像だぁ?」
「世の中の天邪鬼のイメージは、弱っちいくせに口だけは達者な雑魚ってとこだろう」
「言うじゃないか、お前」
ひくひくとこめかみ辺りが動いている。
「だから、さ。反則アイテムを使って驚かせてやればいい。私はただの雑魚じゃあないぞってさ」
「……どっちの味方なんだよ、お前は」
「どっちもさ」
商人というのはいつだってそういうものなのだ。
「なるほど、幻想郷の真の悪者はお前みたいな奴なんだな」
「僕は平和と秩序を重んじる善人だよ」
自分で善人なんていう奴は、ろくでもない奴に決まっている。
つまり、天邪鬼の前でこんな事を言う僕は、良い奴ということだ。
「へいへい。私は生粋の天邪鬼だけどな」
ならば、その逆はどうなのだろうか?
「……ま、その布はサービスだ。無償であげるよ。その布っきれ一枚で君が追っ手をくぐり抜けられるよう、心から祈ることにしよう」
「へん。お前の言う事なんか聞くかい。手段を選んでいる場合じゃあないんだ。あらゆる手を使って生き延びてやるさ」
そう言って僕の手から布っきれをかっぱらう。
「道具っていうのは名前をつけた瞬間、用途が決まるんだよ。せっかくだから名前をつけてやるといい」
「うるさいな。どうせただの布なんだろ? ハッタリでひらり布とでも呼んでやらあ」
正邪は「ひらり布」と名付けた布っきれをマントのように纏い、ひらりと飛び跳ねた。
「見ているがいい。この鬼人正邪の新たな反逆を!」
それが僕が見た正邪の最後の姿だった。
「……その布がこの布だっていうのか」
魔理沙は話を聞いた後、渋い顔をしていた。
「そうだよ。彼女が名付けた、ひらり布だ。だからこれはただの布なのさ」
それは、提供した僕自身がよく分かっていることだ。
「つまり、私はまんまと正邪の思惑に引っかかったってことか?」
「そうだよ」
「あー……」
どこか遠い場所を見るような目をしている魔理沙。
「アレだな。最初に香霖が言ったことがようやく分かった」
「だろう」
よりにもよって、身内の親しい人間が、ものの見事に引っかかってしまった僕の心境。
そして、事の真相を事細かく身内に説明された魔理沙。
その心境を表すには、こう言うしかないのである。
「「ギャフン」」
これはしてやられましたねw。
理詰め理詰めな霖之助と、引っ掻き回す正邪がいい感じでした。
天邪鬼たる性質を利用した考察を含めて真面目に読んでしまいました。
タイトルから漂うコメディな雰囲気とはまた違う内容で、狐に包まれた気分になりました
正邪の正邪らしさが光ると同時に霖之助の霖之助感もよかったです
やはり天邪鬼はこうでなくてはなりませんね
面白かったです
弾ジャクの外伝的なストーリーで読み応えのあるお話でした。
なるほどそう解釈したかあと納得しつつ、それでいて会話劇が楽しかったです。
序盤の叙述トリックもよかった。
正邪すら言いくるめる霖之助の話術が良いですね。
ただ、それが巡りめぐってギャフン、とw
はい支持率10%アップ。
ひらり布が正邪の能力を投影したただの布とは思いつきませんでした。
テンポよく読めて面白かったです。
面白い発想、それでいて全く違和感のない内容。お見事でした。
この正邪は最高に気持ちがいいですね。
ひらり布の発想も面白かった
うーん、巧い! まぁ巧い話にはなんでもギャフンと言いたくなるのですけどw
原作の確かな読み込みから無理なく展開される考察、いつもながらお見事です。
ユーモアもある優しい手触りのお話で大変楽しめました。
私は会話を描写するのが苦手なので、これは本当に羨ましいです