*このお話の舞台は、ここではない現代日本です。つまり幻想郷じゃないです
*よって、弾幕は出ません
*秘封倶楽部の2人はほとんど出て来ません
*大事なのは『あとがき』と『タグ』です
*それでもよければ時間を潰してくださいませ
東方学園新聞 4月○日
桜満開、入学式
先日、当学園中等部及び高等部の入学式が行われた。天候にも恵まれ桜も満開、と春が新たな学園生活を祝福しているかのようだった。式の際は、和気藹々とした雰囲気の内部進学生と違い、外部生には緊張が見て取れた。しかしそれも、これからの日々で解消されていくことだろう。同じ学園の仲間として、共に過ごす学園生活を素晴らしいものにしていきたいものである。
新聞部はいつでも新入部員を募集しています。興味のある方は是非見学へ!部室棟1階、東方学園新聞部(高等部)部室でお待ちしています!
ここは、私立・東方学園。中学校から大学まで、10年一貫教育を行っている女学校である。広大な敷地の北部に中等部、東部に高等部があり、南部から西部には他の2校を併せた以上の敷地を有する大学キャンパスが広がっている。中央部には各校の共同施設や、OGによって建てられた共同部室塔(本当に塔である)、そして、留学生や遠隔地からの学生のための寮が林立している。基本的に生徒2人で一部屋を使うのだが、学生数が多いため、寮はまるで団地のようであり、そこに暮らす学生たちや、放課後を学園内で過ごす学生のための店が並んでいる様は、そこだけで一つの町と言えるものだ。実際、各学校や施設を繋ぐバス路線があるのだ。町と呼ぶには充分だろう。敷地内には山や川もあり、飽きる事無い四季の変化を楽しむことが出来る。
制服は、臙脂のネクタイに紺のブレザー、臙脂と黒のチェックのスカート。校則らしい校則の無い、いたって自由な校風であり、法に触れるような行為や、カンニングを除けば罰則が与えられるようなことはほとんど無い。そんな校風の所為か、全体的にのんびりとした学生、教師が多いらしい。部活や同好会は各校で独立したものもあれば、縛り無く参加自由なもの、組織が分割されたものなど様々である。委員会はそれぞれ独立しているが、行事の際などには連携を取ったり、共通で組織されることもある。
これは、そんな学校で学ぶのんびり屋さんたちの、のんびりとした日々のお話。
「ふぁ~、話長いのよあの爺は」
春の陽気でポカポカと暖かい大講堂から、続々と生徒が出てくる。この後は各クラスに分かれ、HRでお決まりの自己紹介タイムが始まるのだろう。出てくる生徒からは早くもソワソワとした雰囲気が見て取れる。そんな中、周りの空気など関係無しに欠伸をしながら出てきた生徒がいる。長く綺麗な黒髪に、真っ赤なリボンが特徴的な女の子。自分以外は他人事が信条の新高校1年生、博麗霊夢である。
内部進学生である私からすれば、入学式なんて今更のこと。そんな式典に参加するよりは、その分だけ布団で眠る方が余程有意義な時間の過ごし方だ。大体、中学の入学式と話に何の変わりも無いのだから。尤も、中学・高校共に椅子で舟を漕いでいた自分にそんなことを言う権利はないのだろうが。
「大体、無駄に広いのよこの学校は。全く、空でも飛べりゃいいのに」
春の日差しと桜並木の中を歩くこと数分、ようやく1・2年の校舎へと辿り着く。1年生は、白磁の校舎の3Fに教室がある。私の教室はその中でも廊下の最果てに位置する1‐A。少々歩くのが億劫になる。そもそも、この学園は広すぎる。寮から校舎までだって、歩けば30分以上はかかるのだ。1分1秒でもグータラしたい私にとって、この学園の広さというのは壮大な嫌がらせでしかない。そんな嫌がらせに遭う日々を、敢えて選んだ理由というのは、いたって私らしいもの。
「まぁ、受験勉強しないでグータラできるんだから手数料か。ダルいけど」
そんな益体もないことを考えながら、教室のドアを開けた。のんびりと歩いてきたからだろうか?中を見渡すと、ほとんどの生徒が揃っているようだ。見覚えのある顔は居る様な居ない様な。何人かは私だと気付いたらしく、挨拶をしてくる生徒もいるのだが、全然彼女たちのことを覚えていなかった。中学時代、何事も我関せずで過ごしてきた私は知り合いが少ない。友人なんてモノはもっといない。適当に挨拶した後、空いている席を探した。どうやら出席番号順などではないらしい。窓際の一番後ろという絶好の昼寝スポットが空いていたのでそこに座り、机に突っ伏したところ、
「お、また寝るのか?春だからって眠りすぎは良くないぜ」
声をかけられた。顔を上げたところ、どうやら前の席の生徒が話しかけてきたようだ。
「お前、入学式の時も寝てただろ?まさか同じクラスとはなぁ。って、なんでまた突っ伏してるんだお前は?」
無視して突っ伏したのだが、どうやらその程度で折れるタイプではないようだった。ここで顔を上げると、負けだ。そう思ったので突っ伏したままで返した。
「私は、一昨日からの『24時間昼寝!春眠は地球を救う!』で疲れてんのよ」
「疲れた時はストレッチがいいらしいぜ?背筋でも伸ばしたらどうだ?」
「背中が凝ってんの」
「だったら尚更だな。首の上下運動で凝りを解すべきだ」
しぶとい相手だ。仕方無しに顔を上げると、すぐ目の前に相手の顔があった。ちょっと顔を突き出せばキスが出来そうだ。今のところそのケは無いつもりだが、この距離は流石に居心地の悪さを感じる。よく見ると可愛らしい顔をしているし、唇も柔ら……そこら辺で一度思考を放棄し、上体を起こした。それを見て、目の前の少女は満足そうな笑みを浮かべる。
「やっと眠り姫のお目覚めか」
先ほどは距離が近すぎてわからなかったが、クセっ毛の金髪ロングで、座っているので確信は持てないが、私よりは若干小柄なように見える。胸も、きっと私よりは無いに違いない。そして、見るからにお調子者、といった感じを受けた。
「私は霧雨魔理沙。魔理沙でいいぜ」
「博麗よ。博麗霊夢」
「そうか。よろしくな霊夢!」
苗字を強調したのに、名前で呼んできやがった。親類ぐらいにしか呼ばれたことが無いというのに。だが、不思議と嫌な感じはしない。愛嬌のある笑顔のせいだろうか?まぁいい。春眠>愛嬌はこの世の真理なのだ。そう思って三度うつ伏せになろうとしたところ、前方から扉を開ける音が聞こえた。時間切れだ。担任教師が来たのだろう。さて、どんな奴だ……ろ……
薄紫のスーツを着こなすのは、170の後半はあろうかという長身。ミロのヴィーナスも炬燵に隠れて逃げ出しそうな、何処までもしなやかで、何処までも豊かな身体。腰元まで伸びた美しい金髪。美女と呼ぶには可愛らしく、美少女というには艶やか過ぎる貌。まるで存在そのものが『美』を語ることの愚かしさの証明のようだ。
その女性が教室に入ってきた途端、一瞬で教室が静かになった。しばしの静寂に続いて「へぇ」だの「凄い」だのと言った感嘆の声がちらほらと聞こえてくる。目の前の少女も、その女性を見て口笛を吹いていた。普段なら、ナンパ野郎かこいつは、くらいのことを思っただろうが、その時の私はただ呆然と、教卓へ向かう女性を見つめていた。見つめているのに、思考回路はその情報を拒絶している。
「皆さん、初めまして。私が今日からみんなの担任となる、」
そう言って黒板に文字を書き始める。八、雲、むらさ
「八雲紫です。担当教科は数学。ゆかりん♪ってよんでね!」
生まれて初めて聞く空気の冷えていく音と共に、私の脳ミソは活動を始めた。あの女は誰?ヤクモユカリ。いや待て。同姓同名のミスユニバースかなんかかも知れない。あんな美人のミスユニバースなんざ見たことは無いが、世界には似た人間が2~3人はいると言う。八雲紫と名乗った担任教師が、自分の知っている八雲紫と同一人物とは限らないじゃないか。あれは2人目だ。
「さて、今度はみんなに自己紹介をしてもらいたいんだけど。その前に2つ。このクラスでの約束事を伝えておきます。」
そう言って、八雲紫(2号)先生は黒板に模造紙を広げた。
一.担任教師は絶対に正しい
二.担任教師に対し、意見・疑問がある場合は一.を見よ
「これだけです。簡単でしょ?」
現実は、いつだって非情である。こんなアホは、この世に2人もいらないし、いてほしくない。
「そうそう、知ってるとは思うけど、この学校は3年間クラス替えはありません。これからの3年間、私を楽しませてちょうだいね♪」
「うわぁ……」と呟く魔理沙の声が、とても心地よい物に感じられた。
生徒たちの自己紹介も終わりが近づいてきた。が、ほとんど覚えていない。廊下側から順番に自己紹介を行っているのだが、出席番号でもなんでもない上に、留学生まで混じっているから聞こえてくる苗字に脈絡が無いのだ。加えて、全員随分無難な自己紹介をしていることが、覚えづらさに拍車をかけていた。まぁ、アレの後でぶっ飛んだ自己紹介が出来る奴はそうそういないだろう。別に、今この場で全員を覚えなきゃいけないわけでもない。3年も一緒に過ごすのだから、多分全員覚えられる。3年1ヵ月後には忘れているだろうけど。
ガタッ
ようやく前の前の席の子の自己紹介が終わったようだ。次は前の席の少女、霧雨魔理沙の番だ。
「霧雨魔理沙だ。魔理沙でいいぜ!趣味は読書と、アンティーク蒐集で、特技はキノコだな。食べちゃいけないキノコの利用法からトリュフの発見まで、何でもできるぜ。あと、走るのが速い。中学時代は陸上部の連中よりも速かった!それと、面白そうなことなら何でも好きだな。っと、少し長くなったけど」
そう言うと、何を思ったのか急にそっぽを向いた。
「べ、別に仲良くして欲しいわけじゃないんだからね!」
まさか、1日に2度も空気の冷えていく音を聞くことになろうとは思わなかった。斜め前の留学生、顔に「座る場所間違えた」って書いてあるし。1人だけ、前の方で大笑いしてる奴がいるが。
「む?なんか反応が薄い気もするが、まぁいいか。これから3年間よろしく頼むぜ!」
そう締めた魔理沙は、満足げな笑みを浮かべながら席に着いた。凄いなコイツ。心臓が毛玉かなんかで出来てるんじゃないか?さて、適当に終わらせるか。そう思い、立ち上がろうとしたら
「それじゃ霊夢。今のに負けないくらいのインパクトある自己紹介してちょうだいね♪」
絡んできた。そしてクラス中からざわめきが聞こえてくる。無視だ、無視。苗字と名前。それだけで、って、魔理沙は何で手を挙げてんだ。
「先生、霊夢と知り合いなのか?」
「えぇ。その子、近所の神社の子でね。そうだ、今度クラスのみんなで初詣に行きましょうか?巫女服霊夢がタダで見れるわよ?」
「おっ、それはいいな。カメラの用意をしとかないと」
タダじゃねぇよ。賽銭を払え賽銭を。そしてカメラで何を撮るつもりだ。
「それにしても霧雨さん、もう霊夢と仲良くなったの?」
「あぁ、親友だぜ!」
誰と誰がだ。
「嬉しいわぁ♪霊夢ったら、ちっちゃい頃から友達がいなくて、いつも『紫おねえちゃん、紫おねえちゃん』って。ずっと心配だったんだけど、いつの間にか親友がいたのね。これからも霊夢のこと頼んだわよ、霧雨さん?」
「頼まれた。それと、私のことは魔理沙でいいぜ」
「って、さっきから黙って聞いてれば何勝手なこと言ってんのよあんたたちは?!いつ私が紫を『お姉ちゃん』なんて呼んだ!初対面の人間を勝手に親友にすんな!それと神社に来たら賽銭を払え!」
思わず大声で反応してしまった。こういう輩にそんな反応を見せたら思う壺だというのに。案の定、2人してその反応に乗ってきた。
「酷いわ霊夢ったら。昔、お化けを怖がって、『霊夢、お姉ちゃんと一緒に寝ゆぅ』って言ってくれたじゃないの?それに、ここではちゃんと『偉大なる指導者にして敬愛すべき教師、紫先生』って呼びなさい」
「薄情な上にがめついんだな、霊夢は。大体、友情に時間は関係無いぜ?」
「あんたたち……」
これ、公開羞恥プレイさせられてる?クラスのあちこちから忍び笑いや含み笑いが聞こえてくる。私の第一印象が……顔が赤くなっているのが自分でもわかる。もういい。とにかくこの場はさっさと切り上げなきゃダメだ。なんとか動揺を抑えて、落ち着いた声を絞り出す。
「博麗霊夢です。よろしくっ!」
落ち着いたつもりだったが、結構乱暴な言い方になってしまった。座る時も椅子の音を立ててしまったようだ。なんで入学早々こんな恥ずかしい目に遭わなきゃいかんのだ!
「霊夢ったら、恥ずかしがりやさんなんだな」
その一言で、一度は収まりかけていた笑い声がまた広がっていった。こいつは後で殴る。絶対に殴る。
「さて、自己紹介も一通り済んだ事だし、いくつか伝達事項を……あら?」
ある程度笑いが収まったところで、紫が話し始めた。目に涙なんか浮かべやがって、何がそんなにおかしい。
「ごめんなさい、ちょっと忘れ物してきちゃったみたい。取ってくるから、他のクラスの迷惑にならない程度におしゃべりしてて」
どうやら配布物か何かを持って来忘れたようだ。そう言い残して教室を出て行った。わざわざ処刑時間をくれるなんていい所もあるじゃないか。よし、前のバカを殴ろう。立ち上がり、ストレッチ代わりに指をパキポキと鳴らしたら、魔理沙がこちらに振り向いた。
「どうしたんだ霊夢?なんか笑顔に迫力があるぜ?」
「どうしてかしらね?とりあえず覚悟はいい?」
「いや、ちょっと待ってくれ」
「1、0。さぁ、歯を食いしばりなさい」
「本当に仲が良いのね、あなたたちは」
私は、お前が泣くまで、殴るのを、やめないっ!と、拳を握り締めた所で隣から声をかけられた。ちっ、余計な所で、
「余計な所で声かけちゃったかしら?でも、声をかけないと、霧雨さんが泣くまで叩きそうなんですもの」
「うっ」
そう言われた私は、思わず拳を解いてしまった。声をかけてきたのは、私の隣の席の少女。少し眠そうな顔だが、優しげな目をしている。薄紫のショートヘアーに、飾りのついたカチューシャをつけていて……なんだこの飾り?目?
「あら?そんなに変かしら私のカチューシャ。結構気に入っているのだけれど」
って、なんだこの子は。さっきからまるで、人の心が見えてるみたいに。え~っと、確か名前は
「私は古明地さとりよ。苗字は呼びにくいでしょうから、さとりでいいわ。よろしくね、博麗さん、霧雨さん」
そう言ってこちらに微笑みかけてきた。ホントに心でも読んでるんじゃないんでしょうね。何にせよ、完全に機を逸してしまった。仕方なく椅子に腰掛けると、脅威は去ったとばかりに、魔理沙も笑顔を浮かべながらさとりに言葉を返した。
「よろしくな!それと、私は魔理沙でいいし、こいつは霊夢でいいぜ」
「なんであんたが私の呼称まで指定すんのよ!」
「あいたっ!」
斜め前で身を乗り出している魔理沙に、思わずチョップを入れてしまった。何をやってるんだ私は?これじゃまるで
「まるで漫才コンビみたいね?魔理沙がボケで、霊夢がツッコミ。本当に初対面なの?」
「私がボケと言うのは納得いかんが、初対面なのは間違いないぜ?」
「勘弁してよ、もぅ……っていうかあなた、エスパーかなんかじゃないでしょうね?」
「「は?」」
ミスった。さっきからホント、何をらしくないことばかりしてるんだ私は。目の前の二人は、一瞬の間のあとに笑い声を上げ始めた。
「ぷっ、くっ、ふふっ、エスパー?私が?ふふふっ」
「くくっ、お前、うふうふ、面白すぎるだろ?あはははははっ!」
「だ、だって、さっきから人の考えてることばかり言うもんだから!そんなに笑わないでよ!」
「うふふっ、そんなに当たってたの?」
「それは、まぁ」
腹を抱えて大笑いしている魔理沙の後頭部をはたいた後、思わず顔を背けてしまった。そんな私に、さとりが笑いを抑えて話しかけてきた。
「拗ねちゃって」
「拗ねてないわよ!」
「嘘よ。だって霊夢ったら、すごく判り易い顔してるもの」
「判り易い?」
「顔に書いてある、って言うのかしら?考えてることが表情に出てるのよ」
そうだろうか?
「そうよ。一人で百面相してるみたいだもの。教室に入って声かけられた時は『誰だっけ?』って顔してたし、椅子に座ったら『眠~』、魔理沙に声かけられた時は『んぁ?』って感じでメンドクサそうな顔してたし、先生を見てギョッとしたり、弄られて怒ったり、照れたり、額に青筋浮かべながら笑ったり、私に声かけられた時はカチューシャ見て眉を顰めてたし」
一々、自分も表情を変えながら喋り続ける。一応私の物真似なんだろう。結構面白い娘みたいだ。けど、そんなに表情変わってたのか私は?
「私が名前を名乗ったのは、霊夢の視線が左上に動いてたからだし、」
そう言えば、人の視線と心理状態がどうこうってのは聞いたことがある。にしても、その眠そうな眼で、どんだけ観察してんのよあんたは。
「今だって、『どんだけ見てんのよあんた』って感じで『うへぇ』って顔してるわ」
「御見それしました」
「凄いなさとりは。占い師に転職できるぜ?」
素直に頭を下げた。いや全く。何をすればこれだけの観察力が身につくのだろうか。魔理沙といいさとりといい、個性的で一緒に居て退屈しなさそうだ。そんなことを考えていると、さとりが話しかけてきた。また表情を読まれたのだろうか?
「そんなに警戒しないでよ。それにしても、霊夢って、思っていたのと全然違ったのね。意外だったわ」
「そうなのか?」
「えぇ。中学の時何度か見たことがあるけれど、いっつも一人でいたし、他人に興味無さそうな顔をしていたから、取っ付き難い人なのかな?って。でも、話してみたら全然違う、楽しい人」
さとりも内部進学生だったのか。それにしても、本当に人間観察が得意なようだ。『他人に興味が無い』。中学時代の私はそうだった。これからもそうだったはずだ。でも、私はさっき何を思った?『一緒に居て退屈しない』?今迄、他人に対してそんなことを考えたことがあっただろうか?他人にそんなことは思わないだろう。じゃあ、なんで?
「私は、よく『変な奴』って思われてたわ」
さとりが言葉を続ける。
「相手の考えてることがなんとなくわかっちゃうから、それに合わせて行動してたつもりなんだけど、帰ってくる反応はいっつも『変な奴』『不気味な奴』。霊夢や魔理沙みたいな面白い反応してくれた人は初めて」
彼女が、すっ、と右手を差し出す。
「これから、よろしくね?」
彼女じゃないが、この表情ならわかる。どこか不安で、緊張してる顔。きっと、さっきの私は同じ顔をしていたんだろう。だから彼女は、それに合わせて行動してくれた。今度は私の番。そう思い右手を伸ばす。彼女の手を握った時、もう一つの手が重ねられた。
「何、あんた?」
「この流れでそれは無いんじゃないのか」
一瞬引き攣った笑みを浮かべたが、すぐに愛嬌のある笑顔に戻る。
「よろしく頼むぜ」
「全く…………しょうがないわね」
その時の私は、多分二人と同じ顔をしていたんだろう。
あの後しばらくしてから紫が教室に戻ってきた。思いの他時間がかかった様だ。まぁ、あの部屋の住人だ。きっと職員室の机も似たようなもんだろう。配られたのは、今月の予定表みたいなものと、諸注意、ダメ絶対etcだった。それらを配り終えた後、紫がクラス委員を決めると言い出した。
「立候補する人~」
いないだろうな。流石の魔理沙もでしゃばらなかった。とは言え、それじゃ決まらないわけで。
「ふぅ、入学早々、推薦なんか出来る訳も無いし、勝手に私が決めちゃうわね。え~と、」
そう言ってクラスを見渡す。お願いだからここで私に絡むなよ。と、どうやら生贄が決まったようだ。紫の動きが止まった。
「あなたがいいわ!」
「わ、私ですか?!」
紫に指名されたのは、青みがかった銀髪のロングヘアーの生徒だった。嫌そうな顔はしていないが、困惑した表情ではある。
「そっ♪上白沢さん。あなた、委員長顔だわ!頼んだわよ!」
「委員長顔、って言われても……まぁ、一学期の間くらいは構いませんが」
パチパチパチパチ
クラス中から拍手が沸き起こる。そりゃそうだろう、そんな面倒なもんをあっさり引き受けてくれたのだから。上白沢さん、あんたはいい人だ。これで今日という日が平和に終わるわ。
「それじゃあ、最後に」
まだあるのか。
「え~、実は先生が顧問をしているサークルがあるの。『秘封倶楽部』って言って、私が学生時代に友達と作った物なんだけど、高校は遂に部員が一人だけになっちゃって。今、新入部員の募集をしてるの」
……今、途中で私を見なかったか?
「興味がある人は、いつでも私に聞いてちょうだい。それと、霊夢」
「はい?」
なんでそこで私が出てくる。思わず○京さんみたいな返事をしちゃったじゃないか。っていうか、その胡散臭い微笑みはなんだ!嫌だ、嫌な予感がする。背中に冷たい汗が流れ始めてきた。
「活動内容説明するから、あなたはこの後残ってね♪」
「な、何言ってんのよ!?なんで私が、」
冗談じゃない!そんなもんに巻き込まれてたまるか!こいつの作ったサークルだなんて、どうせ碌でもないものに決まっている。断固拒否しなくては。だが、紫はそんな私を見て相も変わらずニヤニヤと笑っている。
「霊夢、あなたが私に逆らえるとでも思ってるの?」
「どういう意味よ?」
そう返すと、紫は何を思ったかチョーク箱からピンクのチョークを取り出し、
「霊夢の成長記録その17~♪『ねぇねぇ紫!ピンクのチョークって、』」
「ぬわぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~っ!」
恥も外聞も忘れて乙女らしからぬ大声を上げてしまった。だが、そんなことに構っていられない。なんてこと口走りやがるんだこの女!慌てる私を見て、紫が笑みを浮かべる。とてもとても優雅な、勝利の笑みを。
「ねぇ霊夢?あなたの辞書に『拒否権』って言葉、載ってる?」
「……そんな言葉は」
哀れみの視線って、こんなにも生暖かいのね……
「載って、ないです……」
さよなら、私の平和な学園生活。
とりあえず、キャラの多さは凄いですからねぇ……。
頑張ってください。
どんな学園話になるのか楽しみにしていますので。
学園物は結構好きなので、続きにも期待ですねぇ。
学園ものかぁ…
とかいきなり偉そうに言ってみましたが今後の続編に期待、応援してみます。
完結までくじけないで頑張ってください。
キャラの設定がけっこういい感じなんで期待してます。
しっかし、けーねが教師じゃないとはこれいかにw
個人的には学級委員の活躍に目を光らせていきたい気分。
超期待
次回も期待しています。
ゆかりで教師といえば運転がアレなあのお方…。
委員長顔とか…。
女学校にOBは居ねえ!!
ただ、中学から大学って十年のような気がします…
続きも読んできますね。
こんな学園なら飽きなさそうですね。
まさかこんなトリオが結成される日が来るとは。
続きを読むのが楽しみ。