ちょいグロ表現ありです。そういったものを嫌う方は、読まないで下さい。
最後まで読んだのに、「こんなもの投稿するな」と言われましても、私はどうしようもありません。
読むなら、自己責任です。
※印がある部分については、最後に解説があります。
また、読みが難しい感じには振り仮名を打ってあります。
↓↓↓↓この先1光年↓↓↓↓
竹林が燃えていた。竹の青に、炎の赫がとてつもなく映えて、夕焼け色に空を灼いていた。
どうして。
竹林を走りながら、自問した。自分達は、何も迷惑はかけていなかった。かけていなかった、はずだ。この竹の山の中で、ひっそりと、小ぢんまりと、質素に、暮らしていたはずだ。そうだ、何も悪いことはしていない、していない。
――なのに、どうして。
どうして、炎に追われなければならない?
どうして、白刃の煌きに仲間が倒れなければならない?
どうして、私よりも醜い獣に「醜い獣め」と言われなければならない?
どうして、どうして、どうしてどうしてどうして――――。
自問自答しながら、竹林を走る。空気がこげる臭いと、竹がこげる臭いと、死体がこげる臭いと、それらが鼻をつく。足を止めて、今にも出る場所を求めているものを、吐き出したい。走ることで揺さぶられる胃袋が、悲鳴を上げている。
(だめだ……耐え切れない……っ!)
横っ飛びに、茂みの中に飛び込んだ。地面に蹲って、
「げええええええっ!」
吐瀉した。胃が裏返るのではと思うぐらい、出すものがなくなっても、吐いた。蛙を潰してしまったような、とても人の出せるような声ではなかった。しかし、それも仕方ない。蹲っている少女は、人間ではなかった。頭の両側から大きく突き出た角が、その事実を如実に語っている。
少女は、鬼だった。紛れもなく、紛う事なき、鬼だった。時は平安、渡辺綱(※)による鬼狩りが行われていた。事の発端は、右大臣の娘が、鬼にさらわれたため、らしい。実の所、右大臣に対立するもの陰謀ではないかと言われたのだが、『鬼』という都合のいい記号に罪は押し付けられた。それが原因の、山狩り、鬼狩り。
「えっ……げほっ…げほっ」
抗し難い吐き気に耐えながら、少女は立ち上がる。そして痛む足に活を入れて、また走り出した。向かう先は知れない、着く先も知れない。ただ、生き残るために、生き残った仲間と再会するために、走る。走り続ける。
◇◆◇
鬼の少女が『萃香』の名を得るまでには、まだ間があるが――それはそれ。いつか、語ろう。
これは、幻想郷に生きる、最後の鬼の話。
◇◆◇
「っは!」
ばっと跳ね起きる。途端に頭痛と頭痛と頭痛が襲ってきて、とにかく頭が痛い。心なしか、目の前もぐらついている様な……いつものことだけど。
また、あの夢を見てしまった。人間の世界にいた頃の、夢。まだ私が『萃香』の名前を持っていなかった頃の夢。いつもいつも、竹林を走るところで、目覚める。そこから先を夢に見たことは無い。覚えているのか覚えていないのか、それとも思い出したくないのか。酩酊している頭では到底考えられないのが悲しいことだ。
「あ゛~~~~、頭痛いいいいいい…………」
両手で頭を抱え込むようにする。こめかみの辺りを親指で押さえたら、幾分和らいだけれど、まだ痛い。脳みそまでお酒になっちゃったのかしらん? それはそれで嬉しかったりする。萃香は、私は酔っ払ってこその私だものね。
「と、いうことで迎え酒っ!」
愛用の瓢箪を引き寄せて、嬉々としてその栓を開ける。芳しい清酒の香りが鼻を撫で、何処へか飛び去ってゆく。それに心躍らせながら、一気に瓢箪に口をつけた。流れ込む酒。あまりの量に、口の端から零れ落ちるけれど、気にしない。それはそれでいい感じだ。
ぐびり、ぐびり。喉を酒が焼いていく。なんて、快感、エクスタシー! どうして霊夢は私に付き合ってくれないのかしら。気分悪けりゃ一杯、体調悪けりゃ一杯、一杯で気分も体調も治ったらめでたいから一杯。それでいいのに、なんだいなんだい、いつもいつも「あたしはいいから」なんてさー、ぶつぶつ。
おっとっと、折角酔越しの酒(※)を飲んでるんだから、愚痴はおいといて、楽しみまっしょう。
「っかー! いいねぇいいねぇ!」
立て続けに瓢箪をあおると、どんどん身体が火照るのがわかる。ああああ、なんだかいい気分だぁ~。
ふらふらと立ち上がって、障子に手をかける。一気にそれを開けると、陽光が目を射した。おおう、酔っ払いには辛いやね。一瞬の判断で、障子を閉めた。しかし、どうにも惜しい気がする。これだけ天気がいい具合なのだから、このお日様の下で一杯やったらきっと気持ちいいに違いない。いや、きっとそうだ。きっと、こう、なんていうか、え~と、なんかぽえ~んってなるに違いない。ならないだろうか、いやなる! 反語表現!
「んじゃま、ちょっくら出掛けるかね」
瓢箪片手に、私は地を蹴った。目指すは、永遠亭の近く。程よく日が入って、それでいて涼しいところ。う~ん、早く行きたい。早く行って酒が飲みたいなぁ。
◇◆◇
「ん~、至極美味いっ! とっても美味い!」
からからと、独り大声で笑った。ざわざわと青竹がそれに答える。ここは、えーりんとかNEET(※)とかが住んでる永遠亭のすぐ近く。うっそうと背の高い青竹が茂っていて、太陽光をさりげなく翳(かげ)らせてくれるいい場所。その中にある、ちょっと開けた空間。ぽっかりとそこだけ竹がなくなっていて、空が望める。私のお気に入りの場所。そこにねっころがって、空を見つつ酒をちびちびやる。至福の時間だ。
「ん~、あり~?」
遠くで、誰かの足音がした。永遠亭の面子だろうか。いや、それだったら足音はしないはずだ。なんたって、彼女達は私と同じく空を飛べるのだから。だから、足音なんてしないはず。だったら、一体誰が?
そうこうする内に、足音の主が姿を見せた。髪の毛をこざっぱりと切った、着物姿の男の子。真っ赤に目をはらして、ぐずっている。ははあ、さては道に迷ったか。永遠亭の竹林は、人のみならず生き物を惑わすように生えている。だから、迷っても仕方のないことだ。それにしても、妖怪の住む森に人間が入って来るとは、珍しい。
私は両手を上げて少年に声をかけた。びくりと肩を震わせて、少年は辺りを見回した。私の姿を認めると、こちらにかけてきて胸に飛び込んだ。
「けいねせんせぇっ!」
「あ~、えっとな、残念ながら私は慧音じゃないよ」
「え、あ、あれ? だって、角……?」
わお、びっくりだ。白沢状態の慧音を知っているとは。まあ、私も色々と世話になってるから、彼女とは旧知の仲なわけだけど。白沢っていう言葉はあんまり好きじゃないんだよね。鬼を捕らえた王の名前でもある(※)わけだし、ゲンを担ぐわけじゃないけど、あんまり好きじゃない。
それは置いといて、私を慧音と間違えた少年。彼は太郎坊と名乗った。人間の村で暮らしているそうだ。筍探しに竹林に入ったはいいが、出られなくなったとのこと。わーい(※)。
「んじゃま、優しいお姉ちゃんが手伝ってあげましょうかね」
「おねちゃ、ありがとお!」
「こらこら、おねちゃじゃなくて、萃香。す・い・か、ライ?」
手伝うなんて言ったのは、唯の気まぐれ。旨い具合に私の分も筍が取れれば、お酒のあてにもなるしね。ただ、それだけ。他に意味なんて無い。
◇◆◇
んだったんだけどねぇ。何でこんなことになったのやら。いつしか、私たちは妹紅の草庵に世話になっていた。
理由は簡単、私も迷った。太郎坊と筍を探すうち、竹林の深いところまで入り込んでしまったらしく、私をしても帰り道がわからなくなっていた。当て所もなくうろついている内に、ここに行き当たったというわけだ。何たる幸運、てゐのおかげかしらん? 会ってないけど。
「何もないけど、ゆっくりしてけ。ここに在るものは好きに使っていい」
「悪いね、妹紅」
「何、困った時はお互い様だ」
囲炉裏に火を入れて、網を置く。皮を剥いた筍を置いて、焼けるまで待つ。
焼いている筍は私の分。太郎坊は自分の筍を抱えたままだ。後生大事、っていうのはこういうのを言うのだろうね。私は別に霊夢の所に帰らなくてもいいんだけど、太郎坊はそうもいかない。妹紅が慧音を呼びにいくそうだ。さりげなくラブラブな二人の間を取り持つあたいってば親切ね!
……だめだ、チルノの真似はやめよう。バカになる。
「は~やれやれ。やっと一息つけるね、太郎坊。……太郎?」
「…………すー」
「……寝てるのか。仕方ない、一日中歩いたもんな」
すやすやと、太郎坊は私に寄りかって寝息を立てていた。安らかで、幸せそうな笑顔。知らず、目を細めて太郎坊の頬を撫でていた。いやん、私ったらお母さんみたい。
「お母さん……ね」
筍で酒をやりながら、ゆっくりと記憶の糸を手繰り寄せるように、過去を思い出してみる。バチバチと火の爆ぜる音と、風の渡る音。それと、子どもの寝息。
そういえば、私の家は何人家族だったか。お母さんとお父さんと、……思い出せない。や、別に忘れたわけでは無いですよ。思い出せないだけですよ、はい。
それ以外のこと。村は山の中にあった。確か、こんな竹林の中だったと思う。そう、そうだ。竹林の中にあった。皆で、人間の目から隠れて、ゆっくりとした時間の中で暮らしていた。裕福では無いけど、幸せに暮らしていたはずだ。うん、きっとそう。
だけど、ある日――。
「っと、だめだめ。暗い気分じゃ、お酒がまずくなっちまうね」
「……子どもの前で酒を飲むな」
「あれま、慧音先生。お早いお着きで」
「教え子が行方不明になったと聞いて方々を駆けずり回って捜していたのに、こんな所で寝ているとはな。まさか、萃香。貴様太郎坊に変な事してはいないだろうな」
「ご冗談。満月のけーねじゃないんだから」
「ばっ、子どもは趣味じゃない!」
そんなこと訊いてません失言にあたふたする慧音も、ちょっとかわいいかな。まあ、そんなこと言ったら、お叱りを受けるんだろうけど。
寝ている太郎坊を抱きかかえて、私を腰を上げた。妹紅に弁明する慧音に声をかけて、道案内を頼んだ。
「それは元からそのつもりだが……お前が連れて行くのか?」
「ああ、そのつもりだけど?」
「それは……いや、なんでもない。行こう」
「ああ、おい。慧音に萃香。忠告しておく。しばらくここには近づくな」
妹紅の言葉を怪訝に思いつつ、空を翔る慧音の後を追随する。いざ飛んでみれば、村は意外と近い所にあった。こんなことなら、初めから飛んで行けば良かったと、後悔した。
村の一つの家の前で、地に足をつけた。慧音が扉を叩く。中から憔悴しきった顔の女性が出てきて、太郎の姿を確認するなり、私の手から彼をもぎ取った。その目は恐怖と忌避、そして怒りに溢れていた。
『お前がさらったんじゃないか』
ああ……これこそ、人が鬼に向ける視線だ。人外を嫌う、人が人たる由縁。長らく、忘れていた。ちょっとだけ、悲しい。
二言三言女性は慧音と話して、すぐに引っ込んでしまった。鬼と同じ空気を吸うなんて嫌だってか。笑える。滑稽だ。
「萃香……その……なんだ、悪かったな」
「気にしてないさ。これが普通だからね。慧音が気にすることじゃない」
「…………そうか。なあ、萃香。暇だったら、太郎坊と遊んでやってくれ。私もそれほど時間のある身じゃないんだ」
「ああ、わかったよ。暇だったらね」
そういいながらも、私は次に太郎に会える日を楽しみにしていた。自分でも気付かないくらい、自然に。
◇◆◇
それからと言うもの、幾度と無く私と太郎坊は逢瀬を重ねた。逢瀬、何て大層な言葉を使っても、実際はドタバタ遊んでいただけなのだけれど。
例えば、どちらが何処まで竹を高く登れるか。私としては、絶対に負けない自信があるのだけど、一度も勝ったことは無い。悲しいことに、私のほうが体重があるのだ。高く登れば登るほど、竹はしなり、私を地面に叩き落した。それで、太郎は竹に登ったまま私を笑って、私は苦笑しつつ、空に浮かぶ。太郎は、自分でも降りられないほど高く登ってしまう癖があった。
例えば、どちらがより多く魚を捕まえられるか。これは、私の全勝だった。山育ちは私も太郎坊も同じなのだけれど、鬼である私のほうが身体能力が高いのだ。太郎の何倍も遠くまで見れて、何倍も鮮明に音が聞こえる。一匹たりとも、魚を逃したことは無い。
「おねちゃ、つよ~い」
「はっはっは。参ったか」
遊んだ後は例の広場で二人、ひっくり返った。大抵、太郎は私の膝で眠って、私はその寝顔を肴に瓢箪をあおった。空が赤く燃え始めた頃、私が太郎を背負って彼の村まで連れて行った。待ち構えていた慧音に彼を渡して、私は家路につく。いつの間にか、それが日常になっていた。
「悪いな。いつもいつも相手をさせて」
「いいよ。私も楽しいからさ」
「そうか……。ああそうだ、萃香。明日はここに近寄るなよ」
「ああ、わかったけど、どうしてだ?」
ここぞとばかりに、この前妹紅に言われて気になっていたことを訊ねた。どうして竹林に入ってはいけないのか、その理由。
少しばかり困ったようにしてから、慧音は口を開く。
「明日は妹紅と輝夜が闘うんだ。あの二人が不死者で、強大な力を持っていることは知っているだろう? あの二人がぶつかるんだ。あの広大な竹林がいつも半分以上なくなる。そんな所にいたら、命がいくつあっても足りない」
「ああ、なるほどね。わかった、了解しましたですよ」
「ふざけるな。……村のものには私から伝えておくから、心配はするな」
どれだけ凄いことになるかは、いささか興味があるけれど、危ないのもちょっとね。明日は、お休みだぁ。そんな、簡単に考えていた。だから、いつもの様に大酒かっくらって、倒れるように眠りにつく。きっと明日は、霊夢が美味しい肴を作ってくれているに違いない。朝から晩まで宴会だ。
◇◆◇
また、夢を見た。いつもの竹林を走る夢じゃなくて、太郎と遊ぶ夢。そんなに楽しかったっけ? と自分では思ったけど、存外に楽しかったらしい。夢に見るまでだもんね。
その、夢の中、太郎と私はこんな会話をしていた。場所はいつもの、あの広場。
「あのね、萃香おねちゃ。ぼくね、大きくなったらけいね先生のお婿さんになるんだ」
「へえ! あの慧音のね。そりゃ豪気だ」
「本気だよぅ。先生のお婿さんになって、ご飯を作ってもらうんだ。ぼくが畑に出て、お昼には先生がお昼ご飯を持ってきてくれるの。夕方になったら一緒に家に帰って、晩御飯食べて、先生に膝枕してもらうの!」
「あっははは! 甘えん坊なお婿さんだな、そりゃ! 慧音は強い男のほうが好きだと思うぞ。少なくとも、私はそう思う」
「ん~、じゃあじゃあぼく強くなるよ。先生を守るんだ」
「ははは、頑張れよ。ダメだったら私が太郎を婿に貰ってやる」
「え~!? 萃香おねちゃは嫌だよ」
「んなっ! 何でだ!?」
「だってお酒臭いもん。それに、いつもいつも寝てばっかりだって、霊夢の姉ちゃんが言ってたよ。無駄飯喰らいだ~って」
「うう……。お姉ちゃんは悲しいよ。お嫁にいけないよ」
「う~んと、わかった! じゃあ、けいね先生の次のお嫁にさせてあげるよ」
「妾かい!」
◇◆◇
「いい加減に起きろ、この無駄飯喰らい」
「ぐえっ! な、中身が出る……」
霊夢にどてっぱらを踏まれて起きると、とっくに日は南中していた。てことは、昼を過ぎてるわけ。
ああ、やっぱり頭が重い。瓢箪は近くに見当たらない。寝ている間に、どこかへ蹴り飛ばしてしまったか。仕方なく、腰を上げて立ち上がる。うお、物凄く視界が歪むぞ。これなら酔拳の切れも最高だろう。世界も狙えるぞ、バルボア(※)!
縁側をふらふらと歩く。そろそろ一周して、元の場所に戻ろうという時、血相を変えて空を翔ける慧音を見た。
「よお、慧音。どうした、そんなに血相を変えて」
「萃香……お前、太郎坊を見てないか?」
「太郎? 見てないな。何かあったのか?」
「あったもなかったも! 太郎坊がいなくなったんだ!」
少しばかり、驚いた。太郎坊は放浪癖のある少年だったのかと、勝手に妄想してみたり。いや、それはおいといて、問題は何処へ行ったのか。いや、簡単に想像つきそうだけど。
候補一。太郎坊の家。
これは即座に却下された。ていうか、そこにいないから問題なんだろうが、と、慧音は愚か霊夢にまでバカにされた。
候補二。慧音の寺子屋。
これも却下された。一度は慧音も考えたそうだが、今日は閉めているそうだ。だから、これもない。
そこで、候補三。博霊神社。
ここに太郎がいる可能性は今、この瞬間に消え去った。私も霊夢も、太郎坊を見ていないからだ。見ていないものはいない、それは紛れもない事実だった。
「まさか……」
とんでもない、しかしそれでも十分に説得力が――これ以上ないほどに――ある、一つの考え。それはもう、ほとんど正答といっていいだろうし、それ以外には考えようもないのだけれど、けれど信じたくは無い。そんな、答えなんて認めたくない。
でもそれ以外に、答えは見つからない。
だから、その答えは間違ってるって、証明したくて、必死に空を翔けた。
赫赫と、燃える竹林へ。
明々と、空を灼く林へ。
◇◆◇
「待て萃香! この中に入ったら、鬼のお前とてただでは済まない!」
「うるさいっ! この中に太郎がいるかもしれない、苦しんでるかもしれない……! 助けに行かなくちゃ、いけないんだ!」
「あ……おいっ!」
慧音の手を振り切って、竹林の中に飛び込んだ。その中は昨日までとは打って変わって、とてもとても熱かった。鬼の私をしてこんなに熱いのだから、人間の太郎坊はどれだけ熱いのだろうか。想像するだけで、胸が締め付けられる。
ごめんね、ごめんね。
誰が悪いわけでもないのに、そう呟いていた。竹の焼ける音にその言葉は掻き消されてしまったけど、私は構わなかった。謝ることで、何か、何かの罪を消そうと、そんな浅はかな考えがあったのかもしれない。そんなことで、私が許されるわけもないとわかってはいるのだけど。それに、竹林に入ってはいけないとわかっていて、それでも竹林に入ってしまう太郎も悪い。と、思う。
でも、ごめんね。私がきっと、悪いんだ。
「ちくしょう……ちくしょうっ!」
何で私は行く当てもなく走ってるってんだ! どこに太郎はいるんだよ。いるんだよぉっ!
……いや、そもそも、いないんじゃないか? これだけ捜して、いないんだ。じゃあ、いないんじゃないか? もしかしたら、とっくに、戻ってるかもしれないぞ? 今頃、御執心の慧音に抱かれて、眠ってるかもしれないじゃないか。
疑心が私の心を苛(さいな)む。次第にそれは私の心を染め上げて、折ろうとしていた。ここに来た目的すら、どうでも良くなってしまう。
「……そうだよ、そうさ。きっと、太郎は今頃――」
「おねちゃっ!」
首が曲がるんじゃないかっていう位の速さで、その声のほうを向いた。視界の中で、燃え盛る竹の間を縫って走ってくる影は、紛れもなく彼だった。必死に、決死の表情で、駆けて来る。途中、岩に足を引っ掛けてこけたり、足を滑らせて尻餅をついたりしていた。
私はといえば、そんな彼の姿に驚いて、一歩も動けなかった。目の前で彼が次々と怪我を増やしていっているというのに、それを労わることも、出来ずに、ただ呆然と立ち尽くしていた。太郎が、私のスカートの裾を掴んで、無理矢理に視線を変えさせるまで、呆然としていた。
「おねちゃ、早くここ出よう?」
「え? あ、ああ、そうだね。…………」
そう言って、太郎にしっかりと視線を合わせたときだった。彼の後ろから、無論彼が気付くはずもない、一本の竹が倒れてきていた。根元が炭化して、自重に耐え切れなくなったのだろう。ぐらりぐらりと、二三度揺れてから、ゆっくりと竹は倒れてきた。
避けられるか? 時間が何倍にも引き延ばされた世界で、私は必死に思考する。結論、私一人ならそれはできるだろう。太郎を犠牲にするならば、の話だ。そんなこと、できるわけない。
――くそっ、迷ってる場合かよ!
眼前に燃え盛る竹が迫った所で、太郎を無理矢理に手元に引き込んで、自分の身体で彼の矮躯を包み込んだ。直後、大きな衝撃が背中を打った。肺から空気が押し出されて、惨めな声を出してしまう。何とか後ろ手に竹を払いのけて、太郎を身体から離した。心配げな瞳が、私を射る。大丈夫だからと、早口に言って彼を抱き上げた。
「さあ、さっさとこんな所出よう」
「うん。あっち! あっちからぼく来たよ。まだ、多分大丈夫」
「ほいさ、しっかり捕まってろよっ!」
太郎の指差す方へ、全力疾走。左右の風景がどんどんと流れていって、程なくして村はずれの空き地に出た。思わず、今しがた出てきた竹林を見やる。やはりそこは赤々と燃えていて、どこか、懐かしさも覚えた。
太郎と手を繋いで、村の方へと歩を進める。最初は畑しかなかった畦道(あぜみち)が、次第にならされた農道へと変わって行って、最終的に村の役場前についた。そこには多くの人間――まさしく、人間だ――がたむろしていて、その中には知った顔があった。知るも知らぬも、鬼のような顔をしているのは太郎のお母さんのわけなのだけど。
彼女は私の手から太郎を奪い去って、どこかへ行ってしまった。
「っは、私なんかより、よっぽど鬼らしぃっ!? っててて……何するんだ、慧音!」
「うるさい、人の話しも聞かずに突っ走っしておいて。太郎が心配していたぞ、会えたか?」
私に頭突きを一発かました慧音は、苛立たしげに腕を組む。何か問題でも? と私が訊くと、彼女は言う。
「お前は人の目を気にしなさ過ぎる。いいか、お前は何処からどう見ても、一個の鬼でしか――化生でしかないんだ。それが人の里へ降りてきてみろ。どうなるか、分かったもんじゃない。見ろ、皆お前を見てるだろう、睨んでるだろう。……怖いんだよ、お前が。私だって、怖い。白沢に変化した時でもなければ、お前には敵わないだろう。大きな力を持つものは、総じて怖いんだ。……ああ、こんなことはどうでもいい。それよりも、延焼が収まらないんだ。このままだと、この村もだが、人の里に被害が出そうなんだ。今のうちに何とかしないと…………」
誰に話しているわけでもないのだろう。おそらく彼女には自分が言っている言葉の、半分も理解できてはいないのでは無いだろうか。無意識に紡がれる、無意味な言葉。無駄に浪費されるだけのそれは、だから、私の胸を突き刺した。とても、痛い。痛くて痛くて、笑いが止まらないほどだ。実際、私は腹を抱えて、大きな声で笑っていた。その声は自分でも驚くほど壊れていて、悲しい声だった。
一歩、村の中心へと足を踏み入れる。人垣が、崩れる。また一歩、足を進める。また、人垣が崩れる。それを何度か繰り返すと、私は大きな広場のど真ん中に取り残される形となった。処刑でもされるみたいだ。そう思った。
肺に大きく空気を吸い込んで、大音声を張り上げた。
「よく見るがいい! ここにあるは一匹の鬼、名を伊吹萃香という! 今から、貴様ら暗愚なる人間どもに偉大なる鬼の力、見せてやろう! とくとその目に焼き付けろっ!」
天に両手をかざす。精神を集中すると、遠くから近くから、炎が萃まる気配がする。それは今の今まで竹林を焼いていた炎。今はそれが、私を取り巻いて燃え盛っていた。さっき竹林に入ったときとは比べ物にならないほど熱い。でも、大丈夫だ。私は、鬼だから。
人垣が炎で見えなくなったころ、私はもう十分だと判断した。右手で拳を作って、それを思い切り地面に叩きつけた。腹を震わせるような音が、響いた後“べこぉ”という異音がした。地面にぽっかりと、黒い穴が開いていた。そこに炎が墜ちていく。
符の参『追儺返しブラックホール』
私のスペルカードの一つだ。一つの所に大量の物質を集めて、そこに無理矢理空間の歪を作る。すると、水が低い所へ流れてゆくように、周りのもの全てが歪へと落ちてゆくのだ。そう、全て。人も鬼も、家も、炎も。ほんの少しの時間待つだけで、私を取り囲んでいた炎は消えてしまった。その向こうに、人間達の恐怖の目がある。
こつん。
誰かが投げた石が、私の額に当たった。皮膚が少し裂けて、鮮血が流れ出す。
こつん。こつん。
また、誰かが石を投げた。それが口火――折角消したのに、なんという皮肉か――となったのか、他の人々も石を投げる。そして、口々に言う。私への呪詛を。
“化け物”
正鵠を射た、その通りの言葉。言われるまでもない、私は自覚している。伊吹の鬼で、私は一番の力を持っている。だからこその、化け物。そんなこと言われなくても、解っている。化け物は人里にいられない。出て行ってやるさ、ああ、出て行ってやるさ!
「待て、萃香! この礼は、必ずする!」
慧音の声だ。微かに、太郎の声もする。何と言っているのだろうか、聞き取れない。きっと、恨み言には違いないのだろうけど。
私は振り向かないで、足も止めないで、慧音の声に返事をした。
「上等な酒をもってこい、それで十分だ」
「わかった。十二分に承知した。楽しみにしてろ」
「はっ! 人間なんぞが作った酒が私の口に合うかな」
最後まで振り向かなかった。野道を歩いているうちに熱を持った体も冷えてきた。その後に残ったのは、例えようも無い寂寥感。自分を迎え入れてくれるものは無いのだと、今更に知った、絶望感。いいや、知らなかったわけではない。心の奥底ではきっと知っていた。ただ、その事実から目を逸らしていただけ、それだけのことだ。
「はは……」
笑うしかない、もう、私にできることは、すでに無かった。
できることと言えば、酒を呑み、我を忘れるまでおぼれて、事実から目を逸らすことだけだ。
◇◆◇
数日後、私の元へ慧音がやってきた。片手に一升瓶。待ちに待った酒だ。
しかし、これがまた、一つ波乱を呼ぶ。
「だあああああっ! 慧音、お前自分で言ったこともろくに理解してないな! これの何処が上等な酒なんだ!?」
「なんだと!? 十分すぎるぐらいにこれはいいものだ!」
「その言い方はなんだ、これは壺じゃない! 叩いてもいい音はでないぞ」
「何の話だ!?」
慧音が持ってきた清酒の名前。それは(※)。
(了)
◇◆◇ 以下解説部分 ◇◆◇
・渡辺綱(わたなべのつな):茨木童子(いばらきどうじ)の腕を切り落としたとされる人物。彼の使った太刀の銘は確か『頼光丸(らいこうまる)』だったような(頼光=源頼光で、酒呑童子を討ち取った人)。以下に続く部分(右大臣の娘が云々)は創作。
・酔越しの酒:造語。迎え酒のこと。酒は宵越さないって! 宵越しするのは銭。ちなみに『よいごし』と読みます。
・NEET:言わずと知れた、輝夜のこと。ネタとしてはもう古い。
・鬼を捕らえた王の名前:白沢(はくた)王のこと。大昔のインドの王で、豪腕で知られたそうな。鬼を捕まえたこともあるとのこと。
・わーい:西尾維新の小説、『零崎軋識(ぜろざききししき)の人間ノック2』より。詳しくは読んだらわかります。
・バルボア!:ロッキー・バルボアのこと。劇中で、「世界も狙えるぞ!」なんて台詞が出たかどうかは知りません。
・※※※:欠番
・それは:言わずもがな
最後まで読んだのに、「こんなもの投稿するな」と言われましても、私はどうしようもありません。
読むなら、自己責任です。
※印がある部分については、最後に解説があります。
また、読みが難しい感じには振り仮名を打ってあります。
↓↓↓↓この先1光年↓↓↓↓
竹林が燃えていた。竹の青に、炎の赫がとてつもなく映えて、夕焼け色に空を灼いていた。
どうして。
竹林を走りながら、自問した。自分達は、何も迷惑はかけていなかった。かけていなかった、はずだ。この竹の山の中で、ひっそりと、小ぢんまりと、質素に、暮らしていたはずだ。そうだ、何も悪いことはしていない、していない。
――なのに、どうして。
どうして、炎に追われなければならない?
どうして、白刃の煌きに仲間が倒れなければならない?
どうして、私よりも醜い獣に「醜い獣め」と言われなければならない?
どうして、どうして、どうしてどうしてどうして――――。
自問自答しながら、竹林を走る。空気がこげる臭いと、竹がこげる臭いと、死体がこげる臭いと、それらが鼻をつく。足を止めて、今にも出る場所を求めているものを、吐き出したい。走ることで揺さぶられる胃袋が、悲鳴を上げている。
(だめだ……耐え切れない……っ!)
横っ飛びに、茂みの中に飛び込んだ。地面に蹲って、
「げええええええっ!」
吐瀉した。胃が裏返るのではと思うぐらい、出すものがなくなっても、吐いた。蛙を潰してしまったような、とても人の出せるような声ではなかった。しかし、それも仕方ない。蹲っている少女は、人間ではなかった。頭の両側から大きく突き出た角が、その事実を如実に語っている。
少女は、鬼だった。紛れもなく、紛う事なき、鬼だった。時は平安、渡辺綱(※)による鬼狩りが行われていた。事の発端は、右大臣の娘が、鬼にさらわれたため、らしい。実の所、右大臣に対立するもの陰謀ではないかと言われたのだが、『鬼』という都合のいい記号に罪は押し付けられた。それが原因の、山狩り、鬼狩り。
「えっ……げほっ…げほっ」
抗し難い吐き気に耐えながら、少女は立ち上がる。そして痛む足に活を入れて、また走り出した。向かう先は知れない、着く先も知れない。ただ、生き残るために、生き残った仲間と再会するために、走る。走り続ける。
◇◆◇
鬼の少女が『萃香』の名を得るまでには、まだ間があるが――それはそれ。いつか、語ろう。
これは、幻想郷に生きる、最後の鬼の話。
◇◆◇
「っは!」
ばっと跳ね起きる。途端に頭痛と頭痛と頭痛が襲ってきて、とにかく頭が痛い。心なしか、目の前もぐらついている様な……いつものことだけど。
また、あの夢を見てしまった。人間の世界にいた頃の、夢。まだ私が『萃香』の名前を持っていなかった頃の夢。いつもいつも、竹林を走るところで、目覚める。そこから先を夢に見たことは無い。覚えているのか覚えていないのか、それとも思い出したくないのか。酩酊している頭では到底考えられないのが悲しいことだ。
「あ゛~~~~、頭痛いいいいいい…………」
両手で頭を抱え込むようにする。こめかみの辺りを親指で押さえたら、幾分和らいだけれど、まだ痛い。脳みそまでお酒になっちゃったのかしらん? それはそれで嬉しかったりする。萃香は、私は酔っ払ってこその私だものね。
「と、いうことで迎え酒っ!」
愛用の瓢箪を引き寄せて、嬉々としてその栓を開ける。芳しい清酒の香りが鼻を撫で、何処へか飛び去ってゆく。それに心躍らせながら、一気に瓢箪に口をつけた。流れ込む酒。あまりの量に、口の端から零れ落ちるけれど、気にしない。それはそれでいい感じだ。
ぐびり、ぐびり。喉を酒が焼いていく。なんて、快感、エクスタシー! どうして霊夢は私に付き合ってくれないのかしら。気分悪けりゃ一杯、体調悪けりゃ一杯、一杯で気分も体調も治ったらめでたいから一杯。それでいいのに、なんだいなんだい、いつもいつも「あたしはいいから」なんてさー、ぶつぶつ。
おっとっと、折角酔越しの酒(※)を飲んでるんだから、愚痴はおいといて、楽しみまっしょう。
「っかー! いいねぇいいねぇ!」
立て続けに瓢箪をあおると、どんどん身体が火照るのがわかる。ああああ、なんだかいい気分だぁ~。
ふらふらと立ち上がって、障子に手をかける。一気にそれを開けると、陽光が目を射した。おおう、酔っ払いには辛いやね。一瞬の判断で、障子を閉めた。しかし、どうにも惜しい気がする。これだけ天気がいい具合なのだから、このお日様の下で一杯やったらきっと気持ちいいに違いない。いや、きっとそうだ。きっと、こう、なんていうか、え~と、なんかぽえ~んってなるに違いない。ならないだろうか、いやなる! 反語表現!
「んじゃま、ちょっくら出掛けるかね」
瓢箪片手に、私は地を蹴った。目指すは、永遠亭の近く。程よく日が入って、それでいて涼しいところ。う~ん、早く行きたい。早く行って酒が飲みたいなぁ。
◇◆◇
「ん~、至極美味いっ! とっても美味い!」
からからと、独り大声で笑った。ざわざわと青竹がそれに答える。ここは、えーりんとかNEET(※)とかが住んでる永遠亭のすぐ近く。うっそうと背の高い青竹が茂っていて、太陽光をさりげなく翳(かげ)らせてくれるいい場所。その中にある、ちょっと開けた空間。ぽっかりとそこだけ竹がなくなっていて、空が望める。私のお気に入りの場所。そこにねっころがって、空を見つつ酒をちびちびやる。至福の時間だ。
「ん~、あり~?」
遠くで、誰かの足音がした。永遠亭の面子だろうか。いや、それだったら足音はしないはずだ。なんたって、彼女達は私と同じく空を飛べるのだから。だから、足音なんてしないはず。だったら、一体誰が?
そうこうする内に、足音の主が姿を見せた。髪の毛をこざっぱりと切った、着物姿の男の子。真っ赤に目をはらして、ぐずっている。ははあ、さては道に迷ったか。永遠亭の竹林は、人のみならず生き物を惑わすように生えている。だから、迷っても仕方のないことだ。それにしても、妖怪の住む森に人間が入って来るとは、珍しい。
私は両手を上げて少年に声をかけた。びくりと肩を震わせて、少年は辺りを見回した。私の姿を認めると、こちらにかけてきて胸に飛び込んだ。
「けいねせんせぇっ!」
「あ~、えっとな、残念ながら私は慧音じゃないよ」
「え、あ、あれ? だって、角……?」
わお、びっくりだ。白沢状態の慧音を知っているとは。まあ、私も色々と世話になってるから、彼女とは旧知の仲なわけだけど。白沢っていう言葉はあんまり好きじゃないんだよね。鬼を捕らえた王の名前でもある(※)わけだし、ゲンを担ぐわけじゃないけど、あんまり好きじゃない。
それは置いといて、私を慧音と間違えた少年。彼は太郎坊と名乗った。人間の村で暮らしているそうだ。筍探しに竹林に入ったはいいが、出られなくなったとのこと。わーい(※)。
「んじゃま、優しいお姉ちゃんが手伝ってあげましょうかね」
「おねちゃ、ありがとお!」
「こらこら、おねちゃじゃなくて、萃香。す・い・か、ライ?」
手伝うなんて言ったのは、唯の気まぐれ。旨い具合に私の分も筍が取れれば、お酒のあてにもなるしね。ただ、それだけ。他に意味なんて無い。
◇◆◇
んだったんだけどねぇ。何でこんなことになったのやら。いつしか、私たちは妹紅の草庵に世話になっていた。
理由は簡単、私も迷った。太郎坊と筍を探すうち、竹林の深いところまで入り込んでしまったらしく、私をしても帰り道がわからなくなっていた。当て所もなくうろついている内に、ここに行き当たったというわけだ。何たる幸運、てゐのおかげかしらん? 会ってないけど。
「何もないけど、ゆっくりしてけ。ここに在るものは好きに使っていい」
「悪いね、妹紅」
「何、困った時はお互い様だ」
囲炉裏に火を入れて、網を置く。皮を剥いた筍を置いて、焼けるまで待つ。
焼いている筍は私の分。太郎坊は自分の筍を抱えたままだ。後生大事、っていうのはこういうのを言うのだろうね。私は別に霊夢の所に帰らなくてもいいんだけど、太郎坊はそうもいかない。妹紅が慧音を呼びにいくそうだ。さりげなくラブラブな二人の間を取り持つあたいってば親切ね!
……だめだ、チルノの真似はやめよう。バカになる。
「は~やれやれ。やっと一息つけるね、太郎坊。……太郎?」
「…………すー」
「……寝てるのか。仕方ない、一日中歩いたもんな」
すやすやと、太郎坊は私に寄りかって寝息を立てていた。安らかで、幸せそうな笑顔。知らず、目を細めて太郎坊の頬を撫でていた。いやん、私ったらお母さんみたい。
「お母さん……ね」
筍で酒をやりながら、ゆっくりと記憶の糸を手繰り寄せるように、過去を思い出してみる。バチバチと火の爆ぜる音と、風の渡る音。それと、子どもの寝息。
そういえば、私の家は何人家族だったか。お母さんとお父さんと、……思い出せない。や、別に忘れたわけでは無いですよ。思い出せないだけですよ、はい。
それ以外のこと。村は山の中にあった。確か、こんな竹林の中だったと思う。そう、そうだ。竹林の中にあった。皆で、人間の目から隠れて、ゆっくりとした時間の中で暮らしていた。裕福では無いけど、幸せに暮らしていたはずだ。うん、きっとそう。
だけど、ある日――。
「っと、だめだめ。暗い気分じゃ、お酒がまずくなっちまうね」
「……子どもの前で酒を飲むな」
「あれま、慧音先生。お早いお着きで」
「教え子が行方不明になったと聞いて方々を駆けずり回って捜していたのに、こんな所で寝ているとはな。まさか、萃香。貴様太郎坊に変な事してはいないだろうな」
「ご冗談。満月のけーねじゃないんだから」
「ばっ、子どもは趣味じゃない!」
そんなこと訊いてません失言にあたふたする慧音も、ちょっとかわいいかな。まあ、そんなこと言ったら、お叱りを受けるんだろうけど。
寝ている太郎坊を抱きかかえて、私を腰を上げた。妹紅に弁明する慧音に声をかけて、道案内を頼んだ。
「それは元からそのつもりだが……お前が連れて行くのか?」
「ああ、そのつもりだけど?」
「それは……いや、なんでもない。行こう」
「ああ、おい。慧音に萃香。忠告しておく。しばらくここには近づくな」
妹紅の言葉を怪訝に思いつつ、空を翔る慧音の後を追随する。いざ飛んでみれば、村は意外と近い所にあった。こんなことなら、初めから飛んで行けば良かったと、後悔した。
村の一つの家の前で、地に足をつけた。慧音が扉を叩く。中から憔悴しきった顔の女性が出てきて、太郎の姿を確認するなり、私の手から彼をもぎ取った。その目は恐怖と忌避、そして怒りに溢れていた。
『お前がさらったんじゃないか』
ああ……これこそ、人が鬼に向ける視線だ。人外を嫌う、人が人たる由縁。長らく、忘れていた。ちょっとだけ、悲しい。
二言三言女性は慧音と話して、すぐに引っ込んでしまった。鬼と同じ空気を吸うなんて嫌だってか。笑える。滑稽だ。
「萃香……その……なんだ、悪かったな」
「気にしてないさ。これが普通だからね。慧音が気にすることじゃない」
「…………そうか。なあ、萃香。暇だったら、太郎坊と遊んでやってくれ。私もそれほど時間のある身じゃないんだ」
「ああ、わかったよ。暇だったらね」
そういいながらも、私は次に太郎に会える日を楽しみにしていた。自分でも気付かないくらい、自然に。
◇◆◇
それからと言うもの、幾度と無く私と太郎坊は逢瀬を重ねた。逢瀬、何て大層な言葉を使っても、実際はドタバタ遊んでいただけなのだけれど。
例えば、どちらが何処まで竹を高く登れるか。私としては、絶対に負けない自信があるのだけど、一度も勝ったことは無い。悲しいことに、私のほうが体重があるのだ。高く登れば登るほど、竹はしなり、私を地面に叩き落した。それで、太郎は竹に登ったまま私を笑って、私は苦笑しつつ、空に浮かぶ。太郎は、自分でも降りられないほど高く登ってしまう癖があった。
例えば、どちらがより多く魚を捕まえられるか。これは、私の全勝だった。山育ちは私も太郎坊も同じなのだけれど、鬼である私のほうが身体能力が高いのだ。太郎の何倍も遠くまで見れて、何倍も鮮明に音が聞こえる。一匹たりとも、魚を逃したことは無い。
「おねちゃ、つよ~い」
「はっはっは。参ったか」
遊んだ後は例の広場で二人、ひっくり返った。大抵、太郎は私の膝で眠って、私はその寝顔を肴に瓢箪をあおった。空が赤く燃え始めた頃、私が太郎を背負って彼の村まで連れて行った。待ち構えていた慧音に彼を渡して、私は家路につく。いつの間にか、それが日常になっていた。
「悪いな。いつもいつも相手をさせて」
「いいよ。私も楽しいからさ」
「そうか……。ああそうだ、萃香。明日はここに近寄るなよ」
「ああ、わかったけど、どうしてだ?」
ここぞとばかりに、この前妹紅に言われて気になっていたことを訊ねた。どうして竹林に入ってはいけないのか、その理由。
少しばかり困ったようにしてから、慧音は口を開く。
「明日は妹紅と輝夜が闘うんだ。あの二人が不死者で、強大な力を持っていることは知っているだろう? あの二人がぶつかるんだ。あの広大な竹林がいつも半分以上なくなる。そんな所にいたら、命がいくつあっても足りない」
「ああ、なるほどね。わかった、了解しましたですよ」
「ふざけるな。……村のものには私から伝えておくから、心配はするな」
どれだけ凄いことになるかは、いささか興味があるけれど、危ないのもちょっとね。明日は、お休みだぁ。そんな、簡単に考えていた。だから、いつもの様に大酒かっくらって、倒れるように眠りにつく。きっと明日は、霊夢が美味しい肴を作ってくれているに違いない。朝から晩まで宴会だ。
◇◆◇
また、夢を見た。いつもの竹林を走る夢じゃなくて、太郎と遊ぶ夢。そんなに楽しかったっけ? と自分では思ったけど、存外に楽しかったらしい。夢に見るまでだもんね。
その、夢の中、太郎と私はこんな会話をしていた。場所はいつもの、あの広場。
「あのね、萃香おねちゃ。ぼくね、大きくなったらけいね先生のお婿さんになるんだ」
「へえ! あの慧音のね。そりゃ豪気だ」
「本気だよぅ。先生のお婿さんになって、ご飯を作ってもらうんだ。ぼくが畑に出て、お昼には先生がお昼ご飯を持ってきてくれるの。夕方になったら一緒に家に帰って、晩御飯食べて、先生に膝枕してもらうの!」
「あっははは! 甘えん坊なお婿さんだな、そりゃ! 慧音は強い男のほうが好きだと思うぞ。少なくとも、私はそう思う」
「ん~、じゃあじゃあぼく強くなるよ。先生を守るんだ」
「ははは、頑張れよ。ダメだったら私が太郎を婿に貰ってやる」
「え~!? 萃香おねちゃは嫌だよ」
「んなっ! 何でだ!?」
「だってお酒臭いもん。それに、いつもいつも寝てばっかりだって、霊夢の姉ちゃんが言ってたよ。無駄飯喰らいだ~って」
「うう……。お姉ちゃんは悲しいよ。お嫁にいけないよ」
「う~んと、わかった! じゃあ、けいね先生の次のお嫁にさせてあげるよ」
「妾かい!」
◇◆◇
「いい加減に起きろ、この無駄飯喰らい」
「ぐえっ! な、中身が出る……」
霊夢にどてっぱらを踏まれて起きると、とっくに日は南中していた。てことは、昼を過ぎてるわけ。
ああ、やっぱり頭が重い。瓢箪は近くに見当たらない。寝ている間に、どこかへ蹴り飛ばしてしまったか。仕方なく、腰を上げて立ち上がる。うお、物凄く視界が歪むぞ。これなら酔拳の切れも最高だろう。世界も狙えるぞ、バルボア(※)!
縁側をふらふらと歩く。そろそろ一周して、元の場所に戻ろうという時、血相を変えて空を翔ける慧音を見た。
「よお、慧音。どうした、そんなに血相を変えて」
「萃香……お前、太郎坊を見てないか?」
「太郎? 見てないな。何かあったのか?」
「あったもなかったも! 太郎坊がいなくなったんだ!」
少しばかり、驚いた。太郎坊は放浪癖のある少年だったのかと、勝手に妄想してみたり。いや、それはおいといて、問題は何処へ行ったのか。いや、簡単に想像つきそうだけど。
候補一。太郎坊の家。
これは即座に却下された。ていうか、そこにいないから問題なんだろうが、と、慧音は愚か霊夢にまでバカにされた。
候補二。慧音の寺子屋。
これも却下された。一度は慧音も考えたそうだが、今日は閉めているそうだ。だから、これもない。
そこで、候補三。博霊神社。
ここに太郎がいる可能性は今、この瞬間に消え去った。私も霊夢も、太郎坊を見ていないからだ。見ていないものはいない、それは紛れもない事実だった。
「まさか……」
とんでもない、しかしそれでも十分に説得力が――これ以上ないほどに――ある、一つの考え。それはもう、ほとんど正答といっていいだろうし、それ以外には考えようもないのだけれど、けれど信じたくは無い。そんな、答えなんて認めたくない。
でもそれ以外に、答えは見つからない。
だから、その答えは間違ってるって、証明したくて、必死に空を翔けた。
赫赫と、燃える竹林へ。
明々と、空を灼く林へ。
◇◆◇
「待て萃香! この中に入ったら、鬼のお前とてただでは済まない!」
「うるさいっ! この中に太郎がいるかもしれない、苦しんでるかもしれない……! 助けに行かなくちゃ、いけないんだ!」
「あ……おいっ!」
慧音の手を振り切って、竹林の中に飛び込んだ。その中は昨日までとは打って変わって、とてもとても熱かった。鬼の私をしてこんなに熱いのだから、人間の太郎坊はどれだけ熱いのだろうか。想像するだけで、胸が締め付けられる。
ごめんね、ごめんね。
誰が悪いわけでもないのに、そう呟いていた。竹の焼ける音にその言葉は掻き消されてしまったけど、私は構わなかった。謝ることで、何か、何かの罪を消そうと、そんな浅はかな考えがあったのかもしれない。そんなことで、私が許されるわけもないとわかってはいるのだけど。それに、竹林に入ってはいけないとわかっていて、それでも竹林に入ってしまう太郎も悪い。と、思う。
でも、ごめんね。私がきっと、悪いんだ。
「ちくしょう……ちくしょうっ!」
何で私は行く当てもなく走ってるってんだ! どこに太郎はいるんだよ。いるんだよぉっ!
……いや、そもそも、いないんじゃないか? これだけ捜して、いないんだ。じゃあ、いないんじゃないか? もしかしたら、とっくに、戻ってるかもしれないぞ? 今頃、御執心の慧音に抱かれて、眠ってるかもしれないじゃないか。
疑心が私の心を苛(さいな)む。次第にそれは私の心を染め上げて、折ろうとしていた。ここに来た目的すら、どうでも良くなってしまう。
「……そうだよ、そうさ。きっと、太郎は今頃――」
「おねちゃっ!」
首が曲がるんじゃないかっていう位の速さで、その声のほうを向いた。視界の中で、燃え盛る竹の間を縫って走ってくる影は、紛れもなく彼だった。必死に、決死の表情で、駆けて来る。途中、岩に足を引っ掛けてこけたり、足を滑らせて尻餅をついたりしていた。
私はといえば、そんな彼の姿に驚いて、一歩も動けなかった。目の前で彼が次々と怪我を増やしていっているというのに、それを労わることも、出来ずに、ただ呆然と立ち尽くしていた。太郎が、私のスカートの裾を掴んで、無理矢理に視線を変えさせるまで、呆然としていた。
「おねちゃ、早くここ出よう?」
「え? あ、ああ、そうだね。…………」
そう言って、太郎にしっかりと視線を合わせたときだった。彼の後ろから、無論彼が気付くはずもない、一本の竹が倒れてきていた。根元が炭化して、自重に耐え切れなくなったのだろう。ぐらりぐらりと、二三度揺れてから、ゆっくりと竹は倒れてきた。
避けられるか? 時間が何倍にも引き延ばされた世界で、私は必死に思考する。結論、私一人ならそれはできるだろう。太郎を犠牲にするならば、の話だ。そんなこと、できるわけない。
――くそっ、迷ってる場合かよ!
眼前に燃え盛る竹が迫った所で、太郎を無理矢理に手元に引き込んで、自分の身体で彼の矮躯を包み込んだ。直後、大きな衝撃が背中を打った。肺から空気が押し出されて、惨めな声を出してしまう。何とか後ろ手に竹を払いのけて、太郎を身体から離した。心配げな瞳が、私を射る。大丈夫だからと、早口に言って彼を抱き上げた。
「さあ、さっさとこんな所出よう」
「うん。あっち! あっちからぼく来たよ。まだ、多分大丈夫」
「ほいさ、しっかり捕まってろよっ!」
太郎の指差す方へ、全力疾走。左右の風景がどんどんと流れていって、程なくして村はずれの空き地に出た。思わず、今しがた出てきた竹林を見やる。やはりそこは赤々と燃えていて、どこか、懐かしさも覚えた。
太郎と手を繋いで、村の方へと歩を進める。最初は畑しかなかった畦道(あぜみち)が、次第にならされた農道へと変わって行って、最終的に村の役場前についた。そこには多くの人間――まさしく、人間だ――がたむろしていて、その中には知った顔があった。知るも知らぬも、鬼のような顔をしているのは太郎のお母さんのわけなのだけど。
彼女は私の手から太郎を奪い去って、どこかへ行ってしまった。
「っは、私なんかより、よっぽど鬼らしぃっ!? っててて……何するんだ、慧音!」
「うるさい、人の話しも聞かずに突っ走っしておいて。太郎が心配していたぞ、会えたか?」
私に頭突きを一発かました慧音は、苛立たしげに腕を組む。何か問題でも? と私が訊くと、彼女は言う。
「お前は人の目を気にしなさ過ぎる。いいか、お前は何処からどう見ても、一個の鬼でしか――化生でしかないんだ。それが人の里へ降りてきてみろ。どうなるか、分かったもんじゃない。見ろ、皆お前を見てるだろう、睨んでるだろう。……怖いんだよ、お前が。私だって、怖い。白沢に変化した時でもなければ、お前には敵わないだろう。大きな力を持つものは、総じて怖いんだ。……ああ、こんなことはどうでもいい。それよりも、延焼が収まらないんだ。このままだと、この村もだが、人の里に被害が出そうなんだ。今のうちに何とかしないと…………」
誰に話しているわけでもないのだろう。おそらく彼女には自分が言っている言葉の、半分も理解できてはいないのでは無いだろうか。無意識に紡がれる、無意味な言葉。無駄に浪費されるだけのそれは、だから、私の胸を突き刺した。とても、痛い。痛くて痛くて、笑いが止まらないほどだ。実際、私は腹を抱えて、大きな声で笑っていた。その声は自分でも驚くほど壊れていて、悲しい声だった。
一歩、村の中心へと足を踏み入れる。人垣が、崩れる。また一歩、足を進める。また、人垣が崩れる。それを何度か繰り返すと、私は大きな広場のど真ん中に取り残される形となった。処刑でもされるみたいだ。そう思った。
肺に大きく空気を吸い込んで、大音声を張り上げた。
「よく見るがいい! ここにあるは一匹の鬼、名を伊吹萃香という! 今から、貴様ら暗愚なる人間どもに偉大なる鬼の力、見せてやろう! とくとその目に焼き付けろっ!」
天に両手をかざす。精神を集中すると、遠くから近くから、炎が萃まる気配がする。それは今の今まで竹林を焼いていた炎。今はそれが、私を取り巻いて燃え盛っていた。さっき竹林に入ったときとは比べ物にならないほど熱い。でも、大丈夫だ。私は、鬼だから。
人垣が炎で見えなくなったころ、私はもう十分だと判断した。右手で拳を作って、それを思い切り地面に叩きつけた。腹を震わせるような音が、響いた後“べこぉ”という異音がした。地面にぽっかりと、黒い穴が開いていた。そこに炎が墜ちていく。
符の参『追儺返しブラックホール』
私のスペルカードの一つだ。一つの所に大量の物質を集めて、そこに無理矢理空間の歪を作る。すると、水が低い所へ流れてゆくように、周りのもの全てが歪へと落ちてゆくのだ。そう、全て。人も鬼も、家も、炎も。ほんの少しの時間待つだけで、私を取り囲んでいた炎は消えてしまった。その向こうに、人間達の恐怖の目がある。
こつん。
誰かが投げた石が、私の額に当たった。皮膚が少し裂けて、鮮血が流れ出す。
こつん。こつん。
また、誰かが石を投げた。それが口火――折角消したのに、なんという皮肉か――となったのか、他の人々も石を投げる。そして、口々に言う。私への呪詛を。
“化け物”
正鵠を射た、その通りの言葉。言われるまでもない、私は自覚している。伊吹の鬼で、私は一番の力を持っている。だからこその、化け物。そんなこと言われなくても、解っている。化け物は人里にいられない。出て行ってやるさ、ああ、出て行ってやるさ!
「待て、萃香! この礼は、必ずする!」
慧音の声だ。微かに、太郎の声もする。何と言っているのだろうか、聞き取れない。きっと、恨み言には違いないのだろうけど。
私は振り向かないで、足も止めないで、慧音の声に返事をした。
「上等な酒をもってこい、それで十分だ」
「わかった。十二分に承知した。楽しみにしてろ」
「はっ! 人間なんぞが作った酒が私の口に合うかな」
最後まで振り向かなかった。野道を歩いているうちに熱を持った体も冷えてきた。その後に残ったのは、例えようも無い寂寥感。自分を迎え入れてくれるものは無いのだと、今更に知った、絶望感。いいや、知らなかったわけではない。心の奥底ではきっと知っていた。ただ、その事実から目を逸らしていただけ、それだけのことだ。
「はは……」
笑うしかない、もう、私にできることは、すでに無かった。
できることと言えば、酒を呑み、我を忘れるまでおぼれて、事実から目を逸らすことだけだ。
◇◆◇
数日後、私の元へ慧音がやってきた。片手に一升瓶。待ちに待った酒だ。
しかし、これがまた、一つ波乱を呼ぶ。
「だあああああっ! 慧音、お前自分で言ったこともろくに理解してないな! これの何処が上等な酒なんだ!?」
「なんだと!? 十分すぎるぐらいにこれはいいものだ!」
「その言い方はなんだ、これは壺じゃない! 叩いてもいい音はでないぞ」
「何の話だ!?」
慧音が持ってきた清酒の名前。それは(※)。
(了)
◇◆◇ 以下解説部分 ◇◆◇
・渡辺綱(わたなべのつな):茨木童子(いばらきどうじ)の腕を切り落としたとされる人物。彼の使った太刀の銘は確か『頼光丸(らいこうまる)』だったような(頼光=源頼光で、酒呑童子を討ち取った人)。以下に続く部分(右大臣の娘が云々)は創作。
・酔越しの酒:造語。迎え酒のこと。酒は宵越さないって! 宵越しするのは銭。ちなみに『よいごし』と読みます。
・NEET:言わずと知れた、輝夜のこと。ネタとしてはもう古い。
・鬼を捕らえた王の名前:白沢(はくた)王のこと。大昔のインドの王で、豪腕で知られたそうな。鬼を捕まえたこともあるとのこと。
・わーい:西尾維新の小説、『零崎軋識(ぜろざききししき)の人間ノック2』より。詳しくは読んだらわかります。
・バルボア!:ロッキー・バルボアのこと。劇中で、「世界も狙えるぞ!」なんて台詞が出たかどうかは知りません。
・※※※:欠番
・それは:言わずもがな