Coolier - 新生・東方創想話

咲夜と魔理沙と懐中時計

2015/06/12 22:40:36
最終更新
サイズ
8.56KB
ページ数
1
閲覧数
1863
評価数
5/10
POINT
450
Rate
8.64

分類タグ

 朝日が湖と、そのほとりにある紅魔館を照らしている。その中の一部屋で、彼女は横たわっていた。
 十六夜咲夜。彼女はここ紅魔館のメイド長として働いている。本来なら朝日が出る前には、メイドとしての仕事を始めないといけないのだが、彼女は動こうとしなかった。
動かない……のではない。動く必要が無かった。
 彼女は今、時間を操るという能力が暴走を起こしかけている。例えば、思ったように時間を止められなかったり、意図しないタイミングで時間が止まり、それが何時間も解除できないこともあった。
 能力が完全に暴走すれば、この世界がどうなるかすら分からない。一瞬で世界を崩壊に導くことができる能力だからこそ、抑え込むのも容易ではなかった。
 できるだけ暴走しないようにするためには、下手に動くよりも、そのまま寝ていた方が安全だったのだ。
 彼女が何故そんな状態になってしまったのか、時間軸を少し戻して確認してみよう。


「あらあら、白黒のネズミなんて始めて見ましたわ」
「ネズミは灰色だから分割して考えれば白黒だぜ」
「なら訂正しましょう 人の形をしたネズミなんて始めて見ましたわ」
「……それはネズミじゃないぜ」
「じゃああなたは何?」
「善良な幻想郷の住人」
「善良な住人はここ紅魔館に勝手に入ることは無いと思うのだけれど」
「門番には許可をとったぜ」
「その門番もしかして鼻提灯付けてなかった?」
「お前の言いたいことは分かるぜ。でも鼻提灯より凄い。なんと布団に入ってた」
「(あのクソ中国が……)まぁいいわ 先に貴方を捨ててこないといけないから」
「人をゴミ扱いするなんてひどいぜ」
「ネズミでしょ?」
 咲夜が言い終わる瞬間、魔理沙は咲夜に向かってミサイルの一斉射撃。
 同時に咲夜はお得意の時間を操る能力を駆使し、魔理沙に向けて正確にナイフを放っていた。
 両者が避けたのはほぼ同時。技術は二人とも互角レベルであり、さらには『久々にやりあえる奴に出会った』という顔までしていた。何かしら気の合う二人なのかもしれない。


 10分後、お互いかなり消耗しているが未だに決着がつかない
 すると咲夜の視界の端に、一瞬だけピンク色の小さい何かが見えた。
「ーーお嬢様!?」
 咲夜はそう呟くと同時に魔理沙を追うのを止めて反対方向に踵を返した。魔理沙にはそれに何の意味があるか分からなかったが、戦いの最中、敵に背を向けた咲夜を彼女は見逃さなかった。
「隙有り!」
 即座にミサイルの集中砲火。咲夜にとっては避けられないスピードであったが、レミリアの存在が、今回ばかりは邪魔になった。
  ドガガガガン!!!!
 魔理沙の放った数機のミサイルは、全弾咲夜に命中。次の瞬間にレミリアの存在に気付いた魔理沙だが、攻撃の威力は加減していない。妖怪ならまだしも咲夜にそんな物が、尚且つ全弾クリーンヒットとなると、咲夜の体が危険だった


 咲夜はなんとか一命を取り留めた
 メイド服に忍ばせていた懐中時計に、奇跡的に最初の1発が命中し、その爆風で咲夜は吹き飛ばされ、残りの数発の威力をモロに食らわなかった……というのがパチュリーの出した推論だった。
 証拠として、咲夜の懐中時計はひどく変形し、ガラクタにしか見えなくなっていたのだから。


ここで時間軸を現在まで戻そう。
 要約してしまえば《懐中時計が壊れたが命は助かってラッキー》で済む話のように思える。
 仮にミサイルが体のどこかに直接当たっていれば、その部位は消し飛んで致命傷となりかねなかっただろう。
 だが昨夜にとって、懐中時計が壊れたことは自らの体を攻撃されるよりも、むしろ精神汚染濃度は高かった。

 懐中時計の故障は、咲夜の能力の故障に等しい。懐中時計が狂えば、能力の精度に問題がでる。
 実は以前にも懐中時計が狂ったことがあった。時間がたった0.01秒遅れていたせいで、能力が軽い暴走を起こし、咲夜自身の時間に影響が出た。周りに比べて凄くゆっくり動くこともあれば、人でないようなスピードで動いたこともあった。さらに咲夜はこの異常に、暫く気付きもしなかった所がこの暴走の恐ろしい所である。

 ただし能力が全て懐中時計に依存しているわけではない。懐中時計はあくまで手助けであり、咲夜自身が上手くコントロールできない部分を勝手に制御してくれる便利な代物なのだ。
 ……ただその手助けが無いと、咲夜自身はほぼ能力が使えないにも等しいのだが……


 魔理沙は毎日お見舞いに来てくれる。私はあまり怪我はしていないし、寝ているのは先述の通りであると、魔理沙にも説明したのだがそれでも見舞いにはくる。
 魔理沙としては、自分のせいで昨夜がこんな状態になっている…ということに後ろめたさを感じているようだった。

「おっす咲夜」
「……また来たの?別にあなたのせいじゃないわ。あそこで私が時間を止めてお嬢様を助けていればーー
「関係ないね。寝込んでるんだから見舞いぐらいさせてくれよ」
「……」
この魔理沙……ツンデレというやつか……
「……今日も差し入れはキノコね」
「キノコは体にいいぜ?」
「せめてリンゴとかミカンとか……」
「そんな甘いものばっか食べてるからあんなヘマするんだ」
「余計なお世話ね」
「で、その黒焦げ懐中時計はどうするつもりだよ 直せるのか?」
「無理ね」
「即答か」
「無理なもんは無理。これは私の能力を最大限引き出すために、わざわざ妖怪の山の河童に直接頼み込んで作ってもらった特注品。そこらで買えるようなパーツを組み合わせても作れる代物じゃないわ」
「河童にまた頼み込みに行ったらどうだ」
「……それができればね…………」

 実はこの懐中時計を作る際、時間を止めるという能力の情報解析が必要な部分があった。
 これは河童の元で測定や実験を繰り返してようやく得られたデータであり、その測定時は咲夜の能力が自由に使えるということが前提だった。
 この懐中時計を作った際には咲夜は割と自由に能力を扱えていた。しかし今は、懐中時計に頼り過ぎた代償として、自由に能力を扱えなくなっている。懐中時計が咲夜の能力を最大限すぎるほどに引き出した結果であった。

「懐中時計に頼り過ぎたせいでもう懐中時計無しではうまく能力すら使えないのよ」
「違法ドラッグみたいな言い方だな」
「道具は使えど使われるな…ってね」
「どこの格言だ?」
「忘れた」


 懐中時計が壊れてから1週間近くが経った。
 河童の元に計測データの一部は残っていたため、それを元にして新しい懐中時計は作られ始めていたが、まだ試作品止まりが続いていた。
 咲夜自身は動かないせいか少し太……んんっ、健全な体重に近づいていた。

「なんか悪寒が」
「どうした 今のキノコ美味しくなかったか?」
「不味くはないけど最近1週間キノコしか口にしてないから正直飽きてきたわ」
「私なんかもう2ヶ月はキノコ生活が続いてるな」
「かなり鬼畜プレイを極めてるわね」
「霊夢の方が酷い。もう4ヶ月は庭の雑草と朝露だけで過ごしてる」
「あの人人間なのかしら?」
「この前遂に死んだかと思ったら昼寝してただけだった。あんまり痩せてたから死んだと思って棺桶まで準備しちまったぜ」
「……」

……博麗神社
「そろそろ庭の雑草も無くなってきたし本格的にマズイわね……」
「霊夢さ〜ん」
「いつぞやの門番か なんでここに?」
「咲夜さんにお使い頼まれまして。このダンボールを霊夢さんに…と」
「あのメイドから?何かしら」
ダンボール内:非常食1年分
「これは……!」
「じゃ、渡しましたんで」
「ま、まって 手ぶらもアレだからこれをそのメイドに」

……再び紅魔館の一室
「霊夢さんから預かってきました」
「5円玉……一枚」
「霊夢らしいな。神社からの5円玉だからご利益があるかもしれないぞ」
「フッ……そうかもね」
「……いつもならこんなことしないのに、今日は霊夢に差し入れをやるなんてお前はいつからそんな丸くなったんだ?」
「あまりにひもじい思いしてるのもかわいそうだからね」
「あんたからかわいそうなんて単語始めて聞いた」
「丁度いいわ 体が鈍るからナイフ投げの練習したいんだけどいい的がなかったのよね」
「冗談だろ」
「やってみる?」
「ノーセンキューだ」


 咲夜が以前には無かった自由な時間を得てから2週間ほど。最初はきまり悪さで恐縮していたが最近は大分慣れてきたようだ。す
「最近雨続きだな」
「もう梅雨よ。降って当たり前。それにキノコも良く育つんじゃない?」
「最近多すぎて困ってるんだ」
「霊夢にでもあげたら?」
「あいつは何故かキノコ恐怖症になってな 毎日キノコを大量に賽銭箱に入れといたんだが何かあったのかな?」
「せめて手渡しにしてあげなさいよ……」
 その数日後、ついに河童の元から試作品が届いた。
 河童曰く、前回より精度を高く、かつ頑丈に作ってみたらしい。
「時間いじるのも久しぶりね。早速使ってみましょう。成る程」
「早いな」
「時間止めたんだから当たり前よ。貴方達には一瞬に見えても私は軽く2時間は止めてたわ」
「止められた感覚なんてなかったぜ」
「あったら不良品じゃないの」
「それもそうか」
 試作品にしては中々の出来で、咲夜は少し満足気だった。魔理沙が気づかなかった所を見ると、暴走も発生してないようだ。
「とりあえずこれはこれで使えそうね。河童には後でお礼しないと」
「ならこの大量のキノコを持っていくといい」
「キノコは遠慮するわ」
 ……河童にはその後、紅魔館に匹敵する大工房がプレゼントされたというが、それはまた別の話……


「咲夜、能力が戻ったからにはこれからも働いて貰うわよ。いつまでもゴロゴロしてたらあなたの存在価値が無くなっちゃう」
「はい、レミリアお嬢様」
「……ところでお嬢様のこの部屋の散らかり具合はどうなされたのでしょうか?」
「あぅ……そ、それは……」
「私が動けない間、お片付けはちゃんとする……と約束しましたよね?」
「う、うー☆……」
「……………………」
「うー☆うー☆……」
「……私が動けない間何をしていたかご存知ですか?」
「う?」
「四六時中お嬢様の写真を見て耐性を付けておりました。もうそのポーズは効きません」
「なんてことを…」
「さぁお嬢様、楽しい楽しいお片付けのお時間ですよ?」
「イヤア゙ァァァ!!」

「魔理沙最近よく紅魔館行ってるって?」
「あ?それが霊夢になんの関係があるんだよ」
「またあの妹さん?それとも……」
「いや、違うぜ」
「まだ途中よ」
「……本借りに行ってただけだよ」
「……あっそ…………」

前回投稿時の指摘も踏まえて書いてみました
大それたオチが無くなっちゃったのと少し短めなのでいささか物足りない気がします。次はもう少し伸ばしたいな…
Kpro
http://twitter.com/kazuki316_54393
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.170簡易評価
1.40名前が無い程度の能力削除
確かにオチが弱い。この出来事を経て、魔理沙と咲夜はなにか変わったの?その後のアクションが乏しいからわかりずらい。
懐中時計が壊れて咲夜が寝込む→魔理沙が看病→懐中時計が直る→で?
流れだけでなにも無いから感想が出てこないのよ。おそらく書きたい部分は、2人の言葉のやりとりだけでしょ。申し訳ないけど、それだけだから薄く感じる。
2.50名前が無い程度の能力削除
構成は問題ないと思いますし、二人の状況と心情が事故を切っ掛けに変わった、というのが本話の主軸なのだと思います。
心情のお話であれば、一人称視点で心理描写の濃淡をつけて事故の前後で互いの見方や付き合い方がどう変わり今後に思いを馳せる感じで終われます。
逆に状況を主軸にするのであれば、事故で起きた現状をどのように打破するかというのが見どころとオチにつながるのではないでしょうか。
焦点を絞るだけで話の本筋が見やすくなり感情移入しやすくなるかと思いますので、まずは物語のプロットを作製してみては如何でしょうか。
頑張ってください。
3.無評価名前が無い程度の能力削除
霊夢の非常食のくだり・・・いる?
7.20名前が無い程度の能力削除
作者が自分の逃げ道の為の説明ばかりで、それ以外が兎に角薄い。見事なまでに独り善がりな作品でした。
8.100名前が無い程度の能力削除
難しいことは皆と違ってわからないけど僕にとっては面白かったです
9.70名前が無い程度の能力削除
ものすごく中身のない批判が多いな
誤字は確かにあったのが、訳が分からないのはオチがないとか関係がどうというコメントがあることだ。
関係が変わるも何も事故が起こる前から魔理沙と咲夜が親しいことが分かりやすく表現されていると感じたし
最後の場面にしても安易なギャグを挟むよりもほのぼのして良かったと感じたのだが?
こういった、ほのぼのとした文章は地の文を書きすぎると窮屈な印象を読者に与えてしまうので、非常に書くのが大変なのだがそういったことまで考えてコメントをしてほしい
なにより、貴重な咲マリなのだから