Coolier - 新生・東方創想話

第二次東方バレン大戦

2005/02/14 20:16:49
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「今日は2月14日、世間で言うところのバレンタインデーだな」

「バレンタインデー?ここがどこであたしが誰だと思ってんの」

「博麗神社、そこの巫女」

「巫女の私がなんでキリスト教のお祭りに参加しなきゃいけないのよ。
だいたい好きな人にチョコ送るなんて事してんのは日本だけでしょ。
森○や雪○や不○家の陰謀にまんまと乗ってんじゃないわよ!」

まるでチョコが貰えないモテない男子のような理論武装である。
あげる側のはずの霊夢がなぜこれほどにバレンタインデーを否定するのか?
森○だの雪○だの外の世界の事にやたら詳しいのはとりあえずスルーしておこう。

「ん?どうした、渡したいような相手がいないのがそんなに空しいのか」

「違う」

「とすると渡したけどその相手には既に恋人がいてビャーとかヴョーとか」

「ちーがーう!なんなのよその擬音は、妖怪と亡霊の化かしあいか。
だいたい私達の知り合いで男っつったら霖之助さんくらいしかいないでしょ。
バレンタインが話題になるってのがそもそもおかしいのよ」

「関係がない、というなら日本以外だの不○家だの妙なのを持ち出す理由が無いな」

今言っている理屈はそれらしい、いや全く正論なのだが
その前の神道だとか明○製菓の話から霊夢が冷静さを欠いてるのは明らかだ。
魔理沙はすでに尋問モードに入っていた。ごまかすようなら徹底的に追求する。
逃げ出されてもスピードならこっちのほうが上だ、すぐに追いつける。
逆切れして弾幕勝負を始める、という可能性は考慮しなくてもよさそうだ。
霊夢が掃除の手間を二倍にするようなマネをするはずがない。
さぁどう反論してくる?魔理沙の脳内には巨大なフローチャートが構築されていた。




「アリスとレミリアが」

「あー、その先は言わなくていい。むしろ言うな」




――――せっかく作ったフローチャートは廃棄処分になった。




「去年は大変だったのよ、アリスが畳の下から現れて完全可動チョコレート製霊夢人形
を出したと思ったら天井裏から沸いたレミリアが『その気味の悪いチョコよりこっちを
受け取りなさい』って言いながらB型血液と変な薬を混ぜた超高級チョコレートを
突きつけてきたのよ。しかもその場で『愛のバレンタイン霊夢争奪弾幕決闘』とか称して
チョコレート投げつけあうし。結局二人ともダウンして片付けは私一人。
そういやこの前の節分の時だってマジギレした萃香をKOしたのも私だし
正月の時は庭にできたクレーターを埋めるの誰も手伝ってくれなかった。
なんなのよもう、何か拍子があるたんびにみんなで乱痴気騒ぎして後始末は私に押し付ける!
もーーヤダァァァァァァ!!!!」

泣き崩れる霊夢。魔理沙からはもはやオッサンの愚痴にしか見えなかったが、抵抗しない萃香に
バケツ一杯の納豆をぶちまけたのは魔理沙であり、「季節はずれの花火だぜ!」と叫んで
スターダストレヴァリエと間違えてマスタースパークを地面に向けて発射したのも魔理沙なので
黙っておく事にした。

「あー、なんだ、その、お前さんも大変だな」

「そういう魔理沙はどーなのよ、スカーレット妹と紫もやしは喧嘩したりしないの?」

「こっちは激しく平和だぜ。せいぜいパチュリーがチョコの食いすぎで鼻血出して
出血多量から昏睡状態に陥ったとかフランドールがクランベリートラップを
チョコの中に仕込んでたとかそれぐらいのもんだ。」

どうやってスペルカードをチョコレートの中に仕掛けるのかは不明ではあるが
確かにこれぐらいの事なら日常茶飯事だろう。霊夢はマリパチュ・マリフランネタを
書けない作者を、サリエリが不公平極まりない才能をモーツァルトに与えた神を呪うのと
同じくらいのベロシティーで恨んだ。

「とーにかく今日こそは何も無い事を祈るだけでなく、弾幕勝負をさせないように
実力行使も辞さない姿勢で臨むわよ」

「実力行使はいつもの事だな。まさに恐怖政治だぜ」






その時霊夢は何かが動く気配を感じた。博麗神社の平和を守るための戦いが今、始まる!





「・・・・・・・・そこっ!!」

懐から取り出した針を気配がした方向に投げる。

「グフッ」

これが高等生物があげる断末魔ではないのは半角カナであることから明らかだ。
囮を使うとはずいぶん手が込んでいる。ずいぶん戦術に長けた敵のようだ。

「上海人形だな」

「上海人形ね」

哀れな囮の正体が二人の口から同時に出てハーモニーを奏でる。
実は蓬莱人形なのかもしれないがわざわざ確認しても何の得にもならないので
そうであると決め付けておこう。




「アリス、いるんでしょ、出てきなさい」




「おはよう霊夢、今日もいい天気ね」




タンスの引出しからアリスが出てきた。
あれ、タンスの引出しの中ってそんなスペースあったっけなって作者も悩んでしまう
くらいのウルトラC級な登場である。すきま妖怪・八雲 紫以外でこんな事ができる
人妖がいるなんて全く驚いたもんだねえ。しかしそんな超絶テクニックを見た霊夢は
ツッコミも入れずに全力で引き出しを閉めた。思いっきり首を挟まれて悶えるアリス。

「痛い痛い、けどなんか気持ちいいかも!!」

「えぇーい帰れ帰れ、タイムマシンに乗って帰れ!」

「アリス、お前未来からやって来たのか?そいつは初耳だな」




・・・




「あーチョコは受け取ってあげるからレミリアが来ないうちにさっさと帰ってよ。
今年こそは穏便に済ませたいの。」

「霊夢、私の気持ちを受け取ってくれるのね!嬉しい!」

「いーからさっさと持って来い!」

「今呼んでくるから待ってて」

魔理沙は『呼んでくる』という表現からブツの正体がだいたい分かってしまい、
必死に笑いをこらえた。今度は自律式チョコレート人形か。そんなもん気持ち悪いだけに
決まってるだろうに。

「カーサ・タルエス・ディクス・エム!来たれ、我が僕よ!」

「・・・なんでわざわざ召喚呪文唱えるんだ?」

「必要だからよ。あと4秒ほどで到着するわ」

きっちり4秒後、巨大な何かが着陸した音が博麗神社中に響いた。
障子を両手で真っ二つに開けた霊夢が見たものは、










      巨大な茶色の自分自身が手を振っている姿だった。











「私の最高傑作より最高な作品、10/1スケールチョコレート製完全自律式霊夢人形よ!」

「だははははは、でっけえーーーーーーーー!」

胸を張って解説するアリスとひたすらに笑い転げる魔理沙。

「ムソーフイーン♪ハポーウキバークジーン♪」

「ぎゃはははは、なんだあの歌!しかもテンポずれてるぞ!」

「うっさい、可愛いからいいのよ!」

ヘナヘナな踊りを披露する10/1スケールチョコレート製完全自律式霊夢人形。
爆笑している魔理沙にアリスはオバハンみたいな理論を展開している。
受け取り主の霊夢はというとあまりの光景に思考回路が一般保護違反を起こしていた。






ナンダロウ、アノチャイロイノハ。


チョコレートカナアァ。


イヤ、チョコレートハモットチイサイモンナ。


           ジャアナンダロウナンダロウナンダロウダロウ








<いけない、レミリアが来る前にさっさとアリスを帰さないと!>

13秒ほどで我に返った霊夢は重大な事に気づく。もしここでレミリアが来て
弾幕勝負にでもなろうものならあの化け物も暴れ出す可能性がある。
庭中チョコレートまみれになって朝から晩まで甘ったるい芳香の中で
生活するのは和食派じゃなくても耐えられない。

「まーよくがんばったわね、わたしうれしいわ」

「本当!?私も霊夢が喜んでくれて本当に嬉しいわ!」

霊夢の棒読みのセリフに何の疑問も持たずに感激するアリス。
笑いがおさまりかけた魔理沙にまた笑撃が走る。

「だからレミリアが来ないうちに急いで帰ってよ、ね?」

「・・・残念だけど仕方無いわね」

渋々帰る用意をするアリスに霊夢はほっと胸をなでおろした。
あとは夕方やってくるレミリアの機嫌を取るだけだ。
いつまでも笑ってる魔理沙から電気アンマでギブアップを取り、湯飲みを片付け、
何だかおかしな事になっているタンスを隠す。


だがしかし―――――――










「待っちなさぁ―――――――い!」











突如辺りが暗くなり、尊大でありつつも幼さを隠し切れない声が響いた。
Bダッシュで外に出て空を見上げると、そこには暗闇の中ライトアップされた
レミリアの姿。どうやら事態の収拾は間に合わなかったようである。

「その気味の悪いチョコよりこれを受け取りなさい!」

言うが早いか、スピア・ザ・グングニルの要領で綺麗に包装された箱を投げつける。
「誰がスピア・ザ・グングニルの要領で綺麗に包装するんだ」などというボケは
厳禁だ。

「うわっ!危ないでしょっていうかせっかく作ったチョコを渡したい相手に投げつける
やつがどこにいるのよ!」

時速500km/hの豪速箱をナイスキャッチできる巫女もどこにいるんだか分かったもん
じゃないが、とりあえずお嬢様の考える事はよく分からんという事にしておこう。

「さ、開けてみて」

外見年齢相応の可愛らしい、吸血鬼のくせにまるで天使のような笑みを霊夢に向ける。
レミリアを溺愛する紅魔館のメイド長、十六夜 咲夜がこの笑みを見れば
感動と劣情のあまりショック死してしまうに違いない。
この状況で開けないというのも無理なので包装を破かないように丁寧に外し、
ゆっくりと箱を開けた。

「へぇー、結構やるわねえ」

棒読みのセリフではなく正直な気持ちのこもった感想を霊夢が呟く。
中身はハートや月、星などの形に作られたまっこと正統なチョコレートだ。

「さ、食べてみて」

「うん、とってもおいしそうねこれ」

「昨日咲夜に教えてもらいながら一生懸命作ったのよ。おいしくないわけないわ」

なんだかほのぼのな展開に、横で見ていたアリスは危機感を募らせていた。
しかしこの状況で邪魔をすれば自分が悪者になってしまう。
今自分にできる事と言えば地面に指でドリキャスマークを書きつづけることぐらいだ。

「ホントーにおいしそうねえこれ」

「そうよ、だから、さぁ、早く口に入れて頂戴」





「これは絶対においしい確実においしい。だから魔理沙、毒見お願い!」





何を思ったのか、霊夢はさっきから出番の無い魔理沙の口にチョコを押し込んだ。

「ムグッ。な、何すんだいきなり」

「さっき、去年何があったか言ったでしょ」

霊夢がそう言い終わる前に魔理沙の身体に異変が起きはじめた。

「ああ、あ、なんか、身体が、変に、熱い、ぜ」

息は荒く、顔を紅潮させながら足を震わせるその姿はいろんな意味で危険だ。
この作品はそういうSSではないので霊夢がお払い棒でぶん殴って気絶させる。

「あーあ、せっかく霊夢を手篭めにしようと思ったのにぃ」

「あんたは無理やり襲う以外の選択肢を考えられないのか!」

「だから無理やりその気にさせてからお互いの同意の元で」

「結局無理やりでしょ!」

貞操の危機を乗り越えた霊夢。しかしもう一つの危機をすっかり忘れていないか?

「食べ物に薬を盛るなんて、紅い悪魔も堕ちたものね。そんな卑怯者に
霊夢を娶る資格なんて無いわ」

「ふん、魔法使い風情が漆黒と紅蓮の王たる私と勝負しようだなんてのが
そもそも生意気なのよ」

「あら、なら弾幕勝負でもやってみようかしら?たまには本気を出すのも面白そうね」

「『本気』?あなたは負けたときの言い訳にその言葉を使っているだけ。真に強いものは
手を抜きすぎて負けるなんて無様な失敗はしないわ」






「霊夢は私の、私だけのものよ。覚悟しなさい、紅い吸血鬼!」
「私の邪魔になるものは全て排除する。灰すら残らないわよ、七色の人形遣い!」


「ストップストップスト―――――――ップ!」

今にもスペルカードを発動しそうな二人の間に割って入る霊夢。
何が何でも弾幕勝負だけはさせるわけにはいかない。

「どいて霊夢、この実年齢500歳以上の年増吸血鬼の腹にニンニクを詰めて
鰯の頭と一緒に寿司にしてやらなければ地球が滅ぶ!」

「どきなさい、この愛と勇気と人形だけが友達のパペットマペットを始末して
人妖の佃煮にするまで家には戻らないわ!」

なんかしょっぱい争いに見えてしまうがこの二人が激突すればここいら一帯
は確実に廃墟になる。絶対に弾幕勝負だけはダメだ!

「何かで勝負をしようってのは勝手だけど弾幕勝負はダメ!ゼッタイ。」


・・・


「運が良かったわね、今度遭ったら私の人形がお相手するわ」
「私は逃げも隠れもしないよ。臆病でないなら紅魔館にいつでも来なさい」



「あんたらそれ以外にないんか・・・まぁそっちのほうがいいけど」

去年の『愛のバレンタイン霊夢争奪弾幕決闘』は何だったんだ?という気もするが
『ならばそれで白黒つけましょう』という展開になっても困るので
黙っておく事にした。睨みあう二人を帰した後、庭の木に縛り付けられていた
ルーミアを忘れずに救助。気絶していた魔理沙は叩き起こしてみたところ
まだ薬の効果が残っていたようなのでもう一回ぶん殴って気絶させておく。
そして踊りつづける10/1スケールチョコレート製完全自律式霊夢人形を見て溜息をついた。




「で、これどうしよう・・・幽々子に頼めば全部食べてくれるかな」















・・・一方その頃白玉楼では、






「人符『現せ斬』!」





・・・





「おかしい、現せ斬が出ない」










字の間違いに妖夢が気づくのはそれから4日後の事であった。








(オチのつけかたが思いつかないのでこれにて閉幕)
受験を気合避けしようとして被弾しました



ちなみにSSを書くのは2回目、ここに投稿するのは初めてです。
G.E.O
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コメント



0.2700簡易評価
1.80SETH削除
>だははははは、でっけえーーーーーーーー!

そりゃ笑うでしょうなぁ・・・w
26.40上泉 涼削除
すいません「10/1? 1/10の間違いじゃない?」とか一瞬思ってしまった私が馬鹿でした。
まさに「だははははは、でっけえーーーーーーーー!」

しかし体積にして、霊夢の体の1000倍のチョコレート量ですか。
そんなものを作ったアリスのひん曲がった愛には、チョコ一口も食わずともお腹いっぱいですね(笑)。
32.100名も無き堕ち人削除
………………でかっ!!

10/1か~。あのチョコは結局どうなったのか気になる…。

一人じゃ食えないだろうしな~(いや、一人だけいt…
33.90名前が無い程度の能力削除
>バケツ一杯の納豆をぶちまけたのは
流石にこれは酷いような…
45.70名前が無い程度の能力削除
愛と勇気と人形だけが友達のパペットマペットという表現がツボに来た。
70.70名前が無い程度の能力削除
だははは、でっけえーーーwwww
71.100名前が無い程度の能力削除
10/1…もはやロボットものサイズだよなぁ…。
でもアリスの方がまだ正攻法な気がしないでもない