「…うん、今日は晴れてるな。」
ある晴れた春の日。
未だに風は冷たいが、桜の木は既に咲き始めている。
「今日は…夜に白玉楼の庭で花見があるんだったな。花見の名を借りた宴会だけど。
しかし、あいつらも本当に宴会が好きだよなぁ。
今日は何もやる事が無いから、先に行ってるかな…。
行くついでに、アリスに借りてた魔道書も返すか。」
あそこの庭師が支度に駈けずり回ってるのをからかうのも面白そうだ。
そうと決まれば善は急げ、手早く身支度を済ませて宴会用の一升瓶を風呂敷に包んで箒に吊るす。
「確かこっちの方角だったよな。
久しぶりに行くからちょっとばかし心配だぜ。」
箒を使い、宙に舞い上がる。
同じ森に住む魔法使い、アリスの家と白玉楼は同方角だったはずだ。
間違えてたらそれはその時考える。
「全速で行けば、間違えても短い時間で戻ってこれるだろ!
…何か間違ってる気はするけどな。行けっ!」
魔理沙の箒が急加速を始め、凄まじい轟音を立てながら飛び去って行く。ついでに魔力の残りカスも小さな弾となって。
近所迷惑な事甚だしい。
―――――――――――――――――――――
「よう、庭師。」
「…もう、名前で言えって言っても無駄かなぁ…。
何しに来たんですか?まだ宴には速すぎますよ。」
「暇だったんでな。ここで待つ事にした。」
「邪魔だから来ないで。」
「邪魔しに来たんだが?」
「…喧嘩売ってます?」
一瞬、険悪な雰囲気が流れる。
やれやれ。だからお前は半人前って言われるんだよ。
冗談で流してくれ。…半分は本気で邪魔するつもりだったけど。
「妖夢殿、この椅子はこっちで良いか?」
「あぁ、そこで良いですよ。わざわざ手伝って貰ってすいません、藍さん。」
「お、いつぞやの妖怪狐。」
「げ、いつぞやの人間。」
「げ、とは何だ、げ、とは。まるで会いたくなかった相手みたいじゃないか。
…それはそうと、なんであんたが此処に居るんだ?」
「(あんたには会いたくなかったんだよ…)え?あぁ。
そこの妖夢殿が人手が足りないって言ってたのを偶々紫様が聞いていたらしくてな。
私が駆り出されたのさ。…昨日の夜からやってるから、少し眠い。」
「わざわざご苦労だな、あんたも。ただ働きなんだろう?」
「式神ったって安くは無いよ。勿論、報酬の約束は取り付けてある。
鰹の削り節2ダースと、油揚げ1ダース。」
「…確かにこの辺に海は無いみたいだから、鰹の削り節は分かるが…。
油揚げ?」
「ただ単に私が好きなだけだ。」
「それじゃあ今度私の実験に協力してくれ。2ダース出すぞ?」
「何か大切な物が無くなりそうな気がするから、断る。」
「私って、信用無いんだな…。
ところで庭師、宴会用の酒はこの辺に置いといて良いか?」
「適当に邪魔にならない所に置いといて下さい。むしろあんた手伝え。」
「拒否権は…」
じろり。
「無いみたいだな。」
―――――
「そこの戸棚に仕舞ってあるお酒、ちょっと出して置いて下さい。」
「これか?…って、手が届かん。…うりゃ!」
ぴょんっ!
ずるっ!
がごっ!
ごっ!
「~~~~~~~っっッ!!」
「…何戸棚から落とした瓶に脳天直撃した上に置いてある瓶を蹴ってるんだ?」
「誰だよ、こんな所に一升瓶置いた馬鹿は!」
「さっき貴女が置きましたよ?邪魔にならない場所にって言ったのに。」
「……………。」
―――――
「疲れた…。
しかし、数が来るわけでも無いのにこんなに疲れたのは何でなんだ?」
「庭の広さがなぁ…。
結局、夕方まで掛かったな…。」
「私は何時も、これを一人でやってるんですよ?」
「うん、庭師、あんた偉い。がんばれ。」
「またすぐ次の宴会があるんだろうなぁ…。はぁ。」
「…次は、手伝うの止めとこうかな…。」
―――――
「あら妖夢、今日はちゃんと間に合ってるわね。」
「今日は三人でしたから…。」
「そろそろ皆来ると思うわ。失礼の無い様にね。」
「(一番失礼な所見せてる事が多いのは幽々子様じゃ…?)分かりました。」
―――――
「あら魔理沙、何宴会が始まる前から死んでるのよ。」
「…霊夢か…。今の私は本当に疲れてるから、相手にするな…。」
「どうせ準備の手伝いでもやらされたんでしょう?
しかし手伝いだけでダウンするとは、あんたも結構駄目ね。」
「…あれは、地獄だぞ。」
―――――
「…あぁ、レミリアに咲夜か。
館の他の奴等はどうしたんだ?」
「美鈴は留守番。
パチュリー様は…まぁ、妹様の面倒見ね。」
「何だ、まだフランドールは外に出れないのか?」
「最近、ちょっとは手加減出来るようになったようだけど。
まぁ、まだあの子が外に出るには速いわ。
…それにしても、今の魔理沙なら簡単にリベンジ出来そうねぇ。」
「それはまた今度にしてくれ。」
―――――
「…さて、もう予定した時刻なんだけど…。
いつぞやの人形遣いさんとプリズムリバー、それに紫が居ないわね。
まぁ約一名は何時もの事だけれど。」
「アリスなら何か用事があるから遅れるかもとか言ってたぜ。」
「そう。…まぁ、ただ待っているのもアレだし…始めましょうか?」
「まぁ、それが良いと思うぜ。」
―――――
「何だ、庭師…お前、もう顔真っ赤だぞ。そろそろ止めておいた方が良くないか?」
「わらしは、酔ってなんかいまひぇんよ~?」
「酔っ払いは、誰でもそう言うんだよなぁ。」
「だからぁ、酔っ払って何かいますぇんってぇばぁ~。」
「はいはい、分かったよ。んじゃな。」
「こらぁ、わたひの話をきけへぇ~!」
「げ、こいつ…絡み酒の気もあるのか?」
―――――
「だからぁ、わたふぃは~…。」
「…いい加減、勘弁してくれ。」
「妖夢ー、お酒がそろそろ切れるから持ってきてー。」
「…はい、わかりまひたぁ~…。」
「こんな時でも、主人の命令は聞くのか…。
ある意味、哀しいな。」
―――――
「…幾らなんでも、プリズムリバー達遅すぎるわ。」
「アリスもだな。あいつは遅れるとしても少しって言ってたし。」
「何かあったのかしら?」
「あれ?あの光…。」
次の瞬間、けたたましい爆裂音が響く。
それと同時に、赤い火柱が立ち昇った。
「…!」
流石に庭師も正気に戻されたらしい。
全員でそちらへ向かう。
「…お姉様!やっぱりここに居た!」
「…フラン?!」
そこに居たのは、悪魔の妹、フランドール・スカーレット。
あらゆる物を破壊する程度(?)の力を持つ者だ。
「あちゃぁ…こりゃまた、派手にやったな。」
「私の家の庭でこんな盛大な破壊行為を行って欲しくないのだけれど。」
「…フラン、どうして此処に居るの?
どうやって来たの?」
「何でって、お姉様が今日、ここに出掛けるって聞いたから…。
私も、来たかったの。
取り合えずの方角はこっそり聞いたから。
…でも、来る途中で何度も邪魔されたわ。
変な家だらけの場所に迷い込んじゃって、猫が飛びかかって来たり、
人形遣いの人の人形が何でかは知らないけど邪魔して来たり。
この近くだとうるさい三人組も居たわ。」
「はは、その猫ってのは橙だな。最近暇を持て余していた様だから、勘弁してやってくれ。」
「プリズムリバー達、そんな事で道草食ってたのね。」
「アリスも何やってんだかなぁ。無視して来れば良かったのに。」
「…それにしても、良く怪我しなかったわね。
そういえば、パチェに頼んで館の近くに雨を降らしておいて貰ってたはずなんだけど…。」
「うん、怪我は私、何もしてないよ。
だって、皆私が先に」
「壊しちゃったから。」
とか思ってたらいきなり急展開ですか!
続きがっ 続きが気になるっ
あと、速→早にしたほうがいい箇所が。
妖夢の、まだ宴には速すぎますよ。部分と
レミリアのまだあの子が外に出るには速いわ。の部分です。