やや太めの半月の夜が見下ろすのは、魔を孕み黒々と広がる魔法の森。
待ち合わせの時間を過ぎても来ない魔理沙を迎えに行ったところ、荷物が崩れて部屋から出られなくなっていた。
事態の深刻さに軽い頭痛を覚えつつ、魔理沙を発掘する。
「助かったぜ、こんな事で不戦敗なんか付けたくないからな」
「いつにも増して荒れてるわね」
「努力の結果だぜ」
報われない努力ね、と嘆息する。
霧雨邸、少し上空。
無言のまま距離を取る。
魔弾をお互い一発だけ撃ち、中間地点でぶつける。
それは僅かに干渉し、響くような音を立てて破裂する。
開幕の合図であった。
先手を取ったのは魔理沙だった。
距離を測るように軽く魔弾を放つと、
「夜風にたなびけ屑星たち! 【スターダストレヴァリエ】!」
星の力を宿した魔理沙お手製のアミュレットが、七色の尾を引きアリスへと向かう。
輝く軌跡は硝子細工のように割れ、その破片が微細な星弾となる。
包囲してしまえば星弾の天幕に相手を閉じ込めることも出来る、魔理沙得意のカードの一つである。
「囲め!」
初端から飛ばしていく気はないが、手を抜くつもりもさらさら無い。
魔理沙は次の流れを組み立てつつ、流星の行く先を見つめる。
注視の先、七発の流星に囲まれる寸前にアリスがカードを抜くのが見えた。
「【操符】!」
内から外に光が奔り、放った流星が砕音を上げ、光を撒き散らす。
「!?」
アミュレットの断末魔の輝きが、ダメージとなって術者に返ってきた。
制御していた魔術の触媒を一挙に失った反動で、スペルがブレイクされる。
世界への干渉を終え結界がほどけゆく中、人形を従え、傲然とたたずむアリスの姿があった。
「なんだ? 今の・・・!」
頭痛と眩暈を押さえ込みつつ、唸る。 だが言葉と裏腹に魔理沙は見ていた。
レーザーで流星を貫き、動作が鈍ったところへ追い討ちの魔弾を放ち砕いた人形達を。
光に刺し貫かれた星光の宝玉たちは、結果、ハンマーで叩かれた硝子球のように容易く砕け散った。
・・・分業なのか?
「本日初公演の出し物よ。 演出協力は・・・動かない大図書館・・・。いつも本を返さないから、少し痛い目を見せてやれって言われたのよ」
申し開きは本人にしてね? と、アリスは薄く微笑む。
「パチェか・・・返さないわけじゃないんだが・・・」
頭痛が治まってきた。 視線に力を込め、あらためて向き直る。
試したいと言っていたのはこれの事か? それにしても、
「見たところ制御が不安定なようだな、効率も悪そうだし」
「初見で見抜くなんて流石ね! そう、否定はしない。扱える種類も限定されるし・・・でも、実用までこぎつけたわ」
大袈裟に驚いた様子のアリスは、しかし見せつける様に人形達を並べる。
「もう種明かしかよ。 観客をほったらかしで進む物語は、監督の自己満足に過ぎないんだぜ」
「あら? 貴方は黙って放って置かれるつもり?」
「普通の観客と私を一緒にするな。 撃った以上は動く、止まる理由はどこにも無いしな!」
啖呵をきってタクトを突きつける。
「もう幕はあがっているのよ? 続き、行くわよ!」
その台詞を合図に、並んでいた人形たちが隊列を組み砲撃を再開する。
雨の様な軽い音を立てて、外周から囲むように放たれた弾幕は、その中央が薄い。
あまり工夫のない弾幕に、血の上った頭は正面から叩き潰す事を選択、突入を決定する。
飛び込むや否や、狭まりだす弾のトンネル。 魔理沙の前方に4体の人形が湧いて出た。
「っ!」
熱線が閃いた、と思った直後。 焦音と共に帽子に風穴が開いた。
今のは【乙女文楽】のレーザーか。
「悪くない。 が、愉快じゃあないなぁ!?」
急加速とロールを一つ。 アリスに向け魔弾を放つ。
2つ3つと人形を撃ち落すが、常より数多いそれは強固な弾幕を維持したままだ。
持ち前の速度で箒を操り、的を絞らせない戦法を採るが、初手で使い魔とも言うべき護符を失ったままの魔理沙は、身一つで立ち回っていた。
高速かつ不規則な機動で出る魔理沙に、大所帯のアリスは追わずに、集団ごと旋回して捕捉しようとする。
埒が明かない。
なるほど、この状況での不利は認めなければならないようだ。
その事実に歯噛みしつつ、プランを練る。
「こちとら弱っちい人間なんでね、舞台は選ばせてもらうぜ!」
そう叫ぶと、一気に急降下。森の中へ
「ついてこい!」
流星が滑り込む。
光の尾をなびかせ、狭い森に斬り込んでいく魔理沙を、アリスは見送った。
大集団の制御にまだ慣れていない為に、素早い対応が取れないのだ。
それを見抜いた魔理沙は、速度戦に切り替えるつもりなのだろう。
「いいわ、今夜はとことんよ」
森を睨みつけ
「上海、お願いね」
左腕を掲げる。
アリスの左腕には腕輪があり、あしらわれた紅い宝玉はもちろん魔法の品で、それは使い魔との繋がりを強化の効果を持っている。
魔力伝達路のバイパス形成や、命令系統の強化をする能力があるこれを、アリスは上海との接続の補器として用いた。
これにより上海は、より精密に複雑な所作をこなすことが出来、より高い出力帯で安定して稼働することが出来るようになったが、繋がりが強くなるので対象の受けた事象も強くフィードバックしてくる欠点がある。
永夜事件の際、魔理沙の速度に遅れたのをそこはかとなく気にして、手持ちの道具をこねくりまわした結果なのだが、
「こんなに早く使う事になるとはね」
アリスからの追加の魔力供給を受け、上海の背の羽が光を発しながら伸長する。
剣のように延びた羽は3対6翼。
そのまま、降下を始めたアリスの背中にしっかりとしがみ付く。
淡く光る羽を背負い妖精のようなシルエットになったアリスは、加速すると魔理沙を追い、暗い森の中へと飛び込んだ。
戦いの舞台は夜の森へと移った。
木々の天蓋に月光は遮られ、ほとんど差し込まない。
光源は互いの放つ光のみである。
先行することで自らコースを決定できる半面、行く手に光源はない。ろくに明かりの無い森の中を、木々の間を縫うように駆ける魔理沙。
追い手となったアリスは、自分の速度と間近を掠めていく木に問いを叫ぶ。
「見えている? まさか覚えているの!?」
容易く背後はくれてやらんと言うかのように、激しく蛇行しつつ、アリスには息つく暇を与えないよう、的確な牽制が飛んでくる。
僅かでもコースを読み違えば木に激突する。そんな速度にもかかわらず、だ。
魔弾の応酬の中、アリスは唇を噛む。
上海のおかげで、普段とは比較にならない程よく動けている。 しかし今度はこちらが攻め手に欠ける。
この速度の戦闘では人形を出しても意味が薄い。他の人形達は上海のような改造を加えていないから、この流れでは置き去りになるか、呼んでも間隔が開き、効果的なフォーメーションを組めず無駄に終わる可能性が高い。
だが、今更後には引けない。
弱気を抑えつけ、アリスは加速する。
「こんなの散歩の速度だぜ。 アリス」
きびきびとした挙動で木や魔弾を回避するアリスは見ていて面白いが、自分の縄張りで遅れを取るわけにはいかない。
ニヤリと笑みを浮かべた魔理沙は、懐に手をつっこみ、拳大の球を取り出した。
直線。先を行く魔理沙から何か零れ落ちるのが見えた。
「3、いや4つ」
思わず意識の焦点がそれに合ってしまう。
こちらに飛来する途中で青白い炎を噴き出したそれらは、直後、揃って爆発した。
闇の中に閃光と激音が生まれる。
「この程度、効くとは思っちゃいないが、どう凌ぐ?!」
高速の中、魔理沙は一瞬後方を振り向く。その中でアリスの取った行動を見た。
「直撃よりは!」
爆発の瞬間、アリスは引き剥がすような勢いで右にロールをうつと、爆発と自分の間に木を置き光熱をやり過ごす。
直後、折れるというより弾けた木が、散弾となってこちらに飛んでくる。 間隔は狭い。
歯を食いしばり、両脚を前に蹴り出すと同時、背中の上海が上半身を引き倒す。
刹那の時間で前後逆になったアリスは、宙で仰向けの姿勢になり、散弾の群れにブーツの底を向ける。
そこに焼け爆ぜた木の弾幕が来た。
「っ!」
木弾が襲い掛かり、服、肌を区別なく傷つける。 森の夜気に血が舞った。が、構わずスカートを翻して姿勢を直す。
「~♪」
被弾面積を最小にして突破したアリスに、魔理沙は思わず口笛ひとつ。
にやりと笑うとその懐から、カードを1枚、抜き放つ。 解き放つ。
咄嗟の思いつきだったが、切り抜けられた。
魔理沙は? 一瞬だが見失った。
そこへ、私はここだと言わんばかりに宣言が響き、世界が塗り変えられる。
左に併走していた魔理沙から、光が4本生まれた。ノンディレクショナルレーザーが発動展開していく。
闇よ退けとばかりに伸びたそれは、その身を細く濃くした後、大剣よろしくこちらに振り下ろされてきた。
気軽に枝や幹を焼き斬りながら迫る一撃を、思わず見上げてしまい動きが止まった。
危険を察知した上海に背を引かれる。
熱を感じる距離で光の柱が過ぎ去った。
「・・・ありがと、助かったわ」
速度を落とさず、木々の合間を抜く二人。照らす光がある為に行く手は見えるが、隣から来る斬撃は高速で、追走していた時よりもシビアな機動を要求してくる。
斬り飛ばされた木が次々と倒れてくる。地面を焼き、闇を抉りながらこちら狙う光剣。
レーザーが振り回されるたびに、森の中を影が踊り、伐採の音が夜の森に響く。
身を翻し、木々と光を避けつつ、応射する。
木、光線、倒木、光線倒木光線光線枝光木光・・・・・・
次第に斬撃のペースが速まってくる中、ドレスの裾を焼き切られたアリスがたまらず叫ぶ。
「ちょっと! あんた木ぃ伐りすぎよ!」
次々と倒れてくる木をかいくぐるアリスの抗議に応じるように、4本が振り上げられ、おもむろに来た。
後方、上からの振り下ろしと、地面すれすれからの一撃が。
前方、進路を遮るように遅く、同高度に一本。
「残る1本は後狙いってわけね・・・!」
背中の上海から、戸惑いの思考が流れてくる。
減速して逃げるには、後方、上下を固める2本は厳しい。かわしても前から来る1本と、フォローの一撃がくる。
前に行けば、まだ伐られていない木がある分だけ不利になる。そもそも加速で魔理沙を上回れるとも思えない。
一瞬の判断でアリスは加速、一気の前方の1本との距離が詰まる。
後ろの2本が焦音を上げ加速する。光源が迫り影の位置が変化していく中、アリスの視線は一つの物を見ていた。
(伐り飛ばされた幹・・・!)
振りが遅い前方の1本が切り倒した幹が、横倒しになりながらこちらに来ている。
アリスは、身を縮め、
「てぇえやあああっ!!」
伸ばしざま、揃えた両足で幹を蹴りつけた。
鉄槌のような一撃を受け、足元で何かが砕ける音がしたが気にしない。
蹴りの反動を利用し、強引に上へと軌道修正したアリスは、そのまま後方への宙返りを敢行した。
瞬間。 伐られてまばらになった木々の合間から、闇のような夜空と月が見えた。
目標の急激な移動に軌道修正が間に合わなかった光剣は、それでも上海の羽を引っ掛け、半ばから先を切り飛ばした。
ダメージが上海から痛覚となってアリスに還元される。
だが、それだけだ。 森の天井ギリギリの宙返りは、後方からの2本をやり過ごす事に成功した。
・・・これで半分!
宙返りの背後、前方からの1本が来ているだろう。さらに最後の一撃も来るはずだ。
それらを凌ぐため、アリスは叫ぶ。
「上海!」
主の求めに応じる為、羽を閉じた上海人形がアリスの背から離れる。
分離し、減速するが構わずに背面宙返り。天地逆に、今通過してきた森が見え、地面が見え、流れていく上海が見え――
拾い上げ、正面に向き直る。
減速した分、距離が開いたと思っていたが、魔理沙も合わせるように減速していた。
「逃がすと思うか!」
「誰がよっ!」
叫び返すと、眼前の光の大剣のむこうに、森の終端と湖が一瞬視界に入った。
【咒符 上海人形】
胴を薙ぐ軌道に来ていたそれに、上海の魔彩光を叩き込む。
真っ向から出力勝負をしたらアリスの勝ち目は薄いが、分割されている今なら話は別だ。
光爆。
光術の激突はアリスに軍配が上がった。魔理沙の光剣は、半ばから弾けるように折れ、根元まで霧散する。
「まだだ!」
砕かれた光が舞い散る中、最後の一振りが打ち下ろされる。
かけられた声に振り向くように、魔光を保つ上海を抱えたまま、強引に左にターン。なぎ払う先には魔理沙。
そこへ、向かって右上から袈裟懸けるような一撃が落ちてくる。
「っ!!」
もはや狙いもなく、叩き付けるように振り上げた。
生まれた光の爆発は衝撃波を生み、破壊と言う形で己を表現する。初秋の森がその身を揺らし、葉を散らした。
その爆発に蹴り出されるように、黒い影が森から飛び出してきた。
森の中の、さほど大きくもなく名前もない湖。魔理沙はその上を滑走するように飛翔する。
飛び出した勢いそのままの速度で湖面ぎりぎりを駆け抜け、対岸寸前で急上昇。速度に割れた湖面が二列の刃を立てるのを見ず、黒衣の魔女は天へと昇る。
夜の風を切る音が耳に、欠け始めた月が視界に、入ってくる。
「さぁ、次はなんだ?楽しくなってきたぜ」
高度を取り、滞空した魔理沙は、懐からアミュレットをじゃらじゃらと撒きながら、今抜けて来た森を見下ろす。
取り回しを重視して出力を抑えていたが、叩き折られるとは思わなかった。
あんな強引な抜け方はアリスらしくない、と魔理沙は思う。
試作だというスペルも含め、警戒すべきだ。 油断するつもりも無いが。
周囲に浮いたアミュレットが魔力を吸い上げ、淡く輝き出した。
タクトを振り回すと、生まれたばかりの星たちは、それに従い軌跡を描く。
自分の意思が通じ、手足の延長のような感覚があるのを確認すると満足の頷きを一つ。
急ごしらえだが魔理沙を主星とした星系が生まれた。
「もしかして、充実していたりするのか? 最近の私の弾幕ライフは」
誰にともなく漏らすと同時、森から飛び出す影があった。
「穿て!」
展開したアミュレットから容赦なくレーザーを放つ。
イリュージョン、と名付けてはいるが、その光は確実に現実を蝕む力を秘めている。
着弾した湖面は瞬時に蒸発、一気に膨張した水蒸気は爆発したように湖面を吹き飛ばし、盛大に水飛沫を上げる。
巻き上げられた水に月明かりが反射し、まるで星空の中に居るようだ。
自分のスペルのような光景の中、魔理沙は目標を見失ったが構わずに連射する。
雨のように降り注ぐ光線は、打ち上げられた水塊に曲げられ、立ち込める水蒸気に減衰するが、それでも湖面を殴打し続けた。
無心で連射していた魔理沙だが、すぐ目の前に、水と一緒に打ち上げられた魚か何かの影を見つけて、砲撃を止めた。
間欠泉のような水柱が収まり、滝のような音を立てる。辺りに漂う水蒸気と、湖の匂いに今更ながら気がつく。
目の前に、雨に降られたような姿のアリスがいた。
「温室育ちにはちょっと冷たかったか?」
月明かりに照らされたアリスは、全身ずぶ濡れで、髪から水滴を滴らせている。
青のワンピースは体に張り付き、その細身の肢体が手に取るように分かる。
さらに、先ほどのやり取りであちこち焼き切れた箇所があり、白い太腿が惜しげも無く晒されていた。
露出した腕や脚に細かい傷も見える。
しかし、その目は炯炯と輝いていた。
アリスが口を開く
「追いついた。 今度はどこへも逃がさない」
「夜中の散歩が 終わっただけだろ?」
魔理沙が目を細める
幕間は短い。
「星の海で溺れるがいい! 七色の糸!!」
「湖の底に沈めてやるわ! 黒魔の星!!」
アリスは踊るような動作でカード抜き、その名を告げる。
【戦操!ドールズクルセイダー!!】
魔力が渦を巻き、結界を織り上げる。
「二度ネタかよ!」
「そうかしら!?」
先ほども見た光景だ、しかし前と違うのは結界を編むその魔力が二色ではなく、
「七色魔法莫迦だったな、そういえば・・・!」
迸る魔力に圧を受けつつ、魔理沙は違和感を覚える。
アリスの魔力の総量は知らないが、効率の悪さを自分でも認める合成スペルを、気安く連発する余裕があるとは思えない。
しかも、さっき見た物とは明らかに規模が違う。 何枚掛け合わせたかは知らないが、ゆうに通常のカード数枚分の魔力を感じる。
魔術を行使する上で、己の扱えるキャパシティはおおよそ決まっている。
水の入った樽と蛇口のようなものだ。樽が総量で、蛇口が一度の行使可能量だ。
どんなに総量が多くても細々としか使えない者もいれば、少量の貯えを一気に消費してしまう者もいる。そういった感じだ。
だが目の前のアリスはどうだ。明らかに普段の使用量を逸脱していないか?
危険だ。 魔理沙は再度認識する。しかし、普段見られない姿に高揚している自分も居る。
「何があったか知らないが・・・!」
今夜のアリスはいつもよりも本気らしい。
悪くない。
勝ちたい。
その一心で無理をした反動が早速来た。
未だ完成の見えないスペルは、その力を発揮する為に、術者に莫大な魔力の消費を要求する。
全身から力が抜けていく。 色が抜け、存在が希薄になっていく感じがする。普段感じないレベルの眩暈を感じる。
禁呪の本、井戸の底、崩れる砂の城、白い光・・・幾つかのイメージが意識を駆け、瞬間。
今朝方台所で見たしなびた野菜が脳裏をよぎった。
「冗談じゃないわ・・・」
歯を食いしばり、意識を奮い立たせる。
魔理沙を見据える。
近似種の人形の同時制御を可能にするというアリスの合成スペル。ならば、近似の定義の枠が広い場合はどうなるか。
答えはすぐに出た。
アリスの左右後方、転送呪文で繋いだ工房の棚から、出番を待っていた人形達が溢れるように飛び出してくる。
「戦場」という劇を演じる為、多種多様な人形が多種多様な装備を手に現れ、アリスの周囲を埋めていく。
まさに軍団と呼ぶに相応しい威容になった人形達は、整列し進軍の号令を待つ。
その光景を前に魔理沙は束の間、言葉を失う。
「いいねぇ・・・悪くない・・・っぜ!」
強気の笑みをはりつけて、初動から全力で行く。
掲げるは魔符、呼ぶは星力。
「星よ! 夜空を埋め尽くせ!【アステロイドベルト】!」
切られたカードはすぐさま霧散し、代わりに銀河を吐き出した。
眩むような輝きを放つのは、溢れ出す、大小さまざまな魔力の星たち。
瞬くうちに湖の上空には、魔星の銀河が広がり、海を成す。
しかし魔理沙はそれだけに任せず、自身も吶喊する。
押し寄せる星々は、煌びやかな見た目と裏腹に危険な威力を秘めている。
その光景に束の間心を奪われ、星雲を引き摺りながら迫る魔理沙の姿に我に返り、
「あくまで力押しってわけね!」
そうこなくては、と、攻撃的な笑みを浮かべる。
魔力の減衰がもたらす軽い酩酊状態に、テンションがハイになっているのをアリスは黙認した。
意識を人形の操術に向ける。 指先から伸びる魔力の糸、それらを技と集中力と気合で操り、急ぎ迎撃の用意をする。
隊列変更、先頭に白兵戦に向いた人形を立て、外殻を盾兵で補う。
横倒しの垂体状になった密集重装のそれは、押し寄せる銀河を穿つ長矛。
陣形を組み直した人形達が、魔星の銀河と激突する。
先陣の人形達が手にした剣で星弾を切り崩し、その周囲を固める防盾人形の影から、魔弾が噴き出すように撃ち出される。
全てを攫う波のような星の弾幕は、人形達の戦列を押し流そうとする。
中心の星系から放たれる光条が、盾を射抜き撃ち崩す。
矛の穂先で魔弾が激突し、小規模の爆発が絶え間なく瞬く。
確かに、と魔理沙はミサイルを撒きながら内心頷く。このスペルは全方位放出型だけに、一箇所だけ見れば弾幕は薄くなる。だからと言って正面からの押し合いになるとは思わなかった。初夏に見た時のこの系列のスペルは、この辺の柔軟な対応は出来なかったはず。
両者の中間、星雲に打ち込まれた矛先を見つめる。
「こんな事もできるのかよ。今夜のアリスは多芸だな・・・!」
星の嵐をくぐり抜けて肉薄してきた剣人形を、魔力付与したタクトで叩き落し、魔理沙はスペルに追加の魔力を叩き込む。
輝きと密度を増し、もはや激流となった星に人形戦団の隊列は削られ、急激に細くなっていくのをアリスは感じた。
人形達を撃ち落とし、弾幕がこちらにも届いてくる。こちらを掠める弾が増えだした。
飛翔し激しく星弾を撒く魔理沙を睨みつつ、最低限の回避に留め、意識を戦団の指揮に振り分ける。
突撃、戦乙女を模した人形が、携えた槍で己よりも大きな星弾を貫き、しかし進めない。
砲撃、自身よりも大きな弓を持つ人形は、超過駆動に陽炎をあげつつも、絶え間なく魔弾を放つ。
遊撃、短刀を持つ軽装な人形達は、僅かな間を縫うように舞い、側面から狙うが中心には届かない。
防御、盾のみを掲げ進み、ひたすら耐え仲間の道を開けるが、矢面に立つ彼女らはもっとも消耗が激しい。
救助、星の奔流に飲まれ、落ちた人形はしかし仲間に拾い上げられる。
復帰、まだ動ける者は装備を手渡され、疲労した身に鞭打ち戦線に復帰する。
細くなっていく矛は、このとき僅かにその身を太らせる。
これらすべてを制御、残りの人形を投入しつつ、アリスは勝機を待ち、ただ一点を見ていた。
しかし魔空は戦列を押し流す。
千万億の星を越え、最奥の魔理沙まで達しようとしていたが、矛身は細まり、今まさに折られようとしていた。
「こいつで、とどめだ!」
魔力の唸りを上げるタクトを矛先に向け、必殺のミサイルを放とうとした、その瞬間。
それがアリスの待っていた瞬間でもあった。
突きつけたタクトに押されるように、矛の先端が花開き、中から一体の人形が飛び出してきた。
この瞬間に魔理沙は撃たなかった。
ミサイルを放つ僅かな隙、そこを突いてきたのは予測できた。
この局面で投入される人形、となれば虎の子か、とか余計な事を考えたのだ。
それが拙かった。
その人形は剣を抜くでもなく、魔弾を放つでもなく、ただ魔理沙の手元に飛び込んできた。
突きつけた銀のタクトに己の身を突き立てて。
根元まで貫いた人形は、そのまま魔理沙の手に抱きつく。
眼前の人形と目が合う。その人形が内包する魔力に理解が及んだ時、魔理沙の唇は自然と笑みを浮かべていた。
貫かれたまま、ぺこり、と、人形がお辞儀をする。
「焦がれるぜ、アリス」
直後、魔空の中心に閃光が生まれた。
きわどいタイミングだったが、押し切られる前に届いた。
炸裂する【アーティクルサクリファイス】の光を見て、アリスの心に策を成した事の安堵が生まれた。
しかし、その安堵をあざ笑うかのように球状爆発がたわみ、中心を貫いて極光が奔った。
咄嗟に飛び出した上海が盾を構える。
驚愕によって生まれたコンマ数秒の意識の空白を、気合で飲み込み、上海の盾を魔力で覆い・・・そこで直撃した。
間に合わせで張った防壁は、紙細工のように脆く頼りない。
僅かな間、激流に抗ったが、不意に破れ、弾け飛ぶ。
魔理沙ご自慢の魔砲は、粘るアリスを遂に押し流した。
魔砲を浴び、落ちるアリスは、防護障壁を破られた衝撃や、諸々の負荷に意識を失いかけていた。
ここまでの無茶が、ダメージとなって一気に噴き出し、高まっていたテンションも急落していく
意気が挫け、戦意が萎える。
何もかもが通用しない・・・
対魔理沙の戦術を組み立てて挑んだはずなのに。その全てをかわされ、返される・・・
もう駄目か。 またいいところまで行って負けるのか。
でも。
それでも。と、否定の意志を燃料に、腹の底に意識の炎を灯し、残る魔力をかき集める。
それでも勝つ。 まだ負けていない・・・!
風を切る音と夜気の冷たさが知覚でき、今落ちていることを把握すると、アリスは目を開き、呟く。
「・・・・・・そうね・・・・・・まだよ。 魔理沙」
実のところ決死結界だった。
駄目もとで放った魔砲はアリスを捉えたが、それは運の要素が絡んでいた。
防ぎきれず堕ちるアリスに対し、魔理沙は上昇する。
魔女の正装ともいえる黒装束は、近傍で炸裂した魔力の衝撃波によって引き裂かれ無残な姿になっていた。胸下辺りが覗き、涼くてしょうがない。
速度はそのままで旋回半径を大きく取り、宙返りをひとつ。
「さあ、そろそろ決めるぜ」
今夜のアリスは一味もふた味も違う、もう認めよう。
宙返りで偏った血流が正常に戻り、魔力と奮えを総身に届ける。
眼下、落ちはしたが踏みとどまり、諦めずこちらを見上げる人形使いを視る。
先を行かれた事に対して頭に上っていた血も、今や全身を駆け巡っている。
その力も自分と戦う為に身に着けてきた、と自惚れてみる。
ぞくぞくした。
その思いを胸に、月を背負う魔法使いは折れたタクトを振り上げる。
「月を射落とせ!【シュート・ザ・ムーン!!】」
魔理沙がカードを切ったのを見上げながら、アリスもまた決着の為に動く。
上海が焼けて歪んだ盾を投げ捨てる。 盾と癒着していた右手が一緒に脱落した。
「直したばっかりなのにごめんね」
上海の右手を失ったダメージを共有、顔をしかめつつ残されたカードを構えた。
天から降る8つの魔力塊は、瞬時にアリスを通過し下に到達。己の位置を確定すると、光の柱を打ち立てた。
夏に見たスペルだ。その事に気が付いたアリスは、魔理沙の手持ちも少ない事を悟る。
足元から突き上げる光を、身を回してかわす。大分面積が減ってきたスカートがまた焼き切られたが、構わない。
慣れない方向からの攻撃を辛うじて見切っていたアリスだが、すぐに違和感を覚え、その正体も看破した。
「魔理沙は何をして・・・!?」
天頂に居る魔理沙から来るはずの星弾が来ていない。そして、不意にレーザーが檻を形作っている事に気が付いた。
見回す。
回避した、のではなく誘導された事を認め、過去の記憶が類似の形態を叫ぶ。
「囲まれた?! ・・・これって、あいつの妹の・・・・・・!?」
確か【カゴメカゴメ】といったか、ならば次に来るのは。
今度こそ、アリスは天を仰いだ。
「学んでるのはお前だけじゃないって事だ!」
一際強い魔力を秘めたカードを抜くと、遂にカードホルダーが空になった。
【シュート・ザ・ムーン】を維持したまま天に向かい更に上昇、とんぼを切り、光柱の間に踊り込む。
夜空の高い位置、月が見え森が見え、眼下の湖、光の檻の中に囚われたアリスが見える。
最後の一枚に軽く口付けをして起動、真下に向けた箒にしがみ付き声を張り上げる。
「我が身を以って彗星と成す!!」
ほどかれたカードが光を放ち、世界に叫ぶ。今ここに流星あり、と。
懐中の八卦炉が剣呑な唸りをあげ、瞬時に障壁を張り巡らせる。
青白く輝く障壁の向う、加速の前兆として箒が震え出すのを感じながら、魔理沙は籠の中アリスを見る。
刹那の時間で3つの事が見えた。
1つ目はアリスの眼前にあるカードが昇華していくところ。
2つ目は額に髪をはりつかせたままのアリスの獰猛な笑み。
3つ目はアリスの広げられた両腕の先にある、無数の人形達とその光。
そこまで知覚出来たところで、箒の震えは最高潮に達し、あとは行くだけとなった。
だから吠える。
「享けろ・・・!! ブレイジング スタ―――――――!!」
直後、湖上に彗星が現れた。
来た。
アリスは総身に鳥肌が立つのを感じる。
頭上にマスタースパークを超える光が見える。
魔理沙の本気が来る。
己の敷いた光のレールを押し退け削りながら、光の飛沫を上げながら、しかしそれ故に揺らぐ事無く、ただただ真直ぐに彗星が落ちて来る。
アリスは極度の興奮と集中で意識が冷たくなっていくのを感じる。
指先から知覚を飛ばし、現状影響下にある全ての人形を操る。
戦闘の最中に散っていた人形達、傷を負っていない者は無い。消耗激しく飛んでいるのもやっとという者も居るが、アリスを囲みこちらを見ている。指示を待っている。
解き放ったカードの名を、あの夜に使えなかったカードの名を、アリスは囁くように告げた。
「極意」
【グランギニョル座の怪人】
一点を中心とし湖上に布陣する人形達は、上書きされた命令に従い、残り少ない魔力で魔弾を放った。
等速度で収束していく魔弾、その先には、左腕を天に掲げる上海人形と寄り添い支える蓬莱人形の姿。
迫る彗星を見据える無機質の瞳に、仲間の放つ魔弾の光が映る。
本来、高出力帯の人形を精密制御により操作、複雑な範囲攻撃を行うこのスペルを、アリスはこの場においては一点集中の術式として使用した。
魔弾が正確に一点に着弾し、光爆を生む。互いに喰い合い干渉することで特大の魔力塊が発生する。
その様はまるで地上に星が生まれるかのよう。
薄紅の魔力球は急速に膨れ上がり、光の檻を破る。
そして 上海人形 が 最後の ひと押しを 放つ その 瞬間
落雷のような音をたて、彗星が激突した。
二人の魔女の意地が光となって押し合う。
毟られるように光を撒き散らしたわむ光球は、彗星を飲み込もうとするが、叶わない。
眼前の壁と自身の推進力に板挟みとなり歪みだした彗星は、軋む身を細くし光球を貫こうとする。
たちまち飽和した魔力は暴走し、蛇のようにのたうち、風と光が荒れ狂う。
木々は枝を揺らし葉を散らせる、湖はその威に水を押しのけられ岸を浸している。
既に周囲は嵐の様相だ。
どちらも諦めない。
周囲の轟音に自分の声すら聞こえない。
目の前の光に視界は白く染め上げられている。
限度を超えて全身を駆け巡る魔力が感覚を焼き切っていく。
ただひとえに、光の向こうにいる相手の事だけを考える。
二人の意地の張り合いは頂点に達し、
アリスが上海の名を叫び、
魔理沙の八卦炉が危険な光を宿した瞬間、
拮抗し、押さえ込まれていた威力が臨界を超え、ついに炸裂した。
まずは光。
破壊の前兆であるそれは、夜空に突如現れた太陽の如く、光をぶちまけ全てを白く染め上げる。
その光は遠く紅魔館まで届き、テラスに出ていた主従を照らした。
光に洗われた世界を、威の力が殴りつける。
音よりも早いその一撃がもたらすのは、大気を引き裂く衝撃波。
崩壊の圧は波紋のように広がり、湖面を打ち据え森を蹂躙していく。
そして音、もはや抑える者の無くなった魔力が、爆風となって全てを巻き上げ吹き飛ばす。
一瞬で打ち上げられた湖の水は、千切れるように水塊から水滴よりも微細になり、夜空に散った。
叩きつけられた衝撃に、森は葉を千切られ枝をもがれ身もだえする。
風は嵐のように荒れ狂い、森を渡り破壊を知らせる。
破壊の饗宴に終わりが訪れた。
湖上では爆発で出来た空白に大気が流れ込み、轟音をあげ渦を巻いている。
爆発で外へと圧縮された大気は水蒸気となり、雲を生み雨を呼ぶ。
にわか雨は風に巻かれながらも湖へと降り、失われた分を補填しようとする。
動く者は無く、ただ、弱い雨が降る。
しかし、僅かな時間で雨は止み、風に雲が割れ、月が覗く。
森に静寂が戻ってきた。
湖から少し離れた所。
森の中にある一際背の高い木の上に、二つの影があった。
「終わったみたい?」
「やれやれ、ようやく静かになったか」
「最後の すごかったねー」
「そうだな。 さて。 あれだけの激突だ、双方無事では済むまいて」
「いいじゃん ほうっておきなよ あんなの」
「そうは言うがな。 あれでも片方は人間だ」
「まったく・・・」
「それに、ここで恩を売っておけば、後々役に立つかもしれん」
「・・・説得力って言葉をしらないとは思わなかった」
「何の事だ」
「そわそわしすぎ 尻尾なくてもわかるって」
「むう」
「いいよ いってきなよ わたしは帰って寝るから」
「そうか、すまない」
「簡単にあやまらないの」
「むう」
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瞼の向うが明るい。朝か。朝なのか。朝だろう。
朝という単語に、意識が少しずつ浮かび上がってくる感覚。睡眠と覚醒の間にある、まどろみのひと時。
自分のベッドとは違う寝心地と余所の布団の匂い。 以前の泊まった霊夢の所の布団の感触に似ている。
昨日は神社で宴会だったかしら、たしかに身体はすこぶるだるいけど。と、布団から来る連想に納得しかかったが、薄目を開けて見える部屋は、神社の客間ではない。
「ここは・・・?」
未だ寝たままの意識は、状況を分析しようとしない。
のそり、と緩慢な動作でアリスは体を起こす。そしてまだ開ききらない眼で見渡す。
さして広くない畳の和室・・・・・・やはり知らない部屋だ。 だが、どことなく見覚えが。それもつい最近・・・・・・
考え込む左手側に気配を感じ、何の気なしにそちらに目を向けると
魔理沙の寝顔があった。
その事実が網膜から脳に到達した瞬間。アリスの脳は瞬時に覚醒した。
(なぜ? なに? なんで!? なんで魔理沙が私の隣で寝てるの!?)
でかした! という声と い、いや拙者はそのような事は… という声が意識の左右から聞こえる。
(ふふふ、そんな事言って。実は気が付いているんじゃなくって?)
沸騰どころか昇華しそうな意識の後から、新たな声が聞こえる。
(あんた誰よ! それにここどこよ!?)
跳び上がり、即座に振り向き着地。そこには金髪碧眼で人形のように精緻な顔立ちの、可愛らしい少女が居た。 自分によく似ている。
(私は貴方。寂しがり屋の人形遣い。 ここは二人の失楽園かしらね?)
ワインレッドのワンピースの美少女は、さらりと、しかし纏わり付くような口調で告げた。
(な!? さ、寂しいは余計よ! それになんで見覚えのない浴衣を二人揃って着てんのよ!)
意識の中の自分にまで寂しい呼ばわりされ、思わず噛み付く。
(取り乱している割に目ざといのね、さすがは私。 でも、昨日の夜の事、もう忘れちゃったのかしらぁ? あんなに激しかったのに)
変に冷めたリアクションから一転、己が身を抱きしめクネクネしだすもう一人の自分。
(は、は、激し・・・っ!?)
告げられた言葉に理解すら放棄し、ただ、内容に激しく動揺する。
(二人ともあーんなに息を切らせて、最後なんかもう、気絶しちゃうくらいだったのにぃ)
陶然とした眼差しであらぬ方向を見つめ、熱い吐息を洩らす。
(んな――っ!?)
寝ていたアリスの意識は、起き上がりざま拳を突き上げて上昇していき、そのまま雲の上でコインを回収し始めた。
「起きたか」
戸口から声がかけられると、軽快な跳躍を繰り返しコインを回収していたアリスの意識が、天より下り顕界に帰還した。
虚空を見つめていたアリスの瞳に光が戻り、声のした方を向く。
そこには割烹着に三角頭巾の慧音が居た。
「どうだ、具合は?」
「・・・・・・もう少しで1UPするところだったわ・・・・・・」
「大丈夫か? 頭を打った様子は無かったのだが」
「ええ、もう大丈夫よ」
ちっとも大丈夫ではなかったのだが、先ほどの脳内の痴態を露ほども匂わせず言う。伊達に都会派を名乗っていない。
「ここは・・・貴方の所なのね?」
正しく覚醒し始めた頭は、状況を理解し、アリスに理知的な行動を取らせてくれる。なるほど見回してみれば、先日通された居間と同質の内装だ。 古く、そして無駄なものがない。
「でも、どうして?」
「どうしたもこうしたもあるか。湖を吹き飛ばし、仲良く気絶していたお前達を拾い介抱したのは私だ。命の恩人に少しは感謝しろ」
恩着せがましい台詞を吐き、どうだとばかりに胸を反らす慧音。
豊かな曲線が強調され、美しい稜線を描く。
「・・・・・・」
反応がない。 妙だと思い目を向けると、人形遣いは呆然としていた。
「ど、どうした」
「あ・・・いや。貴方・・・その台詞、死ぬほど似合ってないわよ?」
珍しいものを見た。と、その表情が言外に語っている。
言われた慧音は、むう、と唸り渋面になる。慣れないことはするものではない、と言う事か。
・・・練習までしたのに。と、内心でいじける。
「そ、そんなことより・・・! なんで私とコイツが同じ布団なのよ・・・!?」
隣のコイツを起こさないように、小声で怒鳴るという器用な芸を披露しつつ、指差しする。
詰め寄られた慧音はしかし、
「すまんな、うちは滅多な事では客が無いから布団に予備はないのだ」
しれっと返してきた。
「・・・」
その割には。 当然のように隣で眠り続ける魔理沙を半睨みで、頭の片隅の違和感を咀嚼する。
二人並んで寝られる布団? 一人で寝るには大きいだろう? 疑念が溢れ視線に出る。
「・・・私は寝相が悪いのでな」
疑問を口にしていないのだが、察した慧音は先回りしてきた。
おおよそ、そうは見えないのだが、人(?)は見かけによらないのだろうか。
まあどうでもいいけど、と布団から出ようとした時、アリスは己の指に何かが絡んでいるのに気が付いた。
「? これ・・・」
掲げた右手。そこには長い長い、腕を上げてもなお端の見えない、絹糸のような白い髪の毛が。
無言で見上げ、そのままゆっくり立ち上がると、足元にようやく端が見えた。
隣に視線を向けると笑顔の慧音がこちらを見ていた。
よく見ると息を止めている。
二者の間に沈黙が生まれ、魔理沙の寝息が微かに聞こえる。
「ねえ」
かけられた声に押されるように、慧音は自然な動作で視線を逸らした。
「食事の用意があるが」
数瞬の後、何事も無かったように切り出す慧音。
「・・・いただくわ」
追求するだけ野暮だ、と思っていたので、素直に提案を受ける。
「風呂も沸かし直すから先に入っておくといい。手当ての際一応ぬぐったがひどい有様だったぞ」
「ここはいつから宿屋になったの?」
「普段客など来ないのでな。正直少し楽しい」
根拠無く朝だと思っていたが、案内された廊下を浴室へと歩きながら日差しの角度を見ると、どうやら昼近い時間のようだった。
脱衣所で浴衣を脱いでみてびっくりした。
そこかしこに包帯が巻かれている。
これだけされても気付かないで寝ていたのか。 ああ、こんなところにまで包帯が。 そもそも下着が。
脱衣所で一人赤面していたが、気を取り直して、どんな具合かと腕の包帯を解いてみる。
乾いた塗り薬ごと包帯がはがれると、下に軽度の火傷のような傷が出てきた。
「まあ、この程度ならすぐ治りそうね」
少し引き攣れる感じはあるが、術に頼るほどではないようだ。問題なさそうなので他も解いてしまう。
全ての包帯を解き一糸纏わぬ姿となったアリスは、
「朝風呂か・・・悪くないわね」
呟くと浴室へと突入した。
玄米ご飯、焼いた川魚、茄子の味噌汁、玉子焼き、ほうれん草のおひたし。胡瓜の漬物。
風呂上りのアリスを待っていたのはそんな顔ぶれだった。
合掌。
「「いただきます」」
双方、食事中の談話を楽しむ余裕くらいは持ち合わせているが、元来口数の多い方ではないアリスと、食事中会話をすることを良しとしない慧音だ。 特に会話もないまま、黙々と食事が進む。
箸や器が立てる音だけで、料理は二人の胃の中に消えていった。
礼。
「「ごちそうさまでした」」
競ったわけでも計ったわけでもないが、ほぼ同時に食べ終わった。
食後。
今度は、安物だという断りつきで茶が出てきた。
なんとなく魔理沙待ちの状況で、他愛も無い会話に花を咲かせる。
「そうそう、訊こうと思ってたんだけど、あの薬って?」
「ああ、知り合いに薬を作るのが趣味の奴が居てな」
どことなく複雑な表情をして慧音は続ける、
「前に傷に効くといって持ってきたのだが、あまり使う宛てもないのでな。仕舞い込んであったのを思い出した、というわけだ」
効き目は折り紙つきだぞ。と、軟膏の入った器を見せる。
ふうん、と生返事をするアリス。
「どうだ。少しは何か分かったのか」
茶を入れ直しながら訊いて来た。
「どうなのかしらね・・・」
目を伏せてお茶を一口。
「そうか」
答えを求めるでもなく、慧音も茶を啜る。
「でも、まあ」
「?」
「久しぶりに、ほんとうに疲れたわ」
気だるそうなアリスは、力の抜けた柔らかい笑みを浮かべた。
結局、魔理沙が目を覚ましたのは夕方過ぎで、そのままもう一泊することになったが、なぜか布団はもう一組出てきた。
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朝。一日の始まりの時間である。
朝靄の漂う森の中、霧雨邸の前には大小の人影があった。
「さあ、覚悟はいいかしら?」
「おう。共にゆこうぞ戦友よ」
作業用のツナギ姿のアリスと、普段どおりの黒装束の魔理沙が、玄関前でがっしりと腕を組む。
敵は強大無比だが、力を合わせ諦めなければ、きっと勝利の女神は微笑むはず。
もしも力尽きて、闘志の刃が砕けても、私達は二度と戻らない。共に荷物の海に散ろう。
手を取り誓い合う。
「ファイトー!」「おーっ!」
後に整列していた人形(清掃要員として特化している、魔理沙宅専属部隊だ)が、ビシッと敬礼する。
「状況、開始!」
戦端が開かれた。
物置9:居間1くらいの空間をアリスと魔理沙がうごめき、人形達が天井までの狭いスペースを飛び荷物をかき出して行く。
とりあえず山にして、優先度の低い物をふるいにかけていく。定番の作業だ。
掃除はその後でなければ始めることすら出来ない。とにかく荷物が多すぎる。
「これはー?」「要るー」
「これはー?」「要るー」
「ちょっとは捨てなさいよ・・・って、これ私の本じゃないの!」
「要るー」「こらー!」
床が見えてきたあたりで、小休止を入れることにした。
座る場所を確保できただけなのに、既に日が高くなっている。
「あんまり無理しなくていいわよ? 病み上がりみたいなものなんだし」
「大丈夫だ、今回はミツユビオニトカゲの尻尾を食べておいたからな」
「あら。レアね」
「ウェルダンだったが」
「いちいち死にかけてちゃ、命がいくつあってもたりないでしょうに」
随分余裕あるじゃない、と、つい本音が出る。
「人を半殺しにしたヤツの台詞とは思えない心遣いだ」
「う。でも、その辺どうなのよ?」
「身体の強化とか延命の研究のことか?」
急に具体的な話が出てきた。
アリスは動揺を隠すために作業を続ける振りをする。
「まぁ、強くありたいというのはあるかもな。でも、簡単に手に入るものでもないし。 丹の精製も含めてその辺の研究も面白そうだ」
「余裕なのね」
すぐ死ぬのに、とは言えない。が、言外にある不信を嗅ぎつけたか、
「そうだな、人間でやっていけるうちは辞める気ないな。 生きて、生きて、生きて、人間に飽きたら他のになってみるのもいいかもな」
「なによそれ」
「魔女をやっていくんだ、普通の寿命ごときで停められてたまるか。 私は【普通の魔法使い】だぜ?」
それは。
アリスは何も言えず、ただ魔理沙の顔を見つめることしか出来ない。
「まだ先の事だ。いずれ自分で決めていくさ」
「はいはい」
呆れを装い、作業に戻ろうとすると
「それに・・・な」
言い淀む言葉が追ってきた。
「? なによ? まだあるの?」
らしくない歯切れの悪さに、顔だけ振り向くと、
「好きな奴と一緒に居る為の努力を、辛いとか言い出したらおしまいじゃないか・・・」
ごにょごにょと口ごもり、赤い顔でチラリとこちらを見る。
もし魔理沙の努力に「人妖と共に歩む為」という項目が含まれるならどうだ?
そしてその人妖とは。
「―――――!!」
アリスは絶句し、思わず手にしていた拳大の何かを強く握ってしまう。
カチリ、と小さな、錠前の開くような音がしたかと思うと、それは勢いよく青白い炎を吹きだした。
「熱っ!? ちょ なによこれ取れないじゃない!?」
「あー、それか。こないだ使った残り、どこ行ったかと思っていたがそんな所にあったのか、ありがとな」
こちらの様子に気が付いた魔理沙は、説明を始める
「で、それな、投げて使う代わりにくっつくと爆発までとれないぜ?」
「なんでこんな所にあるのよ!い、い、一箇所にまとめておきなさいよ!」
手を振りながら叫ぶ。 整頓できないからこそ、この状況なのだが。
「一度に4つしか持てなくてな。あの時持ち出せなかったんだよ。ちなみにあと3秒だ」
「なによそれーー!?」
直後、閃光と撃音が生まれた。
実験中のミスで、ときたま魔法の暴発するこの家は、紅魔館地下階を参考にした強化魔法が施されている。
中身はその限りではないが。
「忘れてたわ。この居間には爆発物が普通に転がってるのを・・・!」
掌の上の爆発に、魔弾を撃ち相殺したアリスは、うんざりと納得する。
「低コストで大パワーの代償だぜ」
埋まったらしい魔理沙の声が、壁寄りのガラクタの山から聞こえた。
他の危険物に誘爆しなかっただけでも、助かったと言わざるを得まい。
なんなのかしら。折角いい雰囲気だったのに台無し。あ、ちょっと泣きそう。
マジックグレネードの爆発は邸内全域でガラクタの崩落を引き起こし、霧雨邸では定例会の開催は不可能という結論に至った。
「・・・・・・・・・!!」
温泉の魔力に抗えず、午前も早いうちに来た日陰の少女を待っていたのは、ドアも閉められない有様の霧雨邸であった。
惨状を目の当たりにした図書館の魔女は、自分の恋人とも言える本達の受けた仕打ちによろめき、
「パチュリー? ほら見なさい、気絶したわよ」
「長旅の疲れか、相変わらずいろいろ足りてないようだな」
気絶した主に膝枕をし、めそめそと泣く司書小悪魔。
「断固回収!」と書かれたのぼりが秋風に虚しく靡く。
気絶から回復したパチュリーの第一声は、仕置きの決定を告げる物であり、二人は紙のように白くなって恐怖したという。
「それで? 何故に私の所か」
突如現れた妖しい3人組の前で腕組み、慧音は尋ねる。
「この間のお礼も兼ねてね」「知識人がきてやったぞ」「・・・あなた、罪の自覚ないのね」
ずかずかと上がり込む魔理沙。
日差しが辛いと、上がり口にへたり込むパチュリー。
そこに遠慮は欠片もなかった。
「こんな狭い所に来ることもあるまっ・・・て、おい! 勝手に入るな!」
説明する振りをして慧音を足止めしていたアリスは、魔理沙の突入を確認して見えない角度で微笑む。 これで橋頭堡は確保した、と。
ごそごそ「おー 昔の地図か?随分細かいなー」
「それは災害対策で・・・」
「・・・昔の紅魔館の事とかあるかしら?」はらり
「あそこは昔から極上の危険区域だからな、結構昔から記録しているぞ」
「古い人形の記録とかあったりする?」きょろきょろ
「ヒトガタというものは古来、人の暮らしと結びついている物で・・・って、そうではなくてだな!」
同じタイミングで振り向く魔女3人。くるりと振り向き唱和する。
「「「さぁっすが 歴史の守護者~」」」
「く。 こうまで堂々とされると、かえってすがすがしいな。 どうせ駄目だと言っても聞くまい」
苦々しい表情に、若干の照れを滲ませた慧音は、諦めのため息をつく。
「ほら、褒められたわよ?」「・・・面の皮の厚さがね」「やったなアリス」
かしましい事この上なかった。
「ただでとは言うつもりは無いわ、上海、蓬莱。 荷物はむこうね」
「当然だ」
平穏な午後を邪魔されたのだ。
憮然としつつ庭先に視線を向けると、二連の箒が荷物を提げて浮いており、括り付けられた荷物に人形達が群がり搬入しようとしている。
「おー、お宝だぜー」「・・・もっていこうかしら」
奥から略奪者どもの声が聞こえるので急行すると、書斎は既に蹂躙されていた。
魔理沙は手当たり次第に本を開き、巻物を解いていく。 恐ろしい速さで目を通していく。
読んでいるのか、ただ目星をつけているのか分からないが、凄まじい集中力が伝わってくる。
その様子に固まっていると、巻物を手にパチュリーが寄ってきた。
「・・・これ全部、あなたが?」
「ん? ああ。 いちいち歴史を書き残すのは面倒だし、全て記憶してはいるのだが、よく使う知識や広めるべき物などは書き出して扱い易くしている物もあるな」
ふむ、と、絵巻物を紐解き見せる。
「地図などは口伝では伝えにくかろう?」
「・・・貴方に魔理沙の部屋の歴史を食べてもらって、せめて爆発前に戻せないかしら?」
恐ろしく身勝手な提案が出てきた。
「はっはっは。 先生、好き嫌いは無いが、闇鍋は遠慮するぞ? ・・・・・・それも飛び切りの闇、私はまだ死ぬわけにはいかん」
「失礼な、人の家を何だと思っている」
「まぁ、荒らされたお礼に、荒らし返しに行ってやるのもやぶさかではないが、これでも忙しい身だ、またの機会にしておくさ」
「・・・片付けば温泉宿なんだけどね」
なんのかんの言いつつ追い出そうとしないあたり、慧音も満更でもないのだろう。
中の様子を見やりながら、アリスは思う。
妖怪たちの中で普通に、身勝手に振舞う魔理沙。かき回し、惹きつけ、そして置き去りにしてしまう。
人間として生を全うするのか、その先に踏み込むのか。いずれにせよ、それはまだまだ先のことなのだろう。
しかし魔理沙は自分で決めると言った。
「引き分け・・・か」
慧音はそう言った。
「並べたのかしら」
しかし判っている。例え並んだとしても、それは今だけの事。
初めて負けたあの日の事が忘れられないのは、屈辱とか、そういった感情だけではないことに、アリスは気付いた。
鮮烈に記憶に残っているのは、初めて明確な目標が出来た瞬間でもあったからだ。
要は一目惚れのようなものか。
巻物を手に、慧音から逃れようとしている様子が見える。
この普通の魔法使いは、すぐにでもこちらを置いて先へ行ってしまうに決まっている。
捕まえられない?
追い越せない?
面白い。星は手の届かないところにあるべきだ。
「おーい アリスー」
魔理沙が呼んでいる。何か見つけたのだろうか。
待ってくれとは言わない。 悩んでいる暇なんて無い。
だからアリスは答える。
「ええ。 今、行くわ」
-終-
バトルシーンにも勢いがあって、物語にぐいぐい引き込まれました。
この作品の慧音先生好きだなぁ……いい味が出てます。
バトルシーンも熱い。人形の健気さが愛おしいです。
弾幕の華々しさも、魔理沙とアリスの口上も、高速で夜空を駆け巡る速さも
どれもみんな素晴らしい出来でした。
次回作にも超期待です!
とても面白かったです。
最後にパッチュさんはとてもこわいひとだとおもいました、まる
プラズマグレネード吹いた。
川上某氏を彷彿とさせるような戦闘描写もお見事でした。
欲を言えば……もう少しパチュリーの出番が欲しかったかなと。
あと、温泉にうきうきしてるパチェ萌え。
良い作品、御馳走様でした
多分蓬莱人や吸血鬼は目じゃないと思います。
多分博霊ですら一瞬にして屠る恐怖を持っていると思います。
多分私はパチュが好きです。
でも、アリスさんのほうがもっと好きです。
良い物をよまさせていただきました。
コイン収集なアリスも「断固回収!」なパチュリーも割烹着姿のけーね先生も素敵です。
生活感あるのも好き。堪能いたしました~。
ヘイロゥか
ヘイロゥですね
ともあれ大いに燃えました。ご馳走さま。
小ネタもさることながら、芯の通った展開を楽しませて貰いました。
本編は弾幕、戦闘描写合わせてすばらしいと思います。
……ていうか、これで初作品てホントですか? あくまで「SSは」という前提を信じたいところです。
あと、「もしも力尽きて、闘志の刃が砕けても」に3次α噴いた。
ふーりーむーくなー、涙をー見ーせーるーなー♪
楽しみ満載のお話に、乾杯。
次の話を読む時にも、殺戮歯車と慧音先生が欲しくなりました。では
小ネタが分かりにくい。
川上臭がする。
パチェの出番が少ない。
やってくれた喃。
・・・・・・二日放置していて開いて見たら目玉が出ました。
こんにちはこんばんは。
投稿寸前まで、好き勝手やった要素が受け入れられないのではないかと、心配していましたが、皆さんの心の広さと東方の間口の広さに救われました。
現状に総括してレスします。
SSを含め書き上げるのは初めてです、いやホントに。
キャラ達に私が言いたかった事を言う為に動いて貰ったらこうなった、という感じでしょうか。
「キャラが作者の意図を離れて勝手に話を進める」といいます。
この話は、私の脳の中の連中が好き勝手に暴れた結果でしかありません。
むしろマグレの産物。
グレネードは、ご指摘の通り「キングオブFPS」のHALOからです。
途中までアリスの人形の中に「不屈の軍曹人形」が居ました。
大掃除前の口上は、あの位の覚悟が必要かな、と。
アリスも苦いのはご想像にお任せします。
ちなみに、「仕舞い込んだ」はずの薬がきちんと治療に使われているのは、肝試しのあと「治療プレイ」であの二人がした為です。
あ、慧音先生。 なんですか今日は満月ではないd
真面目な話、キャラが生きているなぁと。
弾幕シーン描写は私も川上氏を思い出しました。
良いものを読ませていただきました。マリアリ!
若葉マークの新参者に過分な評価、誠にありがとうございます。
冒頭のシーンの文体の違いは、慧音を追う誰でもない視点で戦闘を見ているので主語の位置づけが変になっています。
「妹紅ー!」の後にサブタイトルが出るようなそんな感じ。
ちなみに魔理沙の蹴りはアリスを轢かない為でもありますが当人はいまいち意識してやっていません。
戦闘描写は川上作品の影響がモロに出ています。
だって6上下7と続けて読んでた時期だし・・・
勝敗が分かっている戦いで過程を見せる、そんな感じ。
ラストの押し合いは、
「軌道を逸らし易いブレイジングを真っ直ぐぶつける為の小細工」と
「最強の小手先の技で力押しする方法とそこに持っていく組立て」の
勝負です。
あと皆さんに妙に好評なパチュリーですが、、、
「切れパチェ」ってそんなに珍しいものだったのか・・・
で、でも、普段苛められてるのが切れるとシャレにならなかったり、とか、そんな感じで・・・駄目?
イメージは
「ランプの明かりで本棚の向こうに影だけ見えるパチェ、口が耳元まで裂けているかのような笑顔のシルエット」
だって悪魔の館の住人だし。
うう、蛇足だ。
キャラの関係も私の好みのベストでオイシイ。
文章も欠けた所も余分な所も無くお見事でした。
前回では50点でしたが今回は100点を収めさせてください。
怒ると怖いパチェと仲の良い魔女二人と苦労人候補の里の守り人が好きです。
他の作家さんには、見られない「濃厚な味」に加え、じっくりと読み直すことで更に味が濃くなっていく 久方ぶりに堪能させて頂きました。
~三人の魔女と歴史の守人のドラマ~
良い作品に巡り合わせて頂き、ありがとうございました。
魔理沙の部屋にはカラカラに乾いたメタセコイアの葉や使用済みの帆布の束があったりするに違いない。
ご馳走様、美味でした。
小悪魔かわいそうだけどかわええよ