Coolier - 新生・東方創想話

C.Y.

2008/12/25 03:01:44
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 それは吸い込まれそうな程藍(あお)い空の朝のこと。
「藍様、お早う御座います――あれ?」
 橙はいつものように、八雲藍に朝の挨拶をしに台所へ向かった。しかしそこに主の姿はなく、作りかけの朝食だけが残されていた。
「藍様ー? らーんーさーまー?」
 橙は藍を探しにマヨヒガ中を歩き回った。しかし滅多なことでは辿り着けないこの場所は、建物自体も滅多なことでは目的地に辿り着くことはない。彼女は主の名前を繰り返し呼びながら宛てもなく彷徨うしかなかった。
 その時である。彼女は朝食の味噌汁のものらしき香りと、ふかふかの布団よりも安心できる匂いを嗅ぎ取った。藍の匂いだ。
「藍様、ここにいらっしゃるんですか?」
 匂いがした部屋の襖を何の抵抗もなく開ける橙。開けた視界の先には九尾の妖狐の後ろ姿が見え――
「――橙ッ!?」
 藍は橙が襖を開けきる前に立ち上がり、彼女を押し戻すようにしながら部屋を出て襖を閉めてしまった。その表情は困惑とも恐怖とも取れる程青ざめている。
「藍様、どうなさったんですか!?」
「――」
 藍は何も言わず、橙を隣の部屋へ連れて行く。その途中、橙は先程の部屋が八雲紫の寝室であることに気付いた。
 紫に何かあったのか、彼女がそう思考を巡らせる前に藍の口が開いた。
「よく聞け、橙。紫様が――亡くなられた」
「……嘘ッ!? 藍様おっしゃってましたよね、紫様は自分の生死の境界すら操ることが出来る、絶対に亡くなったりしないって!」
 橙の言葉に藍は首を横に振ることで答えた。
「ごめんよ橙、私は本当は知っていたんだ。紫様の眠りが長いのは他の生き物と同じ、寿命が近いことが理由だと。それでも紫様はまだ亡くなられたりしないと思っていた。いや――思いたかった!」
 その時藍の身体がふらりと揺れ、倒れそうになった。橙はそれを慌てて押さえようと手を伸ばし――異変に気付く。
「ら、ん――さま? これは……」
 確かにそこには藍の『姿』がある。しかし橙が押さえたのは彼女の『姿』ではなく、それをすり抜けた先の毛皮に包まれた小さな身体。
「紫様亡き今、私に施された式も力を失う。――やがて私は消滅するだろう。そして次はお前も――」
「そんな、そんなの有り得ません! だって藍様は普通の妖怪よりも強い力を持って――」
「だが私達式神は完全な妖怪ではない。主が組んだ式と、媒介となる肉体によって作られた妖怪に近い存在でしかないんだ。主が亡くなれば施された式は失われ、ただの獣の身体とそれに対して強過ぎる霊力だけが残る。それは欠片一つ残さずに肉体を焼き尽くすだろう」
 藍は死期が迫っているというのに至極冷静だった。いや、橙の前だから平静を装っているだけかもしれない。
 橙は恐怖のあまり、幻に包まれた獣の身体を強く抱き締めて泣きじゃくる。
「イヤ! 藍様、死んじゃイヤ!」
「橙……」
 藍の次は自分が死ぬというのに、己の身が滅びる恐怖よりも藍の死を悲しみ涙を流す。藍はそんな式の優しさに、抑えていた涙腺を僅かに緩ませた。
「橙、お前は優しい子だな……だが、私のために涙を流すのはやめておくれ」
「ぐ、ぐすっ……」
 橙は身体を離すと必死に涙を堪えた。しかし目以外から流れ出す体液は抑え切れないようで、泣くのをやめたとは言えない。そんな不器用ながらも健気な姿に、藍の幻は「いい子だ」と笑顔を向けた。
「いいか橙。私はもう助からない、だがお前はまだ助かる。紫様が私に『死期を悟ったとき、施してあげる』と話していた秘術をお前に施す。『生と妖の境界』――発動する者の命を生贄に、生命を妖怪に変えて自らの力を継承する」
「らん――さま……」
「全てが失われる前に、お前に私の全てを委ねる。紫様の分も、私の分も――生きてくれ、橙」
 その時、幻が最期の力を受け実体化する。風前の灯となった藍の命の、最期にして最大の炎が燃える。
「『生と妖の境界』!」
 藍の身体が光を放ち、周囲を白の世界に変えていく。全てが見えない程に、何もなくなりそうな程に白く。藍(あお)い空さえ、色が失われていく程に白く。
「お前の主人になれてよかった。強く優しく生きろ、橙――」
「らんさまあああああああ!」
 光が止んだ後、橙が気付くとそこは森の中だった。紫が逝ったことでマヨヒガすら存在を失ったのだろう。真に妖怪となった黒猫は、目の前に残された1本の狐の尻尾を抱き締め、泣いた。

「で、私のところに来たと」
 博麗霊夢は珍客の話を聞き終えると、麦茶で喉を潤した後に首をかしげた。
「にわかに信じられないわ。紫が死ぬなんて」
「ぐずっ……本当なんだもん――紫様も藍様も……」
「確かに貴女の気配は以前とは違うわ。もう式神じゃない、立派な妖怪の力を感じる。容姿まで変わっていたら、泣きついてくる前に退治してしまうところだったわ」
 橙は確かに妖怪になっていた。しかしそれだけでは霊夢を信用させるには足りなかった。
 しかし、橙よりも珍しい客が来たことにより、霊夢は彼女の言葉を信用せざるを得なくなる。
「博麗霊夢! 貴女という人はまたも職務怠慢を!」
 四季映姫・ヤマザナドゥは境内に入ってくるなり、大声を上げながら霊夢の前に走ってきた。
「あれ、閻魔様じゃない? っていうか、何よ職務怠慢って。私は何もサボったりしてないわよ。小町と一緒にしないで」
「博麗大結界の力が少しずつ弱まっているんだぞ! 貴女がしっかりしているなら弱まるはずはない!」
「――結界が、弱まった!? じゃあやっぱり、紫は!」
 確かに博麗大結界を管理するのは博麗家の仕事である。だが、霊夢には監視することは出来ても結界を維持したり張り直すような力はない。だから彼女の知らないところで、紫がその役目を代行していたのだ。
 紫亡き今、結界を維持出来る者はいない。そのせいで少しずつ結界が緩み始めている。結界の崩壊は幻想郷と外の世界との連結を意味する。そして遥か昔に作られた人と妖の境界が崩れ、バランスはなくなり――世界は崩壊する。
「――紫に言われてた通り、巫女修行ちゃんとやっておくべきだった……」
「何だ? 私にもわかるように話せ。八雲紫がどうしたのだ」
「……死んだのよ。結界が弱まったのはそのせい」
「ば、馬鹿な!? あいつの寿命はまだ先のはず! 死人台帳にも名前は――ッ!」
 映姫は持ち歩いている死人台帳をめくり、今日の死人が書かれているページを見て息を呑んだ。あったのだ、『八雲紫』の名が。
「すぐ彼岸に帰らなければッ!」
 映姫は踵を返し、彼岸塚へ急ぎ飛び立っていった。
 霊夢はこれまでにない緊迫した状況に困惑するが、ある事を思い起こし橙の前に立つ。
「貴女、藍の力を継承したのね?」
「……はい」
「――お願い。もう貴女にしか頼れない。私も今日から修行して、ちゃんとフォロー出来るようになる。それまで、貴女が結界を――幻想郷を、守って」
「そんな、無理です! 私の力じゃ……」
 確かに橙の力では無理がある。藍の力――といっても、紫の死後に残っていた力なので本来の強さはない――が受け継がれているため、霊力の強さだけで判断するならどちらかといえば可能だろう。しかし橙は陰陽を操る能力を訓練していない。結界は愚か、簡単な式すら組むことが出来ない。
 それでも霊夢は橙に頼るしかなかった。弱まった結界を修復することは出来なくてもいい、せめて維持することが出来ればいつか自分で結界を張り直せる。
「藍様! 助けてください! 藍さまぁッ!」
「――今は死人に縋っている場合じゃないのよ!」
 霊夢が手を振り上げた、刹那。
「はーぉう。霊夢、遊びに来たよ」
「す、萃香……」
 空気を読んだのかわからないが、彼女の横には伊吹萃香が立っていた。この切迫した空気の中で、酒の臭いを漂わせにやけた顔をしている。
「あれ? 紫のトコの黒猫じゃん。べそかいてどうしたのさ? ははーん、霊夢……見損なったよ。小さな子いじめて」
「人間いじめてるような貴女に言われたかないんだけど」
「いじめてないよ。力比べしてるだけ」
「圧倒的な力の差がある中での力比べは、いじめっていうのよ」
 萃香は霊夢の鋭いツッコミを受けてもへらへらと笑い、何も考えていないように見える。だが、彼女は宴会の時以外では滅多に姿を見せない。
「……マヨヒガの所在が掴めなくなったと思ったら、やっぱり紫は死んでいたか。結界も揺らいで来ている。なのに、霊夢は何をしているの? いや――橙、お前は何をしている」
 泥酔したトロンとした眼差しが、いつの間にか鋭い眼光を放っていた。フラフラとした足取りが、まるで嘘だったようにしっかり大地を踏んでいる。萃香は橙の前に歩み寄ったかと思うと、突然彼女の身体を殴り飛ばした。
「きゃッ!?」
「ちょッ、萃香!?」
 幼い姿に強い力を持つ鬼の少女。しかし、今日はそれだけではなかった。目に強い怒りを宿し、雰囲気すらまるで別人。
「確かにお前は『八雲』の名を受けていない。だが、何のためにお前は力を持っている?」
 立ち上がらない橙にも容赦はなく、火の玉を投げ飛ばして追撃を行う萃香。
「やめなさい、萃香――」
「霊夢、邪魔するなら先に相手をしてあげようか? でも――本気で行くよ?」
 その時霊夢に振り返った少女は『萃香』ではなかった。人間――いや、他の生けるもの全てが恐れる『鬼』。逆らえば命を捕られる『恐怖』そのもの。
 もう彼女を止められるものはいないのかもしれない。
「いつまでそうしている気だ? お前は式神として生まれて何を学んだ? 泣くことか? 怯えることか? 地面に転げて死を待つことか?」

(見てください紫様! 私もついに式を組むことが出来ました!)
(あら、私への奉仕そっちのけで猫の子をたぶらかしていたの? 酷いわ……私なんてもうどうでもいいのね!? よよよよよよ)
(そ、そんな!? 違いますよ、そんなんじゃ――)
(嘘よ。貴女も随分と成長したじゃない、もう私が力を貸さなくても妖怪として充分な力を持っているということね。それで、その子の名前は?)
(はい。私が紫様の力をお借りして『藍』ですから、この子は私の片割れという意味で『橙』にします)
(『橙』――か。これからよろしくね、橙)
『にゃー』
(あ、すみません。まだ言語を話す程発達していなくて……)
(あら、これはこれで可愛いけどね。フフフフフ……)

 橙は立ち上がった。
「私は――弱さを見せるために、生まれたわけじゃない!」
「立ち上がっただけで随分威勢のいいことを言うじゃない。そこまで言うなら、力で私を負かせてみろ!」
 紫と互角に渡り合えた相手だ。勝算などないに等しい。それでも橙は立ち向かった。目の前に訪れた恐怖に。
「鬼符『青鬼赤鬼』!」
「『鬼』を冠するにはお粗末だな。そんな一定の軌道しか描けない攻撃で、我等鬼に敵うか!」
 敵を狙い撃ちするように集中して放つ攻撃は、動き回る相手に効果はない。萃香は弾幕を容易に掻い潜り、橙の死角に素早く入り込む。
「本物の『鬼符』、見せてやる」
「はッ……」
 橙が気付いた頃には、その身体を掴まれていた。
 今の萃香に手加減という文字はない。彼女はその事を忘れていた。
「鬼符『大江山悉皆殺し』」
 掴んだ身体を持ち上げて地面に叩きつける。そしてまた持ち上げ、叩きつける。
「うぉぉぉぉぉ、おりゃぁぁぁぁぁぁあッ!」
 そして高く飛び上がり、これまでの何倍もの勢いで再び叩きつける。萃香最強の投げ技・鬼符『大江山悉皆殺し』。
「これが『鬼』だ」
「ぐ……」
 霊夢達ですら決められたら失神する大技に、橙が耐えられるはずがない。痛みすら遠くに感じる、彼女はそれ程の大ダメージを受けていた。
 萃香はそれでも容赦なく――いや、容赦という以前の問題だ。まるで動物の死体のように、彼女の身体を蹴飛ばす。
「もう終わり? 猫なのに引っ掻くことも出来ない?」

『らんさまー、うわぁーん』
(どうした、橙!? 腕に怪我をしているじゃないか!)
『まいごがいたから、つれてきてあげようとしただけなのに、ひっかいたのー。いたいよー』
(迷子? ――なるほど、お前が警戒なしに手を伸ばしたということは、迷い猫だな?)
『なんで、なんでいっしょなのにかみつくのー。うわぁーん』
(……確かに、お前は猫だ。でも、もうただの猫じゃないんだよ。お前はもう妖怪とほとんど同じなんだから。もしお前が普通の猫で、突然妖怪が手を伸ばしてきたら引っ掻くだろう? それと同じだよ)
『じゃあ、どうすればいいんですか?』
(まず、どんな相手なのかを正確に見ることだ。お前が迷い猫だと思っていても、相手はそう思ってなかったのかもしれない。だから手を伸ばす前に声をかけるんだ。「ここはおうちじゃないよ」って。それでもし「おうちに帰れない」って言われたら、案内してあげればいい)
『あいてをみる?』
(そう。これはどんな事でも基本だぞ。誰かと話すときも、敵と戦う時も)

「――鬼……神!『飛翔毘沙門天』!」
 萃香が至近距離にいる隙を打つ、回転と弾幕の多重攻撃。この距離では結界か霊撃でもない限り攻撃を避けることは出来ない。
「ぐッ!? あのダメージを受けてもまだスペルを使えるの!? ……萃鬼!」
 弾幕を吸引するブラックホールを発生させ、その場から離れる萃香。しかし、正面から迫る弾幕はかき消せても後方に回り込んだ橙の体当たりまでは回避出来ない。
「やぁぁぁぁぁ!」
「うぅッ!?」
 体当たりの直撃を受けた萃香は、数メートルほど地面を転がったがすぐに体勢を立て直す。しかし少しではあるがダメージを受けているのは間違いない。
「『鬼神』だと…… ならば――鬼神『ミッシングパープルパワー』!」
 萃香の身体が神社の何倍もの大きさに巨大化する『ミッシングパープルパワー』。
「捻り潰してやるッ!」
 巨大な鬼の拳が橙を襲う。

(橙!? どうした、誰にやられたんだ!)
『藍様……すみません、変な人間がやってきて……その上『迷い家って物を持ち帰ると幸福になるってヤツ? じゃあ、略奪開始ー。まずは身近な日用品から探さないと』って、家の中を……』
(博霊の巫女、博麗霊夢ね)
(紫様!?)
(勝手に迷い込んた巫女に、橙が運悪く遭遇したみたいね。相手が博麗なら、橙では太刀打ちできるはずがないもの)
『紫様、すみませんでした……』
(いいのよ。でも、許すのは今のうち。貴女にもいつか『八雲』の名を継いで貰うのだから、ずっとやられっ放しではいけないわ)
『紫様……』
(貴女は藍の式、私の式の式なのよ。その貴女が、私や藍と対等になれないはずがない。いつか絶対に強くなれる。そうよね、藍?)
(はい)
『でも、私は強い力を持つのが怖いです……もし、紫様や藍様を傷付けてしまったら』
(ふぁ~あ。何か眠いわ。寝るから、後よろしく)
(え、あの……紫様~。はぁ……。いいか橙、確かに強い力は危険だ。使い方を誤れば自分や周囲を傷付ける。でも、お前は大丈夫さ。お前には優しさがあるし、賢い。強い力を持っても、必ず操れるはずだ。私も紫様に及ばないながら、それなりの力を持っているが自分の力をちゃんと操れているんだぞ。私の式のお前が出来ないはずないだろう?)
『そうなんでしょうか……いえ、そうですね。藍様も優しいから、強いのに怖いって思わないんですね!』
(ハハハハハ、言うようになったな! そんなことを言う子は、おフロの刑だ!)
『えぇ!?』
(どうした? 私が怖くないのにおフロは怖いか?)
『こ、怖くなんかないですよぅ!』
(ハハハハハ! 強くなったな橙。もっと強くなれよ。そしていつか『八雲橙』になるんだぞ!)

「こ、これは……こんなことが!?」
 萃香の拳が捉えたのは橙ではなかった。幾重にも重なった結界――。
「八雲『八重結界』!」
 二重でも四重でもない。藍(あお)でも紫(むらさき)でもない。張り巡らされた壁は陽光に近い赤――橙(だいだい)。
「は、ははははは……ハハハハハハハハ!」
 スペルの効力が消え、元の大きさに戻った萃香は突然笑い始めた。
「す、萃香?」
「ひゃー、負けた負けたぁ。結界出されちゃお手上げだよ。今日は自棄酒かぁ……あれ、瓢箪どこいったんだろ? どこだ~、私の酒ー?」
 先程までの気迫も威圧感もなくなった萃香は、まるでそこに元々いなかったかのように姿を消した。
 霊夢はようやく彼女がここに来た理由を知った。橙を試しに来たのだ。
「まったく、鬼ってのはどうして他人を試したがるのかしら…… 橙、大丈夫?」
 霊夢が橙に歩み寄ると、彼女は結界を解きその場にへたり込んだ。
「紫様、藍様……私も、出来ました。対等になれました……」
「よかったわね。もう貴女は立派な妖怪よ。『八雲橙』」
「はぃ――あれ? 身体が……」

「橙、起きろー。もう朝だぞ」
「――あれ? らん、さま? なぜ?」
「ん? 何がどうかしたのか?」
「……えっと、何でしたっけ?」
「寝ぼけてないですぐ着替えなさい」
 橙は布団の上で何があったのかを思い起こした。しかし、昨日の夕食が秋刀魚だったことくらいしか思い出せなかった。
 何かがひっかかると考えているようだが、それが何かわからない。だが深く考えるより先に、藍を待たせてはならないと思いすぐに着替えて部屋を出た。
「藍様、紫様は?」
「まだお眠りになっているんじゃないか? ほら、朝食を食べ終わったらまた勉強の時間だぞ」
「はーい」
 いつもと変わらない日常が始まった。

「……フフフフフ」
 誰もいなくなった橙の寝室に、紫が座っていた。朝はスキマに入って隠れていたが、夜通し眠っている橙の横にいたのだ。
「今回は私が作り出した『夢』だけど、それでも貴女は夢の中で『八雲』になれた。それは貴女には『八雲』を継ぐ力があるということ」
 紫は橙の枕の下に手を差し入れた。するとそこには誰も見たことのないスペルカードが1枚挟まっていた。
 八雲『八重結界』。
 それは日光を浴びると光の砂となって崩れていった。
「そして夢は現実を映す鏡。私達が死ぬことは作り出された空想だけど、貴女が使った力は空想ではない。貴女が『八雲』を継ぐ時、この力は再び現れるでしょう」
 紫は立ち上がると、スキマを開いた。
「夢は決して無意味ではない。それは見る夢も、願う夢も同じ。意味があるからこそ存在するもの。私が長く眠るのは、夢(かがみ)に映る未来(げんじつ)を見るためなのよ」
 そう言い残すと、スキマを通じて自分の寝室へと戻っていった……。
初投稿になります。初めまして、魔星(ますたー)佐藤という者です。
普段は中・長編が主体で、元々は東方2次創作ではなくオリジナル物を書いていたのですが、一年前に東方にはまり半年程前から東方2次創作を書き始めました。
今回はSSに挑戦するという名目で投稿作品を書いてみました。
八雲家中心で書くのはこれが初めてです。猫耳の新たな刺客が出てきたけど、やはり橙かわいいですよ橙。
内容は……シリアスのくせに最後夢オチかよ、とか自分でも思っていますが。ごらんの有様です。
普段は結構ギャグ多めだと思うので、あまりよく書けてないと思いますが……。
読んでいただけて、感想がいただければ満足です。
何かまた思いついたら書いてみるかもしれません。
それでは、またどこかでお会いしましょう。

※2008年12月25日23時
戴いた感想を元に校正し直しました。
御助言有難う御座いました。今後の活動に役立てたいと思います。
魔星佐藤
[email protected]
http://www.geocities.jp/masterkalsto/
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コメント



0.230簡易評価
10.10名前が無い程度の能力削除
何の脈絡も無い展開に違和感だらけのキャラクター、
作者が話を綺麗に見せようとすればするほど汚いところが見えてきます。
11.10名前が無い程度の能力削除
小学生の書いた物語みたいです。
12.50名前が無い程度の能力削除
話題自体は面白かったです。
ですがちょっと違和感を覚えたのは戦闘シーンでの萃香の言葉や、それ以前の映姫の言葉などです。
どこかセリフじみていて説明口調なので読者が冷めてしまいます。 読者に内容を理解させるという事は大事ですが、やはり物語は読み手を話に引き込み、読み手自身が物語りの中に居るかのような錯覚を覚えさせるのが醍醐味だと思うのです。
例を挙げるなら、
「これが『鬼』だ。そんな弱い力で鬼を語られたら、我等が迷惑なんだよ……思い知ったか!」
とありますが、劇で観客の方を向いて声高に語る台詞のように聞えてしまいます。

「これが『鬼』だ。その程度の力で鬼を語られると迷惑なんだよ!」
実際に萃香が話している相手は観客でなく橙なのでこんな感じの文になると思うんですよね。
それから <これが『鬼』だ> と言う言葉だけで <思い知ったか> と言う萃香の気持ちは読み取れると思います。説明的にならず省ける所は省くのが吉です。
読者を話に引き込むためには出来るだけ自然な、会話のような口調が好ましいです。
上記と同じ冷めてしまうと言う理由により登場人物の名前の読み仮名も余計だったかな、と。
そこは今後変えていったほうが良いと私は感じました。

まぁ私の言う事なんて適当に聞き流してもらっても構いません。
ですが少しでも作者様の役に立てたなら嬉しい限りです。次回作に期待という意味でこの点数。長文御免
13.40名前が無い程度の能力削除
小学生にコレは書けんだろw
でもうーん、周りにいい作品が多いからどうしても霞んじゃう印象。
とりあえず夢とはいえキャラの違和は拭い去れなかったなぁ。
15.30名前が無い程度の能力削除
話が急展開すぎます。
面白いかと問われたら「否」と答えてしまうでしょうね。
夢オチではあるけど、どうして紫様が死んで直ぐに結界の力が弱くなるのか、
そして何故、突然死ぬことになったのか。
藍が橙のために力を使うというのは良かったんだけどね。

霊夢は必要に迫られたら力はつけるでしょうけど、彼女はどんな事柄にも縛られない
無重力の巫女と認識しております。
なので態度がそんなに急変して修行に取り組むことがあるのか?と思う。

話自体はそう悪くはないと思うけど、面白みに欠けてると感じる。
17.80名前が無い程度の能力削除
初めて橙をかっこいいと思った
細かい小説の技術なんて後からいくらでもついてくるから
批評に負けずどんどん書いてほしい
少年少女の成長物語こそ至高である
18.70名前が無い程度の能力削除
展開が速かったですねー
色々合点がゆかないまま話が進んでいった感じです。
霊夢とか大体のキャラに違和感が有りましたが、
個人的には橙と最後の紫はあり、かと!

結構好きな話でした。
19.60名前が無い程度の能力削除
シリアスならみんなのギリギリの表情と、生きていることの重みを書かないと。