Coolier - 新生・東方創想話

Cannibalism

2011/07/14 21:06:45
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今は新月の夜。すっかり辺りは暗くなり、商店の灯りがちらほら見えるぐらいで、あとは視界に乏しい。
此処は人里。妖怪と人間が共存している幻想郷の地。
寺子屋に酒場、賭博まで充実しており、両者にとって何一つ不自由が無い。
強いて言えば、人間よりも妖怪の方が目上の者であるので、人間には少しの縛りがあるのかもしれない。
ただ此処では夜になると屡々、妖怪と人間が共に酒を交わす。
種族の壁を越えて、互いに飲み比べや踊りなどを大いに楽しんでいる。



そんな時、大抵の人間の子供は家でぐっすり寝ているのだが、今日は違った。
まだ幼い男の子が2人と女の子が1人、仲良く地べたに座りながら話をしていた。

「妖怪はあんな感じに俺達と関わってるんだから、別に危険と言われてもピンとこないよな」
「でもジン君。最近妖怪が人間を取って食べる事件があったってパパが言ってたよ」
「あー、それ私もママに聞いた」
「それホントか?」
「うん。パパが言ってたもん。あ、彼処に小さな女の子が歩いてる。こんな時間は危険だよ。ジン君、連れて来て」

男の子が指差した先には、1人の女の子がふよふよと歩いていた。
ジンと呼ばれる男の子は立ち上がって、その女の子を呼びかけに行って連れて来た。

見た目は此処等にいる子供達と変わらず幼く、背も小さい。
髪は金髪に似たような色合いで、赤いリボンを添えている。服は殆どを黒で埋め尽くされており、此処で有名な人形師が扱う人形の様に可愛らしい少女だった。

「こんな遅くじゃ危ないから、俺等と話してようぜ」

少女は黙って頷いた。

「で、レン。さっきの話を詳しく話してくれないか?」
「いいよ。少し不謹慎だけど」

レンと呼ばれた男の子が淡々と語り始めた。
とても古い廃屋で、3人はレンの話に聴き入った。

「酒で酔った男が、夜中に人里を千鳥足で歩いていたんだ。視界もままならないまま歩いて行くと、辺りは何時の間にか森だった。男は悪戯好きな妖精や様々な妖怪が棲む不気味な森でグッタリとその場に横になってしまった。空の見えぬ空を見上げていた。少し時間が経って起きあがったら誰かの気配を感じた。複数の気配。何かに囲まれたような。そこで男が『隠れてないで出て来やがれ!』って叫んだら、既に両手足は無くなっていて、後ろから頭ごと食べられちゃったんだって」

それに女の子が補足をする。

「横になってる時に、呪詛みたいなのが聴こえたんだって」

それにジンが首を傾げる。

「じゅそ、って何だ?」
「俗に言う呪いかな。カニバリズムじゃないのかって言う噂もあるよ」
「カニバリズムって何だ?」

またジンが首を傾げる。

「人間を食べちゃう儀式。複数人だったら儀式かもね」
「怖いな。ソレ。さぞ恐ろしい外見の妖怪だったんだろうな」
「うーん。どうだろう? 妖怪って見かけによらないからね」

ジンはそれらについて深く考えた。
だが、色んな思考を巡らすうちに段々と眠くなってきた。
当たり前である。さすがの大人達もそろそろお開きと言った時間である。
他のみんなも大きな欠伸をし始める。
子供がこんなに遅くまで起きていたら、身体に毒だ。

「そろそろ帰るか」

ジンが皆を促しす。
眠そうな顔で皆の了承を得た。



廃屋の錆びたドアノブを捻って、無人の人里の通りに出た。
4人揃って同じ方向へ歩みを進める。

「レンの所為で今日は眠れそうにないよ」
「私も」
「僕もだよ。君は大丈夫?」

レンがあの女の子に問いかける。
それに対して女の子は首を縦に動かす仕草を見せた。

「君は心が強いな」

それに対しても無表情を保っている。
ジンが異変に気付いたのはその時だった。

「あれ? ここって森?」

3人の周りには空が見えない程に生い茂った木々があった。
前後左右を確認しても同じ景色。全く変わりは無い。
おかしい。確かに真っ直ぐにいつも通りの帰り道を通った筈。

「おかしいわね。こっちは森じゃ無い筈なのに」
「あれ? あの子が居無いよ」

そう言えば何かが足りなかったのだ。何一つ言葉を発しなかった少女が何処かへ居なくなってしまった。
その時、どこからともなく音が聴こえた。

――食べるのかー
――どいつを食べるのかー
――あいつを食べるのかー
――そーなのかー
――そーなのかー
――そーなのかー
――早速食べるのかー

「な、何なんだよコレ!」
「わ、判ら無いわよ!」
「クソッ! レン、どうする!?」

返事は、無かった。
当然である。
レンは2人の近くから既に居なかったのだから。

「レン!? レン!? どこだ!?」
「え? レンが居無い!?」

周りを見渡してもあるのは木のみ。
人なんて全く見えない。
ザワザワと木々が騒ぎ始めた。
四方八方から木霊する自然の猛りが轟く。
また、あの声が2人の耳に届いた。

――何処から食べるのかー
――足が良いのかー
――頭が良いのかー
――皆で分けるのかー
――それが良いのかー
――そーなのかー
――そーなのかー
――そーなのかー
――解体開始なのかー
――ギャャァァァァァァー!!

断末魔が響いた。
あの甲高い声。間違い無くレンのものだった。
森のあちこちで反響し、2人の脳が右に左に揺れる。
その時、レンの言っていた話が脳を過ぎった。
森で呪詛が聴こえたら、食べられる。
ジンは殺される、と悟った。

「カホ、逃げるぞ。俺等まで食べられちまう」
「い、嫌だよ! レン君が! おいてけないよ!」
「じゃあお前も喰われるってか!?」
「そんなのも嫌!!!」
「じゃあ逃げるぞ! 生き残るんだ!」

ジンがカホと呼ばれた女の子の手を無理矢理引っ張る。
後ろを振り返らずに、無我夢中で走る。
辺りに血の臭いがしたが、気にしなかった。
ポタ、とジンの手にカホの涙が落ちた。
続いてまたポタ、と落ちる。
憤り、ジンは振り返ってカホに怒鳴った。

「おい! 泣いてるんじゃない!............って................」

落ちていたのは涙ではなく、カホの血だった。
落ちる先を見ても、カホは居ない。
いや、カホなのかもも知れなかった。
もはや判別が付く状態ではない。
そこには首の無い胴体があるのみだった。
綺麗に千切られた先から大量の血が溢れ出す。
ジンは悲鳴も出ずに後ずさった。

「こ、こんなのって.......こんなのって.......」

ジンは何か丸い物を踏んづけて転んだ。
ぐにゃっとした、気持ち悪い感触。
障害物は人間の頭だった。
両目が抉られ、口から数多の血が逆流している。
多分、カホの頭。

その瞬間、ジンの頭に衝撃が走った。
グリグリと物凄い力で押さえ付けられる。
親指から小指まで均等な力が入っていて、もはや抵抗などと言う術は無かった。
その時、耳元で、誰かが囁いた。

「あなたは食べてもいい人間?」

ジンは辛うじて振り返る事が出来た。
その先に見たものは、赤いリボンと血に塗れた少女の笑みだった。





ぐしゃ。
はじめましてこんにちは。鬱陶目苦です。
初で気分悪くする様な作品で申し訳ありません。
普段のルーミアが書きたくなりまして。
皆さんも呉々もルーミアには気をつけてくださいね。
最後まで読んでくださり、有難うございました。
鬱陶目苦
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コメント



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11.100名前が無い程度の能力削除
これぞルーミア