私、博麗霊夢の一日の活動は境内の掃除に始まり境内の掃除に終わる。
よしこう言っておけばなかなか働き者の巫女さんだと思われるでしょ。
実際のところは掃除で始まり、間にいろいろとあって、最後に掃除をしてしめくくるって感じだけど。
その色々ってのはまあ些細な事よ。人生を楽しむための余裕とでも言えばよいかしら?
で、今はその最後の掃除の真っ最中なわけよ。
でも、この季節に限定すれば、わりと好きな時間。
箒を動かす手をしばし止めて、幻想郷の風景を見渡す。
「綺麗・・・」
夕陽を浴びて一層紅く染めあげられた紅葉色木々や尾根が醸し出す幻想的な情景は、
自分で言うのもなんだが、あまり良い育ちでは無い私にすら四季のある国に生まれた事に感謝させる程の神秘性を感じさせる。
柄にも無く神妙な気分になって、とても優しい気持ちになれてしまう。だから、嫌いじゃない。
ああ、でももうそろそろ、秋も終わって冬になるのよね・・・色々準備しなきゃ。それはいやだわ。
少し前までは鬱陶しいくらいだった気温も随分落ち着き、
夜中は勿論、宵明けの時分もかなり冷え込むようになってきた。
そろそろコタツを出す時期かもしれないけど、どうせ常連連中が占領しにくるのが目に見えている。
それはなんだか悔しいのでむしろ連中がどれだけ我慢できるか出さずに様子を見てみようか。
・・・アホくさ。まあ来週にでも出そう。
ん?
遠くから微かに聞こえる飛行音は・・・ああ、魔理沙だな。
・・・案の定。博麗神社から見渡せるパノラマの一点に黒いシミが浮いた。
そう思ったのも束の間、黒いシミはあっという間に広がり、まるでそのパノラマから飛び出してきたかのように、一瞬で私の目の前まで距離をつめ、土埃を巻き上げながら着地した。そこ掃除したばかりだってのに、相変わらず迷惑なタイミングで来るやつだ。
ん、何か食べ物を持ってきているようね。匂いでわかる。
「よぉ霊夢、鍋しようぜ鍋!」
「また唐突ね。いいけど。」
「よし決まり!それじゃあ準備しようぜ。」
そう言うと断りも無しに家の中に入っていく。
ま、別にいいんだけどね。
「あー、土鍋は流しの上の左から二番目よー!」
「知ってるぜー!」
いや知らないでよ。
最初は魔理沙が一人でせっせと準備を進めていたが、私もお腹が空いてきた事と、手持ち無沙汰だったこともあり、手伝いに回るとすぐに準備が整った。
「具は・・・ハクサイに、ブナシメジに、ネギに豆腐に春菊に大根ね。二人が材料持ち寄れば、十分立派な鍋ができるわね。」
春菊とネギ以外は魔理沙が持ってきたものだったりするけど鍋にぶち込んでしまえば、どれが誰のかなんてわかりゃしないわ。鍋の中は無法地帯なのよ魔理沙。
「そうだろ鍋はいいだろう。ああ、そうだそうだ。いっこ大切な事忘れてたぜ。ほらあれだ、鍋奉行。」
「ええ。あんたの役目でしょ?」
「ああ。それでな、推測だが多分恐らく、その補佐に物凄く役立つ能力を持っているヤツを以前発見したんだ。ちょっと拉致ってくる。」
「行ってらっしゃーい。」
しめしめ。これで先に少しぐらい失敬しちゃえるわね。
「あ、それと私が戻る前に鍋が煮えてもお前は青物以外手つけるなよ。」
・・・青物ってーと、春菊と、ネギと、春菊と、ネギと・・・春菊とネギだけじゃねぇか!
「ねえ魔理沙ぁ、夕暮れ時の境内っていうのも・・・なかなかロマンチックでエキゾチック、だと思わない・・・?」
「じゃ行ってくるぜ!」
「話聞いて!」
懇願の叫びも虚しく、魔理沙は私の話に1mmたりとも耳を傾けることなく自慢の箒に跨って一瞬の内に視界からフェードアウトした。魔理沙のどケチ!
「・・・お化けも出るし最高なのに・・・」
アトラクション料金払えってのよ。
「呼びましたか?」
「うわ!?」
ちょ、なによ誰よ脅かさないでよ・・・って幽々子に妖夢じゃない。
はあ、突然真後ろから幽霊に声掛けられたら巫女だって肝冷やすっての。
「居たの?」
「来たの。」
そりゃそうだけど。
「あー・・・妖夢?ちょっと説明して。」
「いや、幽々子様が、霊夢の家で鍋をやっているから今すぐ行くって言いだして。」
唐突だなおい。ってかなんでわかったのよ、鍋やるって。
「なんでわかったんだって顔ね?簡単。実に単純。答えを聞けば、ああなるほどな~んだって感じよ。妖夢、説明。」
ごくり。まさか、うちの会話が白玉楼に垂れ流しになるような変な術でもかけられてるとか?
「はあ・・・その・・・匂いで。」
ああなるほど、ってかなにそれ。どんだけ離れてると思ってんのよ。いやしかし相手は数字の魔術師八雲藍ですらその無限胃袋の総容量算出には匙を投げたと言われる程の超規格外食欲魔人ユユコ・サイギョージ。あながちハッタリとも言い切れない。まあどうでもいいか。
ともあれ、考え様によってはこれはいい鴨かもしれないわね・・・
── 一方その頃魔法の森・マーガトロイド邸 ──
チクッ スー チクッ スー チクッ スー チクッ・・・
「はぁ・・・」
ああ、暇だわ。
お人形服の洋裁にも飽きちゃったし、なーんか楽しいことはないかしらね・・・
ドンドンッ!ドンドンッ!ドンドンドンドンッ!
やだ、魔理沙だわ!こんな情熱的なノックをするのは魔理沙しかいな
ドガチャ!
「って普通に蹴破らないでよ!」
あんもう魔理沙ったら強引なんだから!
「おう!邪魔するぜアリス。で、私は今すごく急いでるから用だけ簡潔に伝える!一度だけしか言わないからなよく聞け。」
「な、なによ、突然来たと思ったらやぶからぼうに・・・」
用!?私に用!?メモはどこ!?ペンはどこ!?
「今霊夢の所で鍋やってるから、お前も来い!以上!」
あ、あった!・・・え?
「ごめん、もう一度いい?」
「一度しか言わないと言ったはずだぜ。」
「あいかわらず気が短いわね。もっとゆとりをもったらどうなのよ。」
お願い!もう一度だけでいいの!鍋に来いって・・・来いっていったのね?
あれしろ、これしろ、じゃなくて、来い?私を誘ってくれたのね!?
「全く一々癇に障る言い方をするやつだぜ。わかったもう一度だけだからな。」
「はいはい早く言いなさいよ。」
ごめんね!ごめんね!わがまま言って困らせちゃってごめんね!こんなアリスを許して!
「霊夢の家で鍋をしてるからまあ暇だろうし来い。」
魔理沙の発する言葉一字一句逃してなるものかとメモ用紙が摩擦発火しかねない勢いでペンを躍らせる。震える手と超高速ライティングのせいで途中ペン先がメモ用紙からはみ出してお気に入りのフレアスカートの裾を蹂躙したがそんなこと今は気にしていられない。ファイトよアリス!
カリカリカリカリカリカリ!
「あとアリス、一人で来い。他の奴は誘うな。これは警告じゃなく命令だ。取り分減るからな。以上!」
カリカリカリカリカリカッ!
やった!文字通り一字一句逃さなかったわ!パーフェクトよアリス!
┏━━━━━━━━━━━━━┓
┃ MEMO date no. |
┃ 霊夢の家で鍋をしてるから | ま
┃ あ暇だろうし来い。あとア | リ
┃ ス、一人で来い他のやつは ┃ さ
┃ そうなこれは警告じゃなく | 命
┃ 令だ。取り分減るからな |
┗━━━━━━━━━━━━━┛
「よしじゃあ私は行くぜ!あとで博麗神社でな!」
「はいはいわかったわよ。気が向いたらいくわ。」
私が魔理沙の誘いを断るとでも思ってるの!?
「絶対来いよ!」
魔理沙、そんな情熱的な誘い方をしないで!・・・切なくなっちゃうから・・・
「あ、あと一番大事なこと忘れてた!鍋のルールは知ってるな?」
「知ってるわよそのぐらい。」
もちろんわかっているわ!
「よし。じゃあアリス、お前は・・・」
ええ!とびっきりの具を魔理沙のために
「その冷蔵庫持ってこい。」
・・・な、なんですとー!?
「はあ!?あんた自分が何言ってるかわかってる!?」
ま、魔理沙、それはちょっとあんまりよぉ!
「私はいつだって本気だぜ。」
「あんたねぇ、どういう育ちしてきたのよ。」
お願いそれだけは許して魔理沙、あれは今月の食料なの・・・
「イヤならイヤで別にいいんだぜ。ただしその時はもう今後鍋に呼ばん!」
「誰が行くもんですかそんな理不尽な鍋!」
そんなっ!うう・・・魔理沙・・・食料・・・魔理沙・・・食料・・・魔理沙!食料!魔理沙!魔理沙!食料!魔理沙!魔理沙っ!魔理沙っっ!魔理っ沙はぁぁぁぁぁあん!!!
「ふんっ!時間を無駄に過ごしたぜ。」
「本当!最悪な気分になっちゃったわ!」
魔理沙!私、あなたの期待に応えるから・・・絶対に応えるから!
「じゃあなあばよ!」
魔理沙・・・待っていてね!・・・とりあえずまたドア直さなきゃ。
「上海蓬莱!」
「シャハーイ」
「ホラーイ」
「と、いうわけで、今から博麗神社にいくんだけど、その冷蔵庫もっていかないといけないのよ。ちょっとした重労働だから準備手伝って。」
「シャンハーイ」
「ホラーイ」
「うふふふふ。お鍋よお鍋。ねえ上海蓬莱、一つのお鍋をみんなでつつくの。触れ合う箸と箸、心と心。やがて私と魔理沙のお箸は運命に導かれたかの如く触れ合い絡み合い・・・ああ・・・。」
「シャンハーイ」
「ホラーイ」
「これだわ!これしかないわ!よし今日こそ魔理沙のお箸とハートをまるっとキャッチしてやろうじゃないの!どうよ上海蓬莱!」
「テラキモース」
「ワロース」
── 舞台は再び博麗神社へ ──
「というわけなので、突然来てしまって悪かったが私達も是非鍋に参加させていただきたい。」
「んまあいいけど・・・鍋に来たってことは当然手ぶらで来たわけじゃないんでしょ?鍋のルールはご存知よね?」
鍋に参加するなら鍋の充実に貢献する。至極当たり前の一般常識だ。
「ええ勿論。鯛を持参した。刺身にも出来るぐらい新鮮なヤツだ。」
「それは夢のある話ね。」
抱き締めて頬擦りしてやりたいところだがここはぐっと抑えるんだ。安い女と思われてはだめだ。あくまで憮然とした態度を取っていればきっとまだ引き出せる。
「ほらこの通り・・・あれ?あれ?あれれ?」
「なに、どうしたの?」
「いや、その・・・鯛を包んできた風呂敷が・・・」
「その辺に置いたんじゃないの?」
「いやそんなことは・・・そういえば、何時の間にか幽々子様の姿も見えないな・・・」
「・・・ま、まさか!」
ああなんてことだ、しくじった!きっと幽々子が鯛を持ち出したんだ。そんなことになったら、戻ってきた頃には・・・『食べたのか!?』『すいません、つい!』的悲劇が起こっていてもおかしくないってか既に起こっているに違いない!
「ちょっと幽々子、どこいったのよー!妖夢、あんたも探してきなさいよ!」
鯛一つで超必死。安い女と思われたって構うもんか。だって鯛なんて滅多に食べられないもの。
「騒がしい事・・・私の事なら心配ご無用。ここに居ますよ。」
「あ、幽々子!」
幽々子が家の中から顔を覗かせていた。いや心配してたのはあんたじゃなくて鯛なんだけどねっていうか勝手に入らないでよ。
「幽々子様、鯛を持っていかれてました?」
「ええ。」
やっぱり。鯛は無事なんでしょうね?
「鯛は何処?」
「私、せっかくお呼び頂いた手前・・・ただ鍋をつつかせてもらうだけでは悪いので・・・」
呼んでないし。質問に答えなさいよ。
「日々土臭い労働に明け暮れながらも感動的な程に清貧を全うする下々の庶民に心ばかりの労いを・・・と思いまして。」
ケンカ売ってんのかしら。
「日本の高級伝統料理・・・お寿司を握ってまいりましたの。」
お寿司!お寿司だって!?そいつはエクセレントだよ!ユユ───
・・・ナンダ、アレハ・・・
・・・それは寿司と呼ぶにはあまりにも大きく、分厚く、丸く、歪で・・・そして大雑把すぎた。
それはまさに生ゴミのようだった。
「違いますよ幽々子様、それは寿司ではなく鯛と酢飯です。」
多分もう鯛でも酢飯でもないぞあれは。
スクリュードライバーをオレンジジュースとウォッカですと言って出す店など無いように、あれも既に幽々子の手によって鯛でも酢飯でも、当然寿司でも無い何か恐ろしいモノに変貌を遂げてしまったようだ。
あのラグビーボール大の狂気の産物の戦力はもはや戦術的兵器相当の域にまで達していると言っても過言ではない。
よし命名、アレの名前は今日からタイファイターだちくしょう!私の鯛が・・・。
よく見ればライスコーティング装甲を持つタイファイターの前後から鯛の頭と尻尾が飛び出ている。丸ごとかよ!しかもその口と眼窩にはこれでもかと酢飯が詰め込まれている。うわキモ。
とにかくあんな、食卓に並んだ瞬間に一家離散しかねない程に超アバレンジャーな威力を持つタイファイターを私のディナーに投下されるわけにはいかない。なだめて言い聞かせなければ・・・
「幽々子様!そのタイファイターを今すぐに放棄してください!悪くはしません!」
あんたは私か。
「あら、あなた達はこのタイファイターを喰らいたくないとおっしゃるのですか?」
あんたさっき寿司って言ってただろ!どこまで本気でどこまでいやがらせだ!っていうか主従揃って人の心を読むな!
「そこまでよ幽々子!それ以上の暴挙は例え天が許してもこの博麗霊夢が許さない!」
「引き下がるわけにはいきません。私の野望なのですよ、戦友達(ともだち)と鍋を囲んで・・・このタイファイターを食べることが・・・」
そんなはた迷惑な野望捨てろ。
「ついにそれが・・・ようやく成就する・・・」
「させるわけにはいかない・・・!そのタイファイターをゴミ箱の隙間に落とし込む!」
全身全霊をもって・・・貴様の野望を、絶つ!
「ちょっと幽々子様!いくらなんでもそれは迷惑ですよ!タイファイター鍋なら・・・今度私が付き合いますから!」
そうだ妖夢、もっと言ってやれ!っていうか妖夢も苦労してるよなぁ。ほろり。
「それではだめなのよ妖夢。たった二人でタイファイターを制御できると思って?私が居て、妖夢が居て、なにより博麗が居る。そう!まさに今日この時この瞬間こそが、私の野望を成就できる千載一遇のチャンスなのよ!」
いやな瞬間に立ち会っちゃったなぁ。
「とにかくだめよ!とっととそれを捨てなさい!うちと戦争(ウォーズ)でもするつもり!?」
「戦争だなんて、なんと雅に欠ける野蛮な発想だこと・・・。私はタイファイター鍋をしたいだけ・・・でも、形は違えど主旨は同じね。ふふふ・・・」
「いい加減にしないと、あんたごと夢想封印するわよ!」
「御意見無用!あ、そ~れ!」
不意をついた突然の奇襲、タイファイターを高らかに掲げ、鍋に向かって跳躍する幽々子。
し、しまった!あいつめ、ついに強行手段に出たな!あのままスピードを殺さず、タイファイターを鍋にスラムダンクする気だ!
「やめて!そんなの入らない!」
だめだ間に合わない・・・!
「申しわけありませんっ幽々子様ー!」
ずどん!
妖夢の身を呈した渾身のタックルが危機一髪で幽々子の暴挙を押し留めた。
「でかした!」
あの状況で、あまつさえ己の主人に対して即座に行動がとれた状況判断能力、
さらに一歩間違えればタックルの衝撃で頭上のタイファイターがバイオハザードしてもなんらおかしくない事を踏まえた上で実行した心意気。
見届けたぞ魂魄妖夢・・・真の武人!私にはとてもできないことをやってのける!そこにしびれるぅ!あこがれるぅ!
「・・・あ~~ら・・・妖夢は、悪い子ねぇ・・・」
「ゆ、幽々子様、これは・・・!」
「悪い子には・・・お仕置きが必要よねぇ・・・」
こえぇ~ ・・・妖夢、あんたの勇士、私は決して忘れない!
「行きなさい!タイファイター!」
妖夢に向けて突撃、もとい振り下ろされるタイファイター。
「ぎゃーー!うぶっ!」
ドグチァ!
タイファイターが妖夢の顔面に直撃する。うわぁ・・・。
メリメリメリ・・・
ああっ!タイファイターが妖夢を飲み込みだした!
「タ、タイファイターとは一体、ウゴゴゴゴ・・・」
妖夢も激しく抵抗しているようだが、もがけばもがく程に、妖夢の顔がタイファイターのライスコーティング装甲にずぶずぶと埋まっていく。・・・窒息しないかあれ。
案の定必死にタップを試みる妖夢。しかし幽々子にその意を汲む気は全く感じられない。
あ、妖夢の手が垂れた。さすがにこれは止めないとまずいでしょ・・・。
「幽々子!ブレイクブレイク!妖夢グロッキーだって!」
ドンッ!
先ほどの妖夢の勇気ある行動に恥じぬよう、力いっぱい幽々子を突き飛ばす。
堪らず妖夢とタイファイターを放り出して倒れる幽々子。
殺人技から開放された妖夢も、支えを無くし地面に後頭部を強かに打ちつける。大丈夫かなぁ。
そして問題のタイファイターは・・・!?
飛んでいた。確かに飛んでいた。
まるで意志を持ったかのように、華麗なアクロバット回転をしながら・・・誇らしげに、雄大に・・・宙を舞っていた。
──美しい・・・──
だが次の瞬間、その感想があまりにも不謹慎であったことを思い知った。
高速回転するタイファイターから剥離し撒き散らされる米粒は、まさに命の輝き、命の断片。
禁忌の調理法により生み出された忌み嫌われし禁断の存在、タイファイター。
だが彼自身は決してそれを望んで生まれてきたわけではなかった。
だからこそ・・・命を削ってまで、己の真なる存在意義の見直しを、訴えかけているのではないか。
そしてタイファイターは回転しつつ重力に従って緩やかな放物線を描き・・・
『一度でいい、寿司と、呼ばれてみたかった・・・』
・・・ぐしゃ!・・・
その命を終えた。
最後に聞こえた声は、はたして幻聴か、それともタイファイターの魂の叫びか・・・それは私にはわからない。だけど、わかることが一つだけある。
それは・・・私は、自分の心にだけは嘘をつきたくないということ・・・。
「・・・タイファイター、あんたはとても立派な回転タイファイター、いや、回転寿司だったわよ・・・おやすみなさい・・・。」
・・・さようなら・・・
「わ、私のタイファイターが!タイファイターがあっ!あああ!」
叫びながら回転寿司に駆け寄る幽々子。
「ひどい・・・なんで・・・こんな姿に・・・」
ひどい・・・だと? なんで・・・だと!?
「ふざけるな幽々子ぉ!!」
「な、なによ・・・?」
「寝言は寝て言いなさいって言ってんのよ。」
「ひ、ひどいわ霊夢!あなたが私のタイファイターをへぐっ!」
幽々子の胸倉を引っ掴んで無理やり引き寄せる。
「あんたが・・・一番こいつを冒涜したあんたが、その名でこいつを呼ぶことは、この博麗霊夢が絶対に許さない!」
「ひっ・・・わ、わかったわよ・・・。」
どさっ
幽々子は私が手を離すと同時に強かに尻餅をついたが、全く懲りていないのか恨めしげな目で私を睨んでいる。
こいつは、まだ気付いていないのか。
「あんたにまだ心があるなら・・・呼んであげなさいよ、そして悲しんであげなさいよ、こいつの名前は・・・回転寿司よ。」
「・・・ごめんなさい・・・私の・・・私の回転寿司・・・うっうう、へぐぅうっうっう・・・」
・・・戦争とは・・・かくも虚しいものなのか。
周囲の惨状を見渡し、改めてそう思う。
境内に盛大に散らばった米粒・・・
顔中にお弁当をくっつけて白眼剥いてる妖夢・・・
回転寿司にすがりついて咽び泣いている幽々子・・・
いい具合に煮立ってきた鍋・・・あ!
そうだ鍋だ鍋をしてたんだ。なんかすっかり忘れてしまっていた。こんなことしてる場合じゃない。
ちゃんと掃除しておかないと魔理沙に怒られてしまう。さあ、とっとと掃除して鍋の続きだ!
──ユユヨウム、ドロップアウト──
とりあえず泣き叫ぶ幽々子を蹴り倒してタイファイターをゴミ箱にぶち込んだ後、散った米粒は密集しているところだけチリトリで掬って同じくゴミ箱にぶち込んでおいた。残りはうちの軒先に住み着いている雀達が早くも降りてきて処理しはじめている。じきに綺麗サッパリなくなるだろう。
さて、あとはこの二人だけど・・・
「おいおい・・・なんだこりゃ。」
あ、やば・・・魔理沙の奴、またいやなタイミングで戻ってきたな。
「お帰りなさい、魔理沙。」
「お帰りはいいからさ。この状況を見てくれ。こいつをどう思う?あと妖夢死んでないか?」
「細かく説明すると長くなりそうだけど?あと妖夢は寝てるだけだから、普段の疲れもたまっていたんでしょうね。眠らせておいてあげて。」
「じゃあ大雑把に手短に頼むぜ。」
「・・・妖夢が食い倒れちゃって大変だったのよ。」
どうせタイファイターがどうとかって言ったって、そんなUMAが実在するわけないだろとか、頭が春になりすぎたんじゃないかとか苦言言われることはわかりきっているから私の心の内だけにしまっておこう。
「なるほどな。どうりで顔中に米粒つけて幸せそうな顔してやがるぜ。」
白眼剥いてるけどね。
「おい幽々子、せっかく私が来たんだぜ、挨拶ぐらいしろよ。」
「・・・」
「幽々子、魔理沙が来てるわよ。」
「・・・」
あいつ、まだタイファイター取り上げたこと根に持ってるのか。全く子供なんだから。
「まあいいわよほっといて。それより鍋よ鍋。」
「そうだな・・・ああ霊夢、強力な助っ人を呼んできたぜ!」
「助っ人?どこに。」
見た感じ魔理沙しかいないようだけど。
「あー。全速力でぶっ飛ばしてきたからな。途中で振り切っちまったか。まあ、一直線上だしわかるだろ。」
「そんないい加減なので大丈夫なの?」
「お、ほら来たぜ来たぜ。」
あ、ゆっくりとだが高空から何かが下降してくるのが見える。
確かあれは・・・
「コンパロ~」
「ああやっぱり、いつかの毒人形。」
毒人形が魔理沙の隣に着地する。でも毒人形が助っ人ってのはどういうことだろう。
「ご挨拶ね。メディスン・メランコリーよ、こんばんは霊夢。」
「こんばんは、メディスン。で、あんたのどの辺が強力なのよ。」
「ま、見てればわかるぜ。メディスン!」
「はーい。コンパロコンパロ、灰汁よ集まれー。」
「おお!?」
鍋から灰汁だけが吸い出されていく!
「な、便利だろ。」
「いや本当すごいわね~見直したわよ。」
「すごいわ~」
なんか幽々子が会話に割り込んできたし。あんたドロップアウトしたんじゃなかったのか。新たに興味を引くものが出てきたから立ち直ったのか。ほんとに子供ね。
幽々子、完全復活! ちっ。
「えへへ。」
「ああところでメディスン、具は何かもってきた?具の一つも持ってこない不届きな子には鍋はつつかせてあげれないわよ?」
「いらないよ。私は見てるだけ~。」
そうか、人形だしね。
「ねえメディスン、他にはどんな物が集められますの?」
いい質問だ。私も興味がある。
「あなたはだぁれ?」
「私は西行寺幽々子といいます。よろしくねメディスンちゃん。」
「うんよろしく~。あ、えーとねぇ、私が集められる物は、他にも毒性を持っているものならなんでも手広く集められるわよ。」
「へぇ」
「へぇへぇ」
「あとはね~。社会の毒とか?」
いきなり生々しいな。
「おーい霊夢、そのくらいにして鍋食おうぜ。」
「そうね、お腹空いたわ・・・」
やっと鍋にたどり着けた・・・ああ、長かった・・・。
「私も、謹んで参加させていただきます。」
あんたのせいなんだけどね。
「それじゃあ私は適当にその辺ぶらぶらしてるから~、用があったら呼んでね。」
「ああわかった。よしそれじゃあ音頭を取るぜ。いただきます!」
「いただきます。」
「いただきま~す。」
鍋だ鍋だ。さあ熱いうちに・・・
「あの~」
「んむ?」
誰だこんな時に!って珍しいのが来たわね。
「お?リグルじゃないか、珍しいな。」
「その節はどうも・・・ところで、具を持ってくればお鍋パーティーに参加させてくれるっていう神社はここですか?」
誰から聞いたそんな話。それになんだお鍋パーティーって。
「んなわけ無いでしょうが。帰れ帰れ!帰れったら帰れ!具置いて帰れ!」
「・・・霊夢、お前言うようになったなぁ。」
腹減ってるところに鍋の目の前でお預け喰らってんのよこっちは。
「いいわよ、いらっしゃい。」
って幽々子あんた!勝手なこと言うな!
「あのねえ・・・」
「まあいいじゃないの霊夢。お鍋というものはね、大人数で囲めば囲む程により成熟するものなのよ。」
「そうだぜ霊夢。それにまあ子供の一人も居たほうが騒がしくて楽しいだろ。」
「全く、仕方ないわね・・・。」
「え、あ、ありがとう!」
満面の笑顔で礼を言うと、鍋に近づいてくるかと思いきや、逆に石段の方に駆けていくリグル。なんだかいやな予感がする・・・。
「おーい!お鍋パーティーに参加していいってさ!」
「ほんと!?やったー!」
「きゃっほー!」
突然石段の影からチルノとミスティアが飛び出てきた。なんだあんたらそのいい笑顔とリアクションは。
「こいつらにも鍋を食わせてやりたいんですが、構いませんね!」
「おいおい・・・そりゃあ騒がしい方がいいとはいったけど、そりゃあちょっとあんまりだぜ。」
どうだわかったか。最初っからリグルの具を毟りとって野に帰せばよかったのよ。
「流石だねリグル!ぐっじょぶ!こっれでおっなべっが食っべらっれるっ!」
ってかチルノあんた鍋なんて熱いもの食べられるのか。
「いやいや、眷属を通じてお鍋パーティーの情報をキャッチしてくれたミスティアが一番の大手柄だよ。」
「あはは。あのぐらいなんてことないよ!野生の鳥達はみーんな私の言うこと聞いてくれるから!」
なるほど、さっきの雀か・・・恩を仇で返しやがって・・・。だけどミスティア、あんたはとんでもないミスを冒した。この場において、あんたにとって最も重要な情報を拾い損ねた。すなわち・・・
ヒュ~・・・ドロドロドロドロ・・・
「ふぅ~・・・くぅ~・・・ふぅ~・・くぅ~ふぅ~・・・くぅ~・・・ふぅ~・・・くぅ~~~ふぅ~くぅ~~~・・・」
つまりこういう事よってかお願いだから吐息で訴えないで怖いから。
「ちん!?あ、あんたは幽々子!」
おーうろたえとるうろたえとる。あとちんとか言うな。
「うふふふふ・・・お久しぶりねミスティアちゃん?・・・私、今と~~っても、空腹!!!・・・なのよ。わかるかしら?」
「わかりません!全っ然、わかりません!」
「まああなたの意見はどうでもいいのよ。」
すっと立ち上がる幽々子。・・・ヤル気だ。
「あんた!ミスティアに手を出さないでよ!」
「やめてあげてー!」
ミスティアを背に庇うように踊り出るチルノとリグル。これはこれでなかなか美しい友情だが、そんなことしてもまとめて喰われるだけだからやめとけって。
「だ、大丈夫よ二人とも、下がっていて。・・・やれるもんならやってみなさいよ!でも二人には手を出さないで!」
「いいねぇ泣かせる話だ。それにしても強気に出たな。なんか切り札でもあるのか?」
弾幕ごっこの修行でもしてたのかしら。まあ所詮夜雀だからねぇ。
「対あんた対策のために毎朝、毎日極太(ハクタクミルク乳業製造・出荷)を欠かさず飲み続けてごっつくビルドアップした私の小骨が怖くないならね!」
なにその喰らいボム。それは果たして対策と言うのだろうか。
「あら~・・・それはちょっといやだわ。細切れにしてくれる妖夢も今は寝てるし・・・」
寝てるっていうか寝かしたっていうか、でもわりと対策の効果が出てるようだ。よかったねミスティア。
「まあ今日はいいわ。お鍋もありますし・・・。」
そう言って残念そうに腰を下ろす幽々子。でもあんまり鍋に対するヤル気出されても困るんだけど。
「良かったなお前ら。じゃあ早くこっち来いよ、鍋煮えてるぜ。」
「う、うん。」
恐る恐ると言った感じで鍋を挟んで幽々子の正反対の位置に座るミスティア。チルノとリグルも後ろから着いてきて肩を寄せ合うように座る。まあ、萎縮させる程度の効果はあったみたいね。これならこいつらも多少は遠慮気味に食べるだろう。あっとその前に。
「ところで、具は何をもってきたの?」
「よくぞ聞いてくれたわ!」
飛び上がるように立ち上がるチルノ。やめろ埃が立つ。ってか全然萎縮してないし。
「今日あたいが持ってきたのは、コレよ!」
バン!という効果音付きで自信満々に取り出したそれは底の浅い広口の透明なグラスに盛られた白く聳え立つ山とそこに散りばめられた小豆・・・のようななにか。ってかあれはもしかしてあれか?・・・カキ氷。いやそれは・・・あいつがいくらバカだからって、さすがにそれは無いだろう。なんたって鍋の具だぞ鍋の具。きっと別のなにかだそうに違いない・・・とりあえず聞いてみようか。
「ちょっとチルノ、あんたそれなによ。」
「なにって、霊夢あんたカキ氷も知らないの~?」
・・・こいつぁ本物だ。本物と書いてバカと読む選ばれしバカだ。っていうか勝ち誇ったように言うなこのバカ。
「鍋にそんなの入れるバカがどこにいるのよ。」
「ミルク金時のどこがいけないっていうのよ!あたいはミルク金時が一番好きなのよ!美味しいもの入れたお鍋が美味しくならないわけないじゃない!」
シロップがどうとかっていう次元の話してるんじゃないしっていうかなんだそのとんでも理論。
「あんたいい加減に・・・」
どざざー!
・・・入れやがった。
「私も私もー。今が旬の八目鰻一丁おまちっ!」
どぽん!
誰も待ってないし!そんなキモいナマモノ丸ごと入れるなこのバカ!
「ちょっと待てあんたら!」
「とっておきの超巨大クワガタの幼虫だよ!え~い!」
どっぱーん!
屈託の無い満面の笑顔で凶悪なもんぶちこんでんじゃねー!
「・・・」
場の全員、絶句。あのタイファイターエースパイロット・幽々子ですら度肝を抜かれたような顔をしている。これが・・・バカの底力、聳え立つバカの壁か。バカさ加減に関して妥協無用とでも言わんばかりのとてつもないバ力(ばりき)だ。鍋を取り巻く不穏な空気に気付いたのか、あっちこっちでコンパロコンパロやっていたメディスンも寄ってきて、鍋を覗き込んでうへぇという顔をする。毒人形でさえも拒否反応を露にする鍋ってなんだ。
あんたら・・・私の貴重なディナーを、よくもこんな業の深い鍋にしてくれたわね・・・
「あんたらには・・・今日を生きる資格は無い!」
素早く幽々子とメディスンに目配せする。そこに言葉はいらない。
「コンパロコンパロ、バカよ集まれー。」
「うわわわ!?」
たまらず吸い寄せられるチルノ。
「ちんちーーん!?」
同じく卑猥な悲鳴を上げながら宙を舞うミスティア。
「オーライ、オーライ」
二人が一直線に向かった先はメディスンの前で大口を開けてスタンバってる幽々子・・・の無限胃袋、貪符『人生の墓場』。
「いやー!私なんて食べたらお腹冷やしちゃうわよーーー!?」
この期に及んで見苦しい事を。その身を持って己の愚かさを懺悔せよ!
「ひぎゃああああ!いいい今の私は太くて硬いわよーーー!!?」
さらばミスティア。最後の最後までエロい夜雀だったと後世に伝えよう。
「私は一向に構わんッッ!!」
幽々子の雄々しい咆哮を合図に、首元にもっていった右手でサムズダウンの形を作る。それを横に素早く引くように、掻っ切るように・・・一閃!
びっ!
「ザ・ジャッジ(制裁)!!」
「いやあああぁぁぁァァ・・・」
「ちんちいいいぃぃぃィィ・・・」
「ガォン!」
──ミスチル、ドロップアウト──
「あ・・・あ・・・」
「あれ、あんたは吸い込まれなかったんだ。」
「意外だぜ。こいつはバカじゃなかったのか。」
まあそんなことはどうでもいいわ。
「幽々子。」
「あ、ちょっと待って、太骨が・・・」
口の中で舌をしきりにもごもごと動かしている幽々子。しかし本体丸ごと飲み込める癖して骨はつっかえるんだな、等とどうでもいいことを考えてみる。
「よし、とれた。それじゃあ・・・うふふ」
幽々子が妖しい笑みを浮かべながら、隙の無い動きでリグルの背後へ移動する。リグルは全く動かない。絶対的恐怖に支配され、動けないのだ。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
・・・なるほどそうか、こいつはバカなんじゃなくて、ただ単に価値観が違いすぎただけか。おそらく悪意も無かったのだろう。
こいつはさっきのクワガタの幼虫も本当にご馳走だと思って、喜んでもらえると思って自分の知る中で一番良いもの持ってきたに違いない。
先の二人はメディスンの能力で証明された通り、正真正銘とびっきりの天然モノのバカだ。言うならばバカのカリスマ、バカの超エリート。だけどこいつは・・・ただの哀れな被害者だ。そんな罪の無い蛍が、今まさにバカの巻き添えを喰って散ろうとしている。
そう考えると・・・なんだかリグルを少し気の毒に思うのと同時に、可愛いとさえ感じている自分が居ることに気付いた。
見れば、哀れな蛍の、降り頻る雨の下で餓えと寒さに震える野良の子犬の縋るような目が、大粒の涙を湛えて私に向けられていた。
その涙を見て、私は・・・
「ザ・ジャッジ(粛清)!!」
「ひええぇぇぇェェ・・・」
「ガォン!」
──リグル、ドロップアウト──
「食べ物の恨みを思い知りなさい!」
まあ怒りをぶちまけてやりたい相手は既に腹の中だが、怒号の一つも飛ばさなければ気が収まらない。ああ・・・鍋・・・
「ま、これであいつらもちったぁ懲りただろ。」
「さあねぇ。ヘコましてもヘコましても果敢に突撃してくる連中だし。」
コスモギャングも真っ青だ。
「お鍋~・・・」
「で、とりあえず・・・どうするんだ?この鍋・・・。」
私に聞かれても困る。
「うーん・・・どうしようか?」
「・・・食べれるかも?」
ザワ・・・ この期に及んでその爆弾発言はなんだ幽々子。
うっかり惚れる所だったじゃない。
「もしかしたら美味しいかも?」
正気を保て!あんた今自分が何を口走っているかわかってるの!?
あんたは鍋をなめている!事件は境内で起きているんじゃない、鍋の中で起きているのよ!
「だって一応、湖の幸(カキ氷)、川の幸(八目鰻)、山の幸(くわがた)が織り成すハーモニーが絶妙にとろけ合う超VIPクオリティなお鍋になっている可能性も捨て難いわよ?」
いやそれ絶対に言葉の使い方違うじゃん。言葉作った人に失礼じゃん。ってか最悪の言い回しだなおい。うえぇ吐きそう・・・。
「・・そうだな。幽々子、一つ味見してみてくれないか?」
同意!? あ、なるほど。それは名案だ。
「あれあれ?そんなこと言っていいんですか?使いますよ。貪符。」
「いいわよ。使ってちょうだい。貪符とやらを。」
それで撃沈したら帰ってください。
「・・・運が良かったですね。今日はもう満腹のようです。」
嘘こくな!
「ちょっと幽々子、言い出しっぺはあなたなんだから責任もちなさいよ!それに何がVIPクオリティよ!あんたの変な発言のせいで鍋がトラウマになりそうよ!どうしてくれるのよ!」
「そうだぜ、さすがにそんなこと言われちゃあ見損なうしかないな。」
「なんと言われても入らないものは入りません。」
「まあそう言わずに、一口だけでいいんだ。」
「幽々子、みんなあんたに期待してるのよ?」
あとついでにいいリアクションも。
「うーん・・・わかりました。本当に一口ですよ?」
「よく言ったぜ!それでこそ幽々子だ!ほれ、お前の分だ。」
魔理沙に渡されたなみなみと注がれた器を前に、箸をあちこち迷わせるだけでなかなか踏み切れない様子。
「こういう事は思い切りが大事だぜ!さあ!」
「まあ、一口ぐらいならいけるでしょ。」
「・・・仏には桜の花を奉れ わが後の世を人とぶらはば・・・」
なにいきなり辞世の句詠みはじめるのよこいつは。
「うっうっ・・・主のいなくなった白玉楼・・・それは一体、どんな淋しい風景かしらね・・・。それに妖夢も路頭に迷うわ・・・ああ妖夢・・・かわいそうな子・・・。あなた達、妖夢を、よろしくね・・・。」
いやあんたもう死んでますから。
「・・・いただきます!」
「待て。」
静止の声がかかる。声の主は・・・へ?魔理沙?
「食いたくないんだろ。じゃあいいさ。箸置け。」
「・・・いいの?」
「ああ。もういい。腹一杯になったんだろ?じゃあ、妖夢を連れて白玉楼に帰れ。」
「・・・ありがとう・・・」
魔理沙の許しを得、未だ起きる気配も無い妖夢を背負って立ち上がる幽々子。
「ありがとう。そしてごめんなさいね。お詫びに今度、お寿司を握ってくるわ・・・」
「まあ気にしないで。あとお寿司は絶対握ってこないでね。」
「気をつけて帰れよ。・・・霊夢は寿司が嫌いなのか?じゃあ今度、私だけにご馳走してくれ。」
言うべきか、言わざるべきか・・・ま、面白そうだから黙っておこう。
「はい。きっと・・・! それでは、さようなら。」
妖夢を背負ったままいつも通りの捉えどころの無い動きでふよふよと飛び去っていく幽々子。なんか危なっかしいなあ、妖夢落っことすなよ。
──幽々子、ドロップアウト──
「はあ・・・結局なにしに来たのかしらねあいつらは。」
「まあ仕方ないぜ。あんなに嫌がってたんだから強制はできない。」
「あら、珍しく至極真っ当なことを言うのね。」
「珍しくってのが気にかかるな。まあいい。この鍋の処分だが・・・」
「続けるつもり?私、なんだかもういいや・・・鍋奉行のあんたに任せる。」
「主体性のないやつだぜ。・・・よし、この鍋は最早鍋じゃない。というか食い物じゃない。」
もっと早く気づけ。
「悪いが、廃棄させてもらうぜ。私はまだ人間やめたくないからな。」
「いいえ、いい判断だと思うわ・・・」
「そうか。それじゃあ・・・ゴミ箱借りるぜ。」
そう言って鍋を持って立ち上がる魔理沙。さよなら私の晩御飯・・・だった鍋。
「あばよ・・・鍋。次はもっと美味しく生まれて来いよ。」
「ちょ、魔理沙!それゴミ箱じゃなくて素敵な賽銭箱!ゴミ箱は横よ!」
「ああそうか、すまんすまん。いまいち認識が出来てなかったぜ。」
あんた絶対わざとやってるだろ!
「コンパロ~。」
そこにメディスンが大量の草を両手に抱えて満面の笑顔で現れた。あんた姿が見えないと思ってたらそんなの集めてたのか。
「お、メディスン・・・ってなんだ、その草は。」
「それは、二輪草ね。鍋の具を採ってきてくれたんだ。ありがとう・・・でももう、鍋はお終いなの。」
「なに言ってるの?これトリカブトだよ。」
猛毒じゃん。
「こんな辺鄙な山奥でも毒は結構あるものね~。言っとくけどこれ私のだから、あげないよ。」
「いらないぜ。」
「辺鄙とか言うな。」
ザリザリザリ・・・ゴトン
「ん。おい、何か聞こえないか?」
「なになに~?」
「しっ、メディスン、ちょっと静かに。」
「むー。」
ザリザリザリ・・・ゴトン ザリザリザリ・・・ゴトン
「石段の下の方から・・・だな。音の発生源は。」
耳を欹てれば、確かに石段の方から聞こえてくる。
しかし何の音だろう・・・何か、重くて硬い物を、一段一段、押し上げているような。
「お、おい!なんだあれ!?」
魔理沙が声を上げて指差した先を見ると、なにやら四角い物体がゆらゆらと危うげな動きで迫り上がってくるのが見える。
「あれは・・・冷蔵庫!冷蔵庫だ!ってことはアリスか!」
ザリザリザリザリ・・・ゴトン!
冷蔵庫が最後の一段を上がり終え、その全貌を明らかにする。と同時に、その裏からアリスが現れる。ああなるほど、背中で押し上げてきたのか。ってか冷蔵庫なんてもってくるなよ。どうせ魔理沙になんか言われたんだろうけど。
「ぜぇ~ ぜぇ~・・・ 魔理沙・・・ 来た・・・わよ・・・」
「おいおいおい大丈夫か。」
「ぜぇ~ 下までは・・・台車に載せて運んできたけど・・・。さすがに・・・石段は無理だから・・・辛かったわ・・・」
「・・・悪かったな、アリス。まさか本当に持ってくるとは。」
「・・・いいわよ。意地になっちゃった私も私だから・・・」
「霊夢、ちょっと器一つ取ってくれ。」
器?まあいいけど。
「はい。」
「おうサンキュ。・・・アリスよ。疲れただろう、まあ暖かい鍋の一杯でもすすって元気出せ。」
そういって鍋を器に取り、アリスに差し出す魔理沙。鬼かこいつ。
「あ・・・ありがとう、魔理沙。」
「やめといたほうがいいよ~? それ、毒じゃないみたいだけど、とんでもない具が入ってるから。虫とか。」
「ちょ、メディスン!余計なこと言うなよ、黙ってりゃわからないのに!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「・・・魔理沙?」
「いや、ほら。まあなんだ。他に気の利いた物がなくてさ。これだって鍋には違いない。」
「じゃあまずあんたが食べてみなさいよー!」
「力一杯遠慮させてもらいますぜー!」
「コンパロ~・・・私余計なことした~?」
「まあ、正直なのは良いことだと思うわ。」
さすがに境内での殺人事件はご遠慮願いたいしね。
「ん・・・。ちょ、ちょっとあなた!?」
「私?」
「そうあなたよ。あなた、人形でしょう?・・・自律しているの?」
「まあね。私はメディスン・メランコリーよ。あなたはだぁれ?」
「アリス・マーガトロイド。あなた、どうして自律しているの?・・・いやいや、あなたを作ったのは誰?」
「作った人なんて覚えていないわ。それに・・・私は人の手によって自律したわけじゃないから。」
「ええ!?」
「まあ、厳密には、人の手によって自律したと言えなくもないけどね。」
そう言って、クスクスと笑うメディスン。そこに自嘲気味なものは窺えない。純粋に、愉快そうに。
「あなたは人形を使うんでしょう?その人形達を、自律させたいわけね?」
「シャンハーイ」
「ホラーイ」
「まあ、ね。そのためにも、もっと詳しい説明がほしいわ。」
「やー。面倒くさいもん。まあ、愚かな人がいるから私が生まれた・・・ってとこね。」
「愚かな人、ねぇ・・・。」
「そう。ま、私に言わせてみれば人形だって愚かだけどね。あ、私は別よ?人形に甘んじている人形達なんて、本当に愚か。ただの人の形で居続けることの何がそんなにいいのかしらねー。」
「それはまるで、人形が自分の意思一つで自律できるような言い方ね?」
「さあ?それは私にはわからないよ。自分の事だってよくわからないし~。まあ、人形達も良い主人に恵まれたのなら、例え自律してもただの人形のままで居たいと思うのかもね。だけど、こと私にとってはそんな人形はとんと無価値ね。ここは愚かな人形が多すぎるわ。賛同者が全然集まらないったら。」
「何言ってるかわからないけど、この人形凄く可愛くない!ねえ魔理沙!」
「さあなあ。人形に対するこだわりは私にはよくわからないぜ。それよりもメディスン、お前、この鍋に毒がないと言ったな?」
「言ったよ。その鍋には毒はない。」
「よしわかった。みんな座れ。アリスもだ。」
「何よ、もしかして、食べようっての?」
話の流れがよくわからないんだけど。
「虫が入ってるとか言ってたわよね。」
「うむ。だが毒が無いなら後の問題は味だ。誰も味見してない以上はそれもわからん。見た目から推測するにも際物が揃いすぎてるからな。」
「とは言ってもねぇ・・・」
改めて鍋を覗き込むと、なんだかスープが随分濁っている。このスープこんなに濁ってたっけか。いや深くは考えまい・・・
「・・・大根、しめじ、豆腐・・・」
「う」
「・・・ハクサイ、ネギ、春菊・・・」
「うう・・・」
「ちょっと霊夢!そんな誘惑に負けないで!」
「・・・食べましょう。」
「陥落ー!?」
「よしその息だ。人生為せばなんとやら、だぜ。」
「なんで私までこんな目に・・・」
「さあさあ、お代は食ってからのお帰りだぜ。」
慣れた手際で各々の器に注ぎ分ける魔理沙。とりあえずは、今上げた野菜だけというのがさりげない気配り。あ、今アリスの分に正体不明ななにかが混入した。
「よし、しぶって時間かけてもアレだ。いっせいのーで、で一緒に一口。わかったな。」
「覚悟は決めたわ。」
そう、幽々子も言ってた・・・もしかしたら美味しいかも・・・VIPクオリティ・・・いらん事思い出した。うえ。
「後で覚えてなさいよ・・・」
「よしそれじゃあ、いっせいのーーーーっ・・・で!」
・・・ぱく。
ぱくぱくぱく もぐもぐもぐ くちゃくちゃくちゃ
誰だ今の粘着質な咀嚼音は。アリスか。
─── !!
・・・こ、これは・・・ なんという味! なんという鍋・・・!
・・・こいつには殺ると言ったら殺る、スゴ味がある!!
ガクンッ
「ぐはっ!?」
突然の体が突き上げられるような衝撃に、たまらず体を丸めてうつ伏せに倒れこむ。
頭痛がする、眩暈もだ・・・、この博麗霊夢が鍋にあたって・・・、た・・・立てないだと・・・!?
「霊夢!?どうしたの!?」
どうしたもなにも・・・ メディスン・・・ 毒入ってないんじゃなかったの・・・?
「あ・・・あ・・・あ・・・」
「ま、魔理沙!?」
声は上ずり、目はテンパり、がたがたと震え出す魔理沙。
「アアアアンマエアウエァーーーーー!!!」
どさっ
死んだ。
「ま、魔理沙!だいじょおおお、お、お、おおお?」
魔理沙に駆け寄ろうとしたアリスが突然タコ踊りを始める。左に傾き右に傾き、前に屈んだと思ったら後ろに反り返る。なんだその気味の悪い動きは。
「あらあらあら・・・」
ってこっち来んな!近づいてくるぞぉぉぉ!怪しい動きだぁぁぁ!
「あっあわ!あああわわわ・・・」
おお・・・遠ざかっていく・・・あ、倒れそう・・・お、踏みとどまった。
「シャンハーイ!」
「ホラーイ!」
人形共がいっぱしに心配してアリスの回りをせわしなく飛び回っているが。あまり纏わり付くと危ないんじゃないか?潰されるぞあの尻に。
「あうあうあ・・・あっ!」
あ、足が絡まった、倒れる!
どてっ プチッ
「モルスァ」
「ホラーーーーーーーーーーーーイ!」
今片方尻に敷かれたぞ言わんこっちゃない。
ああ、なんだか私も意識が朦朧としてきた・・・。
「死、死ぬ・・・」
「あーもーなにやってんだか。」
「目が、目がああああ!耳も・・・!見えない、聞こえないぃ・・・魔理沙あぁ!どこなのおぉぉ!?」
ずりずり・・・ずりずり・・・ 魔理沙を探して腹ばいに移動するアリス。その執念見事なり!・・・ちょっと怖いけど。
ぐわしっ
あ。それ違う。
「あ!ちょっと何するの!離してー!」
「魔理沙なのね!魔理沙なのね!?安心して・・・今解毒してあげるから・・・」
「やめろ離せー!解毒なんてされたら死んじゃうわよー!」
「Vas An Nox Lor Xen Hur Ylem ・・・ Aah Mar Isa ・・・」
「ぎゃー!死ぬ!死ぬー!コンパロコンパロ毒よ集まれ集まれ集まれ!」
魔理沙と勘違いしたメディスンの毒をひたすら解毒するアリス
それに対抗してトリカブトからひたすら毒を吸い上げるメディスン
こんな愉快な光景が私の人生で見る最後の光景になるなんて・・・
「この!いい加減離せー!」
げしっ!
「ああっ!魔理沙!どこへ行くの!?戻ってきてー!」
「は~まったく。邪魔したら助かるものも助からなくなるじゃない・・・。コンパロコンパロ、食中毒よ集まれー。」
「あ・・・」
頭痛と眩暈が引いていく・・・。助かった!?
「・・・メディスン、あなたが?」
メディスンは答えない。毒を吸い出すことに集中しているようだ。
次第に魔理沙とアリスの血色も目に見えて良くなってきた。
「ぅ・・・ぁ・・・ああ・・・なんだ、どうしたんだ、私は。」
「あ・・・見える・・・聞こえる・・・!魔理沙!大丈夫!?」
「ふぅ。」
「・・・ありがとう、メディスン。」
「これぐらい朝飯前よ。」
「っていうかメディスン、結局毒があったじゃないか。」
確かにそうだ。いい加減なこと言わないでよ。危うく死にかけたじゃない。
「ううん。この鍋の中に毒は無い。際物揃いではあるみたいだけど。」
「でも・・・私達今現に倒れたし、あなたも毒を吸っていたじゃない。」
食中毒よ集まれーって。あれ?毒?
「それはほら、あれ。心因性ってやつ。実際に毒性物質を服用していなくても、思い込みで起こるケースもあるらしいのよね。食中毒って。」
なるほど、つまり私達から吸いだした毒はその毒か。まあミルク金時はともかく、円口類に虫の幼虫だからなぁ。
「人間は弱いなあ。」
「いや面目ない。だが助かったぜメディスン。」
「もうこれに懲りて馬鹿なことは金輪際しないわ。」
ついでに魔理沙はもう鍋奉行失格ね。
「あはは。これで私達も、お友達だね?人間の事、いろいろ教えてね。」
「ああいいとも。1から10まで教えてやるさ。普通の流儀でな。」
「いやいや、私からの方がいいんじゃない?普通より素敵の方が教わりがいがあるでしょ?メディスン。」
「どーしよっかなぁ・・・」
「う・・・うう・・・」
「ん?どうしたんだアリス。」
アリスが顔を俯かせたまま、肩を震わせている。泣いてるのか?
「どうせ・・・どうせ・・・私は何もできなかったわよ・・・どうせ、私はあなた達の輪には入れないわよ・・・どうせ!うわあああん!」
脱兎の如く駆け出すアリス。結果として解毒の邪魔になったわけだけど、助かったんだし気にしなくてもってまあいつもの事か。
「おいアリス!ちょっと待てよ!なにか酷いことしたか!?」
あんた少しは自覚しろって。
「もう、来ないから!ほっといて!」
あーあ。まあいっか、どうせすぐ仲直りするだろうし。
「ホラーイ!」
「ファー!ブルスコファー!」
あとその人形直してやれよ。
「・・・コンパロコンパロ、目の毒よ集まれー。」
「うわっ!?」
「ちょ、なに!?」
突然メディスンの方に向かって引っ張られる魔理沙とアリス。
びたん!
「あ痛ったーー!わあ、アリス!近い近い!」
「まあ!魔理沙ったらいけない人!」
「うふふ。お似合いよ、お二人さん。」
「な、何言ってんだメディスン!これなんとかしてくれよ!」
「そうよ!こんなヤツと引っ付いたままなんて生きた心地がしないわ!」
「あなた達って、ほんとおもしろ~い。サービスでしばらくそのままにしておくわね。」
「いやほんと、勘弁してくれ。」
「ちょ、何がサービスよ!あんた服のサイズいくつよ!私の家は魔法の森にあるから今度来なさいよ!」
「私の服はSSS、スーさんはその人形と同じくらいよ。今度遊びに行くね。新しい服、楽しみにしておくから。」
そう言って私の方に向き直るメディスン。私にも何かあるのか?
「今日はとっても面白かったよ。やっぱり外は興味深いわ。霊夢に、魔理沙に、アリスに・・・3人もお友達ができちゃった。また、遊びに来るわね!」
「え、ええ。なんだかよくわからなかったけど、もう帰るの?」
「うん。毒の補充もしないといけないし~。」
「そう。お疲れ様。」
「またね!コンパロ~・・・」
友達ができて、嬉しそうに飛び去っていくメディスンを見送りながら思う。色々理由をつけてるみたいだけど、結局あいつが一番、ただの人形のままで居たかったんじゃないのかな、と。
──メディスン、ドロップアウト──
「ふぅ、じゃあ私も片付けに入ろうかな。結局晩御飯食べそびれちゃったわ。」
「おい霊夢!なに勝手に締めてんだ!」
「そうよ!なんとかなんないのこれ!ならないんなら仕方ないけど!」
「あんたらそのままでいなさい。」
全くこいつらは・・・
「おいアリス!もとはと言えばお前が勝手に暴走するから!」
「何言ってるのよ!だいたい、人に冷蔵庫持ってこさせるは、変な鍋は食べさせるは、この仕打ちはなによ!」
「いや、それは・・・」
「暴力は嫌いだけど、こういうケジメはしっかりとつけておかないとね。これが今の私の気持ちよ!受け取りなさい!」
ばちん!
「痛ってぇー!!」
アリスのビンタを横っ面に受けてくっついている部分を支点に回転し上下逆さまになる魔理沙。うわ痛そ・・・。
「くそ、なんだというんだ・・・ん?なんだ・・・ま・り・さ・い・の・ち・・・魔理沙命?」
「どうわかった!?私の気持ちが!・・・へ?」
「ああ。よお~くわかったぜ。つまりこういう事だろ?」
上下逆さまの状態から器用に体を反転させ着地すると、おもむろにアリスを抱え上げる。お姫様だっこ・・・見事な・・・
「わわ、ちょっと、なにしてるのよ!」
「まあなあ、私も確かに酷いことしすぎたぜ。お前はいつもなんだかんだと喚きつつも私の身勝手な頼みを聞いてくれるし、今日だってこんな辺鄙な場所まで冷蔵庫担いで来てくれたんだし、たまには私もなにかお返ししないとな。今からうちに来いよ。シャンパンの一本でも奢るぜ。以前フランからもらった上物なんだが、私は日本酒派だからな。」
「魔理沙・・・」
見詰め合う二人。ってかあんた達目障りだからどっか行くなら行くで早く行ってください。
「なーんて、そんなことで許すとでも思ってるのかしら?今日はベッドで一晩中お説教よ!」
「ははは、お手柔らかに頼むぜ。じゃあ、霊夢。私達は帰るぜ。後片付けよろしくな!」
「もう!わかったから早く帰んなさい!」
全く、本当に目の毒、それも猛毒だなこれは。メディスンも寸止めせずに吸い取ってくれれば良かったのに。
「じゃあなー!」
「魔理沙!一人で歩けるわよ!」
「まあまあ任せとけって!」
「ちょ、あぶっ!危ないから石段はもっとゆっくり!」
「だーいじょーぶだいじょーぶ!ああ愉快だ!あーっはっはっは!あーっは!? あっあっあっ・・・あーー!!」
「キャアアアーーー!」
夜の静寂を引裂きつつ絡み合いながら石段を転がり落ちていくツンデレ地獄車。全くなにがしたいんだか。
──アリス魔理沙、ドロップアウト──
「はあ、騒がしいったらありゃしない・・・」
もうすっかり夜も更けてしまった。結局なんだったのかしらね、今日の鍋は・・・。
「あー、どっと疲れたわ。ま、収穫もあるけどね。」
アリスの持ってきた冷蔵庫を開けてみる。わお、結構入ってるじゃない。
「ちょっとぐらい物色させてもらったって罰は当たらないわよね~。」
このまま放っといても傷んじゃうんだから、うちの冷蔵庫に移したって感謝されても非難される覚えはないし。そしてうちの冷蔵庫に入っている物は私の物よね。それにしてもアリス結構いいもの食べてるなあいつ。
「ま、たまにはいいか・・・。」
大量の食材を両手に抱えてほくほくの笑顔で家に向けて境内を歩く。秋の終りを知らせる、少し冷たいけど心地よい風が吹いていた。
─完─
「・・・夜の境内ってロマンチックよね~。ん、くんくん・・・くんくん・・・あ、鍋だー!うまそーなのかー。いっただきまーす!」
─本当に完─
アレですか、タイファイターは別名すしころしですか。
よい鍋でした。
メディスン、便利すぎw
まるで鍋のように・・・鍋の・・・ように?
な なんだってーーー!!
>「テラキモース」
>「ワロース」
ちょwwwwwwwww
でもまだ妖夢は寝ているのだろうかw
人形にすらバカにされるアリスが可愛い。
上海人形は是非そのままで。
恐ろしいスペカ・・・!
てか、リグるん、蟲の王なのに食材くわがたの幼虫って…?
みんなはっちゃけすぎ!!
GJ!
ぼくのよそうではるーみあがEX化してぎりぎりのはんていがちになるとおもいます まる
あるんだが、コイツの毒も何とかしてくんねーかなー
随所に散りばめられたJOJOネタに痺れました。
氏には超一級品の『馬鹿』の称号をば差し上げたいw
そしてあとがきにて共鳴する部分が。
>>問題はフレアスカートを履きこなせる条件は下半身がぐんばつな女であるということ。
>>この主張はずっと続けていきたいと思います。
よく言った!
(↑色々書きたいことがあったがメディスンの可愛さのせいでもうどうでもよくなった模様)
>「テラキモース」
>「ワロース」
ってwwww
もうやべえ。腹筋が痛い
>「ワロース」
でかなり吹いたw周りに誰も居なくてよかった・・w
( ゚∀゚)彡 タイファイター!タイファイター!
⊂彡
てゆうかハマり過ぎて息できねーw
リ
さ
命
吹いたw
>「いいわよ。使ってちょうだい。貪符とやらを。」
>それで撃沈したら帰ってください。
>「・・・運が良かったですね。今日はもう満腹のようです。」
イオナズンーーー!!! まさに帰れよ。だw
最高でした。最高の小ネタ達でした。
まさに「たのしそーなのかー」ってかんじでw
マジか! 今すぐ行こうぜ!>λ
_ _
(|\ \ ∠ /|/
| | ̄| ○ |
\ \ //
周りの目がイタイデス
あと、壊れた人形達が笑いを誘発した ごち
タイファイター強すぎ・・・