Coolier - 新生・東方創想話

冥界逝きの、切符はいかが?

2005/05/07 14:30:21
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結界の向こう側にある、つまりは我々が住まう世界側、科学が発展し伝統が衰退した世界にて。
寂れた学校の教室内に、たったの2人で構成される、秘封倶楽部は集まっていた。

「ねえ、メリー、今度冥界に行ってみない?」

藪から棒に秘封倶楽部の一員、宇佐見蓮子が言ったその言葉に、もう一人の秘封倶楽部の一員、マエリ
ベリー・ハーンことメリーは、口に銜えていたポッキーをポロリ、と落とした。それを、頬杖をついて
いた右腕が目にも留まらぬ速さでナイスキャッチ。我ながら大した反射神経だ、と思いつつも、その驚
きに見開かれた藍色の瞳の焦点を蓮子にあわせ、

「冥界?」

事実確認は怠らない。「別の世界」とか「結界の向こう側」ならまだわかる。何故、よりによって冥界
なのか。これまでに幾度と無く結界の向こうに(無意識のうちにではあるが)赴いたことのあるメリー
には理解不能だった。

「何で冥界なのよ?」
「いや、普通の「結界の向こう側」は何回か行ったじゃない?たまには普通じゃない「結界の向こう側」
 に行ってみたいなぁ~、とか思ったから。」

実際、「結界の向こう側」という時点で普通ではないのだが、どうやら蓮子にはそういう思考能力が欠
乏しているらしい。早い話が、頭のネジが一本抜けている。

「で、ネジの抜けてる蓮子、いつも通り、確証があるからそういってるんでしょうね?」
「?…うん、まあ。とりあえず、この写真見てよ。」

そういって蓮子が取り出した、彼女愛用のノート。それをパラパラと大雑把にめくり、「ああ、これよ、
これ。」と指差した写真には、

「…ただのお墓の写真じゃないの。」

誰が見てもわかる、卒塔婆に墓石が荘厳に立ち並ぶ、ありふれた典型的な墓地。メリーの指摘に蓮子は
チッチッと舌を鳴らし、唇の前で人差し指を左右に揺動させ、「甘いわね、メリー。ここよく見て。」
と、空にぽっかりと浮かぶ、満月を指差した。

「これがどうかしたの?ただの満月じゃ……ん?」

メリーは何かに気づいたようで、蓮子からノートをひったくると、食い入る様にその写真、満月の部分
を凝視している。

「…何よこれ?月が…」
「欠けちゃってるのよ。ありえない角度で。」

よ~く見なければ気づけないことではあるが、満月の端っこ、そこが、真っ直ぐに欠けていた。半月な
らまだ説明がつく。だが、満月に、微小な弓形が、欠乏しているのだ。ありえない光景、というか写真
だった。

「…これってもしかして、冥界、の結界がこっちに張り出しちゃってるの?」
「そういうことになるわね。」

メリーは再び満月の写真に目を戻し、蓮子とを交互に見つめてから、諦めた様に息を吐いた。

「…で、何月何日何時何分集合?」
「あら?珍しくメリーが乗り気になったわね。」
「だって、蓮子あなたどちらにしろ行く気でしょ?」
「ご名答。秘封倶楽部として、この結界は見届けずにはいられないわ。」
「そう言うと思ったわ。じゃあ、いつ行く?」

蓮子は右手を顎に持っていき、思案顔になったのもつかの間、

「今日の深夜。」
「うぇええ!?早いな、またぁ~!」

彼女らしい、行動力溢れる答えだった。それにあわせられるメリーも凄いと思う。動転したツッコミが
入ってはいるが。

「…じゃあ今夜の丑三つ時に、写真の墓地で落ち合いましょ?これ、蓮台野より手前にある墓地よね?」
「よくわかるじゃないの。そう、じゃあ今夜そこで落ち合いましょう。」

そう言い残して、蓮子は教室を出て行った。多分、家にもう帰るつもりなのだろう、その手に通学鞄を
携えて。私もそろそろ帰ろう、今夜に備えて。
今夜は、長くなりそうだ。

(あれ?そういえば、何で蓮子、あれが冥界の結界だってわかったんだろ?)



時は流れ、場も移り、ここは、蓮台野の一歩手前にある、例の写真の小さな墓地。時刻は、

「2時28分35秒、2時28分36秒…」

だそうだ。蓮子は、空に浮かぶ月と星の位置関係から、現在の時刻、現在地、を割り出せる。しかし、
そんな能力もメリーにとっては奇異の目で見る対象でしかなかった。

「ちょっと蓮子、気持ち悪いんだから、やめてよそれ。」

耐え切れず、近くで墓石の周りをぐるぐる回っているメリーが静止を促しても、

「2時29分02秒、2時29分03秒…」

克明に時刻を刻み続ける蓮子の唇は止まる気配すら見せない。
(今回こそ、墓荒らしみたいな事は蓮子にさせようって思ってたのに。)
呆れた目つきで、空を見上げている蓮子を睨みながら、小さくため息を吐き出す。仕方ない、今回も私
一人で調査するしかない、と思い、再び歩を進めた。
一番近くにあった墓石の、卒塔婆を抜いたり墓石を弄ったり…これじゃ、蓮台野の時とあまり変わらな
いじゃないの。

「2時29分56秒、2時29…ふ……」

突然、蓮子が時刻を刻む声が止んだ。代わりに辺りを包んだのは、耳が痛くなるほどの静寂。次いでそ
れを破ったのが、

「な…によ、あ、れ。」

蓮子の、喉の奥から無理に搾り出したような、かすれた声だった。メリーが蓮子の横に立ち並び、「ど
うしたの、蓮子?」と問いかける暇も無く、

「あれ!!」

蓮子が指差した、満月。

リング状に、真ん中が、ぽっかりと、空虚に、失われていた。

そして、その失われた空間に映し出されていた、無数の、

目、目、目、め、め、メ。

「ひッ、いっ…」
「い、やあぁあぁああああ!」

どちらからともなく上がったその悲鳴は、


一瞬で、聞こえなくなった。
彼女達の足元に開いた小さな隙間、彼女達が吸い込まれていった小さな隙間、そこから、今度は一人の
女性が飛び出した。手に古風で洋風な傘を携えた、金髪の女性。

「うふふふふ、冥界逝きの、切符はいかが?」

                                 続く?
例大祭、行きたかったけど行けなかった、雪羅奈界です。
この話、始めにコンセプトを設定したはずなんです、「秘封倶楽部ののんべんだらりとした冥界めぐり」と。これじゃぁ唯の「墓荒らしの神隠し」です。
う~む、何とかせねば。
無論こんな中途半端に終わらせるわけにはいきませんので、続かせていただきます。
ああ、可読性が損なわれる…
とにかく、こんな駄文を最後まで読んでくださってありがとうございます。
もしお暇だったら、稚拙な文章ですが長い目で見てやってください。
時には投石も。むしろありがたいです。
それでは失礼しました。
雪羅奈界
[email protected]
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コメント



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18.無評価名前が無い程度の能力削除
ああんもうそこでブツきりするなんてツレナ指すすぎであります。
折角面白そうな話でひきつけられそうだったのに残念無念。