「兎は寂しいと死んでしまうらしいですよお嬢様」
へ?と思わず変な声を出してしまった。
何時もと変わらない朝、そして何時ものように食事を取り終え何時もの様に暇つぶしを考えていた際にいきなりこう言ってきたのである。
「……兎は寂しいと死んでしまうらしいですよお嬢様」
若干目を潤ませながら同じ事を聞いてくるのだが
「……いや、聞いてなかったんじゃなくて意味が分かんないのだけれど」
それもそうだ、優雅に暇つぶしを考えている所にいきなり「兎は寂しいと死んでしまうらしいですよお嬢様」と言われて「ええ、把握したわ」等言えるはずがない居たらそいつは第3の目を持っているでしょうね
「ええっと言い方が悪かったのでしょうか言い換えるとですね」
「兎は寂しいと
死んでしまうらしいですよ
お嬢様」
「何でも3行にすればいいってもんじゃないわよ、しかもこれ実際喋ってたら3行って分からないし!」
ああ、昔からどこか抜けてる所があったと思っていたけれどここまで抜けているとはどこで間違えたのだろうか……というより何を言いたいのかしら
「ええ、把握したわ」
「…ええっとパチェ今の言葉で何がわかったのかしら」
いつの間にか横に立っていた解読班はこの言葉で何を伝えたいのかわかったらしい
「要約すると飼い主から声をかけてもらえず、目もあわせてもらえない状態で飼われているペットは、コミュニケーション不足から飼い続けることに問題がある状態になってしまうことがあります。また、コミュニケーション不足からくるストレスなどから生きる活力を失い、食欲が落ちてしまうこともあります。
食欲が落ちてしまっても飼い主家族がペットを無視し続ければ、ペットは衰弱し、死んでしまうこともあるでしょう。そんな恐ろしいことが起きないように、返事をしてもらえなくても毎日ペットには声をかけ、ペットと過ごす時間を持つようにしてください。 で合ってるかしら咲夜」
「ええ、完璧ですわ一言一句間違えないですわ」
うんうんと、首を振っているが一先ず
長!!あの一言にこれだけの意味が詰まってたと言うのかしらそしてそれを解読できたという事は
「あれ?パチェ兎何て飼ってたかしら?」
「ん~、兎みたいのがいるわね生息地は図書館一日3回頭を撫でてあげないと拗ねる兎がね」
ああ、なるほど兎扱いなのねあの子
「で、結局何を求めてるのかしら咲夜は」
「愛です!L・O・V・E!ラブですよ!お嬢様は私へ対する愛が足らないと思います!」
…いきなり何を言い出すのだこのメイドは
「昔はおはようのキスからお休みのキス買い物に行く時は後ろから見守ってくださったのに最近は全く愛が感じられません!」
「え~と…って!!初めてのお使いの時後ろから付けてる事気が付いてたの!?」
「あのお嬢様こう言うのもあれなんですが後ろに一定距離を常に開けて傘を晴れの日に指してる人はまずいませんよ」
あ~そういえばあの時はサングラスに付け髭、そしてこの服に帽子と怪しさ満点な恰好だったわね今思うと咲夜の事が心配で格好なんて気にしてなかったわねあの時は思い出すと顔が赤く染まっていくのが感じられる
「他にも紅魔館のみんなで遠足に行こうって事があったじゃないですかそれでその日のお弁当が歪んだ三角形の御握りでしたね米は硬かったし塩も付け過ぎてましたが美味しかったですねだれが作ったんでしょうかきっと愛にあふれてる人が作ったんでしょうねー」
ああ、あの日は初めての咲夜がみんなと遠足行くって事でその日の朝方からパチェにご飯の炊き方から教わり初めて作った御握りだったわね、昔の事を思い出せば出すほどに思い出がよみがえってくる。膝の上で咲夜が寝てしまい2時間ほどして起きて足が笑ってしまった事、将来お嬢様のお嫁さんになるー!って言ってた事、いやこれは「お嬢様ー今日はバレンタインですよ!結婚を前提に付き合ってください!……え?今日はバレンタインじゃないですって?貴方が私のバレンタインですよ!」と、むしろ昔よりエスカレートしているわね
「そういうわけで愛がほしいんですお嬢様!ギブミー愛!」
うわ~瀟洒なメイドという肩書が目に見えて崩れ去って行く様が目の前で行われてるわ
「で、結局何をすればいいのかしら」
結構長い付き合いなだけあって一度この従者は暴走すると目的を達成するまで絶対に引かないのだ前にホワイトデーの時にチョコを返し忘れて、まあチョコなんて要らないでしょうと部屋に戻って寝ようとしたらベットが、でかい板チョコになっていた事も人里まで飛んで行き菓子屋を叩き起してチョコを買って上げたら機嫌が直ったけれど
「御願は一つだけです膝マクラを私は要求いたします!」
膝マクラねえ、たしかに今から何年前か分からないほど前にやったきりだったわね、たまにはやってあげてもいいかしらね
「……で、どうしてこうなった」
私は現在頭を咲夜の膝に乗せ耳かきで耳を掃除されている
「いえ、膝マクラしてもらうのも考えていたのですが」
「が?」
「こうして膝マクラしながら耳かきをしてるって…お嫁さんっぽくないですか?」
「全然」
すぱっと切り捨てたはずだが何故か嬉しそうにしている
「ええっとお嫁さんじゃないって事は…お婿さんですか?」
だめだこの従者何を言っても通じやしない
「しかしこうしていると思いだしますね昔の事をよくお嬢様は膝マクラをしてくれましたよね。暖かくて心地よくて気持ちよかったです…っと終わりましたよ」
微妙に不服そうな顔をしているが、普段から自分で耳掃除をするのが癖なので耳垢は全く取れなかったようだ
「……仕方ないほら膝マクラして上げるから機嫌直しなさい」
というとパアッと顔を光らせ先ほどの不服ような顔が消え去った
「お嬢様の膝暖かいですね~それにとても落ち着きます昔と変わりませんね」
たしかに私は大して変わって無いかも知れないが咲夜はずいぶんと変わったようだあのころと違い身長も伸び私無しでも大体の事はこなせる様になり……実際少し寂しくも感じる
「そういえば、私が膝マクラで今まで寝れたのはお嬢様の膝だけなんですよ」
いきなりまたよく分からないことを言い出す、たしかに昔美鈴やパチェの膝でも膝マクラをしてもらっていたが寝てなかったのか
小さく欠伸をして
「どんな動物もですね安全な所や安心できる場合じゃないと眠らないんですよお嬢様、つまりですね……お嬢様の近くが…………」
と言うなり小さく寝息を立てながら眠りについてしまった。
「吸血鬼の近くが安心できる場所……ねえ、人間が吸血鬼の館に住んでいるだけでも可笑しい物なのにね」
「いいんじゃない蛇と蛙が一緒に住んでいる所もある位だしそれと比べれば吸血鬼と人間なんて虎と鼠を同じ部屋に入れてるような物よ」
毎度毎度の事ながらこの魔女はいつの間にか横にいる
「それ鼠が食われちゃうんじゃない?」
「あら、私はまだ食べられてないわね、逆に噛むかもしれないけれど」
……あ~そういえばそうだった長い事一緒にいたからか感覚が薄れていたけれども一応人間だったわね人の生涯を遥かに超えてるほどに生きているけれど
「で?」
「で?」
「私には?」
……もしかしてと思い膝ですやすやと寝ている従者を指さすと、こくんとお下げを揺らし魔女は首を縦に振った
「いや、膝には咲夜がいるし……って!そうじゃなくて別にこんな事しなくても」
「こんな事!?わかって無いわねレミィ大切なのは愛よ!膝が空いて無ければ、っほ」
と言うなり背中に寄りかかり丁度背中合わせような格好になった。背中に体重を掛けられているようだがとても軽くそれこそ少し触れただけで壊れそうなほどに
「暖かいわねレミィの背中……知ってるかしら子供の方が体温ガァッ!」
いやと言うほど聞いた話だ思いっきり後ろにもたれかかり後ろから「ムキュムキュ!」と抗議の声が聞こえてくる。
「あだだだ!べ、別に悪い事じゃないわよただ暖かいって話で」
「ええ、子供だから暖かいって話よね」
「いや、そうじゃなくってそもそもこうやって体をくっ付ける相手なんて相手が信用できないとまず出来ないわよ」
「……まあ、そうね」
「で、暖かいのって単純に体温だけじゃなくってそういう気持ちも入ってるんだと思うわけよ」
「つまり?」
「私も寝たいと言う事異論は認める。じゃあお休みなさい」
へ?、っと聞き返す前に背中からわざとらしく「zzzz...」と寝息を立てている。少しすると寝息が止まり何かを考える様子をした後に
「ゼットゼットゼットゼット…………」
「いや、日本語にしなくても分かるから……って起きなさい異論は認めるんでしょ!」
「………………寝たわね」
後ろからかすかながら寝息が聞こえて来るそれこそ耳をひそめてないと聞こえないほど小さな寝息だ。結局異論は認めるどころか受け付けてすら貰えなかった様だ。許可はするがそもそも受け付けないわ、と言った所だろうか
「……こうして寄せてみるとずいぶんと華奢な体ね、私ならちょっと触るだけでも壊してしまいそうなほどね」
だけれどもそんな相手に体を任せていると言う事は私を信用していると言う事……かしらね。この幻想の地に付いて来てくれそして私の事を信用してくれている者がいる。それだけでなんと素敵な事だろうかと膝の上と背中から感じる体温を感じながら普段当たり前に感じていた事を改めて思う。そしてそんな事を考えているうちに二人の寝息に釣られ徐々に瞼が閉まっていきその部屋に寝息がもう一つ増えたのであった。
………………
……………
……
「あれ、お姉様寝てるの?ん~よいっしょっと、お姉様暖かいな~………………ZZzz...」
「咲夜さ~ん、今日は門を死守しましたよーっと言ってもだれもってありゃりゃ仲良さそうに寝てますね……え~と横失礼しますよっと、ん~他の人と寝るのっていつぶりだろうな~」
「パチュリー様今日は白黒が……あ、あれ?寝ますね……こ、ここは小悪魔的に悪戯を…………したい所でしたが幸せそうな寝顔ですので横で寝ることで妥協します」
………………
…………
……
そして時間は過ぎて日も山に隠れすっかり夕暮れになった頃
「…………で、どうしてこうなった」
本日二回目の言葉だが、たしか寝る前は膝に一人背中に一人だったはずがパチェの足を枕に寝ている小悪魔が一人右腋に寄りかかって寝ている妹が一人そして仕事をサボって左腋に寄りかかって寝ている美鈴が一人
つまり今いる者達が全員寝ているという事は
「し、白黒が図書館に侵入したぞー!」
「げげ、門が壊されてる門番は何してんだ!?」
「あれ、夜ごはんはー?」
「うわー妹様の分身が!ジョ、ジョニー!俺を置いて先に逝くなー!」
「キャーイクサーン!」
「本は借りて行くぜ!」
所構わず聞こえてくる絶叫と建物が崩れ落ちるような音
「お目覚めですかお嬢様」
いつの間にか膝から居なくなり横に立っている
「ええ、そしてこの騒ぎは何かしら」
「簡潔に言うと寝過ぎていましたもうすっかり夜ですよ、そして今の騒ぎは聞いたとおりです」
「……二度寝してもいい?」
「もちろんだめです」
その後騒ぎを収めるのに深夜まで掛った
……で、2度ある事は3度ある
どうしてこうなったのかしら
「お姉様もうちょっと左に詰めて~」
「お嬢様の横は渡しませんからね……あ、下でもいいですよ」
「何言ってるのかしら咲夜ここはあえて上でしょ」
「パチュリー様の横ならどこでもいいですよー」
「ん~やっぱりベットもいいものですね~」
……何で私のベットの上がこんな集団睡眠スペースになっているのだろうか
「いや~やっぱり安心するじゃないですか、ん~お嬢様暖かいです」
そう言いながら頬を擦り付けてくる
「お姉様暖たかいし、なんか落ち着くよ~」
とフランまでもが抱きついてくるのはいいのだが
「……もしかしてこのまま寝るのかしら?」
「へ、そうに決まってますが?」
……ああ、グッバイ私の安睡よ
「じゃあ、明かりを消しますね~」
ふん、こんな状態で眠れるわけが……な、ないじゃ……い……zzzz…………
朝起きると
「ん~いい朝ですね~」
「いや~他の人と寝るなんて久しぶりだわ」
「た、たまには一緒に寝るのもいいものなんだぜ」
「こんな大人数で寝たのは修学旅行ぶりです、ああ懐かしい京都の町並み」
「たしかに魔界では前に……ってとっても前の話だけどみんなで寝てたわね」
「ふっふっふ私は毎日霊夢と一緒に寝てるわよ!」
「あんたが勝手に寝た後に布団の中に入ってきているだけでしょうが!!」
「あ~ずるい紫が入るなら私も勝手に入り込むよ!」
「ふふ、いい写真が撮れましたこんな時でも無ければ寝顔なんて撮れませんからね」
「あや~ちょっとカメラ貸して、……うんありがとう、え~とトリャ!」
「あー!な、何してるんですか!?」
「勝手寝顔を撮るなんていけないよ~」
(ふふふ、甘いわね文今の時代は音無し.光り無し,そして連射この3つを駆使して撮るのよ、この改造携帯で!)
っと部屋中に人や妖怪達がいっぱいにいるではないか
「……咲夜これは?」
「あの、夜中にあの隙間妖怪が寝てる人間等をこの部屋に送り込んで模様で、で、でもあの何故か帰ろうとしなくてみんな寝てるんですよ!」
…………ああ、寄り添っているのを見てだれもが人肌恋しいんだなと考え私はそれ以上考えるのをやめた
みんな、可愛いなぁ
誤字?
>パチュ
パチェではないでしょうか。
もう少し句読点があった方が読みやすいですね
まぁそんなの気になんないぐらい、ほのぼのしましたが!!
幻想郷は今日も平和なんですね。