私の名は魂魄妖夢。幽々子様を守る冥界の盾である。それと同時に冥界の庭師兼幽々子様の世話がかりでもある。
この幻想郷きっての満腹キャラである幽々子様に満足していただくべく日夜努力している。
今日も今日とてそれは変わらない。
「幽々子様。本日のおやつは如何いたしましょうか。」
「そうね。妖夢。今日はパップラドンカルメが食べたいわ。」
・・・私の聞き間違えであろうか。
きっとそうなのであろう。
もし聞き間違えでなければ、たった今、我が主人である幽々子様がおっしゃったものはなんだというのだ。
「申し訳ございません、幽々子様。もう一度おっしゃっていただけないでしょうか。」
「妖夢。パップラドンカルメが食べたいわ。」
どうやら聞き間違えではなかったようだ。
幽々子様は確かに、“パップラドンカルメ”とやらを召し上がりたいとおっしゃった。
幽々子様がお望みとあれば、それがたとえ閻魔の命であったとしてもそれをお届けするのが私の役目だ。
しかし、その“パップラドンカルメ”とやらを私は知らない。
いくらなんでも知らないものを即座に準備するというのは不可能だ。
「幽々子様。その“パップラドンカルメ”というものは一体どのようなものなのでしょうか。申し訳ありませんが、私はその“パップラドンカルメ”とやらを存じ上げないのです。」
「あら。妖夢も知らないのね。」
妖夢・・・“も”?
「実は私も知らないの。」
・・・これは参った。まさか幽々子様ご自身も存じ上げないものであるとは予想だにしなかった。
だが、これしきでくじけていては魂魄の名が傷が付く。
「せめて名前以外になにかご存じではありませんか。」
「噂だけれど、クリームみたいに真っ白いそうよ。」
どうやらはっきりとわかるものはものは名前だけらしい。名前がわかるだけでもまだましか。あとは、おそらく甘味の類であることと白いということくらいか。
・・・どうやって探そうか。
※※※※※※※※※※
私は幽々子様の望みを叶えるべく、地上へとやってきた。地上の有識者達に尋ねれば、パップラドンカルメがどんなものであるかもわかるに違いない。
まず初めに訪ねるべきは、やはり幻想郷きっての常識人である上白沢慧音のところであろう。
期待を胸に私は彼女の家の前に降り立った。
「慧音さん!いらっしゃいますか!?」
「どちら様・・・、む、妖夢か。こんにちは。今日はどうしたんだ?」
「こんにちは、慧音さん。本日は少々お聞きしたいことがありまして。」
「聞きたいこと?珍しいな。私に答えられるものであれば良いが。」
「慧音さんはパップラドンカルメというおやつをご存じでしょうか。」
「パップラドンカルメ・・・?いや、聞いたことがないな。」
この答えは予想外であった。幻想郷の歴史を編纂する役目を担う彼女が知らないものをどう探せというのだ。このミッションに暗雲が立ちこめはじめた気がする。
「私はあまりそういった甘味には詳しくないんだ。力になれずすまない。」
「そうですか・・・。わかりました。お時間とらせてすみません。先を急ぎますので私はこれで失礼いたします。」
「あ、少し待っててくれ!」
「?」
「おーい!妹紅!ちょっと来てくれ!」
飛び立とうとした私を呼び止め、彼女は家の中に向かいそう言った。どうやら中に不死人も居るらしい。
ややすると、中から不死人が現れた。
「どうかしたのか、慧音。・・・ん、あんたは確か冥界の剣士の。」
「お久しぶりです、妹紅さん。」
「ああ、久しぶり。」今日はどうかしたのかい?
「妹紅。さっそくなんだかパップラドンカルメというおやつを知らないか?」
「パップラドンカルメ?ああ、聞いたことあるな。」
「本当ですか!?して、それは一体どんなものなのでしょうか?」
「いや、私も昔、人づてに聞いただけだから細かいことはわからないんだけど、カステラみたいに四角くて、メロンみたいな味がする子供に人気のお菓子らしいよ。」
また噂話か。まあ情報は多いに越したことはない。これがわかっただけでも足を運んだ甲斐があるというものだ。
「そうですか。ありがとうございます。」
「ん。見つかるといいな。パップラドンカルメ。」
※※※※※※※※※※
私はその後も懸命に捜し回った。だが、パップラドンカルメそのものはおろか、はっきりとした情報すら得られなかった。得られたものは今までと同様に要領を得ない噂話ばかりだ。
御阿礼の娘いわく「プリンみたいな味」。
永遠亭の薬師いわく「ケーキみたいな味」。
紅魔館のメイドいわく「マシュマロみたいにぷあぷあ」。足元にしがみつくょぅι゙ょ二人に悶えながらそう言った。おそらくぷあぷあなのは彼女の頭の中だろう。
都会派魔法使いいわく「ポップコーンみたいにもこもこ」。彼女は話しながらも、等身大魔理沙人形の製作の手を休めない。幻想郷には変態ばかりか。
普通の魔法使いいわく「バナナみたいな味」。彼女には、先程都会派魔法使いの家で見たものを伝えておいた。私がお暇した後、彼女は八卦炉片手に箒で飛んでいった。今日の天気は晴れ、所によりドラゴンメテオになりそうだ。
今までの情報を整理してみよう。
パップラドンカルメとは、
○プリン・ケーキ・バナナ・メロンみたいな味がする
○白くて四角くてぷあぷあでもこもこしている
・・・そんな胡散臭いお菓子があってたまるか。むしろあったら困る。
きっと都市伝説か何かに違いない。それを幽々子様は耳にしたのに違いない。
しかし、幽々子様がご所望なさったものを、見つからないなどと私が諦めるわけにはいかない。
もう一度考え直そう。胡散臭くて、都市伝説のような甘味。
数秒の思考の後、はっと気が付いた。なんだ、そういうことだったのか。幽々子様も初めからそう言ってくだされば良かったのに。むしろ謎かけをして、私がそれを解けるかどうかを楽しんでいるのかもしれない。
そうとわかればぐずぐずしてはいられない。さっそく準備に取り掛からなければ。
※※※※※※※※※※
一時間後、なんとそこには亀甲縛りにされたゆかりんの姿が!
幽々子「今思えばよく助かったもんだよ(仕返し的な意味で)。あんな無茶(な命令)は二度としないよ。」
妖夢「神の声が聞こえた。今でも間違った行動だとは思っていない。」
藍「カッとなって手伝った。今は反省している。」
なんという一発ネタ…
剣術指南は諦めたかw
ちっちゃいころどんなお菓子なのかと想像したなぁ・・・