Coolier - 新生・東方創想話

ループ異変

2013/06/07 17:35:07
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―――パポッ、パポッ、パポッ……



……七回。
いつだったか、紫が私にくれた「鳩時計」。
木製のシンプルな作りで、時刻になれば茶色い木彫りの鳩が、時計上部に設置された住み処の小屋から出て来て、鳴く。
私は大抵そいつが七回鳴いた時に起きる。
別に意識している訳ではないのだが、なにやら七回鳴いた時に目覚めるのが一番気持ち良いいらしく、無意識の内に体が覚醒してしまう。
逆に寝付く時は大抵そいつの鳴き声を十一回聞いた時。
聞いた後は程よい睡魔に襲われ、これまた気持ちが良い。
すぐに布団へ入り、そのまま夢の中へと誘われる。
以後、七回鳴くまで目が覚める事はなく、良い具合の熟睡が出来、規則正しい生活が可能に。
……ゆえに、最近の私は、なんだかすこぶる調子が良い。
頭はスッキリ、体調も万全。
とても新鮮な気持ちで境内を掃けるし、お茶も啜れる。

「おっと相変わらず早起きだな霊夢」

「朝っぱらから神社に来るくらいだし、あんたのが早起きでしょ?」

「まあな、私は二時間前に起きたぜ」

「……私が寝てる間、何も盗ってないでしょうね?」

「大丈夫、起きるのは早いが神社に着いたのはさっきだ、それに借りる程めぼしいもんもないしな」

「……あっそ」

起きて早々私の隣を陣取っていたのは、普通の魔法使いこと霧雨魔理沙。
黒系の服に白いエプロン、金色の髪に黒い帽子を被っている、私の友人。
背は私より小さいが、態度は私より大きい。
さらに借りた物を返さない事で有名らしく、彼女が向かう先では様々な物が消失しているとか。
あまり私は被害には遭わないけれど、某図書館の被害は凄まじいらしい。

「って事で霊夢、遊ぼうぜ!」

「……今起きたばかりなんだけど」

「どこで遊ぶか……よし、紅魔館へ行こう」

「なんで遊ぶのが確定してるのよ」

「どうせ暇だろ、決定決定」

やたら強引な魔理沙。
髪は乱れ服も寝巻き、布団も敷きっぱなし、色々と寝起きの私に対してこれだ。
しかし、魔理沙の言う通り暇なのは紛れも無い事実。
どうせこのあとも神社の掃除か、縁側で茶を啜る程度だし。
紅魔館で暇を潰しつつ朝食にありつけるのもよさそうだ。

「じゃ出発だぜ」

早くもホウキにまたがり魔理沙は空へと浮かぶ。

「早く行こうぜー」

「……まったく」

よくあることだ。
私が遊ぶ事に対し賛成せずとも、私が遊ぶそぶりを見せずとも、魔理沙は広い幻想郷へ飛び出していく。

「ちょっと待ってなさい、着替えたりするから」

そんな魔理沙に釣られるように、私も幻想郷へと流れ出ていく。
魔理沙一人勝手に放置しておけばいいのだが、そうと分かっていても釣られてしまう最近の私。
一体全体どうしたのだか。
まあこれも、よくあることだ。





ループ異変





……紅魔館。
吸血鬼レミリア・スカーレットを中心に集まった人妖が住まう、霧の湖の湖畔に建つ西洋風の館。

「着いたぜ」

相変わらず、紅魔館の前には門番に限りなく近い何かが居て、館の安全を守っている事もなく、静かに寝息を立てていた。

「気持ち良さそうに寝てるわね」

「違うぞ霊夢、これは瞑想だ」

「瞑想?」

「瞑想って事にしておけば、こいつの世間体は守られるだろ」

「……いや、もう手遅れな気がするけど」

とりあえず瞑想中らしい門番を突破し、紅魔館の敷地内へ侵入。
夜を中心に活動する吸血鬼の館だけあってか、早朝なこの時間帯、館は静まり返っている。

「しかしまあ楽しみだな朝飯」

「なんだ、魔理沙も朝飯狙い?」

「そりゃな、咲夜の料理は美味いからな」

咲夜というのは、この館に住む唯一の人間でありメイド長、私達共通の友人でもある十六夜咲夜の事。
同じ人間なのに、私達と違い色々と完璧なのが咲夜だ。

「勝手に入ってきたばかりか、朝食も頂くつもりだなんて……」

噂をすればなんとやら。
目の前に頭を抱えたスーパーメイド、十六夜咲夜が現れた。

「よう咲夜、今日の朝飯はなんだ?」

「いやあんたに食べさせる朝食なんてないけど」

先程完璧と述べたが、咲夜はお世辞抜きで本当に完璧だ。
羨ましいレベルに女性的なプロポーション、料理も凄腕、また純粋な戦闘能力も私達以上。
パッと思いつくだけでもこれくらいの完璧要素がある。

「あら、今日は霊夢も居るのね」

「えぇ、まあ暇だったし」

「ならちょうどいいわ、朝食でもどう?」

「え、ちょ、なんで霊夢には」
「ありがとう咲夜、ごちそうさせてもらおうかな」

まさか本当に朝から咲夜の手料理が食べられるとは、実に運が良い。
魔理沙が後ろで不満げな顔を浮かべているが、まあいいだろう。

「おい咲夜、なんか霊夢と私で扱いが違うぞ」

「普段の行いを顧みなさい」

「……んー、至って真面目なか弱い少女だと思うが」

「さあ霊夢、行きましょう」

「わー待て咲夜冗談だから」

後ろで喚く魔理沙を尻目に、私は咲夜に連れられ館内へ。
もちろん魔理沙も何か言いながらついて来る。

「レミリアは寝てんの?」

「そうね、夜中妹様と弾幕ごっこで遊んでいてね、疲れたみたい」

「へぇ、さぞ激しい夜だったでしょうね」

「えぇ、妹様のレーヴァテインを素手で弾くお嬢様がかっこよかったですわ」

「うわぁ、ガチすぎるじゃない」

「……ま、結局お嬢様達が仲良く寝付いたのは三時間くらい前かしら、色々片付けが大変だったわ」

咲夜は疲れたように大欠伸。
咲夜が欠伸とは珍しい。
まああの二人が夜通し弾幕ごっこ、聞いただけでも疲労が溜まる話だ。
というか咲夜は寝ている暇があったのか。
徹夜明けともなれば相当体に堪えそう。

「咲夜は寝たの?」

「寝てないわね……まあ仕事の合間に仮眠くらい摂れるから平気よ」

「ならいいけど」

仕事の合間に仮眠とは、相変わらずハイレベル。
咲夜がこう言うならひとまずは平気なのだろう。

「なに霊夢、心配してくれるの?」

「ち、違うからね」

「あら残念」

よくあることなのだが、咲夜と話していると、どこか心の底まで見透かされているような錯覚を覚える。
咲夜だから嫌な気はしないものの、凄まじい洞察力だと思う。
紫も似たような感じだが、こちらは嫌な気しかしない。

「わ、悪かったよ咲夜、本気で謝るからさ」

魔理沙の声に焦りが出て来た。
これは本気で焦っている声色。
咲夜に、

もういいんじゃない?

と目で合図をすると、

仕方ないわねぇ

とでも言いたげな表情が返ってきた。

「魔理沙」

「お、おう、なんだ咲夜」

「「咲夜お姉ちゃんごめんなさい」って言ったら、朝食へ招待するわ」

「……ば、馬鹿かお前そんな恥ずかしい事言える訳ないだろ!」

「じゃあ朝食は無し、お帰りはあちら」

「く、くそぉ……」

……最近の咲夜は、小さい娘をからかうのが趣味らしい。
今みたく魔理沙や、あるいは白玉楼の庭師がからかわれている姿を良く見かける。
魔理沙が顔を真っ赤にしているこの状況も、おそらく最初から咲夜の思惑通り。
私はギリギリ対象外らしく、そこまで深くからかわれた事は無い。

「さ、咲夜お姉ちゃん、ごめんなさい……」

……言った。
思わずキュンときそうな可愛さだが、それは置いておく。
そこまでして魔理沙は咲夜の手料理を食べたかったらしい。

「よろしい、じゃあ二人揃って朝食に招待するわ」

咲夜も満足したようだ。
これでようやく朝食。
まさか本当に食べられるとは思ってなかったけれども。
ここはこの僥倖を素直に喜ぶべき。

「く、屈辱だぜ……」

「まあまあ魔理沙、案外可愛かったわよ?」

「か、かわ……うぅ」

さらに顔を真っ赤にする魔理沙を横目に、私は紅魔館の台所へと歩くのであった。



紅魔館で朝食を摂り、適当に咲夜とだべった私達は、再び広い幻想郷の空に居た。

「おいしかったわねぇ」

「ああ、料理の腕だけは咲夜に勝てる気しないな」

「そうね」

「さてと次はどこ行くか、白玉楼か、そうだな」

唐突に次なる目的地、白玉楼が決まる。

「なんで白玉楼?」

「ほら順番的に」

果たしてここにどんな順番が成立しているのかは謎。

「時間もちょうどいいし、今度は昼飯だな」

照らす太陽は真上。
春先のぽかぽかとした陽気が心地好い。
時間は確かに昼時、となるとやはり昼食を食べる以外の選択肢はなかった。

「食べてばっかねぇ」

「食べ歩きだな」

「飛翔してるけどね」

「食べ飛翔か」

「いや語呂悪すぎだから」

幽明結界を越え、長い階段を上がると、見えてきたのは広大な庭園が魅力の白玉楼。
さらに剣を振っている人影を確認出来た。
おそらくあれは魂魄妖夢。
白玉楼の庭師で、確か主である西行寺幽々子の護衛兼剣術指南役とかなんとか。
やたら凄そうな肩書きだけど、妖夢自体は魔理沙と同等の背丈、やたら生真面目、半分だけ人間、胸も無い、と色々幼い。
その幼さが可愛い、と以前述べていたのは咲夜。
妖夢は可愛い、私が見ても確かにそれは納得出来る。
また妖夢も咲夜同様、私達共通の友人……なのだと思う。

「妖夢ー昼飯よこせー」

「あ、霊夢じゃないですか、こんにちはです」

礼儀も何も無い魔理沙を完全にスルーし、ペこりと頭を下げてくる妖夢。
実に良く出来た娘だ。

「こんにちは妖夢」

「ついでに魔理沙もこんにちはです」

「おう、こんにちはだな」

続いてあんな魔理沙にも挨拶をしている。
本当に良く出来た娘だ。

「今日はどうしたのですか?」

「昼飯を食べにきた」

「はい?」

「だから昼飯を食べにきた」

妖夢が困った顔で私を見てくる。
そりゃまあいきなり、

昼飯を食べにきた

と言われても大抵の人が妖夢みたく困惑するだろう。
一応妖夢へ頷いて、私達が本気で昼飯を頂きにきた意思を伝える。

「うーむ」

結果腕を組み考え込む妖夢が目の前に出現。
普通に断るなりすればいいと私は思うが、そこは安定の妖夢クオリティ。
しっかりと考えてくれる。

「……そうですね、せっかく霊夢も居る事ですし、分かりました」

そして快い返事が返ってくる。

「昼食をご馳走しましょう!」

お任せ下さいと言わんばかりに無い胸を叩き、その後タタタッと小走りで白玉楼内部へと消える妖夢。
微笑ましいくらい子供っぽい。
幽々子とセットで居る時は、さらにそれを実感出来るというもの。
……そういえば、今日は幽々子の姿が見当たらない。
白玉楼に来れば、いつもどこからともなくやって来るのだが、今日は出現しない。

「なあ霊夢」

「なに?」

「なんか霊夢だけ待遇良くないか?」

「まあ普段の行いが違うからね」

「むむ、ここでもそれかよ」

少なくとも、魔理沙よりかは良い行いをしている自信はある。
ほら、境内の掃除とか、縁側でお茶飲みとか。



妖夢の作った昼食を胃袋に入れ、白玉楼でくつろぐ事五時間。
なぜこんな五時間も居る羽目になってしまったかと言うと、

「今日は終日私一人なので、その……もう少しここで、お話ししていきませんか?」

と妖夢に上目遣いでお願いされたから。
妖夢曰く今日は幽々子がどこかに出掛けているらしく、ここには自分しか居ないとのこと。
口では言わなかったものの、おそらく妖夢は寂しいのだろう。
昼食をご馳走になったというのもあり、私と魔理沙は五時間妖夢の話し相手になってあげたのだった。



で、今はもう博麗神社。
魔理沙と二人で夕食を摂り、二人で湯船に浸かり、二人で布団の中。

「いやはや今日は食べ飛翔だったな~」

「だから語呂悪すぎよそれ」

「なんにせよ咲夜の洋食と妖夢の和食、どちらも甲乙つけがたいよな」

「まあそうね、妖夢も予想外に美味しかったわ」

「なんでも最近咲夜に料理教わってるらしいぜ」

「へぇ」

いつか白玉楼に洋食でも並ぶ日が来るのか。
……ミスマッチだ。



―――パポッ、パポッ、パポッ……



ここで鳩時計が鳴く。
十一回。
聞いた途端、やたらに眠くなる。
魔理沙がまだなんか話しているようだが、もう無理。
寝る子は育つ、いつか咲夜みたいなプロポーションを得る為にも、もう寝る事にする。



―――パポッ、パポッ、パポッ……



……七回。
これが聞こえたという事は朝だ。

「おっと相変わらず早起きだな霊夢」

目を開けてみれば、魔理沙が私の隣を陣取っていた。
そういえば昨日は一緒に寝ていたのだったか。
布団から出ているのだからどう考えても魔理沙の方が早起きだ。

「あんたのが早起きでしょ?」

「まあな、私は二時間前に起きたぜ」

「……ほんと目覚めが早いわねぇ」

「褒めなくてもいいぞ」

「褒めてないから」

無駄に早く起きているのなら、朝食くらい作っといてくれればいいのに。
思えば昨日夕食作ったのは私だから、魔理沙は昨日三食全部誰かに作って貰っていたのか。
ちゃっかりしている。

「って事で霊夢、遊ぼうぜ!」

「またそれ?……今起きたばかりなんだけど」

「どこで遊ぶか……よし、紅魔館へ行こう」

「どんだけ紅魔館好きなの、昨日も行ったじゃない」

「ん、きのう?」

「どうしたの?」

顔に疑問の色が浮かぶ魔理沙。
ついにボケたのか、まだ若いのに早いものだ。
なんにせよ、まさか二日続けて紅魔館に誘われるとは思ってもいなかった。

「……ま、いいか、出発だぜ」

早くもホウキにまたがり魔理沙は空へと浮かぶ。

「早く行こうぜー」

「……まったく」

また咲夜に朝食でもご馳走してもらう感じになるのか。
まあ出来たらそれでも良いが、二日連続はさすがに咲夜が怒りそう。
とか何とか思いながらも、紅魔館へ向かう私であった。



またしても、紅魔館の前には門番に限りなく近い何かが居て、館の安全を守っている事もなく、静かに寝息……いや、瞑想をしていた。

「また瞑想中なのね」

「お、私と同じ発想とはやるな」

「はぁ?」

「瞑想って事にしておけば、こいつの世間体は守られる、って思ったんだろ?」

「……いや、うん、そうだけど」

……どうも変だ。
さっきもそうだったが、なぜか、不思議と、魔理沙と会話が噛み合ってないような気がする。
昨日自分で言っていたくせして……ひょっとして私をからかっているのか。

「しかしまあ楽しみだな朝飯」

「え、ああ、楽しみね」

「だよな~咲夜の料理は美味いからな」

ついでに既視感が物凄い。
昨日もこの時間帯にこの場所でこんな会話をした、気がする。

「勝手に入ってきたばかりか、朝食も頂くつもりだなんて……」

そしてやって来た。
頭を抱えたスーパーメイド、十六夜咲夜が。

「よう咲夜、今日の朝飯はなんだ?」

「いやあんたに食べさせる朝食なんてないけど」

なんだろうこれは。
なぜまたこのやり取りを繰り返すのだろうこの二人は。

「あら、今日は霊夢も居るのね」

「……えぇ、まあ」

「ならちょうどいいわ、朝食でもどう?」

「え、ちょ、なんで霊夢にはそうなんだよ!」

気味が悪いくらい同じ。
何もかもが昨日と同じ。

「おい咲夜、なんか霊夢と私で扱いが違うぞ」

「……普段の行いを顧みなさい」

「……んー、至って真面目なか弱い少女だと思うが」

「さあ霊夢、行きましょう」

「わー待て咲夜冗談だから」

後ろで喚く魔理沙。
咲夜に連れられ館内へ入る私。
……昨日と同じだ。
昨日と同じように振る舞うだけで、誰かから何か貰えたりするのか。
しかし、どうも二人が意図的にやっているとは思えない。
動作があまりにも自然すぎる。
とても意識して昨日の真似をしているとは考えられない。
ここまで同じだとするともしかして…………ありえなくはない。
ここは幻想郷。
早苗じゃないけど常識に囚われてはいけない。
咲夜で確認してみよう。

「咲夜」

「……え、何かしら?」

「レミリアは寝てるのよね?」

「……そうね、夜中妹様と弾幕ごっこで遊んでてね、疲れたみたい」

「二人が寝付いたのは三時間くらい前よね?」

「え、えぇ、そうだけど……、よく知ってるわね」

心底驚いた咲夜の顔……確定。
多分ここは、昨日だ。
自分でも何を確定しているのか分からなくなりそうだが、間違いなく今私が居るここは昨日の世界。
こう考えれば、魔理沙との不思議と噛み合わない会話や咲夜の言動、全てに納得がいく。

「わ、悪かったよ咲夜、本気で謝るからさ」

納得がいってしまったけど、これすなわちどういう状態なのだ。
今日が昨日って。
見た感じ魔理沙と咲夜に今日が昨日という認識は無い。
おそらく私がこれについて聞いた所で、変な顔をされるだけだろう。

「魔理沙」

「お、おう、なんだ咲夜」

「「咲夜お姉ちゃんごめんなさい」って言ったら、朝食へ招待するわ」

「……ば、馬鹿かお前そんな恥ずかしい事言える訳ないだろ!」

「じゃあ朝食は無し、お帰りはあちら」

「く、くそぉ……」

咲夜が魔理沙をからかう。
昨日と全く同じように。

「さ、咲夜お姉ちゃん、ごめんなさい……」

……言った。
まさか二回目なのにキュンときてしまうとは。

「よろしい、じゃあ二人揃って朝食に招待するわ」

やはり咲夜も満足。
また朝食。

「く、屈辱だぜ……」

「二回目でも可愛いわね」

「か、かわ……てか二回目ってなんだよ」

「別に、気にしなくていいわ」

「?」

頭にクエスチョンマークを浮かべる魔理沙を横目に、私は紅魔館の台所へと歩くのであった。



紅魔館で昨日と同じ朝食を摂り、昨日と同じく適当に咲夜とだべった私達は、やはり再び広い幻想郷の空に居た。

「変わらないわねぇあの味」

「安定して美味いよな、料理の腕だけは咲夜に勝てる気しないぜ」

「……そうね」

「さてと次はどこ行くか、白玉楼か、そうだな」

やはり次なる目的地は白玉楼に決まる。

「やっぱ白玉楼か」

「まあ順番的にな」

うーん、順番ってなんなのだろう。
あれか、異変を起こした順番か。

「時間もちょうどいいし、今度は昼飯だな」

異変……これは異変なのだろうか。
……いや、

逆に異変じゃなかったらこれは何?

となるから必然的に異変だ。

「異変かぁ」

「異変だと!?」

「魔理沙は異変が起きてるって気づいてる?」

「……そういえば、今日の咲夜は霊夢にだけ優しかったな」

……ダメか。

「あぁ、異変が起きてるとか冗談だから」

「はぁ!? なんだそれ!」

面倒な事にこの異変は私しか認知していない。
魔理沙はこんなだし、何よりあの咲夜ですら何も感じていない。
私の周りがあまりにもいつも通りすぎて、まだ本当に異変なのかを心配する段階。

「妖夢ー昼飯よこせー」

「あ、霊夢じゃないですか、こんにちはです」

妖夢もいつも通り。
もとい、昨日通り。

「こんにちは」

「ついでに魔理沙もこんにちはです」

「おう、こんにちはだな」

昨日のままの良い娘な妖夢。

「今日はどうしたのですか?」

「昼飯を食べにきた」

「はい?」

「だから昼飯を食べにきた」

また妖夢が困った顔で私を見てくる。
昨日通り妖夢へ頷いて、私達が本気で昼飯を頂きにきた意思を伝える。

「うーむ」

しっかりと考える。
まあどうせ作ってくれるのだろうけど。

「……そうですね、せっかく霊夢も居る事ですし、分かりました」

ほら、いい娘だから妖夢は。

「昼食をご馳走しましょう!」

こうして私はまた同じ昼食を食べる訳だ。

「なあ霊夢」

「なに……あーあれか、普段の行いが良いからよ」

「え、っとよく分かったな」

「まあ付き合い長いからね」

昨日もした会話をこれからまた五時間もしていくなんて憂鬱だな。
と思いながら、もうじき出来るのであろう妖夢の料理を待つのであった。



妖夢と五時間話して早くも博麗神社。
昨日通り魔理沙と二人で夕食を摂り、二人で湯船に浸かり、二人で布団の中。

「いやはや今日は食べ飛翔だったな~」

「……そうね」

「……なんか元気ないぞ霊夢」

「そう見える?」

魔理沙には悪いけど、今はもう異変の事しか頭にない。
どうやったらこれを解決出来るのか、それしか頭にない。
しかしどこから取り掛かっていいのか皆目見当がつかない。



―――パポッ、パポッ、パポッ……



ここで鳩時計が鳴く。
十一回。
聞いた途端、やたらに眠くなる。
まだ色々考えたいが、もう無理な私がいる。



―――パポッ、パポッ、パポッ……



……七回。
これが聞こえたという事は朝だ。

「おっと相変わらず早起きだな霊夢」

起きてすぐ聞こえる魔理沙の声で確定、今日も昨日だ。
……また始まってしまったか、今日のような昨日のような訳の分からない一日が。

「まあ、おはよう」

軽く挨拶を一言。
とりあえず毎度同じ言葉しか発しない魔理沙は放置。
今日からはこの異変の解決に力を注ぎたい。
そのためにもまず情報整理からやっていくとする。

「って事で霊夢、遊ぼうぜ!」

異変は今日が昨日になっているというもの。
なんでこうなったのか、原因は何とか、深く考えると頭がこんがらがりそうな内容。
……うーん、もっと簡単に考えたい所。
今日が昨日って事は、要するに時間がループしているって事……ともとれるか。
あー、こっちの方が分かりやすいかもしれない。
ようするに時間がループしている異変、か。
多少分かり易くなったけど、まだ深く考えちゃいけない段階。
まずはこの異変に関係していると思しき奴から話を聞くだけだ。

「どこで遊ぶか……よし、紅魔館へ行こう」

……時間で思いつくって言ったら、まあやはり咲夜になる。

「出発だぜ」

しかし前話した時は認知してなさそうだった……けど、こちらからこの話題を振ってみれば、もしかしたら。
時間を操る程度の能力を持つ咲夜だ、私が言う事で時間がループしている事に気づいてくれるかもしれない。
はたまたあっさりと解決してしまうかも。

「紅魔館に行くわよ」

「そうだな、だから早く着替えてくれよ霊夢」

ひとまずいつも通り紅魔館へ向かう。



もはや定番となった瞑想中の門番。

「おいおい門番はスルーかよ」

門番の横を素通りし、私は一気に館内へ入る。

「咲夜、出てきて!」

そしてすぐに咲夜を呼ぶ。
声は館全体に響いていく。

「ど、どうしたの霊夢」

現れた咲夜は前回と同じように心底驚いた顔で、私を見ていた。

「ちょっと二人きりで話しがしたい」

「え、い、いきなり何よ」

やたら動揺している咲夜。
まあ朝一でこんな事言われたら誰でも動揺するか。

「魔理沙は図書館にでも行ってて」

「なんだ、展開が読めないんだが」

「いいから」

早々と魔理沙を図書館へ追いやり、咲夜と二人きりの空間を作る。

「霊……夢?」

「身構えなくていいから、ちょっと咲夜に聞きたいの」

真剣に咲夜を見詰める。
ただならぬ雰囲気を察知したのか、咲夜も真剣に見詰め返してくる。

「時間がループする事って……ある?」

思い切って聞いてみる。

「……」

「……」

質問からだいぶ経ったが、なかなか咲夜が返事をしてこない。
いつの間にか俯いている。
問が意味不明すぎたか。
しかし今の状況はこれの訳で。
これより噛み砕いた説明となると、また少し頭で考えなくてはいけなくなる。

「……ようやく」

「え?」

それは、小さな声だった。

「ようやく気づいてくれたのね、霊夢」

顔をあげ、再び目が合う咲夜の瞳は、少しばかり潤んでいた。

「気づいて……って咲夜!?」

そのまま膝から崩れ落ちていく咲夜。
反射的に体を支える。

「咲夜、え、なに、大丈夫?」

「同じ今日を何回も何回も……私以外、お嬢様もパチュリー様も、霊夢でさえ、誰一人として、変に思ってなくて……もう、私は、この閉ざされた世界で、一生……」

嗚咽混じりに次々と言葉を紡いでくる咲夜。
どうしてこうなったか理解出来ない私は、落ち着くまで背中をさすってあげる事しか出来なかった。



「い、一ヶ月も前から?」

「そ、一ヶ月も前から今日がずっと続いてる」


落ち着いた咲夜から明かされた驚愕の事実。
なんとこの異変……というか今日は、もう既に三十回以上、すなわち実時間にして一ヶ月は続いているという。


「……今日が三回続いた時、私はまずお嬢様に相談したわ」


能力の賜物かは定かではないが、二回目の今日が訪れた時点で、咲夜は時間がループしている現象に気づけたらしい。
しかし気づけただけで、どう能力を使ってもループを元に戻す事は出来なかった。
三十回以上ループしている今でも、それは変わらない。


「何言ってるの? って顔だったわ、とても、とても辛かった」


ループし始めて一週間、すなわち七回今日が訪れても、一向にループが元に戻る気配がない。


「パチュリー様にも相談した、でも結果は同じ、ショックを受けただけだった」


この辺りから咲夜は元に戻す事を諦め、この閉じた世界の住人である十六夜咲夜を演じ始めた。


「当然霊夢にだって相談したわ、もちろん結果は同じ……もう、この異常な状態を受け入れるしか、私には道がなくなった」


演じる……レミリア達がした弾幕ごっこの後片付けや彼女達の寝かしつけから始まり、朝方に私と魔理沙を出迎え、朝食をご馳走し適当にだべり、そこから少し仮眠し、夜に備えて館内の清掃や夕食の準備、レミリアを起こしに彼女の部屋へ行き、そして夕食を食べて……ひたすら毎日、今日を繰り返す。


「受け入れたら多少は楽になれた、同じ時刻に同じ事をすればいいだけだもの、繰り返しの作業」


もう咲夜の目に映る全ての人物は、ただ決められた行程を決められた時間に繰り返す機械に見えたらしい。


「だから前回、霊夢が私を呼ばないタイミングにも関わらず、私を呼んでくれた時は、驚くなんてもんじゃなかった」


それもそうだ。
私達以外の生き物は無意識のうちに今日を繰り返すだけ。
もはや機械と同じ。


「今回もそう、シチュエーションは同じなのに、二回連続で霊夢がいつもと違う事をしてきた……とても、救われた」


機械じゃない、咲夜と同じ生きている私が現れた。
咲夜にとって、これがどれだけ嬉しい事態だったか、私には想像がつかない。



「とりあえず咲夜、どうにか解決していこっか」

「そうね」

咲夜から一通り聞いて、改めて異変を解決するぞと意気込む。
今までは異変が起きているにも関わらず、起きている決定的な証拠がなかった。
ゆえに異変を解決出来るか分からなかった。
しかし今はこの現状をおかしいと感じる者が、私以外にも一人居る。
これは異変が起きている何よりの証拠。
異変が起きているなら、必然的に解決も出来る。
解決するために異変は起きるのだから。
今の段階では異変の犯人はまったくの謎だが、咲夜も居るしどうにかなるだろう。

「あと霊夢、私が泣いてた事は秘密よ」

「別に言い触らしたりなんかしないわよ」

「ありがとう霊夢、優しいのね」

「いや、ほら、私も同じ立場だったらそうなりそうだし」

事実、自分以外の生き物が、毎日毎日何の疑問もなく同じ行動を繰り返していたら、気が狂ってしまうだろう。
一週間持つかどうか分からない。

「にしても咲夜も泣くのね、驚いたわ」

「ね、私も驚いたわ」

「自分で驚くのね」

「そりゃあねぇ」

まあ今は咲夜が居る。
同じ認識を持っている咲夜が居る。
だからこれについては心配無用。

「さて、いつも通りだと私はこの後白玉楼に行くのだけど、行ってみる?」

「白玉楼……そうね、行ってみるわ」

では、行動開始。
結局いつも通り白玉楼……いや、今回は魔理沙ではなく咲夜と一緒だから、いつも通りではないのかもしれない。



「こんにちは……おや、珍しい組み合わせですね」

毎度の事ながら、やはり妖夢は剣を振っていた。

「こんにちは妖夢」
「妖夢」
「わわっ、咲夜待ってくださ……むぐぅ」

……出会って早々、咲夜は妖夢を抱きしめる。
小さい娘をからかうのが趣味だから仕方がない。
ただ、魔理沙とはまた違うベクトルでのからかい方だと思う。
妖夢へは抱きしめたり撫でたりしていて、謎の溺愛。

「離して下さい……あの、まだ掃除とかが」

「もう、霊夢が居るのに同じ反応しかしないのね」

「な、何言ってるんですか、咲夜」

あまり抵抗しない辺り、妖夢もまんざらではないのか。
というか言葉からして、咲夜は過去に妖夢と会っていたようだ。
きっと妖夢にも相談したのだろう。
まあ、レミリア達と同じ反応が返ってくるだけだったろうが。

「今日は二人してどうしたのですか?」

「うーん特に用はないんだけどね」

「な、ないのですか」

妖夢が呆れた表情をする。
実際、無いから仕方ない。
この異変の犯人が妖夢とは思えないし、妖夢がこの異変を認知しているとも思えない。
まあでもせっかく来たから、一応聞いてみる。

「ねぇ妖夢、昨日が今日って自覚ある?」

「は、はい?」

咲夜の腕に抱かれた妖夢は、
何言ってるんだ?
とでも言いたげな顔だ。

「だからさ、昨日が今日って自覚ある?」

「えっと、その、すみません、きのうとは何でしょうか?」

「……え?」

「え」

思わず顔を見合わせる私と妖夢。
何言ってるんだ?
で済めばまだ安いレベル。

「あーっと妖夢、とりあえずあっちで剣でも振ってて」

「わ、分かりました」

咲夜が妖夢をここから遠ざける。
後、私と向かい合う。

「霊夢は知らなかったの?」

「えーと、何を?」

真剣な咲夜であるが、どうにも何を言いたいかがピンとこない。

「私達以外、『昨日』という概念がないのよ」

「……は?」

「『昨日』だけじゃなくて、『一昨日』も『一週間』も、ついでに『明後日』とかも、私達以外は、『今日』という概念だけがあるの」

……咲夜が言いたい事は分かった。
そしてこれが分かると、私達以外がどんな状態なのかが一気に分からなくなる。

「え、でも、昨日までの記憶は持ってるのよね?」

「記憶はある、過去もある、ただ、『昨日』という概念がないだけ」

「う、うーん何となく分かったような」

「……あと、分かると思うけど、私達以外『今日』の記憶は蓄積されないわ」

「それはまあ魔理沙を見れば分かるけど……」

いきなり凄く難しい話になってきた。
つまり、昨日までの出来事は記憶として残っているが、昨日、一昨日などで区分けされず、過去としてひとまとめになっている感じ……でいいのか。

「『今日』しか繰り返さない世界なのだから、『昨日』なんて無い、『明日』だって来ないのよ、妖夢達にはね」

咲夜は寂しそうに、向こうでまた剣を振りだした妖夢を眺めている。
……ふと、咲夜が独りこの考えへたどり着いた時、咲夜はどんな気持ちだったのだろう、と思った。
何回、信頼している人から否定されたのだろう、と思った。

「……なんとか、明日を来させるわよ」

ポンポンと咲夜の肩を叩く。
もう、白玉楼に用は無いな、とも思った。



時間は経ち、早くも夕焼けの時刻になる。
もっとも、明日が来ないこの世界における夕焼けなんて、たいした意味も持たないだろう。
そんな夕焼け空を、私と咲夜は博麗神社縁側に腰掛けながら眺めている。

「結局、みんな昨日がなかったわね」

進展は、特になかった。
妖夢を始め、アリス、早苗、慧音、チルノ、橙、文……みんな揃って昨日がなかった。

「まあでも、まだ行ってない所もあるし、もしかしたらね」

まだ行ってない所、永遠亭、天界、地霊殿、中有の道……割とあるけど、どれも異変に関係があるか疑問。
ここまでみんな揃って昨日がないと、私達以外もうダメと思えてくる。
誰も異変を認知していないこの状況だと、異変の話題が全く出てこない。
本当にどうしようもない。

「そういえば霊夢」

「なに?」

不意に咲夜が呼んできた。

「なんで私を疑わなかったの?」

「どういう意味?」

「ほら、異変の元凶として、私は時を操るのに」

言われてみれば、確かに私は最初から今まで、咲夜を元凶とは微塵も思っていなかった。

「理由は特に無いけど……まあ咲夜だし、操れたとしても起こさないでしょ」

強いて理由をあげるなら、おそらくきっと、私の知る人物の中で咲夜がかなりまともな部類の人間だから、だと思う。

「ふーん……まあなんにせよ、ありがとう」

「な、何でありがとう?」

「ほら、今回霊夢にはこれも含めて色々救われたから、その感謝をね」

「……もう」

ほんと咲夜はこういう事をさらっと言うから困る。
感謝されるのは、そりゃ嬉しいけど。

「……あら、鳩時計?」

「えぇ、紫がくれたの」

まあ、いつ貰ったかは覚えてないけどね。
と付け加える。

「この前、時計あった?」

「この前っていつよ?」

「あー……いや、何でもない」

「……そう」

明らかに何かあるだろうとは思ったが、咲夜は話そうとしない。
まあでも、それならそれでいい。
話すべきと感じた時に、咲夜なら話してくれるだろうし。

「ま、明日また頑張りましょ」

「そうね」

「そろそろ帰る?」

「今夜は帰らない」

「紅魔館、咲夜が居ないと機能しないんじゃない?」

「日にちが変われば、今日が来て何もかも元通り、またお嬢様達の弾幕ごっこが始まる」

「えーと……」

それはつまり、今夜紅魔館が機能しなくても、今日が来れば元通りだから放置安定、という事か。

「今日くらいは、生きた霊夢と話していたいの」

「うー……」

それはつまり、見知らぬ世界へ独り投げ出され、一ヶ月振りに知り合いと会って語り尽くす、という雰囲気か。

「……分かったわ、今夜はまあ、話しましょうか」

「ありがとう霊夢」

そこからしばらく話した。
内容は他愛もない、ただの世間話。
普段の咲夜から考えて、自ら進んで会話を求めるなんてありえない。
それほど一ヶ月独りというのは凶悪だった、ということが伺える。
もちろん夕食を一緒に食べた後も、会話は続いた。
それは、鳩時計が十一回鳴くまで続いた。



―――パポッ、パポッ、パポッ……



……七回。

「おっと相変わらず早起きだな霊夢」

咲夜は居ない。
どうやら今日が始まった時点で、今日の初期位置に戻るようだ。
私はいつの間にか布団に居た、すなわちこれが私の初期位置、今日のスタート地点。
まあ今日が始まる時、私はいつかあった本物の昨日の夜から続けて布団で寝ている訳で、当然の結果だった。
咲夜も今日になった時点で、紅魔館からのスタートになっているのだろう。

「それじゃ魔理沙、紅魔館に行ってくる」

「って事であそ……え?」

ひとまず魔理沙はスルーし、咲夜が待っているだろう紅魔館へと急ぐ。

「霊夢」
「ひゃあ!?」

しかし居た。
咲夜が居た博麗神社に。

「い、居たの?」

「二時間前くらいには」

「私が来た時には霊夢の横で寝てたぞ」

「寝てたの?」

「眠かったし」

まあ、至極真っ当な理由だ。

「起こしてくれればよかったのに」

「蹴っても叩いても起きなかったのは誰よ」

……私か。
そういえば体が少し痛い。
本当に蹴ってくれたのか咲夜。

「んで魔理沙、パチュリー様が新しい魔導書をあなたに見せたいらしいから、図書館に行きなさい」

「魔導書?」

「なんでも今日中しか読めない代物らしいわ」

「なんだと!?」

魔理沙急発進。
あっという間に見えなくなる。

「……魔理沙の扱い上手いわね」

「これで邪魔物は消えたわね」

邪魔物とは不憫な魔理沙。
実際異変を認知してないから否定出来ないけど。

「さて、行きますか」

そんなこんなで出発。
どこに行くかは決めてないが、出発。



で、もう着いてしまった。
ここは永遠亭。
咲夜曰く順番的に永遠亭とのことで、目的地がここになった。

「相変わらず静かね」

「えぇ」

時間がループしてようがしてまいが、鬱蒼とした安定の竹林、そこにぼうっと姿を現す普段通りの静かな永遠亭である。

「何か手掛かり、得られると思う?」

咲夜に聞いてみる。

「どうかしらね、まずは昨日があるかどうか」

「誰かあってくれないかなぁ」

昨日があるかどうか。
咲夜の言うように、まずはここから。
今までが今までだけに、あまり期待が持てない。
咲夜以外、誰ひとりとして昨日が無かったのだから。
……しかしここは永遠亭。
最低永琳とかはあってくれるのではないか、という期待も少しある。

「昨日何してたか覚えてる?」

……しかし、永遠亭内で会う全ての兎にこう聞いてみても、返ってくるのは、

何言ってるんだ?

この顔。
さらには少し期待していた永琳までもがこの顔をしてくる。

「帰納何してたか?……なに、どういう意味、証明の話?」

だいぶ、絶望的。
それでもめげずに情報収集を続ける。

「昨日?」

すると、確実に昨日というニュアンスで返答してきた者が、ついに現れた。

「昨日は……そうね、今日と全く同じ感じで過ごしてたわよ」

……居た。
私達以外に昨日がある、すなわち異変を認知しているものが。

「でもさすが霊夢、ちゃんと異変って知ってたのね、一ヶ月経っても行動を起こさないから知らないのかと」

その者は永遠亭のボス的位置にある黒く美しい髪が特徴の、蓬莱山輝夜。
縁側に座り、何やら空を眺めながら、感心したように彼女は呟いている。

「あなたはなぜ昨日を知っているのかしら、ひょっとして元凶さん?」

私が喋る前に咲夜が喋っていた。
両手には数本のナイフ。
輝夜に少しでも不審な動きがあったら、ナイフが飛んでいくだろう雰囲気。

「まあまあ、そんな短絡的思考じゃ真実にたどり着けないわよ?」

こちらへ向き直る輝夜。
朝陽に照らされた黒髪がたなびく姿はとても美しく、神々しくもある。
輝夜は咲夜のナイフを目にしても怯む事なく、むしろ余裕といった雰囲気。

「もっとのんびりしましょう、幸い時間は永遠にあるようだし」

腕を組んでのーびのび。
輝夜から敵意は感じられない。

「咲夜」

「……分かったわ」

咲夜も敵意が無いことを感じ取ったようで、ナイフをしまう。
普段通り強攻策に移りたい所だが、ここが永遠亭で永琳の住み処である事を考えると、強攻策はあまりにもリスクが大きい。
敵意も無いのなら、ここは会話でこの場を進めるべきだ。

「始めに、あんたは元凶?」

でもやはり最初に聞くのはやはりこれ。

「霊夢もなの?……はぁ」

途端に呆れられる。
無意味に呆れられるのもなかなか苛々する。
しかし苛々していても仕方ないので、冷静になるよう努める。

「で、どうなの?」

「ひとまず私は元凶じゃないわよ」

「本当?」

「本当よ」

輝夜は元凶ではないという。
信用出来るか微妙だが、身内の永琳ですら異変にのまれている事を考慮すると、まあ信用してもいい情報、と判断出来る。

「どう思う霊夢?」

「私は……輝夜を信じてみる」

「そう」

咲夜は輝夜を一睨み。
輝夜は微笑みながら咲夜に手を振っている。

「……分かった、霊夢が信用するなら、私も信用する」

そして咲夜も輝夜が元凶ではないとした。
私が信用したから信用するというのはどうかと思うけど。

「あ、信用してくれた?」

「信用したわ、だから何かこの異変について知ってたら教えて欲しい」

「私、元凶の居場所知ってるわよ」

「んん!?」

あまりにも急展開すぎて変な声が出た。
咲夜も普通に驚いている。

「今日がループしだして五日目くらいだっかな、紅魔館で見つけたわ」

「えぇえ!?」

あまりにも衝撃的すぎてまた変な声が出た。
もちろん、咲夜は私以上に驚いている。

「ちょっと待ってそれはどういう……」

「単純よ、誰がこの異変起こしてるか知りたくなってね、珍しく昼間色々と歩き回ってたの」

「……そして紅魔館に?」

「そ、元凶は小さなかわいい女の子だったわ」

「小さなかわいい女の子?」

「門番と談笑してたけど、かわいかったからついいきなり頭を撫でちゃった」

「……よくいきなり撫でさせて貰えたわね、しかも他人と会話中に」

「撫でたら体を擦り寄せてきたの、もうかわいくってかわいくって」

「……はぁ、元凶は紅魔館に居る小さなかわいい女の子、しかも門番と談笑ねぇ」

輝夜の言葉が真実な場合、元凶は二人の内一人、どちらかになる。
しかも頭を撫でても許されている事と、門番と談笑している事を踏まえると……もはや元凶は確定じゃないか。
どう考えても片方は頭なんか撫でさせてくれないだろうし、わざわざ門番と談笑しに行かない。
……自然と、視線が咲夜へ向かう。

「どういう、こと……」

咲夜は頭を抱えている。
相当混乱しているようだ。

「輝夜はなんでその娘が元凶だと分かったの?」

「その娘が自分で言ったのよ

私がこの閉じた世界を作ったの

ってね」

「自ら言った?」

訳が分からない。
なぜ自ら教えたのだ。
そもそもあいつの破壊的な能力でこんな世界が作れるのか、疑問が噴水のように沸き上がってくる。

「なんか毎日激しい弾幕ごっこがしたいからこんな世界にした、とも言ってた」

動機までぺちゃくちゃと……。

「てか輝夜、あんたそこまで聞いて元凶放置したの?」

「だって今日がループするだけでしょ?」

「だけでしょって、あんたねぇ」

「まあ私は元凶が知れただけで満足したし」

放置しなければとっくに明日が来ていただろうに……まあ、色々教えてくれたから感謝すべきなのだが、どうも釈然としない。

「咲夜、大丈夫?」

「整理はついた、でもまさか元凶が……」

咲夜においては、整理はついても、受け入れるのが難しそうだ。

「一応、ありがとう」

「……行くの?」

「そりゃ元凶知った以上はね」

「……そうよね」

輝夜に礼をし、咲夜と共に飛翔を始める。
目指すは元凶の居る紅魔館。

「最後にアドバイスよ霊夢」

と下から輝夜の声。

「時間っていうのは、一方向に流れるモノと万人が無意識に思っているから、流れてるだけ」

「……は?」

「ま、これからはこう考えた方がいいわ」

果たしてアドバイスなのか謎だが、その言葉を受けて再び紅魔館を目指し始める。



「あれ、もうお帰りですか咲夜さん、ずいぶん早いですね」

紅魔館に到着。
早速門番が咲夜へ話し掛けているが、咲夜はガン無視。
うなだれている門番が実に憐れだ。
門番を憐れんでいる間も、咲夜は館内に入りずんずん進んでいく。
時を止めれば一瞬で目的地に着くのに、それをしないのは私を置いていかない為……だったり。
仕方ないから、心の中でお礼を言っておく。

「ここよ」

そして咲夜は茶色い扉の前で止まる。

大図書館入口

扉の上にはそう書いてあった。

「ここに居るのね?」

「えぇ、お嬢様達は図書館で弾幕ごっこをし、そのまま図書館で寝た、つまり」

「それなら居るわね」

扉を開ける。
目に入ってくるのは無数の本棚に並ぶ膨大な数の本。
……頭が痛くなりそうだ。
そんな図書館の一角、本棚と本棚の間に、目的の吸血鬼、フランドール・スカーレットが横になりスヤスヤと寝息を立てていた。

「どんな所で寝かしてんのよ」

「一度寝たら動かないのよ、お嬢様達は」

一応毛布が掛けてあるものの、敷布団は無いため、冷たい床で寝る形となっている。
言うまでもなく寝心地は悪そう。

「あら、お嬢様はトイレかしら」

フランドール……まあフランの隣にはもう一つ毛布があって、今まで誰かが居たであろう確かな温もりを発していた。
フランの姉であり館の主、レミリア・スカーレットはさっきまでここに居たに違いない。

「妹様、起きて下さい妹様」

まあ今用があるのはフランの方、レミリアはどうでもいい。
早速咲夜がフランを起こしにかかる。

「ん~、咲夜?」

体を揺すったりしている内に、フラン……おそらく今回の異変の元凶は目を覚ました。
眠そうに目を擦っては、私と咲夜の顔を交互に見てくる。

「あれ、霊夢が居る!」

私を確認するとピョーンと飛び上がり楽しそうに笑い出す。
無邪気に笑っているだけなのだが、そこはやはりフラン。
狂気の波動、とでも言うべきか近寄り難いオーラがある。

「なんで居るの?分かった、私と弾幕ごっこだね!」

早くも右手には紅き剣レーヴァテインが握られる。
一瞬身構えたが、それと同時に咲夜が私とフランの間に入ってくる。
背中からは、

ここは私に任せて

的なオーラが伝わってくる。
個人的にフランとの弾幕ごっこは非常に疲れるので、出来る事なら咲夜を通じてこのまま解決して欲しいため、そのまま任せよう。

「妹様、少しお話しがしたいのですが……よろしいですか?」

「お話し?なんの?」

「えっと、それは……ですね」

そこまで言って詰まるのか咲夜。
咲夜の立場から言いにくいのは分かるけど。
輝夜の話じゃフランは自分で元凶って認めていたのだから、親しい咲夜が頼み込めば認めるだけでなく、異変自体止めてくれそうなものだが。

「あ、霊夢が居るならもしかして魔理沙も居る?魔理沙と弾幕ごっこでもいいよ!」

「……えー、魔理沙は居ませんわ、妹様」

「なんだ、そうなの」

露骨に残念がるフラン。
確か魔理沙は咲夜に騙され図書館に来ているはずだから、ここら辺捜せば普通に居そう。
もちろん咲夜がそうしたように、私もフランには言わない。

「なら仕方ない、あいつでいいや あいつと弾幕ごっこでいいや」

どれだけ弾幕ごっこがしたいのだフランは。
まあそれが理由で異変起こした訳だし、このくらいの勢いはあるのか。

「で、あいつはどこ?」

自分の隣にある誰も居ない掛け布団を見て、フランは言う。

「妹様、お嬢様はトイレかと思われます、まだ昼前ですので戻られたら再びすぐ眠るかと」

「お姉様がトイレとかどうでもいいから、それよりあいつはどこ?」

「ですから……え」

咲夜の動きが止まる。

「ん、さくやー?」

私も止まっている。
おそらく咲夜と同じ理由で停止しているに違いない。

「あれ、どしたの?」

今、フランの話の中で、明らかにおかしな部分があった。

「むー、変なのー」

これまでは普通に話の内容が理解出来ていた。
しかし今は出来ない。
なぜならフランが話す内容に、私達が予想していなかった「あいつ」なる者が存在したから。
レミリアとは違う何者かが、フランの話には居た。

「あーあ、帰っちゃったのかなーあいつ、名前聞いときゃよかったな」

「い、妹様、あいつとは?」

「え、私と弾幕ごっこしてたあいつよ、咲夜も見てたでしょ」

咲夜と顔を見合わせる。
咲夜の話では、夜中に弾幕ごっこをしていたのはレミリアとフラン。
だがフランは、レミリアではないあいつと弾幕ごっこをしていたと言う。

「……お嬢様ではなくて?」

「なんでお姉様? お姉様は自分の部屋で寝てるじゃん」

もちろん、様子からフランが嘘をついているとは思えない。
同様に、咲夜が嘘をついている訳もない。
今回の異変と重要な関わりを持つと思う弾幕ごっこ、ここにきて内容に大きな矛盾が発生。

「……ねぇ」

「なーに?」

……そして、これらの話を聞いた私の勘は不思議と叫びだす。

「この時間ループ、元凶はあんた?」

「元凶?……ってか、じかんるーぷって何?」

フランは、この異変には関わっていない、と。



結局フランをまた寝かしつけた私達。
今は図書館の外、レミリアの部屋前にて咲夜の帰りを待っている。
ようは咲夜が、

「直接お嬢様に確認してくる」

こう言って弾幕ごっこの矛盾点を解決しに行った訳だ。

「……どうだった?」

「ダメ、お嬢様は妹様と弾幕ごっこはしてないって」

部屋から出てきた咲夜が、ため息混じりに告げる。

「その時間帯は寝てたとも言ってた」

「でも咲夜が見て、レミリアはフランと弾幕ごっこしてたんでしょ?」

「してたはず……なのだけど」

そこまで言って咲夜は黙り込む。
……どうしたものか。
レミリアに聞いた事で、矛盾点を解決するどころか余計ねじまがってしまった。
また、訳が分からなくなってきそうだ。
もっとしっかり考えてみるべきだろう。
……まず、咲夜がレミリアと誰かを見間違える訳なんてないから、レミリアとフランが弾幕ごっこをしていたのは確実。
一方で、フランがレミリアを誰かと見間違える訳なんてないから、レミリアでない誰かとフランが弾幕ごっこをしていたのも確実。
……咲夜とフランで違うのは、弾幕ごっこの対戦相手。
ちなみにフランに対戦相手の容姿を聞いてみたが、
よく覚えていない
とのこと。
……で、この対戦相手、今回の異変の重要な要素である事は間違いない。
なぜなら昨日がある咲夜と昨日が無いフラン、時間系列以外で双方が違う風に認識している、唯一の事柄だから。
この事柄だけ、他のズレとは少し違う異質さを見せている。
この対戦相手を確認し、さらにそいつから話でも聞ければ何かしら進展はありそうだ。
……こうなったら、

「咲夜、私も対戦相手を確認するわ」

「え?」

これしかないだろう。
どうせまた今日がやってくる、ならこれが一番確実。

「でもどうやって?」

「また今日が来るんだから、私も咲夜と一緒に弾幕ごっこを観戦すればいいだけよ」

「いや……まあ、そうなのだけど、弾幕ごっこの時間霊夢は寝てるんじゃないの?」

「んー、そこは咲夜が起こしにきてよ」

おそらく自力で起きるのは無理だと思う。
今日早寝して新たな今日に備えた所で、実際はいつかあった本物の昨日で寝た私が、新たな今日を迎える。
寝ている間、私は無意識、
夜中に起きよう
なんて意識は出来ない。
ゆえに目覚める時間はいつもの時間、これは揺るがない。
しかし、これらの問題は咲夜に起こして貰えれば解決出来る。
咲夜は起きているし、いくらなんでも起こされれば起きるだろう。

「起こす……多分、特定の時間にならないと霊夢は起きないと思う」

「どゆこと?」

「ほら、蹴ったりしても全然起きなかったのに、鳩時計が鳴いた瞬間目覚めたのよ、今朝の霊夢は」

……なるほど。
そういえばそうだった。
確かに蹴られても起きないのは異常。

「えっと、じゃあどう起きたらいいのよ」

「そうねぇ……鳩時計でも鳴かす?」

「鳩時計か」

……鳩時計。
いつかは覚えてないが、紫に貰った鳩時計。
最近はこいつが十一回鳴いた時に寝て、七回鳴いた時に起きるのが私の生活スタイル。
やはり、いつからこのスタイルが続いているか分からないけど。
おそらく無意識のうちに、これは続いている。

「咲夜」

「なに?」

となると、これならば可能性がありそうだ。

「今日がまた始まったら、神社に来て鳩時計いじくって七回鳴かせて」

私が何を伝えたかったのか、一瞬で理解したらしい咲夜は大きく頷いた。

「分かったわ」

「お願いね」

「ええ」



――そして、時間は流れ、



―――パポッ、パポッ、パポッ……



……七回。

「おはよう、霊夢」

目を開けると咲夜の顔。
神社の外は、真夜中。
どうやら、起きたようだ。

「起きたわね」

「えぇ」

鳩時計に目をやる。
鳩時計は……壊れていた。
秒針は停止し、木彫りの鳩も小屋に入らず、姿を見せたままだ。
無様な姿なのだが、不思議と鳩からは達成感をヒシヒシと感じた。

「どういう原理か知らないけど、さすが大妖怪ね」

「直接手助けしてくれればいいのに」

「まあ後でお礼しなくちゃね、霊夢」

「よく勝手につまみ食いしてくから、それでチャラよ」

とにかく、元凶が居る紅魔館へ行こう。
それですべて片が付く、気がする。



真夜中の紅魔館内大図書館では、咲夜の言っていた通りフランとレミリアの弾幕ごっこが行われていた。
その弾幕ごっこはとても激しい。
フランのレーヴァテインが襲い掛かれば、レミリアはそれを片手で弾き飛ばす。
レミリアの弾幕が迫れば、フランはそれをレーヴァテインで薙ぎ払う。
両者とも、本気。

「……今となっては、気づかなかった私が馬鹿だったと思うわ」

だが、あのレミリアはレミリアではない。
既に本物のレミリアが自室で寝ているのを、私達は確認済み。

「あのお嬢様、これまで一回もグングニルを使用してない、本気になったら必ず使うあの神槍を」

「まあ、なんか、偽だったわね」

「……寝床が変わってる事も、気に留めてなかったし」

「誰もレミリアが偽物だなんて思わないから、仕方なかったって」

あそこでフランと弾幕ごっこをしているのは、レミリアに似た、誰か。

「ひとまず、あれから話を聞くわよ」

「……霊夢、どうやってあの二人の弾幕を止めるの?」

「私が結界張って突っ込んで止める、その隙に咲夜はレミリアを確保しといて」

「了解、気をつけて」

「はいはい、咲夜もね」

偽物を捕まえ事情を聞く為に私達は動く。
この異変を解決する為に、私達は動く。

「夢符「二重結界」!」

高らかに宣言。
自分の周囲に結界を展開し、フラン達の間に突っ込む。

「あれ、霊夢!?」
「なんで!?」

私の登場が予想外だったらしく、フランとレミリア、双方の動きが止まり、弾幕の照射も止まる。
幸いにも、無傷で二人の間に突っ込めた。

「動かないで下さい」
「あ!?」

咲夜も無事レミリアを制圧したようだ。
見れば完全にレミリアの背後を取っている咲夜が居た。
一応、この場の制圧は完了した。

「ちょっと霊夢!咲夜も!弾幕ごっこの最中なんだけど!?」

頬を膨らませ不満げなフランが声を荒げる。
フランにしてみれば、楽しい弾幕ごっこに水を差された形で大変不愉快なはず。

「えっとねフラン、私達ちょっとこいつに用があって」
「今は私と弾幕ごっこしてるの!」

まあ、これが妥当な反応だろう。
しかしなんとかフランをここから遠ざけたい。
これから何が起こるか分からないし、異変を認知出来ないフランは、きっと邪魔になる。
何かフランの気を引けそうな物は……そうだ、魔理沙を使うか。

「あーそういえば、魔理沙があなたと弾幕ごっこしたいらしいから、自分の部屋で待っててくれる?」

「え、ほんと!?やったあ!」

口からテキトーに出た言葉だったが、運良くフランはこれに釣られた。
早くもふらふら~とこの場を後にする。
……後でフランにはしっかりと事情を説明しておこう。

「で、レミリアの姿をしたあなた」

改めて、レミリアの姿をした誰かを見据える。
どこからどう見ても、レミリア。

「あなたは、誰?」

私の質問に対し、レミリアは口を開かない。
ただじっと、不気味に、私の眼を見てくる。

「正面に私、背後に咲夜、さすがに何か話した方が賢明だと思うけど」

別に脅している訳ではない。
今の陣形は完璧。
私は結界を張っているし、背後も咲夜が抑えている、本気で隙がない。

「……あーあ」

戦況を察したのか、レミリアが喋り出した。

「おっかしいなー」

そして、徐々にレミリアの姿が崩れていく。
その様はさながら崩れ落ちる砂の人形。

「博麗の巫女だけは、この時間確実に寝てるようにしといたのになー」

……最終的に、帽子を被った小さな女の子だけが残った。

「まーいっぱい弾幕ごっこ出来たし、もういいかな」

「あ、あんたは……」

この女の子、見覚えがある。
確か前に……どこかで会ったような。

「もしかして、私の事覚えてるの!?」

「どこかで見たような気は、する」

「すごーい、さすが博麗の巫女ー」

ずいぶん無邪気に喜ぶ女の子。
しかし地霊殿の古明地さとりと似たような装飾品がある辺り、多分そっち系の面倒な妖怪であることは間違いない。

「で、あんたが元凶?」

「そうだよー」

あっさりと認めた。

「……なんでこんな事を?」

「毎日激しい弾幕ごっこがしたくてねー、そしたら異変が起きちゃいました!」

動機もぺちゃくちゃと喋る。
輝夜の証言と酷似している辺り、これはもう確定だ。

「起きちゃいましたってねぇ」

ここまで清々しいと、呆れの感情しか出てこない。

「あの吸血鬼の子強いんだよー、戦い続けたおかげで私も凄く強くなれた!」

「そ、そう、良かったわね」

元凶に対して私は何を言っているのだ。
しかしこのほんわかした雰囲気なら、もう異変は止めてくれそうだ。

「それじゃ、さっさと時間を元に戻してくれる?」
「それは嫌、もうちょっとお話ししたい」

まさかの即答。
……そう簡単にはいかないってね。
いつも通り、弾幕ごっこで捩じ伏せるしかないようだ。

「私異変の元凶だよ?博麗の巫女なら弾幕ごっこなんでしょ?」

「そうだったわね」

元凶もその気、ならば弾幕ごっこだ。

「そうだねぇ、もし本当に弾幕ごっこをする事になるのなら、私的に博麗の巫女とだけしたいなぁ」

元凶がこう言った時だった。

「ぐぁ!」

今まで元凶の背後で静観していた咲夜の体が、突然何かに弾かれたように宙を舞い、そのまま自由落下し床にたたき付けられたのは。

「さ、咲夜!?」

咲夜は俯せで倒れピクリとも動かない。

「咲夜に何したの!!」

自分でもビックリするくらいの声量と共に、元凶を睨みつける。
咲夜の無事を確認したい所だが、目の前に居る元凶が何をしたか不明な以上、ここで睨むくらいしか出来ない。

「怒らないでよ、動くのに邪魔だったから落としただけ」

「落としただけって」

ありえない。
あの状況、完全に咲夜が背後を取っていた。
僅かでも元凶に動きがあれば、逆に元凶がのされていたはず。
少なくとも、咲夜はその程度の戦闘能力を保持している。

「ほら、無意識だと弾幕撃っても誰も気づかないんだよ」

得意げな女の子。
何を言っているか分からないが、咲夜を無条件で倒す力を持っている、こいつは危険。
意識を目の前に浮く元凶へ注ぐ。

「今回の異変もそう、万人が無意識に時間はループしてる物って思っちゃえば、万人に対して時間はループしちゃうの」

「いきなり何を言って……」

倒れる咲夜を見ながら、嬉々として語りだす元凶。
そういえば、輝夜がアドバイスだとか言って、時間~とか無意識に~とか言っていた。
それがこれなのか。

「まあ普段から意識的に時間と関わってる人達は、完璧にループ出来なかったみたいだけど、記憶とか」

咲夜と輝夜の事だろう。
言われてみれば輝夜も、時間に関する能力の持ち主だった。

「でも、博麗の巫女も含め、他は見事にループした」

元凶の言う通り。
私も最初はループしていた側の者。
なぜかある時突然気づいて、ループしてない側にきた。

「博麗の巫女には妨害されないように、どう足掻こうと朝まで寝てるようにしといたのになぁ、うーむ」

私が蹴られても起きなかったのはこの為か。
紫のおかげで、これは起きられたけれど。

「質問」

いつの間にか元凶が眼前に居た。
飛びのこうかと思ったが、これまたいつの間にか背後に壁、動けなかった。

「なんでループしてない側に来れたの?起きたのも含めて、そこら辺がどうしても分からないなー」

元凶は無垢な瞳で私を覗き込んでくる、深い所まで。

「わ、私も知らないわよ」

「ふーん、そっかー」

おそらく、紫のおかげだとは思う。
しかし確たる証拠が無い為、口にはしない。

「あーそうだ、じゃあ何で私が元凶って分かったの?」

質問ばかりがとんでくる。
依然、距離は近いまま。
元凶と分かった(正確には怪しいと思った程度)理由はしっかりあるため、これは言おう。

「あんたが人に依って違う見え方してたから、かな」

フランと私達での、僅かながら大きな差異。

「うむぅ、なるほどなるほど」

この差異が、ここまでの成果をもたらしている。

「弾幕ごっこ中、私を無意識の内に吸血鬼の姉だと認知する、ってループしてない人限定に仕組んだけど、裏目に出たかー」

元凶はうんうんと頷いている。
私の言葉を元に、自分がした行動を考察しているようだった。

「姉妹の弾幕ごっこに見せれば怪しまれない、と思ったんだけど……ループしてる方にも同じ様に見せとけばよかったなー」

未だ原理は謎だが、私と咲夜にはレミリア、フランには今の姿、で自分を見せていたようだ。
そうすれば、私達はただ夜中に姉妹が弾幕ごっこをしているだけで、怪しむ事はない、と踏んだようだ。
しかし私達がフランから話しを聞いた為に、これが逆に決定打となってしまい、結果今の状況を生んでいる。

「……あんた、一体どんな能力を持ってるのよ」

元凶がしていた内容を知った私は、無意識の内に疑問を口にしていた。
しかし元凶はそれに答えるそぶりは無く、クスクスと笑う。

「ここに世界があります」

そうかと思えば、今度はいきなり無表情になる。

「ですがその世界には、何もありません」

無表情。
元凶の表情は何色にも染まっておらず、ただの無。
これほどまでに美しい無は、未だかつて見た事がない。
美し過ぎて、怖さすら覚える。

「では問題、この世界の時間はどう流れているでしょう?」

そしてこの問である。
元凶が何を企み何を考えているのか、逆にいないのか。
真意は全く予想出来ない。
顔から読む事も出来ない。

「普通に流れてるでしょ、時間なんだから」

ひとまず世間一般、どうあがいても正解だと思える答え。

「ぶっぶー」

指を差され、いかにも小ばかにした返事がきた。
不正解か。

「正解は森羅万象、誰にも分からないでしたー」

「はぁ?」

「だって何もないんだよ、なら時間の流れなんて誰一人として認識出来ないよね」

……言いたい意味は分かる。
しかし時間は常に一方向へ流れている。
誰一人として認識出来ないからといって、その答えはおかしい。
何もなくたって、時間は流れるだろう。
それが時間。

「時間は、どこでもいつでも流れてるもんでしょ」

「それ、証明出来る?」

「証明……って言われても、実際流れてるんだからねぇ」

何なんだ、こいつは。
証明も何も、時間が流れているのは周知の事実。
この事実は今日まで変わってないのだから、証明の必要なんかない。

「証明が出来ないなら、時間は確実に流れてるとは言えないよね」

「何が言いたいの?」

声は笑っている、のだが相変わらずの無表情。

「……森羅万象、この世に存在する全てのがモノが、無意識の内に時間は流れているモノだ、って思っているから、時間は流れているんだよ」

無表情。
しかし発する言葉には活気があり、とても楽しそう。

「……なら、その証明は?」

今度はこっちから振ってみる。
正直時間がうんたらなんてどうでもいい。
ただ、この元凶がこう言うからには、しっかり証明が出来る上での事だろう。
少し、どう証明するかが気になるだけ。

「ふふっ、じゃあ森羅万象の無意識を操って時間を停止させるから、それをもって証明でいい?」

「いいわよ」

「では……」

元凶が両手を上に伸ばす。
瞬間、辺りが静かになった、気がした。

「もう、止まってるよ」

にっこり。
久々に表情が戻った。

「私は動いてるわよ?」

「私の証明を見てくれる人を止める訳ないでしょ」

そりゃ、そうか。

「今、この世界で動いてるのは、私とループしなかった人達だけだよー」

「確認してきていい?」

「もちろん!」



図書館を出る。
ドアは開かないかと思ったが、しっかり開いた。
ここは紅魔館廊下。
至る所に居る妖精メイド達は、皆例外なく停止している。
それぞれ叩きで壁の埃を除去していたり、廊下を雑巾掛けしたり。
しかし、止まっている。
……元凶の言葉を借りれば、

みんな無意識の内に、時間は止まっているモノ

と思い込んでいる。
ただ、それだけ。

紅魔館を出る。
時刻は深夜だと記憶していたが、外には太陽があり、青空が広がっていた。
まあ元凶は間接的だが時間を操れる、これくらい疑問の内に入らない。
そしてやはり、門番も妖精も、雲も太陽も、木々も湖も、みんな止まっている。

……凄い、の一言だった。

今動いているのは、本当に私達だけなのだ。
私達以外、時間は止まっているモノと無意識下で思っている。
結果、時間は停止する。

「どう、完璧に証明したでしょ?」

背後には元凶。
元凶の言う通り、時間は無意識に皆が進むと思っているから、進んでいるだけだった。

「静かな、世界ね」

「えへへ、そうだよねー」

実に、静かだ。
後ろで元凶が嬉しそうに鼻歌を歌う以外は、小鳥の囀り一つ聴こえない。
私達以外のモノも色々と目に映るが、いずれも動くような事はない。
人も妖怪も、木々も雲も、皆完璧にただの置物と化している。
どこまでも完璧な静に包まれた、時間の停止した世界。
こんな異常事態なのだが、不思議とこの世界、嫌いではなかった。

「じゃ、そろそろ私は帰るね」

「え?」

いきなりの声に振り返れば、元凶は笑顔で手を振っていた。

「いっぱいお姉さんと話せて、凄い楽しかったよ!」

「ち、ちょっと!?」

「弾幕ごっこも凄く楽しかった……だから吸血鬼にお礼、言っておいてね」

だんだんと、元凶の姿が薄く霞んでいく。

「あ、時間はちゃんと戻しておくから安心してねー」

「ま、待ちなさい!まだ」
「ばいばーい」

私の言葉をを遮り、スー……という音と共に、元凶は姿を消した。
跡には、何も残らなかった。

「……風?」

元凶が消えてからすぐ後、私の頬に春の爽やかな風が駆けた。
時間が進み出したのだ。
元凶の言った通り、私達の時間がしっかり戻ってきた。
……多分、もう時間はループせずに、いつも通り一方向に進み続けるだろう。
また皆が、いつも通り無意識の内に時間はそういうモノだと思い込んだのだろう。

異変は、解決した。





「れーむ!」

「……んもう、何よ魔理沙」

目が覚める。
正確には、魔理沙が寝ている私の上に乗っかってきて、目が覚めたというべきか。

「なんで昨日神社に居なかったんだよー、私はとても暇だったんだぞ」

「昨日はまあ、なんかね」

……昨日はあの後、倒れていた咲夜の手当て(軽い打撲だった)をし、異変解決を伝え、フランにも一応事情を説明し、そのまま神社に帰り即寝た。
ちなみに輝夜には事情説明していない。
まあ、する必要を感じなかったのでしていないだけだ。
こんなだったから、昨日魔理沙とは会っていない。

「なんかってなんだ」

「とりあえず離れて、着替えるから」

ゆえに、朝っぱらから魔理沙がなんかべたべたしてくる。
暑苦しいったらない。

「霊夢、魔理沙、妖夢の所へ行くわよ」

「きゃ!」
「わっ!」

唐突に登場、咲夜。
毎度の事ながら、いきなり目の前に出て来るのは驚くから止めて欲しい。

「まったく驚かすなよ」

「あらごめんなさい」

咲夜はどう聞いても口先だけの謝罪をして、

「妖夢の所に行くわよ」

改めてまた言う。

「なんでまた妖夢の所?」

「実は今日、妖夢と一緒に料理を作る約束をしてたのよ」

「あ、そうなんだ」

「えぇ、約束したのは一昨日……長かったわ」

感慨深げな咲夜。
一昨日妖夢と約束したとなると、それは確かに、相当長かった事だろう。

「それじゃ行きますか」

何だかんだ、咲夜に流され私達も白玉楼へと向かった。



白玉楼が見えてきた。
やはり、妖夢は、案の定、剣を振っていた。

「あ、咲夜!」

で、咲夜を確認すると笑顔満開、はにかみながらこちらへやって来る。

「お待たせ妖夢、ようやく一緒に料理が作れるわ、久しぶりね」

「久しぶりですか?一昨日も作りましたよね?」

「ふっ、そうだったわね、今日は霊夢達の分も作るわよ」

「はい!」

で、咲夜と妖夢は話しながら室内へ消える。
残された私達も、まあ流れで室内に向かう。

「あらまあ、霊夢じゃない」

「あ、幽々子」

だいたい同じ白玉楼だが、昨日と違い今日は幽々子が居た。
幽々子は私を確認するとゆったりとした動きで近づいてきた。

「やっと今日が来たわねぇ」

そして開口一番これ。
一瞬にして疲れが出た。

「……なに、知ってたのあんた」

「昨日は元々紫と一緒にお茶飲む日だったからね」

「はぁ、そうなの」

つまり、紫と一緒だったから平気だったのか。

「で、紫の鳩時計は役に立ったの?」

「まあ、うん、あれのおかげで解決したようなもんよ」

あれがなかったら、あの時間に起きられなかっただろうし、悔しいけど紫の鳩時計が役に立ってしまった。

「霊夢だけやたら強力だったから苦労したわ、って紫が」

「一応、後でお礼しとく」

「お前らさっきから何言ってるんだぜ?」

とにかく、異変は解決した。
元凶を退治した訳ではないけれど、解決はしたから紫とて文句はないだろう。
またこれから、いつも通りの日常が始まる。
ループなどしない、一方向に流れる時間の中で、この世界は進み続ける。

「たいしたことないわよ」

「そうそう、情けないことにあなたは認知すら出来なかったのだからねぇ」

「……なんか凄く馬鹿にされた気がするぜ」

魔理沙がコンッと地面にあった小石を蹴った。
こんな言い方をされたら、そりゃ魔理沙もむしゃくしゃする、小石にあたりたくなる。

「まあ魔理沙、咲夜達の料理に期待よ」

「ん、ああ、まあそうだな」

改めて白玉楼の室内へ。
厨房では、咲夜と妖夢がせっせと何か作っている。
どんな料理が出るか、今から楽しみで仕方がない。

「お、さっき私が蹴った石じゃないか」

ふと魔理沙が言った。
見れば、確かに先程の小石がちょこんと畳にあった。

……そういえば元凶の名前、聞いてなかったな。

そんな事を考えながら、ゆったりとした時間が流れる白玉楼の畳部屋で、咲夜達の料理を待つ私であった。
とても久しぶりになります、こんにちは。時間の概念については幻想郷が舞台って事で、ひとつお願いします。
一応主役が霊夢だったのでタグには霊夢だけ。本当は元凶も主役なのですが、さすがにタグには書けないなぁと思い、外しています。
最近は専ら心綺楼のこいしちゃんにメロメロです。
相変わらず、霊夢、魔理沙、咲夜、妖夢の4人が仲良いのは好きですね、とても和みます。

コメントありがとうございます。素直にまた何か書きたいという原動力になります。
こころちゃんに関してはまだそこまで詳しくないので、書けるか分かりません、すみません。
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コメント



0.1150簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
時が未来に進むと~♪ 誰が決めたんだ~♪
なるへそ、面白い。
実際の認識が世界を変えるのか。
常識を大きく超えてて、実に幻想郷らしい無茶苦茶だ!
鳩時計△
5.100非現実世界に棲む者削除
いやー面白かったです。
久々に異変モノのSS を読めて興奮してます。
しかし時間を操れるようになるというのは恐ろしいものですね。
それさえ出来れば世界をも作ってしまう。
今生きている時間をもっと大切にしようと思いました。
あと、子供の無邪気さにも、恐怖?畏敬の年?を覚えました。
異変を起こした理由もこいしちゃんらしいといえばこいしちゃんらしいのですが、弾幕ごっこを充分楽しめたのならそれでいいでしょう(可愛いし)。
やっぱり霊夢達四人は良いですよね。
四人で仲良く神社の縁側で談笑している姿が目に浮かびます。


素晴らしい作品でした。
あとやっぱりこころちゃんも可愛いですよね。
出来れば、こころちゃんを題材にした貴方の作品も読んでみたいです。
というわけで長文失礼いたしました。
貴方様のこころちゃんSS 、期待してます。
8.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです。素晴らしいミステリーでした。最初は鳩時計が異変の元凶かと思いながら読んでいましたが見事にハズレちゃいました。そしてフランの証言に矛盾を見たときに背筋にゾクリときました。結末がなんともスッキリしない終わり方ではありましたが、それも異変の元凶の彼女らしいといえばらしいですね、マイペースなところとかが特に。
12.90奇声を発する程度の能力削除
幻想郷らしい感じがとても良かったです
13.100名前が無い程度の能力削除
いいね
14.100名前が無い程度の能力削除
ループもので共闘ってのも地味に新鮮
でも、おぜうに運命見ろとか言ったり管理者の所に直行したりすりゃもっと早く解決できたんじゃないかなあとか考えたり
···にしても、幻想郷で時間が操られるのはもはや日常茶飯事か?
15.80名前が無い程度の能力削除
こいしちゃんすげー
16.80名前が無い程度の能力削除
うん?ということは、外の世界から大結界の中を見通せるような力の持ち主が幻想郷を見ていたら、一ヶ月ほど同じことを繰り返してるのが見えたんだろうか。
18.90名前が無い程度の能力削除
なるほど、これは面白い解釈。無意識すげえや。
ストーリーも面白くてよかったです
26.70名前が無い程度の能力削除
時間を操る咲夜と輝夜がループしないのは分かるとして、紫はなぜ異変の影響を受けなかったのでしょうか?
31.80名前が無い程度の能力削除
黒幕とのやり取りをもう少し煮詰めて欲しかったなぁと個人的に
でも、お話自体はとても面白かったです
異変のお話って、なにげに少ないですよね
34.903削除
非常に読みやすい文章ですね。
その反面この異変は中々怖いです。自分が咲夜の立場だったら色々と崩壊しそう。
全体的にとても楽しめました。