Coolier - 新生・東方創想話

青空に降る雨

2010/04/06 02:43:19
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 人が住んでいないような森の中に一軒の家があった。そこに住むものは人間ではなく三匹の妖怪であった。隙間妖怪の八
雲紫、その式の妖狐の八雲藍、式の式の化け猫の橙。
一見すると仲のいい家族である。しかし本来は主従の関係であるため下位の者がより働くのは道理であり立場的には上から
二番目の藍はいつものように働いていた。一番下の橙はまだ出来る仕事は少ない為に働かない、働けないわけだが。


 そんな橙の生活は日々の修練と見聞を広めることであった。今日も健気に新しいことに熱中してる辺り頑張り屋
なのか、それとも好奇心だけなのかは不明だ。藍はそんな橙に対して過保護な癖もあったりする。


 今日も仕事が終わったら橙の話を聞こう、話を聞かせてやろうなどと思いながらふと庭を見たら雨が降っていた。
雲などは一切なく、夕日が目にまぶしい。珍しいかな、狐の嫁入りだ。


「そういえば橙は始めて見るのかな、今日の話はあの話をしようか」









 まだ、今の主と出会う前の話である。藍がただの狐から九尾の狐となり、力に溺れていたころ、住処の森の近くの村の人間
をよく喰らっていた。


 しかし、そんな日々がいつまでも続くわけもなく、高僧の結界により森全体の妖怪が力を封印された後で
森の狐狩りが行われた。力を封じられた以上、ただの狐であり逃げるしかできなかった。


 一匹、また一匹と同種の狐が捕まっていく。果たして自分は逃げられるのか、それだけを考えて走り続けた。しかし体力の
限界というものがあり、ついには走る体力さえなくなってしまった。


 そんな藍に唯一の希望が今隠れている家だった。きこりの家なのか森の中に建っており、家人は出払っていた。藍には
ここで人がこないことを祈ることしかできなかった。


 がらっ。扉の開く音、祈りむなしく人が来てしまった。捕まって殺されてもう終わりかと感じた。


 しかし、捕まるどころか餌と寝床を提供してくれた。匿われて生きながらえたのだ。





 それからというもの結界が外されても藍は人間を襲うことは止めた。それだけでなく、人間の過ごしやすいように
ばれないように協力したりもしていた。そして、人間の擬態をして助けてくれたきこりの世話になり、やがて嫁になった。
きこりは献身的に尽くしてくれる藍を愛していたし、藍も助けてくれたきこりに奉仕することで精一杯だった。


 人間の世を知らないことに苦労はあったし、困惑もした。何よりも人間を喰わなかった為に力が弱くなり、人間の姿
を維持できる時間が日々、ちょっとずつ少なくなったのには困った。きこりにばれないように妖狐に戻り、人間の姿で
奉仕する、そんな日々の繰り返しだった。その日々は大変だったが充実していた。そんな日々は早く過ぎ去り、きこり
は老けていった。


 そうして訪れた夜、きこりはその日が最後の夜だと気づいていた。きこりは最後に藍に本当の姿を見せてくれと頼んだ。


 気づいていた。藍が妖狐だと、助けた狐だったのだとも。妖狐と間違われてると思って匿った狐が妖狐だったとも。


 そして美しい九本の尻尾を、本来の姿を見せた。そしてきこりは逝った。


 なくなってしまった、藍を縛るものはなくなってしまった。泣いた、ただただ泣いた。
彼は騙されていると知ってて幸せそうだった。私も幸せだった。


幸せだったはずなのに騙していた。


幸せだったはずなのに騙されているふりをされていた。


幸せだったはずなのに・・・


幸せだったのに悲しい。


青空なのに雨が降っていた。









「なんか、悲しいお話ですね、ごんぎつねって」


 藍が狐にまつわるお話をした感想がそれだった。


「猟師も真実を知って後悔しただろうし、狐も恩返しした猟師に撃たれてしまうし、悲しいですよね」


 悲しいとはなんだったのだろうか。幸せで後悔もないのに悲しい。


 あのときの気持ちはいまいち覚えていない。今の主人を亡くせばそんな気持ちに
なるのだろうか。こたつで寝てる主人を見る限り、そんなことは考えられなかった。




 
風呂上りに短めでと思って書いてみました。次はキャラ同士の掛け合いを課題に書きたいと思っています。
秋雨 思樹
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コメント



0.260簡易評価
1.50名前が無い程度の能力削除
短めっていうか普通に短すぎるな。
5.40名前が無い程度の能力削除
「こういうことがあった」と書かれているだけじゃあ物足りない
あと文章が読みにくかった、たぶん好みの問題なんだろうけれど
7.40優依削除
>人間の擬態をして助けてくれたきこりの世話になり
この部分は少し言葉がおかしいというか、説明が足りないような気がしました。
きこりと出会うまでは人の姿を取ることはなかったのですよね?
それなら「人間に擬態する事を覚えてきこりに近づき――」の方が良いと思います。
最初に読んだとき、両者が再び出会うまでに何が起きていたのか理解しづらかったです。

>「そういえば橙は始めて見るのかな、今日の話はあの話をしようか」
この台詞から狐の嫁入りにまつわる話になると考えていたのですが、ごん狐とは。
どう繋がったのかは想像できるのですが、さすがに説明不足だと感じました。
天気雨の日にあった別れを藍が思い出して、狐と人が死別する「ごんぎつね」に連想がいったわけですよね。
藍が真実を知って後悔する、きこりは藍より先に逝く。真相を知って生き残った者はどちらも涙を流す。
しかし、二つの物語には決定的な違いがあると思います。
きこりが今際の際に真実を伝える箇所です。彼はすべて知っていた――それだけの話をして終わります。
彼には話す・話さないという選択が出来たはずですが、この作品ではそれが考慮されていないように感じました。
藍にしてみれば「彼が騙されているふりをしていた」と教えられて、なにか思う事があるはずなんです。

彼に黙って死なれていたら自分はどう思ったか。自分から真実をきこりに話すべきだったのか。
最後に正体を知っていると明かしたきこりの行動は本当に正しかったのか。そもそも夫婦になるべきだったのか。
藍はきっと、正解というものが存在しない問いかけに悩むのではないでしょうか?
それらを考えもせずに、湧き出る感情の理由はわからないまま――幸せだったはずなのに何故か悲しい。
これが結論では「ごんぎつね」と関連付ける意味が少ないと思います。
最後の場面で、寿命の差を感じられない主人を見て安堵するのは悪くないのですけどね。
どうにも物足りなさの残る作品でした。
10.70ずわいがに削除
いきなり『ごんぎつね』出てきて「えっ」て思ったけど、藍の話とはまた別ですか。

藍は騙してるつもりで騙されてたんですかね。