「パ~チェ~」
「ああレミィ」
「はがき来てる? 散歩がてら来てみたんだけど」
今日はレミィが図書館に来てくれた。私がテーブルで届いたはがきをまとめているうちに。
先日、咲夜がホフゴブリン達を使役して受付コーナー、早い話がポストを建ててくれた。
紅魔館の門前に設置されたそれは、投函したはがきがこの図書館へ転送されるようになっている。咲夜の能力によってだ。
本当に気が利くメイドだと思う。レミィもたまにはご褒美くらいあげたらいいのに。
まあなんにせよ美鈴がはがきを受け取って引き継ぐという手間もこれで省ける。
まだ建てたばかりだが、これが浸透していけば今までとは比較にならないペースではがきが来るだろう。
「ちょうどまとめてたところよ」
「いいね。ならやりましょうか」
はがきには、悩める人妖達の質問や相談事が書き込まれている。これにレミィが一枚ずつ答えていくのだ。通称、"レミィのなんでも質問コーナー"。
「めっちゃ来てるわねはがき。札束のごたる来てんじゃない」
レミィが私の向かいに椅子を持ってきてどかんと座った。すぐさまテーブルに体を乗り出し、私の作業を覗き込んでくる。
私は上目でレミィを一瞥して、ほっと安心した。いつもどおり彼女が楽しそうで良かった。この質問コーナーは、それが全てであるから。
「ええ。今用意するわね…………」
机上のはがきに視線を戻すと、また違う安心感で心が解れた。
レミィが言ったように、かなりのはがきが積まれている。つまりこの時間はまだ当分続くのだろうと、そう思えたから。
私も、レミィといると知識欲が刺激、解消されて実に楽しい。
「でもレミィ、前みたいに悲しくなってきた時は別に止めてもいいんだからね?」
「あぁん大丈夫大丈夫。アレ自分でも想定外の流れでちょっとしんみりきちゃっただけだから。今日は読むわよ~」
レミィが手を擦り合わせた。待ち遠しそうに、はがきの読み上げはまだかと。
さて、今日も"レミィのなんでも質問コーナー"が始まるわ。
【一枚目のはがき】
『トンでるアイディアで河童も驚きの発明を繰り返すレミリアさんに質問です。レミリアさんはいつか訪れる結末に向けて、密かに咲夜二号を開発していると聞きました。今どんな塩梅ですか』
「なんで知ってるわけ? 内緒にしてたのに」
「貴方そんなことしてたの?」
「してるしてる。やっぱり咲夜はなんだいうて人間だからね。すぐ死んじゃうじゃない。ていうか今死んでてもおかしくないからね」
「まあねえ……寿命はもちろん、転んだだけで惨事になることすらあるものね……」
「ね? だから咲夜がいなくなっても寂しくないように、咲夜二号を作ってるのよ」
「それはなにでできてるわけ?」
「基本はダンボールね」
「あ?」
「外装がダンボールで、ところどころ……そう関節とかには発泡スチロールも使ってるよ」
「ただポロッポロポロッポロ崩れるから、ああもう掃除せな!ってなるけどねえ動く度に」
「動くの!?」
「動くうごく! 当たり前じゃない!」
「お茶も入れてくれるよ? なんか糊と紙の風味が追加されてるけど」
「うわっ嫌だわぁ」
「ポロッポロがもうラテアートのごとく浮かんでるし」
「そんなん飲めないじゃない」
「いやでも心を込めて作った二号が心を込めて作ってくれたお茶なんだから、飲むわよそれは。すっごい喉イガイガするけどね」
「よくやるわ……」
「しかも咲夜の世界に入門してるからね」
「!?」
「"一瞬だけ、パンチ一発程度の一瞬だけ動けた"とか言ってたね。最初はなぁにを言ってんのかなぁって思ってたけど、聞くとどうやら咲夜が時間を止めたことを認識してるらしいのよ。成長性はなかなかのもんでしょ? 将来に期待だわ」
「えと、その咲夜二号は今どこにいるわけ? 見たことないんだけど」
「それがねえ、なんか知らんけど少し前に地下牢に引き篭ったっきり、出てこなくなっちゃったのよ。"俺に近付くな"とか言って」
「俺……」
「いやいや仕事せえやって言うても、その時だけ人形ヅラして知らんぷりで。まったく親知らずなんだから」
「でもね、今こそ冷たいけどほんとはいい子なのよ? 昔、なにか食べにいく?って聞いたら、"母さんの手料理の方がいい"って言ってくれたし、今も私のこと邪険にしてたって、決して手をあげるようなことはしてこないし」
「うん……」
「一見ワルだけど、心の底にはどこか気高さがあるのよ。我ながら鼻が高いわ」
「まあでも私としては気高さはいいから仕事してほしいんだけどね」
「逆にフランと二号二人分の食事作らなきゃいけないから、私の仕事が増えてんのよ」
「あーあ……」
「しかもフランの部屋と地下牢との距離がまた遠いのよ! シチュー冷めちゃうっての! お母さん大変だわ!」
「何度出てきてよってお願いしても、ついには"うっとおしいぞこのアマ!"って凄んできて怖いのよ」
「でも料理は毎食残さず食べてくれるんだから、可愛いところあるよね」
「貴方将来ダメなお母さんになりそうよレミィ」
「えっと、そんなわけで、ていうか引き篭もりはフランだけで十分だし、そろそろあの蓬莱人でも呼んで出させようかと思ってるんだけどね牢屋から。ちょっとばかり手荒になっても構わないわ」
「なんで蓬莱人?」
「ほら、あいつ火ぃ使うじゃん? 二号ダンボールだから効果抜群なのよ」
「思いっきり殺しにかかってるじゃない」
「ああレミィ」
「はがき来てる? 散歩がてら来てみたんだけど」
今日はレミィが図書館に来てくれた。私がテーブルで届いたはがきをまとめているうちに。
先日、咲夜がホフゴブリン達を使役して受付コーナー、早い話がポストを建ててくれた。
紅魔館の門前に設置されたそれは、投函したはがきがこの図書館へ転送されるようになっている。咲夜の能力によってだ。
本当に気が利くメイドだと思う。レミィもたまにはご褒美くらいあげたらいいのに。
まあなんにせよ美鈴がはがきを受け取って引き継ぐという手間もこれで省ける。
まだ建てたばかりだが、これが浸透していけば今までとは比較にならないペースではがきが来るだろう。
「ちょうどまとめてたところよ」
「いいね。ならやりましょうか」
はがきには、悩める人妖達の質問や相談事が書き込まれている。これにレミィが一枚ずつ答えていくのだ。通称、"レミィのなんでも質問コーナー"。
「めっちゃ来てるわねはがき。札束のごたる来てんじゃない」
レミィが私の向かいに椅子を持ってきてどかんと座った。すぐさまテーブルに体を乗り出し、私の作業を覗き込んでくる。
私は上目でレミィを一瞥して、ほっと安心した。いつもどおり彼女が楽しそうで良かった。この質問コーナーは、それが全てであるから。
「ええ。今用意するわね…………」
机上のはがきに視線を戻すと、また違う安心感で心が解れた。
レミィが言ったように、かなりのはがきが積まれている。つまりこの時間はまだ当分続くのだろうと、そう思えたから。
私も、レミィといると知識欲が刺激、解消されて実に楽しい。
「でもレミィ、前みたいに悲しくなってきた時は別に止めてもいいんだからね?」
「あぁん大丈夫大丈夫。アレ自分でも想定外の流れでちょっとしんみりきちゃっただけだから。今日は読むわよ~」
レミィが手を擦り合わせた。待ち遠しそうに、はがきの読み上げはまだかと。
さて、今日も"レミィのなんでも質問コーナー"が始まるわ。
【一枚目のはがき】
『トンでるアイディアで河童も驚きの発明を繰り返すレミリアさんに質問です。レミリアさんはいつか訪れる結末に向けて、密かに咲夜二号を開発していると聞きました。今どんな塩梅ですか』
「なんで知ってるわけ? 内緒にしてたのに」
「貴方そんなことしてたの?」
「してるしてる。やっぱり咲夜はなんだいうて人間だからね。すぐ死んじゃうじゃない。ていうか今死んでてもおかしくないからね」
「まあねえ……寿命はもちろん、転んだだけで惨事になることすらあるものね……」
「ね? だから咲夜がいなくなっても寂しくないように、咲夜二号を作ってるのよ」
「それはなにでできてるわけ?」
「基本はダンボールね」
「あ?」
「外装がダンボールで、ところどころ……そう関節とかには発泡スチロールも使ってるよ」
「ただポロッポロポロッポロ崩れるから、ああもう掃除せな!ってなるけどねえ動く度に」
「動くの!?」
「動くうごく! 当たり前じゃない!」
「お茶も入れてくれるよ? なんか糊と紙の風味が追加されてるけど」
「うわっ嫌だわぁ」
「ポロッポロがもうラテアートのごとく浮かんでるし」
「そんなん飲めないじゃない」
「いやでも心を込めて作った二号が心を込めて作ってくれたお茶なんだから、飲むわよそれは。すっごい喉イガイガするけどね」
「よくやるわ……」
「しかも咲夜の世界に入門してるからね」
「!?」
「"一瞬だけ、パンチ一発程度の一瞬だけ動けた"とか言ってたね。最初はなぁにを言ってんのかなぁって思ってたけど、聞くとどうやら咲夜が時間を止めたことを認識してるらしいのよ。成長性はなかなかのもんでしょ? 将来に期待だわ」
「えと、その咲夜二号は今どこにいるわけ? 見たことないんだけど」
「それがねえ、なんか知らんけど少し前に地下牢に引き篭ったっきり、出てこなくなっちゃったのよ。"俺に近付くな"とか言って」
「俺……」
「いやいや仕事せえやって言うても、その時だけ人形ヅラして知らんぷりで。まったく親知らずなんだから」
「でもね、今こそ冷たいけどほんとはいい子なのよ? 昔、なにか食べにいく?って聞いたら、"母さんの手料理の方がいい"って言ってくれたし、今も私のこと邪険にしてたって、決して手をあげるようなことはしてこないし」
「うん……」
「一見ワルだけど、心の底にはどこか気高さがあるのよ。我ながら鼻が高いわ」
「まあでも私としては気高さはいいから仕事してほしいんだけどね」
「逆にフランと二号二人分の食事作らなきゃいけないから、私の仕事が増えてんのよ」
「あーあ……」
「しかもフランの部屋と地下牢との距離がまた遠いのよ! シチュー冷めちゃうっての! お母さん大変だわ!」
「何度出てきてよってお願いしても、ついには"うっとおしいぞこのアマ!"って凄んできて怖いのよ」
「でも料理は毎食残さず食べてくれるんだから、可愛いところあるよね」
「貴方将来ダメなお母さんになりそうよレミィ」
「えっと、そんなわけで、ていうか引き篭もりはフランだけで十分だし、そろそろあの蓬莱人でも呼んで出させようかと思ってるんだけどね牢屋から。ちょっとばかり手荒になっても構わないわ」
「なんで蓬莱人?」
「ほら、あいつ火ぃ使うじゃん? 二号ダンボールだから効果抜群なのよ」
「思いっきり殺しにかかってるじゃない」