「春ですよー!」
「春だよー・・」
二人の妖精が春を伝えている。一人は白く、一人は黒い。黒い方はやる気がなさそうだ。
「もう、リリーったらちゃんと言ってよう!」
「だってもう桜も散りかけてるよ。言うのが遅すぎだと思うけど?」
「そ、それは仕方ないじゃない。だって・・・」
口ごもる白い方をよそに黒いほうがあっさりと理由を告げる。
「理由は簡単。リリーが寝坊したから。」
「ね、寝坊じゃないもん!なんだか何回も眼が覚めて寝不足なの・・。」
「寝不足?なんで?私は一回も目が覚めなかったけど。」
なんで私だけ・・と思う白い方。同時に別のことにも気づいた。
「そういうリリーは起きてたんじゃない!どうして起こしてくれなかったのよ!」
「・・・焦るリリーの顔が見たかったから。リリーはいつも笑顔だからね。たまには違った表情を見たかったの。」
白い方が必死に訴えるが、黒い方はニヤっとして返事している。その笑みにはもう欲求が満たされたとばかりにニヤニヤである。
「も、もう!そんな理由で起こしてくれなかったの!?信じられない!!」
「お、今度は怒った表情ね。この顔を見たのは何年ぶりかな?」
珍しく憤慨する白い方を見つつ、黒い方はさらに満足気に笑う。黒い方の一本勝ちである。
「とにかく、来年はちゃんと起こしてよ!そうじゃないともうリリーと口利かないんだから!」
「あはは、ちゃんと起こすよ。もうこれだけリリーの違った表情見れたから十年くらいは満足よ♪」
「十年後もずっと!!」
そんな二人のやり取りを見る一つの影があった。
「こんにちはー♪」
二人はやり取りに夢中で近づく影に気づかなかった。それだけに結構驚く二人。だが話しかけた当人は気にしていない。
話しかけたのは射命丸文。幻想郷のブン屋であり、"文々。新聞"というものを自分で取材、編集、発行している。
「豪く遅い春の宣言ですねー♪何か理由がおありでしょう?もしよかったら取材に協力して頂けませんか♪」
「ああ、それはねー、おっと。」
黒い方が話しかけた途端、白い方が黒い方を自分の方に引っ張ってきた。
「ちょっと、あんな恥ずかしい話を新聞にするつもり!?私は嫌よ!」
「別にいいじゃな」
黒い方が言おうとしたが白い方がそれを遮った。
「残念ですが、取材はお断りします!」
白い方がきっぱり言い放った。だがそこは新聞記者。取材を断られることには慣れている。もちろんその対処法も。
「では私が勝手に記事にしますね♪題して、"春の異変!?遅れた春のお告げ"!」
「ちょっと、異変は言いすぎよ!ちょっと・・その・・・遅れただけじゃない!」
白い方が抗議するが文はあっさりパスする。
「いいえ、毎年遅れないで春一番に登場するのにそれが遅れてしまったのはきっと何か大きな大きな力が働いたからに違いありません!」
文が大げさに誇張して言う。
「異変と聞くと巫女が黙ってないでしょうね。すぐに春に一番関係あるあなた達の住処に乗り込んできますよ。」
「あの巫女がね。それはそれは面倒なことで。それじゃ安眠できないじゃない。」
黒い方が続けてやや大きな声で言う。
「誰かさんが正直なことを話してくれたら安眠できるのにねー。」
黒い方が白い方をじっと見る。見る。見つめてくる。
・・・・・・・・・まだ見てる。白い方はついに折れた。
「もう、私が正直に言えばいいのね!!わかったわよ、取材受けますぅ!」
文はあまりに自分の思い通りにことが運んだので笑みを浮かべた。伊達に新聞記者をやっていない。
「ありがとうございます♪では早速お話の方を。」
「ふむふむ、そんなことだったんですかあ。もうちょっと面白いのを期待してたんですけどね。」
「これをそのまま記事にしても誰も読んでくれそうにないわねえ。まあこの射命丸、幻想郷一のブン屋として魅力ある記事にしますけどね!」
白い方は性格上全部正直に話してしまったので恥ずかしくて俯いている。
ちょっとかわいそうだったかな?そんなリリーを見て黒い方はある考えを思いついた。
「それはよかったわね。と・こ・ろ・で、」
「取材協力の報酬はあるのかしら?」
文は一瞬にして自分に突き刺さる視線を感じた。冷や汗をかきつつ、うしろを振り向いた。
黒い方が今にも弾幕を打ちそうな体制をとっていた。黒い方の弾幕は厄介だし、早く記事にしたいので弾幕ごっこはしない方が先決である。
「じゃ、じゃあこれを2枚二人分差し上げます!それではっ」
音速丸の異名を持つ文はすぐに空の彼方へ飛んでいった。
文が二人に渡したものは・・・
渡されたものは"超プレミアム!鰻の蒲焼食べ放題券!"だった。
「ああ、ミスティアがやってる店か。リリー、今年の栄養分はばっちりだ!」
長期にわたって眠り続けるには相当な量のエネルギーが必要である。去年は森のきのこを食べた。
「そういえば・・・。」
黒い方は何故か毒きのこが判別できるのだが、白い方はそれができない。結局、黒い方が採ったきのこを分けてもらっただけだった。
「私の寝不足は栄養不足が原因だったってことね。」
白い方はようやく理解した。だが今年はこの券があるから大丈夫だ。鰻は安心して食べられるものだ。今年はいっぱい食べよう!
「リリー、いっぱい食べようね♪」
白い方はこれまでにないほど素晴らしい笑顔だった。その笑顔は見慣れている黒い方さえも見とれてしまうものだった。
「もちろん!リリーには負けないわよー!」
二人は夕焼けの空を屋台に向け飛び立った。
「春だよー・・」
二人の妖精が春を伝えている。一人は白く、一人は黒い。黒い方はやる気がなさそうだ。
「もう、リリーったらちゃんと言ってよう!」
「だってもう桜も散りかけてるよ。言うのが遅すぎだと思うけど?」
「そ、それは仕方ないじゃない。だって・・・」
口ごもる白い方をよそに黒いほうがあっさりと理由を告げる。
「理由は簡単。リリーが寝坊したから。」
「ね、寝坊じゃないもん!なんだか何回も眼が覚めて寝不足なの・・。」
「寝不足?なんで?私は一回も目が覚めなかったけど。」
なんで私だけ・・と思う白い方。同時に別のことにも気づいた。
「そういうリリーは起きてたんじゃない!どうして起こしてくれなかったのよ!」
「・・・焦るリリーの顔が見たかったから。リリーはいつも笑顔だからね。たまには違った表情を見たかったの。」
白い方が必死に訴えるが、黒い方はニヤっとして返事している。その笑みにはもう欲求が満たされたとばかりにニヤニヤである。
「も、もう!そんな理由で起こしてくれなかったの!?信じられない!!」
「お、今度は怒った表情ね。この顔を見たのは何年ぶりかな?」
珍しく憤慨する白い方を見つつ、黒い方はさらに満足気に笑う。黒い方の一本勝ちである。
「とにかく、来年はちゃんと起こしてよ!そうじゃないともうリリーと口利かないんだから!」
「あはは、ちゃんと起こすよ。もうこれだけリリーの違った表情見れたから十年くらいは満足よ♪」
「十年後もずっと!!」
そんな二人のやり取りを見る一つの影があった。
「こんにちはー♪」
二人はやり取りに夢中で近づく影に気づかなかった。それだけに結構驚く二人。だが話しかけた当人は気にしていない。
話しかけたのは射命丸文。幻想郷のブン屋であり、"文々。新聞"というものを自分で取材、編集、発行している。
「豪く遅い春の宣言ですねー♪何か理由がおありでしょう?もしよかったら取材に協力して頂けませんか♪」
「ああ、それはねー、おっと。」
黒い方が話しかけた途端、白い方が黒い方を自分の方に引っ張ってきた。
「ちょっと、あんな恥ずかしい話を新聞にするつもり!?私は嫌よ!」
「別にいいじゃな」
黒い方が言おうとしたが白い方がそれを遮った。
「残念ですが、取材はお断りします!」
白い方がきっぱり言い放った。だがそこは新聞記者。取材を断られることには慣れている。もちろんその対処法も。
「では私が勝手に記事にしますね♪題して、"春の異変!?遅れた春のお告げ"!」
「ちょっと、異変は言いすぎよ!ちょっと・・その・・・遅れただけじゃない!」
白い方が抗議するが文はあっさりパスする。
「いいえ、毎年遅れないで春一番に登場するのにそれが遅れてしまったのはきっと何か大きな大きな力が働いたからに違いありません!」
文が大げさに誇張して言う。
「異変と聞くと巫女が黙ってないでしょうね。すぐに春に一番関係あるあなた達の住処に乗り込んできますよ。」
「あの巫女がね。それはそれは面倒なことで。それじゃ安眠できないじゃない。」
黒い方が続けてやや大きな声で言う。
「誰かさんが正直なことを話してくれたら安眠できるのにねー。」
黒い方が白い方をじっと見る。見る。見つめてくる。
・・・・・・・・・まだ見てる。白い方はついに折れた。
「もう、私が正直に言えばいいのね!!わかったわよ、取材受けますぅ!」
文はあまりに自分の思い通りにことが運んだので笑みを浮かべた。伊達に新聞記者をやっていない。
「ありがとうございます♪では早速お話の方を。」
「ふむふむ、そんなことだったんですかあ。もうちょっと面白いのを期待してたんですけどね。」
「これをそのまま記事にしても誰も読んでくれそうにないわねえ。まあこの射命丸、幻想郷一のブン屋として魅力ある記事にしますけどね!」
白い方は性格上全部正直に話してしまったので恥ずかしくて俯いている。
ちょっとかわいそうだったかな?そんなリリーを見て黒い方はある考えを思いついた。
「それはよかったわね。と・こ・ろ・で、」
「取材協力の報酬はあるのかしら?」
文は一瞬にして自分に突き刺さる視線を感じた。冷や汗をかきつつ、うしろを振り向いた。
黒い方が今にも弾幕を打ちそうな体制をとっていた。黒い方の弾幕は厄介だし、早く記事にしたいので弾幕ごっこはしない方が先決である。
「じゃ、じゃあこれを2枚二人分差し上げます!それではっ」
音速丸の異名を持つ文はすぐに空の彼方へ飛んでいった。
文が二人に渡したものは・・・
渡されたものは"超プレミアム!鰻の蒲焼食べ放題券!"だった。
「ああ、ミスティアがやってる店か。リリー、今年の栄養分はばっちりだ!」
長期にわたって眠り続けるには相当な量のエネルギーが必要である。去年は森のきのこを食べた。
「そういえば・・・。」
黒い方は何故か毒きのこが判別できるのだが、白い方はそれができない。結局、黒い方が採ったきのこを分けてもらっただけだった。
「私の寝不足は栄養不足が原因だったってことね。」
白い方はようやく理解した。だが今年はこの券があるから大丈夫だ。鰻は安心して食べられるものだ。今年はいっぱい食べよう!
「リリー、いっぱい食べようね♪」
白い方はこれまでにないほど素晴らしい笑顔だった。その笑顔は見慣れている黒い方さえも見とれてしまうものだった。
「もちろん!リリーには負けないわよー!」
二人は夕焼けの空を屋台に向け飛び立った。
そして慌てるリリーホワイトが新鮮。