「咲夜、そこにある芝生を食べなさい」
「はい?」
レミリアは残酷な吸血鬼だから、大好きな咲夜に理不尽な命令しちゃう。特に今日は、ひな祭りで本当は雛人形をレミリアは欲しがっていたのに、瀟洒な咲夜はお内裏様ばかり、12対つまり24体買って来た。
咲夜はそれを嬉々として、紅魔館のあらゆるところにセットしていて不気味だった。さっき、廊下を歩いていたらそれが紅魔館の毒気に当てられて挨拶してきたときは驚いた。中には、妖精メイドと弾幕ごっこをしている奴や、パチュリーにバラの花束を渡して告白している奴までいる。
とにかく、元凶は咲夜なのだ。
「美味しそうでしょう? その芝生」
「…………」
ちなみに、ここは紅魔館の室内で芝生が生えているわけではなく、パチュリーに振られたお内裏が今度は、レミリアに告白して渡して来たものだった。何でパチュリーには、バラで私には芝生なのかという疑問が湧いた。
だが、そのお内裏は次の瞬間切り裂かれていた。レミリア自身が切り裂いたのである。疑問よりも、芝生渡して告白しようとするお内裏に返事をしたのである。
そして、この事態を招いた咲夜を呼び出して現在にいたる。
「大丈夫、死にはしないわ」
「お嬢さまの命令ならばしかたありませんね」
そういって、咲夜は何処からとりだしたのかティーポットに芝生を入れて熱湯を入れた。そして、銀の時計で時間を測る。室内には、存外いい香りが漂った。とりあえず黙って見てみることにしたレミリアの感覚では3分位したときだった。
あらかじめ、暖めておいたカップにその芝生から抽出した液体を入れて飲んだ。
「…………」
「美味しいです」
芝生汁を咲夜は全て飲んでしまった。食べたわけではないが、レミリアはそれに唖然としていまい文句が言えなかった。
「……咲夜、……今回の件それで許してあげるわ」
「お内裏様がお嬢さまに無礼を働いたそうですね。彼等もまた、お嬢さまの能力に当てられた身許してあげてください」
なにそれ、私のせいなの? いくらなんでもそれは酷い、でも私は残酷な吸血鬼だけど今回のことはそれで許していいのかしら? 正直のところ、咲夜にあまり残酷なことしたくない。
それよりも、芝生汁が本当に美味しいのかちょっと気になるところでもある。咲夜に新しく芝生汁を淹れさせてそれでゆるそう。
「咲夜、その私にも......」
「はい、準備しておきました。」
咲夜はいつのまにか、芝生汁を用意していた。それを、私は受け取るとまずは香りを嗅いだ。いい香りだ、春先の芝生の匂いがする。
そして、私はそれを飲んでみる。
「……不味い!」
余りにもその味は不味い! 普通に気付くべきだった。芝生汁が美味しい分けない。嵌められた!
「……お嬢さま! 私も芝生をお嬢さまに渡して言いたいことがあります」
「何? 言ってみなさい」
「私がお嬢さまのお内裏様になります」
「?????」
こうして、咲夜の告白計画は遂行されてた。結果は残念ながら振られてしまった。即答だった。でも、咲夜はあきらめない。
これでこそ紅魔館。