Coolier - 新生・東方創想話

東方外道英雄  嘘一話

2014/05/04 02:44:09
最終更新
サイズ
3.84KB
ページ数
1
閲覧数
1268
評価数
1/10
POINT
230
Rate
4.64

分類タグ

鬼人正邪は悩んでいた。最近人の嫌がる顔を見ていない。天邪鬼である正邪にとって人の嫌がることをすること自体が存在意義なのである。それは同時に正邪の趣味でもあった。輝針城の件での逃亡生活のせいで、それができていない。これは死活問題である。なんでもいいから嫌がらせをしなくてはと考えを巡らせていた。異変を起こした張本人である正邪であるが所詮は小妖怪だ。力でいびることなどできはしない。自分にあるのは「すべてをひっくり返す程度の能力」といった名前負けの能力だけ。こんなことでは人間相手に何か仕掛けたとしても力あるものにコテンパンにされてしまうだろう。
「・・・あの瞬間は良かった・・・。」
正邪は異変の終わりごろのある一瞬を思い出していた。自分が小人の姫、少名針妙丸を見捨てた瞬間。あの一瞬の彼女の悲哀に満ちた顔。計画は失敗したが正邪の中であの一瞬は最高の快楽であった。
 そんな悦に浸っていた正邪は自分の近くに何者かが立っているのにまったく気が付かなかった。
「ごきげんよう天邪鬼さん」
「!?」
そこにいたのは黒い服の女だった。
「・・・誰だ。」
「あら一度驚いた割に冷静なのですね。さすがは異変の首謀者ということかしら。」
「皮肉か。うれしいねえ。」
「あら、私は純粋に褒めているのですわ。」
「ああそうかい。」
しばし沈黙が包む。正邪は頭の中で考えていた。
おそらくこいつは私を利用しようとしているのだ。もしくは、ただ私が何かするのを笑って見ているつもりなのだろう。こいつの放つ雰囲気は私のそれと似ている。でも、私のよりももっと黒く、そして純粋だ。
「貴女、一番楽しいときって知ってる?」
唐突な質問。正邪にとってそれは一つしかない。
「人に嫌われるとき。」
「でしょうねえ。特に裏切ったりするときなんて最高よねえ。」
気のせいか口調が変わってきているような気がする。
「・・・でなにが言いたいんだあんたは。」
「あら失礼。貴女最近つまらないのでしょう?異変が失敗しお尋ね者となった今、そうそう簡単に嫌がらせなんてできないものねえ。さっきあなたも悦に浸ってたみたいだけれども、なにを思い出していたのかしら。そんなものよりももっと面白いことをしたいとはおもいませんこと?」
「・・・面白いことだと?」
「ええ、貴女にとって存在のすべてを賭けてもよいと思えるほどの快楽。大丈夫。私にまかせなさいな。きっとうまくいくわ。」
どう聞いても胡散臭すぎる。ひょっとしたらこの胡散臭さは八雲家に匹敵するのではと思えるほどだ。しかし、どうも気になって仕方ない。頭の中でまたあの瞬間が再生される。見開いた眼、震える唇。絶望に動かぬ足。恐怖で支配するのではない。怒りで頭をパンクさせるのだ。その表情が私の生きている価値。それが「そんなもの」に思えるなどとほざいている。
「聞いてやろうじゃないか。」
「そう言うと思っていたわ。」
女は指を一本立てくるくると回しながら話す。
「目的は単純明快。貴女が幻想郷の英雄となるということよ。」
「論外だ。」
ありえない。絶対にない。そもそもの話それをしようとして異変起こして失敗しているのだ。今私はお尋ね者だぞ。できたとしてもそれまでに天邪鬼としての私の存在が持たないだろうが。
「話は最後まで聞きなさいな。そうして英雄になったあと貴女がすべての人を裏切るのよ。素晴らしいと思わない?」
「ああ素晴らしいなあんたのクルクルパーな脳みそは。あんたの頭の中に春告精でも飛んできたのか?完全に絵空事だ。私はあいにく小物なんでな。」
「貴女どっちにしろ殺されると思うわよ。このままでも。」
いきなりエグイことぶっこんできたぞこの女。
「最近噂の妖怪狩りは知っているかしら。その子はね、頭のねじが一本ぬけているのよ。おそらくお尋ね者のあなたの立場から考えて確実にロックオンされているはずね。」
「どっちにしろ殺されるなら快楽を追えっていうことか。確かに理は通ってなくもないが。でも無理だな。なぜなら私は生き残るからさ。どんな手を使ってでもな。」
女は軽く息を吐く。
「あらそう・・・残念。今日のところは引き上げるとするわあ。」
少し口元が見える。唇は歪に歪んでいた。
「でも・・・きっと貴女は私の言ったことをすることになるわ。そこに貴女の意思は関係ない。」
「なんで私に関わろうとするんだ。」
「面白そうだからよ。」
そう言って女は消えていった。何かの術だろうか。完全に気配が消えた。そして正邪はこぶしを握り締める。心の中で胸糞悪さと心地よさがこんがらがっている。まだあの絵空事に興味を惹かれているのだろうか。
「英雄・・・ねえ」
私がなれるのは精々アンチヒーローだろうが。そんなことを思いながら正邪は闇の中へと消えていった。
鬼人正邪の次回作にご期待ください!

二作目。元々続き物の構想で6話ぐらいに妄想してました。でも続かない。
テンションが続くなら続きも書こうかな・・・でもプロットもくそもないんだよなあ・・・
文字がぎゅうぎゅう詰めなのは前作との比較です。
話の長さは大体これぐらいで。これ以上の文章量はかけませぬ。短いなあ・・・
月津 明日
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.150簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
邪仙かと思ったけど黒い服?誰だっけ?