やぁ! 仄暗い地の底へようこそ、お客さん! わざわざ説明しなくても良いと思うけど、あたしが地底一の人気者こと、黒谷 ヤマメさ!
……え? 明るすぎてとても地下の住人には見えないって? はは、ただでさえ陰気な場所にいるのに、こっちまでそれに合わせてたらカビが生えちまうからね。明るく、楽しく。それがあたしのモットーさね! ほら、お客さんだって、ネガネガしてる奴と話してるよりかは、陽気でかわいい女の子と笑ってた方が楽しいだろ? あの連中にも、その感覚を味わわせてやりたいからねぇ。それで、ゆくゆくはこの地底がみんなが笑えるような所になればいいなぁ、なんてね。
ん? ……いや、参ったなぁ。お客さん、覚り妖怪か何かかい?
あぁ、確かに、悩み……っていう程じゃないけど、最近ね、ちょっと思うところがあって。
お、聞いてくれるのかい? 悪いねぇ、初対面だっていうのに。なんでだろうね。お客さんには、何だって話せる気がするよ。お母さんみたいだ、って良く言われないかい?
うん。みんながあたしを慕ってくれるんだ。それは嬉しいさ。嬉しいんだけどね……。ついこの間、こんな事があったのさ。
あれは、私が旧都へ向かっている時だったねぇ。ここから旧都へ向かう途中には、おっきな橋があるのさ。で、そこには水橋 パルスィって橋姫が住んでるんだけど。
あぁ、もしもあいつに出会っても、疎ましく思わないでやっておくれよ。確かにあいつは人を妬むけど、裏を返せばそれだけ人の長所を見つけるのが上手いってこと。もしもあいつに妬まれたら、爽やかな笑顔で「ありがとう」とでも言ってやりな。面白いもんが見れるよ。この間なんて、「ぱりゅりゅりゅりゅりゅ!?」とか言って顔を真っ赤にしちゃってさぁ。ははは。
と、どこまで話したっけ。あ、そうそう。それで、私がその橋を通りかかった時さ。そのパルスィが、あたしの方をじぃっと見てたんだ。もっと具体的に言うと、えっと、その……あたしの、お尻の方をさ。あんまりじろじろ見てるもんだから、あたしも気になっちゃってね。声をかけてみたワケよ。
「パルパル、どしたー?」
「妬ましいわ」
「えっ」
「いや、ホント。改めて見ると、ガチで妬ましい」
「何がさ」
「肉厚。私のお尻はこんなに薄いのに」
そんな風に言いながら、パルスィは自分のお尻をさするんだ。あたしのお尻をガン見したままね。うーん。正直、コンプレックスなんだよねぇ。
「いや。いやいやいやいや。何言ってるのさ。パルパルのお尻の方がかわいいじゃないか」
「はー? ハラスメント行為と感じたわ」
「パルパルが先に言ってきたんじゃんか!」
「そのお尻を私に触らせることで、謝罪と賠償の意を表しなさい」
「理不尽すぎる!」
「一回だけ! ワンチャンあれば勝てる!」
「嫌だよ!」
必死の形相で追いかけてくるパルスィをなんとか振り切って、あたしは旧都に逃げ込んだんだ。
旧都かい? 良い所だよ。酒くっさいけどね。鬼の皆さんも、気の良い人ばっかりだし。あれ? いやに嬉しそうじゃないかい。あぁ、何でもないなら良いけどさ。
で、あたしが息を切らして立ち止まってるところに、陽気な歌声が聴こえてきたんだ。
「まんまるお尻はヤマメのお尻~♪ くにくにこねれば扉が開く~♪」
「開きませんよ!?」
その歌声の主は、星熊 勇儀さんだった。鬼のお偉いさんさ。気さくなお人でね、あたしみたいな小者でも、喜んで話相手になってくれるよ。
で、とにかく豪快! この間、宴会の途中で酒を切らしちまったことがあってね。鬼の四天王ともあろうお方に使いっぱさせるのは気が引けたけど、「一番飲むのがあたしなんだから、あたしが酒を持ってくるのが道理だろ?」って言って聞かないもんだから、仕方なくお願いしたんだ。そしたら、何を持って来たと思う? 酒屋を丸ごと持って来ちまったんだよ! 可哀想に、店主さんは涙目で柱にしがみついてたよ。まぁ、お釣りがたっくさん返ってくるくらいのお金は払ったらしいけど。で、そんな有様で言った言葉が「うーん、これで足りるかなぁ」だからね! あははははは!! 思い出しても腹が痛いや。
馬鹿でかい杯に立派な角なんて、とにかく目立つ格好だから見ればすぐに分かると思うよ。挨拶しとくことをお勧めするよ。ホントに楽しいお人だからねぇ。
話を戻すよ。いや、すぐに脱線しちまうね。申し訳ない。
そんな妙ちくりんな歌を大声でやってるもんだから、あたしも恥ずかしくってね。ついつい、勇儀さんに食ってかかっちまったのさ。
「ちょっと、姐さん! 何です、その歌は! 恥ずかしいったらありゃしない!」
「おお、おお、ヤマメ! 良く来たねぇ! 良いところに来た! スキニー履きな!!」
お酒で真っ赤っ赤になったお顔で、勇儀さんは何かを取り出したんだ。ズボンだった。それも酷く細身で、身体の線が目立ちそうなの。
「それを履けって!? 嫌ですよ!」
「あははははは! そう恥ずかしがりなさんな! こないだの宴会の時に、思ったんだ。ヤマメのお尻はとびっきり上等だってね。そんなスカートで隠しとくのはもったいないよ」
え? あぁ。ちょっと前の宴会の時、テンションが上がり過ぎて脱いじまってねぇ。……思えば、あの時からみんなのあたしを見る目が変わった気がする。
「あの事は忘れて下さいよ!」
「いーや、無理だね! あんな良いもの持っておきながらそれを隠してるなんて、そりゃあお前、酷な話だろ! 大丈夫、絶対似合うさ! あたしが保障する。だから、スキニー履け!!」
「やーーーーだーーーーー!!」
そうして、力尽くであたしの服を脱がしにかかる勇儀さんから命からがら逃げ帰ったのさ。
え? あ、あはは。その通り。今履いてるこいつが、勇儀さんからもらったもんさ。勇儀さんは嘘の吐けないお人だし、そこまで言うなら履いてみようかな、と思って。くれた本人にも見せるべきだと分かっちゃいるけど、やっぱりどうにも恥ずかしくってねぇ。むちむちのぴちぴちで、おかしいだろ?
……に、似合うかい? かわいいかい? そ、そうかー。かわいいかー。へへへ。不思議なもんだね。お客さんにそう言ってもらえると、なんだか自信が湧いてくるよ。
――よし、決めた! お客さん、これから旧都に行くんだろ? 折角だから、私も一緒に行って、そこでお披露目するよ。
随分気持ちが楽になったよ。ありがとうね、お客さん。
じゃあ、行くとするかね!!
イラストで凄く見たい!!
ところで、画像はないんですかね?
こんなヤマメなら、人気者なのも納得ですしおすし
ところで画像はどこにあるんですか?
それにしても、皆尻派なのか…wそこが何とも言えず可笑しかったですw
作者の尻に対する愛情に嫉妬!