たくさん、たくさん捜しました。
何処にも居ませんでした。
何処を捜しても、何処に行っても居ませんでした。
いっぱい、いっぱい待ちました。
いつまでも来ませんでした。
何処で待っても、何をしても来ませんでした。
諦めました。
何処にも居ないし、いつまでも来ないからです。
これ以上、意味が無いからです。
嘘です。
諦められません。
捜し続けますし、待ち続けます。
意味が無くても。
捜すのは得意です。
色んなとこに行くのも好きです。
待つのは得意です。
ただ暇を潰すことも好きです。
嘘です。
好きなんかじゃありません。
今はもう、微塵程の興味も湧きません。
貴方が居ないからです。
貴方が居たから、何かを好きになれたのです。
そう、好きでもないことを続けるのはもう止めにしましょう。
もう一回だけ、捜しましょう。
あと少しだけ、待ちましょう。
それで貴方に会えなかったら。
私はもう諦めます。
一度だけ、足掻きましょう。
もう一度、何かを好きになるために。
「妹紅ー? 妹紅ー、何処だー?」
―――声がする。私が一番好きな声。
「ん……。 慧音ー! 私はここだぞー」
「あぁ、ようやく居た………。 全く、探したぞ」
慧音は呆れ顔。
絶対に口には出さないけど、安心する。
いつもと変わらないから。
変わってばかりの世界で、数少ない『変わらないもの』。
変わらなくて、大好きなもの。
「おーい妹紅ー? 立てるか?」
「うん、全然へい………いややっぱり立てない」
「今平気って……」
「立ーてーなーいー」
「はいはい………ほら、掴まれ」
「うん」
慧音が差し出した手に、私の手を重ねる。
暖かい。
「―――い?」
「え?」
慧音が何かを言ったようだが、あまりにも心地よい触れ合う手の感覚に浸るあまり、私には聞こえなかった。
「妹紅は、夕飯何が食べたい?」
「え、あぁ、そうね―――慧音が食べたい、かな」
こんなタイミングで訊くにはちょっとおかしなその質問に、私はおどけるように答える。
慧音は、そういうことを訊いてるんじゃない、と困ったような顔を浮かべた。
「ん~、まぁ何でもいいかな」
「そういうのが一番困るんだがなぁ………」
私の定型句な答えに、慧音が定型句で返す。
いつも通りに。
いつも通り、嘘偽りのない会話。
「慧音と食べられるなら、何でもいいの」
「―――またお前はそういうことを……」
慧音が顔を逸らす。
きっと、照れてるんだ。
「本当よ。 本当に、慧音と一緒に食べられるだけでいいの」
「はいはい、私もそうだよ」
慧音は、なんだか、本気にしてないみたいだ。
「もう………」
拗ねる私の頭を、慧音は優しく撫でてくれた。
私に近い方の手は私と繋がれている。 だから、私から遠い方の手で。
慧音の手が届き易いように、私はちょっと身を屈める。
すると慧音は、猫みたいだ、なんて言って笑った。
「―――にゃーん」
ちょっとわざとらしく、猫の鳴きまねをしてみる。
慧音は、私の喉を撫でる。
「ゴロゴロ、とは言わないのか?」
笑いながら慧音は冗談を飛ばす。
私は何も応えず、また猫の鳴きまねをした。
それからしばらく、私達は歩いた。
ずっと手を繋いで。
ずっと一緒に歩いていた。
笑ったり、ふざけあったり。
月並みだけど、こんな時間がずっと続けばいいのに、とも思った。
ずっと続けばいいのに。
その言葉は。
ずっと続かないことを知っているからだ。
続かないんだ。
私がいくら思っても。
でも、せめて。
今だけは、この時間を守りたい。
そう、守ってみせるんだ。
―――目が覚めた。
私は誰だっけ、何をしていたんだっけ。
あぁそうだ。私は捜していたんだ。
もう一度だけ捜すと決めたんだ。
あぁ憂鬱だ。
また、長い時間を掛けて捜さなければいけないんだ。
―――さっきの夢は、いつのことだったかな。
ずっと、ずっとずっとずぅっと、昔のことだったかな。
―――いい夢だったな。
夢だったのかな。
本当は、ここが夢なんじゃないかな。
私は目を閉じた。
さっきの夢を、もう一度見たいから。
もしここが夢なら、覚めて欲しいから。
早く、見つけたいから。
私は目を閉じた。
あぁどうか。
目を覚まして、はじめに見るのが、貴方でありますように。
何処にも居ませんでした。
何処を捜しても、何処に行っても居ませんでした。
いっぱい、いっぱい待ちました。
いつまでも来ませんでした。
何処で待っても、何をしても来ませんでした。
諦めました。
何処にも居ないし、いつまでも来ないからです。
これ以上、意味が無いからです。
嘘です。
諦められません。
捜し続けますし、待ち続けます。
意味が無くても。
捜すのは得意です。
色んなとこに行くのも好きです。
待つのは得意です。
ただ暇を潰すことも好きです。
嘘です。
好きなんかじゃありません。
今はもう、微塵程の興味も湧きません。
貴方が居ないからです。
貴方が居たから、何かを好きになれたのです。
そう、好きでもないことを続けるのはもう止めにしましょう。
もう一回だけ、捜しましょう。
あと少しだけ、待ちましょう。
それで貴方に会えなかったら。
私はもう諦めます。
一度だけ、足掻きましょう。
もう一度、何かを好きになるために。
「妹紅ー? 妹紅ー、何処だー?」
―――声がする。私が一番好きな声。
「ん……。 慧音ー! 私はここだぞー」
「あぁ、ようやく居た………。 全く、探したぞ」
慧音は呆れ顔。
絶対に口には出さないけど、安心する。
いつもと変わらないから。
変わってばかりの世界で、数少ない『変わらないもの』。
変わらなくて、大好きなもの。
「おーい妹紅ー? 立てるか?」
「うん、全然へい………いややっぱり立てない」
「今平気って……」
「立ーてーなーいー」
「はいはい………ほら、掴まれ」
「うん」
慧音が差し出した手に、私の手を重ねる。
暖かい。
「―――い?」
「え?」
慧音が何かを言ったようだが、あまりにも心地よい触れ合う手の感覚に浸るあまり、私には聞こえなかった。
「妹紅は、夕飯何が食べたい?」
「え、あぁ、そうね―――慧音が食べたい、かな」
こんなタイミングで訊くにはちょっとおかしなその質問に、私はおどけるように答える。
慧音は、そういうことを訊いてるんじゃない、と困ったような顔を浮かべた。
「ん~、まぁ何でもいいかな」
「そういうのが一番困るんだがなぁ………」
私の定型句な答えに、慧音が定型句で返す。
いつも通りに。
いつも通り、嘘偽りのない会話。
「慧音と食べられるなら、何でもいいの」
「―――またお前はそういうことを……」
慧音が顔を逸らす。
きっと、照れてるんだ。
「本当よ。 本当に、慧音と一緒に食べられるだけでいいの」
「はいはい、私もそうだよ」
慧音は、なんだか、本気にしてないみたいだ。
「もう………」
拗ねる私の頭を、慧音は優しく撫でてくれた。
私に近い方の手は私と繋がれている。 だから、私から遠い方の手で。
慧音の手が届き易いように、私はちょっと身を屈める。
すると慧音は、猫みたいだ、なんて言って笑った。
「―――にゃーん」
ちょっとわざとらしく、猫の鳴きまねをしてみる。
慧音は、私の喉を撫でる。
「ゴロゴロ、とは言わないのか?」
笑いながら慧音は冗談を飛ばす。
私は何も応えず、また猫の鳴きまねをした。
それからしばらく、私達は歩いた。
ずっと手を繋いで。
ずっと一緒に歩いていた。
笑ったり、ふざけあったり。
月並みだけど、こんな時間がずっと続けばいいのに、とも思った。
ずっと続けばいいのに。
その言葉は。
ずっと続かないことを知っているからだ。
続かないんだ。
私がいくら思っても。
でも、せめて。
今だけは、この時間を守りたい。
そう、守ってみせるんだ。
―――目が覚めた。
私は誰だっけ、何をしていたんだっけ。
あぁそうだ。私は捜していたんだ。
もう一度だけ捜すと決めたんだ。
あぁ憂鬱だ。
また、長い時間を掛けて捜さなければいけないんだ。
―――さっきの夢は、いつのことだったかな。
ずっと、ずっとずっとずぅっと、昔のことだったかな。
―――いい夢だったな。
夢だったのかな。
本当は、ここが夢なんじゃないかな。
私は目を閉じた。
さっきの夢を、もう一度見たいから。
もしここが夢なら、覚めて欲しいから。
早く、見つけたいから。
私は目を閉じた。
あぁどうか。
目を覚まして、はじめに見るのが、貴方でありますように。
読んだだけで描写がありありと浮かびました
こんな世界観大好きです
次回作心から待ってます
もう来ないのか…ガッカリ。
生まれ変わった慧音は、妹紅とあえるんでしょうか。
お互いが、気づくことが出来るのでしょうか。
ずっと二人が笑っていられたらいいのにと、
月並みで不可能なことですが思わずにはいられませんでした。
あなたの作品をまた読みたいなあ
もう書かないなんてそんなこと言わないでくださいよ。
また会えることを期待しています。