1
それは、本当にふとした日常の出来事。
プリズムリバー三姉妹がいつもの通り、次のコンサート(と言う名の宴会)に向けてセッションをしていた時のこと。
「あぁもう! もうちょっと何か別の音楽をやりたい!」
「きゅ…急に何よリリカ…」
「最近はいつもいつもおんなじような曲ばかりじゃない!もうちょっとなにか別の音楽をやりたいのよ」
声を荒々しくリリカは言う。そう、最近のプリズムリバー楽団は数ヶ月前のように様々な曲に挑戦をしていない。
それというのは、鳥獣伎楽と名乗るアーティストが、この頃プリズムリバー楽団の人気を上回って活動している。
鳥獣伎楽というのは、夜雀ミスティア・ローレライと山彦の幽谷響子が突如ゲリラライブを開催しているバンドである。
「電気の無い幻想郷でどうやってエレキギターを鳴らしているのか…」
「そんなことはどうでもいいのよルナサ姉さん。前のようにいろんな音楽をやりたいの私は!」
「まぁまぁリリカ、落ち着いて、ね?」
「なんだメルラン。そうやってまた視聴者に萌えっ子アピールか?」
「…ルナサ姉さんは何を言ってるの?」
その時、リリカに強烈な悪寒が。
「リリカは知らなくていいのよ…?」
「は、はひぃ……ってそんな話はどうでもいいのよ。なにか姉さんたちもやりたくないの?」
「そうねぇ…やりたくない、って言えば嘘になるわね」
「同感だ、しかし、そんなすぐにあれやろう、これやろうはできないんじゃないか?」
「そこで、なんだけど、外の世界から幻想入りしてきた楽器で一回演ってみるのはどうかなぁ?」
「「え」」
一瞬の沈黙。一瞬の硬直。一瞬の(ry
「リリカ!それだ!」ルナサが声を大にして言う。
「たしかに、私達はいろんな楽器をやっているけど、それは昔から持っていたものだから、外の世界の楽器というのもおもしろそうねぇ…」
「でしょ!でしょ!前々から考えていたのよ。そうと決まったら早速行こうよ!」
「え、行くってどこにだい…?」
「どっか!」
メルランとルナサは愕然とする。
(ここまでアホの子だった)(かしら…?)(っけ…?)
「へーーーっくしょん! ったく誰か噂してるのかなぁ」
目の前、目の前。 リリカはお気楽にポケットからティッシュをとりだして鼻をかむ。
「この子はお気楽でいいわねぇ…」小声でメルランは言う。
「まぁとりあえず、外の世界のモノならあそこに行ってどこで手に入るか聞いたほうが良さそうね…」
「え、ルナサ姉さん心当たりあるの?」
「まぁ、一応、ね」
プリズムリバー楽団はとある場所に足を運ぶ。
2
そこは魔法の森の入り口にあるボロボロの小屋。屋根のところには・香霖堂・と書かれた看板がある。入り口の横にはたぬきの置物。他にもいろいろと散乱しているが、おそらくすべて外の世界から迷い込んだものを集めた物だろう。
リリカはガラガラーと戸を開ける。さすがに外の世界から自動ドアはまだ幻想入りしていない。
「いらっしゃい。おや、初顔だね」
そこにいるのは皆様御存知、森近霖之助。
「騒霊楽団が小道具屋になにか御用かな?」
「えと、外の世界から幻想入りしたものを手に入れる場所を教えて欲しいんですが…」ある程度丁寧な口調でリリカが言う。
「うむ、何を手に入れたいのかは知らないけど、場所を教えるのは自分の商売を苦しめる同様だ。さすがに教えることはできないね」
リリカはすこし落ち込んで、
「そ…そうですか…では失礼します」
と帰ろうとする。しかし霖之助そこはせっかくのお客(カモ)だ、粘る。
「いやいや、騒霊楽団。教えることはできないけど、僕が代わりに探して売るという手もあるんだよ?」
「え?」
「うん」
リリカは「その手があったか」と言わんばかりの顔で、
「じゃあ、幻想入りしてきた楽器などを…」人差し指を合わせてつんつんしながら霖之助に尋ねる。
「ふむ、楽器か。とりあえず手元にいくつかあるけど見てみるかい?」
「ちょ、ちょっと待って下さいね、姉さん達呼んでくる!」
リリカは、こんな小屋に三人も一気に入ってしまったら邪魔だろうと考えて、外に二人を待たせていた。急いで外に出る。
「メルラン姉さん!ルナサ姉さん!商品でいくつかあるから見せてくれるって!」
「え、でも場所を教わるんじゃなかったの?」メルランは最初の目的を確認する。
「場所を教えるのはダメだとかなんとか、って」
「そう…でも私達あまりお金持ってないわよ?」
プリズムリバー楽団は、おひねりなどで一回のコンサートでもらえるお金は、あるにはあるがそれほど多くは貰っていない。
「でも、とりあえずみるだけみてみようよ」とルナサが提案する。
「そうね、とりあえず見るだけ見てみましょう」
三人は香霖堂にガラガラーと再入場。
「来たね、とりあえずすぐに出せるのはこのくらいだね。他にも倉庫にないことはないんだけど」
そこにはピッコロ(なぜかピンク色)合わせシンバルそしてカウベル、クラリネット、エレキギター、ウッドベースなどなど。
「へぇ…いろいろあるわね」ルナサがぼそっと言う。
「よかったら鳴らしてみてもいいよ」
というわけで、クラリネットにリード(別売り)を取り付けてメルランが吹き、ウッドベースをルナサが、ありあわせの打楽器を手元において、スティックを空中浮遊させながらギターを弾くリリカ。
「こういう時にオールマイティーの娘は便利ね」とメルランがぼやく。
そして、準備が整い、演奏を開始。
クラリネットにメルランの躁の音が加わり、高揚する音。
ベースにルナサの鬱の音が加わり、虚脱する音。
打楽器とギターに幻想の音が加わり、今までにない音。
それらが加わり、実に見事な、即興とは思えないまさに「幻樂」が創られていく。
「おぉ…」いままでに騒霊楽団の噂しか聞いたことのない霖之助は感動ともいうし、絶望ともいう気分になっていた。
数分の演奏を終え、三姉妹は顔を合わせる。
「「「これだ!」」」
三姉妹が顔をあわせてキャッキャと始めた時、霖之助は小さく拍手を送った。
「「「店主さん!」」」
「気軽に霖之助と呼んでくれて結構」
「霖之助さん!この楽器ください!」
「うん。さすがにタダでは、ね」
リリカは少し愕然としたが、霖之助は話を続ける。
「でも、どうせ誰も買わない楽器たちだ。今の演奏をお代替りにして、その楽器達を使ってくれないか?」
三姉妹は、また顔を合わせる。そして口をそろえていう。
「「「ありがとうございます!」」」
霖之助はニコニコしながら、
「いえいえ。でも次また楽器を買うときにはしっかりお代をいただくからね。僕も幻想入りしてきた楽器を注目して集めてみるよ」
「はい!お願いします!」とルナサが言う。
そうして楽器を霖之助から貰って三姉妹は香霖堂から出た。
三姉妹は霖之助から貰った楽器を自宅に持ち帰る。
自宅に帰ってテーブルに楽器を乗せる。
「いろんな楽器を貰っちゃたね」リリカは楽器を見ながら再確認するようにつぶやいた。
「これだけあれば、次のコンサートでいいのを披露できるな」
「そうね。次のコンサートが楽しみだわ…!」
メルランとルナサが続いてつぶやく。
「次のコンサートっていつだっけ?」リリカが訊く。
「確か博麗神社で1週間後ね。全然時間あるし、予定してた曲をこの楽器たちでやればいいものになるわ」
メルランがそう質問に対する答えを言った時、ルナサがふと思いつく。
「…なぁ…この楽器たちで演奏するとき、暴力巫女にお願いして、外の世界で言う対バンっていうのを鳥獣伎楽と演らないか?」ルナサが見るからに怪しい、何か企みをしている顔で言った。
「対バンって、なに?姉さん」とリリカが訊く。
「いくつかの演奏者が同時に演奏すること、だったかなぁ。だから、音楽の喧嘩みたいなものだと思う」ルナサがなんとなくの記憶でリリカに言う。
「…面白そうじゃない!」リリカは目を輝かせて言う。
「確かに、面白そうね…それに人間の里で人気のある2つの楽団が共演するとなると、かなりの人が博麗神社に集まるわけだし、巫女も乗るんじゃないかな?」
「話はまとまったね。じゃあ、早速動こうか。善は急げ、思い立ったが吉日ってね」
「「はーい」」
三姉妹はそれぞれ動き始めた。対バンの意味を勘違いしたまま。
3
メルランは博麗の巫女、博麗霊夢に直談判をしに。
ルナサは鳥獣伎楽のミスティア・ローレライにお願いをしに。
リリカは文々。新聞の射命丸文に宣伝のお願いを。
「そんなことできるわけないでしょ!」
そう叫んだのは博麗の巫女。
「で、でもですね、このコンサートをやれば里の人間も集まり、里の人間に鑑賞料としてお賽銭を入れてもらうようにすれば、神社としては…」
「ならおk」
博麗の巫女の承諾は得た。
「対バン?なにそれ?」
そう言うのは八目鰻の仕込みをしているミスティア・ローレライ。
「いや、だから、鳥獣伎楽と騒霊楽団の同時コンサートを…」
実はこの話、5回目。ミスティア・ローレライが意味を理解しても、仕込みで三歩歩いて忘れるという連鎖。
「まぁ、わかったわ。それでなにかしら?」
「もうダメだ…」
ルナサはそう言って、幽谷響子のところへ行き、3分ほどで、一度の説明で承諾を得た。
「え、宣伝?うんいいよ、いいよ。来週の宴会ね。わかったわ。」
リリカが簡単に説明しただけで射命丸文はとっとと承諾した。
文からしたら、ネタが手に入ったので、速攻で自宅へ戻って記事編集をしたいと、リリカと文が会って3分ほどで帰ってしまった。
三姉妹が家で集合し、それぞれの報告を済ませ、ルナサが言う。
「明日から一週間、死ぬ気で練習して、鳥獣伎楽を抜こう!」
「「おー!」」
4
そんでもってあれやかれやで一週間。
夜8時に博麗神社の宴会会場に来たプリズムリバー楽団は、巫女が気を利かせて(自分のために)、居候の鬼に作らせたステージを見て言った・
「「「デカイ!」」」
それは見事なステージで2つのアーティストが同時演奏できるように、2つのステージが向きあってできていた。
プリズムリバー楽団は、正面向かって左のステージに楽器をセットし、神社内の控え室へ入る。
そこにはすでに鳥獣伎楽が待っており、響子がこちらに気づき駆け寄ってきた。
「騒霊楽団の方々ですね!今日はよろしくお願いします!」
「あ、こちらこそお願いします」とメルラン。
「はいはい。じゃああんたらに言っておくよー」
博麗の巫女が突然何かを言い始めた。
「あんたらは今回の宴会(儲け話)の主役だ。だからね、目立ってもらわないと困るし、一応妖怪だったり霊だったりするんだから、人間に危害を加えないこと!いいね!」
その場の全員が口をそろえて、テンション低めに、はーいと答える。
控え室で三姉妹は薄化粧をし、時間になるまで談笑をして、楽器の調整のために、ステージに上る。
そこには、すでに里の人間半数以上と思える程のものすごい人数が演奏を心待ちにして待っていた。
よく見ると、ところどころに妖怪や霊も混じっているが、人間に危害を加えたら博麗の巫女が飛んで駆けつけてボコボコにするとわかっているため、暴れる様子もなければ、なにかをしよう、という感じにも見受けられない。
そう。ここにいるのは純粋に演奏を楽しみに来た人、妖怪、霊なのだ。
そう感じつつ、セッティングは終わった。定時になったら演奏を開始するだけだ。
それまで、一度舞台袖で待つ。
緊張が高まる。霖之助からもらった楽器で初の披露なのだ。緊張しないわけがない。
いつもの楽器だったら緊張しないだろうか?リリカがそう思って自問する。
自答は単純明快。これだけの人の前でやるなんてめったにない。それに対バンなんだ。緊張しないわけがない!
さぁ、時間になった。
午後9時、博麗神社での宴会開始時刻。そして、騒霊楽団対鳥獣伎楽のバトルの開戦。
「メルラン姉さん!ルナサ姉さん!楽しもう!」
「勿論!」「がんばろう」
舞台袖から出てきたプリズムリバー楽団に、客は大声援を送り、コンサートが幕を上げる。
それは、本当にふとした日常の出来事。
プリズムリバー三姉妹がいつもの通り、次のコンサート(と言う名の宴会)に向けてセッションをしていた時のこと。
「あぁもう! もうちょっと何か別の音楽をやりたい!」
「きゅ…急に何よリリカ…」
「最近はいつもいつもおんなじような曲ばかりじゃない!もうちょっとなにか別の音楽をやりたいのよ」
声を荒々しくリリカは言う。そう、最近のプリズムリバー楽団は数ヶ月前のように様々な曲に挑戦をしていない。
それというのは、鳥獣伎楽と名乗るアーティストが、この頃プリズムリバー楽団の人気を上回って活動している。
鳥獣伎楽というのは、夜雀ミスティア・ローレライと山彦の幽谷響子が突如ゲリラライブを開催しているバンドである。
「電気の無い幻想郷でどうやってエレキギターを鳴らしているのか…」
「そんなことはどうでもいいのよルナサ姉さん。前のようにいろんな音楽をやりたいの私は!」
「まぁまぁリリカ、落ち着いて、ね?」
「なんだメルラン。そうやってまた視聴者に萌えっ子アピールか?」
「…ルナサ姉さんは何を言ってるの?」
その時、リリカに強烈な悪寒が。
「リリカは知らなくていいのよ…?」
「は、はひぃ……ってそんな話はどうでもいいのよ。なにか姉さんたちもやりたくないの?」
「そうねぇ…やりたくない、って言えば嘘になるわね」
「同感だ、しかし、そんなすぐにあれやろう、これやろうはできないんじゃないか?」
「そこで、なんだけど、外の世界から幻想入りしてきた楽器で一回演ってみるのはどうかなぁ?」
「「え」」
一瞬の沈黙。一瞬の硬直。一瞬の(ry
「リリカ!それだ!」ルナサが声を大にして言う。
「たしかに、私達はいろんな楽器をやっているけど、それは昔から持っていたものだから、外の世界の楽器というのもおもしろそうねぇ…」
「でしょ!でしょ!前々から考えていたのよ。そうと決まったら早速行こうよ!」
「え、行くってどこにだい…?」
「どっか!」
メルランとルナサは愕然とする。
(ここまでアホの子だった)(かしら…?)(っけ…?)
「へーーーっくしょん! ったく誰か噂してるのかなぁ」
目の前、目の前。 リリカはお気楽にポケットからティッシュをとりだして鼻をかむ。
「この子はお気楽でいいわねぇ…」小声でメルランは言う。
「まぁとりあえず、外の世界のモノならあそこに行ってどこで手に入るか聞いたほうが良さそうね…」
「え、ルナサ姉さん心当たりあるの?」
「まぁ、一応、ね」
プリズムリバー楽団はとある場所に足を運ぶ。
2
そこは魔法の森の入り口にあるボロボロの小屋。屋根のところには・香霖堂・と書かれた看板がある。入り口の横にはたぬきの置物。他にもいろいろと散乱しているが、おそらくすべて外の世界から迷い込んだものを集めた物だろう。
リリカはガラガラーと戸を開ける。さすがに外の世界から自動ドアはまだ幻想入りしていない。
「いらっしゃい。おや、初顔だね」
そこにいるのは皆様御存知、森近霖之助。
「騒霊楽団が小道具屋になにか御用かな?」
「えと、外の世界から幻想入りしたものを手に入れる場所を教えて欲しいんですが…」ある程度丁寧な口調でリリカが言う。
「うむ、何を手に入れたいのかは知らないけど、場所を教えるのは自分の商売を苦しめる同様だ。さすがに教えることはできないね」
リリカはすこし落ち込んで、
「そ…そうですか…では失礼します」
と帰ろうとする。しかし霖之助そこはせっかくのお客(カモ)だ、粘る。
「いやいや、騒霊楽団。教えることはできないけど、僕が代わりに探して売るという手もあるんだよ?」
「え?」
「うん」
リリカは「その手があったか」と言わんばかりの顔で、
「じゃあ、幻想入りしてきた楽器などを…」人差し指を合わせてつんつんしながら霖之助に尋ねる。
「ふむ、楽器か。とりあえず手元にいくつかあるけど見てみるかい?」
「ちょ、ちょっと待って下さいね、姉さん達呼んでくる!」
リリカは、こんな小屋に三人も一気に入ってしまったら邪魔だろうと考えて、外に二人を待たせていた。急いで外に出る。
「メルラン姉さん!ルナサ姉さん!商品でいくつかあるから見せてくれるって!」
「え、でも場所を教わるんじゃなかったの?」メルランは最初の目的を確認する。
「場所を教えるのはダメだとかなんとか、って」
「そう…でも私達あまりお金持ってないわよ?」
プリズムリバー楽団は、おひねりなどで一回のコンサートでもらえるお金は、あるにはあるがそれほど多くは貰っていない。
「でも、とりあえずみるだけみてみようよ」とルナサが提案する。
「そうね、とりあえず見るだけ見てみましょう」
三人は香霖堂にガラガラーと再入場。
「来たね、とりあえずすぐに出せるのはこのくらいだね。他にも倉庫にないことはないんだけど」
そこにはピッコロ(なぜかピンク色)合わせシンバルそしてカウベル、クラリネット、エレキギター、ウッドベースなどなど。
「へぇ…いろいろあるわね」ルナサがぼそっと言う。
「よかったら鳴らしてみてもいいよ」
というわけで、クラリネットにリード(別売り)を取り付けてメルランが吹き、ウッドベースをルナサが、ありあわせの打楽器を手元において、スティックを空中浮遊させながらギターを弾くリリカ。
「こういう時にオールマイティーの娘は便利ね」とメルランがぼやく。
そして、準備が整い、演奏を開始。
クラリネットにメルランの躁の音が加わり、高揚する音。
ベースにルナサの鬱の音が加わり、虚脱する音。
打楽器とギターに幻想の音が加わり、今までにない音。
それらが加わり、実に見事な、即興とは思えないまさに「幻樂」が創られていく。
「おぉ…」いままでに騒霊楽団の噂しか聞いたことのない霖之助は感動ともいうし、絶望ともいう気分になっていた。
数分の演奏を終え、三姉妹は顔を合わせる。
「「「これだ!」」」
三姉妹が顔をあわせてキャッキャと始めた時、霖之助は小さく拍手を送った。
「「「店主さん!」」」
「気軽に霖之助と呼んでくれて結構」
「霖之助さん!この楽器ください!」
「うん。さすがにタダでは、ね」
リリカは少し愕然としたが、霖之助は話を続ける。
「でも、どうせ誰も買わない楽器たちだ。今の演奏をお代替りにして、その楽器達を使ってくれないか?」
三姉妹は、また顔を合わせる。そして口をそろえていう。
「「「ありがとうございます!」」」
霖之助はニコニコしながら、
「いえいえ。でも次また楽器を買うときにはしっかりお代をいただくからね。僕も幻想入りしてきた楽器を注目して集めてみるよ」
「はい!お願いします!」とルナサが言う。
そうして楽器を霖之助から貰って三姉妹は香霖堂から出た。
三姉妹は霖之助から貰った楽器を自宅に持ち帰る。
自宅に帰ってテーブルに楽器を乗せる。
「いろんな楽器を貰っちゃたね」リリカは楽器を見ながら再確認するようにつぶやいた。
「これだけあれば、次のコンサートでいいのを披露できるな」
「そうね。次のコンサートが楽しみだわ…!」
メルランとルナサが続いてつぶやく。
「次のコンサートっていつだっけ?」リリカが訊く。
「確か博麗神社で1週間後ね。全然時間あるし、予定してた曲をこの楽器たちでやればいいものになるわ」
メルランがそう質問に対する答えを言った時、ルナサがふと思いつく。
「…なぁ…この楽器たちで演奏するとき、暴力巫女にお願いして、外の世界で言う対バンっていうのを鳥獣伎楽と演らないか?」ルナサが見るからに怪しい、何か企みをしている顔で言った。
「対バンって、なに?姉さん」とリリカが訊く。
「いくつかの演奏者が同時に演奏すること、だったかなぁ。だから、音楽の喧嘩みたいなものだと思う」ルナサがなんとなくの記憶でリリカに言う。
「…面白そうじゃない!」リリカは目を輝かせて言う。
「確かに、面白そうね…それに人間の里で人気のある2つの楽団が共演するとなると、かなりの人が博麗神社に集まるわけだし、巫女も乗るんじゃないかな?」
「話はまとまったね。じゃあ、早速動こうか。善は急げ、思い立ったが吉日ってね」
「「はーい」」
三姉妹はそれぞれ動き始めた。対バンの意味を勘違いしたまま。
3
メルランは博麗の巫女、博麗霊夢に直談判をしに。
ルナサは鳥獣伎楽のミスティア・ローレライにお願いをしに。
リリカは文々。新聞の射命丸文に宣伝のお願いを。
「そんなことできるわけないでしょ!」
そう叫んだのは博麗の巫女。
「で、でもですね、このコンサートをやれば里の人間も集まり、里の人間に鑑賞料としてお賽銭を入れてもらうようにすれば、神社としては…」
「ならおk」
博麗の巫女の承諾は得た。
「対バン?なにそれ?」
そう言うのは八目鰻の仕込みをしているミスティア・ローレライ。
「いや、だから、鳥獣伎楽と騒霊楽団の同時コンサートを…」
実はこの話、5回目。ミスティア・ローレライが意味を理解しても、仕込みで三歩歩いて忘れるという連鎖。
「まぁ、わかったわ。それでなにかしら?」
「もうダメだ…」
ルナサはそう言って、幽谷響子のところへ行き、3分ほどで、一度の説明で承諾を得た。
「え、宣伝?うんいいよ、いいよ。来週の宴会ね。わかったわ。」
リリカが簡単に説明しただけで射命丸文はとっとと承諾した。
文からしたら、ネタが手に入ったので、速攻で自宅へ戻って記事編集をしたいと、リリカと文が会って3分ほどで帰ってしまった。
三姉妹が家で集合し、それぞれの報告を済ませ、ルナサが言う。
「明日から一週間、死ぬ気で練習して、鳥獣伎楽を抜こう!」
「「おー!」」
4
そんでもってあれやかれやで一週間。
夜8時に博麗神社の宴会会場に来たプリズムリバー楽団は、巫女が気を利かせて(自分のために)、居候の鬼に作らせたステージを見て言った・
「「「デカイ!」」」
それは見事なステージで2つのアーティストが同時演奏できるように、2つのステージが向きあってできていた。
プリズムリバー楽団は、正面向かって左のステージに楽器をセットし、神社内の控え室へ入る。
そこにはすでに鳥獣伎楽が待っており、響子がこちらに気づき駆け寄ってきた。
「騒霊楽団の方々ですね!今日はよろしくお願いします!」
「あ、こちらこそお願いします」とメルラン。
「はいはい。じゃああんたらに言っておくよー」
博麗の巫女が突然何かを言い始めた。
「あんたらは今回の宴会(儲け話)の主役だ。だからね、目立ってもらわないと困るし、一応妖怪だったり霊だったりするんだから、人間に危害を加えないこと!いいね!」
その場の全員が口をそろえて、テンション低めに、はーいと答える。
控え室で三姉妹は薄化粧をし、時間になるまで談笑をして、楽器の調整のために、ステージに上る。
そこには、すでに里の人間半数以上と思える程のものすごい人数が演奏を心待ちにして待っていた。
よく見ると、ところどころに妖怪や霊も混じっているが、人間に危害を加えたら博麗の巫女が飛んで駆けつけてボコボコにするとわかっているため、暴れる様子もなければ、なにかをしよう、という感じにも見受けられない。
そう。ここにいるのは純粋に演奏を楽しみに来た人、妖怪、霊なのだ。
そう感じつつ、セッティングは終わった。定時になったら演奏を開始するだけだ。
それまで、一度舞台袖で待つ。
緊張が高まる。霖之助からもらった楽器で初の披露なのだ。緊張しないわけがない。
いつもの楽器だったら緊張しないだろうか?リリカがそう思って自問する。
自答は単純明快。これだけの人の前でやるなんてめったにない。それに対バンなんだ。緊張しないわけがない!
さぁ、時間になった。
午後9時、博麗神社での宴会開始時刻。そして、騒霊楽団対鳥獣伎楽のバトルの開戦。
「メルラン姉さん!ルナサ姉さん!楽しもう!」
「勿論!」「がんばろう」
舞台袖から出てきたプリズムリバー楽団に、客は大声援を送り、コンサートが幕を上げる。
で。せっかくの音楽ネタ楽器ネタなので、その外の世界の楽器とやらが具体的に何なのかきちんと描写すると、リアリティが増してよいと思います。
あとはもう少し小説らしい文章を心がけてみると良いかと思います。