Coolier - 新生・東方創想話

ガシャーン ガシャーン

2011/05/04 22:40:53
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「――で、にとりだったか。あんたが今報告した話ってのは本当なんだろうね?」

 普段は呑気な空気が流れている守矢神社だが、この時ばかりは張りつめた雰囲気を醸し出していた。
 というのも、慌てて駆け込んできた河童の報告が、非常に厄介なものだったからだ。

「はい! 間違いありません、非想天則は付喪神になっています」

 いまだ荒い呼吸を落ち着かせながら、にとりは自分の証言に太鼓判を押した。
 それを聞き、神奈子の眉根が寄った。起きてほしくないことに限って起きるものだ。付喪神にならないように、わざわざ突っ立つだけのハリボテにしたというのに。

「そうかい……しかし、なんだって気づいたんだい、そんなことに?」
「実はそのことでお願いがあって来たんです」
「ほう」

 にとりの表情から察するに、どうやらそれは何か面倒なことらしい。
 神奈子は頭を抱えたくなる。が、人前でそんな無様を晒すわけにもいかなかった。

「神奈子様、天狗の犬走さんが見えてますが」

 河童が口を開こうとしたまさにその瞬間、理想的なタイミングで声が割り込んでくる。
 早苗だった。

「あぁ、今ちょっと緊急の用事で取り込んでるから後にしてもらえないか」
「それが、こっちもすぐに話さなくちゃならないことがあるとか何とかで」

 また緊急だ。そういう接頭語がつくとき、物事は大概ろくなことがない。神奈子は本当に頭を抱えたくなる。悪いことというのは重なるものだ。

「仕方ない。にとり、ちょっと構わないかい?」
「え、あ、はい。大丈夫です」

 それを聞いて、早苗は再び引っ込んだ。上がってください、犬走さん、と聞こえる。
 やがて彼女が、客と共に戻ってくる。

「八坂様。緊急で申し上げたいことがあって参りました」
「そうかい。内容は?」
「非想天則が暴走し、こちらに向かっています。お逃げください」
「ふむ」

 結局、報告自体は、にとりのそれと大して変わらなかった。ただ、この神社に向かっているという点で、幾分か厄介さが増している。

「経緯を」
「はい。先ほど私は、千里眼で非想天則の動きを観測しました。しばらくはてんで滅茶苦茶な方向へ動いていたようですが、急にこっちに。アレの特徴――つまり、ひたすらにでかいということですが――を考慮して、迎撃云々よりこちらへの報告を優先しました」
「うん。それでいい」

 神奈子が最も気に揉んでいるのは、非想天則を撃破する羽目になることだ。
 非想天則は所詮、蒸気を利用したアドバルーンに過ぎない。だから倒すこと自体は苦ではない。しかし、そのサイズが問題であった。
 弾幕ごっこで考えてみよう。非想天則にとっての米粒弾が、それ以外の連中にとっては大型弾となる。大きいがために回避が困難で、避けたとしても流れ弾が大きな被害を山に与える。
 かといって、暴走しているものを放っておくわけにもいかない。鴉天狗たちが感づく前に――イコール、アレの作成に関わった神奈子らの面子が脅かされる前に――なんとかする必要があった。

「非想天則が動いてるんですか!? 本当に!?」

 歓喜に満ちた声が、緊張した空気を壊す。
 早苗だ。その眼は、ロボット特撮を見る七歳の少年のそれと同じ輝きを放っていた。
 そうだった、と神奈子は外の世界時代のことを思い出す。幼稚園か小学生向けのロボット特撮を、高校生になっても毎週欠かさずに見ていた早苗を。
 幻想郷に来てからは、さすがに文明レベルが違いすぎたからか落ち着いていたのに、非想天則の出現で病は加速していた。あれがアドバルーン的なものに過ぎないと、何度説明してもだ。
 まして動き出したとなれば、なおさら悪化するのは目に見えているわけで。

「ちょ、ちょっと人里に買い物に行ってきますね!」

 興奮を隠さず、鼻息を荒くし、そもそも買い物カゴの一つも持たないという体たらくで、早苗は外へ飛び出していった。
 どう見ても野次馬になる気満々であった。ひょっとしたら、パイロットになろうと考えてすらいるかもしれない。アムロよろしく。

「ああもう、厄介なことがまた増えた……まあいい、早苗のことは後回しだ。犬走、非想天則が今どこにいるか見えるかい」
「はい、今調べます……なっ! 大変です、急に加速を初めたらしく、あと一分ほどでこちらに到着します!」
「何ぃ!?」

 さすがの神奈子も慌てた。あと一分。そんなに近くては、神社への被害は避けようがない。神社から遠く、天狗や河童にも被害が出にくい位置で始末しよう、などという考えは甘かったようだ。

「とにかく二人とも、いったん外に出るよ。家の中に居たんじゃあ迎え撃つこともできない。……くっそ、なんだってウチの神社に向かってきてるんだか」
「それなんですが、八坂様」

 にとりが口を挟む。非常に言いにくいことを抱えた表情だった。

「非想天則が目標としているのは、神社じゃなく、私なんです」
「……なんだって?」
「ずっと追い回されてて、匿ってもらうために来たんです、ここに」

 なるほど、と神奈子は納得する。椛の報告では、非想天則は最初、神社になど向かわず、てんでおかしな方向に進んでいたとのことだ。それはおそらく、逃げるにとりを追ってのことなのだろう。
 だが何のために? 付喪神が、自身の所有者・製作者のもとに行くという話は、たしかに無いではない。だが非想天則の製作プロジェクト名簿に、にとりの名前は無かったはずだ。

「……うむむ、何だか分からないがね、あんたを放っぽり出して逃げるつもりはないから安心しな」

 いずれにせよ、時間が無い。分からないことは後回しだ。
 一同は急いで外に出る。非想天則は、既に神社の目と鼻の先に迫っていた。

「こうして見ると本当に馬鹿でかいな……!」

 神奈子何十人分だろうか、見上げると首が疲れる程度の高さはある。
 これだけサイズがあるなら、倒れこんできただけで大変な被害になるだろう。戦うことは避けたいが、山の住人を付け狙うというのなら、とりあえず退けねばなるまい。

「にとり、下がってな。んで椛は手伝いな。あんたの得物は有効なんだよ。あいつは結局、風船と同じだからね。――さぁデカブツ、軍神様が相手してやろうじゃないか」

 大昔に使っていた剣を片手に、自分の何十倍もある相手に神奈子は対峙する。
 質量差ゆえに盾は無意味と考えたか、椛は大剣を両手で構える。

「待ってください神奈子様!」

 割り込んでくるのは早苗の声だった。
 だが姿が見えない。きょろきょろと探して、ようやく見つけた。非想天則の肩に乗っかっている。

「何やってんだい早苗! いくらハリボテだっつったって、そんだけでかい奴にグーパン食らえば骨の一つや二つは折れるよ!?」
「違うんです、この子に敵意は無いんです!」

 早苗は非想天則の肩からふわりと飛び降り、神奈子の下へ戻る。
 その体には怪我の一つも無いが、神奈子としては心配極まりない。

「非想天則は、にとりさんに伝えなくてはならないことがあると言うんです」
「……へ、私に? 何で? 何を?」

 素っ頓狂な声。思い当たる節が無いというのは、わざわざ尋ねずとも分かった。

「さあ、詳しいことは私も聞いていませんが……でも、『ある機能を与えられたロボットとして、なんとしても彼女に続かなくてはならない』と言っていました」
「……あいつはロボットじゃあないんだが。まあいい。そういうことなら話を聞こうじゃないか」

 神奈子は構えを解き、武器をしまう。非想天則はゆっくりとこちらに近づいてきていたが、なるほど、確かに害意や殺意は感じられなかった。
 やがて非想天則が腰を屈める。微妙に漏れ出る蒸気で暑いが、耐えられないほどではなかった。

「え、ええと非想天則さん、初めまして」
「初めまして」

 おっかなびっくり、にとりが話しかける。返ってきたのは、意外にナイスミドルな声だった。神奈子が思わず惚れかける程度にはダンディだった。

「それでえっと、私に言いたいことが有るって? でも私は君の開発に関わってないんだけどな……」
「ああいえ、そういうことではないのです。この体はとても好調ですし。……にとりさん、私はあなたに続かなくてはならないのです」

 少しばかりの苦笑ののち、非想天則は真顔に戻る。

「私に続く……それって、いったい何を?」
「ええ、それはですね……。














































   △  ¥ ▲
  ( ㊤ 皿 ㊤)  がしゃーん
  (        )      
 /│  肉  │\         がしゃーん
<  \____/  >
    ┃   ┃
    =   =
3ゲットロボだよ
自動で3ゲットしてくれるすごいやつだよ」
に とり
2 get

>KASAさん
米欄の横に燦然と輝く6の字ワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwww
喚く狂人
http://wamekukyouzintouhou.blog45.fc2.com/
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コメント



0.2280簡易評価
1.80奇声を発する程度の能力削除
相変わらずのオチwwww
2.90名前が無い程度の能力削除
万感の思いを込めてにとり。
6.100KASA削除
   △  ¥ ▲
  ( ㊤ 皿 ㊤)  がしゃーん
  (        )      
 /│  肉  │\         がしゃーん
<  \____/  >
    ┃   ┃
    =   =
3ゲットロボだよ
自動で3ゲットしてくれるすごいやつだよ


もらったああああ
7.100名前が無い程度の能力削除
ちくしょー。吹いたww
8.100名前が無い程度の能力削除
くそっ、身構えてたのにやられたっ!!wwwww
9.100河城みとり削除
「解せぬ」
14.90名前が無い程度の能力削除
この発想wwww
野暮を承知でマジレスすると付喪神にならないように意思を持つ動きを排除して蒸気で無造作に動かしてるのが非想天則だったと記憶してる
15.100過剰削除
KASAさんどんまいww
しかし3ゲットロボは不意打ちだww
16.100名前が無い程度の能力削除
なるほど。一本取られましたwww
21.90名前が無い程度の能力削除
           /  /     /
         /   .       /
       .     ./       .
          /       /   3ゲットロボだったよ

   , - ―ゝ、\.,_      .   自動で3ゲットしてくれてたすごいやつだったよ
  ..(`ー´⌒ヽi,ト- 、` 、
   `ー―´^| |`ヽ、 ヽ_ )
        | |  `ー-´
        i |
        | !)
  ,,, ,.. ,..,,./..,ノ ヽ,,..,.▲ ..,. .,..,. . . ,. ,.,,. .,
   '' △  ''' ' '' '皿'
23.100名前が無い程度の能力削除
お久しぶりですそして相変わらずのオチwww
たまらんw
24.100名前が無い程度の能力削除
b
25.100名前が無い程度の能力削除
米欄にてもう一ネタwwwwありがとう喚く狂人さん、ありがとうKASAさん、あんたらのせいで腹筋がエクスパンデッド
28.100電動ドリル削除
まさかオチとコメが同時に畳み掛けてくるとはwww
久しぶりに大笑いしたw
35.100名前が無い程度の能力削除
なんでこんなんで笑ってしまうのだろう

もうなんでもいいから100点貰ってけぇい!!
36.100名前が無い程度の能力削除
この100点は作者様ではなく笑わせてもらったKASA様に捧げますw
38.100名前が無い程度の能力削除
ここでそんなローカルネタをやられるなんて!
予想外すぎて笑ってしまったじゃないか!
39.100名前が無い程度の能力削除
ええい、かまえていたのに笑ってしまったw
43.100古明地さとり削除
「くっ…」
46.100名前が無い程度の能力削除
ちくしょうやられたwww
48.100名前が無い程度の能力削除
わかってたのにくっそ
50.100名前が無い程度の能力削除
みとり「 」
51.100名前が無い程度の能力削除
次回作ではさとりと真の3取りの座を争うんですね
61.100名前が無い程度の能力削除
案の定というか、やられた・・・覚悟はしていた、後悔はしていないw
62.無評価名前が無い程度の能力削除
この人まだやってたんだ
-50点
69.10名前が無い程度の能力削除
微妙すぎる