ここは紅魔館のテラス。すこーん。
紅魔館の立派な噴水や庭園が一望できる
スポットである。すこーん。
幸せそうに寝ていた美鈴の頭に
ナイフが突き刺さる。すこーん。
「まったく。こんなんだから
ザル門番だなんて言われるのよ
......で?貴方......もしかして侵入者?」
「ほっほ。わかっておるくせに。
いかにも、わしはこのはた迷惑な
霧を出すのをやめて頂きたいと
ここにやってきたわけですがな」
「あら。でしたら全力の"おもてなし"を
しなくてはなりませんねぇ」
「わしも本気でお相手いたしますぞ
......良いのですかな?もう、後戻りは
できませんぞ」
「おほほ。それは此方のセリフですわ。
貴女こそ、良いのですか?
お帰りはあちらですわよ」
「ふふふ......」
「うふふ......」
両者、にらみ合い。地を、蹴った。
互いの影が重なりー。
「雲符ッ!」
「メイド秘技!」
『おやじさんといっしょ!改!』
『メイドのもてなし!-lunatic-』
雲山は、その身体の限界の数の手を
出現させ、咲夜へと殺到させる!
咲夜は、その両手に持ったナイフで
今にも雲山を切り裂かんとしている!
そして雲山の手をかわしきった
咲夜は、ナイフを煌めかせ!
雲山の顔全体を切りつけた!
「ぬぉぉぉぉぉ!」
「うふふ。言ったでしょう?
全力で"おもてなし"するって」
顔を手で覆っていた雲山は、怒りの為か、わなわなと肩を震わせた。
そして、手を外し、言った。
「わしの!眉毛を!ヒゲを!髪を!
よくも、よくも整えてくれたなぁー!」
「うふふ。この勝負、私の勝ちで
よろしいのかしら?」
そう。これは弾幕ごっこではない。
どちらが、いかに、相手を"手入れ"
するかで、勝負は決する。
雲山は、生まれてこのかた頑固なオヤジ
で通してきたものの、実は世話焼きで、
この度の異変によりそれはより如実に
現れていた。
しかし、相手は仮にもメイド長。
"手入れ"など、見るからに無骨で
不器用そうな者に負けるわけには
いかない。紅魔館のメイド長としての
プライドが、彼女が手入れ勝負を
引き受けたのである。
「くっ......わしは......負けるわけには」
「うふふ。その綺麗に整えられた
お顔で後はなにができるというのです?」
「むううっ......!」
雲山の初のピンチ。最早雲山に
すがるものは無いのか。何か
忘れては居ないだろうか。そう、
あの宵闇の妖怪を。
「ふわ-。よく寝たー。
ん?あそこに人間がいる。
貴女は 食 べ て も い い 人 類 ? 」
「えっ?」
宵闇の妖怪ルーミア。
闇を操る。闇の力は大きい。
太陽は、光を生み出すが同時に
強い闇を張り付ける。
その力はまさに規格外。
それをルーミアは使う。
闇の腕が幾本も伸び、
咲夜を捕まえようとする。
かわす。かわす。しかし。
闇を操る力は同時に影を操る。
咲夜の影。そこから腕が伸びる。
避けようがあるはずがない。
「わは~。捕まえたっ☆」
「ひっ......!」
しかしこのままでは咲夜が、その、
あれだ、頂きますされる。
雲山は、身体中の力をかき集め、
巨体な手を作り出す。
そしてその手で咲夜をルーミアごと
包み込む!
あとは......もう分かるかな。
数分後、テラスに設置された
テーブルに伏して眠っている
紅魔館メイド長の姿があった。
「ふむ。少々堪えたわい。
それでは、諸悪の根元を叩きに
いくとするかの」
ルーミアは咲夜と一緒に
置いていこうかとも考えたが、
起きてまた咲夜が食べられそうに
なっては不憫、ということでまたもや
雲山即席ベッドの上でグースカやっている
★☆★☆★☆★
紅魔館時計台頂上。
ルーミアは適当な空き部屋に寝かせてある
「やれやれ、ようやく着いた
ようじゃの。のう?黒幕さんよ」
「クハハハハ。よくぞ来た、
異形の者よ歓迎するぞ。」
「そりゃどうも、じゃ。時にお主、
何故このような異変を起こしたのじゃ?」
「ッハハハハハハ!
知れたこと、私が吸血鬼だからよ
太陽は忌々しく、流水には足止めされる
ニンニクには血液を沸騰させられ、
聖水には力を削がれ、十字架は
砂にさせられる。これらすべてを
克服するための運命なのだよ!
そしてそれを実行したまで!」
「ふむ。そうか。やめる気は
無いんじゃな?」
「笑止!思い上がる雲よ、疲れただろう
お前に休息をやろう!何分?何時間?
遠慮するな、そんなもの、
無 限 に く れ て や る
レミリアの、振るえば幾千もの命を
刈り取る爪が、雲山に向けられる。
避けられたものではない。当たれば
雲山と言えども死を覚悟しなくては
ならない。それほどに強力な、一撃。
そしてそれが雲山に、命中した。
雲山は蒸発し、霞も残らなかった。
「クハハハハ。所詮雲ごときが、
このレミリア・スカーレットを相手に
したのが間違いだったのだよ。」
しかし、こうも簡単にやってのけたのは
レミリアが強いからではない。
雲山が、そうさせたのであった。
「さぁ、勝利の美酒を持て!咲夜」
紅い霧に覆われた時計台の頂上で、
レミリアは高らかに従者を呼びつける。
......が、来ない。それもそのはず、
レミリアの右腕とも言うべきメイド長、
十六夜咲夜はテラスですぅすぅ寝ているのだ反応できようはずもない。
しかし、仮に起きていたとしても従者が
ここに来ることは無かっただろう。
何故か。それは、ここは時計台頂上
であって時計台頂上ではないからである。
別にさっきの場所からレミリアが
移動したわけではない。
しかし位置がまるで違う。高いのだ。
時計台は頂上から少し下が
折り取られ、すこしづつ、ゆっくりと、
上昇していたのだ。
自然、そんなことは起きるはずがない。
誰かがやったのだ。誰かが今も、
やっているのだ
「おかしい。咲夜は呼べば
どんな時も駆けつけるはず」
辺りは紅い霧に覆われている。
つまり.......見えない。周りが
見えないのだ。
「まさか!」
「そのまさか、を、待っておりました」
可憐な顔を歪ませ、レミリアが吠える。「雲山ッ!貴ッ様ァァァァァァッ!」
「おお、可愛いお顔が台無しですよ、
お嬢さん。」
「貴様、どうやって!」
「どうやってもなにも、簡単な事。
時計台を折りとって、上へ
運んでいるだけですとも」
なぜ、こんな真似が出来るのか。
忘れてはいないだろうか、大図書館で、
雲山は空間を広げられているはずの
大図書館を埋め尽くす程に巨大化
出来たことを。またその際に、
超弩級の量の埃が体内に
取り込まれたことを。雲山は
妖怪である。埃を糧に、身体を
巨大化させることなど訳無いことなのだ
もともと大きい雲山の、最大体積+埃が
時計台を折り、運ぶ事を可能にしたのだ!
そして、その際に普通は下を不自然な
雲が集まっていることなど気づくことなど
吸血鬼でなくともできる。普通は。
ただ、今は紅い霧に覆われ、視界も
薄暗くなっている。そこに紅に溶け込んだ
雲山が極めて慎重に作業をこなす。
気づけるはずもなかった。
「どうするつもりだ!いかに、上空
と言えども私は飛べる!脱出出来る!」
「わしは女性は傷つけないことを
ポリシーとしておる。傷つけずに
勝つには。それは最も無防備である状態
睡眠に!持ち込むこと!」
そして言い終わるが速いか、レミリアが
乗っている時計台の先端を砕きつつ、
圧倒的な質量、体積でレミリアをくるむ。
そして。
「くっ.......今回は敗けを認めてやる。
だが、雲山!その甘さはいつか
命取りになるぞ!」
そしてレミリアは、意識を手放した。
こうして、紅霧異変は終わりを告げた。
雲山は雲としての役割を取り戻し、
全てが丸く収まった。そしてこの異変は、
ケガ人ゼロという快挙を達成し、
後々まで語り継がれるのであった。
閲覧時(5/4の23:55頃)、SSのタイトルに「紅魔卿」と書かれていましたが、これはありがちと言えばありがちな誤字ではあるものの、かなり致命的だと思います。
また、後書きに「メモ帳からコピーする際、文量が多すぎると持って来れないため前・後編に分割した」という主旨の説明がありましたが、これは単に文章を全て一気にコピーするのではなく、予め範囲を決め2回以上に分けてコピーし、そのうえでそれらを順番にペーストすれば解決する問題ではないでしょうか。
私は本書きの勉強などしておりませんで、句読点や地の文等、まだまだ勉強
不足です。(そんなこと関係ないですねドゴォ)私なんかの作品に
ここまで長くコメントしてくださり、
本当にありがとうございました。
2......さん!
はい!まっっったく狙ってなど
おりませんでした!ですが、私は
物事を楽観的に捉えすぎる傾向が
あるので、貴方の言うとおり
そんな方向で狙って行けたら、
ちょっとは読めるものになるんじゃ
ないか、なーんて思ってます。
次回の投稿がいつになるか解りませんがその時はぜひこきおろして
ください。ありがとうございました。
3......さん!
なんというか、こんなに好意的に
評価されると思ってなかったので、
とても嬉しいです!
ありがとうございました!